(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070433
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】水蒸気発生装置、水蒸気供給システム、水蒸気発生方法、水蒸気の利用方法、水蒸気発生装置の使用方法、水蒸気発生システム
(51)【国際特許分類】
F22D 5/00 20060101AFI20240516BHJP
C25B 1/042 20210101ALI20240516BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240516BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20240516BHJP
F22D 5/30 20060101ALI20240516BHJP
F22B 35/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
F22D5/00 B
C25B1/042
C25B9/00 A
C25B15/02
F22D5/30
F22B35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180918
(22)【出願日】2022-11-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「水素利用等先導研究開発事業/水電解水素製造技術高度化のための基盤技術研究開発/高温水蒸気電解技術の研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】嘉藤 徹
(72)【発明者】
【氏名】竹田 亨
(72)【発明者】
【氏名】中野 清隆
【テーマコード(参考)】
3L021
4K021
【Fターム(参考)】
3L021AA05
3L021BA08
3L021DA03
3L021DA04
3L021DA07
3L021DA13
3L021DA14
3L021DA15
3L021FA02
3L021FA03
4K021AA01
4K021BA02
(57)【要約】
【課題】水蒸気を安定して高精度に発生、供給することができる水蒸気発生装置、水蒸気供給システム、水蒸気発生方法、水蒸気の利用方法、水蒸気発生装置の使用方法、水蒸気発生システムの提供である。
【解決手段】
水の貯留容器13と、加熱器21を備え、貯留容器13から供給される水を気化する蒸発器11と、蒸発器11から発生する水蒸気の流量を制御する水蒸気用流量制御器25と、蒸発器11内の水位を測定する水位計31と、水位計31により測定される水位が所定値に保持されるように貯留容器13から供給される水量を制御する水用流量制御器23と、を備えた水蒸気発生装置1である。また、実際の水蒸気流量と測定、表示される水蒸気流量との関係を求め、当該関係を用いて水蒸気の流量を補正、修正するとよい。また、蒸発器内の水位が所定値に保持されるように水を供給して加熱し、気化させた水蒸気を装置の性能評価用に用いてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の貯留容器と、
加熱手段を備え、前記貯留容器から供給される水を気化する蒸発器と、
前記蒸発器から発生する水蒸気の流量を制御する水蒸気用流量制御器と、
前記蒸発器内の水位を測定する水位計と、
前記貯留容器から供給される水の量を制御する水用流量制御器と、
前記水位計により測定される水位が所定値に保持されるように前記水用流量制御器を制御
する水位流量制御器と
を備えたことを特徴とする水蒸気発生装置。
【請求項2】
前記水蒸気用流量制御器による水蒸気の流量を可変としたことを特徴とする請求項1に記載の水蒸気発生装置。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載の水蒸気発生装置と、前記水蒸気発生装置から発生する水蒸気を供給する装置とを備えたことを特徴とする水蒸気供給システム。
【請求項4】
前記水蒸気を供給する装置は、水蒸気電解セルであることを特徴とする請求項3に記載の水蒸気供給システム。
【請求項5】
前記水蒸気発生装置は、さらに、
前記蒸発器内の圧力を測定する圧力計と、
前記貯留容器の水量を測定する重量計と、
前記圧力計により測定される圧力に応じて前記水用流量制御器を制御する圧力流量制御器と、
水蒸気の流量を測定する流量測定部と
を備え、
前記水蒸気用流量制御器により水蒸気の流量を一定に保持し、かつ圧力計により測定される圧力が前記貯留容器から供給される水が全て水蒸気となる圧力である、飽和水蒸気圧より低い所定圧に保持されるように前記圧力流量制御器により前記水用流量制御器を制御するとともに、前記重量計により測定される所定時間の水の減少量と前記流量測定部で測定される水蒸気流量と水蒸気密度から、前記流量測定部で測定される水蒸気流量と実際の水蒸気流量との関係を求める校正機能を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水蒸気発生装置。
【請求項6】
さらに前記蒸発器内の圧力を測定する圧力計と、前記貯留容器の水量を測定する重量計と、前記圧力計により測定される圧力に応じて前記水用流量制御器を制御する圧力流量制御器とを備えた請求項1または請求項2に記載の水蒸気発生装置と、
前記水蒸気発生装置から発生する水蒸気の流路に設けられ、水蒸気の流量を測定する流量計と
を備えた、水蒸気発生システムであって、
前記水蒸気用流量制御器により水蒸気の流量を一定に保持し、かつ前記圧力計により測定される圧力が前記貯留容器から供給される水が全て水蒸気となる圧力である、飽和水蒸気圧より低い所定圧に保持されるように前記圧力流量制御器により前記水用流量制御器を制御するとともに、前記重量計により測定される所定時間の水の減少量と前記流量計で測定される水蒸気流量と水蒸気密度から、前記流量計で測定される水蒸気流量と実際の水蒸気流量との関係を求める校正機能を備えたことを特徴とする水蒸気発生システム。
【請求項7】
水を蒸発器に供給して加熱し、気化させることで水蒸気を発生させる水蒸気発生方法において、
蒸発器から発生する水蒸気の流量を制御するとともに、蒸発器内の水位を測定し、測定値が所定値に保持されるように蒸発器に水を供給することを特徴とする水蒸気発生方法。
【請求項8】
前記水蒸気の流量を可変に制御することを特徴とする請求項7に記載の水蒸気発生方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の水蒸気発生方法により発生した水蒸気を、水蒸気を使用する装置の性能評価に用いることを特徴とする水蒸気の利用方法。
【請求項10】
前記水蒸気を使用する装置として、水蒸気電解セルを用いることを特徴とする請求項9に記載の水蒸気の利用方法。
【請求項11】
水を蒸発器に供給して加熱し、気化させることで水蒸気を発生させる水蒸気発生方法において、
貯留容器から蒸発器に水を供給して、蒸発器から発生する水蒸気流量を測定し、測定される水蒸気流量が一定となるように水蒸気の流量を制御し、かつ蒸発器内の圧力を測定して貯留容器からの供給水が全て水蒸気となる圧力である、飽和水蒸気圧より低い所定圧に保持されるように蒸発器に供給する水の量を制御するとともに、所定時間の貯留容器の水の減少量を測定して、当該減少量と前記測定される水蒸気流量と水蒸気密度から、前記測定される水蒸気流量と実際の水蒸気流量との関係を求めた後、前記測定される水蒸気流量と実際の水蒸気流量との誤差が一定以上の場合は水蒸気の流量を修正制御して、請求項7または請求項8に記載の方法により水蒸気を発生させることを特徴とする水蒸気発生方法。
【請求項12】
請求項5に記載の水蒸気発生装置を、前記校正機能により前記流量測定部で測定される水蒸気流量と実際の水蒸気流量との関係を求めた後、前記重量計を外して又は設置した状態で、別の流量計の校正用の標準器として使用することを特徴とする水蒸気発生装置の使用方法。
【請求項13】
請求項1または請求項2に記載の水蒸気発生装置から発生する水蒸気の流路に水蒸気の流量を測定する流量計を設け、
前記水蒸気用流量制御器により水蒸気の流量を一定に保持し、かつ蒸発器内の圧力を測定し、圧力が前記貯留容器から供給される水が全て水蒸気となる圧力である、飽和水蒸気圧より低い所定圧に保持されるように前記貯留容器から供給される水の量を水用流量制御器により制御するとともに、前記貯留容器内の所定時間の水の減少量を測定し、前記減少量と前記流量計で測定される水蒸気流量と水蒸気密度から、前記流量計で測定される水蒸気流量と実際の水蒸気流量との関係を求めることを特徴とする水蒸気発生装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気電解による水素製造分野の他、食品製造、半導体製造等の分野において、水蒸気を安定して高精度に供給するための水蒸気発生装置、水蒸気供給システムおよび水蒸気発生方法、水蒸気の利用方法、水蒸気発生装置の使用方法、水蒸気発生システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水蒸気は、水蒸気電解(水蒸気(水)を電気分解することにより水素(H2)と酸素(O2)を製造する方法)による水素製造分野や、食品製造、半導体製造等の分野などの様々な分野で利用されている。特に、水蒸気電解は、循環型社会を実現するための中心的な水素製造技術の一つとして注目されている。水蒸気電解による水素製造分野では、水蒸気電解セルは700-1000℃で蒸気を電気分解し水素を発生させる電解セルであり、従来の水電解と比較して高効率で水素を生成させることができるため、再生可能エネルギー等からの高効率水素製造技術として世界中で精力的に研究が進められている。例えば、水蒸気電解による水素製造分野の一例として、燃料電池システムにおいては、水蒸気を用いて燃料を改質させることで、水素リッチとなった改質ガスを燃料電池本体に供給している。
【0003】
このような燃料電池システムへの水蒸気の供給に関し、特許文献1には、燃料電池への供給ガス路に、流量コントロール弁、ガス加熱器、混合器、供給ガス温度調整器を配置するとともに、混合器に過熱蒸気発生器が蒸気流量調整弁を介して連通接続してある燃料電池のガス供給装置が記載されている。また、特許文献2には、内部に収容された所定の水位を有する水を気化する蒸発器と、該蒸発器に供給する水を一旦貯留する貯留容器と、該貯留容器の水位が前記蒸発器の水位に連動するように前記蒸発器と前記貯留容器とを連結する連通管と、前記貯留容器内の水位が下降した際に水を補充する水供給手段とを具備した水蒸気供給装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-273222号公報
【特許文献2】特開2006-155982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した水蒸気の改質反応においては、燃料と水蒸気の割合を正確に制御する必要があるため、水蒸気を安定して高精度に供給する必要がある。このことは、水蒸気を使用する他の分野においても同様である。また、水蒸気電解セルの開発に当たっては、開発されたセルの性能評価と開発を繰り返し、性能を向上させることが重要である。そして、性能評価では、単セル、小規模スタックレベルの規模の被試験体に原料の水蒸気を正確な流量で安定に供給し、必要に応じて水素等他のガス種とともに流量を迅速、柔軟に変化させることなどが重要である。しかしながら、小流量の水蒸気を精度よく安定に供給し、かつ必要に応じて迅速、柔軟に変化させることは難しい。
【0006】
本発明の課題は、このような問題を解決することであり、水蒸気を安定して高精度に発生、供給することができる水蒸気発生装置、水蒸気供給システムおよび水蒸気発生方法、そのような水蒸気の利用方法を提供することである。また、このような水蒸気発生装置の使用方法、水蒸気発生システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を有する。
(1)水の貯留容器と、加熱手段を備え、前記貯留容器から供給される水を気化する蒸発器と、前記蒸発器から発生する水蒸気の流量を制御する水蒸気用流量制御器と、前記蒸発器内の水位を測定する水位計と、前記貯留容器から供給される水の量を制御する水用流量制御器と、前記水位計により測定される水位が所定値に保持されるように前記水用流量制御器を制御する水位流量制御器とを備えた水蒸気発生装置である。
(2)前記(1)に記載の水蒸気発生装置と、前記水蒸気発生装置から発生する水蒸気を供給する装置とを備えた水蒸気供給システムである。
(3)前記水蒸気発生装置は、さらに、前記蒸発器内の圧力を測定する圧力計と、前記貯留容器の水量を測定する重量計と、前記圧力計により測定される圧力に応じて前記水用流量制御器を制御する圧力流量制御器と、水蒸気の流量を測定する流量測定部とを備え、前記水蒸気用流量制御器により水蒸気の流量を一定に保持し、かつ圧力計により測定される圧力が前記貯留容器から供給される水が全て水蒸気となる圧力である、飽和水蒸気圧より低い所定圧に保持されるように前記圧力流量制御器により前記水用流量制御器を制御するとともに、前記重量計により測定される所定時間の水の減少量と前記流量測定部で測定される水蒸気流量と水蒸気密度から、前記流量測定部で測定される水蒸気流量と実際の水蒸気流量との関係を求める校正機能を備えた、前記(1)に記載の水蒸気発生装置である。
(4)さらに前記蒸発器内の圧力を測定する圧力計と、前記貯留容器の水量を測定する重量計と、前記圧力計により測定される圧力に応じて前記水用流量制御器を制御する圧力流量制御器とを備えた前記(1)に記載の水蒸気発生装置と、前記水蒸気発生装置から発生する水蒸気の流路に設けられ、水蒸気の流量を測定する流量計とを備えた、水蒸気発生システムであって、前記水蒸気用流量制御器により水蒸気の流量を一定に保持し、かつ前記圧力計により測定される圧力が前記貯留容器から供給される水が全て水蒸気となる圧力である、飽和水蒸気圧より低い所定圧に保持されるように前記圧力流量制御器により前記水用流量制御器を制御するとともに、前記重量計により測定される所定時間の水の減少量と前記流量計で測定される水蒸気流量と水蒸気密度から、前記流量計で測定される水蒸気流量と実際の水蒸気流量との関係を求める校正機能を備えた水蒸気発生システムである。
(5)水を蒸発器に供給して加熱し、気化させることで水蒸気を発生させる水蒸気発生方法において、蒸発器から発生する水蒸気の流量を制御するとともに、蒸発器内の水位を測定し、測定値が所定値に保持されるように蒸発器に水を供給する水蒸気発生方法である。
(6)前記(5)に記載の水蒸気発生方法により発生した水蒸気を、水蒸気を使用する装置の性能評価に用いる水蒸気の利用方法である。
(7)水を蒸発器に供給して加熱し、気化させることで水蒸気を発生させる水蒸気発生方法において、貯留容器から蒸発器に水を供給して、蒸発器から発生する水蒸気流量を測定し、測定される水蒸気流量が一定となるように水蒸気の流量を制御し、かつ蒸発器内の圧力を測定して貯留容器からの供給水が全て水蒸気となる圧力である、飽和水蒸気圧より低い所定圧に保持されるように蒸発器に供給する水の量を制御するとともに、所定時間の貯留容器の水の減少量を測定して、当該減少量と前記測定される水蒸気流量と水蒸気密度から、前記測定される水蒸気流量と実際の水蒸気流量との関係を求めた後、前記測定される水蒸気流量と実際の水蒸気流量との誤差が一定以上の場合は水蒸気の流量を修正制御して、前記(5)に記載の方法により水蒸気を発生させる水蒸気発生方法である。
(8)前記(3)に記載の水蒸気発生装置を、前記校正機能により前記流量測定部で測定される水蒸気流量と実際の水蒸気流量との関係を求めた後、前記重量計を外して又は設置した状態で、別の流量計の校正用の標準器として使用する、水蒸気発生装置の使用方法である。
(9)前記(1)に記載の水蒸気発生装置から発生する水蒸気の流路に水蒸気の流量を測定する流量計を設け、前記水蒸気用流量制御器により水蒸気の流量を一定に保持し、かつ蒸発器内の圧力を測定し、圧力が前記貯留容器から供給される水が全て水蒸気となる圧力である、飽和水蒸気圧より低い所定圧に保持されるように前記貯留容器から供給される水の量を水用流量制御器により制御するとともに、前記貯留容器内の所定時間の水の減少量を測定し、前記減少量と前記流量計で測定される水蒸気流量と水蒸気密度から、前記流量計で測定される水蒸気流量と実際の水蒸気流量との関係を求める、水蒸気発生装置の使用方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水蒸気を安定して高精度に発生、供給することができる水蒸気発生装置、水蒸気供給システムおよび水蒸気発生方法、そのような水蒸気の利用方法を提供することができる。また、このような水蒸気発生装置の使用方法、水蒸気発生システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る水蒸気発生装置の構成図である。
【
図2】モード1に関する部分を抜粋した水蒸気発生装置の構成図である。
【
図3】
図2の水蒸気発生装置の動作フローの一例である。
【
図4】モード2に関する部分を抜粋した水蒸気発生装置の構成図である。
【
図5】
図4の水蒸気発生装置の動作フローの一例である。
【
図6】水蒸気の流量制御の一例である(実施例1)。
【
図7】水蒸気の流量制御の一例である(実施例2)。
【
図8】水蒸気用流量制御器の下流に別の流量計を設置した場合の水蒸気発生装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0011】
図1は本発明の実施の形態に係る水蒸気発生装置の構成図を示す。
水蒸気発生装置1は、主に、内部に供給された水を気化する蒸発器11と、蒸発器11に供給する水を貯留する貯留容器13と、貯留容器13と蒸発器11とを連結する連通管15と、蒸発器11で発生する水蒸気の水蒸気配管17と、蒸発器11を内部に備える加熱容器19と、蒸発器11内の温度を所定の温度に保つための加熱器21等を具備している。さらに、連通管15には水用流量制御器23(例えば、マスフローコントローラ)が設けられており、蒸発器11には内部の水量を測定する水位計31や内部の圧力を測定する圧力計33が設けられている。そして、水位計31や圧力計33からの測定値に応じて、水位流量制御器41、圧力流量制御器43により水用流量制御器23が制御され、すなわち貯留容器13から蒸発器11への水の供給量が制御される構成である。水用流量制御器23は流量計と制御装置を兼ねており、水蒸気の流量測定(流量表示)と流量制御ができるものであるとともに、水位流量制御器41、圧力流量制御器43により設定される設定値も表示される。なお、水用流量制御器23は、通常の流量制御器の他、外部から制御できる各種ポンプを用いてもよい。
【0012】
また、蒸発器11内の温度を測定する温度計35からの測定値に応じて、温度制御器45により加熱器21の温度が制御される。さらに、水蒸気配管17には水蒸気用流量制御器25(例えば、マスフローコントローラ)が設けられており、水蒸気用流量制御器25は、水蒸気流量設定器47により設定された流量となるように、水蒸気の流量を調整する。水蒸気流量設定器47には設定値の他、水蒸気用流量制御器25で測定された流量値の表示もされる。
なお、水蒸気用流量制御器25と水蒸気流量設定器47は独立したものではなく、一つの制御装置であっても良い。また、水蒸気用流量制御器25は流量計と制御装置を兼ねており、水蒸気の流量測定と流量制御ができるものである。また、水蒸気流量設定器47により設定される設定値や測定値が表示されてもよい。なお、水用流量制御器23や水蒸気用流量制御器25は、流量計と流量制御部とを別々に設けた構成として、制御装置からの制御信号により流量制御部(例えば、電磁弁)を制御して、流量を調整する構成としてもよいし、設定値が表示されないものであってもよい。なお、流量制御には、電磁弁の他に、油圧式や空気圧式の制御弁などを用いても良い。また、各制御器41、43、45はPID制御を行う制御器であるが、それぞれ独立したものではなく、一つの制御装置に備えられたものであってもよい。さらに言えば、水用流量制御器23、水蒸気用流量制御器25、各制御器41、43、45、水蒸気流量設定器47等は、適宜組み合わせることで、二以上の機器により一つの制御装置を構成するものであってもよい。以下、水蒸気発生装置1の主な構成について詳細に説明する。
【0013】
(蒸発器11)
蒸発器11は、内部に供給された水を気化するものであり、蒸発器11の周囲に設けられた加熱器21により、内部に供給された水を加熱して水蒸気を生成するものである。生成した水蒸気は、水蒸気流量設定器47により設定された流量となるように、水蒸気配管17に設けた水蒸気用流量制御器25によって制御され、種々の目的に応じて利用される。なお、加熱器21は、ヒータなどの熱源を用いればよく、蒸発器11の内部に設けてもよい。蒸発器11の内部温度は、温度計35により測定されて、当該測定信号が温度制御器45に入力されて加熱器21の温度が所定値(例えば、130-150℃の範囲)になるように制御される。温度計35は、熱電対などの温度センサを用いるとよい。
【0014】
また、蒸発器11は外部温度の影響を少なくするために、加熱容器19に収容されていることが好ましい。蒸発器11は加熱容器19によって外方から加熱され、蒸発器11周囲の温度が一定温度(例えば、130-150℃の範囲)になるように保持されている。すなわち、加熱容器19は、いわゆる恒温槽であり、一例としてオーブンがある。オーブンは、例えば所定の温度まで急速に加熱できる誘導加熱によって、容器19内の空気を加熱する。加熱容器19があることで、蒸発器11内部の温度の安定性を向上させることができる。
【0015】
また、蒸発器11内の水位は水位計31により測定され、また蒸発器11内の圧力も圧力計33により測定される。詳細は後述するが、水位計31や圧力計33からは、これらの測定信号が各制御器41、43に入力されて水用流量制御器23が制御されることで、貯留容器13から蒸発器11への水の供給量が調整される。水位計31にはレベル計や液面計などの各種センサであって、耐熱性に優れたものを用いるとよい。また、圧力計33としては、高温ガスの圧力検知に使用するために、耐熱性に優れた高温用圧力センサを用いるとよい。そして、蒸発器11の内部は高温高圧状態となるため、蒸発器11の材質は、耐熱性のある、例えば金属、セラミック、ガラスなどから選択されることが好ましい。
【0016】
蒸発器11の大きさは、性能評価を目的とした、単セル、小規模スタックレベルの規模(入力電力が数10W-1kW程度)の場合、容量100cc-300cc程度またはそれ以下(20-100cc程度)でよく、例えば、底面積3-4cm2程度、高さ30cm程度のものでよい。また、蒸発器11の形状は、四角形や円形など、特に限定されない。さらに、蒸発器11内の表面積をなるべく増やすためと大きな泡の発生を防ぐために、5mm程度のセラミックス玉が制御液面に存在するよう充填することが好ましい。蒸発器11内にセラミックス玉を充填することで、突沸を抑え、熱容量を確保でき、水の供給量が変化した際の圧力や温度の変動を極力抑えられるという効果がある。
【0017】
(貯留容器)
貯留容器13には、圧力調整弁(図示せず)を介して所定圧(400-500kPa程度)に加圧されたガスが供給される。この加圧ガスによって貯留容器13内の水は蒸発器11に供給される。この加圧ガスは、通常、水に溶けにくい不活性ガスである窒素、ヘリウムやアルゴンなどが使用される。なお、水用流量制御器23として、外部から制御できる各種ポンプを使用する場合は水の加圧システムはなくても良い。
そして、貯留容器13からは、連通管15を介して、水用流量制御器23により流量が調整された水が蒸発器11へ供給される。連通管15としては、例えばポリテトラフルオロエチレン等の耐熱性樹脂やステンレス等の金属を用いるとよい。そして、水蒸気発生装置1から発生する水蒸気を、例えば、水蒸気電解セルなどの水蒸気を使用する装置の性能評価用に用いるとよい。水蒸気は水蒸気配管17からこれらの装置に供給されることで、水蒸気供給システムを構築できる。以下、水蒸気発生装置1の動作について詳細に説明する。水蒸気発生装置1は、モード1とモード2の二つのモード(動作フロー)を備えている。
【0018】
(モード1)
図2は、
図1の水蒸気発生装置のうち、モード1に関する部分を抜粋した図である。また、
図3には、モード1の動作フローを示す。この動作フローは、蒸発器11内の水位が所定値に保持されるように、貯留容器13から蒸発器11に供給される水量が水用流量制御器23により制御されるものである。この所定値は、厳密には水位計の測定誤差程度の範囲はあるものの、上限下限の範囲はなく、一定値である。なお、加熱容器19として、オーブンを用いた場合を示しており、他の動作フローにおいても同様である。
まず、水蒸気発生装置1の水蒸気の流量制御に先立って、初期設定(数値入力)を行う。
初期設定としては、オーブン温度を設定し、蒸発器11の温度(加熱器21の温度)を温度制御器45により設定する。オーブン温度と蒸発器11の温度設定は、使用する各種センサの許容動作温度を超えない温度範囲で、かつ蒸発器11内の飽和水蒸気圧が水蒸気用流量制御器25の動作圧力範囲となるように設定する。なお、蒸発器11の温度をオーブン温度と同じ温度に設定してもよいが、蒸発器11の温度をオーブン温度より高く設定することで、蒸発器11の温度をより安定させて保持できる。次いで、貯留容器13に供給する加圧ガスのガス圧を設定する。さらに、蒸発器11内の水位を一定に保持するための所定値(水位)(例えば、容器高さの半分程度)に設定する。すなわち、水位計31により測定される水位が所定値となるように水位流量制御器41により水用流量制御器23が制御されるものである。
【0019】
(運転開始)
運転開始時は、加圧ガスを貯留容器13に供給する。また、連通管15や蒸発器11内の残留水分を除去および配管内の圧力発生を防止するために、水蒸気流量設定器47により流量を所定の流量(例えば、測定の際に流す最大水蒸気流量と同程度のガス流量)に設定して、水蒸気用流量制御器25の流量制御弁を開状態にする。次いでオーブンの加熱を開始して(オーブン温度制御器により温度制御)、さらに温度制御器45により加熱器21の温度を上昇させることで、蒸発器11の加熱を開始する。なお、オーブンの加熱と蒸発器11の加熱は同じタイミングで行ってもよいが、オーブンの加熱を先に行い、蒸発器11の外部を温めることで、蒸発器11の下流の配管中での蒸気の凝縮を防ぐことができる。例えば、オーブン温度が100度まで上昇したら、蒸発器11の加熱を開始するとよい。
【0020】
なお、加熱容器19の加熱後であって、蒸発器11の加熱前に、連通管15や蒸発器11や水蒸気配管17内の水分を効果的に除去する目的で、パージ用ガス(ヘリウムや窒素などの不活性ガス)を供給し始めてもよい。パージ用ガスは、水用流量制御器23と蒸発器11との間の連通管15から供給するとよい。この工程は必ずしも必要なものではないが、水蒸気発生装置1を連続して運転する場合に行うことで、内部の水分が強制的に除去されるため、より高精度な水蒸気流量の制御を行うことができる。例えば、パージ用ガスを窒素とする場合、蒸発器11の大きさにもよるが、小規模スタックレベルの規模においては、1-5SLM程度、加熱容器19と蒸発器11が所定温度となるまで流すことで、連通管15や蒸発器11内の水分を効果的に除去できる。
【0021】
加熱容器19と蒸発器11が所定温度となったら、(パージガスを供給している場合は)パージガスを止め水蒸気流量設定器47により流量をゼロに設定して水蒸気用流量制御器25の流量制御弁を全閉状態にし、水位流量制御器41で水位の制御を開始する。水用流量制御器23の流量制御弁が制御されて、連通管15を介して、水が蒸発器11へ供給される(水供給開始)。なお、必ずしも加熱容器19の温度が所定温度となることは要しないが、蒸発器11が所定温度となることは必要である。水の供給が開始されると、蒸発器11内の水量は水位計31により測定されて、所定の水位(例えば、容器高さが半分程度)になるまで、水位流量制御器41により水用流量制御器23が制御(PID制御)される。そして、水位計31による測定値が所定の水位になったら、水蒸気流量設定器47で水蒸気用流量制御器25を所定(例えば、1-5SLM程度)の流量に設定し、必要量の水蒸気(例えば、1-5SLM程度)を水蒸気配管17に供給する。なお、水供給により蒸発器11内の圧力が急激に上昇し、過渡的に想定する蒸気圧より高くなる場合や、圧力が振動する場合などは圧力上昇を緩和するように段階的に水蒸気用流量制御器25の流量制御弁を開いても良い。
【0022】
なお、この水蒸気の量は、当該水蒸気を供給する装置、例えば燃料電池システムの場合は改質器などの必要量に応じて、水蒸気用流量制御器25により一定に制御される。また、水蒸気流量設定器47を操作して水蒸気流量を可変することもできる。蒸発器11から水蒸気が流出して蒸発器11内の圧力が飽和水蒸気圧未満になると、圧力を回復すべく速やかに蒸発器11内の水が蒸発する。水の蒸発に伴い、水位が減少するが、水位計31による測定により所定の水位を回復するように、常時、水用流量制御器23によって貯留容器13から蒸発器11へ水が供給される。なお、この動作中、蒸発器11内の圧力が水蒸気用流量制御器25の動作範囲未満となると蒸気を供給できなくなり、また、圧力が過大であると、蒸発器11から貯留容器13への逆流が発生するので蒸発器11内の圧力も圧力計33により測定し、蒸気用流量制御器25の動作範囲内である事を常時監視している。また、圧力が動作範囲外となった場合は、ブザーや音声、点灯表示などの報知手段、過大圧力への対応として蒸発器11への圧力逃し弁の設置(逃し弁設定圧力は貯留容器の加圧圧力より小さな圧力とする)などがあってもよい。モード1では、圧力計33は単なるモニタとしての機能しかなく、圧力流量制御器43(
図1)により水用流量制御器23が制御されるものではない。また、水用流量制御器23の水の流量も常時測定し平均流量値と水蒸気用流量制御器25の水換算流量値との差の有無を監視されている。
【0023】
本実施形態によれば、水位計31による測定値が所定の水位になるように、常時、貯留容器13から蒸発器11へ水が供給されることで、水蒸気を安定して高精度に発生、供給することができる。一方、水蒸気用流量制御器25により測定される水蒸気流量に等しくなるように、水用流量制御器23により貯留容器13から蒸発器11へ水を供給する場合、一般的に両者の流量を正確に一致させることは困難で、両者のわずかな器差により蒸発器11内の圧力は徐々に減少、もしくは増加してしまう。また、このような制御構成では、片方の制御器の流量が増減するとその影響がもう一方の制御器に伝わり、当該制御器の制御が乱されることもあり、誤差が生じやすくなる。したがって、高精度な流量制御が難しくなる。しかしながら、本実施形態によれば、水蒸気用流量制御器25とは独立した、水位計31による測定値に基づく水用流量制御器23の制御のみであることから、シンプルな制御構成となり、このような問題も生じない。また、蒸発器11と貯留容器13との間の水の連通は、貯留容器13から蒸発器11へ供給する一方向とすれば(蒸発器11と貯留容器13との間に循環ラインを設けない)、水の流入や流出による外乱の影響も生じないので好ましい。
【0024】
(モード2)
図4は、
図1の水蒸気発生装置のうち、モード2に関する部分を抜粋した図である。
図4では、貯留容器13の下に重量計50を設置し、貯留容器13の重量(水の重量)を測定できるようになっている。なお、
図1の水蒸気発生装置には重量計50を図示していないが、
図1の水蒸気発生装置が重量計50を有していても良い。また、
図5には、モード2の動作フローを示す。なお、
図3の動作フローと共通する部分は説明を省略する場合がある。この動作フローは、蒸発器11内の圧力が所定値に保持されるように、貯留容器13から蒸発器11に供給される水量が水用流量制御器23により制御されるものである。この所定値は、厳密には圧力計の測定誤差程度の範囲はあるものの、上限下限の範囲はなく、一定値である。
【0025】
通常、
図3の動作フローに示すように、モード1では水蒸気用流量制御器25により所定の流量の水蒸気が供給される。しかしながら、水蒸気用流量制御器25は制御器の経時変化、実際の運転条件(温度、圧力)と流量校正、修正を行った運転条件の違いなどのために、制御流量に無視できない誤差を含む場合が発生しうる。
従って、適宜、水蒸気用流量制御器25の流量の不確かさを確認し、運転条件を変更する場合、高精度な蒸気供給が必要な場合、あるいは水蒸気用流量制御器25を校正して修正後定められた期間が経過してしまった場合などは、水用流量制御器23や水蒸気用流量制御器25の校正を行うとよい。モード2は、校正用のモードとして機能する。この校正は、蒸発器11内に水をためず(水位計31はゼロ表示)、貯留容器13内の水の減少量を用いて行う。すなわち、貯留容器13から蒸発器11に水を供給するが、蒸発器11内の温度、圧力を、供給水が全量、水蒸気となる条件とし、供給水量(減少量)が水蒸気流量と一致することを利用するものである。例えば、所定時間(例えば、30分間)の貯留容器13内の水の減少量を天秤、重量センサ等の重量計50で測定し、この減少量から水蒸気用流量制御器25の設定値と実際の水蒸気の流量(減少量から算出される)とを比較することで、水蒸気用流量制御器25の校正を行う事ができる。なお、本明細書中、「校正」とは、「JIS Z 8103」による定義に準じ、計器または測定系(本実施形態では水蒸気用流量制御器25)により測定された水蒸気流量と、実際の水蒸気流量との間の関係を確定(確認)することを意味しており、計器等を調整して誤差を修正することは含まない。
【0026】
そして、校正後、実際の水蒸気流量が水蒸気流量設定器47により設定された流量と一致するように、修正した後、水位計31の測定値に基づいて(モード1)、水蒸気用流量制御器25を制御することで、より正確で高精度の流量制御が可能となる。また、前記所定時間の貯留容器13内の水の減少量と水用流量制御器23の設定値と実際の水の流量(減少量から算出される)とを比較することで水用流量制御器23の校正、修正も同時に可能となる。
【0027】
図5の動作フロー(モード2)について説明する。
まず、水蒸気発生装置1の水蒸気の流量制御に先立って、初期設定(数値入力)を行う。
初期設定として、オーブン温度を設定し、蒸発器11の温度を温度制御器45により設定し、貯留容器13に供給する加圧ガスのガス圧を設定する。水蒸気流量設定器47による水蒸気用流量制御器25の流量制御弁の開放については、モード1と同様である。さらに、モード2では、蒸発器11内の圧力を一定に保持するための所定値(圧力値)を設定する。すなわち、圧力計33により測定される圧力が所定値となるように圧力流量制御器43により水用流量制御器23が制御されるものである。この圧力(所定値)は、蒸発器11内に供給される水が全て水蒸気(気体)となって、水がたまらないよう、蒸発器11の設定温度での飽和水蒸気圧より十分小さく、かつ水蒸気用流量制御器25の動作圧力範囲内になるように設定する。
【0028】
運転開始時は、モード1と同様に、加圧ガスを貯留容器13に供給し、水蒸気流量設定器47により、水蒸気用流量制御器25の流量制御弁を開状態にする。ついで加熱容器19と蒸発器11の加熱を開始する。加熱容器19と蒸発器11が所定温度となったら、水蒸気流量設定器47で水蒸気用流量制御器25の流量制御弁を全閉状態にし、圧力流量制御器43により水用流量制御器23の制御を開始し連通管15を介して、水を蒸発器11へ供給する(水供給開始)。なお、モード1において説明したように、加熱容器19と蒸発器11が所定温度となるまでパージ用ガスを供給してもよい。
【0029】
貯留容器13から蒸発器11へ水の供給が開始されると、蒸発器11内の圧力が圧力計33により測定されて、所定の圧力(例えば、100-200kPaG程度、設定温度の飽和水蒸気圧よりも十分小さく、水蒸気用流量制御器25を駆動するための最小圧力よりは大きい圧力)になるように、圧力流量制御器43により水用流量制御器23が制御(PID制御)される。水用流量制御器23への制御信号は、水蒸気用流量制御器25の設定値を水流量に換算するが(換算値)、水が蒸気になる時は体積が1000倍以上に膨張するため、圧力信号を直接流量制御に用いると圧力変動と水蒸気用流量制御器25の変動が大きくなってしまう。そこで前記換算値の80-99%の値(固定値)を出力する信号発生器を用意し、これに圧力流量制御器43の信号の最大値が前記換算値の2-30%程度になるように調整した信号(変動値)を加算して水用流量制御器23への制御信号とする。そして、蒸発器11内の圧力上昇とともに、水蒸気用流量制御器25の流量制御弁を少しずつ開放し、最終的に蒸発器11の圧力と水蒸気用流量制御器25の流量が所定の設定値になるように制御する。
上記により水蒸気用流量制御器25の水蒸気流量が設定された水蒸気量(例えば、1-5SLM程度)になって、一定時間安定して(例えば、10-20分程度)一定流量の水蒸気が水蒸気配管17に供給されるようになると、水蒸気の補正係数を算出する。
【0030】
水蒸気の補正係数は、以下の計算式から算出される。
貯留容器13を重量計(例えば、天秤)50上に載置して、時間t1からt2までの間(例えば、30分間)、一定の水蒸気量が発生し続けた場合
供給した水の量は、下記(1)式より求められる。
δm=m(t1)-m(t2) (1) m:天秤の測定値
一方、水蒸気用流量制御器25が制御したみかけの水蒸気流量(水蒸気用流量制御器25により測定された水蒸気流量)をX、0℃1気圧のガス密度をρ0とすると、補正係数は下記(2)式より求められる。
補正係数=δm/(X・ρ0・(t2-t1)) (2)
補正係数が算出されると、実際の流量は、X×補正係数で求まる。なお、重量計50から求めた実際の流量をYとした場合、実際の流量の算出は、上記したY=aX(aは補正係数)の式で求める場合の他に、Y=aX+b(bは定数)やその他の補正式でX,Yの関係を近似する場合もある。そして、実際の流量が算出された後、すなわち校正後は、水蒸気用流量制御器25と水蒸気流量設定器47を以下のパターンにより修正等することで、許容誤差範囲内(通常、1-2%未満)で水蒸気量を供給できる。例えば、以下に、パターン1-3を示す。これらのパターンは選択可能であってもよい。
パターン1は、校正結果が流量表示値、設定値に自動的に反映される場合であり、パターン2はユーザーが校正結果を利用して流量表示値、設定値を修正する場合であり、パターン3はユーザーが流量表示値、設定値を修正せず用いつつ、校正結果を利用して正しい流量を供給する場合である。
例えば、流量表示値、設定値をX、実際の流量をYとして、パターン1では、機器の機能により校正結果が流量に反映されXが自動修正され許容誤差範囲内でYと一致させるケース、パターン2では、ユーザーが校正結果を手動でXに反映させ許容誤差範囲内でYと一致させるケース、パターン3では、Xを特段変更せず校正結果からXとYの関係(補正式)を求め、その逆関数からYを実際に流すためのXを求めて設定値とするケースがある。
したがって、校正後、水蒸気用流量制御器25と水蒸気流量設定器47を修正、変更した後、蒸発器11内の水位が所定の水位になるように、水の供給制御をすることで(モード1)、高精度の流量制御が可能となる。
【実施例0031】
(実施例1)
図1(
図2)に示す水蒸気発生装置1を用いて、
図3の動作フロー(モード1)に基づき、水蒸気の流量制御を行った。その例を
図6に示す。
図6において、横軸は加熱器21の加熱開始時間をゼロとした時間軸(hh:mm)を示し、縦軸は、水蒸気流量(sccm)(点線)、水位(%)(破線)、水供給量(g/min)(実線)を示す。なお、水蒸気流量は、水蒸気用流量制御器25に測定、表示される流量(流量測定値)を示している。
蒸発器11として、素材はステンレス材を用いて、底面積3cm
2、高さ30cmの円筒形のもの(容量約100cc)を作製した。さらに、蒸発器11内に5mmのセラミックス玉を容積の80%程度充填した。また、水用流量制御器23、水蒸気用流量制御器25として以下の機器を使用した。
水用流量制御器23:リンテック株式会社製 液体マスフローメータ LM-3412L、コントロールバルブ CV-1204-NC-2SW9AAA00、表示設定器 RP310
水蒸気用流量制御器25:日立Astemo&ナガノ株式会社製 SFC1680FX
さらに、加熱器21としてヒータを用いて蒸発器11の外周側面に設置した。
初期設定(数値入力)は、以下のように行った。
加熱容器19(オーブン)の温度:135℃
ヒータ温度(蒸発器11の温度):135℃(飽和水蒸気圧213kPaG)
水位計31の所定値(水位流量制御器41による制御値):150mm(50%)
貯留容器13に供給する加圧ガス:窒素、圧力400kPaG
これらの数値を各装置に入力し、オーブンと蒸発器11の加熱を開始した。なお、最初は水蒸気用流量制御器25の流量制御弁は開放状態となっている。
【0032】
図6ではオーブンと蒸発器11の加熱に伴い0:16付近では配管中の残留水が蒸発し、瞬間的に水蒸気用流量制御器25の値が変動した。オーブン温度と温度計35からの測定値が135℃になった時点で、水蒸気用流量制御器25の流量制御弁を閉止し、水用流量制御器23により蒸発器11へ水の供給を開始した(
図6の時間軸0:57の付近)。次いで水位の増加とともに圧力が急激に増加したため、圧力の上昇速度を緩和するために水蒸気用流量制御器25の流量制御弁を1SLMに設定した(時間軸0:58の付近)。この時、供給開始の勢いによって蒸発器11内に圧力が生じ、若干、水蒸気用流量制御器25の値が変動した。そして、水位計31の値が50%(150mm)に達した時点(
図6の時間軸1:30付近)で、水蒸気用流量制御器25の流量制御弁を5000sccmに設定し、水蒸気配管17に供給される水蒸気用流量が所定流量(5000sccm)となった。なお、水蒸気用流量制御器25の流量制御弁が急激に開放状態となることで、水位計31の値は一旦減少するが、すぐに増加して、所定値を保持するようになる。なお、
図6では、水蒸気流量設定器47の設定流量を5SLM(5000sccm)から2SLM(2000sccm)(
図6の時間軸2:00の時点)、次いで4SLM(4000sccm)等に変更した場合を示しており(
図6の時間軸2:30の時点)、このように、水位計31の値が一定に保持されながら、水蒸気流量の変化に追従するように、蒸発器11に水が供給される。なお、水蒸気流量の変更は、水蒸気流量設定器47を操作することでその都度変更してもよいし、予め定められたプログラムに基づいて制御されるようにしてもよい。
【0033】
水蒸気電解セルの性能評価では、単セル、入力電力が数10W-1kW程度の小規模スタックレベルの規模の被試験体に原料の水蒸気を正確な流量で安定(流量不確かさ1%程度)に供給し、必要に応じて水素等他のガス種とともに流量を迅速、柔軟に変化させることなどが重要であるが、この際の原料の水蒸気の流量は100sccm-10SLM(水量換算0.1sccm-10sccm)である。本実施例によれば、このような小流量の水蒸気も精度よく安定に供給し、かつ必要に応じて迅速、柔軟に変化させることが可能となる。
【0034】
(実施例2)
図1(
図4)に示す水蒸気発生装置1を用いて、
図5のモード2のフローに基づき、水蒸気の流量制御を行った。その例を
図7に示す。
図7において、横軸は水蒸気用流量制御器25の水蒸気流量が初期設定された水蒸気量となった時間をゼロとした時間軸(hh:mm)を示し、縦軸は、水蒸気流量(SLM)、水の供給量(g/min)、圧力計33から測定される圧力(kPa)を示す。なお、水蒸気流量は、水蒸気用流量制御器25に測定、表示される流量(流量測定値)を示している。
本実施例において、実施例1と共通する装置等は、実施例1と同じものを用いた。
【0035】
初期設定(数値入力)は、以下のように行った。
加熱容器19(オーブン)の温度:150℃
ヒータ温度(蒸発器11の温度):150℃(飽和水蒸気圧376kPaG)
パージ用窒素流量:5SLM
圧力計33の所定値(圧力制御器43による制御値):120kPaG
貯留容器13に供給する加圧ガス:窒素、圧力400kPaG
蒸発器11の温度を実施例1(135℃)の場合よりも高温(150℃)に設定することで、飽和水蒸気圧は213kPaGから376kPaGとなり、かなり高い値となる。そして、このように飽和水蒸気圧が高くなるように温度設定し、比較的高い飽和水蒸気圧よりも十分小さい値(120kPaG)を圧力計33の所定値に設定することで、蒸発器11内に供給された水が瞬時に水蒸気となるため、蒸発器11内に水が溜まることを防ぐことができる。
【0036】
そして、これらの数値を各装置に入力し、オーブンの加熱を開始した。なお、最初は水蒸気用流量制御器25の流量制御弁は開放状態となっている。
次いで、パージ用窒素を図示しないマスフローコントローラを用いて水用流量制御器23と蒸発器11との間の連通管15から供給するとともに、加熱器21によって蒸発器11の加熱を開始した。オーブン温度と温度計35からの測定値が150℃になった時点で、パージ用窒素の供給を停止し、水蒸気用流量制御器25の流量制御弁を閉止し水用流量制御器23により蒸発器11へ水の供給を開始した。蒸発器11の設定圧力は120kPaGとし、圧力計33により蒸発器11内の圧力を測定し、圧力流量制御器43を用いて水用流量制御器23により水供給制御を開始した。蒸発器11内の圧力が上昇し始めたら圧力が減少しないように注意しながら水蒸気流量設定器47により少しずつ蒸気流量を増加させた(水位はゼロである)。圧力計33による測定値が所定の圧力(120kPaG)に達したら、水蒸気流量設定器47を5SLM(5000sccm)に設定した。そして、水蒸気用流量制御器25の水蒸気流量が設定された水蒸気量(5SLM)に達し、水蒸気流量が安定してから
図7のT(20分から50分までの30分間)における電子天秤の値の変化を測定し、水蒸気の補正係数を算出した。なお、水蒸気流量の変更は、このように水蒸気流量設定器47を操作することでその都度変更してもよいし、予め定められたプログラムに基づいて制御されるようにしてもよい。
【0037】
貯留容器13を天秤上に載置して、時間t1からt2までの間(例えば、30分間)、一定の水蒸気量を出し続けた場合において、上記(1)式および(2)式から、補正係数=0.81と算出された。なお、みかけの水蒸気流量X=5.0(SLM)、ρ0=0.8036g/Lとした。
補正係数が算出されると、実際の流量は、上記Y=aX(aは補正係数)の式を満たす場合、X×補正係数で求まることから、この場合の実際の水蒸気流量は5×0.81=4.05(SLM)であった(水素基準)。また、標準偏差は1.2sccmとなり、平均流量の0.03%とかなり小さい値であった。このように、本実施例によれば、貯留容器13の減少水量から補正係数を算出して、水蒸気用流量制御器25の校正を行うことで、より正確で高精度の流量制御が可能となる。
そして、上記パターン1の場合は、例えば以下の二つのパターンがある。
(一つ目のパターン)水蒸気用流量制御器25に測定、流量表示される水蒸気流量が実際の流量である4.05(SLM)に自動的に補正(修正)され、水蒸気流量設定器47の設定値5.0(SLM)との間で差異が生じる。そうすると、水蒸気用流量制御器25の流量制御弁が設定流量値5.0(SLM)に制御され、水蒸気用流量制御器25の流量表示値が5.0(SLM)に収斂する。したがって、本来の設定値である5.0(SLM)の水蒸気が水蒸気配管17に供給される。このように、本来の設定値である5.0(SLM)に自動的に修正されるものである。
(二つ目のパターン)流量制御器25の流量制御弁の開度は変化せず、水蒸気用流量制御器25により測定、流量表示される水蒸気流量と水蒸気流量設定器47の設定値が、実際の流量である4.05(SLM)に自動的に修正表示される。その後、水蒸気流量設定器47の設定値を5.0(SLM)に変更することで、流量制御弁が変化し、5.0(SLM)の水蒸気が水蒸気配管17に供給される。このとき、水蒸気用流量制御器25の流量表示値は5.0(SLM)となる。なお、水蒸気流量設定器47の設定値の変更は、自動で行われてもよいし、手動で設定してもよい。
そして、パターン2の場合は、ユーザーが、手動で水蒸気流量設定器47の設定値と水蒸気用流量制御器25の流量表示値を実際の流量である4.05(SLM)に修正し、その後、水蒸気流量設定器47の設定値を5.0(SLM)に再設定することで、流量制御弁が変化し、5.0(SLM)の水蒸気が水蒸気配管17に供給されるものである。このとき、水蒸気用流量制御器25の流量表示値は5.0(SLM)となる。
パターン3の場合は、現在の4.05(SLM)から本来の5.0(SLM)の水蒸気流量とするために、水蒸気流量設定器47により、設定値が5/0.81=6.17(SLM)に設定される。この設定は、通常手動で行われ、モード1の運転に先立って行うとよい。この時、水蒸気用流量制御器25の流量表示値は水蒸気流量設定器47と同じ6.17(SLM)であるものの、本来の設定値と等しい流量(5.0SLM)の水蒸気を発生、供給することができる。
【0038】
すなわち、モード2の動作フローに基づいて補正係数を求めた後、上記いずれかのパターンにより水蒸気用流量制御器25や水蒸気流量設定器47を修正することで、本来の5.0(SLM)の水蒸気流量を水蒸気配管17に供給することができる。このように、本実施例の水蒸気発生装置1によれば、モード1とモード2の2種類のモードを有しており、必要に応じて切り替えることができるものである。
【0039】
また、
図8に示すように、水蒸気用流量制御器25の下流に別の流量計60を設置し、この流量計60を校正することもできる。この流量計60は、水蒸気発生装置1とは全く別に用いる流量計であり、校正するために水蒸気配管17に取り付けて、流量計60を校正した後、水蒸気配管17から取り外して、本来の用途に使うものである。例えば、モード2において、この別の流量計60の補正係数を求めることができる。この場合、水蒸気用流量制御器25や水蒸気流量設定器47の数値を用いずとも、流量計60の流量表示器63による表示(測定器61により測定される流量)が安定したら、上記式(1)、(2)により、補正係数を求めることができる。例えば、
図7と同様に水を供給した場合であって、流量計60の流量表示器63による表示が「5.0(SLM)」の場合、上記した式により補正係数が0.81と求められ、流量表示器63の値に補正係数0.81をかければ実際の水蒸気流量(4.05(SLM))を得ることができる。この場合、水蒸気用流量制御器25は一定量の蒸気を安定に供給する蒸気供給器としての役割を示す。また、水蒸気用流量制御器25を重量計50であらかじめ校正(必要な場合は修正)しておけば、水蒸気用流量制御器25を標準器として流量計60の値付けに用いることもでき、重量計50を使用せずに流量計60の補正係数を求めることもできる。すなわち、一度水蒸気用流量制御器25の補正係数が算出できれば毎回毎回重量計50を用いて補正係数を算出せずにしばらくの間その補正係数を用いて実際の水蒸気の流量値を計算してよい。
このように、水蒸気発生装置1を流量計60の校正にも使用できる。
水蒸気電解による水素製造分野の他、食品製造、半導体製造等の分野において、水蒸気を供給するための水蒸気発生装置および水蒸気発生装置の水蒸気の流量制御方法として利用可能性がある。例えば、家庭や業務用の食品の解凍、調理又はパン等の食品加工工程や空調、室内清浄、衣類プレス、殺菌等に使用される水蒸気発生装置に適用できる。