IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特開-液体吐出装置 図1
  • 特開-液体吐出装置 図2
  • 特開-液体吐出装置 図3
  • 特開-液体吐出装置 図4
  • 特開-液体吐出装置 図5
  • 特開-液体吐出装置 図6
  • 特開-液体吐出装置 図7
  • 特開-液体吐出装置 図8
  • 特開-液体吐出装置 図9
  • 特開-液体吐出装置 図10
  • 特開-液体吐出装置 図11
  • 特開-液体吐出装置 図12
  • 特開-液体吐出装置 図13
  • 特開-液体吐出装置 図14
  • 特開-液体吐出装置 図15
  • 特開-液体吐出装置 図16
  • 特開-液体吐出装置 図17
  • 特開-液体吐出装置 図18
  • 特開-液体吐出装置 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070591
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240516BHJP
   B05C 9/12 20060101ALI20240516BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 303
B41J2/01 401
B05C9/12
B05C5/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181184
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】クーエルシン
【テーマコード(参考)】
2C056
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA05
2C056EA06
2C056EC14
2C056EC33
2C056EC36
2C056FA10
2C056HA37
2C056HA38
2C056HA40
2C056HA42
2C056HA44
4F041AA02
4F041AA05
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA38
4F042AA02
4F042AA06
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA10
4F042BA22
4F042DB41
4F042DF01
4F042DF22
(57)【要約】
【課題】仕上がり精度を向上させる。
【解決手段】記録媒体に対して液体を吐出する液体吐出装置が、前記記録媒体の面に対して前記液体を吐出する吐出部と、前記記録媒体に吐出した後の前記液体に対して紫外線を照射する照射部と、前記吐出部と前記照射部が並ぶ方向である第1方向に、前記照射部を移動させる第1移動部と、前記面に対して垂直となる方向である第2方向に、前記照射部を移動させる第2移動部とを備える。なお、液体吐出装置は、回転部、及び、画像形成部を更に備えてもよい。
【選択図】図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して液体を吐出する液体吐出装置であって、
前記記録媒体の面に対して前記液体を吐出する吐出部と、
前記記録媒体に吐出した後の前記液体に対して紫外線を照射する照射部と、
前記吐出部と前記照射部が並ぶ方向である第1方向に、前記照射部を移動させる第1移動部と、
前記面に対して垂直となる方向である第2方向に、前記照射部を移動させる第2移動部と
を備える液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1方向を軸にして、前記照射部を回転させる回転部を更に備える
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記照射部は、
前記第1移動部、前記第2移動部、及び、前記回転部によって、少なくとも3自由度が移動、又は、回転できる
請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第1移動部は、
前記第1方向に前記照射部を、始点から60ミリメートル以内の範囲を移動させる
請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第2移動部は、
前記第2方向に前記照射部を、始点から±3ミリメートル以内の範囲を移動させる
請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記回転部は、
前記照射部を基準から10度以下の範囲で回転させる
請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記吐出部は、
前記第1方向、及び、前記第1方向に直交する方向である第3方向に移動し、
前記第1移動部は、
前記第1方向における前記照射部の移動量である第1移動量が入力されると、リニアガイドによって前記照射部を前記第1方向に平行移動させて前記照射部が照射する照射範囲を変更し、
前記第2移動部は、
前記第2方向における前記照射部の移動量である第2移動量が入力されると、昇降機構によって前記照射部を前記第2方向に平行移動させて前記照射範囲を変更し、
前記回転部は、
前記軸を中心とする角度が入力されると、前記照射部と一体となって前記軸を中心に回転する回転板、及び、前記回転板の端部を前記第1方向に平行移動させる移動板を備え、前記移動板が前記第1方向に平行移動すると、前記回転板が前記軸を中心に回転して前記照射範囲を変更する
請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記記録媒体に対して画像を形成する画像形成部を更に備える
請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出するヘッドから紫外線を照射すると硬化するインクを吐出する液体吐出装置が知られている。当該液体吐出装置において、吐出後のインクに紫外線を照射する紫外線照射装置を、ヘッドの両端に備える構成が知られている。
【0003】
インクは、媒体に着弾してから紫外線を照射するまでの時間が往路と復路の場合で異なる場合がある。そこで、インクに紫外線を照射させる照射部を、主走査方向において印刷ヘッド側に傾斜できるようにして照射位置を変更する構成とする。このようにして、インクが着弾してから紫外線が照射されるまでの照射時間を往路と復路とで同程度とし、光沢ムラを抑制する技術が知られている(例えば、特許文献1等である)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、照射部を動かす自由度(DOF、degree of freedom)が適切でなく、インクを硬化させる時間を調整するのが難しい。特に、従来の技術は、傾斜用の自由度でなく、移動させる自由度がないので、インクを硬化させる時間を調整するのが難しい。その結果、仕上がり精度が悪いという課題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、仕上がり精度の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、液体吐出装置は、
記録媒体に対して液体を吐出する液体吐出装置であって、
前記記録媒体の面に対して前記液体を吐出する吐出部と、
前記記録媒体に吐出した後の前記液体に対して紫外線を照射する照射部と、
前記吐出部と前記照射部が並ぶ方向である第1方向に、前記照射部を移動させる第1移動部と、
前記面に対して垂直となる方向である第2方向に、前記照射部を移動させる第2移動部と
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、仕上がり精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】記録装置の全体構成を示す正面図である。
図2】記録装置の全体構成を示す背面図である。
図3】記録装置の全体構成を示す上面図である。
図4】ヘッドユニットにおけるヘッドの配列例を示す図である。
図5】ヘッドの構成例を示す上面図である。
図6】ヘッドの構成例を示す正面図である。
図7】機構例を示す正面図である。
図8】機構例を示す上面図である。
図9】Y方向の移動例(始点)を示す図である。
図10】Y方向の移動例(移動後)を示す図である。
図11】Y軸を軸にした回転をする前の状態を示す図である。
図12】Y軸を軸にした回転を5度回転させた状態を示す図である。
図13】Y軸を軸にした回転を10度回転させた状態を示す図である。
図14】段付きねじを外した状態の例を示す図である。
図15】段付きねじによる固定をした状態の例を示す図である。
図16】Y軸方向の移動による調整例を示す図である。
図17】Z軸方向の移動による調整例を示す図である。
図18】Y軸を軸にした回転による調整例を示す図である。
図19】機能構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付する図面を参照し、具体例を説明する。なお、実施形態は、以下に説明する具体例に限られない。
【0010】
[液体吐出装置の構成例]
以下、図1乃至図3に示すインクジェット式の記録装置(以下「記録装置10」という。)を液体吐出装置の例として説明する。また、液体は、紫外線が当たると硬化する、いわゆるUltra Violet(UV)インク(以下単に「インク」という。)を例に説明する。ゆえに、以下の例におけるヘッドは、クリアインクヘッド(Clear ink(Cl)ヘッド、以下単に「ヘッド」という。)である。さらに、記録場体を用紙とする例で説明する。
【0011】
図1は、記録装置の全体構成を示す正面図である。
【0012】
図2は、記録装置の全体構成を示す背面図である。
【0013】
図3は、記録装置の全体構成を示す上面図である。
【0014】
以下、水平方向を「X方向」とし、「第1方向」の例とする。また、以下の例ではX方向は、主走査方向でもある。
【0015】
X方向に対し、直交する方向を「Y方向」とし、「第2方向」の例とする。また、以下の例ではY方向は、副走査方向でもある。
【0016】
したがって、X-Y平面は、ステージ13上に設置する用紙の面と一致する。「第3方向」の例とする。
【0017】
X‐Y平面、すなわち、用紙の面に対し、垂直となる方向を「Z方向」とする。また、Z方向は高さ方向ともいう。
【0018】
以下、第1方向をX方向とし、第1方向は、ヘッド、及び、紫外線を照射する照射機(以下単に「照射機33」という。)が並ぶ方向と一致する方向である。このように、第1方向は、ヘッド、及び、照射機33の位置関係で定まる。
【0019】
図1に示す視点において、X方向は、「左右」の方向となる。また、Y方向は、「前後」の方向となる。そして、Z方向は、「上下」の方向となる。
【0020】
記録装置10は、キャリッジ12と、記録媒体を載置するステージ13とを備える。以下、ステージ13、及び、ステージ13上の用紙は、位置が固定であり、キャリッジ12が移動、及び、回転する機構の例で説明する。また、説明を簡略化するため、記録媒体の面は、ステージ13と同一であるとする。
【0021】
キャリッジ12は、複数のノズルが設けられた複数の記録ヘッド(「液体吐出ヘッド」ともいう。以下「記録ヘッド」という。)を備えたヘッドユニット11を有する。
【0022】
記録ヘッドは、ノズルからインクを吐出することによってドットを記録し、画像を形成する。また、インクは、紫外線が照射されると硬化する。
【0023】
ノズルは、ステージ13との対向する向きに設けられる。
【0024】
照射機33は、紫外線を照射する光源を備える。そして、照射機33は、ノズルから吐出されたインクを硬化させる波長の光を照射する。以下、照射機33は、キャリッジ12と一体であって、キャリッジ12の平行移動により、照射機33が記録ヘッドと一緒にX方向、Y方向、及び、Z方向に移動する構成とする。
【0025】
左側板18a、及び、右側板18bに、ガントリー19を架け渡たす構成である。
【0026】
キャリッジ12は、X方向、Y方向、及び、Z方向に移動する。したがって、記録装置10は、各軸に、アクチュエータ、又は、移動用の機構部品があってもよい。
【0027】
X方向の移動は、ガントリー19に設けられたガイドレールに沿ってキャリッジ12が移動して実現する。
【0028】
Y方向の移動は、ステージ13の左右に設けられたガイドレール29に沿ってキャリッジ12が移動して実現する。
【0029】
Z方向の移動は、キャリッジ12が昇降する機構によって実現する。
【0030】
なお、X方向、Y方向、及び、Z方向の移動は、上記以外の構成で実現されてもよい。したがって、平行移動を実現するアクチュエータ、及び、機構部品の種類は問わず、キャリッジ12がX方向、Y方向、及び、Z方向に移動できればよい。また、上記以外の自由度が更にあってもよい。
【0031】
なお、上記の例では、キャリッジ12が、X方向、Y方向、及び、Z方向に移動するが、いずれかの自由度について、ステージ13が移動、又は、用紙が移動し、用紙に対してキャリッジ12の位置が相対的に移動できればよい。
【0032】
[ヘッドの構成例]
図4は、ヘッドユニットにおけるヘッドの配列例を示す図である。例えば、ヘッドユニット11は、複数のヘッド11aを備えるのが望ましい。具体的には、ヘッド11aは、いわゆる千鳥状に配置する。ただし、ヘッド11aの配置、形状、及び、数は、上記以外でもよい。そして、各々のヘッド11aは、ヘッドプレート11bの上に配置する。
【0033】
図5は、ヘッドの構成例を示す上面図である。
【0034】
図6は、ヘッドの構成例を示す正面図である。
【0035】
インクを吐出して画像形成を行うには、例えば、図5、及び、図6に示すヘッドを用いる。まず、ヘッドフレーム24は、供給ポート21、排出ポート22、及び、穴23を備える。また、ヘッドフレーム24の内部では、供給ポート21、及び、排出ポート22が液室に接続する。
【0036】
供給ポート21は、ヘッドの内部へインクの供給を行う。
【0037】
排出ポート22は、ヘッドの内部にあるインクの排出を行う。
【0038】
穴23は、ヘッドをブラケットに固定するため、ネジを通すものである。
【0039】
ノズル面25に、複数のノズルが並ぶ。そして、ノズルからインクが吐出される。
【0040】
[機構例]
記録装置10は、照射機33をY方向に移動、Z方向に移動、及び、Y軸を軸にして回転させるため、以下のような機構を備える。
【0041】
図7は、機構例を示す正面図である。
【0042】
図8は、機構例を示す上面図である。
【0043】
図7、及び、図8に示す機構では、照射機33は、第1固定板53に固定する。そして、第1固定板53は、第1側面板51と第2側面板52に固定する。
【0044】
第1側面板51と第2側面板52は、第2固定板54に固定する。また、第2固定板54は、第3固定板55に固定する。
【0045】
第2側面板52に、いわゆるラックピニオン(rack and pinion)の機構(以下「ラックピニオン58」という。)を設置する。具体的には、ラックピニオン58は、ラック43とピニオンギア44の組み合わせで構成する。また、ラックピニオン58は、Y軸を軸にして、照射機33を回転させるための回転機構の例である。
【0046】
第3固定板55に、照射機33をY方向に移動させるリニア機構41を設置する。具体的には、リニア機構41は、リニアガイド56とガイドレール29の組み合わせで構成する。また、リニア機構41は、Y方向に平行移動させるための移動機構の例である。
【0047】
以下、自由度ごとに各機構の具体例を説明する。
【0048】
[第1移動部によるY方向の移動例]
図9は、Y方向の移動例(始点)を示す図である。
【0049】
図10は、Y方向の移動例(移動後)を示す図である。
【0050】
図9図10を比較すると、照射機33がガイドレール29に沿って、Y軸始点63からY方向に移動している点が異なる。
【0051】
Y方向に平行移動させる操作は、例えば、第1調整装置60で入力する。具体的には、第1調整装置60は、目盛61、及び、第1調整ノブ62で構成する。このように、第1移動部は、照射機33をY方向に移動させる機構、及び、ユーザが移動を指示する入力装置である。ただし、機構、及び、入力装置は、以下の例に限られず、他の構成で照射機33を移動、及び、操作を入力できてもよい。
【0052】
第1調整ノブ62を動かす操作を入力すると、照射機33がY軸始点63からY方向に移動する。その際の移動量は、ユーザが目盛61で値を確認する。
【0053】
第1調整装置60は、Y軸始点63から60ミリメートル以内の範囲を移動させることができるのが望ましい。すなわち、照射機33は、Y軸始点63から60ミリメートル程度の範囲が移動できると、Y方向においてユーザが照射位置を柔軟に変更でき、より仕上がり精度を向上させることができる。
【0054】
[第2移動部によるZ軸方向の移動例]
Z方向に平行移動させる操作は、例えば、図7に示す第2調整ノブ42で入力する。具体的には、第2調整ノブ42をユーザが回す操作を行うと、昇降軸64が動き、第2固定板54がZ軸方向に移動する。また、Z軸における移動量は、シャフトのリード数で、第2調整ノブ42を回した角度で定まる。このように、第2移動部は、照射機33をZ方向に移動させる機構、及び、ユーザが移動を指示する入力装置である。ただし、機構、及び、入力装置は、以下の例に限られず、他の構成で照射機33を移動、及び、操作を入力できてもよい。
【0055】
昇降軸64は、Z軸始点65から±3ミリメートル以内の範囲を移動させることができるのが望ましい。すなわち、照射機33は、Z軸始点65から±3ミリメートル程度の範囲が移動できると、Z方向においてユーザが照射位置を柔軟に変更でき、より仕上がり精度を向上させることができる。
【0056】
[回転部によるY軸を軸にした回転例]
ラックピニオン58を操作すると、例えば、以下のように、照射機33がY軸を軸にして回転する。
【0057】
図11は、Y軸を軸にした回転をする前の状態を示す図である。以下、回転中心軸70を軸に照射機33を回転させる例とする。なお、照射機33は、第1固定板53と一体となって回転する構成であるため、図11乃至図13では、第1固定板53の動きを示して説明する。すなわち、第1固定板53は、回転中心軸70を中心に回転する回転板である。
【0058】
また、以下の例では、第1固定板53は、回転中心軸70が接続する端部(以下「第1端531」という。)を中心に回転する。一方で、第1固定板53は、第1端531と逆に位置する端部(以下「第2端532」という。)が移動板72と接続する構成である。
【0059】
そして、移動板72は、ラック43と接続しているため、ラック43がX軸方向に移動すると、一体となってX軸方向に移動する。さらに、ラック43は、ピニオンギア44を回転させると、X軸方向に移動する。このように、回転部は、照射機33をY方向を軸に回転させる機構、及び、ユーザが移動を指示する入力装置である。ただし、機構、及び、入力装置は、以下の例に限られず、他の構成で照射機33を移動、及び、操作を入力できてもよい。
【0060】
したがって、移動板72が移動すると、第2端532は、移動板72と一緒になってX軸方向に移動するのに対し、第1端531は、回転中心軸70を軸に回転するが、X軸方向には移動しない。そのため、ピニオンギア44を回転させると、照射機33を回転させる構成である。
【0061】
回転は、基準71に位置する場合、角度を「0度」とする。したがって、図11は、まだ回転していない状態を示す図である。例えば、以下に示すように、照射機33は、基準71に対して「5度」、又は、「10度」というように、回転中心軸70を軸に回転する。
【0062】
図12は、Y軸を軸にした回転を5度回転させた状態を示す図である。図12は、図11と比較すると、回転中心軸70を軸に第1固定板53が回転した状態である点が異なる。具体的には、図12に示す状態における第1固定板53、及び、基準71の成す角度が「5度」(以下「第1角度81」という。)である。
【0063】
ピニオンギア44を回す操作をユーザが行うと、移動板72が移動して、照射機33が固定されている第1固定板53が傾いていく。第1角度81の状態から更にピニオンギア44を回す操作をユーザが行うと、以下のような状態になる。
【0064】
図13は、Y軸を軸にした回転を10度回転させた状態を示す図である。図13は、図12と比較すると、回転中心軸70を軸に第1固定板53が更に回転し、第1角度81より角度が大きくなった状態である点が異なる。具体的には、図13に示す状態における第1固定板53、及び、基準71の成す角度が「10度」(以下「第2角度82」という。)である。
【0065】
第1角度81の状態からピニオンギア44を回す操作をユーザが更に行うと、移動板72が更に移動して、照射機33が固定されている第1固定板53が更に傾いていく。
【0066】
ラックピニオン58は、基準71から10度以下の角度を決定できるのが望ましい。具体的には、上記の通り、照射機33は、「0度」(基準71と一致する角度である。)、「5度」、及び、「10度」の角度というように、10度以下の範囲で回転できるのが望ましい。また、角度は、上記の例では「5度」刻みで決定しているが、5度以下の刻みで決定できてもよい。したがって、角度は、5度より高精度な「1度」又は「2度」単位で決定できてもよい。このように、照射機33は、5度以下の精度で角度を決定して回転できると、ユーザが照射位置を柔軟に変更でき、より仕上がり精度を向上させることができる。
【0067】
なお、照射機33が画像形成を行っている間に変動するのを防ぐため、段付きねじ73等の角度を固定できる機構があるのが望ましい。
【0068】
図14は、段付きねじを外した状態の例を示す図である。
【0069】
図15は、段付きねじによる固定をした状態の例を示す図である。
【0070】
図14図15を比較すると、段付きねじ73が第2固定板54に収まっているか否かが異なる。
【0071】
図14に示すように、段付きねじ73が外れた状態になると、第1固定板53が移動可能な状態となるのに対し、図15に示すように、段付きねじ73が第2固定板54に収まる状態になると、第1固定板53は位置が固定される。このように、照射機33の位置が固定できると、照射機33が意図しないタイミングで動いてしまうのを防ぐことができる。
【0072】
なお、固定用の機構は、回転後、照射機33の位置を固定できれば、他の部品、又は、形状であってもよい。
【0073】
[Y軸方向の移動による調整例]
図16は、Y軸方向の移動による調整例を示す図である。図16(A)は、図9に示す始点、すなわち、照射機33が移動する前の状態の例を示す図である。一方で、図16(B)は、図10に示す位置、すなわち、照射機33が移動した後の状態の例を示す図である。
【0074】
図16(A)、及び、図16(B)を比較すると、照射機33がY軸方向の位置が移動によって変更されている点が異なる。このような移動の結果、紫外線を照射する範囲のY軸方向における位置(以下単に「照射範囲74」という。)が変更できる。
【0075】
ヘッド11aに対し、照射範囲74が変更できると、照射機33による照射を行う時間、すなわち、インクを硬化させる時間を調整できる。例えば、照射範囲74がインクに照射する開始タイミングを遅らせるように位置を変更すると、インクを硬化させる開始時間を遅くできる。その結果、仕上がり精度を向上できる。
【0076】
[Z軸方向の移動による調整例]
図17は、Z軸方向の移動による調整例を示す図である。図17(A)は、第2調整ノブ42による調整前、すなわち、照射機33が移動する前の状態の例を示す図である。一方で、図17(B)は、第2調整ノブ42による調整後、すなわち、照射機33が移動した後の状態の例を示す図である。
【0077】
図17(A)、及び、図17(B)を比較すると、照射機33がZ軸方向の位置が移動によって変更されている点が異なる。
【0078】
例えば、先に吐出させたインク(以下「第1インク91」という。)と、第1インク91より後に吐出したインク(以下「第2インク92」という。)では、用紙に着弾するタイミングが異なる。そのため、第1インク91と第2インク92に対し、均等に紫外線を照射すると、第1インク91が形成する面と、第2インク92が形成する面で仕上がりに差が出る場合がある。そこで、Z軸方向に照射機33を移動させて、照射機33と用紙の距離を変更する。具体的には、図17(A)に示す状態では距離が「第1距離Z1」であるのに対し、図17(B)に示す状態では距離が「第2距離Z2」である。第1距離Z1と第2距離Z2では、単位時間当たりの照射量が異なるため、距離を変更すると、照射量が調整できる。
【0079】
したがって、このようにZ軸方向の移動による調整がされると、照射機33による照射を行う時間、すなわち、インクを硬化させる時間を調整できる。その結果、仕上がり精度を向上できる。
【0080】
[Y軸を軸にした回転による調整例]
図18は、Y軸を軸にした回転による調整例を示す図である。図18(A)は、照射機33が回転する前の状態の例を示す図である。一方で、図18(B)は、照射機33が回転した後の状態の例を示す図である。なお、図18では、Z軸を対称軸に、2つの照射機33を対称に配置した構成例である。具体的には、図18(A)は、図11と同じ状態である。次に、図18(A)の状態から、図12、及び、図13に示すように照射機33を回転させると、図18(B)に示す状態となる。したがって、図18(B)に示す状態は、図18(A)が示す状態より照射機33が回転して傾いており、第2角度82の傾いた姿勢になっている状態である。
【0081】
図18(A)が示す状態では、インクは、吐出されて用紙に着弾してから、紫外線の照射が開始されるまでの距離が「第1搬送距離X1」である。一方で、図18(B)が示す状態では、インクは、吐出されて用紙に着弾してから、紫外線の照射が開始されるまでの距離が「第2搬送距離X2」である。
【0082】
第1搬送距離X1、及び、第2搬送距離X2のように、紫外線の照射が開始されるまでの距離が変更できると、インクを硬化させる時間を調整できる。このように、インクを硬化させる時間を調整できると、例えば、レベリング(levelling)効果等が期待できる。その結果、仕上がり精度を向上できる。
【0083】
なお、上記の機構は、上記の構成、及び、形状に限られない。例えば、アクチュエータ、他の種類の機構部品、又は、センサ等を用いる構成でもよい。
【0084】
用紙等によって紫外線が反射して反射光が発生する、又は、照射機33の位置によっては、光源から紫外線が漏れる場合がある。これらの紫外線がヘッド11aに照射されると、ノズルが詰まりやすくなる。そこで、移動、又は回転により、照射機33の位置、及び、照射する位置が変更できると、用紙に合わせて、漏れ光、及び、反射光を低減させて、ノズルが詰まるのを防ぐことができる。
【0085】
[仕上がり精度に影響する処理の例]
仕上がりの精度には、例えば、以下のようなクリアコート処理、及び、プライマー処理等が影響する。
【0086】
クリアコート処理は、透明なインクを印刷面に塗布して光沢感を調整する処理である。そのため、クリアコート処理を行うと、画像形成で形成される段差の均一化、又は、光沢のムラを減少させることができる。また、不要な光の反射を抑え、印刷物の濃度を向上させることができる。
【0087】
プライマー処理は、例えば、UVインクと記録媒体の密着性が悪い場合において、これらを接着する接着剤の役割をする「プライマー」を塗布する処理である。例えば、プライマーは、透明なインク等である。このようにプライマーを均一に塗布できると、UVインクを使った処理の仕上がりが向上する。
【0088】
画像形成を行う場合には、仕上がり精度は、画質等である。ただし、仕上がり精度は、製造誤差、又は、見栄え等といった他の品質項目であってもよい。
【0089】
なお、上記以外の前処理、又は、後処理の品質を向上させて、仕上がり精度を向上させてもよい。
【0090】
[機能構成例]
図19は、機能構成例を示す図である。具体的には、記録装置10は、吐出部10F1、照射部10F2、第1移動部10F3、及び、第2移動部10F4を備える。なお、記録装置10は、回転部10F5を更に備えるのが望ましい。
【0091】
吐出部10F1は、用紙Wの面に対して液体を吐出する吐出手順を行う。例えば、吐出部10F1は、ヘッドユニット11で実現する。
【0092】
照射部10F2は、用紙Wに吐出した後の液体に対して紫外線を照射する照射手順を行う。例えば、照射部10F2は、照射機33で実現する。
【0093】
第1移動部10F3は、第1方向に、照射部10F2を移動させる第1移動手順を行う。例えば、第1移動部10F3は、ガイドレール29で実現する。
【0094】
第2移動部10F4は、第2方向に、照射部10F2を移動させる第2移動手順を行う。例えば、第2移動部10F4は、第2調整ノブ42で実現する。
【0095】
回転部10F5は、第1方向を軸にして、照射部10F2を回転させる回転手順を行う。例えば、ラックピニオン58で実現する。
【0096】
上記の通り、記録装置10は、第1移動部10F3、第2移動部10F4、及び、回転部10F5を備えると、例えば、図16乃至図18に示すように、照射部10F2を移動、又は、回転させて、照射部10F2の位置、又は、インクの硬化時間等を調整できる。その結果、仕上がり精度を向上させることができる。
【0097】
また、記録装置10は、画像形成部を更に備えてもよい。画像形成部は、吐出部10F1が画像形成を行う構成でもよいし、又は、吐出部10F1とは別に画像形成を行う構成があってもよい。
【0098】
[その他の実施形態]
記録媒体は、例えば、用紙(「普通紙」等ともいう。)である。ただし、記録媒体は、用紙以外のコート紙、ラベル紙等の他、オーバヘッドプロジェクタシート、フィルム、又は、可撓性を持つ薄板等でもよい。すなわち、記録媒体の素材は、インク滴が付着可能、一時的に付着可能、付着して固着、又は、付着して浸透する材質等であればよい。具体的には、記録媒体は、用紙、フィルム、若しくは、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子(「圧電部材」等ともいう。)等の電子部品、粉体層(「粉末層」等ともいう。)、臓器モデル、又は、検査用セル等である。また、3次元的な物体が形成されてもよい。このように、記録媒体の材質は、液体が付着可能であって、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、又は、これらの組み合わせ等であればよい。また、液体は、上記の用途に応じて、インク以外の種類である、記録液、定着処理液、又は、樹脂等が含まれてもよい。
【0099】
上記手順による画像形成方法は、例えば、コンピュータに処理を実行させて実現させる。なお、本発明に係る画像形成方法は、上記に示す以外の処理が含まれてもよい。また、画像形成方法は、一部の処理を外部装置による処理又は操作等で実行される方法を含む。
【0100】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
【0101】
<1>記録媒体に対して液体を吐出する液体吐出装置であって、
前記記録媒体の面に対して前記液体を吐出する吐出部と、
前記記録媒体に吐出した後の前記液体に対して紫外線を照射する照射部と、
前記吐出部と前記照射部が並ぶ方向である第1方向に、前記照射部を移動させる第1移動部と、
前記面に対して垂直となる方向である第2方向に、前記照射部を移動させる第2移動部と
を備える液体吐出装置である。
【0102】
<2>前記第1方向を軸にして、前記照射部を回転させる回転部を更に備える
上記<1>に記載の液体吐出装置である。
【0103】
<3>前記照射部は、
前記第1移動部、前記第2移動部、及び、前記回転部によって、少なくとも3自由度が移動、又は、回転できる
上記<2>に記載の液体吐出装置である。
【0104】
<4>前記第1移動部は、
前記第1方向に前記照射部を、始点から60ミリメートル以内の範囲を移動させる
上記<1>乃至<3>のいずれか1つに記載の液体吐出装置である。
【0105】
<5>前記第2移動部は、
前記第2方向に前記照射部を、始点から±3ミリメートル以内の範囲を移動させる
上記<1>乃至<4>のいずれか1つに記載の液体吐出装置である。
【0106】
<6>前記回転部は、
前記照射部を基準から10度以下の範囲で回転させる
上記<2>に記載の液体吐出装置である。
【0107】
<7>前記吐出部は、
前記第1方向、及び、前記第1方向に直交する方向である第3方向に移動し、
前記第1移動部は、
前記第1方向における前記照射部の移動量である第1移動量が入力されると、リニアガイドによって前記照射部を前記第1方向に平行移動させて前記照射部が照射する照射範囲を変更し、
前記第2移動部は、
前記第2方向における前記照射部の移動量である第2移動量が入力されると、昇降機構によって前記照射部を前記第2方向に平行移動させて前記照射範囲を変更し、
前記回転部は、
前記軸を中心とする角度が入力されると、前記照射部と一体となって前記軸を中心に回転する回転板、及び、前記回転板の端部を前記第1方向に平行移動させる移動板を備え、前記移動板が前記第1方向に平行移動すると、前記回転板が前記軸を中心に回転して前記照射範囲を変更する
上記<2>に記載の液体吐出装置である。
【0108】
<8>前記記録媒体に対して画像を形成する画像形成部を更に備える
上記<1>乃至<7>のいずれか1つに記載の液体吐出装置である。
【0109】
なお、本発明は、上記に例示する各実施形態に限定されない。したがって、本発明は、技術的な要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の追加、又は、変形が可能である。ゆえに、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。なお、上記に例示する実施形態は、実施において好適な具体例である。そして、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現で可能であって、このような変形例は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0110】
10 :記録装置
10F1 :吐出部
10F2 :照射部
10F3 :第1移動部
10F4 :第2移動部
10F5 :回転部
11 :ヘッドユニット
11a :ヘッド
12 :キャリッジ
29 :ガイドレール
33 :照射機
42 :第2調整ノブ
58 :ラックピニオン
60 :第1調整装置
62 :第1調整ノブ
63 :Y軸始点
64 :昇降軸
65 :Z軸始点
70 :回転中心軸
72 :移動板
73 :段付きねじ
74 :照射範囲
81 :第1角度
82 :第2角度
91 :第1インク
92 :第2インク
531 :第1端
532 :第2端
W :用紙
X1 :第1搬送距離
X2 :第2搬送距離
Z1 :第1距離
Z2 :第2距離
【先行技術文献】
【特許文献】
【0111】
【特許文献1】特開2022-017731号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19