(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069889
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】基板洗浄装置、および基板洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
H01L21/304 644G
H01L21/304 644B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180165
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】柏木 誠
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA16
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB90
5F157AC01
5F157AC13
5F157BA03
5F157BA13
5F157BA31
5F157DB02
(57)【要約】
【課題】基板の洗浄効率を向上させつつ、該基板に過度の応力がかかることを抑制することができる基板洗浄装置および基板洗浄方法を提供する。
【解決手段】基板洗浄装置は、基板Wの周縁部を保持し、回転させる基板保持部41と、基板保持部41に保持された基板Wの表面または裏面に接触して、該基板Wの表面または裏面を洗浄する少なくとも1つの基板洗浄具42と、を備える。基板洗浄具42は、流体を噴出することで、基板Wの表面または裏面を吸引する吸引力を発生させるベルヌーイチャック55と、ベルヌーイチャック55に取り付けられた洗浄部材56と、を備えており、洗浄部材56は、ベルヌーイチャック55による吸引力に応じて、基板Wの表面または裏面を押圧する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の周縁部を保持し、回転させる基板保持部と、
前記基板保持部に保持された前記基板の表面または裏面に接触して、該基板の表面または裏面を洗浄する少なくとも1つの基板洗浄具と、を備え、
前記基板洗浄具のそれぞれは、
流体を噴出することで、前記基板の表面または裏面を吸引する吸引力を発生させるベルヌーイチャックと、
前記ベルヌーイチャックに取り付けられた洗浄部材と、を備えており、
前記洗浄部材は、前記吸引力に応じて、前記基板の表面または裏面を押圧する、基板洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄部材の表面は、前記ベルヌーイチャックよりも突出している、請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄部材の表面は、前記洗浄部材の裏面の面積よりも小さい面積を有している、請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記基板洗浄具は、前記洗浄部材の裏面に純水を供給する純水供給機構をさらに有している、請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記基板の洗浄中に、前記基板洗浄具を前記基板の半径方向に移動させるための洗浄具移動機構をさらに備える、請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄部材を洗浄するための洗浄装置をさらに備える、請求項5に記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
基板の周縁部を保持し、回転させ、
ベルヌーイチャックから流体を噴出させることで、前記基板の表面または裏面を吸引し、
前記ベルヌーイチャックによって発生された吸引力に応じた押圧力で、前記基板の表面または裏面に洗浄部材を押し付けて、前記基板の表面または裏面を洗浄する、基板洗浄方法。
【請求項8】
前記基板の表面または裏面を洗浄する工程は、前記ベルヌーイチャックよりも突出している前記洗浄部材の表面を前記基板の表面または裏面に押し付けて実行される、請求項7に記載の基板洗浄方法。
【請求項9】
前記基板の表面または裏面を洗浄する工程は、裏面の面積よりも小さい面積を有している前記洗浄部材の表面を前記基板の表面または裏面に押し付けて実行される、請求項7に記載の基板洗浄方法。
【請求項10】
前記基板の洗浄後に、前記洗浄部材の裏面に純水を供給して、前記洗浄部材を洗浄する、請求項7に記載の基板洗浄方法。
【請求項11】
前記基板の表面または裏面を洗浄する工程は、前記洗浄部材を前記基板の半径方向に移動させながら行われる、請求項7に記載の基板洗浄方法。
【請求項12】
前記基板の洗浄後に、前記洗浄部材を洗浄する、請求項11に記載の基板洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハなどの基板の表面または裏面に洗浄具を接触させて、該基板の表面または裏面を洗浄する基板洗浄装置および基板洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリー回路、ロジック回路、イメージセンサ(例えばCMOSセンサー)などのデバイスは、より高集積化されつつある。これらのデバイスを形成する工程においては、微粒子や塵埃などの異物がデバイスに付着することがある。デバイスに付着した異物は、配線間の短絡や回路の不具合を引き起こしてしまう。したがって、デバイスの信頼性を向上させるために、デバイスが形成されたウエハなどの基板の表面を洗浄して、該基板の表面上の異物を除去することが必要とされる。
【0003】
基板の裏面(非デバイス面)にも、上述したような微粒子や粉塵などの異物が付着することがある。このような異物が基板の裏面に付着すると、基板が露光装置のステージ基準面から離間したり、基板表面がステージ基準面に対して傾いたりして、結果として、パターニングのずれや焦点距離のずれが生じることとなる。このような問題を防止するために、基板の裏面に付着した異物を除去することが必要とされる。
【0004】
そこで、従来から、基板の表面または裏面に洗浄具を接触させて、該基板の表面または裏面を洗浄する基板洗浄装置が用いられている。例えば、特許文献1は、基板の周縁部を保持して回転させた状態で、ペン型の洗浄具であるペンスポンジを基板の表面に接触させ、さらに、該ペンスポンジを基板の半径方向に揺動させて、基板の表面を洗浄する基板洗浄装置を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板の洗浄効率を向上させるためには、一般に、洗浄具を基板に押し付ける押圧力を増加させる必要がある。しかしながら、洗浄具を基板に押し付ける押圧力を増加させすぎると、基板に大きな応力がかかり、基板が反って破損に至ることもある。大きな応力によって基板が反ると、基板が破損に至らなくても、基板に形成されたデバイスに悪影響がでるおそれもある。
【0007】
そこで、本発明は、基板の洗浄効率を向上させつつ、該基板に過度の応力がかかることを抑制することができる基板洗浄装置および基板洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、基板の周縁部を保持し、回転させる基板保持部と、前記基板保持部に保持された前記基板の表面または裏面に接触して、該基板の表面または裏面を洗浄する少なくとも1つの基板洗浄具と、を備え、前記基板洗浄具のそれぞれは、流体を噴出することで、前記基板の表面または裏面を吸引する吸引力を発生させるベルヌーイチャックと、前記ベルヌーイチャックに取り付けられた洗浄部材と、を備えており、前記洗浄部材は、前記吸引力に応じて、前記基板の表面または裏面を押圧する、基板洗浄装置が提供される。
【0009】
一態様では、前記洗浄部材の表面は、前記ベルヌーイチャックよりも突出している。
一態様では、前記洗浄部材の表面は、前記洗浄部材の裏面の面積よりも小さい面積を有している。
一態様では、前記基板洗浄具は、前記洗浄部材の裏面に純水を供給する純水供給機構をさらに有している。
【0010】
一態様では、前記基板洗浄装置は、前記基板の洗浄中に、前記基板洗浄具を前記基板の半径方向に移動させるための洗浄具移動機構をさらに備える。
一態様では、前記基板洗浄装置は、前記洗浄部材を洗浄するための洗浄装置をさらに備える。
【0011】
一態様では、基板の周縁部を保持し、回転させ、ベルヌーイチャックから流体を噴出させることで、前記基板の表面または裏面を吸引し、前記ベルヌーイチャックによって発生された吸引力に応じた押圧力で、前記基板の表面または裏面に洗浄部材を押し付けて、前記基板の表面または裏面を洗浄する、基板洗浄方法が提供される。
【0012】
一態様では、前記基板の表面または裏面を洗浄する工程は、前記ベルヌーイチャックよりも突出している前記洗浄部材の表面を前記基板の表面または裏面に押し付けて実行される。
一態様では、前記基板の表面または裏面を洗浄する工程は、裏面の面積よりも小さい面積を有している前記洗浄部材の表面を前記基板の表面または裏面に押し付けて実行される。
一態様では、前記基板の洗浄後に、前記洗浄部材の裏面に純水を供給して、前記洗浄部材を洗浄する。
【0013】
一態様では、前記基板の表面または裏面を洗浄する工程は、前記洗浄部材を前記基板の半径方向に移動させながら行われる。
一態様では、前記基板の洗浄後に、前記洗浄部材を洗浄する。
【発明の効果】
【0014】
基板の洗浄中、基板洗浄具の洗浄部材は、ベルヌーイチャックによって発生された吸引力に応じて、該吸引力とは逆方向にはたらく押圧力で基板の表面を押圧する。したがって、洗浄部材を基板に押し付ける押圧力を大きくしても、基板に過度の応力が加えられることが抑制され、その結果、基板の洗浄中の基板の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る基板洗浄装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、他の実施形態に係る基板保持部を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る基板洗浄具を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5(a)は、流体が流体噴出口から吐出されているときのベルヌーイチャックの表面を模式的に示す上面図であり、
図5(b)は、ベルヌーイチャックがウエハを吸引している様子を示す模式図である。
【
図6】
図6(a)乃至
図6(e)は、洗浄部材の変形例を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る周縁部洗浄装置を模式的に示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す周縁部洗浄装置を模式的に示す側面図である。
【
図9】
図9は、他の実施形態に係る基板洗浄装置を模式的に示す上面図である。
【
図11】
図11は、さらに他の実施形態に係る基板洗浄装置を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る基板洗浄装置を示す斜視図である。
図1に示す基板洗浄装置は、基板の一例であるウエハWの表面(上面)を洗浄するための装置である。
図1に示すように、この基板洗浄装置は、ウエハWを保持して回転させる基板保持部41と、ウエハWの表面に接触する基板洗浄具42と、基板洗浄具42を保持するアーム44と、ウエハWの表面にリンス液(通常は純水)を供給するリンス液供給ノズル46と、ウエハWの表面に薬液を供給する薬液供給ノズル47と、を備えている。基板洗浄具42の詳細な構成については後述するが、本実施形態では、基板洗浄具42は、アーム44内に配置された洗浄具回転機構(図示せず)に連結されており、基板洗浄具42は鉛直方向に延びるその中心軸線まわりに回転されるようになっている。洗浄具回転機構は、例えば、モータである。一実施形態では、洗浄具回転機構を省略してもよい。この場合、基板洗浄具42は、その中心軸線まわりに回転されない。
【0017】
基板洗浄装置は、さらに、制御装置8を有しており、制御装置8には、基板保持部41、および基板洗浄具42を含む基板洗浄装置の各種構成機器が接続されている。制御装置8は、これら構成機器の動作を制御することで、基板洗浄装置の動作を制御するように構成されている。なお、
図1では、図面の煩雑さを軽減するために、基板洗浄装置の各構成機器から制御装置8まで延びる信号線の図示が省略されている。
【0018】
制御装置8は、例えば、少なくとも1台のコンピュータから構成される。制御装置8は、記憶装置8aと、演算装置8bを備えている。演算装置8bは、記憶装置8aに格納されているプログラムに含まれている命令に従って演算を行うCPU(中央処理装置)またはGPU(グラフィックプロセッシングユニット)などを含む。記憶装置8aは、演算装置8bがアクセス可能な主記憶装置(例えばランダムアクセスメモリ)と、データおよびプログラムを格納する補助記憶装置(例えば、ハードディスクドライブまたはソリッドステートドライブ)を備えている。
【0019】
本実施形態では、基板保持部41は、ウエハWの周縁部を保持する基板保持部として機能し、ウエハWの周縁部に接触する複数の(
図1では4つの)チャック45と、チャック45に連結されたモータ48とを備えている。チャック45はウエハWを水平に保持し、この状態でウエハWはその中心軸線まわりにモータ48によって回転される。
【0020】
なお、基板保持部41は、基板洗浄具42の動作を妨げずに、ウエハWの周縁部を保持して、該ウエハWを回転させることが可能な限り、
図1に示す基板保持部41の構成に限定されず、任意の構成を有することができる。例えば、ウエハWを保持して回転させる基板保持部41は、
図2および
図3を参照して以下に説明される基板保持部41であってもよい。
【0021】
図2は、他の実施形態に係る基板保持部を模式的に示す平面図である。
図3は、
図2に示す基板保持部の側面図である。
図2および
図3において、基板保持部41以外の基板洗浄装置の構成要素は、図示を省略している。
図2および
図3に示す基板保持部41は、ウエハWを保持しながら、該ウエハWを円運動させ、かつウエハWをその軸心を中心に回転させるように構成された基板保持部である。なお、
図2および
図3に示す基板洗浄装置において、基板保持部41以外の構成は、
図1を参照して説明される基板洗浄装置の構成と同様である。
【0022】
図2および
図3に示す基板保持部41は、ウエハWの周縁部に接触可能な複数のローラ111a,111bと、これら複数のローラ111a,111bを回転させる複数の電動機129a,129bと、複数のローラ111a,111bと複数の電動機129a,129bを連結する複数の偏心軸113a,113bと、を備えている。複数の電動機129a,129bは、制御装置8(
図1参照)に接続されており、制御装置8は、複数の電動機129a,129bを同じ速度かつ同じ位相で回転させる。
【0023】
ローラ111aは、ウエハWの周縁部を保持するウエハ保持面(基板保持面)131aを有しており、ローラ111bは、ウエハWの周縁部を保持するウエハ保持面(基板保持面)131bを有している。ローラ111aとローラ111bは同じ構成および同じ大きさを有している。複数の偏心軸113a,113bは、予め定められた基板保持部41の中心軸線CPの周りに配列されている。
【0024】
本実施形態の基板保持部41は、2つのローラ111a、2つのローラ111b、2つの偏心軸113a、2つの偏心軸113b、2つの電動機129a、および2つの電動機129bを備えているが、これら構成要素の数は本実施形態に限定されない。
【0025】
複数の偏心軸113aのそれぞれは、第1軸部114aと、第1軸部114aから偏心した第2軸部115aと、第1軸部114aと第2軸部115aとを接続する中間軸部116aを有している。
図3に示す各偏心軸113aはクランク軸の形状を有しているが、各偏心軸113aの形状は、第2軸部115aが第1軸部114aから所定の距離だけ偏心している限りにおいて本実施形態に限定されない。同様に、複数の偏心軸113bのそれぞれは、第1軸部114bと、第1軸部114bから偏心した第2軸部115bと、第1軸部114bと第2軸部115bとを接続する中間軸部116bを有している。
図3に示す各偏心軸113bはクランク軸の形状を有しているが、各偏心軸113bの形状は、第2軸部115bが第1軸部114bから所定の距離だけ偏心している限りにおいて本実施形態に限定されない。
【0026】
複数のローラ111aは複数の第2軸部115aの一端にそれぞれ固定され、複数の第2軸部115aの他端は複数の中間軸部116aにそれぞれ固定されている。複数の第1軸部114aの一端は、複数のカップリング128aを介して複数の電動機129aにそれぞれ連結され、複数の第1軸部114aの他端は複数の中間軸部116aにそれぞれ固定されている。同様に、複数のローラ111bは複数の第2軸部115bの一端にそれぞれ固定され、複数の第2軸部115bの他端は複数の中間軸部116bにそれぞれ固定されている。複数の第1軸部114bの一端は、複数のカップリング128bを介して複数の電動機129bにそれぞれ連結され、複数の第1軸部114bの他端は複数の中間軸部116bにそれぞれ固定されている。電動機129aは、偏心軸113aをその第1軸部114aを中心に回転させ、電動機129bは、偏心軸113bをその第1軸部114bを中心に回転させるように構成されている。
【0027】
偏心軸113aの第2軸部115aは、第1軸部114aから距離eだけ偏心している。したがって、電動機129aが作動すると、ローラ111aは、第2軸部115aを中心に回転しながら半径eの円運動を行う。ローラ111aの軸心は、第2軸部115aの軸心と一致している。すなわち、ローラ111aは、その軸心を中心に回転しながら、第1軸部114aの軸心の周りで半径eの円運動を行う。
【0028】
同様に、偏心軸113bの第2軸部115bは、第1軸部114bから距離eだけ偏心している。したがって、電動機129bが作動すると、ローラ111bは、第2軸部115bを中心に回転しながら半径eの円運動を行う。ローラ111bの軸心は、第2軸部115bの軸心と一致している。すなわち、ローラ111bは、その軸心を中心に回転しながら、第1軸部114bの軸心の周りで半径eの円運動を行う。本明細書において、円運動は、対象物が円軌道上を移動する運動と定義される。
【0029】
電動機129a,129bの動作は制御装置8によって制御される。
図2および
図3でも、図面の煩雑さを軽減するために、基板洗浄装置の各構成機器から制御装置8まで延びる信号線の図示が省略されている。
【0030】
上述のように、制御装置8は全ての電動機129a,129bを同じ速度かつ同じ位相で回転させる。より具体的には、制御装置8は、電動機129a,129bに指令を出して、全ての電動機129a,129bを同じタイミングで始動させ、かつ全ての電動機129a,129bを同じ方向に回転させる。さらに、制御装置8は、電動機129a,129bの動作中、それぞれの回転速度および位相を同期させる。結果として、全ての偏心軸113a,113bが、第1軸部114a,114bの軸心を中心に、同じ方向に同じ回転速度および同じ位相で回転する。全てのローラ111a,111bは、その軸心を中心に同じ方向に同じ回転速度および同じ位相で回転しながら、第1軸部114a,114bの軸心を中心に円運動する。したがって、ウエハWがローラ111a,111bによって保持されているとき、制御装置8が電動機129a,129bを作動させることにより、ウエハWは、その軸心を中心に回転しながら、半径eの円運動を行う。
【0031】
このように、
図2および
図3に示す基板保持装置41は、簡単な構造でウエハWを円運動させながら、ウエハWをその軸心を中心に回転させることができる。このような円運動とウエハWの軸心を中心とした回転との組み合わせは、ウエハWの表面上の各点での速度を上げることができる。したがって、後述する基板洗浄具42の洗浄部材をウエハWの表面に押し付けたときの、洗浄部材とウエハWの表面との相対速度が増し、ウエハWの洗浄効率を向上させることができる。
【0032】
なお、
図2および
図3に示した実施形態では、複数の偏心軸113a,113bにはそれぞれカウンターウェイト117a,117bが固定されている。より具体的には、カウンターウェイト117a,117bは、中間軸部116a,116bにそれぞれ固定されている。カウンターウェイト117aとローラ111aは、第1軸部114aに関して対称に配置されている。カウンターウェイト117aの重さは、偏心軸113aが第1軸部114aを中心に回転しているときに、第1軸部114aからローラ111aに向かって半径方向に発生する遠心力が、カウンターウェイト117aに作用する遠心力によってキャンセルされる重さである。
【0033】
同様に、カウンターウェイト117bとローラ111bは、第1軸部114bに関して対称に配置されている。カウンターウェイト117bの重さは、偏心軸113bが第1軸部114bを中心に回転しているときに、第1軸部114bからローラ111bに向かって半径方向に発生する遠心力が、カウンターウェイト117bに作用する遠心力よってキャンセルされる重さである。このようなカウンターウェイト117a,117bは、偏心軸113a,113bが回転しているときに、重量のアンバランスに起因する偏心軸113a,113bの振動を防止することができる。
【0034】
図1に戻り、アーム44はウエハWの上方に配置されている。アーム44の一端には基板洗浄具42が連結され、アーム44の他端には旋回軸50が連結されている。基板洗浄具42は、アーム44および旋回軸50を介して洗浄具移動機構51に連結されている。より具体的には、旋回軸50には、アーム44を旋回させ、さらに、該旋回軸50を上下動させる洗浄具移動機構51が連結されている。洗浄具移動機構51も制御装置8に接続されており、制御装置8は、洗浄具移動機構51の動作を制御可能に構成されている。
【0035】
図1に示す洗浄具移動機構51は、旋回軸50を所定の角度だけ回転させることにより、アーム44をウエハWと平行な平面内で旋回させる旋回装置51aと、旋回軸50を上下動させることが可能な上下動装置51bを有している。旋回装置51aによってアーム44を旋回させることにより、アーム44に支持された基板洗浄具42がウエハW上を旋回軸50を中心に揺動(往復移動)する。さらに、上下動装置51bによって旋回軸50を上下動させることにより、基板洗浄具42をウエハWの表面に近接または離間させることができる。
【0036】
図4は、一実施形態に係る基板洗浄具を模式的に示す断面図である。
図4に示す基板洗浄具42は、流体を噴出することで、ベルヌーイの定理を利用して吸引力を発生させるベルヌーイチャック55と、ベルヌーイチャック55によって吸引されたウエハWの表面に接触して、該ウエハWの表面を洗浄する洗浄部材56と、を備える。洗浄部材56は、例えば、スポンジ状の多孔質材から構成されており、洗浄部材56の内部に流体を保持できるとともに、洗浄部材56の内部を流体が通過できるようになっている。
【0037】
ベルヌーイチャック55は、ウエハWの表面(本実施形態では、ウエハWの上面)を流体の流れにより吸引し、かつ非接触に支持可能なチャックである。
図4に示すベルヌーイチャック55は、洗浄部材56が取り付けられた台55a、台55aの周囲に位置する複数の流体噴出口55b、および流体噴出口55bに連通する流体流路55cが形成されたチャック本体55dを有している。本実施形態では、台55aは、円柱形状を有しており、台55aの表面(前面)には、円柱形状を有する洗浄部材56が取り付けられている。洗浄部材56の中心軸線は、台55aの中心軸線と一致するのが好ましい。ベルヌーイチャック55がウエハWを吸引しているとき、台55aの表面は、洗浄部材56を介してウエハWの表面に対向している。なお、洗浄部材56の詳細については後述する。
【0038】
流体流路55cは、流体を供給する流体供給ライン15と連通している。本実施形態では、流体は、純水などの液体である。一実施形態では、流体は、ウエハWの表面の洗浄効果を促進させるための薬液(または、洗浄液)であってもよい。薬液の例としては、アンモニア過酸化水素、塩酸過酸化水素、硫酸過酸化水素、硫酸加水、およびフッ酸が挙げられる。さらに、流体は、ドライエア、および不活性ガスなどの気体であってもよい。
【0039】
流体供給ライン15は、図示しない流体供給源に接続されている。流体供給ライン15には、流体供給弁16が取り付けられており、流体供給弁16は、制御装置8(
図1参照)と電気的に接続されている。流体供給弁16の開閉動作は、制御装置8によって制御される。流体供給弁16の例としては、電動弁、電磁弁などのアクチュエータ型駆動弁が挙げられる。流体供給弁16が開かれると、流体は流体供給ライン15を通じてベルヌーイチャック55に供給される。
【0040】
図5(a)は、流体が流体噴出口から吐出されているときのベルヌーイチャックの表面(前面)を模式的に示す上面図であり、
図5(b)は、ベルヌーイチャックがウエハを吸引している様子を示す模式図である。
図5(a)に示すように、ベルヌーイチャック55に供給された流体は、流体流路55c(
図4参照)を通って流体噴出口55bからチャック本体55dの外側に向かって噴射される。本実施形態では、各流体噴出口55bは、チャック本体55dの半径方向外側を向いている。
図5(b)に示すように、ベルヌーイチャック55をウエハWの表面に近接させた状態で、流体噴出口55bから流体を噴出させると、ウエハWの表面とチャック本体55dとの間の流体の流れによって、チャック本体55dの表面とウエハWの表面との間の空間に負圧が形成される。この負圧により、ベルヌーイチャック55は、チャック本体55dとウエハWとの間に吸引力を発生させ、ウエハWをチャック本体55dに向けて吸引することができる。
【0041】
ベルヌーイチャック55によって発生されるウエハWの吸引力は、流体噴出口55bから噴出する流体の流速(または、流量)に応じて調整することができる。具体的には、流体噴出口55bから噴出する流体の流速を増加させると、ウエハWへの吸引力が増加し、流体噴出口55bから噴出する流体の流速を減少させると、ウエハWへの吸引力が低下する。そのため、本実施形態では、流体供給ライン15に流量調整器(例えば、マスコントローラ)17を配置してもよい。流量調整器17は、制御装置8(
図1参照)に接続される。制御装置8は、流量調整器17の動作を制御することで、ベルヌーイチャック55の流体噴出口55bから吐出される流体の流量を調整し、これにより、ウエハWへの吸引力を調整することができる。
【0042】
本実施形態のベルヌーイチャック55は、流体噴出口55bから流体をベルヌーイチャック55のチャック本体55dの外側に向かって放射状に噴射されるように構成されている。しかしながら、ウエハWの表面を流体の流れにより吸引することができれば、ベルヌーイチャック55はこの実施形態に限定されない。例えば、旋回流を形成してベルヌーイチャック55の外側に流体を流すことでウエハWの表面を吸引するサイクロンタイプのベルヌーイチャックを使用してもよい。
【0043】
洗浄部材56は、ベルヌーイチャック55によって吸引されたウエハWの表面に接触して、該ウエハWの表面を洗浄する部材である。本実施形態では、洗浄部材56の表面(前面)は、ベルヌーイチャック55のチャック本体55dの表面(前面)よりも突出している(
図4参照)。したがって、ウエハWがベルヌーイチャック55によって吸引されると、ウエハWの表面は、ベルヌーイチャック55に接触する前に洗浄部材56の表面に接触し、洗浄部材56は、ベルヌーイチャックが形成する負圧(吸引力)に応じた押圧力で、ウエハWの表面に押し付けられる。
【0044】
本実施形態では、洗浄部材56は、ウエハWの表面への押圧力に応じて変形し、ウエハWの表面を洗浄するのに適した柔軟性を有する樹脂から構成される。このような樹脂の例としては、ポリビニルアルコール(PVA:polyvinyl alcohol)、ポリプロピレン(PP:polypropylene)、およびナイロンが挙げられる。
【0045】
ウエハWは次のようにして洗浄される。まず、基板保持部41にウエハWを保持させ、次いで、ウエハWをその中心軸線まわりに回転させる。次いで、洗浄具移動機構51の旋回装置51aと上下動装置51bとを操作して、基板洗浄具42をウエハWの表面に近接させる。より具体的には、旋回装置51aを操作して、基板洗浄具42をウエハWの上方の所望の位置に移動させ、次いで、上下動装置51bを操作して、基板洗浄具42をウエハWの表面に向けて移動させる。このとき、洗浄部材56の表面をウエハWの表面に接触させてよいし、接触させなくてもよい。次いで、基板洗浄具42のベルヌーイチャック55に流体を供給して、ウエハWを基板洗浄具42に吸引し、これにより、基板洗浄具42の洗浄部材56をウエハWの表面に押圧させる。一実施形態では、ウエハWの洗浄中に、薬液供給ノズル47からウエハWの表面に薬液を供給してもよい。特に、ベルヌーイチャックに気体が供給される場合には、薬液供給ノズル47から薬液(または、洗浄液)がウエハWの表面に供給される。なお、ベルヌーイチャック55に供給される薬液の量がウエハWの表面を洗浄するのに十分である場合は、薬液供給ノズル47を省略してもよい。
【0046】
次いで、洗浄具移動機構51を操作して、基板洗浄具42をウエハWの半径方向に揺動させる。この動作によって、薬液の存在下で洗浄部材56をウエハWの表面に摺接させ、これにより、ウエハWの表面が洗浄される。一実施形態では、ウエハWの洗浄中に、基板洗浄具42を自転させてもよい。スクラブ洗浄後、ウエハWから薬液を洗い流すために、リンス液供給ノズル46から回転するウエハWの表面にリンス液が供給される。
【0047】
ウエハWの洗浄中、洗浄部材56は、ベルヌーイチャック55によって発生された吸引力に応じてウエハWの表面を押圧する。すなわち、洗浄部材56は、ベルヌーイチャック55によって発生された吸引力に応じて、該吸引力とは逆方向にはたらく押圧力でウエハWの表面を押圧する。したがって、洗浄効率を向上させるために洗浄部材56をウエハWに押し付ける押圧力を大きくしても、ウエハWに過度の応力が加えられることが抑制され、その結果、ウエハWの洗浄中のウエハWの破損を防止することができる。
【0048】
ベルヌーイチャック55によって発生されるウエハWへの吸引力は、ウエハWの表面とベルヌーイチャック55のチャック本体55dの表面との間の距離によって変化する。具体的には、ウエハWの表面とベルヌーイチャック55のチャック本体55dの表面との間の距離が大きいと、ウエハWの表面とベルヌーイチャック55のチャック本体55dの表面との間に形成される空間の体積が大きくなり、その結果、ウエハWの表面とベルヌーイチャック55のチャック本体55dの表面との間を流れる流体の流速が遅くなる。一方で、ウエハWの表面とベルヌーイチャック55のチャック本体55dの表面との間の距離が小さいと、ウエハWの表面とベルヌーイチャック55のチャック本体55dの表面との間に形成される空間の体積が小さくなり、その結果、ウエハWの表面とベルヌーイチャック55のチャック本体55dの表面との間を流れる流体の流速が速くなる。したがって、ウエハWの表面とベルヌーイチャック55のチャック本体55dの表面との間の距離が大きくなると、ウエハWへの吸引力が減少し、ウエハWの表面とベルヌーイチャック55のチャック本体55dの表面との間の距離が小さくなると、ウエハWへの吸引力が増加する。
【0049】
そこで、ベルヌーイチャック55によって発生されるウエハWへの吸引力が小さい状態でも、ベルヌーイチャック55がウエハWを容易に吸引できるように、洗浄部材56の表面は、洗浄部材56の裏面(台55aへの取付面)の面積よりも小さい面積を有していてもよい。
図6(a)乃至
図6(e)は、洗浄部材の変形例を模式的に示す図である。より具体的には、
図6(a)乃至
図6(c)は、それぞれ、洗浄部材の変形例の断面図に相当し、
図6(d)および
図6(e)は、それぞれ、洗浄部材の変形例の上面図に相当する。
【0050】
図6(a)に示す洗浄部材56は、ベルヌーイチャック55の台55aに取り付けられた円柱状部56eと、円柱状部56eの前端である平坦面上に形成された上に凸の山形形状部56fを有する。一方で、
図6(b)に示す洗浄部材56は、円柱状部56eの平坦面上に形成された下に凸の谷形形状部56gを有する。
図6(a)に示す山形形状部56fの表面は洗浄部材56の表面56aを構成し、
図6(b)に示す谷形形状部56gの表面は洗浄部材56の表面56aを構成する。
図6(a)および
図6(b)に示す洗浄部材56の表面56aの水平断面積は、それぞれ、裏面(後面)56bに向かって徐々に増加する。
【0051】
図6(c)に示す洗浄部材56は、平坦面から突出するリング形状の突起56cを有し、突起56cの表面が洗浄部材56の表面56aを構成する。
図6(c)に示す突起56cは、洗浄部材56の平坦面の最外周部に形成されているが、洗浄部材56の平坦面における突起56cの位置は任意である。さらに、
図6(d)に示すように、リング形状を有する複数の突起56cを、洗浄部材56の平坦面上で同心状に配置してもよい。この場合、洗浄部材56の平坦面の中央に、円柱形状を有する突起56c’を配置してもよい。本実施形態では、突起56c’の表面は、突起56cの表面と同一平面上にあり、突起56c’の表面も洗浄部材56の表面56aの一部を構成する。
【0052】
図示はしないが、突起56c’の表面は、突起56cの表面よりも突出してもよいし、これとは逆に、突起56cの表面が突起56c’の表面よりも突出してもよい。さらに、洗浄部材56は、洗浄部材56の平坦面の中央に配置された突起56c’のみを有していてもよい。
【0053】
さらに、
図6(e)に示すように、円柱形状を有する複数の突起56c’’を、洗浄部材56の平坦面上に形成してもよい。この場合、突起56c’’の表面の面積の合計は、それぞれ、洗浄部材56の裏面の面積よりも小さい面積を有し、突起56c’’の表面は、洗浄部材56の表面56aを構成する。
【0054】
なお、図示した例における突起56c’、56c’’はそれぞれ円柱形状を有しているが、突起56c’、56c’’の形状は任意である。例えば、突起56c’、56c’’はそれぞれ四角柱形状、および五角柱形状などの角柱形状を有していてもよいし、円錐形状を有していてもよいし、円錐台形状を有していてもよい。
【0055】
図4に戻り、基板洗浄具42は、洗浄部材56の裏面(後面)に純水を供給する純水供給機構60を有してもよい。純水供給機構60によって、洗浄部材56の乾燥が防止され、さらに、洗浄部材56が洗浄される。
【0056】
図4に示す純水供給機構60は、ベルヌーイチャック55のチャック本体55dに形成され、洗浄部材56の裏面に連通する純水流路61と、純水流路61に連結される純水供給ライン63と、純水供給ライン63に配置された純水供給弁64と、を備える。純水供給弁64は、制御装置8(
図1参照)に接続され、制御装置8は、純水供給弁64の動作を制御する。
【0057】
基板洗浄具42によるウエハWの洗浄が終了すると、流体のベルヌーイチャック55への供給が停止され、基板洗浄具42の洗浄部材56がウエハWから離間させられる。制御装置8は、洗浄部材56がウエハWから離間した後で、純水供給弁64を開き、純水供給ライン63から純水流路61を介して洗浄部材56の裏面に純水を供給する。上記したように、洗浄部材56は、スポンジ状の多孔質材からなり、洗浄部材56に供給された純水は、洗浄部材56の裏面から表面に向かって流れることができる。洗浄部材56を流れる純水によって、洗浄部材56の乾燥が防止され、さらに、ウエハWの洗浄によって洗浄部材56に付着した異物(例えば、パーティクルなどの汚れ)が洗浄部材56から洗い流される。
【0058】
図1に示すように、基板洗浄具42の洗浄部材56を洗浄するための洗浄装置75をウエハ基板保持部41の側方に設けてもよい。
図1に示す洗浄装置75は、基板保持部41に隣接して配置された洗浄板76と、洗浄板76に隣接して配置された純水供給ノズル77と、を備えている。洗浄装置75の構成は、洗浄部材56を洗浄可能である限り任意であり、公知の構成を採用することができる。例えば、洗浄装置75は、洗浄板76の代わりに、洗浄部材56と摺接されることで洗浄部材56を洗浄するブラシを有していてもよい。
【0059】
洗浄部材56を洗浄するときは、洗浄部材56が洗浄板76の上方位置に到達するまで、洗浄具移動機構51の旋回装置51aによってアーム44が移動される。さらに、基板洗浄具42を、その軸心まわりに回転させながら、洗浄具移動機構51の上下動装置51bによって、基板洗浄具42の洗浄部材56を洗浄板76の表面(洗浄面)に押し付ける。この際、洗浄板76に接触している洗浄部材56に純水供給ノズル77から純水が供給される。これらの動作によって、洗浄部材56が洗浄される。
【0060】
図1に示す洗浄板76は、円錐台形の形状を有している。この洗浄板76の表面は、基板洗浄具42の洗浄部材56の表面に接触する洗浄面78を構成する。洗浄板76の洗浄面78は、円形の中央部78aと、この中央部78aから外側に広がりつつ下方に傾斜する傾斜部78bとを有している。この傾斜部78bは、環状の形状を有している。
【0061】
洗浄板76の中央部78aは、上方に突出しており、中央部78aの周囲の他の部分(すなわち傾斜部78b)よりも高い位置にある。したがって、基板洗浄具42が下降すると、洗浄部材56の表面の中央部が洗浄面78の突出した中央部78aに接触する。基板洗浄具42がさらに下降すると、洗浄部材56の表面の外周部は、洗浄面78の傾斜部78bに接触する。このようにして、洗浄部材56の表面全体が洗浄板76の洗浄面78に接触する。洗浄板76は、例えば、石英、樹脂、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどから構成される。
【0062】
洗浄板76は、円錐台形状を有しているので、洗浄部材56の中央部は、その他の部分よりも洗浄板76に強く押し付けられ、洗浄部材56の中央部内部に入り込んだ汚れを除去することができる。洗浄部材56から一旦除去された汚れは、純水とともに洗浄板76の傾斜部78b上を速やかに流下する。したがって、異物が洗浄部材56に再付着することが防止される。
【0063】
図1に示す洗浄板76は、円錐台形状を有しているが、洗浄板76の形状は本実施形態に限定されない。例えば、洗浄板76は、
図6(a)乃至
図6(e)に示す洗浄部材56の表面の形状に対応した形状を有していてもよい。
【0064】
ベルヌーイチャック55のチャック本体55dの外縁がウエハWの外縁を越えるまで、浄具移動機構51が基板洗浄具42を移動させると、ベルヌーイチャック55のチャック本体55dの表面とウエハWの表面との間の空間に形成された真空の一部が破壊されるおそれがある。この場合、洗浄部材56をウエハWの表面に適切な押圧力で押し付けることができなくなるため、ウエハWの周縁部の効率的な洗浄が行えないおそれがある。そこで、基板洗浄装置は、ウエハWの周縁部を洗浄する周縁部洗浄装置を備えているのが好ましい。
【0065】
図7は、一実施形態に係る周縁部洗浄装置を模式的に示す斜視図であり、
図8は、
図7に示す周縁部洗浄装置を模式的に示す側面図である。
図7および
図8では、図が煩雑にならないように、基板保持部41のチャック45に保持されたウエハW以外の基板洗浄装置の構成要素の図示を省略している。
【0066】
図7および
図8に示す周縁部洗浄装置80は、ロール型洗浄部材82a,82bと、モータ83a,83bと、洗浄液ノズル84a,84bと、リンス液ノズル85a,85bと、アクチュエータ86と、を備えている。
【0067】
ロール型洗浄部材82aはウエハWの表面(上面)を洗浄し、ロール型洗浄部材82bはウエハWの裏面(下面)を洗浄する。より具体的には、ロール型洗浄部材82aは、ウエハWの表面の周縁部に接触しながら回転することにより、表面の周縁部を洗浄する。ロール型洗浄部材82bは、ロール型洗浄部材82aと対向して、すなわち、ロール型洗浄部材82aの下方に配置される。そして、ロール型洗浄部材82bは、ウエハWの裏面の周縁部に接触しながら回転することにより、裏面の周縁部を洗浄する。
【0068】
ロール型洗浄部材82aは軸87aを介してモータ83aに接続される。モータ83aの回転によってロール型洗浄部材82aが回転する。ロール型洗浄部材82aの回転方向は、ウエハWと接触する位置において、ウエハWの中心から周縁部に向かう方向である(矢印Bから見て、反時計回り)。
【0069】
また、アクチュエータ86により、ロール型洗浄部材82aはウエハWの接線方向(すなわち、ロール型洗浄部材82aの長手(軸)方向)、半径方向および/または鉛直方向に移動可能である。ウエハWの周縁部の洗浄中にロール型洗浄部材82aがウエハWの接線方向、半径方向および鉛直方向に移動(揺動)することで、洗浄効率が向上する。移動(揺動)方向は、接線方向、半径方向および鉛直方向の1方向あるいは任意の組み合わせの2方向であってもよい。また、半径方向の位置は任意に設定可能である。
【0070】
また、アクチュエータ86により、ロール型洗浄部材82aはウエハWの半径方向に移動可能である。ウエハWの洗浄を行わない待機時は、ロール型洗浄部材82aはウエハWが配置される位置から外周方向に離れた退避位置にある。そして、ウエハWの周縁部の洗浄を行う時は、ロール型洗浄部材82aは退避位置からウエハWと接触する洗浄位置までウエハWの中心方向に向かって移動する。ウエハWの周縁部の洗浄が完了すると、ロール型洗浄部材82aは退避位置に向かってウエハWの外周方向に移動する。
【0071】
以上、ロール型洗浄部材82aについて主に説明したが、ロール型洗浄部材82bも同様である。なお、ロール型洗浄部材82a,82bは、一体となって(あるいは同期して)ウエハWの半径方向に移動してもよいし、互いに独立して移動してもよい。また、ロール型洗浄部材82a,82bは、一体となって(あるいは同期して)ウエハWの接線方向に移動してもよい。また、ロール型洗浄部材82a,82bは上下方向(ウエハWと垂直方向)に移動可能であってもよい。
【0072】
洗浄液ノズル84aおよびリンス液ノズル85aはウエハWの上方に配置される。そして、ウエハWの周縁部の洗浄時に、洗浄液ノズル84aは薬液や純水などの洗浄液をウエハWの表面の周縁部に供給し、リンス液ノズル85aは純水などのリンス液をウエハWの表面の周縁部に供給する。洗浄液ノズル84aおよびリンス液ノズル85aによる液体(洗浄液およびリンス液)の供給方向はウエハWの中心から外側に向かう方向であるのが好ましい。ウエハW上に汚染された液体が長く留まるのを防止するためである。
【0073】
洗浄液ノズル84bおよびリンス液ノズル85bは、ウエハWの下方に配置され、ウエハWの裏面の周縁部を洗浄する際に、ウエハWの裏面に液体(洗浄液およびリンス液)を供給する。その他は洗浄液ノズル84aおよびリンス液ノズル85aと同様である。
【0074】
ウエハWの周縁部の洗浄は、以下のように行われる。基板保持部41がウエハWを保持して回転させた状態で、洗浄液ノズル84a,84bがそれぞれウエハWの表面および裏面に洗浄液を供給する。この状態で、ロール型洗浄部材82a,82bがそれぞれウエハWの表面の周縁部およびウエハWの裏面の周縁部に接触して回転することで、ウエハWの表面の周縁部およびウエハWの裏面の周縁部が洗浄される。
【0075】
周縁部洗浄装置の構成は、
図7および
図8を参照して説明した周縁部洗浄装置の構成に限定されない。周縁部洗浄装置の構成は、ウエハWの周縁部を洗浄できる限り任意であり、基板洗浄装置は、公知の周縁部洗浄装置を備えることができる。例えば、周縁部洗浄装置は、洗浄テープをウエハWの周縁部に接触させることで、ウエハWの周縁部を洗浄する装置であってもよい。
【0076】
上述した実施形態では、ウエハWの表面(上面)を洗浄する基板洗浄具42を有する基板洗浄装置の例を説明したが、以下では、ウエハWの裏面(下面)を洗浄する基板洗浄具42を有する基板洗浄装置が説明される。
【0077】
図9は、他の実施形態に係る基板洗浄装置を模式的に示す上面図であり、
図10は、
図9に示す基板洗浄装置を模式的に示す側面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0078】
図9および
図10に示す基板洗浄装置は、基板の表面を洗浄するための基板洗浄具42の代わりに、基板の裏面を洗浄するための複数の基板洗浄具42を有する点で上述の実施形態とは異なる。さらに、
図9および
図10に示す基板洗浄具42は、上述した実施形態に係る基板洗浄具42と同様の構成を有するが、洗浄部材56が上を向くように、反転されて配置されている点で上述した実施形態に係る基板洗浄具42と異なる。すなわち、ウエハWを基板保持部41に保持させた状態で、基板洗浄具42のベルヌーイチャック55に流体を供給すると、ウエハWは、該ウエハWの下方に配置された基板洗浄具42のベルヌーイチャック55に向けて吸引され、該吸引力に応じた押圧力で洗浄部材56がウエハWの裏面に押圧される。
【0079】
基板洗浄具42は、洗浄部材56の乾燥を防止しつつ、さらに、洗浄部材56を洗浄するための純水供給機構60(
図4参照)を有していてもよい。さらに、基板洗浄具42の洗浄部材56は、
図6(a)乃至
図6(e)を参照して説明された表面56aを有していてもよい。さらに、基板洗浄装置は、
図7および
図8を参照して説明された周縁部洗浄装置80を有してもよい。
【0080】
本実施形態に係る基板保持部41は、ウエハWの周縁部に接触可能な複数のローラ53と、それぞれのローラ53の軸心を中心にして回転させるためのローラ回転機構(図示しない)を備えている。
【0081】
図9および
図10に示す基板洗浄装置では、複数の(
図9では、6つの)基板洗浄具42がウエハWの下方に配置されている。このような構成を有する基板洗浄装置でウエハWの裏面の洗浄を行うときは、最初にウエハWを基板保持部41に保持させる。この際、各基板洗浄具42の洗浄部材56は、基板保持部41に保持されたウエハWの裏面に接触するのが好ましい。この状態で、基板洗浄具42のベルヌーイチャック55に流体を供給するとともに、基板保持部41に保持されたウエハWを回転させる。これらの動作により、洗浄部材56は、ベルヌーイチャック55の表面と回転するウエハWの裏面との間に発生した吸引力(負圧)に応じた押圧力で、ウエハWの裏面に押圧される。複数の基板洗浄具42は、複数の洗浄部材56で基板保持部41によって回転されるウエハWの裏面の略全面を洗浄できるように配置されている。
【0082】
このような構成を有する基板洗浄装置では、ウエハWの洗浄中、洗浄部材56は、ベルヌーイチャック55によって発生された吸引力に応じてウエハWの裏面を押圧する。すなわち、洗浄部材56は、ベルヌーイチャック55によって発生された吸引力に応じて、該吸引力とは逆方向にはたらく押圧力でウエハWの裏面を押圧する。したがって、洗浄効率を向上させるために洗浄部材56をウエハWに押し付ける押圧力を大きくしても、ウエハWに過度の応力が加えられることが抑制され、その結果、ウエハWの洗浄中のウエハWの破損を防止することができる。
【0083】
図9および
図10に示す基板洗浄装置も、各洗浄部材56を洗浄するための洗浄装置75を有していていてもよい(
図10参照)。本実施形態でも、洗浄装置75の構成は、全ての洗浄部材56を洗浄可能である限り任意であり、公知の構成を採用することができる。
【0084】
図10に示す洗浄装置75は、
図1を参照して説明された洗浄装置75と同様に、洗浄板76と、純水供給ノズル77と、を有する。本実施形態では、洗浄板76の洗浄面78は、上方を向いた洗浄部材56の表面に対向できるように下方を向いている。
【0085】
さらに、この洗浄装置75は、洗浄板76および純水供給ノズル77を各洗浄部材56の上方位置まで移動させ、洗浄板76を洗浄部材56に押し付けるとともに回転させる洗浄板移動機構88を有している。洗浄板移動機構88の構成は、公知の構成を採用することができるため、詳細な図示は省略している。例えば、洗浄板移動機構88は、洗浄板76および純水供給ノズル77が固定されるロボットアームと、ロボットアームを各洗浄部材56の上方位置まで移動させつつ、洗浄板76をロボットアームに対して上下動させる移動装置と、を備えている。
【0086】
図11は、さらに他の実施形態に係る基板洗浄装置を模式的に示す上面図であり、
図12は、
図11に示す基板洗浄装置を模式的に示す側面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図9および
図10を参照して説明した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0087】
図11および
図12に示す基板洗浄装置も、複数の(
図11では、2つの)基板洗浄具42を有する。
図11および
図12に示す基板洗浄具42も、洗浄部材56が上を向くように配置されており、さらに、ウエハWの半径方向に沿って配置されている。本実施形態でも、ウエハWを基板保持部41に保持させた状態で、基板洗浄具42のベルヌーイチャック55に流体を供給すると、ウエハWは、該ウエハWの下方に配置された基板洗浄具42のベルヌーイチャック55に向けて吸引され、該吸引力に応じた押圧力で洗浄部材56がウエハWの裏面に押圧される。
【0088】
図12に示すように、基板洗浄装置は、さらに、基板洗浄具42を水平方向に移動させるための直線移動機構90を備えている。直線移動機構90は、ウエハWの洗浄中に、基板洗浄具42をウエハWの半径方向に沿って移動させるための洗浄具移動機構として機能する。本実施形態では、直線移動機構90は、基板洗浄具42を移動させる洗浄具アクチュエータ93と、基板洗浄具42の移動をガイドするガイドレール94と、を備えている。洗浄具アクチュエータ93は、制御装置8に接続されており、制御装置8は、洗浄具アクチュエータ93の動作を制御することで、ウエハWの裏面に対する基板洗浄具42の位置を制御することができる。
【0089】
このような構成を有する基板洗浄装置でウエハWの裏面の洗浄を行うときも、最初は、基板保持部41にウエハWを保持させる。この際、各基板洗浄具42の洗浄部材56は、基板保持部41に保持されたウエハWの裏面に接触するのが好ましい。この状態で、基板洗浄具42のベルヌーイチャック55に流体を供給するとともに、基板保持部41に保持されたウエハWを回転させる。これらの動作により、洗浄部材56は、ベルヌーイチャック55の表面と回転するウエハWの裏面との間に発生した吸引力(負圧)に応じた押圧力で、ウエハWの裏面に押圧される。さらに、直線移動機構90の洗浄具アクチュエータ93を動作させて、基板洗浄具42をウエハWの半径方向に揺動させる。この際、基板洗浄具42の揺動幅は、複数の洗浄部材56でウエハWの裏面の略全面を洗浄できるように設定される。
【0090】
なお、本実施形態でも、ベルヌーイチャック55のチャック本体55d(
図4参照)の外縁がウエハWの外縁を越えるまで、直線移動機構90が基板洗浄具42を移動させると、ベルヌーイチャック55のチャック本体55dの表面とウエハWの裏面との間の空間に形成された真空の一部が破壊されるおそれがある。そのため、図示はしないが、基板洗浄装置は、
図7および
図8を参照して説明されたような周縁部洗浄装置80を備えているのが好ましい。
【0091】
本実施形態に係る基板洗浄装置は、2つの基板洗浄具42を備えているが、基板洗浄具42の数は、この実施形態に限定されない。基板洗浄装置は、3つ以上の基板洗浄具42を有していてもよいし、1つの基板洗浄具42を有していてもよい。
【0092】
本実施形態でも、ウエハWの洗浄中、洗浄部材56は、ベルヌーイチャック55によって発生された吸引力に応じてウエハWの裏面を押圧する。すなわち、洗浄部材56は、ベルヌーイチャック55によって発生された吸引力に応じて、該吸引力とは逆方向にはたらく押圧力でウエハWの裏面を押圧する。したがって、洗浄効率を向上させるために洗浄部材56をウエハWに押し付ける押圧力を大きくしても、ウエハWに過度の応力が加えられることが抑制され、その結果、ウエハWの洗浄中のウエハWの破損を防止することができる。
【0093】
図11および
図12に示す基板洗浄装置も、各洗浄部材56を洗浄するための洗浄装置75を有していていてもよい。本実施形態でも、洗浄装置75の構成は、全ての洗浄部材56を洗浄可能である限り任意であり、公知の構成を採用することができる。
【0094】
図11および
図12に示す洗浄装置75も、
図1を参照して説明された洗浄装置75と同様に、洗浄板76と、純水供給ノズル77と、を有するが、洗浄板76の洗浄面78は、上方を向いた洗浄部材56の表面に対向できるように下方を向いている。さらに、本実施形態に係る洗浄装置75は、洗浄板76を上下動させる洗浄板アクチュエータ79を備えている。洗浄板アクチュエータ79も制御装置8に接続されており、制御装置8は、洗浄板アクチュエータ79の動作を制御可能に構成されている。
【0095】
本実施形態では、洗浄板76および純水供給ノズル77は、基板保持部41の外側で、ガイドレール94に隣接して配置されている。この洗浄装置75で、基板洗浄具42の洗浄部材56を洗浄するときは、直線移動機構90の洗浄具アクチュエータ93を動作させて、基板洗浄具42を洗浄板76の直下に移動させる。次いで、洗浄板アクチュエータ79を動作させて、洗浄板76を基板洗浄具42の洗浄部材56に所定の押圧力で押し付ける。この際、基板洗浄具42を回転させてもよいし、洗浄板76を回転させてもよいし、基板洗浄具42および洗浄板76の両者を回転させてもよい。これにより、基板洗浄具42の洗浄部材56を洗浄することができる。
【0096】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0097】
8 制御装置
15 流体供給ライン
16 流体供給弁
41 基板保持部
42 基板洗浄具
51 洗浄具移動機構
55 ベルヌーイチャック
56 洗浄部材
75 洗浄装置
90 直線移動機構(洗浄具移動機構)