(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069797
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】ジョイント機能付き中継コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 31/08 20060101AFI20240515BHJP
H01R 31/06 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
H01R31/08 A
H01R31/08 M
H01R31/06 A
H01R31/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180006
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 康也
(57)【要約】
【課題】 バスバー部材等を介さずに端子同士を直接接続することが可能であるとともに、簡易な構造で任意の端子同士を導通させることが可能なジョイント機能付き中継コネクタを提供する。
【解決手段】第2ハウジング3bは、第1ハウジング3aと接続可能である。導通部材7は、金属製であり隣り合う端子付き電線の端子同士を導通させる部材である。導通部材7は、内壁部材5に取り付けられて固定される。導通部材7が取り付けられた内壁部材5は、複数の第1端子付き電線の併設方向(すなわち、複数の端子付き電線収容部9aの併設方向)に沿って、第1ハウジング3aに挿入される。同一の第1ハウジング3a内において、少なくとも一部の導通部材7は、複数の端子付き電線収容部9aにまたがるように配置され、所定の隣り合う端子付き電線同士が、導通部材7を介して導通可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端子付き電線同士を接続することが可能なジョイント機能付き中継コネクタであって、
複数の第1端子付き電線を装着することが可能な第1ハウジングと、
複数の第2端子付き電線を装着することが可能であり、前記第1ハウジングと接続可能な第2ハウジングと、
複数の前記第1端子付き電線の併設方向に沿って、前記第1ハウジングに挿入される内壁部材と、
前記内壁部材に固定される導通部材と、
を具備し、
少なくとも一部の前記導通部材は、複数の前記第1端子付き電線の収容部にまたがるように配置され、所定の隣り合う前記第1端子付き電線同士が、前記導通部材を介して導通可能であり、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを接続することで、互いに対向する前記第1端子付き電線と前記第2端子付き電線の端子同士を直接接続可能であることを特徴とするジョイント機能付き中継コネクタ。
【請求項2】
前記第1端子付き電線は雄端子を有し、
前記導通部材には、前記雄端子を挿入可能な舌片を有する孔が形成され、
前記雄端子を前記孔に挿入することで、前記導通部材の前記舌片と前記雄端子とが接触して導通させることが可能であることを特徴とする請求項1記載のジョイント機能付き中継コネクタ。
【請求項3】
複数の前記第1ハウジング及び複数の前記第2ハウジングは、それぞれ積層して連結可能であることを特徴とする請求項1記載のジョイント機能付き中継コネクタ。
【請求項4】
少なくとも一部の前記導通部材は、前記第1ハウジングの積層方向に突出する突出部を有し、
前記第1ハウジングを積層させて連結することで、少なくとも一部の積層方向に隣り合う前記導通部材同士を接触させて導通させることが可能であることを特徴とする請求項3記載のジョイント機能付き中継コネクタ。
【請求項5】
前記第2ハウジングは、積層される前記第2ハウジング同士を固定する固定部と、前記固定部の固定を解除する固定解除部を有し、
互いに積層されて固定された状態で、前記第1ハウジングへ前記第2ハウジングを押し込んで接続する際に、
接続初期の第1状態では、前記固定部が固定状態を維持して、積層された前記第2ハウジングを一括して前記第1ハウジングへ押し込むことが可能であり、
さらに前記第2ハウジングを前記第1ハウジングへ押し込んだ第2状態では、前記第1ハウジングの一部が前記固定解除部と接触して動作させ、前記固定部の固定が解除され、個々の前記第2ハウジングを別個に前記第1ハウジングへ押し込むことが可能であることを特徴とする請求項3記載のジョイント機能付き中継コネクタ。
【請求項6】
前記第2ハウジングは、積層される前記第2ハウジング同士を固定する固定部を有し、
前記第1ハウジングは、前記固定部の固定を解除する固定解除部を有し、
互いに積層されて固定された状態で、前記第1ハウジングへ前記第2ハウジングを押し込んで接続する際に、
接続初期の第1状態では、前記固定部が固定状態を維持して、積層された前記第2ハウジングを一括して前記第1ハウジングへ押し込むことが可能であり、
さらに前記第2ハウジングを前記第1ハウジングへ押し込んだ第2状態では、前記固定解除部が前記固定部に接触して固定が解除され、個々の前記第2ハウジングを別個に前記第1ハウジングへ押し込むことが可能であることを特徴とする請求項3記載のジョイント機能付き中継コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等に用いられるワイヤハーネス同士を接続するとともに、所望の隣り合う端子同士を接続することが可能なジョイント機能付き中継コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、OA機器、家電製品等の分野では、電力線や信号線として、端子付き電線が使用されている。特に、自動車分野においては、車両の高性能化、高機能化が急速に進められており、車載される各種電気機器や制御機器が増加している。したがって、これに伴い、使用される端子付き電線も増加する傾向にあり、複数の端子付き電線が束ねられたワイヤハーネスが使用される。
【0003】
ここで、機器のグループごとにワイヤハーネスをサブ分けする場合がある。このように、一つのワイヤハーネスを、複数のサブに分けることで効率的に製造することができる。また、コネクタ・端子・電線の数量や種類数が限定され、製造設備の適用条件にも合致しやすくなる。
【0004】
この場合、従来のコネクタでは、ワイヤハーネスのASSY工程において手作業による後嵌め作業が必要となり、小極数のコネクタを多数使用することになる。例えば、サブを跨る回路がある場合には、後嵌めでの対応(サブ同士を結合する後工程での手作業)が必要な場合があり、後嵌めが多ければ加工工数が嵩み、誤挿入のリスクも増大する。一方、コネクタを分割又は回路を分割するなどの対応をとれば、加工費・部品費の増加にもつながり、車両組付ラインでの嵌合作業性も悪化する。
【0005】
このような、サブ分けによる作業の効率化のため、レバー式分割コネクタ、ボルト締結コネクタなどが提案されている。さらに、ワイヤハーネス同士を接続する方法としては、両差しのジョイントを用いる方法も提案されている。
【0006】
しかし、レバー式分割コネクタは3分割程度までであるため、さらなる多サブに対応する事は難しい。また、オス側は分割構造になっていないため、サブ分けに寄与せず、超多極になるため、むしろ製造阻害になり得る。なお、一部でオス側も3分割になるレバー式分割コネクタもあるが、オスタブを保護する壁部が無いため、製造過程で端子損傷のリスクがある。また、ボルト締結コネクタもオス側は一体であるため、コネクタが大型(ボルト部のスペース大)であり、また車両組付ラインでの作業性も悪いという問題がある。
【0007】
また、両差しのジョイントでも、各ワイヤハーネスのコネクタは分割タイプではないため、サブ分け(完結率向上)には寄与しない。また、ワイヤハーネス同士はバスバー部材などの別部材を介して接続されるため、部品点数が多くなるとともに、端子同士を直接接続されないため、電気的な接続の信頼性の低下が懸念される。
【0008】
一方、プリント回路基板からなる雄端子ASSYにおいて、マトリックス状に配置された所定の雄端子同士を導通させてサブハーネスの接続を可能としたジョイントコネクタが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1のような構造では、雄端子ASSYにプリント回路基板を用いるため、製造性及びコストに課題があるとともに、あらゆる設計に対して流動的に対応することが困難である。例えば、回路基板はあらかじめ設定されたサブ分けに対して設計されるため、複数のバリエーションに対応することができず、コネクタの追加等にも対応することができない。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、バスバー部材等を介さずに端子同士を直接接続することが可能であるとともに、簡易な構造で任意の端子同士を導通させることが可能なジョイント機能付き中継コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達するために本発明は、複数の端子付き電線同士を接続することが可能なジョイント機能付き中継コネクタであって、複数の第1端子付き電線を装着することが可能な第1ハウジングと、複数の第2端子付き電線を装着することが可能であり、前記第1ハウジングと接続可能な第2ハウジングと、複数の前記第1端子付き電線の併設方向に沿って、前記第1ハウジングに挿入される内壁部材と、前記内壁部材に固定される導通部材と、を具備し、少なくとも一部の前記導通部材は、複数の前記第1端子付き電線の収容部にまたがるように配置され、所定の隣り合う前記第1端子付き電線同士が、前記導通部材を介して導通可能であり、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを接続することで、互いに対向する前記第1端子付き電線と前記第2端子付き電線の端子同士を直接接続可能であることを特徴とするジョイント機能付き中継コネクタである。
【0013】
前記第1端子付き電線は雄端子を有し、前記導通部材には、前記雄端子を挿入可能な舌片を有する孔が形成され、前記雄端子を前記孔に挿入することで、前記導通部材の前記舌片と前記雄端子とが接触して導通させることが可能であってもよい。
【0014】
複数の前記第1ハウジング及び複数の前記第2ハウジングは、それぞれ積層して連結可能であることが望ましい。
【0015】
少なくとも一部の前記導通部材は、前記第1ハウジングの積層方向に突出する突出部を有し、前記第1ハウジングを積層させて連結することで、少なくとも一部の積層方向に隣り合う前記導通部材同士を接触させて導通させることが可能であることが望ましい。
【0016】
前記第2ハウジングは、積層される前記第2ハウジング同士を固定する固定部と、前記固定部の固定を解除する固定解除部を有し、互いに積層されて固定された状態で、前記第1ハウジングへ前記第2ハウジングを押し込んで接続する際に、接続初期の第1状態では、前記固定部が固定状態を維持して、積層された前記第2ハウジングを一括して前記第1ハウジングへ押し込むことが可能であり、さらに前記第2ハウジングを前記第1ハウジングへ押し込んだ第2状態では、前記第1ハウジングの一部が前記固定解除部と接触して動作させ、前記固定部の固定が解除され、個々の前記第2ハウジングを別個に前記第1ハウジングへ押し込むことが可能であってもよい。
【0017】
前記第2ハウジングは、積層される前記第2ハウジング同士を固定する固定部を有し、前記第1ハウジングは、前記固定部の固定を解除する固定解除部を有し、互いに積層されて固定された状態で、前記第1ハウジングへ前記第2ハウジングを押し込んで接続する際に、接続初期の第1状態では、前記固定部が固定状態を維持して、積層された前記第2ハウジングを一括して前記第1ハウジングへ押し込むことが可能であり、さらに前記第2ハウジングを前記第1ハウジングへ押し込んだ第2状態では、前記固定解除部が前記固定部に接触して固定が解除され、個々の前記第2ハウジングを別個に前記第1ハウジングへ押し込むことが可能であってもよい。
【0018】
本発明によれば、導通部材が固定される内壁部材を用い、内壁部材を第1ハウジングに挿入することで、任意の隣り合う端子同士を導通させることができる。このため、取付ける導通部材を変えることで、容易に種々のサブ分けにも対応することができる。このため、後嵌め作業を低減することができる。また、雄端子(又は雌端子)が内壁部材(導通部材)を貫通するため、雄端子と雌端子とをバスバー部材等を介さずに直接接続することができる。また、導通部材の配置を適切にすることで、ジョイント回路とスルー回路(ジョイントのないワイヤハーネス同士の接続)を、同一のコネクタで混在させることができ、設計の自由度も高い。
【0019】
また、導通部材の孔に舌片を形成することで、孔に挿入した雄端子と導通部材とをより確実に導通させることができる。
【0020】
また、第1ハウジング及び第2ハウジングをそれぞれ積層させて連結させることで接続されるワイヤハーネスの本数に応じて積層数を任意に変えて対応することができる。
【0021】
この際、導通部材に、積層方向に突出する突出部を形成することで、積層させた第1ハウジングの積層方向に隣り合うそれぞれの導通部材同士を導通させることができる。このため、導通部材によって、同一の第1ハウジング内で隣り合う任意の端子のみではなく、積層方向の任意の端子も導通させることが可能となる。
【0022】
また、第2ハウジングを積層させた状態で固定する固定部を設けることで、第1ハウジングと第2ハウジングとを積層連結させた状態で一括して接続作業を行うことができる。この際、第2ハウジングを第1ハウジングにある程度押し込むと、第2ハウジングに配置された固定解除部が固定部に接触して固定を解除することができる。このため、コネクタ接続初期では、複数のハウジングを積層させて一括して接続作業が可能であり、最後に端子同士を接続する際には、個々のハウジングを個別に接続するため、接続時の挿入抵抗を低減することができる。
【0023】
なお、固定解除部を第1ハウジングの先端部に設けてもよく、この場合でも、第1ハウジングと第2ハウジングとを接続する際に、固定解除部を固定部に接触させて固定を解除することができる。このため、コネクタ接続初期では、複数のハウジングを積層させて一括して接続作業が可能であり、最後に端子同士を接続する際には、個々のハウジングを個別に接続するため、接続時の挿入抵抗を低減することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、バスバー部材等を介さずに端子同士を直接接続することが可能であるとともに、簡易な構造で任意の端子同士を導通させることが可能なジョイント機能付き中継コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ジョイント機能付き中継コネクタ1の分解斜視図。
【
図2】複数のジョイント機能付き中継コネクタ1を積層させた状態の分解斜視図。
【
図3】(a)は、第1ハウジング3a、第2ハウジング3bをそれぞれ積層させた状態の組立斜視図、(b)は、第1ハウジング3aと第2ハウジング3bとを接続した状態を示す斜視図。
【
図4】(a)第2ハウジング3bの背面図、(b)は、(a)のA-A線断面図。
【
図6】(a)は導通部材7と内壁部材5との分解図、(b)は導通部材7を内壁部材5に取り付けた状態を示す図、(c)は、内壁部材5が積層された状態を示す図。
【
図7】(a)~(c)は、第1ハウジングへ端子付き電線33aを取り付ける工程を示す図。
【
図8】(a)は、他の導通部材7aを示す図、(b)は、(a)のB-B線断面図、(c)は、導通部材7aに雄端子35を挿入する工程を示す図。
【
図9】(a)は、第1ハウジング3aと第2ハウジング3bとを接続する工程を示す図、(b)は、第2ハウジング3bの固定部材21近傍の拡大図であって、(a)のC部拡大図。
【
図10】(a)は、接続初期の第1状態から、第1ハウジング3aに第2ハウジング3bが押し込まれた第2状態を示す図であり、(b)は、第2ハウジング3bの固定部材21近傍の拡大図。
【
図11】第2ハウジング3bを個別に第1ハウジング3aに押し込んで、雄端子35と雌端子37とを接続した状態を示す図。
【
図12】(a)、(b)は、第1ハウジング3aと第2ハウジング3bとを接続する他の工程を示す図。
【
図13】(a)~(c)は、固定解除部39aによる固定部材21の固定の解除工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、ジョイント機能付き中継コネクタ1の分解斜視図である。ジョイント機能付き中継コネクタ1は、主に、複数の第1端子付き電線を装着することが可能な第1ハウジング3aと、複数の第2端子付き電線を装着することが可能な第2ハウジング3bと、内壁部材5、導通部材7等から構成される。第2ハウジング3bは、第1ハウジング3aと接続可能であり、ジョイント機能付き中継コネクタ1は、複数の第1端子付き電線と複数の第2端子付き電線を一括して接続するための部材である。なお、以下の図において、特に示されない限り、端子付き電線の図示を省略する。
【0027】
導通部材7は、金属製であり隣り合う端子付き電線の端子同士を導通させる(いわゆるジョイント機能を発揮する)部材である。導通部材7は、内壁部材5に取り付けられて固定される。なお、導通部材7及び内壁部材5の詳細は後述する。
【0028】
第1ハウジング3aには、複数の端子付き電線がそれぞれ収容される複数の端子付き電線収容部9aが設けられる。第1ハウジング3aの上面には、内壁部材5を挿入可能な内壁部材挿入部11が設けられる。すなわち、導通部材7が取り付けられた内壁部材5は、複数の第1端子付き電線の併設方向(すなわち、複数の端子付き電線収容部9aの併設方向)に沿って、第1ハウジング3aに挿入される。なお、第1ハウジング3aの下部には、後述する導通部材7の突出部が突出可能な孔(図示せず)が形成される。
【0029】
第1ハウジング3aの上面近傍には、連結部13aが複数個所に配置され、第1ハウジング3aの下面近傍には、連結部13bが複数個所に配置される。連結部13aと連結部13bは平面視で対応する位置に配置され、互いに係合可能である。このため、複数の第1ハウジング3aを積層させて連結可能である。すなわち、複数の第1ハウジング3a同士を積層させて連結することで、積層された第1ハウジング3a同士は、積層方向及び、積層方向に垂直な二方向(複数の端子付き電線収容部9aの併設方向及び、端子付き電線の挿入方向)に対して固定される。
【0030】
また、同様に、第2ハウジング3bも積層して連結することが可能である。なお、第2ハウジング3bの連結方法については詳細を後述する。
【0031】
第1ハウジング3aには、第2ハウジング3bを挿入して接続可能である。この際、第1ハウジング3aの側面であって、第2ハウジング3bの挿入部には固定部15aが配置され、第2ハウジング3bの先端側(第1ハウジング3aとの対向方向)近傍の側面には、固定部15bが配置される。固定部15bは、例えば弾性変形可能な係止爪であり、固定部15aは孔である。第2ハウジング3bを第1ハウジング3aに完全に挿入すると、固定部15bの爪が固定部15aの孔に係合して接続状態が固定される。
【0032】
次に、ジョイント機能付き中継コネクタ1同士を積層させて接続する方法について説明する。
図2は、複数のジョイント機能付き中継コネクタ1を積層させた状態の分解斜視図、
図3(a)は、第1ハウジング3a、第2ハウジング3bをそれぞれ積層させて連結した状態を示す斜視図、
図3(b)は、第1ハウジング3aと第2ハウジング3bとを接続した状態を示す図である。なお、図示した状態ではジョイント機能付き中継コネクタ1を3層積層する状態を示すが、2層以上であれば任意の層数で積層可能である。
【0033】
前述したように、第1ハウジング3a、第2ハウジング3bはともに積層させて連結することが可能である。第1ハウジング3aと第2ハウジング3bとは、積層させた状態で接続作業を行うことができる。ここで、第2ハウジング3bについては、第1ハウジング3aと同様の連結方法でもよいが、本実施形態では第1ハウジング3aとは異なる連結固定方法について説明する。
【0034】
図4(a)は、第2ハウジング3bの背面側から見た図である。第2ハウジング3bの上面には、連結凸条17aが配置される。連結凸条17aは、基部から上方に離れるにつれて拡幅するような形状である。また、連結凸条17aに対応する第2ハウジング3bの下面には、連結凸条17aに対応する形状の連結溝17bが形成される。
【0035】
連結凸条17aは連結溝17bに対してスライド挿入可能である。上下に配置された複数の第2ハウジング3bの連結凸条17aと連結溝17bとを連結することで、積層された第2ハウジング3b同士を連結することができる。この際、連結凸条17aと連結溝17bによって、第2ハウジング3bの積層方向(
図4(a)の上下方向)と、端子付き電線収容部9bの併設方向(
図4(a)の左右方向)の位置決めがなされる。一方、第1ハウジング3aとの挿抜方向(
図4(a)の紙面に垂直な方向)にはスライド動作が可能である。
【0036】
図4(b)は、
図4(a)のA-A線断面図である。第2ハウジング3bの下方には、固定部材21が配置される。固定部材21は、例えばばね性を有する板状部材を屈曲して形成され、下方に向けて突出する固定凸部19bが形成される。一方、第2ハウジング3bの上面には固定孔19aが形成される。
【0037】
前述したように第2ハウジング3bをスライドして連結させると、上方の第2ハウジング3bの固定部材21の固定凸部19bが、下方の第2ハウジング3bの上面と接触して固定部材21が弾性変形し、固定凸部19bが上方に押し上げられる。すなわち、固定凸部19bは、第2ハウジング3bの下方に突出せず、第2ハウジング3b同士のスライド動作の妨げとならない。
【0038】
この状態でさらに第2ハウジング3bをスライドさせ、固定凸部19bが固定孔19aの位置まで来ると、固定部材21の変形が復元して、固定凸部19bが固定孔19aに嵌まりこむ。このため、第1ハウジング3aとの挿抜方向(
図4(b)の左右方向)に対しても、第2ハウジング3b同士が固定される。すなわち、積層された第2ハウジング3b同士に対して、いずれの方向にも動きを規制して固定することができる。
【0039】
次に、導通部材7について詳細に説明する。
図5(a)は、導通部材7を示す図である。導通部材7は、例えば、二つの導通部27が連結された形態である。導通部27の連結方向は、内壁部材5の長手方向(端子付き電線収容部9aの併設方向)に対応する。したがって、導通部27は、同一の第1ハウジング3a内で隣り合う端子付き電線の端子同士を導通させる部位である。すなわち、同一の第1ハウジング3a内において、少なくとも一部の導通部材7は、複数の端子付き電線収容部9aにまたがるように配置され、所定の隣り合う端子付き電線同士が、導通部材7を介して導通可能である。
【0040】
それぞれの導通部27には孔23が形成される。孔23は、端子が貫通する部位である。また、図示した例では、一方の導通部27の下方に突出部25aが形成される。
【0041】
また、
図5(b)は、他の導通部材7を示す図である。
図5(b)に示す例では、導通部27は一つであるが、導通部27の上方に突出部25bが設けられ、導通部27の下方に突出部25aが形成される。このように、導通部27は、必ずしも複数併設されなくてもよい。
【0042】
また、
図5(c)は、さらに他の導通部材7を示す図である。
図5(c)に示すように、導通部27は3つ以上であってもよい。また、一部の導通部27の上方には突出部25bが設けられる。このように、導通部27の連結数は一つであってもよく複数であってもよい。また、必要に応じて、少なくとも一部の導通部27に突出部25a、25bを設けてもよい。突出部25a、25bは、第1ハウジング3aの積層方向に対して、第1ハウジング3aの上下に突出する部位である。
【0043】
図6(a)、
図6(b)は、導通部材7を内壁部材5に取り付ける状態を示す図である。内壁部材5には、内壁部材5を第1ハウジング3aに取り付けた際に、個々の端子付き電線収容部9aに対応した部位に孔31が形成される。また、内壁部材5は凹部29が設けられる。凹部29は、それぞれの孔31の周囲に導通部27が嵌まるような形状で形成されるとともに、それぞれの孔31に対して上下左右に連続するように形成される。このため、
図6(b)に示すように、任意の形状の導通部材7を内壁部材5に取り付けることができる。
【0044】
図6(c)は、第1ハウジング3aを積層させて連結した際における内壁部材5の積層状態を示す図である。前述したように、複数の導通部27を有する導通部材7の場合には、隣り合う端子同士を導通させることができる。一方、第1ハウジング3aの下方には、突出部25aが突出可能な孔が形成されるため、突出部25aは、第1ハウジング3aの下方に突出して、下方に積層される他の第1ハウジング3a内に挿入される。同様に、第1ハウジング3aの上方には、内壁部材挿入部11が形成されるため、突出部25bは、第1ハウジング3aの上方に突出して、上方に積層される他の第1ハウジング3a内に挿入される。
【0045】
下方に突出した突出部25aと上方に突出した突出部25bとは、積層方向の他の第1ハウジング3aにまたがるようにして互いに挿入され、上方の導通部材7の突出部25aと、下方の導通部材7の突出部25bとが互いに接触する。すなわち、第1ハウジング3aを積層させて連結することで、少なくとも一部の積層方向に隣り合う導通部材7同士を接触させて導通させることが可能である。
【0046】
なお、図示した例では、突出部25a、25bは互いの形状がかみ合うようにして接触する例を示すが、他の構造(例えば雄雌嵌合)であってもよい。すなわち、隣り合う任意の端子同士を導通させることができるとともに、積層方向に隣り合う任意の端子同士を導通させることができる。
【0047】
次に、第1ハウジング3aにおける端子付き電線の取り付け方法について説明する。まず、
図7(a)に示すように、内壁部材5に必要な導通部材7を固定する。次に、
図7(b)に示すように、内壁部材5を第1ハウジング3aの内壁部材挿入部11から挿入する。
【0048】
最後に、
図7(c)に示すように、端子付き電線収容部9aに第1端子付き電線である端子付き電線33aを挿入する。端子付き電線33aは、雄端子35を有する。雄端子35は、導通部材7の孔23及び内壁部材5の孔31を貫通する。この際、端子付き電線33aの端子の一部が導通部材7と接触して導通する。さらに、このようにして端子付き電線33aが取り付けられた第1ハウジング3aを積層して連結する。このようにすることで、任意の端子付き電線33a同士を導通させることができる。
【0049】
なお、導通部材7の孔23の形態は、
図5等に示す例には限られない。例えば、
図8(a)は、他の導通部材7aを示す図であり、
図8(b)は、
図8(a)のB-B線断面図である。導通部材7aは、導通部材7と略同様であるが、導通部材7aには、雄端子を挿入可能な孔23に、舌片36が形成される。舌片36は、孔23の外周部から中央に向けて周方向に複数形成される。なお、導通部材7aについても、導通部27の個数や、突出部25a、25bの配置は図示した例には限られない。
【0050】
図8(c)は、孔23に雄端子35を挿入した状態を示す図である。前述したように、孔23は雄端子35を挿入可能であるため、雄端子35よりもわずかに径が大きいが、複数の舌片36の先端部をつなぐ仮想円の径は、雄端子35の外径よりも小さい。このため、雄端子35を孔23に挿入すると、雄端子35によって舌片36が押し広げられて変形する。この結果、導通部材7aの舌片36と雄端子35とをより確実に導通させることが可能である。
【0051】
次に、積層された第1ハウジング3aと第2ハウジング3bとの接続方法について説明する。
図9(a)は、第1ハウジング3aと第2ハウジング3bの積層状態を示す図であり、
図9(b)は、
図9(a)のC部拡大図である。なお、第1ハウジング3aには、雄端子35を有する端子付き電線33aが収容され、第2ハウジング3bには、雌端子37を有する端子付き電線33bが収容される例について説明する。
【0052】
前述したように、第1ハウジング3aは、積層して連結部13a、13b(
図1、
図3参照)によって連結されて固定される。一方、第2ハウジング3bは、連結凸条17aと連結溝17b(
図4(a)参照)によってスライド連結させるとともに、固定孔19aと固定凸部19b(
図9(b)参照)によって、スライド方向の位置決めがなされて固定される。すなわち、第1ハウジング3aも第2ハウジング3bも、積層させた状態で一括して接続作業を行うことができる。
【0053】
ここで、第2ハウジング3bの下方において、固定部材21の先端側(第1ハウジング3aとの対向方向)には、固定解除部39が設けられる。固定解除部39は、第2ハウジング3bの先後方向(第1ハウジング3aの挿抜方向)に対してスライド動作可能であり、通常時は先端側(第1ハウジング3aとの対向方向)に位置する。例えば、ばね等によって、固定解除部39は常に前方に押圧されていてもよい。
【0054】
図10(a)は、積層されて連結固定された状態の第2ハウジング3bを、積層されて連結固定された状態の第1ハウジング3aに対して、一括して所定量だけ挿入した状態を示す図である。このように、互いに積層されて固定された状態で、第1ハウジング3aへ第2ハウジング3bを押し込んで接続する際に、接続初期の第1状態(
図10(a))では、第2ハウジング3b同士の固定部(固定孔19aと固定凸部19b)が固定状態を維持しているため、積層された第2ハウジング3bを一括して第1ハウジング3aへ所定量押し込むことが可能である。
【0055】
図10(b)は、さらに第2ハウジング3bを第1ハウジング3aへ押し込んだ第2状態における第2ハウジング3b同士の固定部(固定孔19aと固定凸部19b)近傍を示す図である。第2ハウジング3bを第1ハウジング3aに押し込んでいくと、第1ハウジング3aの先端部(第2ハウジング3bとの対向方向端部)が固定解除部39と接触する。
【0056】
この状態で第2ハウジング3bを第1ハウジング3aへさらに押し込むことで、第1ハウジング3aの一部を固定解除部39と接触させた状態で、後方(固定部材21側)へ動作させることができる。この結果、固定解除部39は、固定部材21と接触し、固定凸部19bを押し上げるように固定部材21を変形させ、固定孔19aとの篏合を解除することができる。このため、第2ハウジング3b同士の固定部(固定孔19aと固定凸部19b)の固定が解除され、第2ハウジング3bをスライド動作させることができるようになる。すなわち、個々の第2ハウジング3bを別個に第1ハウジング3a方向へ押し込むことが可能となる。
【0057】
図11は、最上部の第2ハウジング3bのみを完全に第1ハウジング3a側に押し込んだ状態を示す図である。図示したように、他の第2ハウジング3bと第1ハウジング3aとが、半挿入(半接続)された状態で、所定の第2ハウジング3bのみを対向する第1ハウジング3aと完全に接続することができる。このように、第1ハウジング3aと第2ハウジング3bとを完全に接続することで、互いに対向する端子付き電線33aの雄端子35と端子付き電線33bの雌端子37とを直接接続することができる。
【0058】
ここで、通常、雌端子37の内部には、弾性片が配置され、雄端子35と雌端子37とを接続する際には、雌端子37の弾性片を変形させながら雄端子35が雌端子37に挿入される。このため、雄端子35と雌端子37とを弾性片を介して確実に導通させることができる一方で、雄端子35を雌端子37へ挿入する際には所定の挿入抵抗が生じる。
【0059】
また、
図10(b)に示す状態(第2ハウジング3bの一部を第1ハウジング3aに挿入した半挿入状態)までは、雄端子35と雌端子37とは完全には接続されておらず、大きな挿入抵抗が生じる前の状態である。このため、この状態までは、複数の第2ハウジング3bを一括して第1ハウジング3aへ挿入しても、大きな挿入抵抗を受けることなく作業が可能である。このため、積層された第2ハウジング3bを一括して取り扱うことができ、作業が容易である。
【0060】
一方、
図11のように、さらに第2ハウジング3bを第1ハウジング3aに押し込んで接続することで、当該第2ハウジング3bに配置された複数の雌端子37と、接続対象の複数の雄端子35とが一括して接続される。この状態では、雄端子35の雌端子37への挿入抵抗が大きくなるが、当該第2ハウジング3bに併設された端子分だけの挿入抵抗のみで接続が可能である。このため、積層されたすべての第1ハウジング3a及び第2ハウジング3bの雄端子35と雌端子とを同時に接続する場合の挿入抵抗と比較して、個々のハウジングごとに接続を行うことができるため、接続時の挿入抵抗を分散させて低減することができる。
【0061】
このように、積層される第2ハウジング3b同士を固定する固定部(固定孔19aと固定凸部19b)の近傍に移動可能な固定解除部39を配置し、第1ハウジング3aによって固定解除部39を動作させることで、固定解除部39によって、第2ハウジング3b同士の固定を解除することができる。このため、積層される第2ハウジング3bを個々に接続させることができ、接続作業を容易にすることが可能である。
【0062】
なお、固定解除部は、第2ハウジング3bに配置されるのではなく、第1ハウジング3a側に配置してもよい。
図12(a)は、固定解除部39aを有する第1ハウジング3aを積層した状態を示す図である。固定解除部39aは、第1ハウジングの先端側(第2ハウジング3bとの対向側)の下方において突出する部位である。この場合には、第2ハウジング3bには、固定解除部39は配置されない。
【0063】
図13(a)~
図13(c)は、固定解除部39aの動作を示す図である。積層されて連結固定された第2ハウジング3bを第1ハウジング3aと接続する際には、まず、固定解除部39aが第2ハウジング3b間に挿入される(
図13(a))。さらに、第2ハウジング3bを第1ハウジング3aに挿入していくと、固定解除部39aが固定部材21と接触して、固定凸部19bを押し上げることで、固定が解除される(
図13(b))。すなわち、第2ハウジング3bは、個別に第1ハウジング3aに接続可能となる。また、この状態は、まだ、雄端子35と雌端子37とが完全に接続される前の状態である。
【0064】
この状態から、所定の第2ハウジング3bを第1ハウジング3aに完全に挿入して接続することで、内部の雄端子35と雌端子37とを完全に接続することができる(
図12(b)及び
図13(c))。このように、固定解除部39aを第1ハウジング3a側に設けて、互いに積層されて固定された状態で第1ハウジング3aへ第2ハウジング3bを押し込んで接続する際に、接続初期の第1状態(
図13(a))では、固定部が固定状態を維持して、積層された第2ハウジング3bを一括して第1ハウジング3aへ押し込むことが可能である。さらに第2ハウジング3bを第1ハウジング3aへ押し込んだ第2状態(
図13(b))では、固定解除部39aが固定部に接触して固定が解除され、個々の第2ハウジング3bを別個に第1ハウジング3aへ押し込むことが可能となる。
【0065】
以上、本実施形態によれば、内壁部材5に種々の形状の導通部材7を固定して第1ハウジング3aに挿入して取り付けることができるため、簡易な構造で任意の端子付き電線33a同士を導通させてサブ分けすることができる。この際、内部の雄端子35と雌端子37とが直接接続され、バスバー部材等を用いないため、製造コストや電気的接続の信頼性を高めることができる。
【0066】
また、導通部材7の形状及び配置を適宜選択することで、あらゆるジョイントの形態にも対応が可能であり、設計の自由度も高い。この際、従来のように、サブ分けの形態ごとに回路基板を製造する場合と比較して、同一形態の導通部材7を共有化することも可能である。
【0067】
また、雄端子35が貫通する導通部材7aの孔に、複数の舌片36を設け、雄端子35によって舌片36が押し開かれるように変形させることで、雄端子35と導通部材7aとをより確実に導通させることができる。
【0068】
また、第1ハウジング3a及び第2ハウジング3bは、いずれも積層させて連結して固定することができるため、積層数を変えることで、任意の数の端子付き電線同士を接続することができる。また、積層した状態で一括して接続作業を行うことができるため、作業性が良好である。
【0069】
また、第2ハウジング3bを第1ハウジング3aに対して半差しした状態まで連結状態で接続作業を行った後、固定解除部39、39aによって第2ハウジング3b同士の固定を解除することで、雄端子35と雌端子37とを完全に接続する際には、第2ハウジング3bを個別に第1ハウジング3aと接続することができる。このため、ハウジングの積層数が増加することによる接続時の挿入抵抗の増加を抑制することができる。
【0070】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0071】
例えば、第1ハウジング3aと第2ハウジング3bに配置される端子付き電線33a、33bは逆であってもよい。すなわち、導通部材7、7a(内壁部材5)に対して雄端子35を貫通させたが、雌端子37を貫通させてもよい。また、上述した実施形態では、まず内壁部材5を取り付けた第1ハウジング3aに端子付き電線33aを挿入したが、先に端子付き電線33aを挿入してから内壁部材5を取り付けてもよい。この場合には、導通部材及び内壁部材に端子が貫通する孔を形成するのではなく、例えばスリット等を形成すればよい。
【符号の説明】
【0072】
1………ジョイント機能付き中継コネクタ
3a………第1ハウジング
3b………第2ハウジング
5………内壁部材
7、7a………導通部材
9a、9b………端子付き電線収容部
11………内壁部材挿入部
13a、13b………連結部
15a、15b………固定部
17a………連結凸条
17b………連結溝
19a………固定孔
19b………固定凸部
21………固定部材
23………孔
25a、25b………突出部
29………凹部
31………孔
33a、33b………端子付き電線
35………雄端子
36………舌片
37………雌端子
39、39a………固定解除部