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特開2024-70526内視鏡システム、内視鏡システムの作動方法、プロセッサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070526
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】内視鏡システム、内視鏡システムの作動方法、プロセッサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20240516BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
A61B1/045 618
A61B1/00 630
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181078
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】弁理士法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 恒史
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161WW02
4C161WW04
4C161WW08
4C161YY12
(57)【要約】
【課題】内視鏡検査中の処理負荷を軽減できる、内視鏡システム、内視鏡システムの作動方法、プロセッサを提供する。
【解決手段】内視鏡システム10は、内視鏡12、プロセッサ装置20を備える。プロセッサ装置20は、病変検出部74、異常検出部76として機能する。病変検出部74は、内視鏡12によって撮影された画像を解析して病変部を検出し、検出結果をディスプレイ16に表示する。異常検出部76は、内視鏡12によって撮影された画像を解析して異常の検出を行い、異常の検出された画像を、内視鏡検査終了後(P2)、最終記憶部64に記憶する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内を撮影する内視鏡と、プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
前記内視鏡で撮影された内視鏡画像から病変部を検出し、前記内視鏡を用いた内視鏡検査中に、前記病変部の検出結果をモニタに表示するとともに、
前記内視鏡画像に生じた異常を検出し、前記内視鏡検査が終了した後に、前記異常が検出された内視鏡画像を保存用の第1記憶装置に記憶する、内視鏡システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記内視鏡検査中は前記内視鏡画像を一時記憶用の第2記憶装置に記憶し、前記内視鏡検査が終了した後に、前記第2記憶装置に記憶された内視鏡画像を用いて前記異常の検出を行う、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記内視鏡検査中に、前記異常の検出を行う、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記病変部を検出する前に前記異常を検出し、
前記異常が検出された内視鏡画像を前記病変部の検出対象から除外する、請求項3に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、
複数の内視鏡画像のうち一部を間引いた内視鏡画像に対して前記病変部の検出を行う、請求項1~4のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記異常が検出された内視鏡画像を、外部装置からアクセス可能な形態で、前記第1記憶装置に記憶する、請求項5に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記内視鏡画像には、前記内視鏡検査の対象者に関する対象者情報、内視鏡検査の実施者に関する実施者情報の少なくともいずれかを含む個人情報が含まれ、
前記プロセッサは、
前記異常が検出された内視鏡画像から前記個人情報を消去して、前記第1記憶装置に記憶する、請求項6に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記異常が検出された内視鏡画像にアクセスを許容する範囲を、前記内視鏡検査に用いる内視鏡画像とは異なる範囲に設定する、請求項6に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記異常が検出された内視鏡画像に対して許容する編集の種別を、前記内視鏡検査に用いる内視鏡画像とは異なる種別に設定する、請求項6に記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記異常には、前記内視鏡の本体に生じた故障を含む内的要因に基づく異常と、前記内視鏡の本体外の外的要因に基づく異常とが含まれており、
前記プロセッサは、
前記内的要因に基づく異常を検出する、請求項6に記載の内視鏡システム。
【請求項11】
内視鏡で撮影された内視鏡画像から病変部を検出し、前記内視鏡を用いた内視鏡検査中に、前記病変部の検出結果をモニタに表示するステップと、
前記内視鏡画像に生じた異常を検出し、前記内視鏡検査が終了した後に、前記異常が検出された内視鏡画像を保存用の第1記憶装置に記憶するステップと、を備える、内視鏡システムの作動方法。
【請求項12】
体腔内を撮影する内視鏡を有する内視鏡システムと接続され、前記内視鏡を用いた内視鏡検査中に、前記内視鏡で撮影された内視鏡画像が入力されるプロセッサにおいて、
前記内視鏡検査中に、前記内視鏡画像から病変部を検出し、前記病変部の検出結果を前記内視鏡システムに入力するとともに、
前記内視鏡画像に生じた異常を検出し、前記内視鏡検査が終了した後に、前記異常が検出された内視鏡画像を保存用の第1記憶装置に記憶する、プロセッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡とプロセッサとを備えた内視鏡システム、内視鏡システムの作動方法、及び、プロセッサに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡、及び、プロセッサ装置(プロセッサ)を有する内視鏡システム、または、内視鏡と接続された画像処理用プロセッサ装置(プロセッサ)では、内視鏡で撮影された画像(内視鏡画像)を用いて検査(内視鏡検査)が行われる。内視鏡画像は、内視鏡や撮影環境が良好な状態で得られたものであることが好ましいが、内視鏡が故障している場合や、汚れが付着しているなど撮影環境が良好でない場合、内視鏡画像には異常が生じる。このように異常が生じた場合は、修理やメンテナンスを行う必要がある。
【0003】
下記特許文献1には、内視鏡画像を解析して異常を検出し、サーバに通知する構成が記載されている。このように、異常を通知することで、適切なタイミングでメンテナンスを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-187494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、内視鏡検査中の処理負荷が大きいといった問題があった。つまり、上記特許文献1のように異常を検出する場合、異常の検出に加え、原因究明などの目的で、異常が検出された内視鏡画像を保存のために記憶する(保存用の最終記憶装置(第1記憶装置)に記憶する)処理が行われる、また、内視鏡検査では、内視鏡画像を解析することによって病変部を検出したり、検出結果を出力する(モニタに表示する)などの処理も行われる。これら全ての処理を、内視鏡検査中に行うことは処理負荷が大きい。
【0006】
本発明は、上記背景を鑑みてなされたものであり、内視鏡検査中の処理負荷を軽減できる、内視鏡システム、内視鏡システムの作動方法、プロセッサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の内視鏡システムは、体腔内を撮影する内視鏡と、プロセッサと、を備え、プロセッサは、内視鏡で撮影された内視鏡画像から病変部を検出し、内視鏡を用いた内視鏡検査中に、病変部の検出結果をモニタに表示するとともに、内視鏡画像に生じた異常を検出し、内視鏡検査が終了した後に、異常が検出された内視鏡画像を保存用の第1記憶装置に記憶する。
【0008】
プロセッサは、内視鏡検査中は内視鏡画像を一時記憶用の第2記憶装置に記憶し、内視鏡検査が終了した後に、第2記憶装置に記憶された内視鏡画像を用いて異常の検出を行う、ものでもよい。
【0009】
プロセッサは、内視鏡検査中に、異常の検出を行う、ものでもよい。
【0010】
内視鏡検査中に異常の検出を行う場合、プロセッサは、病変部を検出する前に異常を検出し、異常が検出された内視鏡画像を病変部の検出対象から除外する、ことが好ましい。
【0011】
プロセッサは、複数の内視鏡画像のうち一部を間引いた内視鏡画像に対して病変部の検出を行う、ことが好ましい。
【0012】
プロセッサは、異常が検出された内視鏡画像を、外部装置からアクセス可能な形態で、第1記憶装置に記憶する、ことが好ましい。
【0013】
内視鏡画像には、内視鏡検査の対象者に関する対象者情報、内視鏡検査の実施者に関する実施者情報の少なくともいずれかを含む個人情報が含まれ、プロセッサは、異常が検出された内視鏡画像から個人情報を消去して、第1記憶装置に記憶する、ことが好ましい。
【0014】
プロセッサは、異常が検出された内視鏡画像にアクセスを許容する範囲を、内視鏡検査に用いる内視鏡画像とは異なる範囲に設定する、ことが好ましい。
【0015】
プロセッサは、異常が検出された内視鏡画像に対して許容する編集の種別を、内視鏡検査に用いる内視鏡画像とは異なる種別に設定する、ことが好ましい。
【0016】
異常には、内視鏡の本体に生じた故障を含む内的要因に基づく異常と、内視鏡の本体外の外的要因に基づく異常とが含まれており、プロセッサは、内的要因に基づく異常を検出する、ことが好ましい。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の内視鏡システムの作動方法は、内視鏡で撮影された内視鏡画像から病変部を検出し、内視鏡を用いた内視鏡検査中に、病変部の検出結果をモニタに表示するステップと、内視鏡画像に生じた異常を検出し、内視鏡検査が終了した後に、異常が検出された内視鏡画像を保存用の第1記憶装置に記憶するステップと、を備える。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明のプロセッサは、体腔内を撮影する内視鏡を有する内視鏡システムと接続され、内視鏡を用いた内視鏡検査中に、内視鏡で撮影された内視鏡画像が入力されるプロセッサにおいて、内視鏡検査中に、内視鏡画像から病変部を検出し、病変部の検出結果を内視鏡システムに入力するとともに、内視鏡画像に生じた異常を検出し、内視鏡検査が終了した後に、異常が検出された内視鏡画像を保存用の第1記憶装置に記憶する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、内視鏡検査中の処理負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
図2】プロセッサ装置の構成と機能を示すブロック図である。
図3】プロセッサ装置の処理の流れを示す説明図である。
図4】プロセッサ装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図5】プロセッサ装置の処理の流れを示す説明図である。
図6】プロセッサ装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図7】画像処理用プロセッサ装置の構成と機能を示すプロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態の内視鏡システム10は、内視鏡12と、光源装置14と、ディスプレイ16(モニタ)と、ユーザーインターフェース18と、プロセッサ装置20(プロセッサ)と、を有する。
【0022】
内視鏡システム10では、内視鏡12が、光源装置14と光学的に接続され、且つ、プロセッサ装置20と電気的に接続されている。また、内視鏡システム10では、プロセッサ装置20が、内視鏡システム10の各部(内視鏡12、光源装置14、ディスプレイ16、ユーザーインターフェース18)と電気的に接続されている。
【0023】
内視鏡12は、観察対象の体内(体腔内)に挿入される挿入部30と、挿入部30の基端側に接続された操作部32と、挿入部30の先端側に設けられた湾曲部34及び先端部36と、を有している。操作部32には、鉗子等の処置具を総通するための鉗子チャンネルの入口38が設けられている。また、操作部32には、湾曲部34の湾曲、被写体撮影時のズーム、静止画/動画撮影指示、撮影モードの切り替え、送気及び送水など、ユーザーからの操作を受け付ける各種操作部材が設けられている。そして、本実施形態では、前述した操作部材として、回転操作される回転ダイヤル40、42、44、及び、押圧操作される押圧ボタン46、48、50を設けている。
【0024】
先端部36には、照明光を出射させる照明窓、照明窓から照射され、被写体によって反射された反射光を取り込む観察窓、鉗子チャンネルの出口、送気・送水口などが設けられている。また、先端部36には、観察窓の背後に画像センサ60が設けられている。画像センサ60は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary MOS)など、撮影画像をデジタルな画像信号として出力するイメージセンサである。画像センサ60によって撮影された画像(内視鏡画像)は、プロセッサ装置20に入力される。
【0025】
光源装置14は、内視鏡12に照明光を供給する。ディスプレイ16は、例えば、周知の液晶ディスプレイであり、内視鏡12(画像センサ60)で撮影した画像や、後述する病変部の検出を行った際の検出結果などを表示する。ユーザーインターフェース18は、プロセッサ装置20への入力等を行う入力デバイスであり、キーボード、マウス、フットペダル、タッチパネル、マイク、及び/または、モーションセンサなどである。
【0026】
図2に示すように、プロセッサ装置20には、一時記憶部62(第2記憶装置)、最終記憶部64(第1記憶装置)、が設けられている。一時記憶部62、最終記憶部64は、いずれも内視鏡12(画像センサ60)によって撮影された画像を記憶するものであるが、一時記憶部62は、画像等の情報の一時的な記憶に用いられ、最終記憶部64は、画像等の情報の保存用(長期的な記憶)に用いられる。
【0027】
最終記憶部64には、検査画像記憶領域66と、異常画像記憶領域68と、が設けられている。検査画像記憶領域66には、内視鏡12を用いた内視鏡検査中に静止画/動画の撮影指示が行われた場合に、この指示に基づいて撮影された静止画/動画が記憶される。また、検査画像記憶領域66には、後述する病変検出部74において行われた病変部の検出結果を示す画像やディスプレイ16の表示画面の録画画像も記憶される。他方、異常画像記憶領域68には、後述する異常検出部76において異常が検出された画像が記憶される。
【0028】
最終記憶部64は、LAN(Local Area Network)やインターネットなど周知のネットワーク(図示せず)を介してプロセッサ装置20と接続された外部装置(例えば、内視鏡12が配置された医療機関の医師などの端末や、内視鏡12の製造メーカの修理担当者の端末など)(図示せず)からアクセス可能に設けられ、このような外部装置から最終記憶部64にアクセスすることによって記憶された情報の閲覧や管理を行うことができる。
【0029】
プロセッサ装置20には、前述した一時記憶部62、最終記憶部64の他、プログラム格納部70、中央制御部72が設けられている。プログラム格納部70には、各種処理または制御などに関するプログラムが格納されている。中央制御部72は、プログラム格納部70に格納されたプログラムを動作させることにより、病変検出部74、異常検出部76、として機能する。
【0030】
病変検出部74は、内視鏡12(画像センサ60)によって撮影された画像を解析することによって病変部を検出し、検出結果をディスプレイ16に表示する。病変部は、腫瘍部、炎症部(いわゆる炎症の他、出血または萎縮等の変化がある部分を含む)、大腸憩室、治療痕(EMR(Endoscopic mucosal resection)瘢痕、ESD(Endoscopic Submucosal Dissection)瘢痕、クリップ箇所)、出血点、穿孔、血管異形性、加熱による焼灼跡もしくは着色剤、蛍光薬剤等による着色によってマーキングしたマーキング部、または、生体検査(いわゆる生検)を実施した生検実施部などである。
【0031】
病変部の検出結果の表示は、例えば、病変部を強調した病変強調画像を生成し、これをディスプレイ16に表示することによって行われる。病変強調画像は、病変部の検出元の画像(元画像)に対して病変部を示す情報(病変部を着色した画像、病変部の輪郭線、病変部を囲むマーカー、病変部を指し示す矢印等の指標など)を重畳させた画像(重畳画像)、または、元画像と重畳画像とを時間的に切り替える画像(切り替え画像)である。もちろん、元画像に並べて、病変強調画像(重畳画像または切り替え画像)を表示することによって、病変部の検出結果を表示してもよい。また、病変部の位置や存在を示す文字情報をディスプレイ16に表示することによって、病変部の検出結果を表示してもよい。
【0032】
なお、病変検出部74は、内視鏡12によって撮影された全ての画像について病変部の検出を行うものでもよいが、内視鏡検査中は毎秒数十枚の画像が撮影されるため、これら全てについて病変部の検出を行うことは処理負荷が大きい。このため、本実施形態では、病変検出部74が、内視鏡12によって撮影された画像の一部を間引き、間引き後の画像について病変部の検出を行う構成としている。具体的には、例えば、0.2秒毎に1回(1秒につき5枚の画像について)病変部の検出を行う、または、入力された画像5枚につき1枚について(4枚おきに)病変部の検出を行う構成としている。こうすることで、内視鏡検査中の処理負荷を軽減できる。
【0033】
異常検出部76は、内視鏡12(画像センサ60)によって撮影された画像を解析することによって異常の検出を行う。異常には、内視鏡12の本体に生じた内的要因に基づく異常と、内視鏡12の本体外の外的要因に基づく異常と、が含まれる。内的要因に基づく異常は、内視鏡の故障により生じた異常であり、例えば、画像センサ60の焼け、画素落ち、画像信号を伝達する経路(回路やケーブル)の破損、光学経路上の傷(観察窓や撮影レンズの傷)である。内的要因に基づく異常は、洗浄等の通常の(内視鏡12の配置された医療機関で可能な)メンテナンスでは解消することができないため、内視鏡12の製造メーカ等において修理を行うなどより高度なメンテナンスが必要となる。他方、外的要因に基づく異常は、例えば、観察窓に汚れ(体液、残渣等)が付着したなどであり、通常のメンテナンスで解消することが可能である。
【0034】
このように、異常には、内的要因に基づく異常と、外的要因に基づく異常とが存在するので、異常検出部76によりこれら両方の異常を検出してもよい。しかし、両方の異常を検出する場合、例えば、通常のメンテナンスで解消可能であるにも関わらず、内視鏡12が故障したとして内視鏡12の製造メーカ等へ修理を依頼してしまうなど、異常に対して過剰に対応してしまうといった問題がある。このため、本実施形態では、内的要因に基づく異常のみを検出する構成としている。すなわち、本実施形態の異常検出部76は、通常のメンテナンスで解消可能な異常は検出せず、より高度なメンテナンスが必要となる異常を検出する。こうすることで、異常への過剰な対応を防止できる。
【0035】
以下、図3図4を用いて、プロセッサ装置20の処理の流れについて説明を行う。内視鏡検査開始(T1)に伴い、内視鏡12(画像センサ60)での撮影が行われ(S001)、撮影された画像がプロセッサ装置20に入力される(S002)。内視鏡検査中(P1)は、毎秒数十回のサイクルで撮影が行われ(S001)、撮影された画像が順次プロセッサ装置20に入力される(S002)。
【0036】
内視鏡検査中(P1)、プロセッサ装置20は、入力された全ての画像を一時記憶部62に記憶する(S003)とともに、入力された画像の一部を間引き(S004)、間引き後の画像を病変検出部74に入力する。病変検出部74は、入力された画像を解析して病変部の検出を行い(S005)、検出結果をディスプレイ16に表示する(S006)。一時記憶部62への画像の記憶(S003)、病変検出部74による病変部の検出(S005)及び検出結果の表示(S006)は、内視鏡検査中(P1)、すなわち、内視鏡検査開始(T1)(内視鏡12からの画像の入力開始)から内視鏡検査終了(T2)(内視鏡12からの画像の入力が停止される)までの間、繰り返される。
【0037】
なお、本実施形態では、内視鏡12からの画像の入力が停止することによって内視鏡検査終了(T1)とみなしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、内視鏡12やプロセッサ装置20に設けられた検査終了ボタンを押下するなど、内視鏡検査を終了する際に行われる操作や処理を検出して内視鏡検査終了(T1)とみなしてもよい。
【0038】
内視鏡検査終了(T1)に伴い、すなわち、内視鏡検査終了後(P2)、プロセッサ装置20は、異常検出部76を作動させて異常の検出を行う。異常検出部76は、一時記憶部62に記憶された画像を読み出して(S007)、読みだした画像を用いて異常の検出を行う(S008)。そして、異常が検出された場合は、異常が検出された画像(以下、異常画像と称する)を、最終記憶部64の異常画像記憶領域68に記憶する(S009)。異常の検出は、一時記憶部62に記憶された全ての画像について行われる。このように、本実施形態では、異常の検出及び異常画像の最終記憶部64(異常画像記憶領域68)への記憶を内視鏡検査終了後(P2)に行う構成としたため、内視鏡検査中(P1)の処理負荷を軽減できる。
【0039】
なお、異常画像に加えて、検出された異常に関する情報(異常の種別等を示す情報であり、以下、異常情報と称する)を、異常画像に対応付けして最終記憶部64(異常画像記憶領域68)に記憶してもよい。この場合、異常画像の付帯情報として異常画像に付帯させる形態で異常情報を記憶してもよい。また、異常画像とは別に異常情報を記憶してもよい。この場合、異常画像と異常情報との対応関係を示す対応情報を、異常画像や異常情報に付帯させて記憶、または単独で記憶すればよい。
【0040】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、異常の検出(S008)と異常画像の最終記憶部64(異常画像記憶領域68)への記憶(S009)との両方を内視鏡検査終了後(P2)に行うが、第2実施形態では、異常の検出(S008)については内視鏡検査中(P1)に行い、異常画像の最終記憶部64(異常画像記憶領域68)への記憶(S009)を内視鏡検査終了後(P2)に行う。なお、以降の説明では、前述した第1実施形態と同様の部材については同様の符号を付して説明を省略している。
【0041】
図5図6に示すように、第2実施形態では、内視鏡検査中(P1)、プロセッサ装置20は、内視鏡12から入力された全ての画像を一時記憶部62に記憶する(S003)。また、プロセッサ装置20(異常検出部76)は、内視鏡12から入力された全ての画像について異常の検出を行う(S008)。そして、異常が検出された場合は、異常情報を、異常画像に対応付けして一時記憶部62に記憶する(S100)。前述のように、異常情報は、検出された異常に関する情報(異常の種別等を示す情報)であり、異常画像の付帯情報として異常画像に付帯させる形態で記憶してもよいし、異常画像とは別に記憶してもよい。なお、異常情報を異常画像とは別に記憶する場合、異常画像と異常情報との対応関係を示す対応情報を、異常画像や異常情報に付帯させて記憶、または単独で記憶すればよい。
【0042】
さらに、プロセッサ装置20(病変検出部74)は、内視鏡12から入力された画像の一部を間引き(S004)、間引き後の画像を解析して病変部の検出を行い(S005)、検出結果をディスプレイ16に表示する(S006)。これらの処理、具体的には、一時記憶部62への画像の記憶(S003)、異常の検出及び異常情報の一時記憶部62への記憶(S008、S100)、病変部の検出及び検出結果の表示(S004~S006)は、内視鏡検査中(P1)(内視鏡検査開始(T1)から内視鏡検査終了(T2)までの間)、繰り返される。
【0043】
内視鏡検査終了(T1)に伴い、すなわち、内視鏡検査終了後(P2)、プロセッサ装置20は、一時記憶部62に記憶された異常情報を参照し、異常情報に対応付けされた異常画像を一時記憶部62から読み出して(S101)、最終記憶部64(異常画像記憶領域68)に記憶する(S009)。もちろん、異常画像に加えて異常情報についても一時記憶部62から読み出し、異常画像に対応付けして最終記憶部64(異常画像記憶領域68)に記憶してもよい。このように、第2実施形態では、異常画像の最終記憶部64(異常画像記憶領域68)への記憶を内視鏡検査終了後(P2)に行う構成としたため、内視鏡検査中(P1)の処理負荷を軽減できる。
【0044】
なお、第2実施形態のように、内視鏡検査中(P1)に異常の検出を行う場合、異常画像については、病変部の検出対象から除外することが好ましい。具体的には、異常検出部76が、病変検出部74による病変部の検出(S005)に先駆けて異常の検出(S008)を実行する(病変部を検出する前に異常を検出する)。そして、病変検出部74は、異常検出部76により異常が検出された画像(すなわち、異常画像)を内視鏡12から入力された画像から除外した残りの画像(以下、正常画像と称する)を対象として、病変部の検出(S005)を行う。こうすることで、より正確な病変部の検出が可能となる。もちろん、正常画像のうちの一部を間引いた間引き後の画像に対して病変部の検出を行ってもよい。
【0045】
また、上記第1、第2実施形態では、最終記憶部64をプロセッサ装置20と一体に設ける(プロセッサ装置20に内蔵した)例で説明をしたが、本発明はこれに限定されない。最終記憶部64(検査画像記憶領域66と異常画像記憶領域68の一方または両方)をプロセッサ装置20とは別体に設け、LANやインターネットなどのネットワークを介してプロセッサ装置20と接続してもよい。
【0046】
なお、最終記憶部64に記憶される情報には、内視鏡検査の対象者に関する情報(対象者情報)や内視鏡検査の実施者に関する情報(実施者情報)などの個人情報が含まれる。このため、最終記憶部64へのアクセスについては、予め設定された者(または、端末)にのみアクセスを許容するといったように、アクセス可能な範囲に制限を設けることが好ましい。もちろん、検査画像記憶領域66については、内視鏡12が配置された医療機関の医師などにのみアクセス可能とし、異常画像記憶領域68については、内視鏡12の製造メーカの修理担当者などにのみアクセス可能とするといったように、検査画像記憶領域66と異常画像記憶領域68とでアクセス可能な範囲を異なる範囲に設定してもよい。
【0047】
また、検査画像記憶領域66に記憶された情報は、内視鏡検査やその後の処置にも用いられるため、内視鏡検査の後に、前述した個人情報(対象者情報や実施者情報など)を参照する必要が生じる可能性が高い。これに対して、異常画像記憶領域68に記憶された情報は、内視鏡12の修理やメンテナンスに用いられるため、内視鏡検査の後に、個人情報を参照する必要が生じる可能性が低い。このため、異常画像記憶領域68に情報を記憶する場合は、記憶する情報から個人情報を削除することが好ましい。
【0048】
さらに、前述のように、検査画像記憶領域66に記憶された情報と異常画像記憶領域68に記憶された情報とではその使用目的が異なるので、これに起因して、情報を管理する際に要求される編集(表示(再生)、移動、切り取り(コピー)、貼り付け、削除など)の機能も異なる。このため、検査画像記憶領域66に記憶された情報を管理する場合と、異常画像記憶領域68に記憶された情報を管理する場合とで、情報を管理する際に実現させる編集機能の種類や、情報を管理する際に実現させる編集機能を表示する表示メニューなどの編集画面を異ならせることが好ましい。
【0049】
[第3実施形態]
上記第1、第2実施形態では、内視鏡システム10を構成するプロセッサ装置20が、本発明のプロセッサとして機能する例で説明をしたが、図7に示すように、第3実施形態では、内視鏡システム100とは別に、本発明のプロセッサとして機能する画像処理用プロセッサ装置102を設けている。
【0050】
内視鏡システム100は、内視鏡10(図1参照)、光源装置12(図1参照)、ディスプレイ16(図1参照)などを含んで構成される。画像処理用プロセッサ装置102には、一時記憶部62、最終記憶部64、プログラム格納部70、中央制御部72が設けられている。プログラム格納部70には、各種処理または制御などに関するプログラムが格納されており、中央制御部72は、プログラム格納部70に格納されたプログラムを動作させることにより、病変検出部74、異常検出部76、として機能する。
【0051】
内視鏡システム100(内視鏡10)により撮影された画像は、画像処理用プロセッサ装置102に入力される。画像処理用プロセッサ装置102は、入力された画像を用い、内視鏡検査中(P1)に病変検出部74による病変部の検出を行い、結果を内視鏡システム100に入力する。内視鏡システム100では、画像処理用プロセッサ装置102から入力された病変部の検出結果をディスプレイ16に表示する。また、画像処理用プロセッサ装置102は、内視鏡システム100(内視鏡10)から入力された画像を用い、内視鏡検査中(P1)または内視鏡検査後(P2)に異常の検出を行う。そして、内視鏡検査後(P2)に異常画像を最終記憶部64に記憶する。
【0052】
このように、内視鏡システム100とは別にプロセッサ(画像処理用プロセッサ装置102)を設けた第3実施形態においても、上述した第1、第2実施形態と同様に、内視鏡検査中(P1)の処理負荷を軽減できる。なお、本実施形態では、画像処理用プロセッサ装置102が単独で本発明のプロセッサとして機能する例で説明をしたが、画像処理用プロセッサ装置102と内視鏡システム100のプロセッサ装置20(図1参照)とが協働して本発明のプロセッサとして機能する構成としてもよい。
【0053】
上記実施形態において、中央制御部72、病変検出部74、異常検出部76などの各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウエア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA (Field Programmable Gate Array) などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、各種の処理を実行するために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0054】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGAや、CPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウエアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0055】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた形態の電気回路(circuitry)である。
【符号の説明】
【0056】
10、100 内視鏡システム
12 内視鏡
14 光源装置
16 ディスプレイ(モニタ)
18 ユーザーインターフェース
20 プロセッサ装置(プロセッサ)
30 挿入部
32 操作部
34 湾曲部
36 先端部
38 入口
40、42、44 回転ダイヤル
46、48、50 押圧ボタン
60 画像センサ
62 一時記憶部(第2記憶装置)
64 最終記憶部(第1記憶装置)
66 検査画像記憶領域
68 異常画像記憶領域
70 プログラム格納部
72 中央制御部
74 病変検出部
76 異常検出部
102 画像処理用プロセッサ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7