(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070094
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】回路構造体及び自動車用部品
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
H05K1/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180475
(22)【出願日】2022-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 和武
(72)【発明者】
【氏名】山口 悠衣
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠一
(72)【発明者】
【氏名】福川 裕二
(72)【発明者】
【氏名】庄田 広明
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA01
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB54
5E338BB63
5E338CD13
5E338EE21
(57)【要約】
【課題】導電体層の耐久性を向上させる回路構造体の技術を提供することを目的とする。
【解決手段】回路構造体12は、変曲部28を有する絶縁体層20と、絶縁体層20の外方に重ねられる接着層40と、接着層40の外方に重ねられる導電体層30と、をこの順に備え、接着層40は、変曲部28以外の絶縁体層20と導電体層30との間における厚さよりも、変曲部28と導電体層30との間における厚さが小さい部分である薄肉部48を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に外方凸の変曲部を有する絶縁体層と、前記絶縁体層の外方に重ねられる接着層と、前記接着層の外方に重ねられる導電体層と、を備え、
前記接着層は、前記変曲部以外の絶縁体層と前記導電体層との間における厚さよりも、前記変曲部と前記導電体層との間における厚さが小さい部分である薄肉部を有する、回路構造体。
【請求項2】
前記変曲部の曲率半径は、10mm以下である、
請求項1に記載の、回路構造体。
【請求項3】
前記変曲部の両側の面が交差する角度は、0°を超え180°未満の角度である、
請求項1に記載の、回路構造体。
【請求項4】
前記薄肉部の厚さは、前記接着層における前記薄肉部以外の部分の平均厚さの0.9倍以下である、
請求項1に記載の、回路構造体。
【請求項5】
前記導電体層と、前記接着層とによって第一回路構造が形成され、
電気絶縁性を有し、前記導電体層に重ねられている第二接着層と、前記第二接着層を挟んで前記導電体層に重ねられている第二導電体層と、を有する第二回路構造をさらに備える、
請求項1に記載の、回路構造体。
【請求項6】
前記第二回路構造を二以上備えると共に、それぞれの前記第二回路構造が互いに重ねられて形成されている、
請求項5に記載の、回路構造体。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の回路構造体を有する、
自動車用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路構造体及び自動車用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、(イ)易メッキ性プラスチックス又はその組成物及び(ロ)難メッキ性プラスチックス又はその組成物の2種のプラスチックスを用い、(イ)が電気回路のパターンを形成する様に一体的に二色射出成形して段差部を有する電気回路基板を製造する方法において、(イ)、(ロ)の内少なくとも(イ)の段差部表面の角隅部が面取りされるように成形する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1で開示された技術によれば、段差部を有する立体電気回路基板の段差部の角隅部の表面に強固な電気回路を簡単に設けうることができる方法が提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、導電体層の耐久性を向上させる回路構造体の技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
【0007】
<1>回路構造体は、表面に外方凸の変曲部を有する絶縁体層と、前記絶縁体層の外方に重ねられる接着層と、前記接着層の外方に重ねられる導電体層と、を備え、前記接着層は、前記変曲部以外の絶縁体層と前記導電体層との間における厚さよりも、前記変曲部と前記導電体層との間における厚さが小さい部分である薄肉部を有する。
【0008】
<2>の回路構造体は、<1>に記載の回路構造体において、前記変曲部の曲率半径は、10mm以下である。
【0009】
<3>の回路構造体は、<1>又は<2>に記載の回路構造体において、前記変曲部の両側の面が交差する角度は、0°を超え180°未満の角度である。
【0010】
<4>の回路構造体は、<1>から<3>のいずれか一態様に記載の回路構造体において、前記薄肉部の厚さは、前記接着層における前記薄肉部以外の部分の平均厚さの0.9倍以下である。
【0011】
<5>の回路構造体は、<1>から<4>のいずれか一態様に記載の回路構造体において、前記導電体層と、前記接着層とによって第一回路構造が形成され、電気絶縁性を有し、前記導電体層に重ねられている第二接着層と、前記第二接着層を挟んで前記導電体層に重ねられている一以上の第二導電体層をさらに備える。
【0012】
<6>の回路構造体は、<5>に記載の回路構造体において、前記第二回路構造を二以上備えると共に、それぞれの前記第二回路構造が互いに重ねられて形成されている。
【0013】
<7>の自動車用部品は、<1>から<6>のいずれか一態様に記載の回路構造体を有する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、電気伝導体の耐久性を向上させる回路構造体及び自動車用部品の技術提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の実施形態に係る電気回路を有する自動車用部品の一部を示す斜視図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る自動車部品の製造工程を説明する図であり、(A)は、導電体層と接着層が用意される様子、(B)は、導電体層に接着層が貼付された様子を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る自動車部品の製造工程を説明する図であり、(A)は、接着層が接着した導電体層が金型に近づけられる様子、(B)は、接着層が接着した導電体層が金型の形状に沿って塑性変形した様子を示す図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る自動車部品の製造工程を説明する図であり、(A)は、接着層が接着した導電体層と絶縁体層が用意される様子、(B)は、接着層により導電体層と絶縁体層とが接着された様子を示す図である。
【
図5】比較例に係る自動車部品の製造工程を説明する図であり、(A)は、接着層が接着した導電体層が金型に近づけられる様子、(B)は、接着層が接着した導電体層が金型の形状に沿って塑性変形した様子を示す図である。
【
図6】比較例に係る自動車部品の製造工程を説明する図であり、(A)は、接着層が接着した導電体層と絶縁体層が用意される様子、(B)は、接着層により導電体層と絶縁体層とが接着された様子を示す図である。
【
図7】本開示の第一変形例に係る自動車部品を説明する図である。
【
図8】本開示の第二変形例に係る自動車部品を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0017】
[実施形態]
本開示の実施形態に係る回路構造体は、表面に外方凸の変曲部を有する絶縁体層と、前記絶縁体層の外方に重ねられる接着層と、前記接着層の外方に重ねられる導電体層と、をこの順に備え、前記接着層は、前記変曲部以外の絶縁体層と前記導電体層との間における厚さ(厚さ寸法 (mm))よりも、前記変曲部と前記導電体層との間における厚さが小さい部分である薄肉部を有する。以下、回路構造体の具体例を、図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。また、本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0018】
図1は、本開示に係る回路構造体12を有する自動車用部品10を示す図である。本開示に係る自動車用部品10は、絶縁体層20と、導電体層30と、接着層40と、を備える。
【0019】
(構成)
絶縁体層20は、
図1に示されるように、第一面24と、第一面24とは異なる方向へ延びる第二面26とが、外方へ凸形状とされている変曲部28によって連なっている表面22を有する。言い換えると、絶縁体層20は、表面22に第一面24と、第二面26と、変曲部28を有する部材である。第一面24は、絶縁体層20の表面22における平坦に延びる部分である。第二面26は、第一面24とは異なる方向に平坦に伸びる部分である。第一面24と第二面26とは、外方に凸形状とされている変曲部28によって連なって形成されている。言い換えれば、変曲部28は、
図1に示されるように、第一面24と第二面26とが交差する部分である。なお、外方凸の変曲部28とは、絶縁体層20の内角が180°未満となる部位を指す。また、内角の値は、後述する変曲部の角度θの値と一致する。
【0020】
なお、絶縁体層20の形状は、回路構造体12の電気的な定格容量の他、回路構造体12の寸法等に応じて適宜決定してもよい。一例として絶縁体層20における第一面16と第二面18とがなす角度を0°を超え180°未満とすることが好ましく、90°以上180°未満とすることがより好ましい(
図4も参照)。また、一例として絶縁体層20の変曲部28における曲率半径を0.1mm以上10.0mm以下とすることが好ましく、1mm以上5mm以下とすることがより好ましい。
【0021】
なお、第一面16と第二面18とがなす角度の測定手順は、次の通りである。まず、回路構造体12の断面を撮像し、第一面16について、それぞれ任意に五か所選択した部分の座標を取得する。取得した五か所の座標値から、回帰直線を求め、該直線の延びる方向を、第一面16の延びる方向とする。また、第二面18についても同様に延びる方向を求め、2つの直線が交わる角度を、第一面16と第二面18とがなす角度の測定手順とする。
【0022】
また、変曲部28における曲率半径の測定手順は、次の通りである。まず、回路構造体12の断面を撮像し、変曲部28について、それぞれ任意に五か所選択した部分の座標を取得する。そして、取得した五か所の座標値から、円関数を回帰的に求め、得られた円関数の半径を、変曲部28における曲率半径とする。
【0023】
また一例として、絶縁体層20の奥行(
図1における図面奥行方向の長さ)を、0.1mm以上200mm以下とすることが好ましく、1mm以上100mm以下とすることがより好ましい。
【0024】
また、絶縁体層20は、電気伝導性を有していない材料で形成されていれば、どのような材料で形成されていてもよい。一例として、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂のほか、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂などを用いてもよい。
【0025】
導電体層30は、
図1に示されるように、第一面24から第二面26へ亘りながら絶縁体層20の表面22に接着層40を介して重ねられる。すなわち、絶縁体層20の第一面24から第二面26へ亘りながら重ねられる部材である。
図1に示されるように、絶縁体層20の第一面24と重なる部分を、第一部34、絶縁体層20の第二面26と重なる部分を第二部36とする。また、絶縁体層20の変曲部28と重なる部分を変曲部38とする。この導電体層30は後述する製造工程において塑性変形によって形成される部材である。
【0026】
なお、導電体層30は、電気伝導性を有すると共に、後述するように塑性変形が可能とされている部材である。導電体層30の材料としては、一例として銅、アルミニウム等の金属が好適に用いられる。
【0027】
また、導電体層30の形状は、回路構造体12に流される定格容量、回路構造体12の寸法等に応じて適宜決定される。一例として導電体層30の厚さ(図面上下方向の長さ)を、0.01mm以上5mm以下とすることが好ましく、0.1mm以上3mm以下とすることがより好ましい。
【0028】
なお、導電体層30の厚さの測定手順は、次の通りである。まず、導電体層30の断面を撮像し、それぞれ任意に五か所選択した部分の厚さを取得する。取得した五か所の厚さの平均値を、導電体層30の厚さとする。
【0029】
また一例として、導電体層30の奥行(図面奥行方向の長さ)を、0.1mm以上200mm以下とすることが好ましく、1mm以上100mm以下とすることがより好ましい。
【0030】
接着層40は、
図1に示されるように、膜状に形成され、絶縁体層20と導電体層30との間に挟まれながら導電体層30を表面22に接着するとともに、第一面24と導電体層30とに挟まれている厚さ及び第二面26と導電体層30とに挟まれている厚さよりも小さい薄肉部48が、変曲部28と導電体層30とに挟まれている部分に形成されている。具体的には、接着層40は、膜状に形成され、絶縁体層20と導電体層30との間に挟まれながら導電体層30を表面22に接着する部材である。言い換えれば接着層40は、膜状とされ、可撓性を有すると共に厚さ方向の両面で他の部材と接着する部材である。接着層40における、第一面24と導電体層30の第一部34とに挟まれている部分を第一部44とし、絶縁体層20の第二面26と導電体層30の第二部36と挟まれている部分を第二部36とする。
【0031】
なお、接着層40の形状は、導電体層30の形状に応じて適宜決定される。一例として接着層40の厚さは、0.001mm以上1mm以下であり、好ましくは、0.01mm以上0.5mm以下であり、より好ましくは0.4mmである。
【0032】
なお、接着層40の厚さの測定手順は、次の通りである。まず、接着層40の断面を撮像し、それぞれ任意に五か所選択した部分の厚さを取得する。取得した五か所の厚さの平均値を、導電体層40の厚さとする。
【0033】
また一例として、接着層40の奥行は、0.1mm以上200mm以下であり、好ましくは、1mm以上100mm以下である。なお、接着層40は、電気絶縁性を有していることが好ましい。接着層40は、一例としてWelQuick(登録商標)が用いられる。
【0034】
なお、本開示で説明する回路構造体12は、
図1に示されるように、第一面24が延びる方向に対して交差する方向(奥行き方向)に複数の導電体層30を有している。
図1では3本の導電体層30が並んでいる。
【0035】
続いて、
図2から
図4を適宜参照しながら、本開示に係る回路構造体12の製造工程を説明する。なお、本開示に係る回路構造体12の製造工程において、各部材を搬送する搬送手段は、図示を省略するが、一例としてロボットアーム等の搬送手段が適宜用いられる。また、
図2から
図4の各図は、
図1における1A-1A線の断面に相当する部分を見ている。
【0036】
(製造工程)
図2は、回路構造体12における導電体層30と接着層40とが貼付される様子を示す図であり、
図2(A)は、導電体層30と接着層40が用意される様子、
図2(B)は、導電体層30に接着層40が貼付される様子を示す図である。
【0037】
本開示に係る回路構造体12では、まず
図2(A)に示されるように、導電体層30と接着層40が用意される。そして、
図2(B)に示されるように、導電体層30(
図2における下側の面)の下面と接着層40の上面(
図2における上側の面)とが接着される。なお、特に図示しないが、接着層40は、下面側からテトラフルオロエチレン等の接着層40と接着しづらい材料で形成されたヘラを用いられて導電体層30に貼付される。
【0038】
図3は、回路構造体12における導電体層30を変形させる工程を説明する図であり、
図3(A)は、接着層40が接着している導電体層30がダイ14及びパンチ15の間に配置される様子、
図3(B)は、接着層40が接着している導電体層30がダイ14及びパンチ15の形状に沿って塑性変形している様子を示す図である。
【0039】
図3(A)に示されるように、ダイ14の上面は、
図1に示される導電体層30と同様の形状とされており、平坦に延びる第一面16と、第一面16と交差する方向に向かって平坦に延びる第二面18とを有している。また、第一面16と第二面18との間には、外方に向かって凸となる角部14Cが形成されている。なお、ダイ14の上面は、一例としてテトラフルオロエチレン等の接着層40と接着しづらい材料でコーティングされていることが好ましい。
【0040】
また、導電体層30及び接着層40に対してダイ14の反対側(
図3における図面上側)には、パンチ15が配置されている。パンチ15は、後述するように、ダイ14とともに導電体層30を挟み込んで塑性変形させる金型である。なお、パンチ15の下面、すなわち導電体層30と接触する面は、ダイ14の角部14Cと対向する部分で角部14Cよりも大きな曲率半径を有していることを除き、ダイ14の上面と同等の形状とされている。
【0041】
本開示に係る回路構造体12の製造工程では、
図3(A)に示されるように、ダイ14の上面に、導電体層30が接着層40を間に配置されている状態で近付けられる。そして
図3(B)に示されるように、パンチ15がダイ14に近づき、導電体層30を挟み込むことで導電体層30は、第一面16と第二面18とが交差する形状、すなわちダイ14の上面の形状に沿うように塑性変形する。
【0042】
そして、
図3(B)に示されるように、導電体層30における第一面16に対応する部分が第一部34となり、第二面18に対応する部分が第二部36となる。また、第一部34と第二部36との間の部分が変曲部38となる。言い換えれば、本開示における導電体層30の第一部34、第二部36及び変曲部38は、導電体層30がダイ14及びパンチ15によって塑性変形することによって形成される。また言い換えれば、本開示における接着層40の第一部44及び第二部46は、導電体層30がダイ14及びパンチ15によって塑性変形することによって形成される。
【0043】
ここで、
図3(B)に示されるように、接着層40は、第一部44及び第二部46に比べて厚さが減少した薄肉部48が形成される。この薄肉部48の厚さは、一例として、接着層40における第一部44及び第二部46の平均厚さのうち、いずれか薄い方の0.9倍以下である。
【0044】
なお、第一部44の平均厚さの測定手順は、次の通りである。まず、回路構造体12の断面を撮像し、それぞれ任意に五か所選択した部分の厚さを取得する。取得した五か所の厚さの平均値を、第一部44の平均厚さとする。また、第二部46についても同様に平均厚さを求める。
【0045】
図4は、回路構造体12における導電体層30と絶縁体層20とが接着される工程を説明する図であり、(A)は、接着層40が接着している導電体層30と絶縁体層20が用意される様子、(B)は、接着層40により導電体層30と絶縁体層20とが接着されている様子を示す図である。
【0046】
図4(A)に示されるように、絶縁体層20の表面22は、第一面24と、第一面24と交差する方向に向かって平坦に延びる第二面26とを有している。言い換えれば、前述の工程では導電体層30及び接着層40は、
図4(A)に示されるように、絶縁体層20の表面22に沿う形状に曲げられている。
【0047】
本開示に係る回路構造体12の製造工程では、
図4(A)に示されるように、導電体層30が接着層40を間に配置されている状態で、絶縁体層20の上面から、導電体層30が近付けられる。そして
図4(B)に示されるように、導電体層30は、絶縁体層20の上面の形状に沿うように接着される。
【0048】
そして、
図4(B)に示されるように、絶縁体層20の表面22における導電体層30の第一部34に対応する部分が第一面24であり、導電体層30の第二部36に対応する部分が第二面26となる。また、第一面24と第二面26との間の部分を変曲部28となる。言い換えれば、本開示における接着層40における第一部44は、絶縁体層20の第一面24と、導電体層30の第一部34とに挟まれている部分である。また言い換えれば、本開示における接着層40における第二部46は、絶縁体層20の第二面26と、導電体層30の第二部36とに挟まれている部分である。なお、接着層40は、絶縁体層20の変曲部28において全面に亘り接着している。
【0049】
なお、
図4に示されるように、第一面24は、第二面26の延びる方向と変曲部28において角度θで交差する。言い換えれば、変曲部28の角度θ(第一面24及び第二面26の面が交差する角度)は、第一面24の接線と第二面26の接線とが交わる角度である。
【0050】
上述した製造工程を奥行方向に並ぶ導電体層30の個数だけ繰り返すことにより、
図1に示される回路構造体12を有する自動車用部品10が形成される。
【0051】
(比較例に係る製造工程)
ここで、
図5及び
図6を適宜参照しながら、比較例に係る回路構造体112の製造工程を説明する。なお、本開示の実施形態に係る回路構造体12が有する導電体層30、接着層40及び絶縁体層20と、比較例に係る回路構造体112が有する導電体層130、接着層140及び絶縁体層20は、製造工程以前においては、互いに同等の部材とされている。
【0052】
図5は、比較例に係る回路構造体112における導電体層130を変形させる工程を説明する図であり、
図5(A)は、比較例に係る導電体層130がダイ14及びパンチ15の間に配置される様子、
図5(B)は、比較例に係る導電体層130がダイ14及びパンチ15の形状に沿って塑性変形した様子を示す図である。
【0053】
比較例に係る回路構造体112の製造工程では、
図5(A)に示されるように、導電体層130が直接的にダイ14の上面から近付けられる。そして、
図5(B)に示されるようにパンチ15がダイ14に近づき、導電体層30を挟み込むことで、導電体層130は、ダイ14の上面の形状に沿うように塑性変形される。すなわち、比較例に係る回路構造体112の製造工程では、導電体層130は、接着層140を下面に有していない状態で変形される。これにより、導電体層130の第一部134及び第二部136が形成される。
【0054】
そして、導電体層130が塑性変形した後は、本開示に係る製造工程と同様の接着層140が、導電体層130の下面側に接着される。これにより、接着層140の第一部144及び第二部146が形成される。
【0055】
続いて、
図6は、比較例に係る回路構造体112における導電体層130と絶縁体層20とが接着される工程を説明する図であり、(A)は、接着層140が接着している導電体層130と絶縁体層20が用意される様子、(B)は、接着層140により導電体層130と絶縁体層20とが接着されている様子を示す図である。
【0056】
比較例に係る回路構造体112の製造工程では、
図6(A)に示されるように、導電体層130が接着層140を間に配置されている状態で、絶縁体層20の上面から、導電体層130が近付けられる。そして
図6(B)に示されるように、導電体層130は、絶縁体層20の上面の形状に沿うように接着される。これにより、比較例に係る回路構造体112における接着層140の変曲部148では、実施形態に係る回路構造体12における接着層40における薄肉部48が形成されない。
【0057】
ここで、比較例に係る回路構造体112の製造工程では、
図5(A)に示されるように、ダイ14の角部14Cが直接的に導電体層130と接触するため、導電体層130における角部14Cと接触する部分には、集中的に荷重が加わる。このため、
図5(B)に示されるように、比較例に係る回路構造体112の製造工程では、導電体層130の変曲部138における、曲げの内側には、圧力が集中した圧力集中領域139が生じる。これにより、比較例に係る回路構造体112の導電体層130は、圧力集中領域139で耐久性が低下する可能性がある。
【0058】
(作用及び効果)
ここで、本開示に係る回路構造体12では、導電体層30と接着層40をあらかじめ接着させている状態で、接着層40が曲げの内側となるように曲げられて形成される。すなわち、この回路構造体12では、導電体層30が曲げられる際にダイ14の角部14Cと接触する部材は、接着層40であるため、導電体層30には圧力が集中しにくい。
【0059】
したがって、本開示に係る回路構造体12では、導電体層30の変曲部38に作用する圧力が低減されるため、導電体層30の耐久性を向上させることができる。
【0060】
なお本開示に係る回路構造体12では、変曲部28では、ダイ14の角部14Cと当接し、集中的に型から受ける圧力が高まるため接着層40が薄くなっている薄肉部48が形成される。すなわち、本開示に係る製造工程により製造された回路構造体12では、絶縁体層20の変曲部28と導電体層30の変曲部38とに挟まれている接着層40の厚さは、接着層40の第一部44の厚さ及び接着層40の第二部46の厚さのいずれよりも厚さが小さい。
【0061】
なお、薄肉部48の厚さの測定手順は、次の通りである。まず、回路構造体12の断面を撮像し、変曲部38を頂点とした、第一面16及び第二面18とがなす角度θの二等分線が延びる方向の接着層40の厚さを取得し、得られた値を薄肉部48の厚さとする。なお、変曲部28の断面が丸みを有しており、角度θを測定できない場合は、変曲部28の丸みの法線と直交する方向に延びる方向の接着層40の厚さを取得し、得られた値を薄肉部48の厚さとする。
【0062】
言い換えれば、本開示に係る回路構造体12、すなわち接着層40に薄肉部48が形成されている回路構造体12は、接着層140に薄肉部が形成されない回路構造体112と比べて、導電体層30の耐久性を向上させることができる。
【0063】
また、本開示に係る自動車用部品10は、本開示に係る回路構造体12を有している。言い換えれば、本開示に係る自動車用部品10では、本開示に係る回路構造体12を有していない自動車用部品10と比べて、導電体層30の耐久性が向上した回路構造体12を得ることができる。
【0064】
続いて、本開示に係る回路構造体12の変形例について説明する。なお、各変形例の構成について、上述の実施形態と同様の構成については、同一の符号を用い、その説明を省略する場合がある。
【0065】
(第一変形例)
図7は、第一変形例に係る回路構造体12を示す図である。
図7に示すように、第一変形例に係る回路構造体12は、導電体層30と、接着層40とによって第一回路構造が形成され、電気絶縁性を有し、導電体層30に重ねられている第二導電体層50と、第二導電体層50を接着する第二接着層52を有する第二回路構造をさらに備えている。また、第一変形例に係る回路構造体12では、第二回路構造が複数形成されている。なお、第二回路構造、すなわち第二導電体層50及び第二接着層52の個数は、回路構造体12の容量等によって適宜決定されるが一例として、3個である。
【0066】
図7に示されるように、第二導電体層50は、一例として導電体層30と同様の材料により同様の形状とされている部材である。また第二接着層52は、一例として接着層40と同様の材料により同様の形状とされている部材である。
【0067】
図7に示されるように、第二導電体層50は、第二接着層52を介してそれぞれ接着され、曲げの最も内側(
図7における図面下側)の第二導電体層50が導電体層30に接着している。言い換えれば、第一変形例に係る回路構造体12は、接着層40と導電体層30が複数重ねられて形成されている。
【0068】
なお、第二導電体層50及び第二接着層52は、それぞれ本開示に係る実施形態と同様の製造工程により塑性変形され、互いに重ねられて接着されている。
【0069】
本変形に係る回路構造体12では、電気絶縁性を有し、導電体層30に重ねられている第二接着層52と、第二導電体層50を挟んで導電体層30に重ねられている第二導電体層50を備えている。また、本変形例に係る回路構造体12では、二以上の第二回路構造が互いに重ねられて形成されている。したがって、本変形例に係る回路構造体12では、導電体層30及び導電体層30に重ねられている第二導電体層50に電流を流すことが可能となる。すなわち、本変形例によれば、複数の電気回路がまとめられている回路構造体12を得ることができる。
【0070】
なお、本変形例に係る回路構造体12では、第二回路構造が互いに重ねられて形成されているが、これに限らず、奥行き方向に重ねられていてもよい。また本変形例に係る回路構造体12では、第二導電体層50が導電体層30に対して電気的に絶縁されていたが、これに限らず電気的に接続されていてもよい。また本変形例に係る回路構造体12では、第二導電体層50が互いに電気的に絶縁されていたが、これに限らず電気的に接続されていてもよい。
【0071】
(第二変形例)
図8は、第二変形例に係る回路構造体12を示す図である。
図8に示すように、第二変形例に係る回路構造体12は、絶縁体層20の第一面24、導電体層30の第一部34及び接着層40の第一部44を延び方向に挟んだ二箇所に、絶縁体層20の第二面26、導電体層30の第二部36及び接着層40の第二部46を有している。すなわち、本変形例に係る回路構造体12は、複数の変曲部28を有している。
【0072】
なお、本変形例に係る導電体層30及び接着層40は、それぞれ本開示に係る実施形態と同様の製造工程により塑性変形され、互いに重ねられて接着されている。言い換えれば、絶縁体層20が複数の変曲部28を有する場合においても、本開示に係る実施形態と同様に、導電体層30と接着層40をあらかじめ接着させている状態で、接着層40側が曲げの内側となるように曲げられることによって形成される。
【0073】
図8に示されるように、外方へ凸形状とされている変曲部28が、複数形成される場合においても、本実施形態に係る回路構造体12と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0074】
(その他の変形例)
なお、上述の説明では、回路構造体12は、自動車用部品10に設けられていたがこれに限らない。すなわち、本開示に係る回路構造体12は、電化製品、電気工作物等を含め、電気回路を有する製品に適用可能してもよい。
【0075】
また、上述の説明では、回路構造体12における接着層40は、絶縁性を有していたが、これに限られない。例えば、第一変形例の第二接着層52のように、他の導電体層と接触する場合を除き、絶縁性を有していない材料とされていてもよい。
【0076】
また、上述の説明では、絶縁体層20の第一面24及び第二面26は、平坦に延びていたが、本開示に係る回路構造体12の形状は、これに限られない。すなわち、第一面24及び第二面26は、導電体層30に集中的な圧力が加わらない程度であれば、巨視的に視た場合に緩やかな曲面とされている場合も含まれる。
【0077】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態を説明したが、本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0078】
10 自動車用部品
12 回路構造体
14 ダイ
14C 角部
15 パンチ
16 第一面
18 第二面
20 絶縁体層
22 表面
24 第一面
26 第二面
28 変曲部
30 導電体層
34 第一部
36 第二部
38 変曲部
40 接着層
44 第一部
46 第二部
48 薄肉部
50 第二導電体層
52 第二接着層
112 回路構造体
130 導電体層
134 第一部
136 第二部
138 変曲部
139 圧力集中領域
140 接着層
144 第一部
146 第二部
148 変曲部