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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070593
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】電子線照射装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240516BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20240516BHJP
   H01J 37/12 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
H01L21/30 541D
H01L21/30 541G
H01J37/305 B
H01J37/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181186
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】福留 周一郎
(72)【発明者】
【氏名】安部 勇仁
【テーマコード(参考)】
5C101
5F056
【Fターム(参考)】
5C101EE17
5C101EE40
5C101EE65
5C101EE66
5C101EE78
5F056EA04
5F056EA18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電子ビームカラム内の絶縁体の帯電を抑制することが可能な装置を提供する。
【解決手段】電子ビームカラム内に配置され、電子ビームの軌道中心軸に対し軸対称に形成され、中央部に電子ビームが通過する開口部が形成され、厚さが外周側から開口部に向かって細くなるように形成された電極と、電子ビームカラム内で、電極に対し離間して配置され、電子ビームの軌道中心軸に対し軸対称に形成され、中央部に電子ビームが通過する開口部が形成され、電極の面と平行ではない角度で対向する面を有する、導電性キャップと、電子ビームカラム内で、キャップを外周側で接続する、導電性のホルダと、電子ビームカラム内で、電極とホルダとの間に配置され、電極とホルダとを絶縁する絶縁体と、を備え、電子ビームが試料に照射されることによって放出される反射電子の通路を絶縁体に向かって狭めるように形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームで試料を照射する電子ビームカラムと、
前記電子ビームカラム内に配置され、前記電子ビームの軌道中心軸に対し軸対称に形成され、中央部に前記電子ビームが通過する開口部が形成され、厚さが外周側から前記開口部に向かって細くなるように形成された電極と、
前記電子ビームカラム内で、前記電極に対し離間して配置され、電子ビームの軌道中心軸に対し軸対称に形成され、中央部に前記電子ビームが通過する開口部が形成され、前記電極の面と平行ではない角度で対向する面を有する、導電性のキャップと、
前記電子ビームカラム内で、前記キャップを外周側で接続する、導電性のホルダと、
前記電子ビームカラム内で、前記電極と前記ホルダとの間に配置され、前記電極と前記ホルダとを絶縁する絶縁体と、
を備え、
前記電極と前記キャップは、前記電極の面と前記キャップの面との間に侵入する、前記電子ビームが試料に照射されることによって放出される反射電子の通路を前記絶縁体に向かって狭めるように形成されることを特徴とする電子線照射装置。
【請求項2】
前記導電性のキャップと前記ホルダは、一体化形成されることを特徴とする請求項1記載の電子線照射装置。
【請求項3】
前記導電性のキャップは、
前記電子ビームカラム内で、前記電極の下方に離間して配置され、中央部に前記電子ビームが通過する開口部が形成され、前記電極の下面と平行ではない角度で対向する上面を有する導電性の下のキャップと、
前記電子ビームカラム内で、前記電極の上方に離間して配置され、中央部に前記電子ビームが通過する開口部が形成され、前記電極の上面と平行ではない角度で対向する下面を有する、導電性の上のキャップと、から構成されることを特徴とする請求項1記載の電子線照射装置。
【請求項4】
前記電極として、厚さが中心に向かって細くなるように形成された2極子以上の複数の電極が用いられ、
前記キャップは、前記電子ビームカラム内で、前記複数の電極に対し離間して配置され、前記電子ビームの軌道中心軸に対し軸対称に形成され、前記複数の電極の面と平行ではない角度で対向する少なくとも1つの面を有し、
前記絶縁体として、前記電子ビームカラム内で、前記ホルダの外周側で前記ホルダに接続すると共に前記複数の電極のそれぞれ対応する1つに接続し、前記複数の電極のそれぞれ対応する前記1つと前記ホルダとを絶縁する複数の絶縁体が用いられ、
前記複数の電極と前記キャップは、前記複数の電極の面と前記キャップの前記少なくとも1つの面との間に侵入する、前記電子ビームが試料に照射されることによって放出される反射電子の通路を前記絶縁体に向かって狭めるように形成されることを特徴とする請求項1記載の電子線照射装置。
【請求項5】
前記キャップは、
前記電子ビームカラム内で、前記複数の電極の上方に離間して配置され、前記複数の電極の上面と平行ではない角度で対向する少なくとも1つの下面を有する、導電性の上のキャップと、
前記電子ビームカラム内で、前記複数の電極の下方に離間して配置され、前記複数の電極の下面と平行ではない角度で対向する少なくとも1つの上面を有する、導電性の下のキャップと、
から構成されることを特徴とする請求項4記載の電子線照射装置。
【請求項6】
電子ビームで試料を照射する電子ビームカラムと、
前記電子ビームカラム内に配置され、前記電子ビームの軌道中心軸に対し軸対称に形成され、中央部に前記電子ビームが通過する開口部が形成され、前記電子ビームのうち前記開口部から外れた電子を遮蔽する、導電性のアパーチャ基板と、
前記アパーチャ基板の上面外周部に接続され、前記電子ビームの軌道中心軸に対し軸対称に形成され、厚さが下方に向かって細くなるように形成された、導電性のアパーチャホルダと、
前記電子ビームカラム内で、前記電子ビームの軌道中心軸に対し軸対称に形成され、前記アパーチャホルダの内周側に離間して配置され、前記アパーチャホルダの内周面と平行ではない角度で対向する外周面を有する、導電性のリングと、
前記リング上方で前記リングを支持するリングホルダと、
前記電子ビームカラム内で、前記リングホルダと前記アパーチャホルダとの間に配置され、前記リングホルダと前記アパーチャホルダとの間を絶縁する絶縁体と、
を備え、
前記アパーチャホルダと前記リングは、前記アパーチャホルダの内周面と前記リングの外周面との間に侵入する、前記電子ビームが前記アパーチャ基板に照射されることによって放出される反射電子の通路を前記絶縁体に向かって狭めるように形成されることを特徴とする電子線照射装置。
【請求項7】
前記反射電子の通路は、前記絶縁体に向かって、対向する第1と第2の壁面から形成され、前記反射電子の通路を狭めるように一定の角度で傾斜されることを特徴とする請求項1、4又は6に記載の電子線照射装置。
【請求項8】
前記反射電子の通路は、対向する第1と第2の壁面から形成され、前記反射電子が前記第1と第2の壁面の間に侵入して最初に衝突する壁面の傾斜角が前記反射電子の入射角θよりも小さい関係であって、
前記第1の壁面の傾斜角αの正接と前記第2の壁面の傾斜角βの正接との和が、1から前記反射電子の入射角θの余弦を差し引いた差分に前記反射電子が侵入を開始する前記第1と第2の壁面の間の距離Bを乗じ、前記第1と第2の壁面の対向する長さHで割った値より大きい関係になるように、前記第1と第2の壁面を配置することを特徴とする請求項1、4又は6に記載の電子線照射装置。
【請求項9】
前記反射電子の通路は、対向する第1と第2の壁面から形成され、前記反射電子が前記第1と第2の壁面の間に侵入して最初に衝突する壁面の傾斜角が前記反射電子の入射角θ以上の関係になるように、前記第1と第2の壁面を配置することを特徴とする請求項1、4又は6に記載の電子線照射装置。
【請求項10】
前記反射電子の通路は、対向する第1と第2の壁面から形成され、前記反射電子が前記第1と第2の壁面の間に侵入して最初に衝突する壁面の傾斜角が前記反射電子の入射角θよりも小さい関係であって、
前記第1の壁面の傾斜角αの正接と前記第2の壁面の傾斜角βの正接との和が、1から前記反射電子の入射角θの余弦を差し引いた差分に前記反射電子が侵入を開始する前記第1と第2の壁面の間の距離Bを乗じ、前記第1と第2の壁面の対向する長さHで割った値以下の関係になるように、前記第1と第2の壁面を配置することを特徴とする請求項1、4又は6に記載の電子線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線照射装置に係り、例えば、電子ビームカラム内の絶縁体の帯電を抑制する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。ここで、電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、ウェハ或いはウェハにパターンを形成するマスク等へ電子線を使って回路パターンを描画することが行われている。
【0003】
電子線描画装置では、電子光学鏡筒(電子ビームカラム)内に、電子ビームの軌道を制御する静電レンズ或いは/及び静電偏向器が配置される。静電レンズ或いは/及び静電偏向器を構成する電極には制御電位が印加される。そして、これらの電極をグランド電位と同電位の周辺部品から絶縁するために絶縁部材が配置される。その際、絶縁部材が帯電しないように、例えば遮蔽部材を使って絶縁部材が電子ビームの軌道空間から隠されることが行われる。しかしながら、電子ビームが例えばアパーチャ基板や試料面に衝突することで放出される反射電子が例えば遮蔽部材と電極との間を通って絶縁部材に到達してしまう場合がある。その結果、絶縁部材が反射電子により帯電し、帯電量が限界を超えると放電し、電子ビーム軌道に影響を及ぼすといった問題があった。その結果、描画精度が劣化してしまう。
【0004】
ここで、試料面の上方に配置された反射防止板にV字の切れ込みを形成して、切れ込みに侵入する電子を減衰するといった技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-143393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様は、電子ビームカラム内の絶縁体の帯電を抑制することが可能な装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の電子線照射装置は、
電子ビームで試料を照射する電子ビームカラムと、
電子ビームカラム内に配置され、電子ビームの軌道中心軸に対し軸対称に形成され、中央部に電子ビームが通過する開口部が形成され、厚さが外周側から開口部に向かって細くなるように形成された電極と、
電子ビームカラム内で、電極に対し離間して配置され、電子ビームの軌道中心軸に対し軸対称に形成され、中央部に電子ビームが通過する開口部が形成され、電極の面と平行ではない角度で対向する面を有する、導電性のキャップと、
電子ビームカラム内で、キャップを外周側で接続する、導電性のホルダと、
電子ビームカラム内で、電極とホルダとの間に配置され、電極とホルダとを絶縁する絶縁体と、
を備え、
電極とキャップは、電極の面とキャップの面との間に侵入する、電子ビームが試料に照射されることによって放出される反射電子の通路を絶縁体に向かって狭めるように形成されることを特徴とする。
【0008】
また、導電性のキャップは、
電子ビームカラム内で、電極の下方に離間して配置され、中央部に電子ビームが通過する開口部が形成され、電極の下面と平行ではない角度で対向する上面を有する導電性の下のキャップと、
電子ビームカラム内で、電極の上方に離間して配置され、中央部に電子ビームが通過する開口部が形成され、電極の上面と平行ではない角度で対向する下面を有する、導電性の上のキャップと、
から構成されると好適である。
【0009】
或いは、上述した電極として、厚さが中心に向かって細くなるように形成された2極子以上の複数の電極が用いられ、
キャップは、電子ビームカラム内で、複数の電極に対し離間して配置され、電子ビームの軌道中心軸に対し軸対称に形成され、複数の電極の面と平行ではない角度で対向する少なくとも1つの面を有し、
上述した絶縁体として、電子ビームカラム内で、ホルダの外周側でホルダに接続すると共に複数の電極のそれぞれ対応する1つに接続し、複数の電極のそれぞれ対応する1つとホルダとを絶縁する複数の絶縁体が用いられ、
複数の電極とキャップは、複数の電極の面とキャップの少なくとも1つの面との間に侵入する、電子ビームが試料に照射されることによって放出される反射電子の通路を絶縁体に向かって狭めるように形成されると好適である。
【0010】
また、キャップは、
電子ビームカラム内で、複数の電極の上方に離間して配置され、複数の電極の上面と平行ではない角度で対向する少なくとも1つの下面を有する、導電性の上のキャップと、
電子ビームカラム内で、複数の電極の下方に離間して配置され、複数の電極の下面と平行ではない角度で対向する少なくとも1つの上面を有する、導電性の下のキャップと、
から構成されると好適である。
【0011】
本発明の他の態様の電子線照射装置は、
電子ビームで試料を照射する電子ビームカラムと、
電子ビームカラム内に配置され、電子ビームの軌道中心軸に対し軸対称に形成され、中央部に電子ビームが通過する開口部が形成され、電子ビームのうち開口部から外れた電子を遮蔽する、導電性のアパーチャ基板と、
アパーチャ基板の上面外周部に接続され、電子ビームの軌道中心軸に対し軸対称に形成され、厚さが下方に向かって細くなるように形成された、導電性のアパーチャホルダと、
電子ビームカラム内で、電子ビームの軌道中心軸に対し軸対称に形成され、アパーチャホルダの内周側に離間して配置され、アパーチャホルダの内周面と平行ではない角度で対向する外周面を有する、導電性のリングと、
リング上方でリングを支持するリングホルダと、
電子ビームカラム内で、リングホルダとアパーチャホルダとの間に配置され、リングホルダとアパーチャホルダとの間を絶縁する絶縁体と、
を備え、
アパーチャホルダとリングは、アパーチャホルダの内周面とリングの外周面との間に侵入する、電子ビームがアパーチャ基板に照射されることによって放出される反射電子の通路を絶縁体に向かって狭めるように形成されることを特徴とする。
【0012】
また、反射電子の通路は、絶縁体に向かって、対向する第1と第2の壁面から形成され、反射電子の通路を狭めるように一定の角度で傾斜されると好適である。
【0013】
また、反射電子の通路は、対向する第1と第2の壁面から形成され、反射電子が第1と第2の壁面の間に侵入して最初に衝突する壁面の傾斜角が反射電子の入射角θよりも小さい関係であって、
第1の壁面の傾斜角αの正接と第2の壁面の傾斜角βの正接との和が、1から反射電子の入射角θの余弦を差し引いた差分に反射電子が侵入を開始する第1と第2の壁面の間の距離Bを乗じ、第1と第2の壁面の対向する長さHで割った値より大きい関係になるように、第1と第2の壁面を配置すると好適である。
【0014】
或いは、反射電子の通路は、対向する第1と第2の壁面から形成され、反射電子が第1と第2の壁面の間に侵入して最初に衝突する壁面の傾斜角が反射電子の入射角θ以上の関係になるように、第1と第2の壁面を配置すると好適である。
【0015】
或いは、反射電子の通路は、対向する第1と第2の壁面から形成され、反射電子が第1と第2の壁面の間に侵入して最初に衝突する壁面の傾斜角が反射電子の入射角θよりも小さい関係であって、
第1の壁面の傾斜角αの正接と第2の壁面の傾斜角βの正接との和が、1から反射電子の入射角θの余弦を差し引いた差分に反射電子が侵入を開始する第1と第2の壁面の間の距離Bを乗じ、第1と第2の壁面の対向する長さHで割った値以下の関係になるように、第1と第2の壁面を配置すると好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、電子ビームカラム内の絶縁体の帯電を抑制或いは低減できる。よって、高精度なビーム照射ができる。その結果、高精度に描画できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図2】実施の形態1における静電レンズの構成の一例を示す図である。
図3】実施の形態1における静電レンズの構成の一例を示す上面図である。
図4】実施の形態1における静電レンズの構成の一例の一部を示す断面図である。
図5】実施の形態1における壁面の傾斜角の一例と反射電子の侵入の様子とを説明するための図である。
図6】実施の形態1における壁面の傾斜角の他の一例と反射電子の侵入の様子とを説明するための図である。
図7】実施の形態1における反射電子の侵入モデルの一例を示す図である。
図8】実施の形態1における壁面の傾斜角の他の一例と反射電子の侵入の様子とを説明するための図である。
図9】実施の形態1の変形例における偏向器の断面構成の一例と反射電子の侵入の様子とを説明するための図である。
図10】実施の形態1の変形例における偏向器のCC断面の構成の一例を示す上面断面図である。
図11】実施の形態1の変形例における下のキャップの他の一例を示す上面図である。
図12】実施の形態1における制限アパーチャ機構の断面構成の一例と反射電子の侵入の様子とを説明するための図である。
図13】実施の形態1における制限アパーチャ機構の構成の一例の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、以下、電子線照射装置の一例として、電子ビーム描画装置を説明するが、これに限るものではない。例えば、電子ビーム検査装置等の電子線を照射する装置であればよい。
【0019】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。図1において、描画装置100は、描画機構150と制御系回路160を備えている。描画装置100は、電子線照射装置の一例である。描画機構150は、電子ビームカラム102(電子鏡筒)と描画室103を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃201、照明レンズ202、制限アパーチャ機構212、偏向器204、静電レンズ214、及び対物レンズ206が配置されている。
【0020】
描画室103内には、ステージ105が配置される。ステージ105上には、描画時(露光時)には描画対象基板となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスク、或いは、半導体装置が製造される半導体基板(シリコンウェハ)等が含まれる。また、試料101には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。
【0021】
電子ビームカラム102は、例えば下部の一部が描画室103内に位置するように描画室103によって支持される。
【0022】
描画室103内及び電子ビームカラム102内は、図示しない真空ポンプによって真空引きされ、描画処理時は、真空状態で使用される。
【0023】
制御系回路160は、制御計算機110、メモリ112、レンズ制御回路124、偏向制御回路130、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140を有している。制御計算機110、メモリ112、レンズ制御回路124、偏向制御回路130、及び記憶装置140は、バス120を介して互いに接続されている。偏向器204は、4極以上の電極により構成され、電極毎に図示しないDAC(デジタル・アナログ・コンバータ)アンプを介して偏向制御回路130により制御される。照明レンズ202、制限アパーチャ機構212、静電レンズ214、及び対物レンズ206は、レンズ制御回路124により制御される。ステージ105の位置は図示しないステージ制御機構によって制御される。また、ステージ105は、図示しない各軸のモータの駆動によって制御される。また、図示しないレーザ干渉計を用いて、レーザ干渉法の原理でステージ105の位置が測長される。
【0024】
制御計算機110に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。
【0025】
描画装置100の描画動作は、描画装置100全体を制御する制御計算機110によって制御される。
【0026】
また、描画装置100の外部からチップデータが入力され、記憶装置140に格納される。チップデータには、描画対象となるチップを構成する複数の図形パターンの情報が定義される。具体的には、図形パターン毎に、例えば、図形コード、座標、及びサイズ等が定義される。
【0027】
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0028】
次に、描画機構150の動作の具体例について説明する。電子ビームカラム102は、試料101を電子ビーム200で照射する。具体的には、例えば、以下のように動作する。電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202と対物レンズ206とによって所望の倍率のビームとなって、試料101を照射する。その際、対物レンズ206は、電子ビーム200を試料101面に結像する。
【0029】
また、制限アパーチャ機構212には、中央部に電子ビーム200が通過する開口部が形成される。そして、開口部から外れた散乱電子等を遮蔽する。また、磁気レンズである対物レンズ206よりも応答性の優れた静電レンズ214によって、基板上の凹凸に応じて電子ビーム200の焦点位置をダイナミックに補正する。
【0030】
また、制御計算機110によって制御された偏向制御回路130から図示しないDACアンプを介して、所望の電位が偏向器204に印加される。偏向器204は、印加される電位に応じて、電子ビームを試料101面上の所望の位置に偏向する。
【0031】
例えば、制御計算機110は、記憶装置140からチップデータを読み出し、データ変換処理によって、ショット毎のショットデータを生成する。ショットデータには、電子ビームの当該ショットの照射位置が定義される。試料面上の各位置は、測定されるステージ位置からの距離が固定される。よって、ステージ位置がわかれば、相対的に試料面上の位置がわかる。ショット同士間のブランキング動作は、図示しないブランキングアパーチャとブランキング偏向器によって制御されればよい。
【0032】
そこで、偏向制御回路130は、ステージ105の位置に応じて、試料101上での電子ビーム200の照射位置を補正するように偏向器204を制御する。具体的には、ショットデータに定義される照射位置を電子ビーム200で照射可能な位置にステージ105が到達したら、偏向器204で当該照射位置に向けて電子ビーム200を偏向する。これにより、所望の位置を電子ビーム200で照射できる。
【0033】
図2は、実施の形態1における静電レンズの構成の一例を示す図である。図2の例では、例えば3段の電極基板により構成される静電レンズ214を説明する。図2において、静電レンズ214は、導電性の上のキャップ16(上段電極基板部材)、導電性の電極10(中段電極部材)、導電性の下のキャップ14(下段電極基板部材)、絶縁体12、及び導電性のホルダ18(連結部材)を有する。
【0034】
図3は、実施の形態1における静電レンズの構成の一例を示す上面図である。
図4は、実施の形態1における静電レンズの構成の一例の一部を示す断面図である。上のキャップ16、電極10、下のキャップ14、絶縁体12、及びホルダ18は、電子ビーム200の軌道中心軸に対して、軸対称に形成される。図4では、断面のうち右側部分を示している。断面のうちの左側の部分の図示を省略している。
【0035】
図3に示すように、上のキャップ16、電極10、及び下のキャップ14は、例えば円盤状に形成される。また、図3及び図4に示すように、上のキャップ16、電極10、及び下のキャップ14には、それぞれ中央部に電子ビーム200が通過するための円形の開口部7,5,6が形成される。ホルダ18は、例えばリング状に形成される。また、絶縁体12は、例えばリング状に形成される。上のキャップ16は、静電レンズ214の上段電極基板として機能する。電極10は、静電レンズ214の中段電極基板として機能する。下のキャップ14は、静電レンズ214の下段電極基板として機能する。
【0036】
そして、図2及び図4に示すように、上のキャップ16は、電子ビームカラム102内で、電極10の上方に離間して配置される。下のキャップ14は、電子ビームカラム102内で、電極10の下方に離間して配置される。ホルダ18は、電子ビームカラム102内で、上のキャップ16と下のキャップ14とに外周側で接続する。図2図4の例では、上のキャップ16は、筒状のホルダ18の上方からホルダ18に蓋をするように配置される。下のキャップ14は、筒状のホルダ18の下方からホルダ18に蓋をするように配置される。言い換えると、上のキャップ16及び下のキャップ14は、電極10を上下方向から隙間を空けて挟むように配置され、外周側が、導電性のホルダ18に接続される。これにより、上のキャップ16及び下のキャップ14は、ホルダ18を介して電気的に接続される。なお、下のキャップ14、上のキャップ16とホルダ18は、それぞれ別部品である必要はなく、同一素材からの削り出し加工により一体化形成された部品でもよい。
【0037】
また、電極10は、外周側に絶縁体12を介してホルダ18に接続される。そして、絶縁体12は、電子ビームカラム102内で、電極10とホルダ18との間に配置され、電極10とホルダ18とを絶縁する。よって、電極10は、絶縁体12により上のキャップ16及び下のキャップ14から絶縁される。言い換えれば、電極10の下面となる下のキャップ14側の壁面(第1の壁面の一例)と下のキャップ14の上面となる電極10側の壁面(第2の壁面の一例)とは、互いに非接触に配置される。また、かかる壁面同士の間は、絶縁体12により電気的に絶縁される。
【0038】
同様に、上のキャップ16の下面となる電極10側の壁面(第1の壁面の他の一例)と電極10の上面となる上のキャップ16側の壁面(第2の壁面の他の一例)とは、互いに非接触に配置される。また、かかる壁面同士の間は、絶縁体12により電気的に絶縁される。
【0039】
また、上のキャップ16及び下のキャップ14には、ホルダ18を介してグランド電位(GND)に接続される。言い換えれば、上のキャップ16及び下のキャップ14は、地絡される。そして、レンズ制御回路124は、電極10に所望の制御電位を印加する。これにより、電子ビーム200の焦点位置を調整できる。
【0040】
ここで、電子ビーム200で試料101(物体の一例)を照射することによって反射電子300が放出される。放出された反射電子300は、所定の入射角度で、上のキャップ16と電極10との間の空間に侵入する。その際、上のキャップ16と電極10との対向する面同士が平行に配置される場合、反射電子300は、電極10と下のキャップ14との間の空間を通路として壁面への衝突を繰り返しながら進む。そして、反射電子300は、絶縁体12に到達し、絶縁体12を帯電させる。そして、絶縁体12の帯電量が一定量を超えると放電し、電子ビーム200の軌道上の空間Aの電場を乱すことになる。これにより、電子ビーム200が影響を受け、電子ビーム200の軌道にずれが生じる。その結果、その結果、描画精度が劣化してしまう。
【0041】
同様に、放出された反射電子300は、ある入射角度で、電極10と下のキャップ14との間の空間に侵入する。その際、電極10と下のキャップ14との対向する面同士が平行に配置される場合、反射電子300は、電極10と下のキャップ14との間の空間を通路として壁面への衝突を繰り返しながら進む。そして、反射電子300は、絶縁体12に到達し、絶縁体12を帯電させる。そして、絶縁体12の帯電量が一定量を超えると放電し、電子ビーム200の軌道上の空間Aの電場を乱すことになる。これにより、電子ビーム200が影響を受け、電子ビーム200の軌道にずれが生じる。その結果、その結果、描画精度が劣化してしまう。
【0042】
そこで、実施の形態1では、上のキャップ16と電極10との間の空間に侵入した反射電子300が絶縁体12に到達することを防止する。或いは、到達する場合でも反射電子300のエネルギーを減衰させた上で到達させる。電極10と下のキャップ14との間の空間に侵入した反射電子300についても同様である。以下、具体的に説明する。
【0043】
図4において、電極10は、厚さが外周側から開口部5に向かって細くなるように形成される。下のキャップ14は、電極10の下面と平行ではない角度で対向する上面を有する。具体的には、電極10の下面となる下のキャップ14側の壁面11(第1の壁面の一例)と、下のキャップ14の上面となる電極10側の壁面13(第2の壁面の一例)とは、電子ビームカラム102内に配置され、互いに非接触で、平行ではない角度で面同士が対向する。そして、対向する面同士の間の距離が広い方が電子ビーム200の軌道上の空間Aに露出する。壁面11は、水平方向に対して傾斜角αでテーパー状に形成される。壁面13は、水平方向に対して傾斜角βでテーパー状に形成される。言い換えれば、電子ビーム200の軌道上の空間Aから壁面11,13間の空間の奥に向かって壁面11,13間の空間が先細りするように壁面11,13が形成される。
【0044】
そして、絶縁体12は、電子ビームカラム102内に配置されると共に、対向する壁面11,13の間の距離が狭くなる側に配置される。そして、絶縁体12は、対向する壁面11,13の間の距離が狭くなる側で、壁面11,13の間を電気的に絶縁する。また、絶縁体12は、電子ビームカラム102内から壁面11,13の間を介して続く空間に露出される。
【0045】
また、上のキャップ16は、電極10の上面と平行ではない角度で対向する下面を有する。具体的には、上のキャップ16の下面となる電極10側の壁面17(第1の壁面の他の一例)と、電極10の上面となる上のキャップ16側の壁面15(第2の壁面の他の一例)とは、電子ビームカラム102内に配置され、互いに非接触で、平行ではない角度で面同士が対向し、対向する面同士の間の距離が広い方が電子ビーム200の軌道上の空間Aに露出する。壁面17は、水平方向に対して例えば傾斜角αでテーパー状に形成される。壁面15は、水平方向に対して例えば傾斜角βでテーパー状に形成される。言い換えれば、電子ビーム200の軌道上の空間Aから壁面15,17間の空間の奥に向かって壁面15,17間の空間が先細りするように壁面15,17が形成される。
【0046】
そして、絶縁体12は、電子ビームカラム102内に配置されると共に、対向する壁面15,17の間の距離が狭くなる側に配置される。そして、絶縁体12は、対向する壁面15,17の間の距離が狭くなる側で、壁面15,17の間を電気的に絶縁する。また、絶縁体12は、電子ビームカラム102内から壁面15,17の間を介して続く空間に露出される。
【0047】
図4の例では、例えば、電極10と下のキャップ14との間の空間に反射電子300が侵入する場合について説明する。電子ビーム200で試料101(物体の一例)が照射されることによって反射電子300が放出される。放出された反射電子300は、対向する壁面11,13の間の距離が広い方から入射角θで壁面11,13の間に侵入する。実施の形態1において、電極10と下のキャップ14は、電極10の下面と下のキャップ14の上面との間に侵入する反射電子300の通路を絶縁体12に向かって狭めるように形成される。具体的には、図4に示すように、壁面11,13が、絶縁体12に向かって壁面11,13の間の反射電子300の通路を狭めるように配置される。侵入した反射電子300は、壁面11,13に衝突しながら壁面11,13間の空間を進む。反射電子300が壁面11(或いは壁面13)に衝突する度に壁面11(或いは壁面13)から放射状に改めて反射電子が放出される。図4の例では、衝突点から放射状に放出される反射電子のうち、壁面11(或いは壁面13)に対して入射角と反射角と同じになる鏡面反射と同様の方向に放出される反射電子300の軌道を示す。かかる方向に放出される反射電子300が最もエネルギーが大きい。その他の方向に放出される反射電子はエネルギーが小さく、衝突を繰り返すことでさらにエネルギーが小さくなるので帯電への影響が無視できる程度となる。よって、説明を省略する。
【0048】
例えば、上のキャップ16と電極10との間の空間に反射電子300が侵入する場合についても同様である。実施の形態1において、電極10と上のキャップ16は、電極10の上面と上のキャップ16の下面との間に侵入する反射電子300の通路を絶縁体12に向かって狭めるように形成される。
【0049】
ここで、壁面11,13間の空間に侵入した反射電子300を絶縁体12に到達させないためには、以下のケース1,2の構成が好適である。また、反射電子300が絶縁体12に到達してしまう場合でも、そのエネルギーを減衰させるためには、以下のケース3の構成が好適である。各ケースについて、以下、具体的に説明する。
【0050】
(ケース1)
図5は、実施の形態1における壁面の傾斜角の一例と反射電子の侵入の様子とを説明するための図である。図5では、電極10と下のキャップ14と絶縁体12とホルダ18とのそれぞれ断面の一部を示している。上のキャップ16の断面は図示を省略している。図5の例では、反射電子300が最初に衝突する壁面11の傾斜角αが、反射電子300が侵入する入射角θ以上の場合を示している。この場合、反射電子300が最初に壁面11に衝突した時点で、反射電子300は元の空間にはじき返される。よって、ケース1では、壁面11,13のうち、反射電子300が壁面11,13の間に侵入して最初に衝突する壁面11の傾斜角αが、反射電子300の入射角θよりも大きい関係になるように、壁面11,13を配置する。これにより、反射電子300を絶縁体12に到達させないようにできる。
【0051】
(ケース2)
図6は、実施の形態1における壁面の傾斜角の他の一例と反射電子の侵入の様子とを説明するための図である。図6では、電極10と下のキャップ14と絶縁体12とホルダ18とのそれぞれ断面の一部を示している。上のキャップ16の断面は図示を省略している。図6の例では、壁面11,13のうち、反射電子300が壁面11,13の間に侵入して最初に衝突する壁面11の傾斜角αが反射電子300の入射角θよりも小さい関係である。図6において、反射電子300が侵入を開始する壁面11,13の間の距離Bと壁面11,13の対向する長さHが示されている。
【0052】
図7は、実施の形態1における反射電子の侵入モデルの一例を示す図である。図7において、各パラメータは以下のように定義される。
反射電子300が侵入を開始する壁面11,13の間の距離(開口幅):B
壁面11,13の対向する長さ(高さ):H
最初に衝突する壁面11の傾斜角:α
次に衝突する壁面13の傾斜角:β
ここで、壁面傾斜角αおよびβの台形状の壁面11,13間の空間を左右両壁面で繰り返し折り返すと左右両壁面の延長線の交点Oを中心に図7のように展開される。
壁面11,13間の空間に反射電子300が角度θで入射し、鏡面反射を繰り返す反射電子の軌道は展開図では1本の直線で表され、総反射回数は2θ/(α+β)となる。
ここで、点Oから壁面11,13間の空間までの距離:r
点Oから反射電子300の展開軌道直線に下した垂線の長さ:R
とすると、距離rは、以下の式(1)で定義できる。
(1) r=B/(tanα+tanβ)-H
【0053】
また、長さRは、以下の式(2)で定義できる。
(2) R=Bcosθ/(tanα+tanβ)
【0054】
ここで、反射電子300の軌道が壁面11,13間の空間の高さHを超えないためには、次の式(3)を満たせばよい。
(3) r<R
【0055】
よって、式(3)を式(1)と式(2)を用いて変形した式(4)を満たせばよい。
(4) (tanα+tanβ)>B(1-cosθ)/H
【0056】
式(4)を満たす範囲で(α+β)の最小値を取るとき、総反射回数2θ/(α+β)は最大となる。
【0057】
そこで、ケース2では、式(4)を満たすように、壁面11の傾斜角αの正接(tanα)と壁面13の傾斜角βの正接(tanβ)との和が、1から反射電子300の入射角θの余弦(cosθ)を差し引いた差分に反射電子300が侵入を開始する壁面11,13の間の距離Bを乗じ、壁面11,13の対向する長さHで割った値より大きい関係になるように、壁面11,13を配置する。これにより、総反射回数2θ/(α+β)の反射を行った後、反射電子300は元の空間に戻される。よって、反射電子300を絶縁体12に到達させないようにできる。
【0058】
(ケース3)
図8は、実施の形態1における壁面の傾斜角の他の一例と反射電子の侵入の様子とを説明するための図である。図8では、電極10と下のキャップ14と絶縁体12とホルダ18とのそれぞれ断面の一部を示している。上のキャップ16の断面は図示を省略している。図8の例では、壁面11,13のうち、反射電子300が壁面11,13の間に侵入して最初に衝突する壁面11の傾斜角αが反射電子300の入射角θよりも小さい関係である。図8において、反射電子300が侵入を開始する壁面11,13の間の距離Bと壁面11,13の対向する長さHが示されている。
【0059】
但し、図8では、以下の式(5)を満たす関係となる。
(5) (tanα+tanβ)≦B(1-cosθ)/H
【0060】
かかる関係では、r>Rとなり、反射電子300の軌道が壁面11,13間の空間の高さHを超える。しかし、傾斜角α,βを有する壁面11,13により、反射電子300の反射回数(衝突回数)が平行平板の空間に比べて多くなる。反射電子300は、反射(衝突)の度にエネルギーを減衰する。壁面11,13の電子吸収率をa、総反射回数をnとすると、反射電子は(1-a)倍に減衰する。よって、反射回数(衝突回数)を多くすることで、絶縁体12に到達する反射電子300のエネルギーを小さくできる。
【0061】
そこで、ケース3では、式(5)を満たすように、壁面11の傾斜角αの正接と壁面13の傾斜角βの正接との和が、1から反射電子300の入射角θの余弦を差し引いた差分に反射電子300が侵入を開始する壁面11,13の間の距離Bを乗じ、壁面11,13の対向する長さHで割った値以下の関係になるように、壁面11,13を配置する。これにより、反射電子300は絶縁体12に到達するものの、絶縁体12に到達する反射電子300のエネルギーを小さくできる。よって、帯電による放電が生じるまでの期間を長くすることができる。
【0062】
反射電子300が壁面15,17の間に侵入する場合、最初に衝突する壁面17の傾斜角をα、次に衝突する壁面15の傾斜角をβとして、同様に、上述したケース1~3に適用できる。
【0063】
電子ビーム200で試料101を照射することにより放出される反射電子300が侵入する部品は、静電レンズ214に限るものではない。例えば、偏向器204に反射電子300が侵入する場合もある。偏向器204を構成する絶縁体の帯電量が一定量を超えると放電し、電子ビーム200の軌道上の空間Aの電場を乱すことになる。これにより、電子ビーム200が影響を受け、電子ビーム200の軌道にずれが生じる。その結果、描画精度が劣化してしまう。
【0064】
そこで、実施の形態1の変形例では、偏向器204内に侵入した反射電子300が絶縁体に到達することを防止する。或いは、到達する場合でも反射電子300のエネルギーを減衰させた上で到達させる。以下、具体的に説明する。
【0065】
図9は、実施の形態1の変形例における偏向器の断面構成の一例と反射電子の侵入の様子とを説明するための図である。
図10は、実施の形態1の変形例における偏向器のCC断面の構成の一例を示す上面断面図である。図9及び図10において、偏向器204は、2極子以上の複数の電極30(電極の他の一例である)と、導電性の上のキャップ36と、導電性の下のキャップ34と、ホルダ38(連結部材)と、複数の絶縁体32と、を有する。図9及び図10の例では、複数の電極30が、例えば、8極子の電極で構成される場合を示している。
【0066】
複数の電極30は、電子ビームカラム102内に配置され、厚さが中心に向かって細くなるように形成される。また、図9の例では、複数の電極30は、上面及び下面ともに中心に向かって先細りする形状に形成される場合を示している。但し、これに限るものではない。例えば、上面は水平のまま、下面が中心に向かって上方に斜面を形成するように構成しても構わない。図9及び図10に示すように、複数の電極30は、電子ビーム200の軌道中心軸に対して軸対称に位相をずらして配置される。複数の電極30には、それぞれ図示しないDACアンプを介して偏向制御回路130に接続される。そして、電子ビーム200の偏向量に応じた個別の電位が各電極30に印加される。
【0067】
上のキャップ36は、電子ビームカラム102内で、複数の電極30の上方に離間して配置される。そして、上のキャップ36は、複数の電極30の上面と平行ではない角度で対向する少なくとも1つの下面を有する。上のキャップ36は、上方から見た場合に正8角形のつば部を有する。正8角形のつば部は、断面が正8角形の筒状のホルダ38と例えば同じサイズに形成される。そして、上のキャップ36は、断面が正8角形の筒状のホルダ38を上方から例えばホルダ38全体に蓋をするように形成される。上のキャップ36の下面は、例えば、円錐台の斜面のように外周側から内周側に向かって厚さが小さくなるようにテーパー形状に形成される。なお、上のキャップ36とホルダ38は、それぞれ別部品である必要はなく、同一素材からの削り出し加工により一体化形成された部品でもよい。
【0068】
下のキャップ34は、電子ビームカラム102内で、複数の電極30の下方に離間して配置される。そして、下のキャップ34は、複数の電極30の下面と平行ではない角度で対向する少なくとも1つの上面を有する。下のキャップ34は、下方から見た場合に正8角形のつば部を有する。正8角形のつば部は、断面が正8角形の筒状のホルダ38と例えば同じサイズに形成される。そして、下のキャップ34は、断面が正8角形の筒状のホルダ38を下方から例えばホルダ38全体に蓋をするように形成される。下のキャップ34の上面は、例えば、円錐台の斜面のように外周側から内周側に向かって厚さが小さくなるようにテーパー形状に形成される。なお、下のキャップ34とホルダ38は、それぞれ別部品である必要はなく、同一素材からの削り出し加工により一体化形成された部品でもよい。
【0069】
図11は、実施の形態1の変形例における下のキャップの他の一例を示す上面図である。図10の例では、下のキャップ34は、筒状のホルダ38を下方から例えばホルダ38全体に蓋をするように形成する場合を示したがこれに限るものではない。図11の例では、下のキャップ34は、正8角形の外周枠37と、外周枠37から中心に向かって例えば8つの凸部39とを有する。8つの凸部39は、複数の電極30と同じ幅サイズ及び中心方向へ同じ長さで形成される。8つの凸部39は、複数の電極30と同じ位相で配置される。かかる構成では、下のキャップ34は、複数の電極30の下面と平行ではない角度で対向する8つの上面を有する。
【0070】
また、図10の例では、上のキャップ36は、断面が正8角形の筒状のホルダ38を上方から例えばホルダ38全体に蓋をするように形成される場合を示したがこれに限るものではない。図11の例では、上のキャップ36を下方から見た場合の他の一例にも相当する。この場合、上のキャップ36は、下のキャップ34と同様、正8角形の外周枠37と、外周枠37から中心に向かって例えば8つの凸部39とを有することになる。8つの凸部39は、複数の電極30と同じ幅サイズ及び中心方向へ同じ長さで形成される。上のキャップ36の8つの凸部39は、複数の電極30と同じ位相で配置される。かかる構成では、上のキャップ36は、複数の電極30の上面と平行ではない角度で対向する8つの下面を有する。
【0071】
図9図11において、ホルダ38は、電子ビームカラム102内で、上のキャップ36と下のキャップ34とを外周側で支持し、上のキャップ36と下のキャップ34とを電気的に接続する。また、ホルダ38の外周面を構成する8つの面の中央部にそれぞれ中心に向かって開口部が形成される。上のキャップ36及び下のキャップ34には、ホルダ38を介してグランド電位(GND)に接続される。言い換えれば、上のキャップ36及び下のキャップ34は、地絡される。なお、なお、下のキャップ34、上のキャップ36とホルダ38は、それぞれ別部品である必要はなく、同一素材からの削り出し加工により一体化形成された部品でもよい。
【0072】
図9図11において、複数の絶縁体32は、電子ビームカラム102内で、ホルダ38の外周側でホルダ38に接続する。そして、複数の絶縁体32は、さらに複数の電極30のそれぞれ対応する1つに接続する。具体的には、ホルダ38の外周面を構成する8つの面の各開口部にそれぞれ電極30が差し込まれる。各電極30の外側端部はそれぞれ対応する絶縁体32に固定される。そして、各絶縁体32は、ホルダ38の外周面を構成する8つの面の開口部を塞ぐようにホルダ38の外周側からホルダ38の外周面を構成する8つの面のうち対応する面に固定される。複数の絶縁体32は、複数の電極30のそれぞれ対応する1つとホルダ38とを絶縁する。そのために、各絶縁体32は、接続され電極30がホルダ38に接触しないように電極30とホルダ38とを離間して配置する。
【0073】
そして、図9に示すように、複数の電極30と下のキャップ34は、複数の電極30の下面と下のキャップ34の少なくとも1つの上面との間に侵入する反射電子300の通路をそれぞれの対応する絶縁体32に向かって狭めるように形成される。言い換えれば、電子ビーム200の軌道上の空間Aから電極30の下面となる壁面31(第1の壁面の他の一例)と下のキャップ34の上面となる壁面33(第2の壁面の他の一例)との間の空間の奥に向かって壁面31,33間の空間が先細りするように壁面31,33が形成される。
【0074】
同様に、複数の電極30と上のキャップ36は、複数の電極30の上面と上のキャップ36の少なくとも1つの下面との間に侵入する反射電子300の通路をそれぞれの対応する絶縁体32に向かって狭めるように形成される。言い換えれば、電子ビーム200の軌道上の空間Aから上のキャップ36の下面となる壁面37(第1の壁面の他の一例)と電極30の上面となる壁面35(第2の壁面の他の一例)との間の空間の奥に向かって壁面35,37間の空間が先細りするように壁面35,37が形成される。
【0075】
ここで、上述した静電レンズ214の場合と同様、壁面31,33間の空間に侵入した反射電子300を絶縁体32に到達させないためには、上述したケース1,2の構成が好適である。また、反射電子300が絶縁体32に到達してしまう場合でも、そのエネルギーを減衰させるためには、上述したケース3の構成が好適である。
【0076】
ケース1では、壁面31,33のうち、反射電子300が壁面31,33の間に侵入して最初に衝突する壁面31の傾斜角αが、反射電子300の入射角θよりも大きい関係になるように、壁面31,33を配置する。これにより、反射電子300を絶縁体32に到達させないようにできる。
【0077】
ケース2では、壁面31,33のうち、反射電子300が壁面31,33の間に侵入して最初に衝突する壁面31の傾斜角αが反射電子300の入射角θよりも小さい関係である。図9において、反射電子300が侵入を開始する壁面31,33の間の距離Bと壁面31,33の対向する長さHが示されている。
【0078】
図9において、各パラメータは以下のように定義される。
反射電子300が侵入を開始する壁面31,33の間の距離(開口幅):B
壁面31,33の対向する長さ(高さ):H
最初に衝突する壁面31の傾斜角:α
次に衝突する壁面33の傾斜角:β
【0079】
ケース2では、上述したように、式(4)を満たせばよい。式(4)を満たす範囲で(α+β)の最小値を取るとき、総反射回数2θ/(α+β)は最大となる。これにより、総反射回数2θ/(α+β)の反射を行った後、反射電子300は元の空間に戻される。よって、反射電子300を絶縁体12に到達させないようにできる。
【0080】
ケース3では、壁面31,33のうち、反射電子300が壁面31,33の間に侵入して最初に衝突する壁面31の傾斜角αが反射電子300の入射角θよりも小さい関係である。そして、ケース3では、上述したように、式(5)を満たす関係となる。
【0081】
かかる関係では、r>Rとなり、反射電子300の軌道が壁面31,33間の空間の高さHを超える。しかし、傾斜角α,βを有する壁面31,33により、反射電子300の反射回数(衝突回数)が平行平板の空間に比べて多くなる。反射電子300は、反射(衝突)の度にエネルギーを減衰する。よって、反射回数(衝突回数)を多くすることで、絶縁体32に到達する反射電子300のエネルギーを小さくできる。よって、ケース3では、帯電による放電が生じるまでの期間を長くすることができる。
【0082】
反射電子300が壁面35,37の間に侵入する場合、最初に衝突する壁面37の傾斜角をα、次に衝突する壁面35の傾斜角をβとして、同様に、上述したケース1~3に適用できる。
【0083】
上述した例では、電子ビーム200の軌道中心軸の方向(-z方向)に対して直交する例えばx方向に先細りする空間内を反射電子300が進む場合を説明したが、これに限るものではない。
【0084】
図12は、実施の形態1における制限アパーチャ機構の断面構成の一例と反射電子の侵入の様子とを説明するための図である。
図13は、実施の形態1における制限アパーチャ機構の構成の一例の上面図である。図12及び図13において、制限アパーチャ機構212は、導電性のアパーチャ基板21と、導電性のアパーチャホルダ20と、導電性のリング26と、リングホルダ28(連結部材)と、絶縁体22と、を有する。制限アパーチャ基板21は、例えば円盤状に形成される。制限アパーチャ基板21には、中央部に電子ビーム200が通過するための円形の開口部4が形成される。アパーチャホルダ20は、例えばリング状に形成される。絶縁体22は、例えばリング状に形成される。リングホルダ28は、例えばリング状に形成される。アパーチャ基板21、アパーチャホルダ20、リング26、リングホルダ28、及び絶縁体22は、電子ビーム200の軌道中心軸に対して、軸対称に形成される。図12では、断面のうち右側部分を示している。断面のうちの左側の部分の図示を省略している。
【0085】
アパーチャ基板21は、電子ビームカラム102内に配置され、図12及び図13に示すように、電子ビーム200のうち開口部3から外れた電子を遮蔽する。アパーチャ基板21には、図示しない電源装置から所望の電位が印加されても好適である。
【0086】
アパーチャホルダ20は、アパーチャ基板21の上面外周部に接続され、厚さが下方に向かって細くなるように形成される。アパーチャホルダ20は、アパーチャ基板21と電気的に接続される。
【0087】
リング26は、電子ビームカラム102内で、アパーチャホルダ20の内周側に離間して配置され、アパーチャホルダ20の内周面と平行ではない角度で対向する外周面を有する。
【0088】
リングホルダ28は、リング26上方でリング26と連結しリング26を支持する。リングホルダ28は、リング26と電気的に接続される。リングホルダ28は、内周面の径サイズがリング26の内径と同サイズに形成されると好適である。また、外周面の径サイズが絶縁体22の外径と同サイズに形成されると好適である。リング26には、リングホルダ28を介してグランド電位(GND)に接続される。言い換えればリング26は、地絡される。リングホルダ28とリング26は、一体で形成されても好適である。
【0089】
絶縁体22は、電子ビームカラム102内で、リングホルダ28とアパーチャホルダ20との間に配置され、リングホルダ28とアパーチャホルダ20との間を絶縁する。言い換えれば、リング26と絶縁体22はリングホルダ28によって連結される。リングホルダ28は、リング26と絶縁体22を連結する連結部材として機能する。
【0090】
開口部3から外れた電子ビーム200でアパーチャ基板21(物体の他の一例)を照射することによって反射電子300が放出される。例えば、図示しない偏向器により電子ビーム200がアパーチャ基板21よりも電子ビーム軌道の上流側で偏向されることによって電子ビーム200がブランキングされた場合が挙げられる。或いは、電子ビームの軌道中心軸にずれが生じていた場合に、電子ビーム200の少なくとも一部が開口部3から外れることもあり得る。
ここで、例えば、リング26が無い状態では、絶縁体22が電子ビーム200の軌道上の空間Aに直接露出しているので、反射電子300が絶縁体22に到達する。その結果、絶縁体22が帯電してしまう。そこで、絶縁体22が帯電しないように、絶縁体22の内側に絶縁体22を空間Aから隠すようにリング26が配置される。リング26は遮蔽部材として機能する。
【0091】
制限アパーチャ基板21及びアパーチャホルダ20は、絶縁体22によりリング26から絶縁される。言い換えれば、アパーチャホルダ20のリング26側の壁面23(第1の壁面の一例)とリング26のアパーチャホルダ20側の壁面25(第2の壁面の一例)とは、互いに非接触に配置される。また、かかる壁面同士の間は、絶縁体22により電気的に絶縁される。
【0092】
ここで、上述したように、電子ビーム200で制限アパーチャ基板21(物体の他の一例)が照射されることによって反射電子300が放出される。放出された反射電子300は、所定の入射角度で、アパーチャホルダ20とリング26との間の空間に侵入する。その際、アパーチャホルダ20とリング26との対向する面同士が平行に配置される場合、反射電子300は、アパーチャホルダ20とリング26との間の空間を通路として壁面への衝突を繰り返しながら上方へ進む。そして、反射電子300は、絶縁体22に到達し、絶縁体22を帯電させる。そして、絶縁体22の帯電量が一定量を超えると放電し、電子ビーム200の軌道上の空間Aの電場を乱すことになる。これにより、電子ビーム200が影響を受け、電子ビーム200の軌道にずれが生じる。その結果、その結果、描画精度が劣化してしまう。
【0093】
そこで、実施の形態1では、アパーチャホルダ20とリング26との間の空間に侵入した反射電子300が絶縁体22に到達することを防止する。或いは、到達する場合でも反射電子300のエネルギーを減衰させた上で到達させる。
【0094】
図12において、アパーチャホルダ20とリング26は、アパーチャホルダ20の内周面とリング26の外周面との間に侵入する反射電子300の通路を絶縁体22に向かって狭めるように形成される。具体的には、アパーチャホルダ20の壁面23(第1の壁面の他の一例)と、リング26の壁面25(第2の壁面の他の一例)とは、電子ビームカラム102内に配置され、互いに非接触で、平行ではない角度で面同士が対向する。そして、対向する面同士の間の距離が広い方が電子ビーム200の軌道上の空間Aに露出する。壁面23は、高さ方向(z方向)に対して傾斜角αでテーパー状に形成される。壁面25は、高さ方向に対して傾斜角βでテーパー状に形成される。言い換えれば、電子ビーム200の軌道上の空間Aから壁面23,25間の空間の奥に向かって壁面23,25間の空間が先細りするように壁面23,25が形成される。図12では、壁面23,25間の空間がz方向に先細りする場合を示している。
【0095】
そして、絶縁体22は、電子ビームカラム102内に配置されると共に、対向する壁面23,25の間の距離が狭くなる側に配置される。そして、絶縁体22は、対向する壁面23,25の間の距離が狭くなる側で、壁面23,25の間を電気的に絶縁する。また、絶縁体22は、電子ビームカラム102内から壁面23,25の間を介して続く空間に露出される。
【0096】
電子ビーム200で制限アパーチャ基板21が照射されることによって放出された反射電子300は、対向する壁面23,25の間の距離が広い方から入射角θで壁面23,25の間に侵入する。実施の形態1では、図12に示すように、壁面23,25が、絶縁体22に向かって壁面23,25の間の反射電子300の通路を狭めるように配置される。侵入した反射電子300は、壁面23,25に衝突しながら壁面23,25間の空間を進む。反射電子300が壁面23(或いは壁面25)に衝突する度に壁面23(或いは壁面25)から放射状に改めて反射電子が放出される。図12の例では、衝突点から放射状に放出される反射電子のうち、壁面23(或いは壁面25)に対して入射角と反射角とが同じになる最もエネルギーが大きい方向に放出される反射電子300の軌道を示す。その他の方向に放出される反射電子はエネルギーが小さく、衝突を繰り返すことでさらにエネルギーが小さくなるので帯電への影響が無視できる程度となる。よって、説明を省略する。
【0097】
ここで、壁面23,25間の空間に侵入した反射電子300を絶縁体22に到達させないためには、上述したケース1,2の関係になるように、壁面23,25を配置する。また、反射電子300が絶縁体22に到達してしまう場合でも、そのエネルギーを減衰させるためには、上述したケース3の関係になるように、壁面23,25を配置する。
【0098】
以上のように、実施の形態1によれば、電子ビームカラム102内の絶縁体12(22)の帯電を抑制或いは低減できる。よって、高精度なビーム照射ができる。その結果、高精度に描画できる。
【0099】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。上述した例では、シングルビームの電子ビームを用いたが、これに限るものではない。電子ビームによるマルチビームを用いた照射装置(描画装置)であっても良い。
【0100】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0101】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての電子線照射装置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0102】
3,4,5,6,7 開口部
10 電極
11,13,15,17 壁面
12 絶縁体
14 下のキャップ
16 上のキャップ
18 ホルダ
20 アパーチャホルダ
21 制限アパーチャ基板
22 絶縁体
23,25 壁面
26 リング
28 リングホルダ
30 電極
31,33,35,37 壁面
32 絶縁体
34 下のキャップ
36 上のキャップ
38 ホルダ
100 描画装置
101 試料
102 電子ビームカラム
103 描画室
105 ステージ
110 制御計算機
112 メモリ
120 バス
124 レンズ制御回路
130 偏向制御回路
140 記憶装置
150 描画機構
160 制御系回路
201 電子銃
202 照明レンズ
204 偏向器
206 対物レンズ
212 制限アパーチャ機構
214 静電レンズ
300 反射電子
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
図12
図13