(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070577
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】開閉装置、搬送装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/06 20060101AFI20240516BHJP
B65H 5/38 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B65H5/06 P
B65H5/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181165
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】石原 広規
(72)【発明者】
【氏名】野沢 健二
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄大
【テーマコード(参考)】
3F049
3F101
【Fターム(参考)】
3F049AA04
3F049DA04
3F049DB03
3F049LA06
3F049LA07
3F049LB03
3F101FB11
3F101FE03
3F101FE06
3F101FE08
3F101LA06
3F101LA07
3F101LB03
(57)【要約】
【課題】本発明では、開閉部の開閉動作を容易にすることを課題とする。
【解決手段】開閉する上側搬送モジュール41と、上側搬送モジュール41を開き方向へ付勢する吊り上げ機構40と、上側搬送モジュール41を閉じた状態に保持する保持部と、を有する搬送装置400であって、吊り上げ機構40は、ストロークにより付勢力の変化しない第1バネ51と、ストロークにより付勢力の変化する第2バネ52とを有することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉する開閉部と、
前記開閉部を開き方向へ付勢する付勢機構と、
前記開閉部を閉じた状態に保持する保持部と、を有する開閉装置であって、
前記付勢機構は、ストロークにより付勢力の変化しない第1バネと、ストロークにより付勢力の変化する第2バネとを有することを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
前記第1バネが巻き取り式のバネである請求項1記載の開閉装置。
【請求項3】
前記付勢機構は、前記第1バネと前記開閉部との間に、前記第1バネのストロークの変化に伴ってスライドするスライダと、前記開閉部を吊り上げる線状部材とをさらに有し、
前記スライダの前記線状部材が接続される接続面を延長した延長面に対して、前記第1バネの回転中心と前記第1バネの巻取り部分とが同じ側に設けられる請求項2記載の開閉装置。
【請求項4】
前記付勢機構は、前記第1バネと前記開閉部との間に、前記第1バネのストロークの変化に伴ってスライドするスライダと、前記開閉部を吊り上げる線状部材と、前記線状部材に当接してその延在方向を変更する当接部材とをさらに有し、
前記第1バネの回転軸の軸線方向に垂直な平面上において、前記線状部材の前記スライダと前記当接部材との間の部分を延長した延長線に対して、前記第1バネの回転中心と前記第1バネの巻取り部分とが同じ側に設けられる請求項2記載の開閉装置。
【請求項5】
前記付勢機構は、線状部材により前記開閉部を吊り上げる請求項1記載の開閉装置。
【請求項6】
前記線状部に当接し、前記線状部の延在方向を変更する当接部材を有する請求項5記載の開閉装置。
【請求項7】
前記付勢機構は、前記第1バネと前記開閉部との間に、前記第1バネのストロークの変化に伴ってスライドするスライダを有し、
前記スライダを前記第1バネあるいは前記第2バネのストローク方向にガイドするガイド部を有する請求項1記載の開閉装置。
【請求項8】
前記スライダは、軸受を介して前記ガイド部にガイドされる請求項7記載の開閉装置。
【請求項9】
前記開閉部はシートを搬送する搬送部である請求項1から8いずれか1項に記載の開閉装置を備えた搬送装置。
【請求項10】
請求項9記載の搬送装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉装置、搬送装置、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートを搬送する開閉装置としての搬送装置の一例に、画像形成装置に設けられた乾燥装置の下流側に配置され、冷却部材を有する搬送装置が存在する。
【0003】
この搬送装置は、摺動回転可能な一対の搬送ベルト同士のニップ部においてシートを挟持して回転することにより、シートを下流側へ搬送できる。また、一方の搬送ベルトが、他方の搬送ベルトに対して回転して他方の搬送ベルトから離間することで、搬送装置内を開放することができる開閉部として機能する。搬送ベルトを開くことにより、ジャム処理や内部の部材の交換が可能になる。
【0004】
例えば特許文献1(特開2022-43989号公報)の搬送装置には、上側の搬送ベルトを開き方向に付勢する引っ張りスプリングが設けられる。また、上側の搬送ベルトを下側の搬送ベルトに対して閉じた位置でロックするロック爪が設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
開閉装置に設けられる開閉部の重量が大きい場合には、開閉動作のために作業者が必要とする操作力が大きくなる。この点、特許文献1の構成では、引っ張りスプリングの縮み方向の付勢力により上側の搬送ベルトが開き方向に付勢されているため、開く方向の操作力を小さくできる。しかし、搬送ベルトを閉じる方向へ回転させるほど引っ張りスプリングのストロークが大きくなって開き方向への付勢力が大きくなり、搬送ベルトを閉じる際に大きな操作力を要するという問題がある。
【0006】
本発明では、開閉部の開閉動作を容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、開閉する開閉部と、前記開閉部を開き方向へ付勢する付勢機構と、前記開閉部を閉じた状態に保持する保持部と、を有する開閉装置であって、前記付勢機構は、ストロークにより付勢力の変化しない第1バネと、ストロークにより付勢力の変化する第2バネとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、開閉部の開閉動作を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明の一実施形態に係る搬送装置の斜視図である。
【
図3】
図2の搬送装置の上側搬送モジュールが閉じた状態の側面図である。
【
図4】
図2の上側搬送モジュールの係止状態を解除した状態の側面図である。
【
図5】
図2の搬送装置の上側搬送モジュールが開いた状態の側面図である。
【
図7】吊り上げ機構に設けられたガイド部を示す側面図である。
【
図8】スライダに設けられた軸受を示す斜視図である。
【
図9】他の実施形態のガイド部を示す側面図である。
【
図10】他の実施形態の吊り上げ機構を示す側面図である。
【
図11】他の実施形態の開閉装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
図1は、本実施形態におけるインクジェット式の画像形成装置の概略構成を示す模式図である。本実施形態の画像形成装置1は、主に、給紙部100、画像形成部200、乾燥部300、および、排紙部500を有する。乾燥部300には、開閉装置としての搬送装置400が設けられる。本発明の開閉装置の一例である搬送装置400は、シートを搬送する。このシートの一例として、画像を記録する記録媒体が存在する。本実施形態の搬送装置400は、この記録媒体の一例として用紙Pを搬送する。
【0012】
画像形成装置1は、給紙部100から給紙される用紙Pに対し、画像形成部200で画像形成用の液体であるインクにより画像を形成する。そして、画像形成装置1は、用紙上に付着したインクを乾燥部300において乾燥させた後、用紙を排紙部500に排紙する。
【0013】
給紙部100は、主に、給紙トレイ110と、給紙装置120と、レジストローラ対130とを有する。給紙トレイ110に複数の用紙Pが積載される。給紙装置120は給紙トレイ110から用紙を1枚ずつ分離して送り出す。レジストローラ対130は用紙を画像形成部200へ送り込む。給紙装置120は、ローラやコロを用いた装置や、エア吸引を利用した装置など、何れの方式の給紙装置でもよい。給紙装置120により給紙トレイ110から送り出された用紙は、その先端がレジストローラ対130に到達した後、レジストローラ対130が所定のタイミングで駆動することにより、画像形成部200へ給紙される。給紙部100は、画像形成部200へ用紙Pを送り出すものであれば、その構成に制限はない。
【0014】
画像形成部200は、受け取り胴201と、用紙担持ドラム210とを有する。受け取り胴201は給紙された用紙Pを受け取る。用紙担持ドラム210は受け取り胴201によって搬送された用紙Pを外周面に担持して搬送する。また、画像形成部200は、インク吐出部220と、受け渡し胴202とを有する。インク吐出部220は用紙担持ドラム210に担持された用紙Pに向けてインクを吐出する。受け渡し胴202は用紙担持ドラム210によって搬送された用紙Pを乾燥部300へ受け渡す。給紙部100から画像形成部200へ搬送されてきた用紙Pは、受け取り胴201の表面に設けられた用紙グリッパによって先端が把持され、受け取り胴201の表面移動に伴って搬送される。受け取り胴201により搬送された用紙は、用紙担持ドラム210との対向位置で用紙担持ドラム210へ受け渡される。
【0015】
用紙担持ドラム210は表面に用紙グリッパを有する。用紙の先端は用紙グリッパによって把持される。また、用紙担持ドラム210は表面に分散して形成された複数の吸引孔を有する。各吸引孔には吸引装置211によって用紙担持ドラム210の内側へ向かう吸い込み気流が発生する。受け取り胴201から用紙担持ドラム210へ受け渡された用紙Pは、用紙グリッパによって先端が把持されるとともに、吸い込み気流によって用紙担持ドラム210の表面に吸着して、用紙担持ドラム210の表面移動に伴って搬送される。
【0016】
インク吐出部220は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のインクを吐出して画像を形成するものであり、インクごとに個別の液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kを備えている。液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kは、液体を吐出するものであれば、その構成に制限はなく、あらゆる構成のものを採用することができる。必要に応じて、白色、金色、銀色などの特殊なインクを吐出する液体吐出ヘッドを設けたり、表面コート液などの画像を構成しない液体を吐出する液体吐出ヘッドを設けたりしてもよい。
【0017】
インク吐出部220の液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kは、画像情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。用紙担持ドラム210に担持された用紙Pがインク吐出部220との対向領域を通過する際に、液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kから各色インクが吐出され、当該画像情報に応じた画像が形成される。画像形成部200は、用紙P上に液体を付着させて画像を形成するであれば、その構成に制限はない。
【0018】
乾燥部300は、乾燥機構301と、搬送機構302とを有する。乾燥機構301は画像形成部200により用紙P上に付着させたインクを乾燥させる。搬送機構302は画像形成部200から搬送されてくる用紙Pを搬送する。画像形成部200から搬送されてきた用紙Pは、搬送機構302に受け取られた後、乾燥機構301を通過するように搬送され、搬送装置400へ受け渡される。用紙Pは、乾燥機構301を通過する際、用紙P上のインクに乾燥処理が施される。これによりインク中の水分等の液分が蒸発し、用紙P上にインクが固着するとともに、用紙Pのカールが抑制される。
【0019】
搬送装置400は、用紙を搬送する上側搬送モジュール41および下側搬送モジュール42を有する。本実施形態の搬送装置400は、乾燥機構301を通過した用紙Pを冷却する冷却装置である。搬送装置400は、搬送する用紙Pを冷却して下流側の排紙部500へ受け渡す。
【0020】
上側搬送モジュール41および下側搬送モジュール42内には冷却部13が設けられる。冷却部13は複数の冷却部材14を有する。冷却部材14は搬送ベルト11,12の内面にそれぞれ当接する。冷却部材14は流路管、およびチューブを介して冷却装置に接続される。冷却装置から流路管を介して冷却部材14へ、冷媒としての冷却液が流れることで、搬送ベルト11,12によって搬送される用紙が冷却される。
【0021】
排紙部500は、複数の用紙Pが積載される排紙トレイ510を有する。乾燥部300から搬送されてくる用紙Pは、排紙トレイ510上に順次積み重ねられて保持される。排紙部500は、用紙Pを排紙するものであれば、その構成に制限はない。
【0022】
本実施形態の画像形成装置は、本発明の開閉装置の一例として、シートとしての用紙を搬送する前述の搬送装置400を備える。以下、
図2~
図5を用いて搬送装置400をより詳細に説明する。
【0023】
図2に示すように、搬送装置400は、開閉部としての上側搬送モジュール41、下側搬送モジュール42、付勢機構としての吊り上げ機構40を有する。本発明の開閉部は、用紙を搬送する搬送部である。ただし、本発明の開閉装置は搬送装置である場合に限らず、開閉部を有する適宜の開閉装置に適用できる。
【0024】
上側搬送ベルト11は複数のローラ16~20により張架されている。また下側搬送ベルト12は、複数のローラ21~26により張架されている。上側搬送ベルト11および下側搬送ベルト12が周回走行することにより、両者のニップ部で用紙Pを矢印A方向へ挟持搬送する。
【0025】
上側搬送ベルト11を張架する複数のローラ16~20は、その軸方向の一端が上側前面板27により支持される。また
図3に示すように、複数のローラ16~20の軸方向他端は上側後面板28により支持される。下側搬送ベルト12を張架する各ローラは、その軸方向一端が下側前面板29により支持され、その軸方向他端が下側後面板30により支持される。上側搬送ベルト11、複数のローラ16~20、上側前面板27、上側後面板28そして、上側搬送ベルト11内に設けられる前述の冷却部材などにより、上側搬送モジュール41が構成される。また、下側搬送ベルト12、複数のローラ21~26、下側前面板29、下側後面板30そして、下側搬送ベルト12内に設けられる前述の冷却部材などにより、下側搬送モジュール42が構成される。
【0026】
図2に示すように、上側前面板27には、取手31、および、一対の係止部32が設けられる。取手31は上側前面板27の幅方向中央部に設けられる。吊り上げ機構40は、上側前面板27に接続されたワイヤ55により、上側搬送モジュール41を重力方向と反対方向である上方向へ付勢している。
【0027】
図3に示すように、係止部32は、回転軸32aを中心に回転可能に設けられる。回転軸32aは
図3の紙面に垂直な方向を軸線方向とする。係止部32は係止孔32bを有する。また下側前面板29には係止突起29aが設けられる。上側前面板27に設けられた係止部32は、吊り上げ機構40により
図3の上方向へ付勢されている。従って、係止突起29aが係止孔32b内に配置された状態では、係止部32が上方向へ付勢されることにより、係止部32が係止突起29aに当接し、係止部32が係止突起29aに係止される。これにより、上側搬送モジュール41が下側搬送モジュール42に対して係止され、上側搬送モジュール41が閉じた位置である
図3の位置が保持される。このように係止部32および係止突起29aは、開閉部を閉じた状態で保持する保持部を構成する。
【0028】
下側後面板30には回転中心33が設けられる。上側後面板28が回転中心33に接続されており、上側搬送モジュール41は回転中心33を中心にして回転する。
【0029】
上側搬送モジュール41を開く際には、まず、取手31を把持して上に開くことで、
図4のように係止部32が回転軸32aを中心に回転する。これにより、係止突起29aが係止孔32bから離脱し、上側搬送モジュール41が下側搬送モジュール42に係止された状態が解除される。このように、係止部32および係止突起29aは、取手31を操作してそのロック状態を解除しないと上側搬送モジュール41を開くことができないようにするラッチ機構である。
【0030】
これにより、
図5に示すように、上側搬送モジュール41は、吊り上げ機構40の付勢力Tによって回転中心33を中心に開き方向へ回転する。なお、吊り上げ機構40の付勢力Tは上側搬送モジュール41の自重Wよりも大きいため、上側搬送モジュール41の下側搬送モジュール42に対する係止状態が解除されると、吊り上げ機構40は自動的に開く方向へ回転する。これにより、上側搬送ベルト11および下側搬送ベルト12の用紙搬送面が外部に対して開放され、ジャム処理が可能になる。また、搬送装置400内の部材を交換可能な状態になる。
【0031】
次に、吊り上げ機構40の構成について、
図6を用いてより詳細に説明する。
【0032】
吊り上げ機構40は、第1バネ51と、第2バネ52と、副板53と、スライダ54と、線状部材としてのワイヤ55などを有する。第1バネ51は、ストロークにより付勢力(荷重)が変化しない定荷重バネであり、本実施形態ではコンストンバネが用いられている。また第2バネ52はストロークにより荷重の変化するバネであり、コイルスプリングが用いられている。本実施形態では、第1バネ51の両側に第2バネ52が設けられる。第1バネ51の一端には副板53が取り付けられている。副板53は板状のスライダ54に接続されている。第2バネ52は、その一端がスライダ54に取り付けられ、他端が搬送装置400の筐体34に固定されている。ワイヤ55は、一端が上側前面板27に接続され、他端がスライダ54に接続される。
【0033】
第1バネ51は、その両側を筐体34に支持されている。第1バネ51は回転中心51aを中心に筐体34に対して回転可能に設けられ、この回転により、バネ部分を巻き取る、あるいは引き出すことができる。このように、本実施形態の第1バネ51は巻き取り式のバネであり、その一例としてコンストンバネを採用している。
【0034】
本実施形態では、
図5に示す上側搬送モジュール41の重量Wに対して、吊り上げ機構40が重量Wを上回る付勢力Tを加えて上側搬送モジュール41を開き方向へ付勢している。この付勢力Tは、定荷重バネである第1バネ51およびストロークにより荷重の変化する第2バネ52の両方の付勢力の合計である。
【0035】
上側搬送モジュール41が開く方向へ移動するほど、各第2バネ52のストロークが小さくなって第2バネ52による開き方向の付勢力は小さくなる。従って、上側搬送モジュール41が開くほどその開く速度は小さくなり、やがて付勢力Tが重量Wと釣り合って上側搬送モジュール41の開き方向の移動が停止する。
【0036】
また上側搬送モジュール41を閉じる際には、作業者が付勢力Tに抗して上側搬送モジュール41を
図4の位置まで回転させた後、係止部32を係止突起29aに係止させる。これにより、上側搬送モジュール41を再び閉じることができる。なお、第1バネ51は、
図3の上側搬送モジュール41が開いた位置および
図5の上側搬送モジュール41が閉じた位置の双方で、バネ部分の一部が引き出された状態になっており、第1バネ51が上側搬送モジュール41に対して常に付勢力を加えることができる。
【0037】
以上のように本実施形態では、付勢力Tを上側搬送モジュール41の重量Wよりも大きい構成とすることで、係止部32と係止突起29aとの係止状態を解除する動作だけで、上側搬送モジュール41を自動で開く方向へ移動させることができる。従って、上側搬送モジュール41を開くまでの一連の動作を簡単に行うことができる。特に本実施形態では、上側搬送モジュール41内に前述の冷却部材が設けられていることや、搬送装置400が設けられる画像形成装置が大型の印刷機であることから、上側搬送モジュール41の重量が大きい。このように重量の大きい上側搬送モジュール41を簡単に開くことができる。また、外力を加えることなく上側搬送モジュール41が開いた状態を維持できるため、ジャム処理などの作業が容易になる。
【0038】
さらに、ストロークにより荷重の変化する第2バネ52により上側搬送モジュール41に対して付勢力を加える構成とすることで、上側搬送モジュール41の開き方向の速度が減衰して停止する構成とすることができる。これにより、上側搬送モジュール41が開く速度を抑えることができるとともに、規制部材などを用いずに上側搬送モジュール41を開き方向の所定の位置で停止させることができる。
【0039】
また、定荷重バネである第1バネ51を設けることにより、上側搬送モジュール41を閉じる際の操作力を小さくできる。つまり、第2バネ52はストロークと付勢力が比例関係にある。このため、仮に第2バネ52のみにより、上側搬送モジュール41を
図5の開く位置まで移動させようとした場合、大きな付勢力が必要になって第2バネ52のバネ定数が大きくなる。しかしこの場合、上側搬送モジュール41が
図3の位置から
図5の位置まで開くだけのストローク量を第2バネ52に持たせようとすると、バネ定数が大きいことから
図3の開いた位置における付勢力Tが重量Wに対して過大になってしまう。つまり、上側搬送モジュール41を開く位置まで操作する操作力が大きくなってしまう。本実施形態では、定荷重バネである第1バネ51と第2バネ52とを併用することにより、第2バネ52のバネ定数を小さくできる。これにより、第2バネ52のストロークを長くしてもその付勢力を小さく抑えることができ、上側搬送モジュール41を閉じる際の操作力を小さくできる。
【0040】
以上のように本実施形態では、定荷重バネである第1バネ51、および、ストロークにより荷重の変化する第2バネ52により上側搬送モジュール41を開き方向へ付勢することで、上側搬送モジュール41の開閉動作を容易にできる。
【0041】
また本実施形態では、
図3に示すように、係止部32の係止孔32bの下側壁面部が係止突起29aに当接する位置で上側搬送モジュール41の下側搬送モジュール42に対する位置決めがされる。これにより、上側搬送ベルト11と下側搬送ベルト12とを適切な位置関係で配置でき、上側搬送ベルト11と下側搬送ベルト12とが適切な位置関係で搬送ニップを形成できる。
【0042】
また
図3に示すように、ワイヤ55はその途中で、当接部材としての滑車56に当接している。ワイヤ55が滑車56に当接することにより、その前後でワイヤ55の延在方向を変化させている。滑車56により、吊り上げ機構40がワイヤ55に対して付勢力を加える方向を変化させることができるため、吊り上げ機構40の配置など、吊り上げ機構40の設計の自由度が向上する。これにより、吊り上げ機構40を作業者が触れない位置に配置することができ、第1バネ51などに作業者が触れることを防止できる。また、本実施形態のような搬送装置400は、用紙が通過する領域には部材を配置できないため、ワイヤ55により上方向から吊り上げる構成が好適である。
【0043】
当接部材を回転する滑車56とすることにより、ワイヤ55と滑車56との間に生じる摩擦力を低減し、上側搬送モジュール41の開閉動作を円滑にさせることができる。ただし、当接部材として、回転しないローラなどを用いることもできる。
【0044】
また本実施形態では、スライダ54を第1バネ51あるいは第2バネ52のストローク方向へガイドし、第1バネ51のねじれを防止するガイド部が設けられる。具体的には、
図7に示すように、スライダ54は、その上面および下面が、転がり軸受57を介して、ガイド部59に当接する。これにより、第1バネ51および第2バネ52のストローク量が変化する際に、スライダ54をガイド部59の面に沿った方向にガイドし、第1バネ51のねじれを規制できる。特に、スライダ54を転がり軸受57に当接させることで、スライダ54とガイド部との摺動抵抗を低減し、上側搬送モジュール41の開閉動作の操作力を低減できる。スライダ54における第1バネ51あるいは第2バネ52のストローク方向とは、
図7の左右方向のことである。
【0045】
図8に示すように、スライダ54の前後方向の2箇所でそれぞれ左右の、計4箇所に転がり軸受57を当接させている。このような構成により、スライダ54の移動方向を安定させることができる。
【0046】
また、スライダ54をガイドするガイド部は、上記の軸受を有する構成に限らない。例えば
図9に示すように、スライダ54の上下に、スライダ54に摺動してスライダ54の移動方向を規制するガイド部59を設けてもよい。本実施形態では、ガイド部59は板金により構成される。ただし、前述のようにガイド部として軸受を設ける構成の方が、スライダ54とガイド部との摺動抵抗を低減できるため好ましい。ガイド部は搬送装置の筐体により構成することもできる。また軸受けとして転がり軸受57以外の軸受けを採用することもできる。
【0047】
図7に示すように、スライダ54のワイヤ55の接続面54aを延長した延長面Bに対して、第1バネ51の回転中心51aが、第1バネ51のバネの巻取り部分51bと同じ側に設けられる。これにより、第1バネ51が巻き取られてストロークが短くなる際に、第1バネ51の巻取り部分51bが
図7の上方向へ膨らむことを抑制できる。これにより、巻取り部分51bを円滑に巻き取ることができ、第1バネ51の占有領域を小さくできる。この巻取り部分51bは、第1バネ51のバネ部分のうち、バネ部分を巻き取るドラム51cと副板53およびスライダ54との間に配置される部分である。また別の言い方をすると、第1バネ51の回転中心51aの仮想軸線方向(
図7の紙面に垂直な方向)に垂直な面上である
図7の紙面上において、ワイヤ55のスライダ54と滑車56との間の部分55aを延長した延長線Bに対して、第1バネ51の回転中心51aを、第1バネ51のバネの巻取り部分51bと同じ側に設ける。これにより、巻取り部分51bが
図7の上方向へ膨らむことを抑制できる。
【0048】
また以上の実施形態では定荷重バネである第1バネとしてコンストンバネを用いたが、本発明はこれに限らない。例えば
図10に示す実施形態の吊り上げ機構40は、第1バネ58としてガススプリングを用いている。第1バネ58は、前述の実施形態と同様、第1バネ58の縮み方向の付勢力を、ワイヤ55を介して開閉部に加えている。本実施形態の構成においても、第1バネとしてコンストンバネを用いた場合と同様、開閉部の開閉動作を容易にできる。第1バネとしてガススプリングを用いることにより、開閉装置の構成によってはそのコストを抑えることができる。また第1バネとしてコンストンバネを用いることにより、そのストロークを長くすることができる。
【0049】
以上の実施形態では、開閉装置として、開閉部である上側搬送モジュール41が回転中心33を中心に回転して開閉する場合を示したが、本発明はこれに限らない。例えば
図11に示す開閉装置600は、上下方向にスライドする開閉部601と、固定部602と、開閉部601を
図11の実線の位置である閉じた位置で保持する保持部と、付勢機構としての吊り上げ機構40とを有する。吊り上げ機構40は、開閉部601の重量Wよりも大きな付勢力Tで開閉部601を付勢している。この付勢力Tにより、開閉部601を
図11の点線で示す位置まで開くことができる。また作業者が開閉部601の
図11の実線位置まで操作して保持部に保持させることにより、開閉部601を閉じることができる。本実施形態においても、前述の実施形態と同様、開閉部601を開閉する動作を容易に行うことができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0051】
以上の実施形態の画像形成装置1は、給紙部100、画像形成部200、乾燥部300、排紙部500から構成されているが、他の機能部を適宜追加してもよい。例えば、給紙部100と画像形成部200との間に画像形成の前処理を行う前処理部を追加したり、乾燥部300と排紙部500との間に画像形成の後処理を行う後処理部を追加したりすることができる。
【0052】
前処理部としては、例えば、インクと反応して滲みを抑制するための処理液を用紙Pに塗布する処理液塗布処理を行うものなどが挙げられる。前処理の内容については特に制限はない。また、後処理部としては、画像形成部200で画像が形成された用紙を反転させて再び画像形成部200へ送って用紙の両面に画像を形成するための用紙反転搬送処理や、画像が形成された複数枚の用紙を綴じる処理が挙げられる。後処理部としては、用紙変形を矯正させる矯正機構や用紙を冷却させる冷却機構なども挙げられる。後処理の内容についても特に制限はない。
【0053】
本実施形態では、インクジェット式の画像形成装置を例にして説明している。「画像形成装置」は、記録媒体の被乾燥面に向けて液体を吐出する液体吐出ヘッドを備え、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されなるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するものも含まれる。記録媒体は、材質を限定されるものではなく、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど、液体が一時的でも付着可能なものであればよい。例えば、フィルム製品、衣料用等の布製品、壁紙や床材等の建材、皮革製品などに使用されるものであってもよい。また、「画像形成装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0054】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液等の用途で用いることができる。
【0055】
また、「画像形成装置」は、液体吐出ヘッドと記録媒体とが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0056】
また、「液体吐出ヘッド」とは、吐出孔(ノズル)から液体を吐出・噴射する機能部品である。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどの吐出エネルギー発生手段を使用できる。使用する吐出エネルギー発生手段が限定されるものではない。
【0057】
さらに、電子写真方式の画像形成装置に設けられる搬送装置などの構成に、本発明の開閉装置を適用してもよい。
【0058】
本発明の態様は、例えば以下のとおりである。
<1>
開閉する開閉部と、
前記開閉部を開き方向へ付勢する付勢機構と、
前記開閉部を閉じた状態に保持する保持部と、を有する開閉装置であって、
前記付勢機構は、ストロークにより付勢力の変化しない第1バネと、ストロークにより付勢力の変化する第2バネとを有することを特徴とする開閉装置である。
<2>
前記第1バネが巻き取り式のバネである<1>記載の開閉装置である。
<3>
前記付勢機構は、前記第1バネと前記開閉部との間に、前記第1バネのストロークの変化に伴ってスライドするスライダと、前記開閉部を吊り上げる線状部材とをさらに有し、
前記スライダの前記線状部材が接続される接続面を延長した延長面に対して、前記第1バネの回転中心と前記第1バネの巻取り部分とが同じ側に設けられる<2>記載の開閉装置である。
<4>
前記付勢機構は、前記第1バネと前記開閉部との間に、前記第1バネのストロークの変化に伴ってスライドするスライダと、前記開閉部を吊り上げる線状部材と、前記線状部材に当接してその延在方向を変更する当接部材とをさらに有し、
前記第1バネの回転軸の軸線方向に垂直な平面上において、前記線状部材の前記スライダと前記当接部材との間の部分を延長した延長線に対して、前記第1バネの回転中心と前記第1バネの巻取り部分とが同じ側に設けられる<2>記載の開閉装置である。
<5>
前記付勢機構は、線状部材により前記開閉部を吊り上げる<1>または<2>記載の開閉装置である。
<6>
前記線状部に当接し、前記線状部の延在方向を変更する当接部材を有する<5>記載の開閉装置である。
<7>
前記付勢機構は、前記第1バネと前記開閉部との間に、前記第1バネのストロークの変化に伴ってスライドするスライダを有し、
前記スライダを前記第1バネあるいは前記第2バネのストローク方向にガイドするガイド部を有する<1>から<6>いずれか記載の開閉装置である。
<8>
前記スライダは、軸受を介して前記ガイド部にガイドされる<7>記載の開閉装置である。
<9>
前記開閉部はシートを搬送する搬送部である<1>から<8>いずれか記載の開閉装置を備えた搬送装置である。
<10>
<9>記載の搬送装置を備えた画像形成装置である。
【符号の説明】
【0059】
1 画像形成装置
11 上側搬送ベルト
12 下側搬送ベルト
32 係止部
40 吊り上げ機構(付勢機構)
41 上側搬送モジュール(開閉部)
42 下側搬送モジュール
51 第1バネ
51a 第1バネの回転中心
51b 巻取り部分
52 第2バネ
54 スライダ
55 ワイヤ(線状部材)
56 滑車(当接部材)
59 ガイド部
400 搬送装置(開閉装置)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】