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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069705
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】がん治療システム、動作方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 2/04 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
A61N2/04
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024050967
(22)【出願日】2024-03-27
(62)【分割の表示】P 2022151198の分割
【原出願日】2018-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(71)【出願人】
【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岸 和人
(72)【発明者】
【氏名】高井 正巳
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 基和
(72)【発明者】
【氏名】赤石 昌隆
(72)【発明者】
【氏名】梅村 将就
(72)【発明者】
【氏名】石川 義弘
(72)【発明者】
【氏名】秋本 大輔
(57)【要約】
【課題】適切な交番磁界を印加可能な電源装置及び磁界発生システムを提供する。
【解決手段】複数の異なる周波数スペクトルを複数含む交番磁界をがん細胞に印加させる制御部を有し、前記交番磁界の周波数成分は強度が異なる複数の周波数スペクトルを含む、がん治療装置を特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる周波数スペクトルを複数含む交番磁界をがん細胞に印加させる制御部を有し、
前記交番磁界の周波数成分は強度が異なる複数の周波数スペクトルを含む、がん治療装置。
【請求項2】
前記強度が異なる複数の異なる周波数スペクトルは、時間軸において重畳されている、請求項1記載のがん治療装置。
【請求項3】
前記強度が異なる複数の異なる周波数スペクトルは、時間軸に沿って連結して組み合わされている、請求項1記載のがん治療装置。
【請求項4】
前記制御部は、
設定された印加時間が経過したと判定した場合に、がん細胞に対する前記交番磁界の印加を停止する、請求項1乃至3の何れか一項に記載のがん治療装置。
【請求項5】
前記交番磁界を発生するコイルとともに磁束を集中させるコアを備える、請求項1乃至4の何れか一項に記載のがん治療装置。
【請求項6】
前記交番磁界が印加されるがん細胞は、神経膠芽腫、悪性黒色腫、舌がん、乳がん、膵がん、直腸がん、食道がんのいずれかである、請求項1乃至5の何れか一項に記載のがん治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種療法を用いたがん治療装置が提案されている。例えば、下記特許文献1及び2では、誘電加熱や、誘電加熱によるターゲット材の発熱により、腫瘍細胞に熱を加える加熱療法を用いたがん治療装置が提案されている。当該がん治療装置では、患者の体表面近くに配置したコイルにて磁界を発生させ、磁気的に加熱する方法が用いられている。
【0003】
また、下記特許文献3では、がん細胞に電界を印加する電場療法を用いたがん治療装置が提案されている。当該がん治療装置では、患者の体表面に電極を装着することで電界を印加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、本願出願人は、特定の周波数の交番磁界をがん細胞に印加することで、がん細胞の増殖抑制に一定の効果があるとの知見を得ており、上記加熱療法や電場療法とは異なる療法によるがん治療装置を検討している。
【0005】
ここで、がんには様々な種類があり、同じ種類のがんであっても、がん細胞の性状にはばらつきがある。また、体内深部のがんには体外からの強い磁界印加が困難な場合がある。このため、がん細胞の増殖抑制の効果を向上させるには、適切な周波数成分及び強さの交番磁界を印加することが求められる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、適切な交番磁界を印加可能な電源装置及び磁界発生システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、複数の異なる周波数スペクトルを複数含む交番磁界をがん細胞に印加させる制御部を有し、前記交番磁界の周波数成分は強度が異なる複数の周波数スペクトルを含む、がん治療装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の各実施形態によれば、適切な交番磁界を印加可能な電源装置及び磁界発生システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る磁界発生システムのシステム構成の一例を示す図である。
図2】磁界発生装置の構成例を示す図である。
図3】磁界発生装置の磁力線の方向と患部との位置関係を示す図である。
図4】電源装置の制御部のハードウェア構成の一例を示す図である。
図5】波形情報の一例を示す図である。
図6】制御部において実現される波形生成部の機能構成の一例を示す図である。
図7】単位波形パターンの一例を示す第1の図である。
図8】単位波形パターンの一例を示す第2の図である。
図9】単位波形パターンの一例を示す第3の図である。
図10】単位波形パターンの一例を示す第4の図である。
図11】電流波形信号の具体例を示す図である。
図12】制御部が提供するユーザインタフェースの一例を示す図である。
図13】磁界発生システムによる磁界印加処理の流れを示すフローチャートである。
図14】第2の実施形態に係る磁界発生システムのシステム構成の一例を示す図である。
図15】磁界発生装置の磁力線の方向と患部との位置関係を示す図である。
図16】磁界発生装置の他の構成例を示す第1の図である。
図17】磁界発生装置の他の構成例を示す第2の図である。
図18】磁界発生装置の他の構成例を示す第3の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各実施形態の詳細について説明する。なお、各実施形態に係る明細書及び図面の記載に際して、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0011】
[第1の実施形態]
<磁界発生システムのシステム構成>
はじめに、第1の実施形態に係る磁界発生システムのシステム構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る磁界発生システムのシステム構成の一例を示す図である。図1に示すように、磁界発生システム100は、磁界発生装置110と、電源装置120とを有し、腫瘍に対する医療に用いられる。
【0012】
磁界発生装置110は、渦巻き状に形成されたコイルと、コアとを有し、電源装置120により交流電流が印加されることで、交番磁界を発生する。
【0013】
電源装置120は、電源部130と制御部140とを要する。電源部130は、制御部140より送信された電流波形信号を受信し、受信した電流波形信号に応じた交流電流を出力する。電源部130は、受信した電流波形信号に基づいて、商用電源の電力を、100[kHz]~400[kHz]の高周波数の交流電流にして出力する。
【0014】
制御部140には、波形生成プログラムがインストールされており、当該プログラムが実行されることで、制御部140は、波形生成部150として機能する。波形生成部150は、波形情報格納部160より波形情報を読み出し、読み出した波形情報に基づいて、電流波形信号を生成する。また、波形生成部150は、生成した電流波形信号を、電源部130に送信する。これにより、電源部130が磁界発生装置110に対して印加する交流電流を、制御部140が制御することができる。
【0015】
<磁界発生装置の構成>
次に、磁界発生装置110の具体的な構成について説明する。図2は、磁界発生装置の構成例を示す図である。このうち、図2(a)は、磁界発生装置110を正面側から見た様子を示しており、図2(b)は、磁界発生装置110を背面側から見た様子を示している。また、図2(c)は、図2(a)の磁界発生装置110を、A-A断面で切断し、切断面に略直交する方向から見た様子を示している。
【0016】
図2(a)に示すように、磁界発生装置110は、高周波数での損失が小さいリッツ線を渦巻き状にしたコイル210を有する。なお、図2(a)の例では、渦巻き状であることを明示するために、コイル210が一定の隙間をもって巻かれているように図示しているが、実際には、コイル210は、隙間なく巻かれているものとする。
【0017】
また、図2(b)に示すように、磁界発生装置110は、コイル210の背面側に配置された6個のコア220を有する。6個のコア220は、渦巻き状のコイル210の中心部分から放射状に外側に向かって配置される。なお、コア220が配置された断面(例えば、図2(a)のA-A断面)では、図2(c)に示すように、コイル210の中心部分に対して、コイル210及びコア220が、それぞれ、左右対称に配置される。このような断面配置にすることで、磁界発生装置110では、コイル210において発生した磁界を中心部分に集中させ、漏れ磁界を小さくすることができる。
【0018】
なお、図2には示していないが、磁界発生装置110は、コイル210及びコア220を収納する収納体を有しており、コイル210及びコア220は、当該収納体に収納される。このように、磁界発生装置110は、コイル210及びコア220が、直接、患者に接触することがないように構成されている。
【0019】
<磁力線の方向と患部との位置関係>
次に、磁界発生装置110において交番磁界が発生した場合の、磁力線の方向と患者の患部との位置関係について説明する。図3は、磁界発生装置の磁力線の方向と患部との位置関係を示す図である。
【0020】
図3(a)に示すように磁界発生装置110は、ベッド301に仰向けに横臥した患者310の患部311の近傍(図3(a)の例では、患者310の背中の位置)に配置される。図3(a)に示す状態で、磁界発生装置110に交流電流を印加し、交番磁界を発生させることで、患部311に交番磁界を印加することができる。
【0021】
なお、図3に示すように、本実施形態では、ベッド301に仰向けに横臥した患者310の体軸方向をz軸方向とし、患者310の背面から腹部に向かう方向をy軸方向としている。また、患者310の左側面から右側面に向かう方向をx軸方向としている。
【0022】
図3(b)は、図3(a)に示す状態で、磁界発生装置110に交番磁界が発生した場合の、B-B断面における磁力線の方向を示した図である。図3(b)に示すように、コイル210の中心部分に対して法線方向(y軸方向)に患者310の患部311が位置するよう、磁界発生装置110が位置調整して配置されることで、患者310の患部311に磁力線(図3(b)の破線)を通すことができる。
【0023】
なお、磁界発生装置110において発生し、患部に印加される交番磁界の強さは、例えば、10[mT]以上であり、望ましくは、40[mT]以上である。
【0024】
<制御部のハードウェア構成>
次に、電源装置120の制御部140のハードウェア構成について説明する。図4は、電源装置の制御部のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0025】
図4に示すように、制御部140は、CPU(Central Processing Unit)401、ROM(Read Only Memory)402、RAM(Random Access Memory)403を有する。CPU401、ROM402、RAM403は、いわゆるコンピュータを形成する。
【0026】
また、制御部140は、補助記憶部404、表示部405、操作部406、接続部407、外部I/F(Interface)部408、ドライブ部409を有する。なお、制御部140の各ハードウェアは、バス410を介して相互に接続されている。
【0027】
CPU401は、補助記憶部404にインストールされている各種プログラム(例えば、波形生成プログラム等)を実行する演算デバイスである。
【0028】
ROM402は、不揮発性メモリである。ROM402は、補助記憶部404にインストールされている各種プログラムをCPU401が実行するために必要な各種プログラム、データ等を格納する、主記憶デバイスとして機能する。具体的には、ROM402はBIOS(Basic Input/Output System)やEFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラム等を格納する、主記憶デバイスとして機能する。
【0029】
RAM403は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリである。RAM403は、補助記憶部404にインストールされている各種プログラムがCPU401によって実行される際に展開される作業領域を提供する、主記憶デバイスとして機能する。
【0030】
補助記憶部404は、各種プログラムや、各種プログラムが実行される際に用いられる情報を格納する補助記憶デバイスである。例えば、波形情報格納部160は、補助記憶部404において実現される。
【0031】
表示部405は、波形生成部150が提供する画面等を表示する表示デバイスである。操作部406は、制御部140に対して各種指示を入力する際に用いられる入力デバイスである。接続部407は、電源部130と制御部140とを接続するための接続デバイスである。
【0032】
外部I/F部408は、外部の任意の機器と接続するための接続デバイスである。なお、制御部140の各ハードウェアのうちの一部(例えば、補助記憶部404、表示部405、操作部406、ドライブ部409等のいずれか)については、制御部140が有する代わりに、外部I/F部408を介して接続されてもよい。
【0033】
ドライブ部409は記録媒体420をセットするためのデバイスである。ここでいう記録媒体420には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記録媒体420には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0034】
なお、補助記憶部404にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記録媒体420がドライブ部409にセットされ、該記録媒体420に記録された各種プログラムがドライブ部409により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶部404にインストールされる各種プログラムは、ネットワークよりダウンロードされることでインストールされてもよい。
【0035】
<波形情報の一例>
次に、波形情報格納部160に格納される波形情報について説明する。図5は、波形情報の一例を示す図である。図5に示すように、波形情報500には、情報の項目として、"波形種別"、"周波数スペクトル"、"波形データ"が含まれる。
【0036】
"波形種別"には、波形の種類を示す情報(図5の例では、簡易的にローマ数字で表現)が格納される。ここでいう波形の種類には、特定の種類のがん細胞の増殖抑制に効果のある周波数(波形)が含まれる。したがって、"波形種別"には、波形の種類を示す情報として、ローマ数字が格納される代わりに、例えば、周波数そのものが格納されてもよい。あるいは、がん細胞が増殖抑制されるがんの種類を示す情報が格納されてもよい。
【0037】
"周波数スペクトル"には、対応する"波形データ"に格納された波形データの周波数スペクトルが格納される。波形情報500によれば、"波形種別"="I"の波形データ501の周波数は"f1"であり、"波形種別"="II"の波形データ502の周波数は"f2"である。また、波形情報500によれば、"波形種別"="III"の波形データ503の周波数は"f3"である。"波形データ"には、それぞれの周波数の波形データ501、502、503等が格納される。
【0038】
なお、特定の種類のがん細胞の増殖抑制に効果のある周波数としては、例えば、以下のような周波数が挙げられる。
・神経膠芽腫:227[kHz]
・悪性黒色腫:196[kHz]
・舌がん :196[kHz]
・乳がん :280[kHz]
したがって、波形情報500において周波数f1、f2、f3には、例えば、上記のような周波数が割り当てられることになる。
【0039】
なお、同じ種類のがんであっても、がん細胞の性状にはばらつきがある。このため、がん細胞の増殖抑制のため、例えば、下記のように、同じ種類のがんであっても異なる磁界印加のモードを備えることが望ましい。
・神経膠芽腫モード1:196[kHz]
・神経膠芽腫モード2:227[kHz]
・神経膠芽腫モード3:280[kHz]
<制御部において実現される波形生成部の機能構成>
次に、制御部140において実現される波形生成部150の機能構成について説明する。図6は、制御部において実現される波形生成部の機能構成の一例を示す図である。図6に示すように、波形生成部150は、組み合わせ対象取得部601、組み合わせ方法取得部602、単位波形生成部603、出力部604を有する。
【0040】
組み合わせ対象取得部601は、複数の波形データを組み合わせて単位波形パターンを生成する際に、組み合わせ対象の波形データを特定する情報を取得する。また、組み合わせ対象取得部601は、取得した情報を、単位波形生成部603に通知する。
【0041】
組み合わせ対象取得部601は、例えば、磁界発生システム100を操作する医師等の医療従事者からの指示に基づいて、組み合わせ対象の波形データを特定する情報を取得する。
【0042】
なお、組み合わせ対象の波形データを特定する情報として、医療従事者は、例えば、波形情報500の"波形種別"に格納された波形の種類を示す情報を指示する。あるいは、医療従事者は、組み合わせ対象の波形データの周波数または周波数範囲を、直接、指示してもよい。あるいは、医療従事者は、がん細胞を増殖抑制したいがんの種類を指示してもよい。
【0043】
組み合わせ方法取得部602は、複数の波形データを組み合わせて単位波形パターンを生成する際の、波形データの組み合わせ方法を指示する情報を取得し、単位波形生成部603に通知する。
【0044】
組み合わせ方法取得部602が取得する組み合わせ方法を指示する情報には、
・組み合わせ対象の波形データを、時間軸に沿って連結して組み合わせる方法、
・組み合わせ対象の波形データを、同じ時間帯において重畳して組み合わせる方法、
のいずれかの方法を指示する情報が含まれる。
【0045】
また、組み合わせ方法取得部602が取得する組み合わせ方法を指示する情報には、
・組み合わせ対象の波形データを、異なる強度で組み合わせる方法、
・組み合わせ対象の波形データを、同じ強度で組み合わせる方法、
のいずれかの方法及び強度の大小を指示する情報が含まれる。
【0046】
また、組み合わせ方法取得部602が取得する組み合わせ方法を指示する情報には、組み合わせ対象の波形データを、時間軸に沿って連結して組み合わせる場合に、
・それぞれの波形データが異なる時間長さとなるように組み合わせる方法、
・それぞれの波形データが同じ時間長さとなるように組み合わせる方法、
のいずれかの方法及び時間長さの比率を指示する情報が含まれる。
【0047】
更に、組み合わせ方法取得部602が取得する組み合わせ方法を指示する情報には、電流波形信号の出力開始から出力終了までの時間(印加時間)を示す情報が含まれる。
【0048】
単位波形生成部603は、組み合わせ対象の波形データを組み合わせてなる、所定の時間長さの「単位波形パターン」を生成する。
【0049】
具体的には、単位波形生成部603は、組み合わせ対象取得部601において取得された組み合わせ対象の波形データを特定する情報に基づいて、波形情報格納部160から波形データを読み出す。
【0050】
また、単位波形生成部603は、読み出した波形データを、組み合わせ方法取得部602において取得された組み合わせ方法を指示する情報に基づいて組み合わせることで、単位波形パターンを生成する。更に、単位波形生成部603は、生成した単位波形パターンを出力部604に通知する。
【0051】
出力部604は、単位波形生成部603において生成された単位波形パターンを時間軸に沿って連結することで、印加時間分の電流波形信号を生成し出力する。これにより、電源部130では、単位波形パターンを有する交流電流を、印加時間分、磁界発生装置110に対して繰り返し印加することができる。
【0052】
<単位波形パターンの説明>
次に、単位波形生成部603により生成される、単位波形パターンの具体例(ここでは、4通りの具体例)について説明する。
【0053】
(1)単位波形パターン1
図7は、単位波形パターンの一例を示す第1の図である。図7の例は、組み合わせ対象の波形データとして、周波数="f1"の波形データと、周波数="f2"の波形データと、周波数="f3"の波形データとが特定された場合を示している(グラフ700参照)。
【0054】
また、図7の例は、組み合わせ対象の波形データを同じ強度で組み合わせる方法が指示された場合を示している(グラフ700参照)。
【0055】
単位波形生成部603は、波形情報格納部160から、波形データ501、502、503を読み出す。また、単位波形生成部603は、読み出した波形データ501、502、503に基づいて、所定の時間長さの単位波形パターン701または単位波形パターン702を生成する。
【0056】
ここで、単位波形パターン701は、組み合わせ対象の波形データ501、502、503を、同じ時間帯において重畳して組み合わせる方法が指示された場合の単位波形パターンである。
【0057】
一方、単位波形パターン702は、組み合わせ対象の波形データ501、502、503を、時間軸に沿って連結して組み合わせる方法が指示された場合の単位波形パターンである。なお、図7の例によれば、単位波形パターン702の場合、更に、それぞれの波形データ501、502、503が同じ時間長さとなるように組み合わせる方法が指示されたことを示している(t1=t2=t3)。
【0058】
なお、単位波形パターン701のように、重畳して組み合わせる方法の場合、常に各周波数成分の磁界が印加されている。このため、単位波形パターン702のように、時間軸に沿って連結して組み合わせる方法と比較して、同一の効果を得るのに要する時間を短縮することができる。
【0059】
(2)単位波形パターン2
図8は、単位波形パターンの一例を示す第2の図である。図8の例は、組み合わせ対象の波形データとして、周波数="f1"から周波数="f3"までの周波数範囲に含まれる波形データが特定された場合を示している(グラフ800参照)。
【0060】
また、図8の例は、組み合わせ対象の波形データを同じ強度で組み合わせる方法が指示された場合を示している(グラフ800参照)。
【0061】
単位波形生成部603は、波形データ501から波形データ503までの各周波数の波形データを、波形情報格納部160から読み出す。また、単位波形生成部603は、読み出した各周波数の波形データに基づいて、所定の時間長さの単位波形パターン801を生成する。
【0062】
単位波形パターン801は、波形データ501から波形データ503までの各周波数の波形データを、時間軸に沿って連結して組み合わせる方法が指示された場合の単位波形パターンである。なお、図8の例によれば、単位波形パターン801の場合、更に、それぞれの波形データが同じ時間長さとなるように組み合わせる方法が指示されたことを示している(t1=・・・=tn)。
【0063】
(3)単位波形パターン3
図9は、単位波形パターンの一例を示す第3の図である。図9の例は、組み合わせ対象の波形データとして、周波数="f1"の波形データと、周波数="f2"の波形データと、周波数="f3"の波形データとが特定された場合を示している(グラフ900参照)。
【0064】
また、図9の例は、組み合わせ対象の波形データを異なる強度で組み合わせる方法が指示された場合を示している(グラフ900参照)。
【0065】
単位波形生成部603では、波形情報格納部160から、波形データ501'、502、503'を取得する。なお、波形データ501'は、波形情報格納部160から読み出した波形データ501を、指示された強度に応じて補正することで取得された波形データである。同様に、波形データ503'は、波形情報格納部160から読み出した波形データ503を、指示された強度に応じて補正することで取得された波形データである。
【0066】
図9に示すように、単位波形生成部603では、取得した波形データ501'、502、503'に基づいて、所定の時間長さの単位波形パターン901を生成する。
【0067】
単位波形パターン901は、波形データ501'、502、503'を、時間軸に沿って連結して組み合わせる方法が指示された場合の単位波形パターンである。なお、図9の例によれば、単位波形パターン901の場合、更に、それぞれの波形データが同じ時間長さとなるように組み合わせる方法が指示されたことを示している(t1=t2=t3)。
【0068】
(4)単位波形パターン4
図10は、単位波形パターンの一例を示す第4の図である。図10の例は、組み合わせ対象の波形データとして、周波数="f1"の波形データと、周波数="f2"の波形データと、周波数="f3"の波形データとが特定された場合を示している(グラフ1000参照)。
【0069】
また、図10の例は、組み合わせ対象の波形データを異なる強度で組み合わせる方法が指示された場合を示している(グラフ1000参照)。
【0070】
単位波形生成部603では、波形情報格納部160から、波形データ501、502'、503'を取得する。なお、波形データ502'は、波形情報格納部160から読み出した波形データ502を、指示された強度に応じて補正することで取得された波形データである。同様に、波形データ503'は、波形情報格納部160から読み出した波形データ503を、指示された強度に応じて補正することで取得された波形データである。
【0071】
図10に示すように、単位波形生成部603では、取得した波形データ501、502'、503'に基づいて、所定の時間長さの単位波形パターン1001を生成する。
【0072】
単位波形パターン1001は、波形データ501、502'、503'を、時間軸に沿って連結して組み合わせる方法が指示された場合の単位波形パターンである。なお、図10の例によれば、単位波形パターン1001の場合、更に、それぞれの波形データが同じ時間長さとなるように組み合わせる方法が指示されたことを示している(t1=t2=t3)。
【0073】
<電流波形信号の具体例>
次に、出力部604により生成される電流波形信号の具体例について説明する。図11は、電流波形信号の具体例を示す図である。図11に示すように、出力部604は、単位波形生成部603より単位波形パターンを取得すると、取得した単位波形パターンを、印加時間分(例えば、30分から60分)、連結させることで、電流波形信号を生成する。
【0074】
図11において、電流波形信号1101は、単位波形パターン701を連結することで生成された電流波形信号である。また、電流波形信号1102は、単位波形パターン702を連結することで生成された電流波形信号である。以下、同様に、電流波形信号1103~1105は、それぞれ、単位波形パターン801~1001を連結することで生成された電流波形信号である。
【0075】
このように、制御部140は、周波数スペクトルが互いに異なる複数の波形データが含まれる単位波形パターンを連結した電流波形信号を、電源部130に送信することで、電源部130により印加される交流電流を制御する。
【0076】
<制御部のユーザインタフェース>
次に、制御部140の波形生成部150が提供するユーザインタフェースについて説明する。図12は、制御部が提供するユーザインタフェースの一例を示す図である。制御部140において、波形生成部150が起動すると、表示部405には設定画面1200が表示される。
【0077】
図12に示すように、設定画面1200には、組み合わせ対象を特定する情報を入力するための領域と、組み合わせ方法を指示する情報を入力するための領域と、印加時間を設定するための領域とが含まれる。
【0078】
組み合わせ対象を特定する情報を入力するための領域には、入力項目として、"組み合わせ個数"、"組み合わせ範囲"、"対象"が含まれる。
【0079】
"組み合わせ個数"には、複数の波形データを組み合わせて単位波形パターンを生成する際の、波形データの個数が入力される。"組み合わせ範囲"には、組み合わせ対象の波形データを、個別に特定するか、周波数範囲として特定するかについての情報が入力される。"対象"には、組み合わせ対象の波形データを特定する情報が入力される。上述したとおり、"対象"には、波形情報500の"波形種別"に格納された波形の種類を示す情報が入力されてもよいし、組み合わせ対象の波形データの周波数または周波数範囲が入力されてもよい。あるいは、増殖抑制するがん細胞の種類が入力されてもよい。
【0080】
組み合わせ方法を指示する情報を入力するための領域には、入力項目として、"方法"、"強度"、"比率"が含まれる。
【0081】
"方法"には、
・組み合わせ対象の波形データを、時間軸に沿って連結して組み合わせる方法、
・組み合わせ対象の波形データを、同じ時間帯において重畳して組み合わせる方法、
のいずれかの方法を指示する情報が入力される。
【0082】
"強度"には、
・組み合わせ対象の波形データを、異なる強度で組み合わせる方法、
・組み合わせ対象の波形データを、同じ強度で組み合わせる方法、
のいずれかの方法及び強度の大小を指示する情報が入力される。
【0083】
"比率"には、組み合わせ対象の波形データを、時間軸に沿って連結して組み合わせる場合に、
・それぞれの波形データが異なる時間長さとなるように組み合わせる方法、
・それぞれの波形データが同じ時間長さとなるように組み合わせる方法、
のいずれかの方法及び時間長さの比率を指示する情報が入力される。
【0084】
印加時間を設定するための領域には、入力項目として"印加時間"が含まれる。"印加時間"には、印加時間(例えば、30分から60分の範囲)が入力される。
【0085】
設定画面1200には、更に、生成ボタン1211と開始ボタン1212とが含まれる。組み合わせ対象を特定する情報を入力するための領域に含まれる各入力項目、及び、組み合わせ方法を指示する情報を入力するための領域に含まれる各入力項目への入力が完了すると、生成ボタン1211が押下可能な状態になる。かかる状態で、生成ボタン1211が押下されると、単位波形生成部603は、単位波形パターンを生成する。
【0086】
また、単位波形パターンが生成された状態で、開始ボタン1212が押下されると、出力部604は、生成された単位波形パターンに基づいて、電流波形信号を生成し、電源部130に送信する。
【0087】
<磁界印加処理の流れ>
次に、磁界発生システム100による磁界印加処理全体の流れについて説明する。図13は、磁界発生システムによる磁界印加処理の流れを示すフローチャートである。図13に示すように、ステップS1301において、医療従事者は、患者310の患部311の位置に応じた位置に、磁界発生装置110を配置する。
【0088】
ステップS1302において、制御部140は、設定画面1200を介して、医療従事者から各入力項目の入力を受け付ける。ステップS1303において、制御部140は、単位波形パターンを生成する。
【0089】
ステップS1304において、制御部140は、電流波形信号の出力を開始し、電源部130は、磁界発生装置110に対して、電流波形信号に応じた交流電流を印加する。これにより、磁界発生装置110では交番磁界が発生し、患者310の患部311に交番磁界が印加される。
【0090】
ステップS1305において、制御部140は、設定された印加時間が経過したか否かを判定する。ステップS1305において、設定された印加時間が経過していないと判定した場合には(ステップS1305においてNoの場合には)、設定された印加時間が経過するまで待機する。
【0091】
一方、ステップS1305において、設定された印加時間が経過したと判定した場合には(ステップS1305においてYesの場合には)、ステップS1306に進む。ステップS1308において、制御部140は、電流波形信号の出力を停止する。
【0092】
ステップS1307において、医療従事者は、患者310の患部311の位置に応じた位置に配置した磁界発生装置110を、取り外し、磁界印加処理を終了する。
【0093】
<まとめ>
以上の説明から明らかなように、第1の実施形態に係る磁界発生システム100は、
・磁界発生装置に対して、交流電流を印加する電源部を有する。
・電流波形信号を送信することで、電源部が印加する交流電流を制御する制御部を有する。
【0094】
また、第1の実施形態に係る磁界発生システム100において、上記制御部は、周波数スペクトルが互いに異なる電流波形が複数含まれた単位波形パターンを生成し、生成した単位波形パターンを連結することで電流波形信号を生成する。
【0095】
このように、第1の実施形態に係る磁界発生システム100では、がん細胞の増殖抑制に効果のある特定の周波数に対して、異なる周波数を組み合わせることで、周波数に幅をもたせた単位波形パターンを生成する。また、磁界発生装置に対して、生成した単位波形パターンを有する交流電流を繰り返し印加する。
【0096】
これにより、がん細胞の性状にばらつきがあった場合でも、がん細胞の増殖抑制の効果を向上させることができる。つまり、第1の実施形態に係る磁界発生システム100によれば、適切な周波数の交番磁界を印加可能な電源装置及び磁界発生システムを提供することができる。
【0097】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、がん細胞の増殖抑制の効果を向上させるために、異なる周波数を組み合わせる構成とした。これに対して、第2の実施形態では、がん細胞の増殖抑制の効果を向上させるために、がん細胞に印加される交番磁界の強度を上げる構成とする。
【0098】
なお、がん細胞に印加される交番磁界の強度を上げるには、磁界発生装置と患部との間の距離を短くすることが有効である。交番磁界の強度は、磁界発生装置からの距離に依存しており、磁界発生装置を患部に近づけることで、磁界発生装置に印加する交流電流が同じでも、がん細胞に印加される交番磁界の強度を上げることができるからである。
【0099】
そこで、第2の実施形態では、磁界発生装置を、患者の患部の近くに留置させるように構成する。以下、第2の実施形態について、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0100】
<磁界発生システムのシステム構成>
はじめに、第2の実施形態に係る磁界発生システムのシステム構成について説明する。図14は、第2の実施形態に係る磁界発生システムのシステム構成の一例を示す図である。上記第1の実施形態において図1を用いて説明した磁界発生システム100との相違点は、磁界発生システム1400の場合、磁界発生装置1410と、送電装置1420とを含む点である。
【0101】
磁界発生装置1410は、手術等により、患者310の体内の患部311の近傍に留置される。磁界発生装置1410は、渦巻き状に形成されたコイルに加えて、磁界共振型の受電コイルを有する。磁界発生装置1410では、送電装置1420より無線給電された交流電流を受電コイルが受電することで、渦巻き状に形成されたコイルに交流電流が流れ、交番磁界を発生させる。
【0102】
送電装置1420は、患者310の体外であって、磁界発生装置1410の近傍に配置される。送電装置1420は送電コイルとコアを有し、磁界共振方式により、磁界発生装置1410に対して、無線給電を行う。
【0103】
<磁力線の方向と患部との位置関係>
次に、磁界発生装置1410において交番磁界が発生した場合の、磁力線の方向と患部との位置関係について説明する。図15は、磁界発生装置の磁力線の方向と患部との位置関係を示す図である。
【0104】
図15(a)に示すように、磁界発生装置1410は、患者310の患部311の近傍に留置される。また、送電装置1420は、磁界発生装置1410の近傍に配置される。
【0105】
図15(b)は、図15(a)のB-B断面を示している。図15(a)に示す状態で、送電コイル1430に交流電流を印加することで、磁界発生装置1410では、不図示の受電コイルが受電する。これにより、磁界発生装置1410には交流電流が流れ、交番磁界が発生する。
【0106】
図15(b)に示すように、患者310の体内に留置された磁界発生装置1410が交番磁界を発生させることで、患者310の患部311を多数の磁力線(図15(b)の破線)が通ることになる。つまり、患者310の患部311に印加する交番磁界の強度を上げることができる。この結果、がん細胞の増殖抑制の効果を向上させることができる。
【0107】
<まとめ>
以上の説明から明らかなように、第2の実施形態に係る磁界発生システム1400は、無線給電されることで交番磁界を発生させる磁界発生装置と、磁界発生装置に無線給電する送電装置とを有し、磁界発生装置を患者の患部の近傍に留置させる。
【0108】
これにより、患者の患部の近傍で交番磁界を発生させることが可能となり、がん細胞に印加される交番磁界の強度を上げることができる。つまり、第2の実施形態に係る磁界発生システム100によれば、適切な強度の交番磁界を印加可能な電源装置及び磁界発生システムを提供することができる。
【0109】
[第3の実施形態]
上記第2の実施形態では、磁界発生装置と患部との間の距離を短くして、がん細胞に印加される交番磁界の強度を上げるべく、磁界発生装置を患部の近傍に留置させる構成とした。これに対して、第3の実施形態では、磁界発生装置を患者の体内に挿入する構成とする。以下、第3の実施形態について、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0110】
図16は、磁界発生装置の他の構成例を示す第1の図である。図16に示すように、第3の実施形態では、磁界発生装置を構成するコイルを、螺旋状に形成するとともに柔軟な棒状の部材に巻き回し、患者310の体内に挿入した際に、螺旋の中心軸が体腔に沿って曲線形状となるよう、変形可能に構成する。
【0111】
これにより、患者310の体外から、患部311に交番磁界を印加する場合と比較して、より強度の高い交番磁界を患部311に印加することができる。図16の例は、直腸がんのがん細胞に印加される交番磁界の強度を上げるために、医療従事者が、磁界発生装置1610を、患者310の肛門から挿入し、直腸がんのがん細胞の近傍まで移動させた様子を示している。
【0112】
なお、患者310の体内に挿入する態様はこれに限定されず、例えば、食道がんのがん細胞に印加される交番磁界の強度を上げるために、医療従事者が、磁界発生装置を、患者310の口腔から挿入し、食道がんのがん細胞の近傍まで移動させてもよい。
【0113】
また、磁界発生装置を構成するコイルの形状も螺旋状に限定されない。例えば、渦巻き状に形成されたコイルを、同一平面上に複数配置し、少なくとも、コイル間を柔軟な部材で接続することで、患者310の体内に挿入した際に、コイル間の各接続点を結ぶ接続軸が、体腔に沿って曲線形状となるよう、変形可能に構成してもよい。
【0114】
このように、磁界発生装置を構成するコイルは、患者310の体内に挿入し、任意の種類のがんのがん細胞の近傍まで体腔を移動できるよう、変形可能に構成されているものとする。
【0115】
[第4の実施形態]
上記第2及び第3の実施形態では、がん細胞に印加される交番磁界の強度を上げるために、磁界発生装置と患部との間の距離を短くする構成について説明した。これに対して、第4の実施形態では、がん細胞に印加される交番磁界の強度を上げるために、磁束密度を高くする構成について説明する。
【0116】
図17は、磁界発生装置の他の構成例を示す第2の図である。このうち、図17(a)は、2個の磁界発生装置(コイル210、1710、コア220、1720)を、患者310の患部311の背面側と腹部側とに配置することで、患部311に印加される交番磁界の強度を上げる構成を示している。このように、磁界発生装置の個数を増やすことで、患部311に印加される交番磁界の強度を上げることができる。
【0117】
なお、図17(a)の例では、2個の磁界発生装置を、患部311を挟んでy軸方向に配置する場合について示したが、2個の磁界発生装置を、患部311を挟んでx軸方向に配置する構成としてもよい。また、図17(a)の例では、2個の磁界発生装置を配置する場合について説明したが、3個以上の磁界発生装置を配置するようにしてもよい。
【0118】
図17(b)は、2個の磁界発生装置を、患者310の患部311の背面側と腹部側に配置することで、患部311に印加される交番磁界の強度を上げる構成を示している。図17(a)との相違点は、第1に、磁界発生装置が有するコイル1730、1740が、渦巻き状ではなく、螺旋状に形成されている点である。また、図17(a)との相違点は、第2に、螺旋状に形成されたコイルの中心部分にC型アームのコア1750が挿入されている点である。
【0119】
図17(b)に示す構成とすることで、一方のコイル1730で発生した交番磁界が、他方のコイル1740に向かうこととなり、漏れ磁界を小さくし、患部311に印加される交番磁界の強度を上げることができる。
【0120】
このように、磁界発生装置の個数、形状、配置等を変更することで、がん細胞に印加される交番磁界の強度を上げることができる。つまり、第4の実施形態に係る磁界発生システムによれば、適切な強度の交番磁界を印加可能な電源装置及び磁界発生システムを提供することができる。
【0121】
[第5の実施形態]
上記第1乃至第4の実施形態では、磁界発生装置のコイルの中心部分に対して、法線方向に位置する患者の患部に交番磁界を印加するよう、磁界発生装置を構成する場合について説明した。これに対して、第5の実施形態では、磁界発生装置のコイルの中心部分に位置する患者の患部に交番磁界を印加するよう、磁界発生装置を構成する場合について説明する。
【0122】
図18は、磁界発生装置の他の構成例を示す第3の図である。このうち、図18(a)は、渦巻き状のコイル1801の中心部分に患者310の胴体部分が配置されるように磁界発生装置を構成した様子を示している。また、図18(b)は、螺旋状のコイル1802の中心部分に患者310の胴体部分が配置されるように磁界発生装置を構成した様子を示している。図18(a)、(b)に示すように構成することで、磁界発生装置のコイルの中心部分に位置する患者の患部に、交番磁界を印加することができる。
【0123】
同様に、図18(c)は、渦巻き状のコイル1811の中心部分に患者310の頭部が配置されるように磁界発生装置を構成した様子を示している。また、図18(d)は、螺旋状のコイル1812の中心部分に患者310の頭部が配置されるように磁界発生装置を構成した様子を示している。図18(c)、(d)に示すように構成することで、磁界発生装置のコイルの中心部分に位置する患者の患部に、交番磁界を印加することができる。
【0124】
[その他の実施形態]
上記第1の実施形態では、磁界発生装置の個数、形状、配置等に関わらず、組み合わせ対象、組み合わせ方法、印加時間等を入力するものとして説明した。しかしながら、組み合わせ対象、組み合わせ方法、印加時間等は、磁界発生装置の個数、形状、配置等に応じて入力するようにしてもよい。
【0125】
また、上記第1の実施形態では、設定画面1200において、医療従事者が、組み合わせ対象、組み合わせ方法の各入力項目を入力するものとして説明した。しかしながら、組み合わせ対象、組み合わせ方法が予め入力されたパターンを、医療従事者が選択することで、組み合わせ対象、組み合わせ方法を入力するようにしてもよい。
【0126】
また、上記第1の実施形態では、電源装置120において、電源部130と制御部140とを別体として説明したが、電源部130と制御部140は一体的に構成してもよい。
【0127】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせなど、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0128】
100 :磁界発生システム
110 :磁界発生装置
120 :電源装置
130 :電源部
140 :制御部
150 :波形生成部
210 :コイル
220 :コア
500 :波形情報
601 :組み合わせ対象取得部
602 :組み合わせ方法取得部
603 :単位波形生成部
604 :出力部
1200 :設定画面
1410 :磁界発生装置
1420 :送電装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0129】
【特許文献1】特開平2-88059号公報
【特許文献2】特開平3-158176号公報
【特許文献3】特許第4750784号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2024-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界発生装置と、
前記磁界発生装置に対して、交流電流を印加する電源部と、を備え、
前記磁界発生装置は体内に配置される、ことを特徴とするがん治療システム。
【請求項2】
前記磁界発生装置は、コイルを含む、請求項1に記載のがん治療システム。
【請求項3】
前記磁界発生装置は、螺旋状のコイルを含む請求項1に記載のがん治療システム。
【請求項4】
前記磁界発生装置は、渦巻き状に形成されたコイルを含む請求項1に記載のがん治療システム。
【請求項5】
前記磁界発生装置は、接続された複数のコイルを含む請求項1に記載のがん治療システム。
【請求項6】
前記磁界発生装置は、前記接続された複数のコイルの接続軸の変形が可能である請求項5に記載のがん治療システム。
【請求項7】
前記磁界発生装置の長手方向における中心軸は曲線形状となるよう変形可能である請求項1乃至6の何れか一項に記載のがん治療システム。
【請求項8】
前記電源部は、前記交流電流を送電する送電装置を、含み、
前記磁界発生装置は、前記送電装置から送電された交流電流を受電する受電装置と、を含む、請求項1乃至7の何れか一項に記載のがん治療システム。
【請求項9】
前記送電装置は、送電コイルとコアを有する請求項8に記載のがん治療システム。
【請求項10】
前記送電装置と、前記受電装置と、で行われる電流の送受は磁界共振方式により行われる請求項8又は9に記載のがん治療システム。
【請求項11】
前記送電装置は体外に配置される請求項8乃至10の何れか一項に記載のがん治療システム。
【請求項12】
前記磁界発生装置は、直腸に配置される請求項1乃至11の何れか一項に記載のがん治療システム。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項に記載のがん治療システムに用いられる動作方法であって、
前記電源部から前記磁界発生装置に対して交流電流を印加して、磁界を発生する工程を備えるがん治療システムに用いられる動作方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、がん治療システム、動作方法に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、適切な交番磁界を印加可能ながん治療システム、動作方法を提供することを目的とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の一態様によれば、磁界発生装置と、前記磁界発生装置に対して、交流電流を印加する電源部と、を備え、前記磁界発生装置は体内に配置される、ことを特徴とするがん治療システムである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の各実施形態によれば、適切な交番磁界を印加可能ながん治療システム、動作方法を提供することができる。