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特開2024-70377二酸化炭素分離用イオン液体組成物、前記二酸化炭素分離用イオン液体組成物を担持した二酸化炭素吸着剤、及び前記二酸化炭素吸着剤を充填した吸着塔を備える二酸化炭素分離回収装置
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  • 特開-二酸化炭素分離用イオン液体組成物、前記二酸化炭素分離用イオン液体組成物を担持した二酸化炭素吸着剤、及び前記二酸化炭素吸着剤を充填した吸着塔を備える二酸化炭素分離回収装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070377
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】二酸化炭素分離用イオン液体組成物、前記二酸化炭素分離用イオン液体組成物を担持した二酸化炭素吸着剤、及び前記二酸化炭素吸着剤を充填した吸着塔を備える二酸化炭素分離回収装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240516BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240516BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20240516BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20240516BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20240516BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/62 ZAB
B01D53/14 220
B01D53/14 100
B01D53/82
B01D53/96
B01J20/34 F
B01J20/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180826
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100199691
【弁理士】
【氏名又は名称】吉水 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100140198
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 保子
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100158665
【弁理士】
【氏名又は名称】奥井 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100145089
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】牧野 貴至
(72)【発明者】
【氏名】河野 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和寛
(72)【発明者】
【氏名】進藤 学
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G066
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC05
4D002AC10
4D002BA03
4D002CA07
4D002DA31
4D002DA41
4D002DA46
4D002DA70
4D002EA04
4D002EA07
4D002EA08
4D002FA01
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA18
4D020BA19
4D020BA30
4D020BB01
4D020BC01
4D020BC02
4D020CA05
4D020CC01
4G066AA80B
4G066AB07B
4G066AB09B
4G066AB12B
4G066AB13B
4G066AB15B
4G066AC17B
4G066BA09
4G066CA35
4G066GA01
4G066GA06
4G066GA14
4G066GA31
(57)【要約】
【課題】高い二酸化炭素吸収量と、低い二酸化炭素吸収熱/吸着熱を示す、二酸化炭素分離用イオン液体組成物、前記二酸化炭素分離用イオン液体組成物を担持した二酸化炭素吸着剤、及び前記二酸化炭素吸着剤を充填した吸着塔を備えた二酸化炭素分離回収装置を提供する。
【解決手段】アニオンがアミノカルボキシレート、又はアミノスルホネートであり、カチオンがテトラアルキルアンモニウム又はテトラアルキルホスホニウムである第一のイオン液体と、アニオンがカルボキシレートであり、カチオンがジアルキルイミダゾリウム又はアンモニウムである第二のイオン液体と、を含有する二酸化炭素分離用イオン液体組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオンが下記の式(1)で表されるアミノカルボキシレート、又は下記の式(2)で表されるアミノスルホネートであり、カチオンがテトラアルキルアンモニウム又はテトラアルキルホスホニウムである第一のイオン液体と、
アニオンがカルボキシレートであり、カチオンがジアルキルイミダゾリウム又はアンモニウムである第二のイオン液体と、
を含有する二酸化炭素分離用イオン液体組成物。
【化1】
(式中、nは1~5の整数を表す。)
【化2】
(式中、mは1~3の整数を表す。)
【請求項2】
前記第一のイオン液体のアニオンが、アミノアセテート、又は2-アミノエタンスルホン酸である、請求項1に記載の二酸化炭素分離用イオン液体組成物。
【請求項3】
前記第一のイオン液体のカチオンが、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラエチルスルホニウム、又はテトラブチルホスホニウムである、請求項1又は2に記載の二酸化炭素分離用イオン液体組成物。
【請求項4】
前記第二のイオン液体のアニオンが、アセテート又はメトキシエチルアセテートである、請求項1又は2に記載の二酸化炭素分離用イオン液体組成物。
【請求項5】
前記第二のイオン液体のカチオンが、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、N-ジエチル-N-ヘプチル-N-メチルアンモニウム、又はN-ジエチル-N-メチル-N-メトキシエチルアンモニウムである、請求項1又は2に記載の二酸化炭素分離用イオン液体組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の二酸化炭素分離用イオン液体組成物を、有機粒子又は無機粒子に担持した、二酸化炭素吸着剤。
【請求項7】
請求項6に記載された二酸化炭素吸着剤を充填した一つ以上の吸着塔を備える、二酸化炭素分離回収装置。
【請求項8】
加熱、減圧、及びガスによるスイープのいずれか、又はそれらの組み合わせによって、前記二酸化炭素吸着剤が吸着した二酸化炭素を脱離する手段を有する、請求項7に記載の二酸化炭素分離回収装置。
【請求項9】
前記スイープに用いるガスが、水蒸気又は水素である、請求項8に記載の二酸化炭素分離回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素分離用イオン液体組成物、前記二酸化炭素分離用イオン液体組成物を担持した二酸化炭素吸着剤、及び前記二酸化炭素吸着剤を充填した吸着塔を備える二酸化炭素分離回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素を分離回収する技術は、昨今の地球環境保護に関する温暖化ガス排出量の削減の観点から、製鉄所、セメント工場、火力発電所、ボイラー排ガス、大気等を対象として、盛んに研究が進められている。また、温暖化ガス排出量の削減の目的以外にも、天然ガスの精製、アンモニアの製造、天然ガスを原料とする水素の製造、農業やバイオ産業における二酸化炭素の施肥、さらには、宇宙空間や海中などの閉鎖状態にある住環境の維持に関しても、研究されている。
【0003】
代表的な二酸化炭素のガス分離技術としては、(1)二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を選択的に吸収液へ吸収させることで分離させ、次いで吸収液から二酸化炭素を放散させて二酸化炭素を回収する吸収法、(2)二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を選択的に吸着剤へ吸着させることで分離させ、次いで吸着剤から二酸化炭素を脱着させて二酸化炭素を回収する吸着法、(3)膜の前後での二酸化炭素の分圧差を利用し、二酸化炭素を含む分離対象ガスを膜の一方側から供給し、分離対象ガス中の二酸化炭素を膜の他方側へ選択的に透過分離する膜分離法、等が挙げられる。
また、吸収法及び吸着法は、化学反応により二酸化炭素を吸収/吸着し、加熱もしくは減圧による逆反応で二酸化炭素を放散/脱着させる化学吸収法/化学吸着法と、化学反応によらず、物理的に二酸化炭素を吸収/吸着し、加熱もしくは減圧により二酸化炭素を放散/脱着させる物理吸収法/物理吸着法に分類される。
さらに、二酸化炭素を回収する手段としては、圧力変化により二酸化炭素を回収する圧力スイング吸収/吸着(PSA)、温度変化により二酸化炭素を回収する温度スイング吸収/吸着(TSA)、圧力変化及び温度変化を組み合わせた圧力-温度スイング吸収/吸着(PTSA)、等が知られている。
【0004】
これらの技術の中で、モノエタノールアミン(MEA)等のアミン水溶液を吸収液とする二酸化炭素の化学吸収法が商用化されている。しかしながら、アミン水溶液を用いた化学吸収法には、吸収液の揮発による損失、吸収液の可燃性、アミン水溶液の高比熱及び蒸発潜熱に起因する二酸化炭素の回収のための大きなエネルギー消費量等の技術的課題が存在する。
【0005】
イオン液体は、一般に、カチオンとアニオンのみから構成され、室温近傍以下に融点をも持つ液状の塩である。イオン液体の特徴として、幅広い温度範囲で液体であること、蒸気圧が非常に低く揮発しないこと、難燃性であること、優れた耐熱性と化学的安定性を有すること、広い電位窓、高いイオン伝導性を有すること、多様な化学種を溶解可能なこと等が挙げられる。イオン液体のこれらの特性により、アミン水溶液の技術的課題(揮発による損失、可燃性、高比熱及び蒸発潜熱に起因する大きなエネルギー消費量)を解決できるため、イオン液体を、二酸化炭素の吸収液、吸着剤、又は分離膜として使用することが検討されている。
【0006】
イオン液体は、物理吸収液/吸着剤、化学吸収液/吸着剤として利用可能である。高圧高濃度の二酸化炭素を含む混合ガスからの二酸化炭素分離回収には物理吸収液/吸着剤が適しており、低圧低濃度の二酸化炭素を含む混合ガスからの二酸化炭素分離回収には化学吸収液/吸着剤が適している。
【0007】
非特許文献1には、トリへキシル(テトラデシル)ホスホニウム[P666,14]をカチオンとし、アミノ酸の一種であるプロリン[Pro]、もしくはメチオニン[Met]をアニオンとするイオン液体の、二酸化炭素の吸収特性が報告されている。これらのイオン液体を用いることで、大気圧程度までの分圧の二酸化炭素が、イオン液体1molあたり0.8~1mol程度で化学吸収されることが記載されている。同等の条件下におけるMEA水溶液の二酸化炭素の吸収量が、アミン1molあたり0.6mol程度であることから、これらのイオン液体は、二酸化炭素の化学吸収液として、MEA水溶液よりも優れていることがわかる。
なお、化合物名に続く[]内は化合物名を略記したものであり、以下、同様とする。
【0008】
非特許文献2には、トリへキシル(テトラデシル)ホスホニウム[P666,14]をカチオンとし、プロリン及びメチオニン以外のアミノ酸をアニオンとするイオン液体の二酸化炭素の吸収特性が報告されている。アニオンがグリシネート[Gly]、サルコシネート、バリネート、ロイシネート、イソロイシネートの場合も、大気圧程度までの分圧の二酸化炭素が、イオン液体1molあたり0.8~1mol程度で化学吸収されることが記載されている。一方、非特許文献1に記載のイオン液体を含め、これらのイオン液体は、二酸化炭素の吸収に伴い形成される水素結合により、粘度が上昇することも記載されている。粘度の上昇は吸収速度及び放散速度の低下を招く。
【0009】
非特許文献3には、二酸化炭素吸収時のイオン液体の高粘度化による吸収速度及び放散速度の低下を回避するために、イオン液体を多孔質材料に担持させた吸着剤とすることにより、イオン液体と二酸化炭素を含む混合ガスとの接触面積、又はイオン液体から二酸化炭素が放散する面積を増加させることが記載されている。イオン液体を担持させるための多孔質材料として、アルミナ、シリカ、活性炭、カーボンナノチューブ、酸化グラフェン等の無機粒子、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート等の有機粒子、金属有機構造体、等の有機無機ハイブリッド粒子が挙げられている。
また、非特許文献4には、二酸化炭素吸着剤を用いる固定床、流動床、移動床を備えた種々の二酸化炭素分離回収装置が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Burcu E. Gurkan, et al.,Equimolar CO2 Absorption by Anion-Functionalized Ionic Liquids, Journalof American Chemical Society, 2010, 132, 2116-2117
【非特許文献2】Brett F. Goodrich, et al., Experimental Measurements ofAmine-Functionalized Anion-Tethered Ionic Liquids with Carbon Dioxide, Ind. Eng Chem.Res., 2011,50, 111-118
【非特許文献3】Shuang Zheng et Al., State of theart of ionic liquid-modified adsorbents for CO2 capture andseparation, AIChE Journal 2021;e17500
【非特許文献4】Chaitanya Dhoke, et al., Reviewon Reactor Configurations for Adsorption-Based CO2 Capture, Industrial & Engineering Chemistry Research, 2021, 60,3779-3798
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
地球環境の保全や、未活用の二酸化炭素を炭素源として有効に利用するために、二酸化炭素を高効率に分離回収する技術が必要とされている。以前から、バイオガスや石炭ガス化ガス等の高圧高濃度の二酸化炭素を含む混合ガスを対象とした吸収液/吸着剤の開発が進められてきた。一方、近年では、カーボンニュートラルの実現に向けて、天然ガス火力発電所の排ガスやボイラー排ガス等の低圧低濃度の二酸化炭素を含む混合ガスや大気を対象とした化学吸収液/吸着剤の開発が特に必要とされている。
低圧低濃度の二酸化炭素を分離回収する場合、二酸化炭素を効率的に捕捉するため、二酸化炭素と強く化学結合する化学吸収液/吸着剤の利用が求められる。一方で、化学結合を強くすると、二酸化炭素の吸収熱/吸着熱も大きくなるため、化学結合を切断して二酸化炭素を回収する際に、より多くのエネルギーを消費する。そのため、二酸化炭素を高効率に分離回収するために、二酸化炭素の吸収量/吸着量を増加させつつ、二酸化炭素の吸収熱/吸着熱を低減できる、吸収液/吸着剤を設計することが求められている。
【0012】
本発明は、上記の要請に応えるべく、高圧高濃度から低圧低濃度まで、特に5kPa以下の二酸化炭素を高い効率で吸収/吸着でき、かつ吸収熱/吸着熱が低減された二酸化炭素分離用イオン液体組成物、前記二酸化炭素分離用イオン液体組成物を担持した二酸化炭素吸着剤、及び前記二酸化炭素吸着剤を充填した吸着塔を備える二酸化炭素分離回収装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、アミノ酸由来のアニオンであるアミノカルボキシレートを有するイオン液体が二酸化炭素を吸収した際、中間体からプロトンが脱離し、アミノ基等の塩基性部位と結合することで大きな熱を発生する現象に注目した。そこで、プロトンが中間体から脱離しないよう、第二のイオン液体を用いて中間体を溶媒和により安定化させて、脱離したプロトンの結合に伴う前記熱の発生を抑制することで、二酸化炭素の吸収量/吸着量の増加と、吸収熱/吸着熱の低減を両立できないかと発想した。そして、アミノカルボキシレート等をアニオンとするイオン液体と、溶媒和機能を有するイオン液体とから成る組成物について検討し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用するものである。
【0014】
(1)アニオンが下記の式(1)で表されるアミノカルボキシレート、又は下記の式(2)で表されるアミノスルホネートであり、カチオンがテトラアルキルアンモニウム又はテトラアルキルホスホニウムである第一のイオン液体と、
アニオンがカルボキシレートであり、カチオンがジアルキルイミダゾリウム又はアンモニウムである第二のイオン液体と、
を含有する二酸化炭素分離用イオン液体組成物。
【0015】
【化1】
(式中、nは1~5の整数を表す。)
【0016】
【化2】
(式中、mは1~3の整数を表す。)
【0017】
(2)前記第一のイオン液体のアニオンが、アミノアセテート、又は2-アミノエタンスルホン酸である、前記(1)の二酸化炭素分離用イオン液体組成物。
(3)前記第一のイオン液体のカチオンが、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラエチルスルホニウム、又はテトラブチルホスホニウムである、前記(1)又は(2)の二酸化炭素分離用イオン液体組成物。
(4)前記第二のイオン液体のアニオンが、アセテート又はメトキシエチルアセテートである、前記(1)から(3)のいずれかの二酸化炭素分離用イオン液体組成物。
(5)前記第二のイオン液体のカチオンが、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、N-ジエチル-N-ヘプチル-N-メチルアンモニウム、又はN-ジエチル-N-メチル-N-メトキシエチルアンモニウムである、(1)から(4)のいずれかの二酸化炭素分離用イオン液体組成物。
(6)前記(1)から(5)のいずれかの二酸化炭素分離用イオン液体組成物を、有機粒子又は無機粒子に担持した、二酸化炭素吸着剤。
(7)前記(6)の二酸化炭素吸着剤を充填した一つ以上の吸着塔を備える、二酸化炭素分離回収装置。
(8)加熱、減圧、及びガスによるスイープのいずれか、又はそれらの組み合わせによって、前記二酸化炭素吸着剤が吸着した二酸化炭素を脱離する手段を有する、前記(7)の二酸化炭素分離回収装置。
(9)前記スイープに用いるガスが、水蒸気又は水素である、前記(8)の二酸化炭素分離回収装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明の二酸化炭素分離用イオン液体組成物によれば、低圧低濃度の二酸化炭素を含む混合ガスから、多量の二酸化炭素を、より少ないエネルギー消費量で分離回収することができる。また、本発明の二酸化炭素分離用イオン液体組成物を有機粒子又は無機粒子に担持させた二酸化炭素吸着剤、及び前記吸着剤を用いた二酸化炭素分離回収装置により、二酸化炭素の吸収/吸着に伴う粘度上昇による二酸化炭素の吸収/吸着速度及び放散/脱着速度の低下をも回避しつつ、二酸化炭素を多量に、かつ、より少ないエネルギー消費量で分離回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る二酸化炭素分離回収装置を、排気ガスからの分離回収に適用した場合の一例を模式的に示す図
図2】イオン液体組成物の二酸化炭素吸収量の測定に用いた装置を模式的に示す図
図3】イオン液体組成物の二酸化炭素吸収熱の測定に用いた装置を模式的に示す図
図4】本発明の実施例1-1に係るイオン液体組成物の二酸化炭素濃度5%、40℃での二酸化炭素吸収前後における13C NMRスペクトル
図5】本発明の実施例1-2に係るイオン液体組成物の二酸化炭素濃度5%、40℃での二酸化炭素吸収前後における13CNMRスペクトル
図6】本発明の実施例1-3に係るイオン液体組成物の二酸化炭素濃度5%、40℃での二酸化炭素吸収前後における13C NMRスペクトル
図7】本発明の実施例1-4に係るイオン液体組成物の二酸化炭素濃度5%、40℃での二酸化炭素吸収前後における13C NMRスペクトル
図8】本発明の実施例1-5に係るイオン液体組成物の二酸化炭素濃度5%、40℃での二酸化炭素吸収前後における13C NMRスペクトル
図9】本発明の比較例1に係るイオン液体組成物の二酸化炭素濃度5%、40℃での二酸化炭素吸収前後における13C NMRスペクトル
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、アニオンが下記の式(1)で表されるアミノカルボキシレート、又は下記の式(2)で表されるアミノスルホネートであり、カチオンがテトラアルキルアンモニウム又はテトラアルキルホスホニウムである第一のイオン液体と、アニオンがカルボキシレートであり、カチオンがジアルキルイミダゾリウム又はアンモニウムである第二のイオン液体と、を含有する二酸化炭素分離用イオン液体組成物、を提供するものである。
【0021】
【化3】

(式中、nは1~5の整数を表す。)
【0022】
【化4】
(式中、mは1~3の整数を表す。)
【0023】
また、本発明は、前記二酸化炭素分離用イオン液体組成物を、有機粒子又は無機粒子に担持した二酸化炭素吸着剤、及び前記二酸化炭素吸着剤を充填した一つ以上の吸着塔を備える、二酸化炭素分離回収装置を提供するものである。
【0024】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)に係る二酸化炭素分離膜用イオン液体組成物、前記二酸化炭素吸着剤、及び二酸化炭素分離回収装置について、その詳細を順に記載する。
なお、数値範囲等を「~」を用いて表す場合、その下限及び上限として記載された数値をも含む意味である。
【0025】
<第一のイオン液体>
本実施形態に係る第一のイオン液体は、アニオンが前記式(1)で表されるアミノカルボキシレート、又は前記式(2)で表されるアミノスルホネートであり、カチオンがテトラアルキルアンモニウム又はテトラアルキルホスホニウムである。
【0026】
式1及び式2で表されるアニオンのアルキレン基の数nは、イオン液体の製造コストを低下させるうえで、小さい方が好ましい。
アニオンとしては、グリシネート[Gly]、2-アミノエタンスルホン酸(タウレート)[Tau]等が挙げられる。
【0027】
第一のイオン液体のカチオンは、窒素原子、又はリン原子に4つのアルキル基が結合したものである。アルキル基は炭素数が2~16であることが好ましく、それぞれ同一でも異なっていてもよいが、イオン液体の製造コストを低下させるうえで、同一であることが好ましい。テトラエチルアンモニウム[N2222]、テトラブチルアンモニウム[N4444]、テトラエチルホスホニウム[「P2222]、テトラブチルホスホニウム[P4444]等が挙げれられる。
第一のイオン液体は、二酸化炭素と化学反応し、低分圧の二酸化炭素も効率的に吸収することができる。
【0028】
<第二のイオン液体>
本実施形態に係る第二のイオン液体は、アニオンがカルボキシレートであり、カチオンがジアルキルイミダゾリウム又はアンモニウムである。
アニオンであるカルボキシレートとしては、アセテート[AcO]、メトキシアセテート[MeOAcO]等が挙げられる。
カチオンであるジアルキルイミダゾリウム又はアンモニウムとしては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム[emim]、N,N―ジエチル-N―(2-メトキシエチル)―N―メチルアンモニウム[deme]、N,N-ジメチル-N-エチル-N-へプチルアンモニウム[N1127]等が挙げられる。
第二のイオン液体は、第一のイオン液体と二酸化炭素との反応化合物を溶媒和により安定化させる効果を有する。
【0029】
<イオン液体組成物>
本発明は、アミン系イオン液体である前記第一のイオン液体と、カルボキシレート系イオン液体である前記第二のイオン液体と、を混合した組成物である点に特徴がある。
一般に、イオン液体に限らず、アミン1molあたりの二酸化炭素吸収量が増加するほど、二酸化炭素吸収熱は高くなる(絶対値が大きくなる)傾向にある。
ところが、本発明では、アミン系イオン液体である第一のイオン液体に、カルボキシレート系イオン液体である第二のイオン液体を混合することで、アミン1molあたりの二酸化炭素吸収量の増加と、二酸化炭素吸収熱の低減という、従来であれば相反する優れた効果を得ることができる。
そして、本発明の二酸化炭素吸収量が増加する効果は、後述する実施例によると、アミン系イオン液体に溶媒和効果が高いカルボキシレート系イオン液体を混合することで得られている。したがって、本発明の効果は、アミン系イオン液体と二酸化炭素との反応化合物がカルボキシレート系イオン液体によって溶媒和されることにより、前記化合物が安定して生成したために生じたと推測される。
また、二酸化炭素と未反応のアミン系イオン液体による前記化合物からのプロトン引き抜き反応は、多くの熱量の発生をもたらすことが知られている。本発明では、このプロトン引き抜き反応の進行がカルボキシレート系イオン液体による溶媒和により抑制されたため、二酸化炭素吸収量の増加にも関わらず、二酸化炭素吸収熱が低減したと推測される。
【0030】
なお、本実施形態に係る第二のイオン液体は、第一のイオン液体よりは少ないが、二酸化炭素吸収性を有する。したがって、本発明におけるイオン液体組成物によるアミン系イオン液体による二酸化炭素吸収量の増加効果は、第二のイオン液体の二酸化炭素吸収寄与分を差し引いて評価する必要がある。
また、本実施形態において、上記の増加効果を奏する好ましい第一のイオン液体と第二のイオン液体との混合比は、第一のイオン液体:第二のイオン液体=50:50~10:90(mol%)である。イオン液体組成物の質量あたりの二酸化炭素吸収量を大きくするためには、第一のイオン液体:第二のイオン液体=50:50~30:70(mol%)の混合比であることがより好ましい。
【0031】
<二酸化炭素吸着剤>
前記第一のイオン液体は、二酸化炭素を吸収することに伴う水素結合の形成により粘度が上昇することが知られている。前記第二のイオン液体を溶媒として混合することによる希釈効果により、前記イオン液体組成物の粘度上昇はある程度抑えることができる。しかし、より実用的な二酸化炭素の吸収速度及び放散速度を得るために、本実施形態では、前記イオン液体組成物を多孔質の無機粒子又は有機粒子に担持させた吸着剤の形態とすることが好ましい。
本実施形態に係る吸着剤とすることにより、イオン液体組成物と二酸化炭素を含む混合ガスとの接触面積、又はイオン液体組成物から二酸化炭素が放散する面積を増加させることができるので、イオン液体組成物の粘度が高くても、より実用的な二酸化炭素の吸収速度及び放散速度を得ることができる。
【0032】
本実施形態に係る吸着剤の担持体としては、アルミナ、シリカ、活性炭、カーボンナノチューブ、酸化グラフェン等の無機粒子、ポリウレタン、アクリル系樹脂、スチレン樹脂等の有機粒子が挙げられる。
本発明に係るイオン液体組成物を担持した二酸化炭素吸着剤は、一般的な二酸化炭素分離回収装置の吸着塔に充填して使用することができる。
【0033】
<二酸化炭素分離回収装置>
本実施形態に係る二酸化炭素分離回収装置は、前記二酸化炭素吸着剤を充填した一つ以上の吸着塔を備える固定床装置であることが好ましい。吸着塔は二つ以上であることが好ましい。一方の吸着塔に二酸化炭素含有ガスを流通させて吸着分離すると同時に、他方の吸着塔から二酸化炭素を脱着回収して再生することができ、吸着塔が1つの場合よりも効率的に二酸化炭素を分離回収できるからである。
【0034】
図1は、本実施形態に係る二酸化炭素分離回収装置を、排気ガスからの分離回収に適用した場合の一例を模式的に示す図である。
該図に示す二酸化炭素分離回収装置は、2つの吸着塔103を備えており、吸着塔内部に本発明のイオン液体組成物を担持した吸着剤が設置されている。
前記吸着塔103の一方に、二酸化炭素を含む排気ガスを常圧もしくは加圧状態で、吸着塔内の吸着剤に接触させることで、排気ガスから二酸化炭素を選択的に分離する。
なお、吸着塔の前段に排気ガス中の水蒸気、窒素酸化物、硫黄酸化物等を除去する前処理装置101を備えていてもよい。また、排気ガスを加圧するためのコンプレッサー102を備えていてもよい。
【0035】
排気ガスから二酸化炭素を分離した後、二酸化炭素の回収は、前記吸着塔103の内部を真空ポンプ104により吸着時よりも低い圧力に減圧する、吸着塔内部を吸着時よりも高い温度に昇温する、又は吸着塔内部を水蒸気や水素でスイープして二酸化炭素分圧を低下させる、等により行うことができる。その際、減圧と昇温、減圧と水蒸気や水素でのスイープ、昇温と水蒸気や水素でのスイープ、又は減圧と昇温と水蒸気や水素でのスイープを併用することで、いずれかの単独操作を用いる場合よりも容易に二酸化炭素を回収することができる。
なお、回収した二酸化炭素中の水蒸気、窒素酸化物、硫黄酸化物等を除去する後処理装置を備えていてもよい。
一方の吸着塔103において二酸化炭素を吸着分離する間に、三方バルブ105を切り替えることにより、他方の吸着塔103から二酸化炭素を脱着回収し、再生することができるので、吸着と回収を交互に効率よく行うことができる。
【実施例0036】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明する。
なお、低圧低濃度の二酸化炭素の分離に焦点を絞って記載するが、実施例は本発明の好適な例を示すものであり、高圧高濃度の二酸化炭素の分離への本発明の適用は、以下の実施例によって制限されるものではない。
【0037】
[二酸化炭素吸収量の測定]
本実施例及び比較例に用いるイオン液体の二酸化炭素吸収量を、図2に模式的に示す装置を用いて求めた。
まず、乾燥窒素雰囲気下において所定量のイオン液体を試料管201に移し替えた後、装置に取り付けた。恒温槽202を用いてイオン液体組成物の温度を一定に保持しながら、マスフローコントローラー203から窒素を供給した。マグネチックスターラー204を用いて試料管内の撹拌子205を回転させることでイオン液体を撹拌した。一定時間毎に試料管の質量W1(g)を測定した。
質量が一定になった後、マスフローコントローラー206及び207を用いて、二酸化炭素濃度5%に調整した二酸化炭素/窒素混合ガスの供給を開始した。試料管に供給される二酸化炭素の濃度は二酸化炭素濃度計208で計測した。また、配管内の圧力は圧力計209、恒温槽内の温度は温度計120で測定した。
一定時間毎に試料管の質量W2(g)を測定し、1時間あたりの質量変化が0.001g以下になった時点で気液平衡に到達したと判断した。イオン液体に吸収された二酸化炭素の質量W3はW2からW1を差し引くことにより得た。また、イオン液体1molあたりの二酸化炭素吸収量は、W3を二酸化炭素の分子量で除して得た物質量(mol)を、試料管中のイオン液体の物質量で除することにより求めた。
本測定は40℃及び80℃で実施した。また、40℃で二酸化炭素吸収後のイオン液体をNMR(Bruker Ascend400)及びIR(Thermo Fisher Scientific Nicolet iS50)を用いて分析した。1H及び13C NMRスペクトルは定量NMR法により得た。
【0038】
イオン液体を多孔質材料に担持した二酸化炭素吸着剤の二酸化炭素吸収量も、試料管内にイオン液体を担持したアクリル系樹脂粒子を充填した以外は、上記と同様の方法で得た。
【0039】
なお、第二のイオン液体(カルボキシレート系イオン液体)は二酸化炭素を化学的に吸収するため、第一のイオン液体と第二のイオン液体を混合したイオン液体組成物の二酸化炭素吸収量には、第二のイオン液体の寄与が含まれる。そこで、定量NMR法で得た13C NMRスペクトルから二酸化炭素吸収量に対する第二のイオン液体の寄与率を評価し、前記寄与率に基づき補正して第一のイオン液体(アミン系イオン液体)1molあたりの二酸化炭素吸収量を評価した。
【0040】
[二酸化炭素吸収熱の測定]
実施例及び比較例に用いるイオン液体の二酸化炭素吸収熱は、図3に模式的に示す装置を用いて求めた。
まず、乾燥窒素雰囲気下において所定量のイオン液体組成物をセル301に移し替えた後、装置に取り付けた。示差走査熱量計302を用いてイオン液体の温度を一定に保持しながら、マスフローコントローラー303から、予熱用の恒温槽304及び恒温ジャケット305を経て、窒素を供給した。恒温ジャケットの温度は恒温槽306を用いて制御した。示差走査熱量計から得られるシグナルが1時間以上一定となった後、供給するガスを窒素から二酸化炭素/窒素標準ガス(二酸化炭素濃度5%)に切り替えた。二酸化炭素の吸収に伴う発熱を示すシグナルが検出されることを確認した。
その後、発熱が終了してシグナルが1時間以上一定となった時点を気液平衡状態と見なした。二酸化炭素吸収熱はシグナルの積分(J)をセル中のイオン液体組成物の二酸化炭素吸収量(mol)で除することで得た。本測定は40℃で実施した。
【0041】
[イオン液体の合成]
(合成例1:テトラブチルホスホニウム グリシネート([P4444][Gly])の合成)
テトラブチルホスホニウムヒドロキシド(東京化成工業製、40%水溶液)にグリシン(富士フィルム和光純薬製)をモル比1:1で混合し、室温で2時間撹拌し、次式に示す[P4444][Gly]を含む水溶液を得た。水を減圧留去し、さらに、40℃で真空乾燥することで[P4444][Gly]を得た。
【0042】
【化5】
【0043】
(合成例2:テトラエチルホスホニウム グリシネート([P2222][Gly])の合成)
テトラエチルホスホニウム ヒドロキシド(富士フィルム和光純薬製、8%水溶液)にグリシン(富士フィルム和光純薬製)をモル比1:1で混合し、室温で2時間撹拌し、次式に示す[P2222][Gly]を含む水溶液を得た。水を減圧留去し、さらに、40℃で真空乾燥することで[P2222][Gly]を得た。
【0044】
【化6】
【0045】
(合成例3:テトラエチルアンモニウム グリシネート([N2222][Gly])の合成)
テトラエチルアンモニウム ヒドロキシド(Sigma-Aldrich製、25%メタノール溶液)にグリシン(富士フィルム和光純薬製)をモル比1:1で混合し、室温で2時間撹拌し、次式に示す[N2222][Gly]を含む水溶液を得た。メタノールを減圧留去し、さらに、40℃で真空乾燥することで[P2222][Gly]を得た。
【0046】
【化7】
【0047】
(合成例4:トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム グリシネート([P666,14][Gly])の合成)
トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム クロリド(東京化成工業製)のメタノール溶液に陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRN78水酸化物フォーム(Supelco製))を混合し、イオン交換が完了するまで室温で撹拌し、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム ヒドロキシド(以下、[P666,14][OH])を含むメタノール溶液を得た。なお、イオン交換の完了は、メタノール溶液の一部を硝酸銀/硝酸混合水溶液に滴下し、塩化銀生成に伴う白色沈殿が生じないことで確認した。イオン交換樹脂を濾過した[P666,14][OH]を含むメタノール溶液に、グリシン(富士フィルム和光純薬製、以下、Gly)をモル比1:1で混合し、室温で2時間撹拌し、次式に示す[P666,14][Gly]を含むメタノール溶液を得た。メタノールを減圧留去し、さらに、40℃で真空乾燥することで[P666,14][Gly]を得た。
【0048】
【化8】
【0049】
(合成例5:テトラブチルアンモニウム グリシネート([N4444][Gly])の合成)
テトラエチルアンモニウム ヒドロキシド(東京化成工業製、40%水溶液)にグリシン(富士フィルム和光純薬製)をモル比1:1で混合し、室温で2時間撹拌し、次式に示す[N2222][Gly]を含む水溶液を得た。水を減圧留去し、さらに、40℃で真空乾燥することで[N4444][Gly]を得た。
【0050】
【化9】
【0051】
(合成例6:トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム グリシネート([N1112OH][Gly])の合成)
トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム ヒドロキシド(東京化成工業製、50%水溶液)にグリシン(富士フィルム和光純薬製)をモル比1:1で混合し、室温で2時間撹拌し、次式に示す[N1112OH][Gly]を含む水溶液を得た。水を減圧留去し、さらに、40℃で真空乾燥することで[N1112OH][Gly]を得た。
【0052】
【化10】
【0053】
(合成例7:N,N―ジエチル-N―メチルーN―ヘプチルアンモニウム アセテート([N1227][AcO])の合成)
N,N―ジエチル-N―メチルーN―ヘプチルアミンをアセトニトリルに溶解させ、40℃に加熱した。この溶液にヨードメタンを5時間かけて滴下し、21時間撹拌した。アセトニトリルを減圧留去し、得られた溶液をトルエンで洗浄し、ヨウ化N,N―ジエチルーN―メチルーN―ヘプチルアンモニウム([N1227]I)を得た。[N1227]Iをメタノールに溶解させ、酸化銀(I)を少しずつ加え、室温で14時間撹拌した。この溶液を濾過した後、酢酸を滴下し、室温で2時間撹拌した。メタノールを留去し、減圧乾燥することで、以下に示す[N1227][AcO]を得た。
【0054】
【化11】
【0055】
(合成例8:トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム アセテート([N1112OH][AcO])の合成)
トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム ヒドロキシド(東京化成工業製、50%水溶液)に酢酸(富士フィルム和光純薬製)をモル比1:1で混合し、室温で2時間撹拌し、次式に示す[N1112OH][AcO]を含む水溶液を得た。水を減圧留去し、さらに、40℃で真空乾燥することで[N1112OH][AcO]を得た。
【0056】
【化12】
【0057】
(合成例9:テトラブチルホスホニウム タウレート([P4444][Tau])の合成)
テトラブチルホスホニウムヒドロキシド(東京化成工業製、40%水溶液)にタウリン(東京化成工業製)をモル比1:1で混合し、室温で2時間撹拌し、次式に示す[P4444][Tau]を含む水溶液を得た。水を減圧留去し、さらに、40℃で真空乾燥することで [P4444][Tau]を得た。
【0058】
【化13】
【0059】
(合成例10:2-(N-ヒドロキシエチルアミノ)エチルアミニウム アセテート([HDAH][AcO]の合成)
2-(N-ヒドロキシエチルアミノ)エチルアミン(東京化成工業製)のメタノール溶液に酢酸(富士フィルム和光純薬製)をゆっくり滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌し、次式に示す[HDAH][AcO]を含むメタノール溶液を得た。メタノールを減圧留去し、さらに、40℃で真空乾燥することで[HDAH][AcO]を得た。
【0060】
【化14】
【0061】
[記以外のイオン液体]
上記の合成例1~10で得られたイオン液体以外に、以下に示す市販のイオン液体を用いた。
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム アセテート([emim][AcO]、Iolitec製)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム メタンスルホナート([emim][MeSO3]、東京化成工業製)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ジエチルホスファート([emim][DEP]、東京化成工業製)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム エチルスルファート([emim][EtOSO3]、東京化成工業製)
N,N―ジエチルーN―(2-メトキシエチル)―N―メチルアンモニウム メトキシアセテート ([deme][MeOAcO]、富士フィルム和光純薬製)
ナトリウム グリシネート(Na[Gly]、Combi-Blocks製)
【0062】
【化15】
【0063】
以下の実施例1-1~1-5,2-1~2-4、3-1~3-4、比較例1~3により、本発明のイオン液体組成物における第二のイオン液体の二酸化炭素吸収量の寄与率を考慮した二酸化炭素吸収量、及び二酸化炭素吸収熱について検討した。
【0064】
[実施例1-1]~[実施例1-5]、[比較例1]
乾燥窒素雰囲気下において、前記合成例1で得られた[P4444][Gly]と前記[emim][AcO]を、それぞれ、50mol%対50mo%、40mol%対60mo%、30mol%対70mo%、20mol%対80mo%、10mol%対90mo%の比率で混合し、実施例1-1~1-5に係るイオン液体組成物とした。また、[emim][AcO]のみを比較例1に係るイオン液体とした。
これらのイオン液体組成物及びイオン液体を用い、二酸化炭素濃度5%、40℃における二酸化炭素吸収量と二酸化炭素吸収熱、及び二酸化炭素濃度5%、80℃における二酸化炭素吸収量を上記の手段により決定した。
【0065】
[実施例2-1]~[実施例2-4]
乾燥窒素雰囲気下において、前記合成例2で得られた[P2222][Gly]と前記[emim][AcO]を、それぞれ、40mol%対60mo%、30mol%対70mo%、20mol%対80mo%、10mol%対90mo%の比率で混合し、実施例2-1~2-4に係るイオン液体組成物を得た。このイオン液体組成物を用い、二酸化炭素濃度5%、40℃における二酸化炭素吸収量、および二酸化炭素濃度5%、80℃における二酸化炭素吸収量を測定した。
【0066】
[実施例3-1]~[実施例3-4]
乾燥窒素雰囲気下において、前記合成例3で得られた[N2222][Gly]と前記[emim][AcO]を、それぞれ、40mol%対60mo%、30mol%対70mo%、20mol%対80mo%、10mol%対90mo%の比率で混合し、実施例3-1~3-4に係るイオン液体組成物を得た。このイオン液体組成物を用い、二酸化炭素濃度5%、40℃における二酸化炭素吸収量、および二酸化炭素濃度5%、80℃における二酸化炭素吸収量を測定した。
【0067】
なお、比較例1のイオン液体([emim][AcO])は二酸化炭素を化学的に吸収するため、各実施例に係るイオン液体組成物の二酸化炭素吸収量には[emim][AcO]の寄与が含まれる。イオン液体組成物中における第一のイオン液体(アミン系イオン液体)の二酸化炭素吸収量を評価するために、[emim][AcO]を含む実施例1-1~1-5、2-1~2-4、及び比較例1に係るイオン液体組成物を用いて測定された定量NMR法による13C NMRスペクトルから、二酸化炭素吸収量に対する[emim][AcO]の寄与率を評価した。
一例として、図4~9に、それぞれ、実施例1-1~1-5、及び比較例1に係るイオン液体組成物の二酸化炭素濃度5%、40℃での二酸化炭素吸収前後における定量NMR法による13C NMRスペクトルを示す。
二酸化炭素吸収後には吸収前にはなかった155ppm~165ppmの範囲に二酸化炭素の炭素原子由来のピークが検出された。155ppmに検出されたピークは[emim][AcO]に化学吸収された二酸化炭素に、それ以外のピークはアミン系イオン液体に化学吸収された二酸化炭素にそれぞれ対応する。なお、127ppm付近のピークは外部基準に用いたベンゼンのピークである。
各イオン液体の寄与率の結果を表1にまとめた。
【0068】
【表1】
【0069】
なお、実施例3-1~3-4、及び後述する比較例8における第一のイオン液体の、二酸化炭素吸収量の寄与を評価する際には、実施例1-1~1-5の数値を代用した。
【0070】
[比較例2]
前記合成例1で得られた[P4444][Gly]を用い、二酸化炭素濃度5%、40℃における二酸化炭素吸収量、および二酸化炭素濃度5%、80℃における二酸化炭素吸収量を質量変化から測定した。
【0071】
[比較例3]
前記合成例4で得られた[P666,14][Gly]を用い、二酸化炭素濃度5%、40℃における二酸化炭素吸収量、および二酸化炭素濃度5%、80℃における二酸化炭素吸収量を質量変化から測定した。
【0072】
以下の表2に、実施例1-1~1-5、実施例2-1~2-4、実施例3-1~3-4に係るイオン液体組成物、及び比較例2、3に係るイオン液体の二酸化炭素吸収量と二酸化炭素吸収熱を示す。
[emim][AcO]が含まれるイオン液体組成物に対しては、表1に示す第二のイオン液体の二酸化炭素吸収寄与分を差し引いて補正した寄与率を適用したうえで、アミン系イオン液体の二酸化炭素吸収量(40℃のみ)を評価した値も()内に記載した。「-」は未測定であることを示す。
【0073】
【表2】
【0074】
表2から、アミン系イオン液体単独である比較例2及び3ではアミン系イオン液体1molあたりの二酸化炭素吸収量は0.87mol以下であるのに、各実施例に係るイオン液体組成物では、[emim][AcO]の寄与を差し引いても、0.97~1.07と、アミン系イオン液体1molあたりの二酸化炭素吸収量が増加したことがわかる。また、各実施例に係るイオン液体組成物は、二酸化炭素吸収量が増加しているにもかかわらず、比較例2のイオン液体と比較して、いずれも二酸化炭素吸収熱が低減されていた。
【0075】
以下の比較例4~比較例6により、第二のイオン液体のアニオンについて検討した。
[比較例4]
乾燥窒素雰囲気下において、前記合成例3で得られた[N2222][Gly]と前記[emim][MeSO3]を40mol%対60mo%の比率で混合した以外は実施例1-1と同様にして、比較例4に係るイオン液体組成物を得た。
【0076】
[比較例5]
乾燥窒素雰囲気下において、前記合成例3で得られた[N2222][Gly]と前記[emim][DEP]を40mol%対60mo%の比率で混合した以外は実施例1-1と同様にして、比較例5に係るイオン液体組成物を得た。
【0077】
[比較例6]
乾燥窒素雰囲気下において、前記合成例3で得られた[N2222][Gly]と前記[emim][EtOSO3]を40mol%対60mo%の比率で混合した以外は実施例1-1と同様にして、比較例6に係るイオン液体組成物を得た。
【0078】
比較例4~6に係るイオン液体組成物の二酸化炭素濃度5%、40℃における二酸化炭素吸収量、および二酸化炭素濃度5%、80℃における二酸化炭素吸収量を測定した値を、アミン系イオン液体単独の場合の比較例2、3、及び第一のイオン液体と第二のイオン液体の比率が40mol%対60mo%と同じである実施例1-2、2-1、3-1の場合とともに、以下の表3に示す。
なお、()内の数値は、表1における[emim][AcO]による二酸化炭素吸収寄与率に基づき、アミン系イオン液体1molあたりの二酸化炭素吸収量を補正した値である。
【0079】
【表3】
【0080】
表3から、第二のイオン液体としてカルボキシレート系イオン液体(実施例1-2、2-1、3-1)を用いた場合、第一のイオン液体(アミン系イオン液体)1molあたりの二酸化炭素吸収量は、40℃、80℃の場合のいずれでも、第一のイオン液体単独の比較例2、3と比較して大きく向上したことがわかる。
一方、第二のイオン液体として、スルホン酸系イオン液体(比較例4)、ホスホン酸系イオン液体(比較例5)、硫酸系イオン液体(比較例6)を用いた場合、第一のイオン液体(アミン系イオン液体)1molあたりの二酸化炭素吸収量は、カルボキシレート系イオン液体(実施例1-2、2-1、3-1)を用いた場合と比較して低下した。特に、硫酸系イオン液体(比較例6)の場合は、[P4444][Gly]のみ(比較例2)の場合と比較しても、低い値を示した。
したがって、本発明の二酸化炭素吸収量の増加効果は、第二のイオン液体が溶媒和効果の高いカルボキシレート系イオン液体であることで得られたと考えられる。
【0081】
以下の実施例4、及び比較例7、8により、第一のイオン液体のカチオンについて検討した。
[実施例4]
乾燥窒素雰囲気下において、前記合成例5で得られた[N4444][Gly]と前記[emim][AcO]を40mol%対60mo%の比率で混合した以外は実施例1-1と同様にして、実施例4に係るイオン液体組成物を得た。この組成物を撹拌したところ、[N4444][Gly]が一部溶解せず、均一混合状態とならなかった。
【0082】
[比較例7]
前記Na[Gly]と前記[emim][AcO]を40mol%対60mo%の比率で混合した以外は実施例1-1と同様にして、比較例5に係るイオン液体組成物を得た。この組成物は、撹拌してもNa[Gly]が溶解せず、均一混合状態とならなかった。
【0083】
[比較例8]
前記合成例6で得られた[N1112OH][Gly]と前記[emim][AcO]を40mol%対60mo%の比率で混合した以外は、実施例1-1と同様にして比較例5に係るイオン液体組成物を得た。
以下の表4に、前記実施例4及び比較例7、8の二酸化炭素濃度5%、40℃における二酸化炭素吸収量、および二酸化炭素濃度5%、80℃における二酸化炭素吸収量を、比較例2及び実施例1-2とともに示す。
【0084】
【表4】
【0085】
表4によれば、第一のイオン液体(アミン系イオン液体)のカチオンがテトラアルキルアンモニウムである実施例4は、40℃の場合、組成物中にアミン系イオン液体が十分に混和していなかったため、二酸化炭素吸収量は実施例1-2、2-1、3-1のイオン液体組成物と比べて劣るものの、80℃では混和しており、実施例1-2、2-1、3-1と遜色ない二酸化炭素吸収能力を示した。
一方、第一のイオン液体のカチオンがNaである比較例7では、40℃、80℃のいずれの場合も、第一のイオン液体が第二のイオン液体に溶解せず、第一のイオン液体による二酸化炭素吸収が全く見られなかった。
また、第一のイオン液体のカチオンが水酸基を有する比較例8では、アミン系イオン液体単独の比較例2の二酸化炭素吸収量に及ばず、第二のイオン液体混合の効果がなかった。
以上の結果から、第二のイオン液体と混和するようなカチオンを有するアミン系イオン液体を選択すること、水酸基で修飾されたカチオンを用いないことが、本発明の効果を得るために必要であり、テトラアルキルホスホニウム、テトラアルキルアンモニウムを第一のイオン液体のカチオンとした場合、これらの条件を満たすことがわかった。
一方、第二のイオン液体と混和しない場合は、カルボキシレート系イオン液体によるアミン系イオン液体と二酸化炭素との反応化合物に対する溶媒和効果が得られず、不安定化し、二酸化炭素吸収材料として機能しないと考えられる。また、水酸基が存在する場合、カルボキシレート系イオン液体の溶媒和を水酸基が阻害することにより、アミン系イオン液体と二酸化炭素との化合物が安定化されず、二酸化炭素吸収量が増加しないと考えられる。
【0086】
以下の実施例5~7及び比較例9により、第二のイオン液体のカチオン及びアニオンについて検討した。
[実施例5]
前記合成例3で得られた[N2222][Gly]と前記合成例7で得られた[N1227][AcO]を40mol%対60mo%の比率で混合した以外は実施例1-1と同様にして、実施例5に係るイオン液体組成物を得た。
【0087】
[実施例6]
前記合成例3で得られた[N2222][Gly]と前記[deme][MeOAcO]を40mol%対60mo%の比率で混合した以外は、実施例1-1と同様にして実施例6に係るイオン液体組成物を得た。
【0088】
[実施例7]
前記合成例1で得られた[P4444][Gly]と前記[deme][MeOAcO]を40mol%対60mo%の比率で混合した以外は、実施例1-1と同様にして実施例7に係るイオン液体組成物を得た。
【0089】
[比較例9]
前記合成例1で得られた[P4444][Gly]と前記合成例7で得られた[N1112OH][AcO]を40mol%対60mo%の比率で混合した以外は、実施例1-1と同様にして実施例9に係るイオン液体組成物を得た。この組成物は、撹拌しても[N1112OH][AcO]が溶解せず、均一混合状態とならなかった。
【0090】
以下の表5に、前記実施例5~7及び比較例9の二酸化炭素濃度5%、40℃における二酸化炭素吸収量、および二酸化炭素濃度5%、80℃における二酸化炭素吸収量を、実施例3-1、実施例1-2とともに示す。
【0091】
【表5】
【0092】
表5によると、二酸化炭素吸収量の増加は、第二のイオン液体のカチオンをジアルキルイミダゾリウムとした場合(実施例3-1)だけでなく、テトラアルキルアンモニウムとした場合(実施例5)でも認められた。また、カチオンをジアルキルイミダゾリウム、アニオンを酢酸アニオンとした場合(実施例3-1、実施例1-2)よりやや二酸化炭素吸収量は低下するものの、カチオンをジエチルメチル(2-メトキシエチル)アンモニウム、アニオンをメトキシ酢酸アニオンとした場合(実施例6、実施例7)にも、二酸化炭素吸収量の増加が認められた。この結果、カルボキシレート系イオン液体は、カチオンがジアルキルイミダゾリウム又はテトラアルキルアンモニウムであってよく、アニオンがアルキル鎖を有するカルボキシレート、又はエーテル基を含むアルキル鎖を有するカルボキシレートから選択可能であることがわかった。
一方、第二のイオン液体のカチオンに水酸基を持つトリメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、アニオンを酢酸アニオンとした場合(比較例9)は、2種類のイオン液体が混和せず、二酸化炭素吸収材料として利用できなかった。
【0093】
以下の実施例8、比較例10によって、第一のイオン液体のアニオンがグリシネート以外のアミノカルボキシレートである場合について検討した。
また、比較例11によって、第一のイオン液体のアニオンがアミノカルボキシレートではない場合について検討した。
【0094】
[実施例8、比較例10]
前記合成例9で得られた[P4444][Tau]を比較例10に係るイオン液体とした。また、前記[P4444][Tau]と[emim][AcO]を40mol%対60mo%の比率で混合した以外は、実施例1-1と同様にした組成物を、実施例8に係るイオン液体組成物とした。
【0095】
[比較例11]
前記合成例10で得られた[HDAH][AcO]と前記[emim][AcO]を40mol%対60mo%の比率で混合した以外は、実施例1-1と同様にして比較例11に係るイオン液体組成物を得た。
【0096】
前記実施例8及び比較例10、11の二酸化炭素濃度5%、40℃における二酸化炭素吸収量、および二酸化炭素濃度5%、80℃における二酸化炭素吸収量を、以下の表6に示す。
【0097】
【表6】
【0098】
表6の実施例8及び比較例10から、第一のイオン液体のアニオンをタウレートとした場合(実施例8)でも、第一のイオン液体単独の場合(比較例10)と比較して、第二のイオン液体と混合したことによる二酸化炭素吸収量が向上する効果を奏することが認められた。一方、カチオンにアミノ基を持つ(2-(2-ヒドロキシエチル)アミノ)エチルアミニウム、アニオンに酢酸アニオンを持つアミン系イオン液体を第一のイオン液体として用いた場合(比較例11)、80℃で揮発損失することが明らかになった。
したがって、本発明の優れた効果は、アニオンにアミノ基を持つ第一のイオン液体と第二のイオン液体を混合することで得ることができる。
【0099】
本発明に係るイオン液体組成物を吸着剤として使用する場合についても検討した。
[実施例9]
実施例3-1に係るイオン液体組成物([N2222][Gly]対[emim][AcO]が40mol%対60mo%)をアクリル樹脂系の多孔質粒子(オルガノ株式会社、アンバーライトXAD7HP)に担持した吸着剤を充填したカラムに、二酸化炭素濃度5%に調整した二酸化炭素/窒素混合ガスを供給し、80℃における二酸化炭素吸収量を質量変化から測定した。
以下の表7に、実施例9の結果を実施例3-1とともに示す。
【0100】
【表7】
【0101】
表7によると、イオン液体組成物を多孔質粒子に担持した吸着剤は、80℃、100kPaの条件でイオン液体組成物と同程度の二酸化炭素吸収量が得られた。吸着剤化しても、イオン液体組成物と同等の性能を発揮できる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の二酸化炭素分離用イオン液体組成物によれば、バイオガスや石炭ガス化ガス等の高圧高濃度の二酸化炭素を含む混合ガスからの二酸化炭素の分離回収のみならず、大気や、天然ガス火力発電所の排ガスやボイラー排ガス等の低圧低濃度の二酸化炭素を含む混合ガスであっても、より少ないエネルギー消費量で、二酸化炭素を多量に分離回収するプロセスに利用することができる。
また、本発明の二酸化炭素分離用イオン液体組成物を有機粒子又は無機粒子に担持させた二酸化炭素吸着剤、及び前記吸着剤を用いた二酸化炭素分離回収装置により、二酸化炭素の吸収/吸着速度及び放散/脱着速度の低下を回避しつつ、二酸化炭素を多量に、かつ、より少ないエネルギー消費量で分離回収することができる。
したがって、本発明は、二酸化炭素の放出による地球環境の悪化を抑止するとともに、未活用の二酸化炭素を炭素源として有効に利用する可能性を開くものである。
【符号の説明】
【0103】
101 前処理装置
102 コンプレッサー
103 吸着塔
104 真空ポンプ
105 三方バルブ
201 試料管
202 恒温槽
203 マスフローコントローラー
204 マグネチックスターラー
205 撹拌子
206 マスフローコントローラー
207 マスフローコントローラー
208 二酸化炭素濃度計
209 圧力計
210 温度計
301 セル
302 示差走査熱量計
303 マスフローコントローラー
304 恒温槽
305 恒温ジャケット
306 恒温槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9