(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070630
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20240516BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240516BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
H02G3/16
B60R16/02 610D
H05K7/20 Y
H05K7/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181248
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】富松 修二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 旭
【テーマコード(参考)】
5E322
5G361
【Fターム(参考)】
5E322BA01
5E322EA10
5E322FA02
5G361BA03
5G361BA06
5G361BB01
5G361BC01
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で、熱から電子部品を保護することができる電気接続箱を提供することを目的とする。
【解決手段】箱状のケース体10の内部にバスバー32とECU20とが配置されている。そして、ケース体10の内部において、バスバー32とECU20との間に配置され、導電されたバスバー32から発せられた熱のECU20への伝播を抑制する板状の板状部材40が備えられているジャンクションボックス1である。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状のケース体の内部に回路配線体と電子部品とが配置された電気接続箱であって、
前記ケース体の内部において、前記回路配線体と前記電子部品との間に配置され、導電された前記回路配線体から発せられた熱の前記電子部品への伝播を抑制する板状の遮熱部材が備えられた
電気接続箱。
【請求項2】
前記遮熱部材は、外縁が前記ケース体の内面に沿って形成された
請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記ケース体は、
開口を有する第1ケース体と、
開口を有する第2ケース体とが備えられ、
前記開口同士が対向するように前記第1ケース体と前記第2ケース体とを組み付けて箱状を形成し、
前記電子部品が前記第1ケース体に配置されるとともに、
前記回路配線体が前記第2ケース体に配置され、
前記遮熱部材が、前記第1ケース体と前記第2ケース体との間に配置された
請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記第1ケース体及び前記第2ケース体の少なくとも一方に、
外部と内部とを連通する通気口が設けられた
請求項3に記載の電気接続箱。
【請求項5】
前記第1ケース体に、前記通気口が設けられた
請求項4に記載の電気接続箱。
【請求項6】
前記第1ケース体及び前記第2ケース体の少なくとも一方の内部において、前記電子部品に対して所定間隔を隔てて配索される電線と、
該電線の一端部に接続されたケース側コネクタと、
前記電線の他端部に前記遮熱部材における前記第1ケース体の側で保持されるコネクタが備えられ、
該ケース側コネクタは、少なくとも一部が前記ケース体の外部に突出する
請求項3に記載の電気接続箱。
【請求項7】
前記第2ケース体に前記遮熱部材を固定する固定部材が設けられた
請求項6に記載の電気接続箱。
【請求項8】
前記第1ケース体に配索される前記電線は、前記遮熱部材に沿って配索された
請求項6に記載の電気接続箱。
【請求項9】
前記遮熱部材が、樹脂製である
請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載の電気接続箱。
【請求項10】
前記ケース体の内部において、前記電子部品に対して所定間隔を隔てて配索される電線と、
該電線の一端部に接続されたケース側コネクタとが備えられ、
該ケース側コネクタは、少なくとも一部が前記ケース体の外部に突出する
請求項1又は請求項2に記載の電気接続箱。
【請求項11】
前記電線は、前記遮熱部材に沿って配索された
請求項10に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、箱状のケース体の内部に電子部品が配置された電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されている電気機器類は、ワイヤーハーネスを介して電気接続箱と電気的に接続されている。前記電気接続箱の内部には、エンジンコントロールユニット(ECU)などのように、熱の影響を受けやすい電子部品が配置されていることがある。
【0003】
このような熱の影響を受けやすい電子部品を保護するため、例えば、特許文献1に開示されている電気接続箱では、発熱する回路配線体が収容されたケース体の内部に、ケース体の内壁と所定の間隔を隔てて側壁が配置されるように、前記電子部品を収容した箱状の収容体を収容している。これにより、ケース体と収容体との間に空気層が設けられ、前記電子部品に対する熱の影響を抑制できるとされている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている電気接続箱では、前記電子部品を収容する収容体を、前記回路配線体を収容する前記ケース体に収容するため、構造が複雑になることから、より簡易な構造で、前記回路配線体の発する熱から前記電子部品を保護することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこでこの発明は、簡易な構造で、熱から電子部品を保護することができる電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、箱状のケース体の内部に回路配線体と電子部品とが配置された電気接続箱であって、前記ケース体の内部において、前記回路配線体と前記電子部品との間に配置され、導電された前記回路配線体から発せられた熱の前記電子部品への伝播を抑制する板状の遮熱部材が備えられたことを特徴とする。
【0008】
前記電子部品は、熱により寿命が短くなったり、性能が劣化したりするなど、熱の影響を受けやすい電子部品である。すなわち、前記電子部品は、熱の影響で機械的及び機能的に劣化するものをさす。例えば、前記電子部品は、エンジンコントロールユニット(ECU)や他の制御機器類などに備えられた電子部品の他、電子部品を備えた電子機器類そのものも含む。
前記回路配線体とは、所定の電気回路を形成し、導電により発熱する部材であり、例えば、ケース体に配置された機器類とともに回路を形成するバスバーや電線なども含む。
【0009】
前記遮熱部材は、前記回路配線体と前記電子部品との間において、導電された前記回路配線体から発せられた熱が前記電子部品の側に伝播することを抑制できる板状体であり、一面が平らな平板状や、部分的に凹凸が形成されている板状などを含む。また前記遮熱部材は、例えば、発泡体や多孔質体を含む樹脂部材、グラスウールなどのガラス材やセルロースファイバーなど、熱伝導率の低い部材を材質としていてもよい。
【0010】
この発明によると、板状の前記遮熱部材を前記電子部品と前記回路配線体との間に配置するだけで、導電された前記回路配線体が発する熱を前記遮熱部材で遮ることができ、前記電子部品の側に熱が伝播することを抑制できる。したがって、前記回路配線体が発する熱に前記電子部品が曝らされることを抑制できる。このように、前記回路配線体と前記電子部品との間に板状の前記遮熱部材を配置するだけといった簡易な構造で、導電された前記回路配線体が発する熱から電子部品を保護することができる。
【0011】
この発明の態様として、前記遮熱部材は、外縁が前記ケース体の内面に沿って形成されてもよい。
上述の外縁が前記ケース体の内面に沿うとは、前記遮熱部材の外縁全周が前記ケース体の内面に沿う場合のみならず、前記遮熱部材の外縁の一部分を除いて前記ケース体の内面に沿う場合を含む。なお、前記外縁の一部と前記ケース体の内面との間には、間隔が設けられていてもよい。
【0012】
この発明によると、前記ケース体の内部における前記電子部品の配置された領域と前記回路配線体の配置された領域とに略分断することができるため、前記回路配線体から発せられる熱が前記ケース体における前記電子部品の側に伝播することをより抑制できる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記ケース体は、開口を有する第1ケース体と、開口を有する第2ケース体とが備えられ、前記開口同士が対向するように前記第1ケース体と前記第2ケース体とを組み付けて箱状を形成し、前記電子部品が前記第1ケース体に配置されるとともに、前記回路配線体が前記第2ケース体に配置され、前記遮熱部材が、前記第1ケース体と前記第2ケース体との間に配置されてもよい。
【0014】
この発明により、前記第1ケース体と前記第2ケース体の前記開口同士が対向するように、前記第1ケース体と前記第2ケース体とを組み付けるだけの簡易な構造で、前記電子部品と前記回路配線体との間に前記遮熱部材を簡易に配置することができる。また、前記第1ケース体に前記電子部品を配置させ、前記第1ケース体とは異なる前記第2ケース体に前記回路配線体を配置させることができるため、誤組み付けすることなく前記電子部品と前記回路配線体をケース体の所定の位置に配置できる。これにより、前記電子部品と前記回路配線体を前記ケース体に配置する配置作業の作業効率を向上させることができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記第1ケース体及び前記第2ケース体の少なくとも一方に、外部と内部とを連通する通気口が設けられてもよい。
この発明により、前記ケース体の内部の熱を外部に排出することができるとともに、内部に外気を吸入することができる。すなわち、前記回路配線体から発せられる熱を外部に排出し、前記電子部品を熱から保護することができる。また、外気を吸引することでケース体の内部の温度と外気との温度差を小さくすることで、結露が生じることを抑制できる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記第1ケース体に、前記通気口が設けられてもよい。
この発明により、前記電子部品が配置されている前記第1ケース体に伝播した熱を外部に排出することができるため、前記第1ケース体の内部が高温となることをより抑制できる。したがって、前記回路配線体から発せられる熱から前記電子部品をより保護することができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記第1ケース体及び前記第2ケース体の少なくとも一方の内部において、前記電子部品に対して所定間隔を隔てて配索される電線と、該電線の一端部に接続されたケース側コネクタと、前記電線の他端部に前記遮熱部材における前記第1ケース体の側で保持されるコネクタが備えられ、該ケース側コネクタは、少なくとも一部が前記ケース体の外部に突出してもよい。
【0018】
この発明により、前記第2ケース体の内部において、前記回路配線体が発する熱が前記電線に伝播することにより前記電線に生じる熱、あるいは、前記電線の導電により前記電線に生じる熱を、前記ケース側コネクタを介して外部に排出することができる。これにより、前記ケース体の内部が高温となることを抑制できる。
【0019】
また、前記コネクタが前記遮熱部材における前記第1ケース体の側に配置されているため、前記回路配線体から生じる熱が前記コネクタに影響することを抑制できる。これにより、コネクタを介した前記電線と他の電線との電気的な接続を安定化させることができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記第2ケース体に前記遮熱部材を固定する固定部材が設けられてもよい。
この発明によると、前記コネクタが前記第1ケース体の側に配置されている前記遮熱部材を前記第2ケース体に固定した後に、前記第2ケース体に備えられた電線の端部に接続されたコネクタと、前記第1ケース体に備えられた前記電線の端部に接続されたコネクタとを容易に接続することができる。これにより、前記電子部品を熱から保護する前記遮熱部材の固定作業と、前記コネクタに他のコネクタを接続する接続作業とを効率的に行うことができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記第1ケース体に配索される前記電線は、前記遮熱部材に沿って配索されてもよい。
この発明により、前記第1ケース体に備えられた前記電線と前記電子部品との間に所定の間隔を設けることができるため、前記電線が発する熱による前記電子部品の損傷をより確実に抑制できる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記遮熱部材が、樹脂製であってもよい。
この発明によると、前記遮熱部材は断熱性及び絶縁性を有する樹脂製である。このため、導電された前記回路配線体から発せられた熱の伝播を確実に抑制できるとともに、前記回路配線体と接触することにより意図しない短絡を防止できる。また、前記樹脂が加工性に優れている場合には、コネクタを保持するコネクタ保持部などを容易に設けることができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記ケース体の内部において、前記電子部品に対して所定間隔を隔てて配索される電線と、該電線の一端部に接続されたケース側コネクタとが備えられ、該ケース側コネクタは、少なくとも一部が前記ケース体の外部に突出してもよい。
【0024】
この発明により、前記ケース体の内部において、前記回路配線体が発する熱が前記電線に伝播することにより前記電線に生じる熱、あるいは、前記電線への導通により前記電線に生じる熱を、前記ケース側コネクタを介して外部に排出することができる。これにより、前記ケース体の内部に熱が蓄積することを抑制できる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記電線は、前記遮熱部材に沿って配索されてもよい。
この発明により、前記電線と前記電子部品との間に所定の間隔を設けることができるため、前記電線が発する熱による前記電子部品の損傷をより確実に抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、簡易な構造で、熱から電子部品を保護することができる電気接続箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図11】ECUを配置させた第1ケース体と、回路形成部材を配置させた第2ケース体の概略斜視図。
【
図12】板状部材を固定した第2ケース体の説明図。
【
図13】コネクタホルダーにコネクタを保持させた状態の説明図。
【
図15】第1ケース体及びECUを透過させた状態のジャンクションボックス1の概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の一実施形態を、以下
図1乃至
図16とともに説明する。
図1はジャンクションボックス1を上側Hu及び先端側Lfから視た概略斜視図を示し、
図2はジャンクションボックス1の概略分解斜視図を示す。
図3は第1ケース11の説明図を示し、
図4は第2ケース12の説明図を示す。
図5は回路形成部材30の概略分解斜視図を示し、
図6は板状部材40の説明図を示し、
図7は第1接続体50の説明図を示し、
図8は第2接続体60の説明図を示し、
図9は第2ケース側コネクタ63の説明図を示す。
図10は第3接続体70の説明図を示す。
【0029】
図3、
図4、
図6乃至
図10について詳述する。
図3(a)は先端側Lf及び下側Hdから視た、内部にエンジンコントロールユニット20(以下、「ECU20」とする。)を組み付けた状態の第1ケース11の概略斜視図を示し、
図3(b)は先端側Lfから視た第1ケース11の正面図を示す。
図4(a)は先端側Lf及び上側Huから視た第2ケース12の概略斜視図を示し、
図4(b)は基端側Lb及び下側Hdから視た第2ケース12の概略斜視図を示し、
図4(c)は第2ケース12の平面図を示す。
【0030】
図6(a)は板状部材40の平面図を示し、
図6(b)はコネクタホルダー42の拡大平面図を示し、
図6(c)は
図6(b)におけるA-A矢視断面図を示す。
図7(a)は第1接続体50の概略平面図を示し、
図7(b)は保持された第1電線束51の延出方向と直交した方向から視た固定アンカー80の概略正面図を示す。
【0031】
図8(a)は第2接続体60の平面図を示し、
図8(b)は第2電線束61が接続されている第2コネクタ62の概略側面図を示し、
図8(c)は第2コネクタ62における短手方向の中央部分を長手方向に沿って切断した断面の概略断面図を示す。
図9(a)は第2ケース側コネクタ63を上側Huから視た平面図を示し、
図9(b)は第2ケース側コネクタ63を他端側から視た正面図を示す。
図10(a)は第3接続体70の平面図を示し、
図10(b)は第3ケース側コネクタ73の側面図を示し、
図10(c)は第3ケース側コネクタ73を他端側から視た正面図を示す。
【0032】
図11は第1接続体50及び第3接続体70が組み付けられた第1ケース11と、第2接続体60が組み付けられた第2ケース12の概略斜視図を示す。
図12は第2接続体60が組み付けられた第2ケース12に板状部材40を固定した状態の説明図を示す。
【0033】
図13はコネクタホルダー42に第2コネクタ62及び第1コネクタ52を保持させた状態の概略断面図を示し、
図14はコネクタ保持構造体90の説明図を示し、
図15は第1ケース11及びECU20を透過させた状態のジャンクションボックス1の概略斜視図を示す。
図16はジャンクションボックス1を通気口113に対応する箇所を高さ方向Hに沿った断面の模式図を示す。
【0034】
図11(a)はECU20、第1接続体50及び第3接続体70を組み付けた状態の第1ケース11を先端側Lf及び下側Hdから視た概略斜視図を示し、
図11(b)は回路形成部材30及び第2接続体60を組み付けた第2ケース12を先端側Lf及び上側Huから視た概略斜視図を示す。
図12(a)は回路形成部材30及び第2接続体60を組み付けた第2ケース12に板状部材40を固定した状態の概略斜視図を示し、
図12(b)は第2ケース12に板状部材40を固定した状態の概略平面図を示す。
【0035】
図13(a)はコネクタホルダー42に第2コネクタ62を係止する前の状態の断面図を示し、
図13(b)はコネクタホルダー42に第2コネクタ62を係止固定した状態の断面図を示し、
図13(c)はコネクタホルダー42に係止された第2コネクタ62と第1コネクタ52とを嵌合した状態の断面図を示す。ここで、
図13は
図6(a)におけるA-A矢視断面図に対応する概略断面図を示す。
図14(a)はコネクタ保持構造体90の概略斜視図を示し、
図14(b)はコネクタ保持構造体90の概略平面図を示す。
【0036】
ここで、
図1における上下方向を高さ方向Hとし、
図1において、ジャンクションボックス1の長手方向を奥行方向Lとする。高さ方向Hと奥行方向Lとは互いに直交する。また、奥行方向L及び高さ方向Hと直交する方向、すなわちジャンクションボックス1の短手方向を幅方向Wとする。そして、
図1において、奥行方向Lに沿って左方を先端側Lfとし、
図1における右方を基端側Lbとし、幅方向Wに沿って左方を左側Wlとし、右方を右側Wrとする。また、高さ方向Hに沿って上方を上側Huとし、下方を下側Hdとする。
【0037】
車両に搭載されているジャンクションボックス1は、高電圧バッテリと駆動用モーターインバーターの中間部分に配置されており、高電圧バッテリからの電圧の分配や、駆動用モーターインバーターなどの電気機器類への電源供給などを行っている。
【0038】
ジャンクションボックス1は、
図1及び
図2に示すように、内部に空間を有する箱状のケース体10で構成されている。ケース体10の内部には、ECU20と回路形成部材30とが配置されており、ECU20と回路形成部材30との間に板状部材40が固定されている。
【0039】
また、ケース体10には、ジャンクションボックス1の外部に搭載された電気機器類と、ケース体10の内部に配置されたECU20や回路形成部材30とを電気的に接続する第1接続体50、第2接続体60及び第3接続体70が備えられている。
【0040】
ケース体10は、
図1及び
図2に示すように、上側Huに配置される第1ケース11と、第1ケース11の下側Hdに組み付けて固定される第2ケース12とで構成されている。
第1ケース11は、
図3(a)に示すように、第2ケース12との組み付け状態において、第2ケース12の側(下側Hd)に略矩形状の開口を有する凹状の筐体である。すなわち、第1ケース11は、奥行方向L及び幅方向Wに沿った四辺を有する略矩形状の上面と、略矩形状に形成された上面の四辺から立設する側面とで構成されている。このように構成された第1ケース11の内部には、ECU20が配置される。
【0041】
第1ケース11の先端側Lfの側面には、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、第1接続体50及び第3接続体70の一部分(後述する第1ケース側コネクタ53及び第3ケース側コネクタ73の一部)が外部に突出できるように、板厚方向(図中の奥行方向L)に貫通させた二つの第1コネクタ挿通孔111と、第3コネクタ挿通孔112とが形成されている。また、第1ケース11の先端側Lfの側面に設けられた二つの第1コネクタ挿通孔111の間には、通気口113が設けられている。
【0042】
第1コネクタ挿通孔111及び第3コネクタ挿通孔112には、挿通された第1ケース側コネクタ53及び第3ケース側コネクタ73をボルトで固定するためのボルト孔がそれぞれ設けられている。
【0043】
通気口113は、
図3(b)に示すように、第1ケース11の側面を板厚方向(図中の奥行方向L)に貫通させて形成した挿通孔に取り付けた通気弁であり、第1ケース11の内部の空気と外気とが行き来できるように構成されている。
【0044】
ECU20は、ジャンクションボックス1と電気的に接続された電気機器類を制御する電子制御装置であり、第1ケース11の側壁にボルト固定されたブラケット13を介して第1ケース11の内部に固定されている(
図3(a)参照)。このECU20の内部には、熱により寿命が短くなったり、性能が劣化したりするなど、熱の影響を受けやすい電子部品が備えられている。
【0045】
第2ケース12は、
図2及び
図4に示すように、第1ケース11との組み付け状態において、第1ケース11の開口部分の外形と略同形状の開口を第1ケース11の側(上側Hu)に有する凹状の筐体である。すなわち、第2ケース12は、第1ケース11と略同形状の開口を形成する奥行方向L及び幅方向Wに沿った側面と、当該側面と連続する底面とで構成されている。
【0046】
この第2ケース12の側面及び底面には、第2接続体60の一部分(後述する第2ケース側コネクタ63の一部)が外部に突出できるように、板厚方向に貫通させた複数のコネクタ挿通孔121が形成されている。また、第2ケース12の内面には、板状部材40をボルト固定するための板状部材固定部122や、回路形成部材30を保持固定するための複数の回路保持部123が設けられている。
【0047】
コネクタ挿通孔121は、先端側Lfの側面に一つ、基端側Lbの側面に二つ、そして底面に一つの計四つ設けられている。それぞれのコネクタ挿通孔121は、第2ケース側コネクタ63を固定するためのボルト孔が設けられている。
【0048】
板状部材固定部122は、第2ケース12における先端側Lfと基端側Lbの側壁における幅方向Wの中央部分から、回路形成部材30を収容する収容空間(奥行方向Lの内側)に向けてわずかに突出している。この突出する板状部材固定部122の先端部分には、高さ方向Hに沿って貫通するボルト孔が設けられている。
回路保持部123は、突出する箇所が異なることを除き、板状部材固定部122と略同様に構成されている。
【0049】
回路形成部材30は、
図5に示すように、リレーやヒューズ、電流センサーなどの複数の電気部品31と、電気部品31と電気的に接続されているバスバー32と、電気部品31やバスバー32を配置固定するバスバー保持部33とで構成され、ケース体10の内部において電気回路を形成している。
【0050】
電気部品31は、バスバー32とともに電気回路を形成する機器類や、バスバー32に流れる電流を計測する機器類である。なお、電気部品31は、ECU20と異なり、熱の影響を受けにくい。
バスバー32は、例えば銅などの導電性の高い金属を延ばして板状に形成された複数の金属板321を組み合わせて形成されており、電気部品31と電気的に接続されている。この金属板321には、第2接続体60と電気的に接続する端子連結部322と、電気部品31やバスバー保持部33と固定するためのボルトを挿通するボルト挿通孔323とが設けられている。
【0051】
端子連結部322は、所定方向に延ばして板状に形成された金属板321から突出している。そして、端子連結部322の先端には、第2ケース側コネクタ63とボルト固定できるように貫通孔が設けられている。
【0052】
バスバー保持部33は、
図5に示すように、電気部品31やバスバー32を所望の位置に配置して固定する絶縁樹脂製のホルダーであり、バスバー32を配置するバスバー配置部331と、回路保持部123とボルト固定できる保持部側固定部332と、左側Wlに電線を係止して保持する電線係止部333が設けられている。
【0053】
バスバー配置部331は、バスバー保持部33の上面部分において、バスバー32を所定の位置に嵌め込めるように凹状に形成されており、第2ケース12に収容した状態において、コネクタ挿通孔121に対応する箇所に端子連結部322を配置できるように構成されている。
【0054】
板状部材40は、断熱性と絶縁性を有し、加工しやすい絶縁樹脂で板状に形成された板本体41で構成されている。この板本体41には、
図6(a)に示すように、後述する第2コネクタ62を固定する複数のコネクタホルダー42と、固定アンカー80と協働して電線(第1電線束51)を保持する電線保持部43とが設けられている。
【0055】
板本体41は、
図6(a)に示すように、上側Huから視た平面視略矩形状の略平板で形成されている。詳しくは、板本体41は、第2ケース12に固定した状態において、一部分が平面内側に窪んだ平板状であり、板本体41における左側Wlの両角部分には板状部材固定部122に固定するための板側固定部411が設けられている。また、板本体41における左側Wlの中央部分には、板本体41の中央部分に向けた切り欠いた切り欠き部412が設けられている。
【0056】
板側固定部411は、板状部材固定部122の先端に設けたボルト孔と同じ内径の貫通孔を有し、板状部材固定部122の上側Huに板側固定部411を配置した状態で、板状部材固定部122とボルト固定できるように構成されている。
【0057】
切り欠き部412は、
図6(b)に示すように、板本体41における先端側Lf且つ左側Wlの端部を基端として、板本体41の中央部分に向けて延出する切り欠きである。この切り欠き部412は、ボルト挿通孔323に挿通させるボルトの外径よりもわずかに大きな幅で、板本体41を板厚方向(高さ方向H)に貫通することで形成されている。このように構成された切り欠き部412の先端部分は、板本体41の略中央部分に配置されている。
【0058】
コネクタホルダー42は、
図6(b)に示すように、板本体41を板厚方向に貫通させた係止貫通部421と、係止貫通部421の外縁から上側Huに突出する外枠部422と、外枠部422から係止貫通部421の側に延出する被係止部423とで構成されている。
【0059】
係止貫通部421は、
図6(b)に示すように、平面視において、略長方形状に形成された貫通孔である。
外枠部422は、略長方形状に形成された係止貫通部421の外縁のうち、板本体41の短手方向の一方側、長手方向の双方から上側Huに向けて立設されている。なお、板本体41の短手方向の一方側は、板本体41における外縁側に対応する。すなわち、略長方形状に形成されたコネクタホルダー42の長手方向が板本体41における外縁と交差するように、コネクタホルダー42は板本体41に設けられている。
【0060】
被係止部423は、
図6(b)及び
図6(c)に示すように、短手方向に沿って互いに所定の間隔を隔てた一対の延出片424と、一対の延出片424を短手方向に連結する連結被係止部425とで、平面視略H字状に形成されている。
【0061】
一対の延出片424は、短手方向に沿って互いに所定の間隔を隔てており、外枠部422の短手方向の一方側から他方側に向けて延出している。なお、延出片424は、係止貫通部421における長手方向の両端部分に設けられた外枠部422とも、所定の間隔を隔てている。
【0062】
このように構成された複数のコネクタホルダー42は、
図6(a)に示すように、互いに離間して板本体41に配置されているとともに、板本体41の中央部分を中心として、略放射状に配置されている。
【0063】
電線保持部43は、板本体41の板厚方向(高さ方向H)に沿って、略円形状に貫通させた貫通孔であり、
図6(a)に示すように、例えば、板本体41における中央部分に一つ、板本体41における先端側Lfの端部に四つなど、所定の箇所に複数設けられている。
【0064】
第1接続体50は、
図7に示すように、複数の第1電線511を束ねた第1電線束51と、第1電線511の一端側に接続された第1コネクタ52と、第1電線束51(第1電線511)の他端側に接続された第1ケース側コネクタ53とで構成されている。
【0065】
第1電線束51は、導電性を有する導体を絶縁被覆で被覆する第1電線511を束ねたものであり、一端側において第1電線511が分岐している。この第1電線束51には、複数の第1電線511を束ねるとともに、板本体41における所定箇所に固定するための固定アンカー80が備えられている。
【0066】
固定アンカー80は、
図7(b)に示すように、第1電線511を束ねてまとめる、いわゆる結束バンドで構成された結束部81と、電線保持部43に挿入することで結束部81を板本体41に係止固定できる係止固定部82とで構成されている。
【0067】
係止固定部82は、いわゆるアンカーであって、結束部81の中心部分から延出する固定軸部821と、固定軸部821の先端に設けられた一対の係止アーム822とで構成されている。
【0068】
係止アーム822は、
図7(b)に示すように、先端が固定軸部821の先端と連結されているとともに、外側に向けて延出している。この係止アーム822は、固定軸部821の先端側から基端側に向かって固定軸部821から徐々に離間している。
【0069】
このように構成された係止固定部82は、電線保持部43に挿通させることで、係止アーム822を電線保持部43の縁に係止させることができるため、結束部81で保持する第1電線束51を板本体41に固定できる。
なお、電線保持部43及び固定アンカー80は、第1電線511を板本体41における所定箇所に固定できれば、この構成に限定されず、例えば互いに係止固定できるスルー構造で係止する場合など、適宜を変更できる。
【0070】
第1電線511の一端端側に連結されている第1コネクタ52は、いわゆるオス型コネクタであり、後述する第2コネクタ62に対して嵌合可能に構成されている。なお、第1コネクタ52の内部には、第1電線511と接続されたオス型端子(図示省略)が備えられている。
【0071】
第1ケース側コネクタ53は、
図7(a)に示すように、複数の第1電線511を束ねた第1電線束51の他端側に連結されているコネクタであり、先端部分を第1ケース11の内側から第1コネクタ挿通孔111に挿通できるように構成されている。なお、第1ケース側コネクタ53には第1コネクタ挿通孔111に設けられたボルト孔と同形状の挿通孔が設けられている。
【0072】
このように構成された第1ケース側コネクタ53は、第1コネクタ挿通孔111に固定した状態において、第1ケース側コネクタ53の一部分が第1ケース11の外部に突出するように構成されている。なお、第1ケース11の外部に突出する第1ケース側コネクタ53の一部分には、車両に搭載された、例えば12Vなどの低電圧用機器類に接続するコネクタが設けられている。
【0073】
第2接続体60は、第2ケース12の内部に四つ備えられている(
図2参照)。
【0074】
第2接続体60は、
図8(a)に示すように、第2電線束61と、第2電線束61の一端側に接続された第2コネクタ62と、第2電線束61の他端側に接続された第2ケース側コネクタ63とで構成されている。
【0075】
第2電線束61は、第1電線511と同様に、導電性を有する導体を絶縁被覆で被覆したものである。なお、第2電線束61の一部には、固定アンカー80が取り付けられている。
第2コネクタ62は、
図8(b)及び
図8(c)に示すように、第2電線束61の一端に接続された直方体状のメス型コネクタであり、第2電線束61と接続された側の反対側に、第1コネクタ52を挿入する開口部621が設けられている。
【0076】
また、第2コネクタ62には、コネクタホルダー42と係止固定するコネクタ固定部622が設けられている。
コネクタ固定部622は、
図8(b)及び
図8(c)に示すように、第2コネクタ62における底面から下側Hdに向けて突出する一対の突出部623と、一対の突出部623を連結する連結部624と、連結部624から延出する係止部625とを備えている。
【0077】
突出部623は、第2コネクタ62の底面部分における、開口部621に対して第1コネクタ52を挿入する挿入方向と直交する直交方向の両端から下側Hdに向けて、外枠部422の突出する長さと同じ長さだけ突出している。なお、突出部623における下側Hdの端部は、直交方向の内側に向けてわずかに突出している。
【0078】
連結部624は、突出している一対の突出部623の一端側において、突出部623における下側Hdの端部を直交方向に連結している。すなわち、連結部624と第2コネクタ62の底面間には所定の間隔が設けられている。
係止部625は、連結部624の直交方向の中央部分から、連結部624から他端側に向けて延出している係止片であり、先端が上側Huに向けて突出している。
【0079】
第2ケース側コネクタ63は、
図8(a)に示すように、第2電線束61の他端側に接続されているコネクタである。この第2ケース側コネクタ63は、コネクタ挿通孔121に挿通させることができるとともに、コネクタ挿通孔121に設けたボルト孔に位置合わせして、ボルト固定できる第2コネクタ本体631を有する。
【0080】
第2コネクタ本体631には、第2コネクタ本体631をコネクタ挿通孔121に固定した固定状態において、第2ケース12の内部で第2電線束61と接続する第2電線連結部632と、バスバー32と直接接続する第1バスバー接続部633と、第2ケース12の外部で、例えば低電圧用機器類に接続する第1外部コネクタ634と、コンバータモーターなどの高電流用機器と接続する第2外部コネクタ635とが設けられており、第2ケース12の外部と内部とを電気的に接続することができる。
【0081】
第1バスバー接続部633は、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、第2コネクタ本体631から一端側に向けて突出しており、端子連結部322に設けた貫通孔と同じ内径を有する貫通孔が先端部分に設けられている。
【0082】
第3接続体70は、
図10(a)に示すように、上述の第2電線束61と同じ構成の第3電線束71と、第2コネクタ62と同じ構成の第3コネクタ72と、第3電線束71の他端側に接続された第3ケース側コネクタ73と、第3ケース側コネクタ73と接続された高電流用電線74とで構成されている。
【0083】
第3ケース側コネクタ73は、第3コネクタ挿通孔112に挿通させることができるとともに、第3コネクタ挿通孔112に設けたボルト孔に位置合わせして、ボルト固定できる第3コネクタ本体731を有する。
【0084】
第3コネクタ本体731には、第3コネクタ本体731を第3コネクタ挿通孔112に固定した固定状態において、第1ケース11の内部で第3電線束71と連結する第3電線連結部732と、高電流用電線74と介してバスバー32と接続される第2バスバー接続部733と、第1ケース11の外部で、例えば低電圧用機器類に接続する第3外部コネクタ734と、コンバータモーターなどの高電流用機器と接続する第4外部コネクタ735とが設けられている。
【0085】
第2バスバー接続部733は、
図10(a)に示すように、第3コネクタ本体731の本体部分から一端側に向けて突出しており、先端部分には高電流用の電線である高電流用電線74の他端側が接続されている。
第2バスバー接続部733に接続されている高電流用電線74は、
図10(b)に示すように、一端側にバスバー32に立設されたボルトに取り付けるLA端子75が設けられている。
【0086】
次に、このように構成されたケース体10、ECU20、回路形成部材30、板状部材40、第1接続体50、第2接続体60及び第3接続体70を組み付ける方法について、簡単に説明する。
はじめに、第1コネクタ挿通孔111の内側から、第1電線束51の他端に接続された第1ケース側コネクタ53を挿通させるとともに、第1ケース側コネクタ53と第1コネクタ挿通孔111とをボルト固定する。また、第3ケース側コネクタ73と接続された第3電線束71及び高電流用電線74を外部から第3コネクタ挿通孔112に挿通させるとともに、第3コネクタ本体731を第3コネクタ挿通孔112に挿通させて第3ケース側コネクタ73と第3コネクタ挿通孔112とをボルト固定する。
【0087】
そして、ECU20を第1ケース11の内部における所定位置に配置するとともに、ブラケット13を介してECU20を第1ケース11に固定する(
図3(a)参照)。この際、第1電線束51から分岐された第1電線511の一部をECU20と接続する。
【0088】
同様に、第2ケース側コネクタ63に接続された第2電線束61をコネクタ挿通孔121に挿通させるとともに、第2コネクタ本体631をコネクタ挿通孔121に挿通させ、第2ケース側コネクタ63とコネクタ挿通孔121とをボルト固定する。また、第2ケース12の内部における所定箇所に電気部品31、バスバー32及びバスバー保持部33を配置して、電気部品31、バスバー32及びバスバー保持部33をボルト固定する。
【0089】
そして、保持部側固定部332と回路保持部123とをボルト固定する。この際、第2ケース12の内部に挿入された第2電線束61を、電線係止部333に適宜係止できる。これにより、第2ケース12の内部に電源供給回路が形成される。なお、金属板321同士を固定するボルトは上側Huに向けて所定長さだけ延出するように、立設している。
【0090】
次に、電源供給回路を形成するバスバー32と第2ケース側コネクタ63とをボルト固定する。これにより、第2ケース12の内部における所定位置で電源供給回路を形成するバスバー32に、第2ケース12の外部に配置された高電圧用バッテリなどを接続することができる。
【0091】
このように、第1ケース11と第2ケース12とを別体で構成することで、第1ケース11にECU20を配置できるとともに、ECU20とは異なる機能の回路形成部材30を第1ケース11とは異なる第2ケース12に配置させることができる。これにより、ECU20及び回路形成部材30を誤組み付けすることなく第1ケース11及び第2ケース12の所定の位置に配置できる。したがって、ECU20及び回路形成部材30をケース体10に配置する配置作業の作業効率を向上させることができる。
【0092】
次に、板状部材固定部122の上側Huに板側固定部411が配置されるように、回路形成部材30が配置された第2ケース12の上側Huに板状部材40を配置する。そして、板状部材固定部122と板側固定部411とをボルト固定することで、第2ケース12に板状部材40を組み付けることができる(
図12参照)。
【0093】
このように、第2ケース12に板状部材40を組み付けた組付状態において、板本体41の右側Wrの外縁は、
図12(b)に示すように、第2ケース12における右側Wrの内面と略接するように沿っている。また、板本体41の左側Wlの外縁は、第2ケース12における左側Wlの内面から所定の間隔を隔てて、第2ケース12の内面に沿っている。すなわち、第2ケース12に板状部材40を組み付けた組み付け状態において、板本体41の左側Wlでは、板本体41の外縁と第2ケース12の内面との間に隙間Dが形成されている。
【0094】
また、板本体41の外縁と第2ケース12における左側Wlの内面との間に隙間Dが形成されるため、第2ケース12の内部において第2ケース側コネクタ63と接続された第2電線束61の一端側を隙間Dに通して、板状部材40の上側Huに移動させることができる。
【0095】
次に、
図13に示すように、上側Huに移動させた第2電線束61の一端側に接続された第2コネクタ62を、コネクタホルダー42に固定する。
詳述すると、
図13(a)に示すように、コネクタ固定部622を外枠部422と延出片424との間に挿通させるとともに、第2コネクタ62を他端側に移動させる。このようにコネクタ固定部622を延出片424に沿って移動させることで、
図13(b)に示すように、係止部625が連結被係止部425と係止される。これにより、第2コネクタ62を板本体41における上側Huの面に固定できる。
【0096】
ここで、コネクタホルダー42は、板本体41の中央部分を中心として、略放射状に配置されているため、板本体41に保持された第2コネクタ62の開口部621の向きは、他の第2コネクタ62における開口部621の向きと異なるように保持される。
【0097】
このように第2コネクタ62が板本体41の上側Huの面に固定された状態で、第1電線束51に設けられた係止固定部82を電線保持部43に挿入するとともに、第1電線束51の先端に接続された第1コネクタ52を開口部621に挿入する(
図13(c)参照)。これにより、板本体41の上側Huに第1電線束51を所望の配索経路で配索できるともに、第1電線束51と第2電線束61とを容易に接続することができる。すなわち、第1コネクタ52が板状部材40における第1ケース11の側に配置されるとともに、各開口部621に嵌合する第1コネクタ52の向きは他の第1コネクタ52の向きと異なることとなる。
なお、第1コネクタ52の挿入方向は、板本体41の外縁に向かうため、第1コネクタ52を第2電線束61に挿入することにより、第2コネクタ62が電線保持部43から外れることを防止できる。
【0098】
このように、第1電線511に設けられた固定アンカー80を電線保持部43に固定することで、第1電線511を所定の配索経路で板状部材40に配索できるとともに、板状部材40における所定箇所に電線保持部43に固定された第2コネクタ62を介して第1コネクタ52を固定できるコネクタ保持構造体90を形成することができる(
図14(a)及び
図14(b)参照)。すなわち、コネクタ保持構造体90は、
図14(a)及び
図14(b)に示すように、第1電線束51と、第1電線511の端部に接続された第1コネクタ52と、第1コネクタ52を保持する板状部材40と、板状部材40に第1電線511を保持する固定アンカー80を係止する電線保持部43とが設けられ、板状部材40に、第2コネクタ62を介して第1コネクタ52を間接的に所定箇所に保持する電線保持部43が備えられている。
【0099】
また、第3コネクタ挿通孔112に挿入された第3電線束71の一端側に接続された第3コネクタ72を、所定の電線保持部43に固定するとともに、高電流用電線74を板本体41に形成された切り欠き部412に沿って配置する。これにより、高電流用電線74の一端側に設けたLA端子75を、板本体41の中央部分の下側Hdにおいて、バスバー32から上側Huに向けて立設するボルトに挿入することができ、バスバー32と第3ケース側コネクタ73とを電気的に接続することができる。このように、板本体41に切り欠き部412を設けることで、バスバー32から立設する所望のボルトにLA端子75を接続することができる(
図15参照)。
【0100】
また、
図15に示すように、第3コネクタ72を、所定の電線保持部43に固定するとともに、第1電線511の一端側に接続された第1コネクタ52を第3コネクタ72に接続することで、第3ケース側コネクタ73と第1ケース側コネクタ53とを電気的に接続することができる。
【0101】
このように、第1コネクタ52を第2コネクタ62及び第3コネクタ72と接続することで、それぞれの第2電線束61及び第3電線束71と第1電線束51とを電気的に接続した状態で、第1ケース11と第2ケース12の開口同士が対向するように第1ケース11と第2ケース12とを組み付けて固定することで、板状部材40(コネクタ保持構造体90)が、第1ケース11と第2ケース12との間に配置され、箱状に形成されたケース体10の内部にECU20と回路形成部材30が配置されたジャンクションボックス1とすることができる。
【0102】
このように構成されたジャンクションボックス1は、ケース体10の外部に一部分が突出する第2ケース側コネクタ63や第3ケース側コネクタ73に設けた第1外部コネクタ634及び第3外部コネクタ734を、高電圧バッテリなどの高電圧用機器のコネクタと接続することで、バスバー32に高電流を流すことができる。
【0103】
また、ケース体10の外部に一部分が突出する第1ケース側コネクタ53に、低電圧用機器のコネクタを外部から接続するとともに、ケース体10の外部に一部分が突出する第2ケース側コネクタ63や第3ケース側コネクタ73に設けた第2外部コネクタ635及び第4外部コネクタ735に低電圧用機器のコネクタを外部から接続することで、第1電線束51と第2電線束61と第3電線束71とを導電させることができる。
【0104】
このように構成されたジャンクションボックス1では、
図16に示すように、第1ケース11の内部にECU20が配置され、第2ケース12の内部に回路形成部材30(電気部品31とバスバー32)が備えられており、ECU20と回路形成部材30との間には板状部材40が配置されている。
【0105】
上述のように、バスバー32と接続されている第2ケース側コネクタ63や第3ケース側コネクタ73には高電圧用機器が接続されるため、バスバー32に大電流が流れることとなる。そのため、ECU20に影響を与えるおそれのある熱をバスバー32が発することとなる。しかしながら、ジャンクションボックス1は、ケース体10の内部において、ECU20と回路形成部材30との間に板状部材40が備えられている。
【0106】
これにより、板状部材40でケース体10の内部を第1領域R1と第2領域R2と分けることができ、板状部材40により電気部品31やバスバー32から発せられる熱にECU20が曝されることを抑制できる。したがって、ECU20を電気部品31やバスバー32が発する熱から保護することができる。
【0107】
また、固定アンカー80を電線保持部43に挿入することで、第1電線束51が平面状の板本体41における上側Huの面に配索されている。すなわち、ECU20とは所定の間隔を隔てて第1電線束51を配索することができる。このため、第1電線束51と第2電線束61と、第1電線束51と第3電線束71との導電により第1電線束51が発熱した、あるいは、バスバー32の内部で発する熱が伝播して第1電線束51が熱を有したとしても、第1電線束51の熱によってECU20が影響を受けることを抑制できる。
【0108】
さらにまた、第1電線束51、第2電線束61及び第3電線束71の他端側に接続された第1ケース側コネクタ53、第2ケース側コネクタ63及び第3ケース側コネクタ73は、一部分が第1ケース11の外部に突出している。このため、第1電線束51と第2電線束61と、及び、第1電線束51と第3電線束71との導電により第1電線束51から発する熱、あるいは、第1電線束51に伝播したバスバー32が発した熱を、第1ケース側コネクタ53、第2ケース側コネクタ63及び第3ケース側コネクタ73を介して外部に放出することができる。
【0109】
さらにまた、ECU20が配置されている第1ケース11の側面には、通気口113が配置されている。これにより、ケース体10の内部(第1領域R1)の熱を外部に排出することができる。また、外気をケース体10の内部(第1領域R1)に吸入することができる(
図16参照)。
【0110】
また、ジャンクションボックス1において、ケース体10の内部に配置されるコネクタ保持構造体90は、第1電線511を束ねた第1電線束51に組み付けられた固定アンカー80を電線保持部43に固定するとともに、分散されたコネクタホルダー42に第1コネクタ52を保持することで、複数の第1電線511を所望の配索経路で配索することができる。この際、複数のコネクタホルダー42に固定された第2コネクタ62は、互いに離間しているともに、開口部621の方向が異なることとなる。
【0111】
さらにまた、コネクタホルダー42の長手方向が板本体41における外縁と交差するように、コネクタホルダー42は板本体41に設けられているため、コネクタホルダー42は板本体41の外縁に対して交差する向きで第1コネクタ52を保持することとなる。
【0112】
このようにジャンクションボックス1は、箱状のケース体10の内部にバスバー32とECU20とが配置されている。そして、ケース体10の内部において、バスバー32とECU20との間に配置され、導電されたバスバー32から発せられた熱のECU20への伝播を抑制する板状の板状部材40が備えられている。
【0113】
このように、板状部材40をECU20とバスバー32との間に配置するだけで、導電されたバスバー32が発する熱を板状部材40で遮ることができ、ECU20の側に熱が伝播することを抑制できる。したがって、バスバー32が発する熱にECU20が曝らされることを抑制できる。このように、ジャンクションボックス1は、バスバー32とECU20との間に板状部材40を配置するだけといった簡易な構造で、導電されたバスバー32が発する熱からECU20を保護することができる。
【0114】
また、板状部材40は、外縁がケース体10の内面に沿って形成されていることにより、ケース体10の内部におけるECU20の配置された領域(
図16中の第1領域R1)とバスバー32の配置された領域(
図16中の第2領域R2)とに略分断することができるため、バスバー32から発せられる熱がケース体10におけるECU20の側に伝播することをより抑制できる。
【0115】
さらにまた、ケース体10は、開口を有する第1ケース11と、開口を有する第2ケース12とが備えられ、開口同士が対向するように第1ケース11と第2ケース12とを組み付けて箱状を形成する。そして、ECU20が第1ケース11に配置されるとともに、バスバー32が第2ケース12に配置され、板状部材40が、第1ケース11と第2ケース12との間に配置されている。
【0116】
これにより、第1ケース11と第2ケース12の開口同士が対向するように、第1ケース11と第2ケース12とを組み付けるだけの簡易な構造で、ECU20とバスバー32との間に板状部材40を簡易に配置することができる。また、第1ケース11にECU20を配置させ、第1ケース11とは異なる第2ケース12にバスバー32を配置させることができるため、誤組み付けすることなくECU20とバスバー32をケース体10の所定の位置に配置できる。これにより、ECU20とバスバー32をケース体10に配置する配置作業の作業効率を向上させることができる。
【0117】
また、第1ケース11に、外部と内部とを連通する通気口113が設けられていることにより、ケース体10の内部の熱を外部に排出することができるとともに、内部に外気を吸入することができる。すなわち、バスバー32から発せられる熱を外部に排出し、ECU20を熱から保護することができる。また、外気を吸引することでケース体10の内部の温度と外気との温度差を小さくすることで、結露が生じることを抑制できる。
【0118】
さらにまた、ECU20が配置されている第1ケース11に伝播した熱を外部に排出することができるため、第1ケース11の内部が高温となることをより抑制できる。したがって、バスバー32から発せられる熱からECU20をより保護することができる。
【0119】
また、第1ケース11及び第2ケース12の少なくとも一方の内部において、ECU20に対して所定間隔を隔てて配索される第1電線511と、第1電線511の一端部に接続された第1ケース側コネクタ53と、第1電線511の他端部に板状部材40における第1ケース11の側で保持される第1コネクタ52とがそれぞれ備えられ、第1ケース側コネクタ53は、少なくとも一部がケース体10の外部に突出している。
【0120】
これにより、第2ケース12の内部において、バスバー32が発する熱が第1電線511に伝播することにより第1電線511に生じる熱、あるいは、第1電線511への導電により第1電線511に生じる熱を、第1ケース側コネクタ53を介して外部に排出することができる。これにより、ケース体10の内部が高温となることを抑制できる。
【0121】
また、第1コネクタ52が板状部材40における第1ケース11の側に配置されているため、バスバー32から生じる熱が第1コネクタ52に影響することを抑制できる。これにより、第1コネクタ52を介した第1電線511と第2電線束61や第3電線束71との電気的な接続を安定化させることができる。
【0122】
また、第2ケース12に板状部材40を固定する板状部材固定部122が設けられていることにより、板状部材40を第2ケース12に固定した後に、第2ケース12に備えられ第2電線束61の端部に接続された第2コネクタ62と、第1ケース11に備えられた第1電線511の端部に接続された第1コネクタ52とを容易に接続することができる。これにより、ECU20を熱から保護する板状部材40の固定作業と、第1コネクタ52と第2コネクタ62との接続作業とを効率的に行うことができる。
【0123】
また、第1ケース11に配索される第1電線511は、板状部材40に沿って配索されていることにより、第1ケース11に備えられた第1電線511とECU20との間に所定の間隔を設けることができる。このため、第1電線511が発する熱によるECU20の損傷をより確実に抑制できる。
【0124】
また、板状部材40が、樹脂製である。すなわち、板状部材40は断熱性及び絶縁性を有するとともに、加工しやすい樹脂製である。このため、導電されたバスバー32から発せられた熱の伝播を確実に抑制できるとともに、バスバー32と接触することにより意図しない短絡を防止できる。また、第1コネクタ52を保持する第1コネクタ52保持部などを容易に設けることができる。
【0125】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明のケース体は、ケース体10に対応し、以下同様に、
回路配線体は、バスバー32に対応し、
電子部品は、ECU20に対応し、
電気接続箱は、ジャンクションボックス1に対応し、
遮熱部材は、板状部材40に対応し、
第1ケース体は、第1ケース11に対応し、
第2ケース体は、第2ケース12に対応し、
通気口は、通気口113に対応し、
電線は、第1電線511に対応し、
ケース側コネクタは、第1ケース側コネクタ53に対応し、
コネクタは、第1コネクタ52に対応し、
固定部材は、板状部材固定部122に対応するが、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0126】
例えば、この実施形態において、電子部品をECU20としているが、熱の影響で機械的及び機能的に劣化するものであれば、ECU20に限らず、他の制御機器類や熱の影響を受けやすい電子部品そのものであってもよい。
【0127】
また、この実施形態において、同様に、熱を発する部材として、バスバー32としているが、大電流用電線など、導電により発熱するものであれば、他の部材であっても構わない。
【0128】
さらにまた、この実施形態において、板状部材40は、一面が平らな平板状であるが、部分的に凹凸が形成されていてもよい。また、板状部材40は樹脂製としているが、例えば、発泡体や多孔質体を含む樹脂部材、グラスウールなどのガラス材やセルロースファイバーなど、熱伝導率の低い部材を材質としていてもよい。
【0129】
また、この実施形態において、板状部材40は、板本体41の外縁と第2ケース12の内面との間に隙間Dが形成されるように、第2ケース12における左側Wlの内面から所定の間隔を隔てて、第2ケース12の内面に沿うように形成されている。しかしながら、板状部材40と第2ケース12(ケース体10)の内面との間に間隔を隔てないように、第2ケース12(ケース体10)の内面に沿っていてもよいし、板本体41の外縁の一部分において、第2ケース12(ケース体10)の内面との間に間隔を隔てて形成されていてもよい。
【0130】
さらにまた、この実施形態において、通気口113は第1ケース11に設けられているが、第2ケース12に設けられていてもよいし、第1ケース11と第2ケース12の両方に設けられていてもよい。なお、通気口113は先端側Lfの面に設けているが、上面及び下面を含む他の面に設けてあってもよい。
【0131】
また、この実施形態において、第1コネクタ52は、コネクタホルダー42に保持された第2コネクタ62を介して板状部材40に保持されているが、コネクタホルダー42に直接第1コネクタ52を保持し、第1コネクタ52に第2コネクタ62を嵌合させる構成でもよいし、コネクタホルダー42に直接第1コネクタ52及び第2コネクタ62を保持し、保持された第1コネクタ52及び第2コネクタ62の少なくとも一方を移動させる機構を設けることで、第1コネクタ52と第2コネクタ62とを接続してもよい。なお、第1コネクタ52を板本体41に保持させる場合には、本実施形態と同様に、第2コネクタ62の嵌合により、第1コネクタ52がコネクタホルダー42から外れないように構成されることが好ましい。
【0132】
また、この実施形態において、複数の第1電線511の配索経路を規制しているが、第1電線511は一つであってもよい。また、第1電線511の一端側の端部にはそれぞれ第1コネクタ52が接続されているが、例えば、複数の第1電線511に対して一つの第1コネクタ52が接続されていてもよい。すなわち、コネクタ保持構造体90に保持される第1電線511及び第1コネクタ52は単数でも複数でもよい。
【0133】
またこの実施形態において、複数の第1電線511を途中までまとめて配索しながら、板状部材40に分散して配置したコネクタホルダー42に向けてそれぞれの第1電線511を分散させて配索している。しかしながら、第1電線511をまとめることなく、個々の第1電線511をそれぞれ所望の配索経路で配索してもよい。
【符号の説明】
【0134】
1 ジャンクションボックス
10 ケース体
11 第1ケース
12 第2ケース
20 ECU
32 バスバー
40 板状部材
52 第1コネクタ
53 第1ケース側コネクタ
113 通気口
122 板状部材固定部
511 第1電線