(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069861
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】ガラス製造装置およびガラス製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 35/18 20060101AFI20240515BHJP
C03B 18/02 20060101ALI20240515BHJP
B65G 45/12 20060101ALI20240515BHJP
B08B 13/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
C03B35/18
C03B18/02
B65G45/12 B
B08B13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180114
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中野 勝之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 丈宜
(72)【発明者】
【氏名】清水 駿之介
【テーマコード(参考)】
3B116
4G015
【Fターム(参考)】
3B116AA47
3B116AB53
3B116BA08
3B116BA23
4G015GA00
(57)【要約】
【課題】ガラスに付着する異物の数を低減すると共に、搬送ロールの振動を抑制する、技術を提供する。
【解決手段】ガラス製造装置は、ガラスを搬送する搬送ロールと、前記搬送ロールに接触して、前記搬送ロールに付着する異物を除去する第1除去部材と、前記第1除去部材を前記搬送ロールに向けて付勢する付勢部材と、前記第1除去部材に設けられ、前記第1除去部材とは異なる位置で前記搬送ロールに接触して、前記搬送ロールに付着する異物を除去する第2除去部材と、を備える。前記第2除去部材は、前記第1除去部材よりも軟質な材質を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスを搬送する搬送ロールと、
前記搬送ロールに接触して、前記搬送ロールに付着する異物を除去する第1除去部材と、
前記第1除去部材を前記搬送ロールに向けて付勢する付勢部材と、
前記第1除去部材に設けられ、前記第1除去部材とは異なる位置で前記搬送ロールに接触して、前記搬送ロールに付着する異物を除去する第2除去部材と、
を備え、
前記第2除去部材は、前記第1除去部材よりも軟質な材質を有する、ガラス製造装置。
【請求項2】
前記搬送ロールの回転方向に、前記第2除去部材が前記搬送ロールに接触する第1位置と、前記第1除去部材が前記搬送ロールに接触する第2位置と、前記ガラスが前記搬送ロールに接触する第3位置とがこの順番で並ぶ、請求項1に記載のガラス製造装置。
【請求項3】
前記第1除去部材はカーボンブロックであり、前記第2除去部材は耐熱繊維の集合体である、請求項1又は2に記載のガラス製造装置。
【請求項4】
前記第1除去部材は、前記ガラスの搬送方向下流側に向かうほど下方に傾斜する第1平面を有し、
前記第2除去部材は、前記第1平面から突出し、前記第1除去部材よりも前記ガラスの搬送方向下流側で前記搬送ロールと接触する、請求項1又は2に記載のガラス製造装置。
【請求項5】
前記第1除去部材は、前記付勢部材の付勢方向に対して傾斜した第1平面と、前記第1平面と鈍角で交わる第2平面と、前記第1平面と前記第2平面の境界線と、を有し、前記境界線で前記搬送ロールと接触し、
前記第2除去部材は、前記第1平面から突出して前記搬送ロールと接触する、請求項1又は2に記載のガラス製造装置。
【請求項6】
前記搬送ロールの回転中心線と、前記第1除去部材の前記境界線とを結ぶ直線は、前記搬送ロールの回転中心線から遠くなるほど、前記ガラスの搬送方向上流側に向かう、請求項5に記載のガラス製造装置。
【請求項7】
前記付勢部材の付勢方向は、鉛直上方向である、請求項1又は2に記載のガラス製造装置。
【請求項8】
前記付勢部材を冷却する冷却部材を備える、請求項1又は2に記載のガラス製造装置。
【請求項9】
前記付勢部材の付勢力を調節する調節部材を備える、請求項1又は2に記載のガラス製造装置。
【請求項10】
前記搬送ロールは、溶融金属の上で成形された前記ガラスを、前記溶融金属から引き上げるリフトアウトロールである、請求項1又は2に記載のガラス製造装置。
【請求項11】
請求項1又は2に記載のガラス製造装置を用いてガラスを製造することを有する、ガラス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス製造装置およびガラス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3に記載のガラス製造装置は、ガラスを搬送する搬送ロールに付着する異物を除去することで、ガラスの欠陥(異物または傷)を低減する。これらのガラス製造装置は、搬送ロールに接触して異物を除去する除去部材を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-113273号公報
【特許文献2】実用新案登録第3234026号公報
【特許文献3】特開2009-046366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、時間の経過とともに、搬送ロールに付着した異物が除去部材をすり抜けやすくなり、ガラスに付着する異物の数が増加することがあった。
【0005】
本開示の一態様は、ガラスに付着する異物の数を低減すると共に、搬送ロールの振動を抑制する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るガラス製造装置は、ガラスを搬送する搬送ロールと、前記搬送ロールに接触して、前記搬送ロールに付着する異物を除去する第1除去部材と、前記第1除去部材を前記搬送ロールに向けて付勢する付勢部材と、前記第1除去部材に設けられ、前記第1除去部材とは異なる位置で前記搬送ロールに接触して、前記搬送ロールに付着する異物を除去する第2除去部材と、を備える。前記第2除去部材は、前記第1除去部材よりも軟質な材質を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、第1除去部材と第2除去部材の両方が異物のすり抜けを制限することで、第1除去部材のみが異物のすり抜けを制限するよりも、ガラスに付着する異物の数を低減できる。また、第2除去部材が第1除去部材よりも軟質な材質を有することで、第1除去部材と第2除去部材の両方が搬送ロールに接触するように第2除去部材が変形する。それゆえ、両方の部材の寸法精度を高める必要がなく、寸法誤差を第2除去部材の変形によって吸収できる。その結果、搬送ロールの振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るガラス製造装置を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の第1除去部材と第2除去部材を拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3は、変形例に係る第1除去部材と第2除去部材を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、第2除去部材の有無による、ガラスに付着する異物の数の変化の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1除去部材と第2除去部材の寸法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。各図面において、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は互いに垂直な方向であって、X軸方向及びY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向である。X軸方向がガラスGの搬送方向であり、Y軸方向がガラスGの幅方向である。明細書中、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0010】
図1を参照して、一実施形態に係るガラス製造装置1について説明する。ガラス製造装置1は、例えば、フロート法でガラスを製造する装置である。なお、本開示の技術は、フロート法以外の方法、例えばフュージョンダウンドロー法、又はスロットダウンドロー法等でガラスを製造する装置にも適用可能である。ガラス製造装置1は、ガラスを搬送する搬送ロールを備える装置であればよい。ガラスを搬送する方向は、水平方向には限定されず、鉛直方向であってもよい。
【0011】
ガラス製造装置1は、ガラスGの搬送方向上流側から下流側に向けて、フロートバス2と、ドロスボックス3と、徐冷炉5と、を備える。ガラス製造装置1は、フロートバス2に貯留した溶融金属Mの上でガラスGを成形し、成形したガラスGをドロスボックス3を介して徐冷炉5に搬送し、徐冷炉5の内部で徐冷する。ガラス製造装置1は、徐冷したガラスGを所望の寸法及び形状に切断し、製品を得る。
【0012】
ガラスGは、例えば無アルカリガラス、アルミノシリケートガラス、ホウケイ酸ガラス又はソーダライムガラスなどである。無アルカリガラスとは、Na2O、K2O等のアルカリ金属酸化物を実質的に含有しないガラスを意味する。ここで、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しないとは、アルカリ金属酸化物の含有量の合計が0.1質量%以下を意味する。
【0013】
ガラスGの用途は、特に限定されないが、例えばディスプレイ(例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等)のカバーガラスである。ガラスGの用途がカバーガラスである場合、ガラスGは化学強化用ガラスである。化学強化用ガラスは、無アルカリガラスとは異なり、アルカリ金属酸化物を含有する。
【0014】
ガラスGの用途は、ディスプレイの薄膜トランジスタ又はカラーフィルター等を形成するガラス基板であってもよい。ガラスGの用途がガラス基板である場合、ガラスGは無アルカリガラスである。無アルカリガラスは、化学強化用ガラスとは異なり、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しない。
【0015】
ガラスGの厚みは、ガラスGの用途に応じて選択される。ガラスGの用途がディスプレイのカバーガラスである場合、ガラスGの厚みは例えば0.1mm~2.0mmである。一方、ガラスGの用途がディスプレイのガラス基板である場合、ガラスGの厚みは例えば0.1mm~0.7mmである。また、ガラスGの用途が建築物および自動車のガラス基板である場合、ガラスGの厚みは例えば2mm~25mmである。なお、ガラスGの厚みは、ガラスGの幅方向中央で計測する。
【0016】
次に、
図1を再度参照して、一実施形態に係るフロートバス2などについて説明する。フロートバス2は、浴槽21を備える。浴槽21は、溶融金属Mを収容する。溶融金属Mとしては、例えば溶融スズが用いられる。溶融スズの他に、溶融スズ合金なども使用可能であり、溶融金属Mは溶融ガラスよりも高い密度を有するものであればよい。溶融ガラスは、溶融金属Mの上に連続的に供給され、溶融金属Mの平滑な液面を利用して、帯板状のガラスGに成形される。
【0017】
ドロスボックス3は、溶融金属Mの上で成形されたガラスGを、溶融金属Mから引き上げる搬送ロール31を備える。搬送ロール31は、リフトアウトロールとも呼ばれる。搬送ロール31は、モータ等の駆動装置(不図示)によって回転駆動され、その駆動力によってガラスGを斜め上方に向けて搬送する。駆動装置は、ドロスボックス3の外部に設けられる。
【0018】
搬送ロール31は、ドロスボックス3の内部に配置される、ガラスGの搬送方向(X軸方向)に間隔をおいて複数(例えば3つ)配置される。なお、搬送ロール31の個数は、特に限定されず、1つでもよい。搬送ロール31の軸方向は、ガラスGの幅方向(Y軸方向)と同一方向である。
【0019】
ドロスボックス3は、搬送ロール31に接触して、搬送ロール31に付着する異物を除去する第1除去部材32を備える。第1除去部材32は、搬送ロール31の外周面に当接し、搬送ロール31の外周面に付着した異物を除去する。異物は、例えばガラスGと共にドロスボックス3の内部に持ち込まれた溶融金属M、又は溶融金属Mが酸化した酸化物である。溶融金属Mの酸化物は、ドロスと呼ばれる。
【0020】
第1除去部材32は、例えば、Y軸方向視で五角形である(
図2参照)。その五角形は、長方形の1つの角を斜めに削った形状である。第1除去部材32は、搬送ロール31の軸方向に複数設けられてもよい。各搬送ロール31に沿って配列される第1除去部材32の個数は、ガラスGの幅(Y軸方向寸法)又は搬送ロール31の軸方向長さ(Y軸方向寸法)に応じて決定される。
【0021】
第1除去部材32のY軸方向寸法は、例えば300mm~1300mmであり、好ましくは400mm~800mmである。第1除去部材32のZ軸方向寸法は、例えば50mm~200mmであり、好ましくは70mm~150mmである。第1除去部材32のX軸方向寸法は、例えば20mm~100mmであり、好ましくは30mm~80mmである。
【0022】
第1除去部材32は、例えばカーボンブロックである。カーボンブロックは、カーボン含有粉末を含む成形体を焼成したものである。成形方法としては、例えば押出成形法、型押成形法、またはCIP(Cold Isostatic Pressing)成形法が用いられる。カーボンブロックは、グラファイト粉末を含む。グラファイト粉末の最大粒径は、例えば0.1mm~3mmであり、好ましくは0.5mm~2.5mmである。グラファイト粉末の最大粒径が0.1mm~3mmであると、カーボンブロックの強度を確保できる。
【0023】
第1除去部材32は、カーボンブロックと、セラミック製の布と、を含んでもよい。セラミック製の布は、例えば、カーボンブロックにおける搬送ロール31との接触面に設けられる。なお、カーボンブロックの代わりに、セラミックブロックが用いられてもよい。セラミックブロックは、窒化ホウ素、アルカリ硫酸塩、アルカリ土類硫酸塩、アルカリ炭酸塩、アルカリ土類炭酸塩、シリカ、又はアルミナなどの粉末を含む。
【0024】
ドロスボックス3は、第1除去部材32を搬送ロール31に向けて付勢する付勢部材33を備える。付勢部材33の付勢方向は、例えば、鉛直上方向(X軸正方向)である。付勢部材33の付勢方向とは、付勢部材33の第1除去部材32を付勢する方向のことである。付勢部材33は、例えば、金属製のばねを含む。ばねは、板ばねである。付勢部材33は、板ばねの代わりに、コイルばね、圧縮コイルばね、皿ばね、竹の子ばね、輪ばね等を含んでもよい。なお、付勢部材33は、空気圧シリンダなどの流体圧シリンダなどを含んでもよい。
【0025】
ドロスボックス3は、第1除去部材32を昇降自在に支持する支持部材34を備えてもよい。支持部材34は、ドロスボックス3の底壁39の上に配置される。支持部材34はY軸方向に垂直な断面形状がU字状であり、支持部材34の内部に第1除去部材32と付勢部材33が配置される。支持部材34は、第1除去部材32がX軸方向にずれるのを防止する。支持部材34の材質は、例えば、鋳鉄などの金属である。
【0026】
ドロスボックス3は、付勢部材33を冷却する冷却部材35を備えてもよい。冷却部材35は、例えば冷媒が流れる配管を含む。冷媒としては、水などの液体、又は空気などの気体が用いられる。冷却部材35は、付勢部材33を冷却し、付勢部材33の熱劣化を抑制する。冷却部材35は、支持部材34の内部に設けられる。
【0027】
ドロスボックス3は、付勢部材33の付勢力を調節する調節部材36を備えてもよい。付勢部材33の付勢力とは、付勢部材33の第1除去部材32を付勢する力のことである。調節部材36は、例えばシムを含む。使用するシムの枚数、又は厚みを変えることで、付勢部材33の付勢力を調節できる。
【0028】
付勢部材33が圧縮ばねである場合、調節部材36の厚みが厚いほど、圧縮ばねの圧縮量が大きく、圧縮ばねの付勢力(弾性復元力)が大きい。なお、付勢部材33が引張ばねである場合、調節部材36の厚みが厚いほど、引張ばねの引張量が小さく、引張ばねの付勢力(弾性復元力)が小さい。
【0029】
調節部材36は、支持部材34の内部に設けられる。調節部材36は、本実施形態では付勢部材33と冷却部材35の間に設けられるが、冷却部材35を基準として付勢部材33とは反対側(例えば下側)に設けられてもよい。
【0030】
ドロスボックス3は、第2除去部材37を備える。第2除去部材37は、第1除去部材32に設けられ、第1除去部材32と共に搬送ロール31に向けて付勢される。第2除去部材37は、第1除去部材32とは異なる位置で搬送ロール31に接触して、搬送ロール31に付着する異物を除去する。
【0031】
図4は、第2除去部材37の有無による、ガラスGに付着する異物の数の変化の一例を示す図である。
図4において、縦軸は単位面積当たりの異物の数(個/m
2)を示し、横軸は時間(日数)を示す。また、
図4において、破線は第2除去部材37が無い場合の変化を示し、実線は第2除去部材37が有る場合の変化を示す。
【0032】
図4に破線で示すように、第2除去部材37が無い場合、つまり第1除去部材32のみが搬送ロール31に付着する異物を除去する場合、時間の経過とともに、異物の数(個/m
2)が増加する。これは、時間の経過とともに、第1除去部材32に異物が溜まり、異物の除去効率が低下し、搬送ロール31に付着した異物が第1除去部材32をすり抜けやすくなるからである。時間が十分に経過すると、異物の数が一定になる。
【0033】
図4に実線で示すように、第2除去部材37が有る場合、つまり第1除去部材32と第2除去部材37の両方が搬送ロール31に付着する異物を除去する場合、異物の数が増加する速度を緩やかにでき、また、時間が十分に経過したときの異物の数を低減できる。これは、第1除去部材32と第2除去部材37の両方が搬送ロール31に付着する異物のすり抜けを制限するからである。
【0034】
第2除去部材37は、第1除去部材32よりも軟質な材質を有する。第2除去部材37と第1除去部材32とに同じ荷重をかけたときに、第2除去部材37が第1除去部材32よりも大きく変形する。第1除去部材32と第2除去部材37の両方が搬送ロール31に接触するように、第2除去部材37が変形できる。
【0035】
ここで、第2除去部材37が第1除去部材32と同じ材質であって変形できない場合について説明する。この場合、第1除去部材32と第2除去部材37の両方が搬送ロール31に接触するには、両方の部材の寸法精度を高める必要がある。寸法誤差が大きいと、ガタツキが生じ、搬送ロール31が振動してしまう。その結果、ガラスGに傷が生じてしまう。
【0036】
第2除去部材37が第1除去部材32よりも軟質な材質を有すれば、第1除去部材32と第2除去部材37の両方が搬送ロール31に接触するように、第2除去部材37が変形できる。それゆえ、両方の部材の寸法精度を高める必要がなく、寸法誤差を第2除去部材37の変形によって吸収できる。その結果、搬送ロール31の振動を抑制できる。
【0037】
第2除去部材37は、上記の通り、第1除去部材32よりも軟質な材質を有する。例えば、第1除去部材32はカーボンブロックであり、第2除去部材37は耐熱繊維の集合体である。耐熱繊維の集合体は、変形しやすい。それゆえ、第1除去部材32と第2除去部材37の寸法精度を高めなくても、搬送ロール31の振動を抑制できる。
【0038】
第2除去部材37は、上記の通り、耐熱繊維の集合体である。耐熱繊維は、例えば、カーボン繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、または金属繊維などである。これらの中でも、カーボン繊維が好ましい。カーボン繊維は、溶融スズをはじきやすい。また、カーボン繊維は、柔らかく、搬送ロール31に付着しても、ガラスGを傷付けにくい。
【0039】
耐熱繊維の集合体は、好ましくは耐熱繊維のフェルトである。耐熱繊維のフェルトとは、耐熱繊維をランダムに交絡して積層したものであり、例えばニードルパンチ等で一体化したものである。なお、耐熱繊維の集合体は、耐熱繊維の不織布または耐熱繊維の織布であってもよい。不織布はフェルトを含む。
【0040】
ドロスボックス3は、第1除去部材32、付勢部材33、支持部材34、冷却部材35、調節部材36及び第2除去部材37を含む組立体を、ガラスGの搬送方向(例えばX軸方向)に間隔をおいて複数備える。組立体の数は、本実施形態では搬送ロール31の数と同数であるが、搬送ロール31の数よりも少なくてもよい。
【0041】
徐冷炉5は、ガラスGを搬送ロール51によって搬送しながらガラスの歪点以下の温度に徐冷する。徐冷炉5は、ガラスGの温度を調整するため、天井及び底壁にヒータ(不図示)を備える。搬送ロール51は、モータ等の駆動装置(不図示)によって回転駆動され、その駆動力によってガラスGを水平方向に搬送する。搬送ロール51は、レアロールとも呼ばれる。
【0042】
なお、本開示の技術は、徐冷炉5に適用してもよい。つまり、徐冷炉5は、搬送ロール51の他に、図示しないが、搬送ロール51に接触して搬送ロール51に付着する異物を除去する第1除去部材と、第1除去部材を搬送ロール51に向けて付勢する付勢部材と、第1除去部材に設けられ、第1除去部材とは異なる位置で搬送ロール51に接触して、搬送ロール51に付着する異物を除去する第2除去部材と、を備えてもよい。
【0043】
次に、
図2を参照して、一実施形態に係る第1除去部材32と第2除去部材37の詳細について説明する。先ず、第1除去部材32について説明する。第1除去部材32は、例えば、Y軸方向視で五角形である。その五角形は、長方形の1つの角を斜めに削った形状である。
【0044】
第1除去部材32は、第1平面32aと、第2平面32bと、境界線32cと、を有する。第1平面32aは、付勢部材33の付勢方向(例えばZ軸正方向)に対して傾斜している。第1平面32aが、長方形の1つの角を斜めに削った部位に相当する。第1平面32aは、第2平面32bよりも大きい。
【0045】
第2平面32bは、第1平面32aと鈍角で交わる。第1平面32aと第2平面32bのなす角θは、例えば135°~175°であり、好ましくは150°~170°である。境界線32cは、第1平面32aと第2平面32bの境界線である。
【0046】
第1除去部材32は、境界線32cで、搬送ロール31と接触する。第1除去部材32の角を搬送ロール31に接触させるので、第1除去部材32と搬送ロール31の接触する線幅を狭めることができる。よって、第1除去部材32と搬送ロール31の接触圧力を向上でき、搬送ロール31に付着する異物Aの除去効率を向上できる。
【0047】
第1除去部材32は、上記の通り、境界線32cにおいて第1平面32aと第2平面32bが鈍角で交わる。鈍角で交わる角は、鋭角で交わる角に比べて、耐久性が高い。それゆえ、第1除去部材32と搬送ロール31の接触圧力を向上しても、欠けの発生を抑制できる。
【0048】
第1除去部材32は、第1平面32aと鈍角で交わる第1側面32dと、第2平面32bと直角で交わる第2側面32eと、を有する。第1側面32dと第2側面32eは、互いに平行な平面である。
【0049】
特許文献1の除去部材は、本実施形態の第2平面32bに相当する面がなく、第1平面32aに相当する面と、第2側面32eに相当する面とが鋭角で交わる。鋭角で交わる角は、耐久性が低い。
【0050】
一方、本実施形態によれば、上記の通り、第2平面32bが存在し、第2平面32bと第2側面32eが直角で交わる。直角で交わる角では、鋭角で交わる角に比べて、耐久性が高い。
【0051】
なお、第2平面32bは、本実施形態では第2側面32eと直角で交わるが、鈍角で交わってもよい。この場合、第1平面32aと第2平面32bとは、互いに反対向きに傾斜し、山形になる。
【0052】
図2に示すように、支持部材34は、ガラスGの搬送方向(例えばX軸方向)に直交する一対の対向面34a、34bを有する。一対の対向面34a、34bの間に、第1除去部材32が挿入されている。一対の対向面34a、34bの間隔は、第1除去部材32と支持部材34の熱膨張差を考慮して、第1除去部材32の厚みよりも大きく設定される。第1除去部材32の材質は例えばグラファイトであり、支持部材34の材質は例えば鋳鉄である。
【0053】
図2に示すように、搬送ロール31の回転中心線31aと、第1除去部材32の境界線32cとを結ぶ直線Lは、例えば、搬送ロール31の回転中心線31aから遠くなるほど、ガラスGの搬送方向上流側(例えばX軸負方向)に向かう。第1除去部材32の境界線32cは、搬送ロール31の下端よりも搬送方向上流側で、搬送ロール31に接触する。第1除去部材32は、傾いた状態で、一対の対向面34a、34bに接触する。Y軸方向視で、第1側面32dと第2側面32eは、付勢部材33の付勢方向(Z軸正方向)に向かうほど、ガラスGの搬送方向上流側(X軸負方向)に傾斜している。
【0054】
なお、
図3に示すように、直線Lが、搬送ロール31の回転中心線31aから遠くなるほど、ガラスGの搬送方向下流側(例えばX軸正方向)に向かう場合、第1除去部材32の境界線32cは、搬送ロール31の下端よりも搬送方向下流側で、搬送ロール31に接触する。
図3に示す第1除去部材32は、
図2に示す第1除去部材32とは逆に傾いた状態で、一対の対向面34a、34bに接触する。Y軸方向視で、第1側面32dと第2側面32eは、付勢部材33の付勢方向(Z軸正方向)に向かうほど、ガラスGの搬送方向下流側(X軸正方向)に傾斜している。
【0055】
図2の第1除去部材32によれば、
図3の第1除去部材32に比べて、第1除去部材32の姿勢を安定化でき、第1除去部材32の振動を低減できる。
図2に示すように、搬送ロール31から第1除去部材32に作用する摩擦力Fが、第1除去部材32の傾きを助長する方向に作用し、第1除去部材32を支持部材34に強く押し付けるからである。なお、
図3に示すように、摩擦力Fが第1除去部材32の傾きを減じる方向に作用すると、第1除去部材32を支持部材34に押し付ける力が弱くなり、第1除去部材32が振動してしまう。
【0056】
図2に示すように、搬送ロール31の回転方向(
図2において時計回り方向)に、第2除去部材37が搬送ロール31に接触する第1位置P1と、第1除去部材32が搬送ロール31に接触する第2位置P2と、ガラスGが搬送ロール31に接触する第3位置P3とがこの順番で並ぶことが好ましい。
【0057】
第1除去部材32がカーボンブロックである場合、カーボンブロックが第2位置P2において搬送ロール31に接触することで、搬送ロール31の表面にグラファイト粉末の薄い膜が形成される。グラファイト粉末の膜は、柔らかく、且つ潤滑性に優れている。グラファイト粉末の膜は、第3位置P3においてガラスGに傷が付くのを抑制する。
【0058】
図2に示すように、搬送ロール31の回転方向(
図2において時計回り方向)に第1位置P1と第2位置P2と第3位置P3とがこの順番で並ぶ場合、グラファイト粉末の膜は第2位置P2において形成された後に第1位置P1を経由することなく第3位置P3に至る。それゆえ、第3位置P3において十分な厚みのグラファイト粉末の膜が存在する。
【0059】
なお、
図3に示すように、搬送ロール31の回転方向(
図3において時計回り方向)に、第2位置P2と第1位置P1と第3位置P3とがこの順番で並ぶ場合、グラファイト粉末の膜は第2位置P2から第3位置P3に至るまでに第1位置P1を経由する。そうすると、第1位置P1において、第2除去部材37がグラファイト粉末の膜を除去してしまう。
【0060】
ところで、第2除去部材37がカーボン繊維の集合体である場合、カーボン繊維の集合体が第1位置P1において搬送ロール31に接触することで、搬送ロール31に付着した溶融スズをはじくことができる。溶融スズは、異物Aの一例である。なお、カーボンブロックは、カーボン繊維の集合体とは異なり、溶融スズをはじくことなく、溶融スズをトラップする。
【0061】
図2に示すように、搬送ロール31の回転方向(
図2において時計回り方向)に第1位置P1と第2位置P2と第3位置P3とがこの順番で並ぶ場合、搬送ロール31に付着した溶融スズは、第1位置P1においてはじかれ、第2位置P2にほとんど到達しない。それゆえ、溶融スズが第1除去部材32に溜まるのを抑制でき、カーボンブロックによる異物の除去効率が低下するのを抑制できる。
【0062】
なお、溶融スズの酸化物は、溶融スズとは異なり、カーボン繊維の集合体にも、カーボンブロックにもトラップされる。そのため、時間の経過とともに、カーボン繊維の集合体にも、カーボンブロックにも、溶融スズの酸化物が溜まる。溶融スズの酸化物は、異物Aの別の一例である。
【0063】
ところで、第1除去部材32は、
図2に示すように、ガラスGの搬送方向下流側に向かうほど下方に傾斜する第1平面32aを有する。第2除去部材37は、第1平面32aから突出し、第1除去部材32よりもガラスGの搬送方向下流側で搬送ロール31と接触する。第2除去部材37で搬送ロール31からはじいた溶融スズを、第1除去部材32に引掛けることなく、第1平面32aに沿って転落できる。
【0064】
次に、
図5を参照して、第1除去部材32と第2除去部材37の寸法の一例について説明する。
図5において、第1除去部材32は、第2平面32b(
図2参照)を有することなく第1平面32aで搬送ロール31と接触する。但し、第1除去部材32は、既述の通り、第2平面32bを有し、第2平面32bと第1平面32aの境界線32cで搬送ロール31と接触してもよい。
【0065】
図5において、「W」はX軸方向における第1除去部材32の厚みであり、「T」はX軸方向における第2除去部材37の厚みである。T/Wは、1.0よりも小さければよいが、経済性の観点から、好ましくは0.1よりも大きく0.5よりも小さい(0.1<T/W<0.5)。
【0066】
第2除去部材37は、好ましくは板状であり、搬送ロール31の軸方向に沿って設けられる。第2除去部材37は、例えば第1除去部材32の第1平面32aに設けた溝32fに鉛直に挿し込まれ、留め具38で固定される。第2除去部材37のX軸方向中心線L1は、
図5では搬送ロール31の回転中心線31aを基準としてX軸正方向にずれているが、X軸負方向にずれていてもよいし、搬送ロール31の回転中心線31aと一致してもよい。
【0067】
留め具38は、例えばカーボン製のボルトであって、頭部38aと軸部38bを有する。頭部38aは、工具が挿し込まれる工具穴を有する。軸部38bは、ねじを有する。ねじは、第1除去部材32のねじ穴にねじ込まれる。留め具38は、Y軸方向に間隔をおいて複数設けられる。
図5において、「D」は軸部38bの外径である。
【0068】
第1平面32aは、ガラスGの搬送方向上流側から下流側に(X軸正方向に)、第1点S1と、第2点S2と、第3点S3と、第4点S4と、第5点S5と、をこの順番で有する。第1点S1は搬送ロール31との接触点であり、第2点S2は溝32fの側面との交点であり、第3点S3は第2除去部材37のX軸方向中心線L1との交点あり、第4点S4は溝32fの側面との交点であり、第5点S5は第1平面32aの下端である。
【0069】
図5において、「h1」は第4点S4と第2除去部材37の上端との高低差であり、「h2」は第4点S4と第2除去部材37の下端との高低差であり、「h3」は第5点S5と留め具38のZ軸方向中心線との高低差であり、「h4」は第2点S2と第4点S4の高低差である。また、
図5において、「S」は第1点S1と第3点S3の直線距離であり、「H」は第1除去部材32の第1側面32dの高さである。
【0070】
h1は、好ましくはh4よりも大きくSよりも小さい(h4<h1<S)。h2は、Hよりも小さければよいが、好ましくはDの2倍よりも大きくHの半値よりも小さい(D×2<h2<H/2)。h3は、好ましくはDの2倍よりも大きくh2からDの2倍を引いた値よりも小さい(D×2<h3<h2-D×2)。
【0071】
以上、本開示に係るガラス製造装置およびガラス製造方法について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0072】
1 ガラス製造装置
31 搬送ロール
32 第1除去部材
33 付勢部材
37 第2除去部材
G ガラス