(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070573
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/53 20060101AFI20240516BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
G01N21/53 Z
G01N21/27 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181159
(22)【出願日】2022-11-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人科学技術振興機構:A-STEP 令和2年度追加公募(トライアウトタイプ)課題「飛沫拡散を広域高感度で即時可視化する3次元リアルタイム撮像ライダー装置の創生」産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100171848
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 裕美
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 真人
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB02
2G059CC19
2G059EE02
2G059EE11
2G059FF01
2G059FF04
2G059GG01
2G059GG03
2G059HH01
2G059JJ02
2G059JJ11
2G059KK03
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM10
2G059MM14
2G059NN01
(57)【要約】
【課題】大気中に含まれる飛沫又はエアロゾルを計測することができる計測装置を提供すること。
【解決手段】計測装置100は、波長が異なる第1及び第2照射光IL1,IL2を照射する照射系ISと、照射光IL1,IL2の反射によって形成される第1及び第2観察光OL1,OL2を第1及び第2観察像として結像させる結像系20と、結像系20によって結像された第1及び第2観察像を検出する検出系30と、結像系20内又は結像系20から検出系30までの間に配置され、第1及び第2照射光IL1,IL2の波長に対応する透過特性を有する狭帯域フィルター40とを備え、結像系20は、狭帯域フィルター40に略垂直な平行光線状態で狭帯域フィルター40に入射した第1及び第2観察光OL1,OL2を、検出系30において第1及び第2観察像として結像させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長が異なる第1及び第2照射光を照射する照射系と、
前記第1及び第2照射光の反射によって形成される第1及び第2観察光を第1及び第2観察像として結像させる結像系と、
前記結像系によって結像された第1及び第2観察像を検出する検出系と、
前記結像系の光入射側又は前記結像系から前記検出系までの間に配置され、第1及び第2照射光の波長に対応する透過特性を有する狭帯域フィルターと、を備え、
前記結像系は、前記狭帯域フィルターに略垂直な平行光線状態で前記狭帯域フィルターに入射した前記第1及び第2観察光を、前記検出系において前記第1及び第2観察像として結像させる、
計測装置。
【請求項2】
前記結像系は、前記第1及び第2観察光をコリメートしつつ前記狭帯域フィルターに垂直に入射させる等方コリメータを有する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記等方コリメータは、フライアイレンズ、GRINレンズ、及び湾曲板積層型レンズのいずれかである、請求項1に記載の計測装置。
【請求項4】
前記等方コリメータは、凸面に沿って配置され、前記狭帯域フィルターは、前記等方コリメータの光射出側の近傍に配置される、請求項3に記載の計測装置。
【請求項5】
前記結像系は、前記等方コリメータの射出側に配置される広角レンズ状の集光レンズを有する、請求項4に記載の計測装置。
【請求項6】
前記結像系は、前記等方コリメータの入射側に配置される望遠レンズ状の集光レンズを有する、請求項5に記載の計測装置。
【請求項7】
前記狭帯域フィルターは、ドーム状に配置され、
前記結像系は、前記狭帯域フィルターの射出側に配置される魚眼レンズ状の集光レンズを有する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項8】
前記第1観察光を前記第1観察像として結像させる第1結像系と、第1照射光の波長に対応する透過特性を有する第1狭帯域フィルターと、前記第1結像系によって結像された第1観察像を検出する検出系を有する第1撮像装置と、前記第2観察光を前記第2観察像として結像させる第2結像系と、第2照射光の波長に対応する透過特性を有する第2狭帯域フィルターと、前記第2結像系によって結像された第2観察像を検出する第2検出系を有する第2撮像装置とを備える、請求項1に記載の計測装置。
【請求項9】
前記第1照射光の波長は、水の非吸収波長に対応し、前記第2照射光の波長は、水の吸収波長に対応する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項10】
前記第1観察光と前記第2観察光との差分を算出する演算処理装置をさらに備える、請求項1に記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気又は雰囲気を監視する計測装置に関し、特に飛沫等の2次元的又は3次元的な計測を可能にするバイスタティック型の計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中に含まれるエアロゾルを計測するエアロゾル計測装置として、光源と、光源から出射された光が通過する第1エタロンと、第1エタロンを通過した出射光がエアロゾルで散乱されることで発生するミー散乱光が通過する第2エタロンと、第2エタロンを通過したミー散乱光を受光する受光器とを備え、2つのエタロンによってエアロゾルに起因するミー散乱光を直接抽出する(特許文献1)。
【0003】
上記エアロゾル計測装置は、ミー散乱光を高精度で分離するが、2つのエタロンを同調させることは容易でなく、高精度の温度管理や位置調整が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明は、簡易で安定した構成によって、空気中に含まれる飛沫又はエアロゾルを計測することができる計測装置を提供することを目的とする。
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る計測装置は、波長が異なる第1及び第2照射光を照射する照射系と、第1及び第2照射光の反射によって形成される第1及び第2観察光を第1及び第2観察像として結像させる結像系と、結像系によって結像された第1及び第2観察像を検出する検出系と、結像系の光入射側又は結像系から検出系までの間に配置され、第1及び第2照射光の波長に対応する透過特性を有する狭帯域フィルターとを備え、結像系は、狭帯域フィルターに略垂直な平行光線状態で狭帯域フィルターに入射する第1及び第2観察光を、検出系において第1及び第2観察像として結像させる。ここで、狭帯域フィルターの配置に関して、結像系から検出系までとは、結像系内に設けられる場合を含む。
【0007】
上記計測装置では、第1観察像と第2観察像とを比較することで、大気中に浮遊する飛沫の分布状態を検出することができる。第1照射光と第2照射光とは、例えば飛沫の主成分である水に対する吸収量に差があればよい。また、上記計測装置では、結像系が狭帯域フィルターに略垂直な平行光線状態で狭帯域フィルターに入射した第1及び第2観察光を検出系において第1及び第2観察像として結像させるので、狭帯域フィルターの特性を画角内で一様に保つことができ、飛沫の分布状態を比較的広い画角内で高精度に検出することができる。
【0008】
本発明の具体的な側面又は態様では、上記計測装置において、結像系は、第1及び第2観察光をコリメートしつつ狭帯域フィルターに垂直に入射させる等方コリメータを有する。この場合、光線の状態を制御した状態で狭帯域フィルターに効率よく入射させることができる。
【0009】
本発明の別の側面では、等方コリメータは、フライアイレンズ、GRINレンズ、及び湾曲板積層型レンズのいずれかである。この場合、等方コリメータを薄板状の光学素子とすることができる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、等方コリメータは、凸面に沿って配置され、狭帯域フィルターは、等方コリメータの光射出側の近傍に配置される。この場合、等方コリメータを経てコリメートされた第1及び第2観察光を狭帯域フィルターに垂直に入射させやすくなる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、結像系は、等方コリメータの射出側に配置される広角レンズ状の集光レンズを有する。この場合、狭帯域フィルターを通過した第1及び第2観察光を検出系の平坦な結像面上に結像させることができる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、結像系は、等方コリメータの入射側に配置される望遠レンズ状の集光レンズを有する。この場合、比較的遠方の対象領域に関して空気又は雰囲気中の飛沫を計測することができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、狭帯域フィルターは、ドーム状に配置され、結像系は、狭帯域フィルターの射出側に配置される魚眼レンズ状の集光レンズを有する。この場合、比較的近い周辺領域に関して空気又は雰囲気中の飛沫を計測することができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、第1観察光を第1観察像として結像させる第1結像系と、第1照射光の波長に対応する透過特性を有する第1狭帯域フィルターと、第1結像系によって結像された第1観察像を検出する検出系を有する第1撮像装置と、第2観察光を第2観察像として結像させる第2結像系と、第2照射光の波長に対応する透過特性を有する第2狭帯域フィルターと、第2結像系によって結像された第2観察像を検出する第2検出系を有する第2撮像装置とを備える、請求項1に記載の計測装置。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、第1照射光の波長は、水の非吸収波長に対応し、第2照射光の波長は、水の吸収波長に対応する。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、第1観察光と第2観察光との差分を算出する演算処理装置をさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る計測装置の応用を説明する概略的斜視図である。
【
図3】(A)は、結像系と検出系とを備える撮像装置の構造を説明する図であり、(B)は、結像系の本体部分を説明する拡大断面図である。
【
図4】(A)及び(B)は、等方コリメータの一例を説明する概念的な正面図及び断面図である。(C)及び(D)は、等方コリメータの別の例を説明する概念的な正面図及び断面図である。(E)は、等方コリメータの別の例を説明する概念的な断面図である。
【
図5】(A)は、画像変換装置を説明する概念的な断面図であり、(B)は、画像検出部の検出面における区分領域を示し、(C)は、画像出力部の表示面における区分領域を示す。
【
図6】(A)は、表示制御部を説明する機能的なブロック図であり、(B)は、記憶部を説明する図である。
【
図7】(A)~(C)は、3次元計測装置の動作を説明する図である。
【
図8】第2実施形態に係る計測装置を説明する概略的斜視図である。
【
図9】第1撮像装置又は第2撮像装置を説明する断面図である。
【
図10】変形例の撮像装置を説明する断面図である。
【
図11】別の形例の撮像装置を説明する断面図である。
【
図12】別の形例の撮像装置を説明する概念図である。
【
図13】別の形例の撮像装置を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
以下、
図1等を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る計測装置の構造及び動作について説明する。
【0019】
図1に示すように、第1実施形態の計測装置100は、部屋RMのような空間中の空気や雰囲気を計測対象とするものであり、照射光ILを対象に照射する照明装置101と、対象からの反射光RLである観察光OLを3次元的な観察像として撮影する第1及び第2撮像装置102A,102Bと、同期制御及び信号処理を行う制御装置105とを備える。ここで、制御装置105は、照明装置101と、第1撮像装置102Aと、第2撮像装置102Bとを同期動作させて飛沫の分布に関する3次元計測情報を取得する。計測装置100は、食堂、劇場、駅、教室、スタジアム等の広面積空間を計測対象とするものであり、図示の例では10m程度~数10mを距離計測範囲としている。
【0020】
計測装置100のうち、照明装置101は、複数の人HUが集合する部屋RMにおいて天井CEの一の隅に固定され、第1及び第2撮像装置102A,102Bは、天井CEの対向する他の隅に固定されている。照明装置101は、対象領域ADを所定の広がりを有する照射角A1で照明する。第1及び第2撮像装置102A,102Bは、隣接して配置され、対象領域ADからの観察光OLを所定の広がりを有する画角A2で計測する。照射角A1と画角A2とが交差する対象領域ADには、人HUが発する飛沫やこれに起因するエアロゾルを含む浮遊物質群SSが漂っている。本明細書では、エアロゾルも広義の飛沫として扱う。浮遊物質群SS中の広義の飛沫SPは、照射光ILを散乱等によって反射し、照射光ILと同一波長で進行方向や強度が異なる観察光OLを形成する。
【0021】
図2を参照して、照明装置101は、照射光ILとして波長が異なる第1及び第2照射光IL1,IL2を照射する照射系ISであり、第1光源装置11Aと第2光源装置11Bとダイクロイックミラー14とを有する。
【0022】
第1光源装置11Aは、高輝度パルス固体レーザーであり、第1照射光IL1として所定波長λ1の赤外光を射出し、第2光源装置11Bは、高輝度パルス固体レーザーであり、第2照射光IL2として波長λ1とは異なる所定波長λ2の赤外光を射出する。光源装置11Aから射出された第1照射光IL1は、レンズ12Aによって照射角A1(
図1参照)を調整され、第2光源装置11から射出された第2照射光IL2は、レンズ12Bによって照射角A1(
図1参照)を調整される。第1照射光IL1と第2照射光IL2とは、ダイクロイックミラー14によって照射光ILに合成され同一方向に射出される。
【0023】
第1光源装置11Aが発生する第1照射光IL1の波長λ1は、水の吸収波長である1450nm、1930nm、2900nm等を除いたいずれかの波長、具体的には例えば1310nmに設定される。一方、第2光源装置11Bが発生する第2照射光IL2の波長λ2は、水の吸収波長である1450nm、1930nm、2900nm等のいずれかに設定される。
【0024】
照明装置101は、
図1に示す制御装置105によって発光タイミングを制御されている。照明装置101は、制御装置105の制御下で、第1照射光IL1と第2照射光IL2とを所定の周期で射出する。照射光IL1,IL2の照射の繰り返し周波数は、例えば0.1~1MHzであり、照射光IL1,IL2のエネルギーは、例えば0.1~1mJとしたが、0.001~100mJ程度とすることができる。照射光ILの射出周期は、計測距離のレンジに応じて設定され、照射光ILのエネルギーは、反射光RLの計測に必要となる検出レベルを考慮して設定される。
【0025】
図3(A)を参照して、第1撮像装置102Aは、第1照射光IL1の反射によって形成される第1観察光OL1を第1観察像として結像させる結像系20と、結像系20によって結像された第1観察像を検出する検出系30と、半球状の外形を有し結像系20中に配置される狭帯域フィルター40とを備える。結像系20、検出系30等は、ケース10bに収納されて相互に位置決めされた状態で固定されている。
【0026】
結像系20は、前段の結像ユニット21と、後段の投影ユニット22とを備える。結像ユニット21は、望遠角レンズ状の集光レンズである。結像ユニット21は、比較的遠方に存在する対象の像を結像させる望遠鏡タイプの結像光学系であり、主鏡21a、副鏡21b、補正レンズ21c等で構成される。結像ユニット21は、
図1に示す画角A2内つまり対象領域ADに存在する対象物からの第1反射光RL1又は第1観察光OL1を、投影ユニット22の物体面22f上に集束させ結像させる。結像ユニット21は、第1反射光RL1又は第1観察光OL1の検出レベルを十分高くする観点からは、F値の小さな明るい光学系であることが望ましい。特に遠方の物体を検出する観点からすると、明るい光学系とする必要があり、画素密度又は分解能が高いこと望ましい。一方、近隣の物体を検出する観点からすると、明るさよりも画角を広くすることが望ましく、画素密度又は分解能を下げることができる。具体的な作製例では、結像ユニット21の視野角(つまり画角A2)を数10°としたが、30°以下とすることが望ましい。
【0027】
図3(B)を参照して、投影ユニット22は、等方コリメータ22aと、広角撮像レンズ22cとを備える。等方コリメータ22aは、第1観察光OL1をコリメートしつつ狭帯域フィルターに垂直に入射させる。広角撮像レンズ22cは、広角レンズ状の集光レンズである。広角撮像レンズ22cは、例えば45°程度の画角を有する広角のカメラレンズであり、レンズL10~L20を含み、画角内の無限遠からの赤外光線を収束させ像を形成する機能を有する。なお、広角撮像レンズ22cは、100°~180°の画角を有するものであってもよい。この場合、広角撮像レンズ22cは、結像ユニット21によって結像され等方コリメータ22aを経てコリメートされた第1観察光OL1を、次段の検出系30の検出面52a上に収束させ再度結像させる。
【0028】
図4(A)は、等方コリメータ22aの一例を説明する部分拡大正面図であり、
図4(B)は、概念的な拡大断面図である。
図4(A)等に示す等方コリメータ22aは、ドーム状の基材26bの表面に層状にフライアイレンズ26aを形成したものである。等方コリメータ22aは、基材26bの凸球面状の基準面26s又は射出面26tに垂直な方向から入射し、かつ、フライアイレンズ26aを構成する各要素レンズ26eの前方近傍の焦点面26f上に集束しつつ入射する光線である第1観察光OL1を、コリメートした状態で射出面26tから射出させる(
図4(B)参照)。フライアイレンズ26aは、等方コリメータ22aの光入射側に限らず、等方コリメータ22aの光射出側に形成されてもよい。
【0029】
図4(C)は、等方コリメータ22aの別の例を説明する部分拡大正面図であり、
図4(D)は、概念的な拡大断面図である。
図4(C)等に示す等方コリメータ22aは、光軸からの距離に応じて屈折率が異なるGRINレンズ要素27eを凸の球状面27sに沿って配列したドーム状の部材である。等方コリメータ22aは、GRINレンズ要素27eの光軸に平行な方向又は球状面27sに垂直な方向から入射し、かつ、各GRINレンズ要素27e上に集束しつつ入射する第1観察光OL1を、コリメートした状態で射出面27tから射出させる(
図4(D)参照)。
【0030】
図4(E)は、等方コリメータ22aのさらに別の例を説明する概念的な部分拡大正面図である。
図4(E)等に示す等方コリメータ22aは、屈折率が相互に異なり屈折率が徐々に変化する多数の屈折層28eを積層し、凸の球状面28sに沿って湾曲させたドーム状の部材である(例えば国際公開90/05316号明細書参照)。等方コリメータ22aは、屈折層28eのうち最初の層28f又は球状面28s上の各点に集束しつつ入射する光線である第1観察光OL1を、コリメートした状態で射出面28tから射出させる。
【0031】
図3(B)に戻って、狭帯域フィルター40は、ドーム状の薄板部材であり、等方コリメータ22aの射出面22eに沿って射出面22eに対向して配置されている。狭帯域フィルター40の例えば射出面40eには、誘電体多層膜からなるフィルター層40fが形成されている。フィルター層40fは、水の吸収波長でない波長の光線、具体的には例えば波長1310nmの第1観察光OL1を透過させ、その他の波長の赤外光を効率的に遮断する。狭帯域フィルター40は、例えば等方コリメータ22aの光射出側において等方コリメータ22aと一体化されてもよい。
【0032】
図3(A)を参照して、検出系30は、結像系20によって形成された第1観察像から出力画像を形成する画像変換装置50と、出力画像を撮影して計測画像を取得する撮像装置60と、画像変換装置50や撮像装置60の動作を制御する制御回路80とを備える。
【0033】
画像変換装置50は、基板51の一方面上に画像検出部52を設け、基板51の他方面上に画像出力部53を設けた構造を有する。画像検出部52は、結像系20によって形成された第1観察像を取り込み、画像出力部53は、第1観察像に対する信号処理によって得た出力画像を表示する。
【0034】
図5(A)に示すように、画像変換装置50は、例えばSOI(Silicon On Insulator)タイプの積層型集積回路であり、Siウェハから形成された基板51の第1面51a上に、SOI層として、画像検出部52と第1表示制御回路55aとが形成され、基板51の第2面51b上にSOI層として、画像出力部53と第2表示制御回路55bとが形成されている。第1表示制御回路55aと第2表示制御回路55bとを組み合わせて表示制御部55と呼ぶ。
【0035】
画像検出部52は、InGaAs系の2次元センサーである。より詳細には、画像検出部52は、InGaAs能動層、電極、配線その他で形成された集積回路を有しており、マトリックス状に配列されたInGaAsフォトダイオード(不図示)が画素として形成されるとともに、各フォトダイオードに付随してトランジスター等も形成され、これらの周囲にドライバー回路を付随させたものとなっている。InGaAs2次元センサーは、波長1310nmに感度を持たせることができ、ガイガーモードで動作させるデバイスとすれば、1光子感受も可能である。
【0036】
画像出力部53は、例えば有機EL型表示素子であり、可視光画像を表示する。より詳細には、画像出力部53は、有機EL層、電極、配線その他で形成された集積回路を有しており、マトリックス状に配列された有機EL発光素子(不図示)が画素として形成されるとともに、各有機EL発光素子に付随してトランジスター等も形成され、これらの周囲にドライバー回路を付随させたものとなっている。
【0037】
図5(B)に示すように、画像検出部52の検出面52aは、Y方向にm(mは、自然数で、例えば12)行で、X方向にn(nは、自然数で、例えば12)列で、全体としてm行×n列=A(例えば144個)チャンネルの区分領域AR1を有する。つまり、画像検出部52は、Aチャンネルの区分領域AR1単位で画像を検出する。
図5(C)に示すように、画像出力部53の表示面53aは、Y方向にm(例えば12)行で、X方向にn(例えば12)列で、全体としてm行×n列=A(例えば144個)チャンネルの区分領域AR2を有する。つまり、画像出力部53は、Aチャンネルの区分領域AR2単位で画像を出力する。以上において、区分領域AR1や区分領域AR2は、Y方向及びX方向についてi×j(i、jは、それぞれ自然数で、例えば8,16である。)の行列で2次元配列された画素群で構成されている。
【0038】
詳細は後述するが、画像検出部52の検出面52aを構成する各区分領域AR1において、画像変換の開始タイミングを設定するべく、第1観察像から輝度信号が検出される。表示制御部55は、画像検出部52の各区分領域AR1において検出された輝度信号がいずれかの画素又は領域全体で所定の閾値以上である場合、画像出力部53の表示面53aを構成する各区分領域AR2において各区分領域AR1で検出された第1観察像に対応する出力画像を残像のように所定期間だけ表示させるための検出トリガーを画像出力部53に対して出力する。検出トリガーは、第1観察像が所定以上の信号有為性を有するか否かを判断するものであり、検出トリガーが出力された区分領域AR1やこれに対向する区分領域AR2は、着目領域であり、着目領域とされた区分領域AR2には、出力画像が表示される。ここで信号有為性とは、例えば区分領域AR1全体での検出信号のS/Nや画像を連結したクラスタ単位でのS/Nなどが所定の基準を超えて信頼性を持つことを意味する。着目領域とその発生時刻とを特定する検出トリガーは、測距のためのタイミング信号としても利用される。
【0039】
図5(A)を参照して、基板51には、表示制御部55の一部として、第1面51a側の画像検出部52と、第2面51b側の画像出力部53とを繋ぐスルーホール51hが形成されている。スルーホール51hは、
図5(B)及び5(C)に示す区分領域AR1,AR2単位で1以上設けられており、画像検出部52及び画像出力部53の対向する区分領域AR1,AR2間で直接的にデータの授受を行うことができるようにし、信号の高速処理を可能にしている。なお、基板51には、スルーホール51hに限らず、各種機能を有する回路素子を埋め込むことができる。
【0040】
図6(A)を参照して、表示制御部55は、
図5(A)に示す画像検出部52を動作させる検出駆動部91と、
図5(A)に示す画像出力部53を動作させる表示駆動部92と、第1観察像や出力画像について信号処理を行うためのパラメーター等の情報を記憶する記憶部93と、検出駆動部91、表示駆動部92、及び記憶部93の動作を制御する主制御部95とを有する。画像検出部52による第1観察像又は検出画像のデータや、画像出力部53のための出力画像のデータは、記憶部93を構成するフレームメモリーに一時的に蓄えられるが、利用されなかった検出画像や表示済みの出力画像に関するデータは順次消去される。
【0041】
主制御部95は、画像検出部52の検出面52aで受けた第1観察像を、所望の時間だけ遅延させた状態で画像出力部53の表示面53aに出力画像として表示させることができ、区分領域AR1,AR2のアドレスを指定することにより、目的とする区分領域AR1,AR2、具体的には検出面52aのいずれかの区分領域AR1によって第1観察像が検出されると、この区分領域AR1に対向する表示面53a側の区分領域AR2において対応する出力画像の表示を所定の遅延時間及び時間幅で行うことができる。これにより、撮像装置60の性能に応じたタイミングでイメージ出力が可能になる。
【0042】
主制御部95は、閾値判定の弁別機能を有し、画像検出部52の検出面52aで受けた画像をその場で弁別して、第1反射光RL1又は第1観察光OL1を検出した、つまり信号判定された区分領域AR1(つまり現出領域)のみに対応して、表示面53a側の区分領域AR2において出力画像を選択的に表示させる。なお、第1反射光RL1又は第1観察光OL1は、不定期に入射する微弱な光であり、主制御部95が弁別機能を有していなければ、画像検出部52で検出した膨大な画像データを高速処理する必要が生じ、主制御部95等の信号処理回路の負担が大きくなる。
【0043】
主制御部95は、高度の信号処理機能(具体的には、信号検出アルゴリズム、画像処理機能等)を有していてもよい。主制御部95が高度の信号処理機能を有する場合、画像検出部52の検出面52aで受けた画像から得た画像信号のノイズやバックグラウンドを除去することができ、ノイズに埋もれやすい微弱信号の選択的な抽出が容易になる。
【0044】
なお、区分領域AR1,AR2を構成する画素単位で閾値による弁別を行ったり、ノイズフィルタリングを行ったりすることもできるが、信号処理の負担軽減の観点からは、区分領域AR1,AR2単位で、閾値による弁別を行ったり、ノイズフィルタリングを行ったりすることが望ましい。
【0045】
図6(B)に示すように、記憶部93は、取得画像記憶部93aと、パラメーター記憶部93bと、補正画像記憶部93cとを有する。取得画像記憶部93aは、画像検出部52で検出した複数の画像又はフレームをデータとして記憶する。この画像は、例えば10ns毎に取得され、各画像に通し番号が付与される。取得画像記憶部93aには、例えば保存可能な画像数又はフレーム数が予め設定されており、抽出されなかった古い画像は一定期間毎に削除される。パラメーター記憶部93bには、表示制御部55が画像検出部52から検出トリガーを受け取った際に、主制御部95によって、検出トリガーに対応する区分領域AR1,AR2のアドレス情報(すなわち位置的情報)が一時的に保管され、画像出力部53で表示される画像の表示位置に反映される。また、パラメーター記憶部93bは、アドレス情報の他に、画像検出部52による検出に対する画像出力部53による表示の遅延時間や時間幅を規定する表示タイミング情報も保管される。補正画像記憶部93cは、アドレス情報及び表示タイミング情報によって特定された出力画像であって画像出力部53での表示動作に適合するように主制御部95によって補正処理がなされた補正画像を一時記憶する。この際、補正画像は、増幅、ノイズ除去等の画像処理が行われたものであってもよい。なお、表示タイミング情報や補正処理のパラメーターについては、制御回路80から修正を加えることもでき、制御回路80によって画像変換装置50の動作を管理することができる。
【0046】
図3に戻って、撮像装置60は、CMOS型の撮像カメラである。撮像装置60は、制御回路80の制御下で動作し、画像出力部53の表示面53aに形成された可視域の出力画像を撮影し出力画像に対応する計測画像を得ることができる。撮像装置60は、リレーレンズ61と画像センサー62とを有するが、リレーレンズ61は、ファイバーバンドルに置き換えることができ、或いは画像出力部53の表示面53aに画像センサー62を近接させることもできる。撮像装置60としては、例えば信号判定された画素領域のみ独立に露光読出しできるFST(Fine Sensor with Trigger; FST)を用いることができ、この場合、画像変換装置50又は画像出力部53と同期した出力画像の高精細な撮影が可能になる。
【0047】
制御回路80は、コンピュータ又はマイクロプロセッサであり、
図1に示す制御装置105から発光トリガーTG1を受信する。制御回路80は、画像変換装置50から出力される検出トリガーTG2に基づいて撮像装置60を同期動作させ画像変換装置50の出力画像を高精細で撮影した計測画像を取得する。制御回路80は、対象からの第1反射光RL1又は第1観察光OL1が入射する画像変換装置50によって検出され出力される検出トリガーTG2を10ns程度の精度で検出する。発光トリガーTG1と検出トリガーTG2とのタイミング差は、第1反射光RL1又は第1観察光OL1を生じさせる対象までの距離に関する情報を与える。よって、(1)画像変換装置50によって検出トリガーTG2に関連させて出力される出力画像を撮像装置60によって取り込んだ計測画像と、(2)発光トリガーTG1及び検出トリガーTG2のタイミング差の距離換算値とを組み合わせることにより、検出パターンと検出パターンまでの距離とを要素とする距離画像(つまり3次元計測情報)を得ることができる。
【0048】
図7を参照して、
図1等に示す照明装置101と第1撮像装置102Aとの動作について説明する。
図7(A)は、照明装置101によって形成される照射光IL(実効的には第1照射光IL1)や第1撮像装置102Aによって観測される第1観察光OL1を例示し、
図7(B)は、画像変換装置50による処理を示し、
図7(C)は、撮像装置60の動作を示す。照明装置101は、制御装置105からの発光トリガーTG1に応じて第1照射光IL1を含む照射光ILを周期的に射出する。第1照射光IL1は、対象領域AD(
図1参照)を照明し、対象領域ADに水分を含む浮遊物質群SSが存在する場合、浮遊物質群SSよって少ない減衰で反射された第1観察光OL1が結像系20によって結像され、画像変換装置50の画像検出部52に第1観察像I1を形成し、画像変換装置50は、画像出力部53に出力画像I2を表示する。この際、出力画像I2は、第1観察像I1に対して所定の遅延時間DTだけ遅延し所定の時間幅を有するものとなる。また、出力画像I2は、観察像I1から第1観察光OL1を検出した局所的な領域である特定の区分領域AR1に対応する画像だけを空間的に切り出したものとなり、第1観察像I1から第1観察像I1(つまり第1観察光OL1)を検出した時間帯だけを抽出したものとなる。撮像装置60によって撮影される計測画像I3は、画像変換装置50によって時間的及び空間的なフィルターがかけられ、一般的な画像処理に適合するものとなる。この計測画像I3は、発光トリガーTG1と検出トリガーTG2とのタイミング差(タイミング情報)ΔT又はその換算値が距離情報として付帯されることで距離画像として機能する。つまり、撮像装置60によって撮影される画像情報は、タイミング差ΔT等を含むタイミング情報と組み合わせることによって第1距離画像となる。かかる第1距離画像は、第1観察光OL1を発生させた物体の位置、サイズ、移動速度等の情報を与えるものであり、第1検出情報DI1として制御装置105(
図1参照)に出力される。第1検出情報DI1において、検出した物体は、対象距離範囲に制限することができる。つまり、対象領域AD(
図1参照)外の物体は、対象外としてデータから除去される。制御装置105は、第1撮像装置102Aから得た第1検出情報DI1等を用いることで、第1観察光OL1を発生させた物体すなわち浮遊物質群SSの経時的な挙動を追跡することができる。
【0049】
図1に戻って、第2撮像装置102Bは、第1撮像装置102A等と同様の構造を有するが、水の吸収波長である1450nm、1930nm、2900nm等のいずれか、具体的には例えば波長1450nmに感度を有する。このため、第2撮像装置102Bは、
図3(A)等に示す結像系20や検出系30を有するが、狭帯域フィルター40の透過率が波長1450nmで高くなっている。結果的に、第2撮像装置102Bは、波長1450nmの第2観察光OL2を計測し第2観察像を撮影するものとなり、第2距離画像又は第2検出情報DI2を制御装置105に出力する。第1撮像装置102Aは、水の吸収波長帯で感度が低いが、第2撮像装置102Bは、水の吸収波長帯で感度が高い。このため、第2撮像装置102Bは、対象領域ADに水分を含む浮遊物質群SSが存在すると、これらによって第2観察光OL2が吸収されて減衰し、背景又はバックグラウンドに相当する第2観察像を撮影する。一方で、第1撮像装置102Aは、対象領域ADに水分を含む浮遊物質群SSが存在しても、これらによって第1観察光OL2が減衰せず、検出信号としての第1観察像を撮影する。よって、制御装置105が、第1撮像装置102Aから得た3次元的な第1検出情報DI1と、第2撮像装置102Bから得た3次元的な第2検出情報DI2との差分情報を計算することで、ノイズを低減し水分を含む浮遊物質群SSを選択的に抽出した飛沫SPの3次元情報を得ることができる。制御装置105は、第1観察光OL1と第2観察光OL2との差分を算出する演算処理装置PDである。
【0050】
以上の説明では、画像変換装置50を設け、制御回路80によって距離画像(つまり3次元計測情報)を得ているが、画像変換装置50の位置に撮像装置60を配置し、撮像装置60から出力される2次元画像情報を得てもよい。この場合、制御装置105が、第1撮像装置102Aから得た2次元的な第1検出情報DI1と、第2撮像装置102Bから得た2次元的な第2検出情報DI2との差分情報を計算することで、ノイズを低減し水分を含む浮遊物質群SSを選択的に抽出した飛沫SPの2次元情報を得ることができる。
【0051】
以上で説明した第1実施形態の計測装置100は、波長が異なる第1及び第2照射光IL1,IL2を照射する照射系ISと、照射光IL1,IL2の反射によって形成される第1及び第2観察光OL1,OL2を第1及び第2観察像として結像させる結像系20と、結像系20によって結像された第1及び第2観察像を検出する検出系30と、結像系20内又は結像系20から検出系30までの間に配置され、第1及び第2照射光IL1,IL2の波長に対応する透過特性を有する狭帯域フィルター40とを備え、結像系20は、狭帯域フィルター40に略垂直な平行光線状態で狭帯域フィルター40に入射した第1及び第2観察光OL1,OL2を、検出系30において第1及び第2観察像として結像させる。
【0052】
上記計測装置100では、第1観察像と第2観察像とを比較することで、大気中に浮遊する飛沫SPの分布状態を検出することができる。第1照射光IL1と第2照射光IL2とは、飛沫SPの主成分である水に対する吸収量に差があるものとなっている。また、上記計測装置100では、結像系20が狭帯域フィルター40に略垂直な平行光線状態で狭帯域フィルター40に入射した第1及び第2観察光OL1,OL2を検出系30において第1及び第2観察像として結像させるので、狭帯域フィルター40の特性を画角内で一様に保つことができ、飛沫SPの分布状態を比較的広い画角内で高精度に検出することができる。
【0053】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る計測装置について説明する。第2実施形態の計測装置は、第1実施形態の計測装置の変形例であり、共通する部分については同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0054】
図8に示すように、第2実施形態の計測装置100は、比較的狭い部屋RMのような近距離空間を計測対象とするものであり、図示の例では3~4mを距離計測範囲としている。このように近距離の場合、2次元の観察像でも危険度が分かりやすいものとなる。計測装置100は、照射光ILを対象に照射する照明装置101と、対象からの反射光RLである観察光OLを3次元的な観察像として撮影する撮像装置102と、同期制御及び信号処理を行う制御装置105とを備える。
【0055】
撮像装置102は、赤外線に対して透過性を有するドーム状のカバー102aの内部に第1撮像装置102Aと第2撮像装置102Bとを有する。
【0056】
図9を参照して、第1撮像装置102Aは、第1照射光IL1の反射によって形成される第1観察光OL1を第1観察像として結像させる結像系20と、結像系20によって結像された第1観察像を検出する検出系230と、半球状の外形を有し結像系20の光入射側に配置される狭帯域フィルター40とを備える。ここで、結像系20は、投影ユニット222のみからなり、
図3(A)に示す結像ユニット21に相当するものが存在しない。このため、狭帯域フィルター40には、
図8に示す対象領域ADに存在する飛沫SPに起因する第1観察光OL1がカバー102aを介して直接入射する。狭帯域フィルター40のフィルター層40fは、水の吸収波長でない波長の光線、具体的には例えば波長1310nmの第1観察光OL1を透過させ、その他の波長(例えば1450nm)の赤外光を効率的に遮断する。投影ユニット222は、超広角撮像レンズ222cであり、レンズL10~L20を含む。超広角撮像レンズ222cは、魚眼レンズとも呼ばれる。開口度絞りAS等により、狭帯域フィルター40に入射した光のうち、狭帯域フィルター40の物体面40gに垂直な方向から入射しコリメートされた状態に対応する部分である第1観察光OL1のみを検出系230の結像面30a上に結像させる役割を有する。つまり、超広角撮像レンズ222cは、その結像特性によって、
図3(A)に示す等方コリメータ22aの機能を果たす。検出系230は、高感度かつ高速の2次元センサー(具体的にはInGaAs系のアバランシェフォトダイオード2次元センサー)であり、画像変換装置50を省略して第1観察光OL1を直接的に撮像し、発光トリガーTG1(
図1参照)に対する直接的な遅延時間を与える。第1撮像装置102Aは、水の吸収波長帯で減衰の影響を受けず感度を有するので、対象領域ADに飛沫SPが存在する場合、第1観察光OL1を発生させた飛沫SPの位置に対して遅延時間から得た距離情報を付帯させた距離画像を、第1距離画像又は第1検出情報DI1として制御装置105に出力する。
【0057】
図8及び9を参照して、第2撮像装置102Bは、第1撮像装置102A等と同様の構造を有するが、水の吸収波長である1450nm、1930nm、2900nm等のいずれか、例えば波長1450nmの第2観察光OL2を計測し第2観察像を撮影し、第2距離画像又は第2検出情報DI2を制御装置105に出力する。制御装置105は、第1撮像装置102Aから得た3次元的な第1検出情報DI1と、第2撮像装置102Bから得た3次元的な第2検出情報DI2との差分情報を計算し、ノイズを低減し水分を含む浮遊物質群SSを選択的に抽出した飛沫SPの3次元情報を得る。
【0058】
図10は、
図8に示す第1撮像装置102Aと第2撮像装置102Bとを一体化した撮像装置202を有する変形例を説明する図である。この場合、狭帯域フィルター240は、水の吸収波長でない波長1310nmの光と、水の吸収波長である波長1450nmの光とを透過させる比較的広域のバンドパスフィルター又は2重のバンドパスフィルターである。詳細な説明を省略するが、
図8に示す照明装置101は、第1照射光IL1と第2照射光IL2とを交互に射出させる。一方、
図10に示す検出系230は、第1照射光IL1の照射タイミングで第1観察光OL1を撮像し、第2照射光IL2の照射タイミングで第2観察光OL2を撮像する。この場合、距離画像や2次元画像の計測に
図8に示す装置の2倍以上の時間を要するが、撮像装置202を簡単な構造とすることができる。
【0059】
図11は、
図8に示す第1撮像装置102Aと第2撮像装置102Bとを一体化した撮像装置302を有する別の変形例を説明する図である。この場合、狭帯域フィルター240は、水の吸収波長でない波長1310nmの光と、水の吸収波長である波長1450nmの光とを透過させる比較的広域のバンドパスフィルターである。
図8に示す照明装置101は、第1照射光IL1と第2照射光IL2とを同時に周期的に射出させる。
図11に示す検出系230は、第1センサー230Aと第2センサー230Bとを備え、超広角撮像レンズ222cと検出系230との間にダイクロイックミラー25を備える。ダイクロイックミラー25は、第1観察光OL1を透過させ第2観察光OL2を反射する。つまり、ダイクロイックミラー25は、例えば波長1450nm及びその近傍である対象波長の光を反射し、この対象波長よりも長波長又は短波長の光を透過させる。また、広角撮像レンズ222cの射出側のレンズL20とダイクロイックミラー25との間に、テレセン系24aが配置され、ダイクロイックミラー25と第1センサー230Aとの間、並びに、ダイクロイックミラー25と第2センサー230Bとの間には、テレセン系24bが配置されている。テレセン系24a,24bにより、照射光IL1,IL2をダイクロイックミラー25に一様な角度で入射させることができる。
図11に示す検出系230のうち、第1センサー230Aは、第1照射光IL1の反射に対応する第1観察光OL1を撮像し、第2センサー230Bは、第2照射光IL2の反射に対応する第2観察光OL2を撮像する。
【0060】
なお、ダイクロイックミラー25の光分岐が精密である場合、狭帯域フィルター240を省略することができる。
【0061】
図12は、第2実施形態に関する別の変形例を説明する図である。この場合、広角撮像レンズ222cの後段にテレセン系24aを配置し、結像面上に検出系230として単一のセンサー230Cを配置している。単一のセンサー230Cは、部分的に拡大して示すように、回路を含む基板31上に多数のフォトダイオードのその他のフォトセンサー32をマトリックス状に配列したものである。センサー230Cにおいて、フォトセンサー32上には、二種の狭帯域フィルター34a,34bを含むフィルター層34が形成され、フィルター層34上には、各狭帯域フィルター34a,34bに対応して設けられた多数のマイクロレンズを含むレンズアレイ層33が形成されている。第1狭帯域フィルター34aと、第2狭帯域フィルター34bとは、交互に配置されており、正面から見た場合、例えば市松模様状の配置となっている。第1狭帯域フィルター34aは、水の吸収波長でない波長の光線、具体的には例えば波長1310nmの第1観察光OL1を透過させる誘電体多層膜である。また、第2狭帯域フィルター34bは、水の吸収波長の光線、具体的には例えば1450nmの第2観察光OL2を透過させる誘電体多層膜である。このように第1観察光OL1に感度を有する画素検出領域と、第2観察光OL2に感度を有する画素検出領域とを組み合わせることにより、第1観察光OL1に対応する検出像と、第2観察光OL2に対応する検出像とを並列的に観察することができ、両検出像の差分から飛沫の分布を計測することができる。
【0062】
図13は、第1実施形態や第2実施形態に関する別の変形例を説明する図である。この場合、波長λ1の光と波長λ2の光とを分離するダイクロイックミラー102Dにより、第1撮像装置102Aの光軸AX1と第2検出情報DI2の光軸AX2とを精密に一致させることができる。
【0063】
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0064】
第1実施形態の計測装置100は、距離画像(つまり3次元計測情報)を得ているものであるが、画像変換装置50その他の遅延時間を決定する装置を省略し、制御装置105によって、第1撮像装置102A及び第2検出情報DI2から得た2次元的な第1検出情報DI1及び第2検出情報DI2の差分情報を計算することで、水分を含む浮遊物質群SSを選択的に抽出した飛沫SPの2次元情報を得ることができる。計測装置10が近距離空間を計測対象とする場合、2次元情報であっても感染危険度を正確に推定することができる。
【0065】
上記実施形態において、結像系20を構成する結像ユニット21や投影ユニット22のレンズ構成は単なる例示であり、様々な公知の光学系、光学素子に置き換えることができる。
【0066】
画像変換装置50は、画像検出部52や画像出力部53を有するが、これらは張り合わせるように接合されるものに限らず、分離して配置することができ、観察像I1と出力画像I2とは、互いにサイズが異なるものであってもよい。
【0067】
以上では、第1撮像装置102Aが水の吸収波長で撮影を行い、第2撮像装置102Bが水の非吸収波長で撮影を行うとしたが、第1撮像装置102Aが水以外の他の所定物質の吸収波長で撮影を行い、かつ、第2撮像装置102Bが上記所定物質の非吸収波長で撮影を行うものであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
11…光源装置、11A…第1光源装置、11B…第2光源装置、14…ダイクロイックミラー、20…結像系、21…結像ユニット、22…投影ユニット、22a…等方コリメータ、22c…広角撮像レンズ、25…ダイクロイックミラー、26a…フライアイレンズ、26b…基材、26e…要素レンズ、27e…レンズ要素、28e…屈折層、28s…球状面、30…検出系、30a…結像面、40…狭帯域フィルター、40f…フィルター層、50…画像変換装置、52…画像検出部、52a…検出面、53…画像出力部、53a…表示面、55…表示制御部、60…撮像装置、61…リレーレンズ、62…画像センサー、80…制御回路、100…計測装置、101,202……照明装置、102…撮像装置、102A…第1撮像装置、102B…第2撮像装置、105…制御装置、222…投影ユニット、222c…超広角撮像レンズ、230…検出系、230A,230B…センサー、240…狭帯域フィルター、302…撮像装置、1310nm…波長、I1…観察像、IL,IL1,IL2…照射光、IS…照射系、OL,OL1,OL2…観察光、SP…飛沫、SS…浮遊物質群