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特開2024-69738蓄電デバイス用バインダー組成物、蓄電デバイス用電極合剤、蓄電デバイス用電極及び二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069738
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用バインダー組成物、蓄電デバイス用電極合剤、蓄電デバイス用電極及び二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20240515BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20240515BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20240515BHJP
   H01M 6/02 20060101ALI20240515BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240515BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240515BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20240515BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/04 Z
H01M4/02 Z
H01M6/02 Z
H01M4/13
H01M4/139
H01G11/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050216
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 真治
【テーマコード(参考)】
5E078
5H024
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA02
5E078AA05
5E078AA10
5E078AB01
5E078BA44
5H024AA02
5H024EE09
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA20
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA11
5H050EA23
5H050EA24
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】優れた充放電サイクル特性(容量保持率)や放電レート特性(放電容量比)を有する二次電池、並びに、この二次電池を得るための蓄電デバイス用バインダー組成物、蓄電デバイス用電極合剤、及び蓄電デバイス用電極を提供する。
【解決手段】テトラフルオロエチレン、及びクロロトリフルオロエチレンからなる群より選ばれる1種以上である単量体aに基づく単位a、及びエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選ばれる1種以上である単量体bに基づく単位bを有し、フッ化ビニリデンに基づく単位を実質的に有さず、かつ水酸基と反応可能な又は水素結合を形成可能な接着性官能基を有する含フッ素共重合体を含有する、蓄電デバイス用バインダー組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記単量体aに基づく単位a、及び下記単量体bに基づく単位bを有し、フッ化ビニリデンに基づく単位を実質的に有さず、かつ水酸基と反応可能な又は水素結合を形成可能な接着性官能基を有する含フッ素共重合体を含有する、蓄電デバイス用バインダー組成物。
単量体a:テトラフルオロエチレン、及びクロロトリフルオロエチレンからなる群より選ばれる1種以上。
単量体b:エチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選ばれる1種以上。
【請求項2】
前記含フッ素共重合体が粒子状である、請求項1に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
【請求項3】
前記含フッ素共重合体の融点が150℃以上である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
【請求項4】
前記含フッ素共重合体が、前記接着性官能基として、カルボニル含有基及び水酸基からなる群より選ばれる1種以上を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
【請求項5】
前記含フッ素共重合体が、前記接着性官能基として、炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、及び酸無水物基からなる群より選択される少なくとも1種のカルボニル含有基を有する、請求項4に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
【請求項6】
前記単量体aがテトラフルオロエチレンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
【請求項7】
前記単量体bがエチレンを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
【請求項8】
前記単量体aがテトラフルオロエチレンを含み、前記単量体bがエチレンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
【請求項9】
さらに、液状媒体を含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
【請求項10】
前記液状媒体が、水性媒体、脂肪族類、芳香族炭化水素類、アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、含窒素化合物、含硫黄化合物、含フッ素化合物からなる群より選ばれる1種以上である、請求項9に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
【請求項11】
前記液状媒体が、水性媒体、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、及び1個のカルボニル基を有する炭素数6~10の脂肪族炭化水素化合物からなる群より選ばれる1種以上である、請求項9に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載された蓄電デバイス用バインダー組成物と電極活物質とを含有する蓄電デバイス用電極合剤。
【請求項13】
集電体と、前記集電体上に、請求項12に記載された蓄電デバイス用電極合剤を用いて形成された電極活物質層を有する、蓄電デバイス用電極。
【請求項14】
請求項13に記載された蓄電デバイス用電極及び電解質を備える二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス用バインダー組成物、蓄電デバイス用電極合剤、蓄電デバイス用電極及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池等の蓄電デバイスは、通常、電極、非水電解液、セパレーター等を主要な部材として構成される。蓄電デバイス用電極は一般に、電極活物質、導電材、バインダーおよび液状媒体を含有する蓄電デバイス用電極合剤を集電体表面に塗布し、乾燥させることで製造される。
蓄電デバイス用バインダーは、通常、バインダーとなるポリマーを水や有機溶媒に溶解または分散させたバインダー組成物として用いられ、前記バインダー組成物に電極活物質、導電材を分散させて、電極合剤が調製される。
【0003】
蓄電デバイス用のバインダー組成物としては、ポリマーの一部又は全部として、安定性が高く、二次電池の充放電に伴う劣化を抑制しやすい含フッ素重合体を用いることが知られている。
例えば、ポリフッ化ビニリデンにポリイミドや芳香族ポリアミドを混合した組成物(特許文献1)や、テトラフルオロエチレン/プロピレン系ポリマーの乳化液(特許文献2)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-31513号公報
【特許文献2】特開2018-5972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これら含フッ素重合体を含むバインダー組成物を用いて製造した電極は、集電体表面に対する蓄電デバイス用電極合剤の密着性が不充分となりやすい。
そのため、含フッ素重合体を含むバインダー組成物を用いて製造した電極を使用した二次電池は、充分な充放電サイクル特性(容量保持率)や放電レート特性(放電容量比)を得られない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、優れた充放電サイクル特性(容量保持率)や放電レート特性(放電容量比)を有する二次電池、並びに、この二次電池を得るための蓄電デバイス用バインダー組成物、蓄電デバイス用電極合剤、及び蓄電デバイス用電極を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]下記単量体aに基づく単位a、及び下記単量体bに基づく単位bを有し、フッ化ビニリデンに基づく単位を実質的に有さず、かつ水酸基と反応可能な又は水素結合を形成可能な接着性官能基を有する含フッ素共重合体を含有する、蓄電デバイス用バインダー組成物。
単量体a:テトラフルオロエチレン、及びクロロトリフルオロエチレンからなる群より選ばれる1種以上。
単量体b:エチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選ばれる1種以上。
[2]前記含フッ素共重合体が粒子状である、[1]に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
[3]前記含フッ素共重合体の融点が150℃以上である、[1]又は[2]に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
[4]前記含フッ素共重合体が、前記接着性官能基として、カルボニル含有基及び水酸基からなる群より選ばれる1種以上を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
[5]前記含フッ素共重合体が、前記接着性官能基として、炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、及び酸無水物基からなる群より選択される少なくとも1種のカルボニル含有基を有する、[4]に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
[6]前記単量体aがテトラフルオロエチレンを含む、[1]~[5]のいずれかに記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
[7]前記単量体bがエチレンを含む、[1]~[6]のいずれかに記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
[8]前記単量体aがテトラフルオロエチレンを含み、前記単量体bがエチレンを含む、[1]~[5]のいずれかに記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
[9]さらに、液状媒体を含有する、[1]~[8]のいずれかに記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
[10]前記液状媒体が、水性媒体、脂肪族類、芳香族炭化水素類、アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、含窒素化合物、含硫黄化合物、含フッ素化合物からなる群より選ばれる1種以上である、[9]に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
[11]前記液状媒体が、水性媒体、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、及び1個のカルボニル基を有する炭素数6~10の脂肪族炭化水素化合物からなる群より選ばれる1種以上である、[9]に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
[12][1]~[11]のいずれかに記載された蓄電デバイス用バインダー組成物と電極活物質とを含有する蓄電デバイス用電極合剤。
[13]集電体と、前記集電体上に、[12]に記載された蓄電デバイス用電極合剤を用いて形成された電極活物質層を有する、蓄電デバイス用電極。
[14][13]に記載された蓄電デバイス用電極及び電解質を備える二次電池。
【発明の効果】
【0008】
本発明の蓄電デバイス用バインダー組成物、蓄電デバイス用電極合剤、蓄電デバイス用電極及び二次電池によれば、優れた充放電サイクル特性(容量保持率)や放電レート特性(放電容量比)が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び特許請求の範囲における以下の用語の定義は以下のとおりである。
「単量体に基づく単位」は、単量体1分子が重合して直接形成される原子団と、前記原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。本明細書において、単量体に基づく単位を、単に、単量体単位とも記す。
「単量体」とは、重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物を意味する。
「融点」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの最大値に対応する温度を意味する。
「カルボニル含有基」とは、構造中にカルボニル基(-C(=O)-)を有する基を意味する。
「酸無水物基」とは、-C(=O)-O-C(=O)-で表される基を意味する。
重合体の「平均粒子径」は、重合体を水で固形分濃度1質量%に希釈したサンプルについて動的光散乱法によって得られた自己相関関数からキュムラント法解析によって算出される値である。
[MFR(メルトフローレート)]とはメルトインデクサー(テクノセブン社製)を用い、ASTM D3159に準拠し、温度220℃、297℃又は380℃、荷重49Nの条件下で、直径2mm、長さ8mmのオリフィスから10分間に流れ出す共重合体の質量(g)を測定し、10分当たりに流れ出す共重合体の質量に換算した値(g/10分)である。なお、いずれの温度で測定するかは、融点との関係で融点から30~80℃高い温度を選択する。例えば、融点が300℃では380℃で測定する、融点が255℃では297℃で測定する、融点183℃では220℃で測定する。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
重合体の「主鎖」とは、2以上の単量体の連結により形成された重合鎖をいう。
本明細書においては、式1で表される化合物を「化合物1」のようにも記す。
【0010】
<蓄電デバイス用バインダー組成物>
本発明の蓄電デバイス用バインダー組成物(以下単に「バインダー組成物」とも記す。)は、特定の含フッ素共重合体(以下「共重合体A」とも記す。)を含有する。また、本発明のバインダー組成物は、共重合体Aに加えて、液状媒体を含むことが好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、共重合体A以外の重合体、添加剤等を含んでいてもよい。
【0011】
[共重合体A]
共重合体Aは、下記単量体aに基づく単位a、及び下記単量体bに基づく単位bを有し、フッ化ビニリデン(以下「VdF」とも記す。)に基づく単位を実質的に有さず、かつ水酸基と反応可能な又は水素結合を形成可能な接着性官能基を有する。
VdFに基づく単位を実質的に有さないとは、VdFに基づく単位を有さない、又はVdFに基づく単位を有する場合でも共重合体の耐薬品性に影響を与えない程度有することを意味し、共重合体の耐薬品性に影響を与えない程度とは、例えば共重合体Aの全単量体に基づく単位に対してVdFに基づく単位が1モル%以下であることを意味する。VdFに基づく単位を有する場合、共重合体Aの全単量体に基づく単位に対してVdFに基づく単位は、0.5モル%以下であることが好ましい。
共重合体Aは、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の単量体(VdFを除く)に基づく単位を有していてもよい。
【0012】
単量体aは、テトラフルオロエチレン(以下「TFE」とも記す。)、及びクロロトリフルオロエチレンからなる群より選ばれる1種以上である。
単量体aは、耐薬品性や耐酸化性が良好であることからTFEを含むことが好ましく、TFEからなることがより好ましい。
【0013】
単量体bは、エチレン(以下「E」とも記す。)、ヘキサフルオロプロピレン(以下「HFP」とも記す。)、及びペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下「PAVE」とも記す。)からなる群より選ばれる1種以上である。
単量体bは、電極活物質や導電性材料など他の成分および集電体との密着性が良好となることからエチレンを含むことが好ましく、エチレンからなることがより好ましい。
【0014】
PAVEは、下式1で表わされる化合物1であることが好ましい。化合物1は、1種又は2種以上を用いることができる。
CF=CFORf1・・・式1
[式1において、Rf1は炭素数1~10のペルフルオロアルキル基、又は炭素数2~10のペルフルオロアルキル基の炭素原子間に酸素原子を含む基である。]
式1において、Rf1は耐薬品性に優れることから炭素数1~6のペルフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1~3のペルフルオロアルキル基であることがより好ましい。
【0015】
その他の単量体としては、後述の接着性官能基を有する単量体の他、CH=CY(CF)Z(Y、Zはそれぞれ独立にフッ素原子又は水素原子であり、nは2~10である)で表わされるモノマー(以下、当該モノマーを「FAE」と称する)等の他のフッ素含有ビニルモノマー、プロピレンなどエチレン以外のオレフィン系ビニルモノマー、PAVE以外のビニルエーテル類、ビニルエステル類、他のハロゲン含有ビニルモノマーが挙げられる。その他の単量体は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0016】
前記FAEにおいて、式中のnは2~10であり、2~8が好ましく、2~6がより好ましく、2,4,6が特に好ましい。nが2以上であるとバインダーの耐クラック特性が良好である。nが10以下であると耐薬品性に優れる。FAEは1種又は2種以上を用いることができる。
このようなFAEの好ましい具体例としては、CH=CH(CF)F、CH=CH(CF)F、CH=CH(CF)F、CH=CF(CF)H等が挙げられる。FAEとしては、CH=CH-Rf2(Rf2は炭素数2~6のペルフルオロアルキル基、以下同じ)が最も好ましい。
【0017】
共重合体Aは、単位aとしてTFEに基づく単位を有し、単位bとしてエチレンに基づく単位を有することが好ましい。
TFEに基づく単位とエチレンに基づく単位を有する共重合体Aとしては、E/TFE共重合体、E/TFE/HFP共重合体、E/TFE/CH=CH-Rf2共重合体、E/TFE/CF=CFORf1及びE/TFE/HFP/CH=CH-Rf2共重合体が好ましい。中でも、E/TFE共重合体、E/TFE/CH=CH-Rf2共重合体、E/TFE/HFP共重合体が好ましく、E/TFE共重合体、E/TFE/CH=CH-Rf2共重合体が特に好ましい。
なお、E/TFE共重合体とは、エチレン(E)に基づく単位(以下、「エチレン単位」とも記す。)とTFEに基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)とを有する共重合体を示す。他の共重合体も同様である。
【0018】
共重合体Aが単位aとしてTFEに基づく単位を有し、単位bとしてエチレンに基づく単位を有する場合の各単位の好ましい割合は下記のとおりである。
TFE単位の割合は、エチレン単位とTFE単位の合計量のうち、25~80モル%が好ましく、40~65モル%がより好ましく、45~63モル%がさらに好ましい。TFE単位の割合が25モル%以上であれば、耐薬品性に優れる。
エチレン単位の割合は、エチレン単位とTFE単位の合計量のうち、20~75モル%が好ましく、35~60モル%がより好ましく、37~55モル%がさらに好ましい。エチレン単位の割合が20モル%以上であれば電極活物質や導電性材料など他の成分および集電体との密着性が良好である。
【0019】
共重合体AがTFEに基づく単位とエチレンに基づく単位を有し、さらに、接着性官能基を有する単量体以外のその他の単量体に基づく単位を有する場合、接着性官能基を有する単量体以外のその他の単量体に基づく単位の割合は、エチレン単位とTFE単位の合計量100モル%に対して、0.1~10.0モル%が好ましく、0.2~8.0モル%がより好ましく、0.3~6.0モル%がさらに好ましく、0.4~4.0モル%が特に好ましい。
【0020】
共重合体Aにおける接着性官能基としては、カルボニル含有基、水酸基、エポキシ基、アミド基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基が好ましい。共重合体A中の接着性官能基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0021】
共重合体A中の接着性官能基は、集電体に対する電極合剤の密着性の点から、カルボニル含有基及び水酸基からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。中でもカルボニル含有基が好ましい。
カルボニル含有基としては、炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物基等が挙げられる。
中でも、酸無水物基、カルボキシ基が好ましく、酸無水物基が特に好ましい。
【0022】
炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基における炭化水素基としては、炭素数2~8のアルキレン基等が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、カルボニル基の炭素原子を含まない炭素数である。アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
【0023】
ハロホルミル基は、-C(=O)-X(ただし、Xはハロゲン原子である。)で表される。ハロホルミル基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、炭素数1~8のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましい。
【0024】
共重合体A中の接着性官能基の含有量は、共重合体Aの主鎖炭素数1×10個に対し10~60000個が好ましく、100~50000個がより好ましく、100~10000個がさらに好ましく、300~5000個が特に好ましい。接着性官能基の含有量が前記範囲内であれば、集電体に対する電極合剤の密着性がさらに優れる。
【0025】
接着性官能基の含有量は、核磁気共鳴(NMR)分析、赤外吸収スペクトル分析等の方法によって測定できる。例えば、特開2007-314720号公報に記載のように赤外吸収スペクトル分析等の方法を用いて、含フッ素共重合体を構成する全単位中の接着性官能基を有する単位の割合(モル%)を求め、この割合から、接着性官能基の含有量を算出できる。
【0026】
接着性官能基は、集電体に対する電極合剤の密着性の点から、共重合体Aの主鎖の末端基及び主鎖のペンダント基のいずれか一方又は両方として存在することが好ましい。
接着性官能基が主鎖の末端基及び主鎖のペンダント基のいずれか一方又は両方として存在する共重合体Aは、単量体の重合の際に、接着性官能基を有する単量体を共重合させる、接着性官能基をもたらす連鎖移動剤や重合開始剤を使用して単量体を重合させる、等の方法で製造できる。これらの方法を併用することもできる。
特に、接着性官能基を有する単量体を共重合させることにより、その単量体単位を有する共重合体を製造して、接着性官能基が少なくとも主鎖のペンダント基として存在する共重合体Aとすることが好ましい。
【0027】
接着性官能基を有する単量体としては、カルボニル含有基、水酸基、エポキシ基、アミド基、アミノ基、又はイソシアネート基を有する単量体が好ましく、カルボニル含有基を有する単量体がより好ましく、酸無水物基を有する環状炭化水素単量体(以下、「酸無水物単量体」とも記す。)、カルボキシ基を有する単量体がより好ましく、酸無水物単量体が特に好ましい。
【0028】
酸無水物単量体としては、無水イタコン酸(以下、「IAH」とも記す。)、無水シトラコン酸(以下、「CAH」とも記す。)、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)、無水マレイン酸等が挙げられる。
酸無水物単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
酸無水物単量体としては、IAH、CAH及びNAHからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。IAH、CAH及びNAHのいずれかを用いると、無水マレイン酸を用いた場合に必要となる特殊な重合方法(特開平11-193312号公報参照)を用いることなく、酸無水物基を有する共重合体Aを容易に製造できる。
酸無水物単量体としては、集電体に対する電極合剤の密着性がさらに優れることから、IAH、NAHが特に好ましい。
【0030】
なお、酸無水物単量体を用いた場合、酸無水物単量体における酸無水物基の一部が加水分解することによって、共重合体Aに、酸無水物単量体に対応するジカルボン酸(イタコン酸、シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、マレイン酸等)の単位が含まれる場合がある。
【0031】
カルボキシ基を有する単量体としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ウンデシレン酸等が挙げられる。
水酸基を有する単量体としてはヒドロキシアルキルビニルエーテルが挙げられる。
エポキシ基を有する単量体としてはエポキシアルキルビニルエーテルが挙げられる。
【0032】
共重合体Aが接着性官能基を有する単量体に基づく単位を有する場合、前記単位の割合は、共重合体Aの全単量体に基づく単位100モル%に対して、0.01~5.0モル%が好ましく、0.05~3.0モル%がより好ましく、0.1~2.0モル%がさらに好ましい。
接着性官能基を有する単量体に基づく単位の割合が0.01モル%以上であれば、集電体に対する電極合剤の密着性が優れる。0.05モル%以上であると密着性がより優れ、0.1モル%以上であるとさらに優れる。接着性官能基を有する単量体に基づく単位の割合が5.0モル%以下であれば、耐薬品性や耐酸化性が優れる。3.0モル%以下であると耐薬品性や耐酸化性がより優れ、2.0モル%以下であるとさらに優れる。
【0033】
接着性官能基をもたらす連鎖移動剤としては、カルボキシ基、エステル結合、水酸基等を有する連鎖移動剤が好ましい。具体的には、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
接着性官能基をもたらす重合開始剤としては、ペルオキシカーボネート、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル等の過酸化物重合開始剤が好ましい。
具体的には、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0034】
共重合体Aは、電極活物質や導電性材料など他の成分との混合性が優れるであることから、粒子状であることが好ましい。粒子状である場合の平均粒子径は、0.01~50μmであることが好ましく、0.01~20μmであることがより好ましい。
平均粒子径が0.01μm以上であることにより、電極活物質や導電性材料などを密着させることができ、バインダーとしての機能を果たす。平均粒子径が50μm以下であることにより、電極活物質や導電性材料など他の成分との混合性が優れる。
粒子状の共重合体Aは、液状媒体に分散した状態でも、粉体であってもよい。
【0035】
共重合体Aは、融点が150℃以上であることが好ましく、160~320℃であることがより好ましく、180~260℃であることがさらに好ましい。
融点が150℃以上であることにより、高温でも機能が維持される。融点が320℃以下であることにより、加工性に優れる。
【0036】
共重合体AのMFRは、0.1~200であることが好ましく、1~100であることが好ましい。MFRが0.1以上であることにより成形性に優れる。MFRが200以下であることにより電極の機械的強度が優れる。
【0037】
共重合体Aは、常法により製造できる。例えば、TFEとエチレンと酸無水物単量体とを重合することによって製造できる。
単量体の重合に際しては、ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
重合方法としては、塊状重合法、有機溶媒(フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等)を用いる溶液重合法、水性媒体と必要に応じて適な有機溶媒とを用いる懸濁重合法、水性媒体と乳化剤とを用いる乳化重合法が挙げられ、溶液重合法が好ましい。
【0038】
TFEとエチレンと酸無水物単量体とを重合する場合、酸無水物単量体の重合中の濃度は、全単量体に対して0.01~5モル%が好ましく、0.1~3モル%がより好ましく、0.1~2モル%がさらに好ましい。酸無水物単量体の濃度が前記範囲内であれば、重合速度が適度なものになる。酸無水物単量体の濃度が高すぎると、重合速度が低下する傾向がある。
酸無水物単量体が重合で消費されるにしたがって、消費された量を連続的又は断続的に重合槽内に供給し、酸無水物単量体の濃度を前記範囲内に維持することが好ましい。
【0039】
[その他の重合体]
本発明のバインダー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、共重合体A以外の重合体を含んでいてもよい。
共重合体A以外の重合体としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート等が挙げられる。
共重合体A以外の重合体としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイドがより好ましい。
【0040】
本発明のバインダー組成物が共重合体A以外の重合体を含む場合、重合体全体に占める共重合体Aの割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
共重合体Aの割合が50質量%以上であれば、本発明の効果を充分に得やすい。
また、共重合体A以外の重合体としてポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイドが使用される場合には、共重合体Aと共重合体A以外の重合体との親和性が良好であるため、共重合体Aの割合が50質量%以下でも本発明の効果が充分得られる。
【0041】
なお、共重合体A以外の重合体として、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-フッ化ビニリデン共重合体を含んでいても構わないが、含まない方が好ましい。ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-フッ化ビニリデン共重合体を含む場合は10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0042】
[添加剤]
本発明のバインダー組成物は、公知の種々の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、乳化剤、酸化チタン、酸化アルミニウム等の酸化物、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマー等が挙げられる。
【0043】
[液状媒体]
共重合体A、及び必要に応じて含有するその他の重合体及び添加剤は、液状媒体に分散又は溶解させることが好ましい。
液状媒体の種類に特に限定はないが、水性媒体、脂肪族類、芳香族炭化水素類、アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、含窒素化合物、含硫黄化合物、含フッ素化合物からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。水性媒体、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド及び1個のカルボニル基を有する炭素数6~10の脂肪族炭化水素化合物(以下「カルボニル基含有脂肪族化合物」とも記す。)からなる群より選ばれる1種以上であることがさらに好ましい。
【0044】
脂肪族、芳香族炭化水素化合物類としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレンが挙げられる。
【0045】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、フェノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールが挙げられる。
【0046】
エーテル類としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メチルモノグリシジルエーテル、エチルモノグリシジルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
【0047】
エステル類としては、シクロヘキシルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル、ジオキサン、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0048】
ケトン類としては、γ-ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、2-ヘプタノン、シクロヘプタノン、シクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトンが挙げられる。
含窒素化合物としては、ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンが挙げられる。
【0049】
含硫黄化合物としては、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
含フッ素化合物としては、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、フルオロポリエーテルが挙げられる。
【0050】
水性媒体としては、水、及び水溶性有機溶剤を含む水が挙げられる。
水溶性有機溶剤は、水と任意の割合で混和可能な有機溶剤である。水溶性有機溶剤としては、前記したアルコール(ただし、エーテルアルコールを除く。)、前記したエーテルアルコール及び非プロトン性極性溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0051】
非プロトン性極性溶剤としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン(以下、「THF」とも記す。)、アセトニトリル、アセトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
【0052】
液状媒体が水性媒体である場合の水溶性有機溶剤としては、共重合体Aと水性媒体との相溶性を向上して物品上で均一な膜をつくりやすい点から、エーテルアルコールが好ましく、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
水性媒体が水溶性有機溶剤を含む水である場合、水溶性有機溶剤の含有量は、水の100質量部に対して、1~80質量部が好ましく、5~60質量部がより好ましい。
【0053】
カルボニル基含有脂肪族化合物は、共重合体A等を分散又は溶解する温度において液体であれば、実用上は問題なく使用することができるが、室温において液体であることが好ましい。カルボニル基含有脂肪族化合物の融点は230℃以下であることが好ましい。
カルボニル基含有脂肪族化合物の分子構造は特に制限されず、例えば、炭素骨格は直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、主鎖、または側鎖を構成する炭素-炭素結合間にエーテル性酸素を有していてもよく、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0054】
カルボニル基含有脂肪族化合物の具体例としては、環状ケトン、鎖状ケトン等のケトン類、鎖状エステル、グリコール類のモノエステル等のエステル類およびカーボネート類からなる群から選ばれる1種以上が、好ましく挙げられる。これらのうちでも、本発明の組成物における上記カルボニル基含有脂肪族化合物としては環状ケトンがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
以下に、本発明に好ましく用いられる上記カルボニル基含有脂肪族化合物として上に例示した化合物のさらに具体的な例を示す。
【0056】
上記環状ケトンの具体例としては、2-プロピルシクロプロパノン、2-イソプロピルシクロプロパノン、2,2,3-トリメチルシクロプロパノン、2-エチル-3-メチルシクロプロパノン、2-ブチルシクロプロパノン、2-イソブチルシクロプロパノン、2-tert-ブチルシクロプロパノン、2-メチル-3-プロピルシクロプロパノン、2-メチル-3-イソプロピルシクロプロパノン、2-エチル-3,3-ジメチルシクロプロパノン、2,2,3,3-テトラメチルシクロプロパノン、2-ペンチルシクロプロパノン、2-イソペンチルシクロプロパノン、2-ブチル-3-メチルシクロプロパノン、2-エチル-3-プロピルシクロプロパノン、2-ヘキシルシクロプロパノン、2-メチル-3-ペンチルシクロプロパノン、2-ブチル-3-エチルシクロプロパノン、2,3-ジプロピルシクロプロパノン、2-ヘプチルシクロプロパノン、2-ヘキシル-3-メチルシクロプロパノン、2-エチル-3-ペンチルシクロプロパノン、2-ブチル-3-プロピルシクロプロパノン、2-エチルシクロブタノン、3-エチルシクロブタノン、2,2-ジメチルシクロブタノン、2,3-ジメチルシクロブタノン、3,3-ジメチルシクロブタノン、2,4-ジメチルシクロブタノン、2-プロピルシクロブタノン、3-プロピルシクロブタノン、2-イソプロピルシクロブタノン、3-イソプロピルシクロブタノン、2,2,3-トリメチルシクロブタノン、2,3,3-トリメチルシクロブタノン、2,3,4-トリメチルシクロブタノン、2,2,4-トリメチルシクロブタノン、2-ブチルシクロブタノン、2-イソブチルシクロブタノン、2-tert-ブチルシクロブタノン、3-ブチルシクロブタノン、3-イソブチルシクロブタノン、3-tert-ブチルシクロブタノン、2-ペンチルシクロブタノン、3-ペンチルシクロブタノン、2-イソペンチルシクロブタノン、3-イソペンチルシクロブタノン、2-ヘキシルシクロブタノン、3-ヘキシルシクロブタノン、2-メチルシクロペンタノン、3-メチルシクロペンタノン、2-エチルシクロペンタノン、3-エチルシクロペンタノン、2,2-ジメチルシクロペンタノン、2,3-ジメチルシクロペンタノン、3,3-ジメチルシクロペンタノン、2,5-ジメチルシクロペンタノン、2,4-ジメチルシクロペンタノン、3,4-ジメチルシクロペンタノン、2-プロピルシクロペンタノン、2-イソプロピルシクロペンタノン、3-プロピルシクロペンタノン、3-イソプロピルシクロペンタノン、2,2,5-トリメチルシクロペンタノン、2-ブチルシクロペンタノン、2-イソブチルシクロペンタノン、2-tert-ブチルシクロペンタノン、3-ブチルシクロペンタノン、3-イソブチルシクロペンタノン、3-tert-ブチルシクロペンタノン、2,2,5,5-テトラメチルシクロペンタノン、2-ペンチルシクロペンタノン、2-イソペンチルシクロペンタノン、3-ペンチルシクロペンタノン、3-イソペンチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-メチルシクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン、4-メチルシクロペンタノン、2-エチルシクロヘキサノン、3-エチルシクロヘキサノン、4-エチルシクロヘキサノン、2,2-ジメチルシクロヘキサノン、2,3-ジメチルシクロヘキサノン、2,4-ジメチルシクロヘキサノン、2,5-ジメチルシクロヘキサノン、2,6-ジメチルシクロヘキサノン、2-プロピルシクロヘキサノン、2-イソプロピルシクロヘキサノン、3-プロピルシクロヘキサノン、3-イソプロピルシクロヘキサノン、4-プロピルシクロヘキサノン、4-イソプロピルシクロヘキサノン、2,2,6-トリメチルシクロヘキサノン、2,2,4-トリメチルシクロヘキサノン、2,4,4-トリメチルシクロヘキサノン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、2,4,6-トリメチルシクロヘキサノン、2-ブチルシクロヘキサノン、2-イソブチルシクロヘキサノン、2-tert-ブチルシクロヘキサノン、3-ブチルシクロヘキサノン、3-イソブチルシクロヘキサノン、3-tert-ブチルシクロヘキサノン、4-ブチルシクロヘキサノン、4-イソブチルシクロヘキサノン、4-tert-ブチルシクロヘキサノン、2,2-ジエチルシクロヘキサノン、2,4-ジエチルシクロヘキサノン、2,6-ジエチルシクロヘキサノン、3,5-ジエチルシクロヘキサノン、2,2,6,6-テトラメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2-メチルシクロヘプタノン、3-メチルシクロヘプタノン、4-メチルシクロヘプタノン、2-エチルシクロヘプタノン、3-エチルシクロヘプタノン、4-エチルシクロヘプタノン、2,2-ジメチルシクロヘプタノン、2,7-ジメチルシクロヘプタノン、2-プロピルシクロヘプタノン、2-イソプロピルシクロヘプタノン、3-プロピルシクロヘプタノン、3-イソプロピルシクロヘプタノン、4-プロピルシクロヘプタノン、4-イソプロピルシクロヘプタノン、2,2,7-トリメチルシクロヘプタノン、シクロオクタノン、2-メチルシクロオクタノン、3-メチルシクロオクタノン、4-メチルシクロオクタノン、5-メチルシクロオクタノン、2-エチルシクロオクタノン、3-エチルシクロオクタノン、4-エチルシクロオクタノン、5-エチルシクロオクタノン、2,2-ジメチルシクロオクタノン、2,8-ジメチルシクロオクタノン、シクロノナノン、2-メチルシクロノナノン、3-メチルシクロノナノン、4-メチルシクロノナノン、5-メチルシクロノナノン、シクロデカノン、イソホロン、(-)-フェンコン((1R,4S)-1,3,3-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン)、(+)-フェンコン((1S,4R)-1,3,3-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン))等が挙げられる。
【0057】
前記鎖状ケトンの具体例としては、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、エチルイソプロピルケトン、3,3-ジメチル-2-ブタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、ジイソプロピルケトン、5-メチル-2-ヘキサノン、2-オクタノン、3-オクタノン、4-オクタノン、5-メチル-3-ヘプタノン、2-ノナノン、3-ノナノン、4-ノナノン、5-ノナノン、ジイソブチルケトン、2-デカノン、3-デカノン、4-デカノン、5-デカノン等が挙げられる。
【0058】
前記鎖状エステルの具体例としては、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、ギ酸シクロペンチル、ギ酸ヘキシル、ギ酸シクロヘキシル、ギ酸ヘプチル、ギ酸オクチル、ギ酸2-エチルヘキシル、ギ酸ノニル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸シクロペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ヘプチル、酢酸オクチル、酢酸2-エチルヘキシル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸sec-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピオン酸ペンチル、プロピオン酸イソペンチル、プロピオン酸シクロペンチル、プロピオン酸ヘキシル、プロピオン酸シクロヘキシル、プロピオン酸ヘプチル、プロピオン酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、プロピオン酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、酪酸sec-ブチル、酪酸tert-ブチル、酪酸ペンチル、酪酸イソペンチル、酪酸シクロペンチル、酪酸ヘキシル、酪酸シクロヘキシル、酪酸2,2,2-トリフルオロエチル、酪酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、酪酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、イソ酪酸イソプロピル、イソ酪酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、イソ酪酸sec-ブチル、イソ酪酸tert-ブチル、イソ酪酸ペンチル、イソ酪酸イソペンチル、イソ酪酸シクロペンチル、イソ酪酸ヘキシル、イソ酪酸シクロヘキシル、イソ酪酸2,2,2-トリフルオロエチル、イソ酪酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、イソ酪酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、吉草酸イソプロピル、吉草酸ブチル、吉草酸イソブチル、吉草酸sec-ブチル、吉草酸tert-ブチル、吉草酸ペンチル、吉草酸イソペンチル、吉草酸2,2,2-トリフルオロエチル、吉草酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、吉草酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、イソ吉草酸イソプロピル、イソ吉草酸ブチル、イソ吉草酸イソブチル、イソ吉草酸sec-ブチル、イソ吉草酸tert-ブチル、イソ吉草酸ペンチル、イソ吉草酸イソペンチル、イソ吉草酸2,2,2-トリフルオロエチル、イソ吉草酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、イソ吉草酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、ピバル酸メチル、ピバル酸エチル、ピバル酸プロピル、ピバル酸イソプロピル、ピバル酸ブチル、ピバル酸イソブチル、ピバル酸sec-ブチル、ピバル酸tert-ブチル、ピバル酸ペンチル、ピバル酸イソペンチル、ピバル酸2,2,2-トリフルオロエチル、ピバル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、ピバル酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸プロピル、ヘキサン酸イソプロピル、ヘキサン酸ブチル、ヘキサン酸イソブチル、ヘキサン酸sec-ブチル、ヘキサン酸tert-ブチル、ヘキサン酸2,2,2-トリフルオロエチル、ヘキサン酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、ヘキサン酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、ヘプタン酸メチル、ヘプタン酸エチル、ヘプタン酸プロピル、ヘプタン酸イソプロピル、ヘプタン酸2,2,2-トリフルオロエチル、へプタン酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、ヘプタン酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、シクロヘキサンカルボン酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、シクロヘキサンカルボン酸プロピル、シクロヘキサンカルボン酸イソプロピル、シクロヘキサンカルボン酸2,2,2-トリフルオロエチル、シクロヘキサンカルボン酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、シクロヘキサンカルボン酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、オクタン酸メチル、オクタン酸エチル、オクタン酸2,2,2-トリフルオロエチル、ノナン酸メチル、トリフルオロ酢酸ブチル、トリフルオロ酢酸ペンチル、トリフルオロ酢酸ヘキシル、トリフルオロ酢酸ヘプチル、トリフルオロ酢酸オクチル、ペンタフルオロプロピオン酸プロピル、ペンタフルオロプロピオン酸ブチル、ペンタフルオロプロピオン酸ペンチル、ペンタフルオロプロピオン酸ヘキシル、ペンタフルオロプロピオン酸ヘプチル、ペルフルオロブタン酸エチル、ペルフルオロブタン酸プロピル、ペルフルオロブタン酸ブチル、ペルフルオロブタン酸ペンチル、ペルフルオロブタン酸ヘキシル、ペルフルオロペンタン酸メチル、ペルフルオロペンタン酸エチル、ペルフルオロペンタン酸プロピル、ペルフルオロペンタン酸ブチル、ペルフルオロペンタン酸ペンチル、ペルフルオロヘキサン酸メチル、ペルフルオロヘキサン酸エチル、ペルフルオロヘキサン酸プロピル、ペルフルオロヘキサン酸ブチル、ペルフルオロヘプタン酸メチル、ペルフルオロヘプタン酸エチル、ペルフルオロヘプタン酸プロピル、ペルフルオロオクタン酸メチル、ペルフルオロオクタン酸エチル等が挙げられる。
【0059】
前記グリコール類のモノエステルの具体例としては、酢酸2-エトキシエチル、酢酸2-プロポキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸2-ペンチルオキシエチル、酢酸2-ヘキシルオキシエチル、1-メトキシ-2-アセトキシプロパン、1-エトキシ-2-アセトキシプロパン、1-プロポキシ-2-アセトキシプロパン、1-ブトキシ-2-アセトキシプロパン、1-ペンチルオキシ-2-アセトキシプロパン、酢酸3-メトキシブチル、酢酸3-エトキシブチル、酢酸3-プロポキシブチル、酢酸3-ブトキシブチル、酢酸3-メトキシ-3-メチルブチル、酢酸3-エトキシ-3-メチルブチル、酢酸3-プロポキシ-3-メチルブチル、酢酸4-メトキシブチル、酢酸4-エトキシブチル、酢酸4-プロポキシブチル、酢酸4-ブトキシブチル等が挙げられる。
【0060】
前記カーボネートの具体例としては、ブチルメチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ブチルプロピルカーボネート、ブチルイソプロピルカーボネート、イソブチルプロピルカーボネート、tert-ブチルプロピルカーボネート、tert-ブチルイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジtert-ブチルカーボネート、ビス(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)カーボネート、ビス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)カーボネート、ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)カーボネート、ビス(2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル)カーボネート、ビス(ペルフルオロ-tert-ブチル)カーボネート等が挙げられる。
【0061】
バインダー組成物中の共重合体Aと必要に応じて含有するその他の重合体の合計の含有量(重合体濃度)は、バインダー組成物の全量に対し、5~70質量%がより好ましく、7~60質量%がさらに好ましく、10~55質量%が特に好ましい。上記範囲の下限値以上であると、バインダー組成物を用いて電極合剤を調製したときに、電極合剤の良好な粘度が得られやすく、集電体上に厚みの高い塗工を行うことができる。上記範囲の上限値以下であると、バインダー組成物に電極活物質等を分散させて電極合剤を調製する際に、良好な分散安定性が得られやすく、電極合剤の良好な塗工性が得られやすい。
【0062】
<蓄電デバイス用電極合剤>
本発明の蓄電デバイス用電極合剤(以下、単に「電極合剤」とも記す。)は、本発明のバインダー組成物を含有するほか、電極活物質を含有する。必要に応じて導電材を含有してもよく、これら以外のその他の成分を含有してもよい。
本発明で用いられる電極活物質は特に限定されず、公知のものを適宜使用できる。
正極活物質としてはMnO、V、V13等の金属酸化物;TiS、MoS、FeS等の金属硫化物;LiCoO、LiNiO、LiMn等の、Co、Ni、Mn、Fe、Ti等の遷移金属を含むリチウム複合金属酸化物等;これらの化合物中の遷移金属元素の一部を他の金属元素で置換した化合物;等が例示される。さらに、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン等の導電性高分子材料を用いることもできる。また、これらの表面の一部または全面に、炭素材料や無機化合物を被覆させたものも用いることができる。
【0063】
負極活物質としては例えばコークス、グラファイト、メソフェーズピッチ小球体、フェノール樹脂、ポリパラフェニレン等の高分子化合物の炭化物;気相生成カーボンファイバー、炭素繊維等の炭素質材料;が挙げられる。また、リチウムと合金化可能なSi、Sn、Sb、Al、ZnおよびW等の金属も挙げられ、例えば、一酸化シリコンに代表される、一般式SiO(xは、0.5から1.5が好ましい)で表されるシリコン酸化物が挙げられる。電極活物質は、機械的改質法などにより表面に導電材を付着させたものも使用できる。
リチウムイオン二次電池用の電極合剤の場合、用いる電極活物質は、電解質中で電位をかけることにより可逆的にリチウムイオンを挿入放出できるものであればよく、無機化合物でも有機化合物でも用いることができる。
【0064】
特に、正極の製造に使用する電極合剤には導電材を含有させることが好ましい。導電材を含有させることにより、電極活物質同士の電気的接触が向上し、活物質層内の電気抵抗を下げることができ、非水系二次電池の放電レート特性を改善することができる。
導電材としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイト、気相成長カーボン繊維、およびカーボンナノチューブ等の導電性カーボンが挙げられる。
電極合剤が、導電材を含有すると、少量の導電材の添加で電気抵抗の低減効果が大きくなり好ましい。
【0065】
その他の成分としては、電極合剤において公知の成分を用いることができる。具体例としては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等の水溶性ポリマー等が挙げられる。
本発明の電極合剤中の重合体の合計(共重合体Aと、必要に応じて含有するその他の重合体の合計)の割合は、電極活物質の100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、1~8質量部が特に好ましい。
【0066】
また、電極合剤が導電材を含有する場合には、電極合剤中の導電材の割合は、電極活物質の100質量部に対して、0質量部超であり、20質量部以下が好ましく、1~10質量部がより好ましく、3~8質量部が特に好ましい。
電極合材が液状媒体を含む場合、電極合剤中の固形分濃度は、電極合剤の100質量%に対して、30~95質量%が好ましく、35~90質量%がより好ましく、40~85質量%が特に好ましい。
【0067】
<蓄電デバイス用電極>
本発明の蓄電デバイス用電極は、集電体と、前記集電体上に、本発明の蓄電デバイス用バインダーおよび電極活物質を含有する電極活物質層を有する。
集電体としては、導電性材料からなるものであれば特に限定されないが、一般的には、アルミニウム、ニッケル、ステンレススチール、銅等の金属箔、金属網状物、金属多孔体等が挙げられる。正極集電体としては、アルミニウムが好適に、負極集電体としては銅が好適に用いられる。集電体の厚さは1~100μmであることが好ましい。
【0068】
蓄電デバイス用電極の製造方法としては、例えば、本発明の電極合剤を集電体の少なくとも片面、好ましくは両面に塗布し、乾燥により電極合剤中の液状媒体を除去し、電極活物質層を形成することにより得られる。必要に応じて、乾燥後の電極活物質層をプレスして、所望の厚みに成形してもよい。
【0069】
電極合剤の固形分換算の塗布量は、1~3000g/mあることが好ましく、5~1000g/mであることがより好ましい。電極合剤の塗布量が好ましい範囲の下限値以上であることにより電池としての機能が向上する。電極合剤の塗布量が好ましい範囲の上限値以下であることにより電池サイズを小さくすることができる。
電極活物質層の厚さは、1~500μmであることが好ましく、5~300μmであることがより好ましい。電極活物質層の厚さが好ましい範囲の下限値以上であることにより電池としての機能が向上する。電極活物質層の厚さが好ましい範囲の上限値以下であることにより電池サイズを小さくすることができる。
【0070】
電極合剤を集電体に塗布する方法としては、種々の塗布方法が挙げられる。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、およびハケ塗り法等の方法が挙げられる。塗布温度は、特に制限ないが、通常は常温付近の温度が好ましい。乾燥は、種々の乾燥法を用いて行うことができ、例えば、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線等の照射による乾燥法が挙げられる。乾燥温度は、特に制限ないが、加熱式真空乾燥機等では通常室温~200℃が好ましい。プレス方法としては金型プレスやロールプレス等を用いて行うことができる。
本発明の蓄電デバイス用バインダー組成物が液状媒体を含まない乾式バインダーの場合は、電極合剤を集電体上に載せて、カレンダ処理により電極を形成すればよい。
また、電極合剤をカレンダ処理して電極フィルムを作成し、その後集電体上にラミネート加工することもできる。
【0071】
<蓄電デバイス>
本発明の蓄電デバイス用バインダー組成物、蓄電デバイス用電極合剤及び蓄電デバイス用電極を用いる蓄電デバイスは、少なくとも一対の電極と、当該一対の電極間を介在する電解質とを有する。さらに電解質が液状の場合、セパレーターを備えることが好ましい。
蓄電デバイスとしては、特に限定されないが、例えば、電池、電気化学センサー、エレクトロクロミック素子、電気化学スイッチング素子、電解コンデンサ、電気化学キャパシタが挙げられる。
【0072】
電池としては、電極と電解質を有する電池であれば特に限定されないが、例えば、アルカリ金属電池、アルカリ金属イオン電池、アルカリ土類金属イオン電池、ラジカル電池、太陽電池、燃料電池が挙げられる。
好ましい態様において、上記電池は、特にアルカリ金属電池、アルカリ金属イオン電池、またはアルカリ土類金属電池であり、例えば、リチウム電池、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウム電池、リチウム空気電池、ナトリウム硫黄電池、リチウム硫黄電池であり得、好ましくはリチウムイオン電池であり得る。上記の電池は、一次電池であっても、二次電池であってもよい。好ましくは、上記電池は、アルカリ金属イオン二次電池であり、特にリチウムイオン二次電池である。
以下、リチウムイオン二次電池について詳述する。
【0073】
<リチウムイオン二次電池>
蓄電デバイスとしてのリチウムイオン二次電池は、本発明の蓄電デバイス用電極を正極および負極の少なくとも一方の電極として備えるとともに電解質を備える。さらに電解質が液状の場合、セパレーターを備えることが好ましい。
電解液は電解質と溶媒を含む。溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、およびメチルエチルカーボネート(MEC)等のアルキルカーボネート類;γ-ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2-ジメトキシエタン、およびテトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、およびジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;が用いられる。特に高いイオン伝導性が得易く、使用温度範囲が広いため、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートが好ましい。これらは、単独、または2種以上を混合して用いることができる。
電解質としては、LiClO、LiBF、LiPF、LiAsF、CFSOLi、(CFSONLi等のリチウム塩が挙げられる。
【0074】
<固体電解質>
本開示の電池において、電解質としては上記した液体の電解質に替えて、固体電解質を用いてもよい。固体電解質としては、例えば、無機電解質、有機電解質が挙げられる。
【0075】
無機電解質としては、例えば、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質、水素化物系固体電解質が挙げられる。
酸化物系固体電解質としては、例えば、ペロブスカイト型酸化物、NASICON型酸化物、LISICON型酸化物、ガーネット型酸化物が挙げられる。
硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS-P系化合物、LiS-SiS系化合物、LiS-GeS系化合物、LiS-B系化合物、LiS-P系化合物、LiI-SiS-P、LiI-LiS-P、LiI-LiPO-P、Li10GeP12が挙げられる。
水素化物系固体電解質材料としては、例えば、LiBH、LiBH-3KI、LiBH-PI、LiBH-P、LiBH-LiNH、3LiBH-LiI、LiNH、LiAlH、Li(NHI、LiNH、LiGd(BHCl、Li(BH)(NH)、Li(NH)I、Li(BH)(NHが挙げられる。
【0076】
有機電解質としては、例えば、ポリマー系固体電解質が挙げられる。
ポリマー系固体電解質として、例えば、ポリエチレンオキサイド系の高分子化合物、ポリオルガノシロキサン鎖及びポリオキシアルキレン鎖からなる群から選ばれる1種以上を含む高分子化合物な等の有機系高分子電解質が挙げられる。
【実施例0077】
以下に本発明を、実施例を挙げて説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されない。実施例および比較例中の試験および評価は以下の方法で行った。
【0078】
<測定方法>
[融点(℃)]
走査型示差熱分析器(SII社製、DSC7200)を用いて、空気雰囲気下に300℃まで10℃/分で加熱した際の吸熱ピークから求めた。
【0079】
[粉体の平均粒径およびD90]
堀場製作所社製のレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA-920測定器)を用い、粉体を水中に分散させ、粒度分布を測定し、平均粒径(μm)およびD90(μm)を算出した。
【0080】
[疎充填嵩密度および密充填嵩密度]
粉体の疎充填嵩密度、密充填嵩密度は、国際公開第2016/017801号の[0117]、[0118]に記載の方法を用いて測定した。
【0081】
[酸無水物基の含有量(モル%)]
含フッ素重合体をプレス成形して得た厚み200μmのフィルムを用い、フーリエ変換赤外分光器(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、Nicolet iS10)により、1800~1900cm-1付近に現れる酸無水物基に由来する吸収の強度を測定し、酸無水物基の含有量(含フッ素重合体を構成する全単位中の酸無水物基を有する単位の割合)を算出した。
【0082】
[MFR(メルトフローレート)]
メルトインデクサー(テクノセブン社製)を用い、ASTM D3159に準拠し、荷重49Nの条件下で、直径2mm、長さ8mmのオリフィスから10分間に流れ出す共重合体の質量(g)を測定し、MFR(g/10分)とした。測定温度として220℃、297℃又は380℃を用いた。
【0083】
<バインダー組成物>
下記共重合体を、粉体又は分散液の状態で使用した。
・共重合体A-1:TFEとCF=CF-O-(CFFとNAHを、WO2015/182702の実施例5と同様にして重合した共重合体(融点:300℃、380℃におけるMFR25g/10分)。
・共重合体A-2:TFEとエチレンとCH=CH(CFFとIAHを、WO2015/182702の実施例2と同様にして重合した共重合体(融点:255℃、297℃におけるMFR26g/10分)。
・共重合体A-3:TFEとエチレンとHFPとCH=CH(CFFとIAHを、WO2015/182702の実施例3と同様にして重合した共重合体(融点:183℃、220℃におけるMFR11g/10分)。
【0084】
[共重合体A-1(水系分散液)]
共重合体A-1(粉体)20gに対し、ノニオン性界面活性剤(ネオス社製、フタージェント250)を1.5g、蒸留水180gの混合水溶液を徐々に添加し、撹拌機であるラボスターラー(ヤマト科学社製、型式:LT-500)を用いて60分撹拌して共重合体A-1(水系分散液)を得た。
【0085】
[共重合体A-1(NMP分散液)]
ノニオン性界面活性剤をFTX-218P(ネオス社製)に変更し、蒸留水をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に変更した以外は、共重合体A-1(水系分散液)と同様にして共重合体A-1(NMP分散液)を得た。
【0086】
[共重合体A-1(粉体)]
共重合体A-1をジェットミル(セイシン企業社製、シングルトラックジェットミル FS-4型)を用い、粉砕圧力0.5MPa、処理速度1kg/hrの条件で粉砕して共重合体A-1(粉体)とした。
得られた共重合体A-1(粉体)の平均粒径は2.58μmであり、D90は7.1μm、疎充填嵩密度は0.278g/mLであり、密充填嵩密度は0.328g/mLであった。
【0087】
[共重合体A-2(水系分散液)]
共重合体A-2(粉体)20gに対し、ノニオン性界面活性剤(ネオス社製、フタージェント250)を1.5g、蒸留水180gの混合水溶液を徐々に添加し、撹拌機であるラボスターラー(ヤマト科学社製、型式:LT-500)を用いて60分撹拌して共重合体A-2(水系分散液)を得た。
【0088】
[共重合体A-2(粉体)]
共重合体A-2を共重合体A-1と同じ条件で粉砕して共重合体A-2(粉体)とした。
得られた共重合体A-2(粉体)の平均粒径は3.54μmであり、D90は9.2μm、疎充填嵩密度は0.332g/mLであり、密充填嵩密度は0.395g/mLであった。
【0089】
[共重合体A-3(水系分散液)]
共重合体A-3(粉体)20gに対し、ノニオン性界面活性剤(ネオス社製、フタージェント250)を1.5g、蒸留水180gの混合水溶液を徐々に添加し、撹拌機であるラボスターラー(ヤマト科学社製、型式:LT-500)を用いて60分撹拌して共重合体A-3(水系分散液)を得た。
【0090】
[共重合体A-3(DIPK分散液)]
1Lの攪拌機付きガラス製耐圧反応容器に、共重合体A-3(粉体)の50gおよびジイソプロピルケトン(DIPK)の450gを入れ、150℃に加熱して1時間撹拌して共重合体A-3(粉体)を分散させた。その後、撹拌しながら室温まで冷却し、共重合体A-3(DIPK分散液)を得た。
【0091】
[共重合体A-3(粉体)]
共重合体A-3を共重合体A-1と同じ条件で粉砕して共重合体A-3(粉体)とした。
得られた共重合体A-3(粉体)の平均粒径は2.92μmであり、D90は8.2μm、疎充填嵩密度は0.313g/mLであり、密充填嵩密度は0.388g/mLであった。
【0092】
<蓄電デバイス用電極積層体と電極の作製>
種々のバインダー組成物を利用して、リチウムイオン二次電池の正極積層体と負極積層体を作製した。また、各積層体から、リチウムイオン二次電池の正極と負極を作製した。
【0093】
下記において、正極積層体1-1~正極積層体1-8は、上記共重合体A-1~共重合体A-3を利用したバインダー組成物を使用して作製した蓄電デバイス用電極積層体であり、正極積層体1-X、正極積層体1-Y、正極積層体1-Zは比較例に係る蓄電デバイス用電極積層体である。
また、各積層体から得られた正極1-1~正極1-8は実施例に係る蓄電デバイス用電極であり、正極1-X、正極1-Y、正極1-Zは比較例に係る蓄電デバイス用電極である。
【0094】
また、負極積層体2-1~負極積層体2-4は、上記共重合体A-1~共重合体A-3を利用したバインダー組成物を使用して作製した蓄電デバイス用電極積層体であり、負極積層体2-X、負極積層体2-Y、負極積層体2-Zは比較例に係る蓄電デバイス用電極積層体である。
また、各積層体から得られた負極2-1~負極2-4は実施例に係る蓄電デバイス用電極であり、負極2-X、負極2-Y、負極2-Zは比較例に係る蓄電デバイス用電極である。
【0095】
[正極積層体1-1、正極1-1]
正極活物質としてLiNi1/3Mn1/3Co1/3、導電材としてカーボンブラック、バインダー組成物として共重合体A-1(水系分散液)を用い、活物質、導電材およびバインダー組成物の固形分比が92/3/5(質量%比)になるよう混合した正極合剤スラリー(蓄電デバイス用電極合剤)を準備した。
【0096】
厚さ20μmのアルミ箔集電体上に、得られた正極合剤スラリーを固形分換算の塗布量が288g/mとなるように均一に塗布し、乾燥した後、プレス機により電極物質層の厚さがを60μmとなるように圧縮成形して、正極積層体1-1とした。正極積層体1-1を打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の正極1-1を作製した。
【0097】
[正極積層体1-2、正極1-2]
バインダー組成物として共重合体A-1(NMP分散液)を用いた他は、正極積層体1-1と同様にして正極積層体1-2を得た。また、正極積層体1-2を打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の正極1-2を作製した。
【0098】
[正極積層体1-3、正極1-3]
正極活物質としてLiNi1/3Mn1/3Co1/3、導電材としてカーボンブラック、バインダー組成物として共重合体A-1(粉体)を用い、活物質、導電材および共重合体A-1(粉体)の固形分比が92/3/5(質量%比)になるよう混合した正極合剤(蓄電デバイス用電極合剤)を準備した。
【0099】
得られた正極合剤をカレンダ処理することで、厚さ20μmの正極フィルムを作成した。この正極フィルムを厚さ20μmのアルミ箔集電体上にラミネート加工し、正極積層体1-3とした。正極積層体1-3を打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の正極1-3を作製した。
【0100】
[正極積層体1-4、正極1-4]
バインダー組成物として共重合体A-2(水系分散液)を用いた他は、正極積層体1-1と同様にして正極積層体1-4を得た。また、正極積層体1-4を打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の正極1-4を作製した。
【0101】
[正極積層体1-5、正極1-5]
バインダー組成物として共重合体A-2(粉体)を用いた他は、正極積層体1-3と同様にして正極積層体1-5を得た。また、正極積層体1-5を打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の正極1-5を作製した。
【0102】
[正極積層体1-6、正極1-6]
バインダー組成物として共重合体A-3(水系分散液)を用いた他は正極積層体1-1と同様にして正極積層体1-6を得た。また、正極積層体1-6を打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の正極1-6を作製した。
【0103】
[正極積層体1-7、正極1-7]
バインダー組成物として共重合体A-3(DIPK分散液)を用いた他は、正極積層体1-1と同様にして正極積層体1-7を得た。また、正極積層体1-7を打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の正極1-7を作製した。
【0104】
[正極積層体1-8、正極1-8]
バインダー組成物として共重合体A-3(粉体)を用いた他は、正極積層体1-3と同様にして正極積層体1-8を得た。また、正極積層体1-8を打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の正極1-8を作製した。
【0105】
[正極積層体1-X、正極1-X]
バインダー組成物としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)の水系分散液(Solvay社製ソレフXPH-882、PVdFの濃度25~35質量%)を蒸留水で薄めて固形分濃度10質量%としたPVdF水系分散液を用いた他は、正極積層体1-1と同様にして正極積層体1-Xを得た。また、正極積層体1-Xを打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の正極1-Xを作製した。
【0106】
[正極積層体1-Y、正極1-Y]
バインダー組成物としてポリフッ化ビニリデン(PVdF、クレハ社製KFポリマーW#1100)をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解して固形分濃度10質量%とした溶液を用いた他は、正極積層体1-1と同様にして正極積層体1-Yを得た。また、正極積層体1-Yを打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の正極1-Yを作製した。
【0107】
[正極積層体1-Z、正極1-Z]
バインダー組成物としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)の粉体(クレハ社製KFポリマーW#1100)を用いた他は、正極積層体1-3と同様にして正極積層体1-Zを得た。また、正極積層体1-Zを打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の正極1-Zを作製した。
【0108】
[負極積層体2-1、負極2-1]
負極活物質として人造黒鉛粉末およびアモルファスシリコン(SiO)、増粘剤としてカルボキシルメチルセルロースナトリウムの水性分散液(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、バインダー組成物として共重合体A-1(水系分散液)を用い、活物質、増粘剤および結着剤の固形分比が93/4.6/1.2/1.2(質量%比)にて混合して負極合剤スラリー(蓄電デバイス用電極合剤)を準備した。
【0109】
厚さ20μmの銅箔に得られた負極合剤スラリー固形分換算の塗布量が132g/mとなるように均一に塗布して25℃で乾燥した後、プレス機により電極物質層の厚さがを60μmとなるように圧縮成形して、負極積層体2-1とした。負極積層体2-1を打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の負極2-1を作製した。
【0110】
[負極積層体2-2、負極2-2]
バインダー組成物として共重合体A-2(水系分散液)を用いた他は、負極積層体2-1と同様にして負極積層体2-2を得た。また、負極積層体2-2を打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の負極2-2を作製した。
【0111】
[負極積層体2-3、負極2-3]
バインダー組成物として共重合体A-3(水系分散液)を用いた他は、負極積層体2-1と同様にして負極積層体2-3を得た。また、負極積層体2-3を打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の負極2-3を作製した。
【0112】
[負極積層体2-4、負極2-4]
負極活物質として人造黒鉛粉末およびアモルファスシリコン(SiO)、バインダー組成物として共重合体A-3(粉体)を用い、活物質およびバインダー組成物の固形分比が93/4.6/2.4(質量%比)になるように混合した負極合剤(蓄電デバイス用電極合剤)を準備した。
【0113】
得られた負極合剤をカレンダ処理することで、負極フィルムを作成した。この負極フィルムを厚さ20μmの銅箔集電体上にラミネート加工し、負極積層体2-4とした。負極積層体2-4を打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の負極2-4を作製した。
【0114】
[負極積層体2-X、負極2-X]
バインダー組成物としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)の水系分散液(Solvay社製ソレフXPH-882、PVdFの濃度25~35質量%)を蒸留水で薄めて固形分濃度10質量%としたPVdF水系分散液を用いた他は、負極積層体2-1と同様にして負極積層体2-Xを得た。また、負極積層体2-Xを打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の負極2-Xを作製した。
【0115】
[負極積層体2-Y、負極2-Y]
バインダー組成物としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)の粉体(クレハ社製KFポリマーW#1100)を用いた他は、負極積層体2-4と同様にして負極積層体2-Yを得た。また、負極積層体2-Yを打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の負極2-Yを作製した。
【0116】
[負極積層体2-Z、負極2-Z]
バインダー組成物としてスチレン-ブタジエンゴム(SBR)の水性分散液(SBRの濃度50質量%)を用いた他は、負極積層体2-1と同様にして負極積層体2-Zを得た。また、負極積層体2-Zを打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の負極2-Zを作製した。
【0117】
<蓄電デバイス用電極積層体の密着性評価>
上記各正極積層体及び負極積層体の各々を、幅2cm×長さ10cmの短冊状に切り、電極合剤の塗膜面を上にして固定した。電極合剤の塗膜面にセロハンテープを貼り付け、テープを10mm/minの速度で90℃方向に剥離したときの強度(N/cm)を5回測定し、その平均値を剥離強度とした。この値が大きいほどバインダー組成物による密着性(結着性)に優れている。すなわち、バインダー組成物により結着されている電極活物質間の密着性および電極活物質と集電体との密着性に優れている。
結果を表1~4に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
【表4】
【0122】
表1~4に示すように、正極積層体1-1~正極積層体1-8及び負極積層体2-1~負極積層体2-4は、いずれも良好な密着性を示した。
これに対して、共重合体Aではない重合体を用いた正極積層体1-X、正極積層体1-Y、正極積層体1-Z、及び負極積層体2-X、負正極積層体2-Yは、充分な密着性が得られなかった。
【0123】
<電解液の調製>
高誘電率溶媒であるエチレンカーボネートと低粘度溶媒であるエチルメチルカーボネートとの混合溶媒(30:70体積比)にLiPFを1.0モル/リットルの濃度となるように添加して、電解液を得た。
【0124】
<リチウムイオン二次電池の作製>
表5、6に示す正極および負極を、厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルム(セパレータ)を介して対向させパウチ内に収容した。このパウチ内に、上記で得た電解液を注入し、電解液がセパレータ等に充分に浸透した後、封止し予備充電、エージングを行い、コイン型のリチウムイオン二次電池を作製した。なお、例1~13が実施例、例14、15が比較例である。
【0125】
<リチウムイオン二次電池の充放電サイクル特性評価>
製造したリチウムイオン二次電池について、25℃において、0.2Cに相当する定電流で4.3V(電圧はリチウムに対する電圧を表す)まで充電し、さらに充電上限電圧において電流値が0.02Cになるまで充電を行い、しかる後に0.2Cに相当する定電流で3Vまで放電するサイクルを行った。1サイクル目放電時の放電容量に対する、100サイクル目の放電容量の容量保持率(単位:%)を求め、電池の充放電特性の指標とした。容量保持率の値が高いほど優れる。
なお、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、0.5Cとはその1/2の電流値を表す。
結果を表5、6に示す。
【0126】
<リチウムイオン二次電池の放電レート特性評価>
製造したリチウムイオン二次電池を使用し、25℃において、0.2Cに相当する定電流で4.3V(電圧はリチウムに対する電圧を表す)まで充電し、さらに充電上限電圧において電流値が0.02Cになるまで充電を行った。次いで、0.2Cに相当する定電流で3Vまで放電後、上記と同様に充電を行い、3Cに相当する定電流で3Vまで放電することにより、放電レート特性の評価を行った。0.2C放電後の放電容量(0.2C放電容量)を100%としたときの、3C放電後の放電容量(3C放電容量)の維持率を下式に基づいて算出し、初期の放電容量比とした。初期の放電容量比が高いことは、電極内の抵抗が小さく優れていることを意味する。
放電容量比(%)=(3C放電容量/0.2C放電容量)×100
結果を表5、6に示す。
【0127】
【表5】
【0128】
【表6】
【0129】
表5、6に示すように、例1~13のリチウムイオン二次電池は、充放電サイクル特性と放電レート特性が共に良好であった。