(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070819
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023178712
(22)【出願日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2022180794
(32)【優先日】2022-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】石見 駿太郎
(72)【発明者】
【氏名】荻野 潤
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 和人
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA23
2H033AA25
2H033BB33
2H033BB37
2H033BE00
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】潤滑剤の漏出を防止しつつ定着ベルトの摩耗を抑止し、耐久性を維持することが可能な定着装置及びこれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】無端状のベルト部材29と、ベルト部材29を加熱する加熱部材30と、ベルト部材29を走行可能に支持する支持部材32と、ベルト部材29の内周部に配置されベルト部材29を外方に向けて押圧する押圧部材33と、ベルト部材29を介して押圧部材33を押圧して、ベルト部材29と共に被記録媒体Sが挟持搬送される定着ニップNを形成する加圧部材35と、ベルト部材29の内面に潤滑剤を供給する供給部材31と、内面に付着した潤滑剤を回収する回収部材34とを備え、回収部材34は、内周部の高さ方向における下部に配置され、かつ幅方向両端部34aのみが内面に接触する定着装置15。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルト部材と、
前記ベルト部材を加熱する加熱部材と、
前記ベルト部材を走行可能に支持する支持部材と、
前記ベルト部材の内周部に配置され、前記ベルト部材を外方に向けて押圧する押圧部材と、
前記ベルト部材を介して前記押圧部材を押圧して、前記ベルト部材と共に被記録媒体が挟持搬送される定着ニップを形成する加圧部材と、
前記ベルト部材の内面に潤滑剤を供給する供給部材と、
前記内面に付着した潤滑剤を回収する回収部材とを備え、
前記回収部材は、前記内周部の高さ方向における下部に配置され、かつ幅方向両端部のみが前記内面に接触する定着装置。
【請求項2】
請求項1記載の定着装置において、
前記ベルト部材の外周部の高さ方向における下部に配置され、かつ前記ベルト部材の外面の幅方向両端部のみに接触する第二回収部材を有することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真方式を採用した画像形成装置において、加熱部材により加熱された無端ベルトからなる定着ベルト及びこれに接触する加圧部材によって定着ニップを形成し、定着ニップにトナー像が転写された被記録媒体を通過させ、熱及び圧力により被記録媒体にトナー像を定着させる定着装置が知られている。
このような定着装置において、定着ベルトの内部に押圧部材を設けると共に加圧部材を弾性部材により構成し、定着ベルトを介して加圧部材を押圧部材に圧接させて加圧部材の弾性変形により定着ニップを形成する技術が知られている。このような技術では、固定された押圧部材に対して定着ベルトが摺接しながら走行移動するが、移動時における定着ベルトと押圧部材との摩擦抵抗を軽減させるため、定着ベルトの内面に潤滑剤を供給する技術が提案されている(例えば「特許文献1」、「特許文献2」、「特許文献3」、「特許文献4」、「特許文献5」参照)。
【0003】
「特許文献1」には、無端ベルト内面への長期にわたる安定的な潤滑剤の塗布と長期にわたる無端ベルトの蛇行制御という互いに相反する現象の両立を図るべく、無端ベルトの内面に潤滑剤を供給する供給手段と、無端ベルトの内面から潤滑剤を回収する回収手段とを備えた定着装置が開示されている。供給手段と回収手段とは繊維部材によって一体構成されており、回収手段の繊維密度が供給手段の繊維密度よりも低く形成されている。
これにより、無端ベルト内面への長期にわたる安定的な潤滑剤の塗布と、長期にわたる蛇行制御の安定性を両立し、高速プリントや耐久性に優れた定着装置を提供できるとされている。
【0004】
「特許文献2」には、定着ベルトの摺動方向と同じ向きに形成された繊維凹溝方向を有する摺動シートを備え、潤滑剤循環部材がニップ部の上流側の摺動シートに供給する潤滑剤を保持すると共に、定着ベルトに潤滑剤を供給してニップ部の下流側に供給する定着装置が開示されている。
これにより、定着ベルトの両端部からの潤滑剤の流出が防止され、定着ベルトの摺動性が向上して移動時におけるトルク上昇を防止でき、定着装置の高寿命化を図ることができるとされている。
【0005】
「特許文献3」には、定着ベルトの内面に安定してオイルを供給可能であり、定着ベルト端部からのオイル漏れやオイル供給不足の発生を防止すべく、定着ベルトの内面にオイルを供給するオイル供給部材を備え、オイル供給部材はその幅方向における中央部の厚みが両端部の厚みよりも厚く形成された定着装置が開示されている。
これにより、定着ベルトの内面に安定してオイルを供給でき、定着ベルト端部からのオイル漏れやオイルの供給不足による定着ベルトの摺動性低下に伴う被記録媒体へのしわの発生や加熱部材の駆動トルク増大等を解消可能な定着装置を提供できるとされている。
【0006】
「特許文献4」には、無端ベルトの回転軸方向両端部から潤滑剤が漏出することを防止すべく、無端ベルトの回転軸方向両端部から漏出した潤滑剤を吸収する潤滑剤吸収部材を潤滑剤供給部材の両端部に設けた定着装置が開示されている。
これにより、無端ベルトの回転軸方向両端部に潤滑剤吸収部材が設けられていない構成に比して無端ベルトの回転軸方向両端部からの潤滑剤の漏出を抑制できるとされている。
【0007】
「特許文献5」には、低粘度の潤滑剤が重力により定着ニップ領域下方に溜まることを防止すべく、毛細管現象により潤滑剤を上方へと移動させる潤滑剤移動部材を備えた定着装置が開示されている。
これにより、常温で低粘度の潤滑剤を使用した場合でも定着フィルム端部から潤滑剤が漏出せず、良好な定着性能を長期にわたって維持できるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
「特許文献1」に開示された技術では、回収手段としてオイル回収フェルトを設け、回収手段から回収したオイルを再度塗布することでオイルを循環させる構成が開示されているが、回収した潤滑剤にトナーや塵埃等の粒子が混在すると次第に潤滑剤の粘度が上昇して低トルクを維持できないという問題点がある。さらに、フェルト材質で提案されている耐熱性を有するアラミドやPET等の不織布は、ポリイミドを有する定着ベルトの内面に対して高速で摺動させると、ポリイミドの摩耗が促進すると共に回収オイルの高粘度化がさらに促進され、耐久性が低下するという問題点がある。
本発明は上述した問題点を解決し、潤滑剤の漏出を防止しつつ定着ベルトの摩耗を抑止し、耐久性を維持することが可能な定着装置及びこれを用いた画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、無端状のベルト部材と、前記ベルト部材を加熱する加熱部材と、前記ベルト部材を走行可能に支持する支持部材と、前記ベルト部材の内周部に配置され、前記ベルト部材を外方に向けて押圧する押圧部材と、前記ベルト部材を介して前記押圧部材を押圧して、前記ベルト部材と共に被記録媒体が挟持搬送される定着ニップを形成する加圧部材と、前記ベルト部材の内面に潤滑剤を供給する供給部材と、前記内面に付着した潤滑剤を回収する回収部材とを備え、前記回収部材は、前記内周部の高さ方向における下部に配置されかつ幅方向両端部のみが前記内面に接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回収部材によってベルト部材の内面において最も潤滑剤が集まる部位に溜まった潤滑剤を回収でき、ベルト部材の両端部からの潤滑剤の漏出を防止できる。また、回収部材は幅方向両端部のみをベルト部材の内面に接触させるので、ベルト部材の内面における摩耗を最小限に抑えることができ、ベルト部材の耐久性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る定着装置を示す概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る定着装置を説明する
図2の部分拡大図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る定着装置における回収部材及び摺動パッド及び定着ベルトの構造を説明する模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置を示している。同図において画像形成装置としてのプリンタ1は、装置本体2のほぼ中央に中間転写ユニット3を有している。中間転写ユニット3は、中間転写体としての中間転写ベルト4を備えており、中間転写ベルト4は複数の支持ローラによってループ状に張架されている。支持ローラは、中間転写ベルト4を
図1において時計回り方向に走行駆動する駆動ローラ5、二次転写バックアップローラ6、従動ローラ7,8、4個の一次転写ローラ9Y,9M,9C,9K等から構成される。
中間転写ベルト4は、ほぼ逆三角形の姿勢で張架され、逆三角形の上辺に当たるベルト上部張架面の上方に、イエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの4色分のプロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kが、それぞれ水平方向に順次配置されている。
【0013】
プロセスカートリッジ10Yはイエロの作像部を収容し、作像されたイエロのトナー像が中間転写ベルト4上に転写される。同様にプロセスカートリッジ10Mはマゼンタの作像部を、プロセスカートリッジ10Cはシアンの作像部を、プロセスカートリッジ10Kはブラックの作像部をそれぞれ収容する。
これ等各色のプロセスカートリッジ10から、各色のトナー像が各一次転写ローラ9と対向する一次転写位置において中間転写ベルト4にそれぞれ転写される。中間転写ベルト4上に一次転写されたカラートナー像は、中間転写ベルト4の走行移動により二次転写部11に送られる。
【0014】
図1において、プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kの上方には、画像情報に基づいた露光光Lを後述する感光体ドラム17に照射する、イエロ及びマゼンタ用とシアン及びブラック用との一対の露光部12が設けられている。一対の露光部12は、図示しないスキャナ等から後述する制御部21に送信される原稿の画像情報に基づいて各色の画像データを受け、共に図示しないレーザ制御部及び半導体レーザによって4本の露光光Lを出射する。そして各プロセスカートリッジ10が有する感光体ドラム17をそれぞれ露光光Lによって走査し、各感光体ドラム17の表面にイエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの静電潜像をそれぞれ書き込む。
図1において、符号13,14は被記録媒体である転写シートSを収容した給紙部を、符号15は転写シートS上に転写された未定着トナー像を熱と圧力とによって定着させる定着装置を、符号16は内部にトナーを収容したトナーボトルをそれぞれ示している。
【0015】
次に、プロセスカートリッジ10について説明する。なお、プロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10Kは用いられるトナーの色を除いて全て同じ構成であるので、ここではプロセスカートリッジ10Yのみを代表して説明する。
プロセスカートリッジ10Yのほぼ中央には、像担持体である感光体ドラム17Yが配置されており、その周囲には、感光体ドラム17Yを帯電させる帯電装置18Y、感光体ドラム17Yの表面に形成された静電潜像を現像する現像装置19Yが配置されている。さらに感光体ドラム17Yの周囲には、感光体ドラム17Yの表面に残存した未転写トナーを回収する感光体クリーニング装置20Y、感光体ドラム17Yの表面を除電する図示しない除電装置が配置されている。これ等各部材は共通の支持体である図示しないケーシングによってそれぞれ支持され、装置本体2に対して一つのプロセスカートリッジ10Yとして一体的に着脱可能に構成されており、メンテナンス性が向上されている。
【0016】
次に、画像形成時におけるプリンタ1の動作を説明する。先ず、装置本体2の内部に設けられた周知のマイクロコンピュータからなる制御部21に図示しないスキャナから画像情報が送信され、受信した画像情報はイエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの4色に色分解される。制御部21は、各色のうち、例えばイエロの画像情報を電気信号に変換して露光部12に送信する。露光部12からは、送信された電気信号からなる画像情報に基づいたレーザ光等の露光光Lが感光体ドラム17Yに向けて照射される。
【0017】
各感光体ドラム17は
図1において反時計回り方向に回転しており、各帯電装置18によってそれぞれの表面を一様に帯電される。帯電された各感光体ドラム17の表面には、露光光Lの照射によって画像情報に対応した静電潜像が形成される。形成された静電潜像は各感光体ドラム17の回転によって各現像装置19との対向部に到達し、各現像装置19によって顕像化される。
イエロ、マゼンタ、シアン、及びブラックの各色のトナーはそれぞれのトナーボトル16に収容されており、各色のトナーはそれぞれ対応する現像装置19Y,19M,19C,19Kに補給される。補給された各色のトナーは、各現像装置19内の攪拌部材によってキャリアと混合攪拌され、キャリアとの混合攪拌時に摩擦帯電される。帯電したトナーとキャリアとを含む現像剤は、回転している現像ローラに供給されて現像ローラ上に担持される。担持された現像剤はドクターブレードと現像ローラとの間のギャップを通過し、均一な層厚となるように調整される。その後、現像ローラ上の現像剤は、感光体ドラム17Y,17M,17C,17Kと接触して感光体ドラム17Y,17M,17C,17K上の静電潜像に付着する。これにより感光体ドラム17Y,17M,17C,17K上にトナー像が形成される。
制御部21は、露光部12及びプロセスカートリッジ10Y,10M,10C,10K内の装置を制御し、定期的に感光体ドラム17Y,17M,17C,17K上にトナーパターンを形成する。形成されたトナーパターンは、光センサである反射濃度センサによってその濃度を検知され、制御部21は検知された濃度に基づいて現像装置19Y,19M,19C,19Kへのトナー補給を制御する。
【0018】
現像装置19によって現像され感光体ドラム17の表面上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ9との対向部において中間転写ベルト4上に一次転写される。一次転写工程後、感光体ドラム17の表面には中間転写ベルト4に転写されなかった未転写トナーが僅かながら残存する。
感光体クリーニング装置20Y,20M,20C,20Kはそれぞれブラシ、ローラ、またはブレードを有しており、感光体ドラム17Y,17M,17C,17K上の未転写トナーを除去する。続いて、図示しない除電装置が感光体ドラム17Y,17M,17C,17K上の電荷を取り除き、感光体ドラム17Y,17M,17C,17Kは次の作像プロセスに備えられる。
【0019】
各プロセスカートリッジ10から各色のトナー像が中間転写ベルト4上にそれぞれ一次転写され、各色のトナー像が重ねられることで中間転写ベルト4上にフルカラートナー像が形成されると、形成されたフルカラートナー像は中間転写ベルト4の走行移動によって二次転写部11に送られる。これと同時に、給紙部13,14のうちの一つが自動または手動で選択される。本実施形態では、給紙部13が選択されたものとする。
給紙部13に設けられた給紙ローラ22が駆動されることにより、給紙部13に収容されている転写シートSの一枚が搬送経路Kに向けて給送され、搬送経路Kを通過した転写シートSはレジストローラ対23に到達する。その後、レジストローラ対23が所定のタイミングで回転することにより、転写シートSは中間転写ベルト4上のフルカラートナー像と位置合わせされたタイミングで二次転写部11に向けて給送される。
【0020】
二次転写部11に送られた転写シートSは、二次転写部11に設けられた二次転写ローラ24が変位して二次転写バックアップローラ6に当接することにより中間転写ベルト4に圧接され、その表面にフルカラートナー像を転写される。トナー像が転写された転写シートSは搬送コンベヤ37によって定着装置15に送られ、熱と圧力とにより転写されたトナー像が定着される。定着後のシートSは、出力画像として排紙トレイ25上に排出される。
二次転写部11を通過した中間転写ベルト4は、二次転写部11からベルト回転方向下流側に配置されたベルトクリーニング部26に到達する。ベルトクリーニング部26はクリーニングブラシ27とクリーニングブレード28とを有しており、中間転写ベルト4上に残存したトナーを除去する。
以上の動作により、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0021】
ここで、プリンタ1に設けられた定着装置15の構成及び動作について説明する。
図2は定着装置15の概略図を、
図3は
図2の部分拡大図をそれぞれ示している。
図2において定着装置15は、無端ベルトからなるベルト部材としての定着ベルト29、加熱部材としての加熱ローラ30、供給部材としての供給ローラ31、支持部材としてのテンションローラ32を有している。さらに定着装置15は、押圧部材としての摺動パッド33、回収部材34、加圧部材としての加圧ローラ35、ガイド部材36等を有している。定着ベルト29、摺動パッド33、回収部材34、加圧ローラ35は、それぞれの全幅、すなわちシート搬送方向に直交する転写シートSの幅方向における大きさが、プリンタ1で画像形成可能な最大サイズの転写シートSの幅よりも大きくなるように設定されている。
【0022】
無端状の定着ベルト29は多層構造のベルトであり、例えば基材及び離型層によって構成される二層構造のベルト、または基材及び弾性層及び離型層によって構成される三層構造のベルトである。定着ベルト29に弾性層を設けることにより、トナー像へ定着ベルト29の表面が密着し易くなり画質を向上できる。定着ベルト29は一般的な構造であり、基材にはポリイミドが用いられており、離型層にはPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)またはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が用いられている。
加熱ローラ30は内部にヒータ30aを備えており、ヒータ30aによって加熱された加熱ローラ30によって定着ベルト29が加熱される。ヒータ30aの出力制御は、加熱ローラ30に当接した定着ベルト29の表面温度を図示しない温度検出手段によって検出し、この検出結果に基づいて制御部21により行われる。加熱ローラ30は定着装置15の図示しないフレームに回転自在に支持されており、定着ベルト29の走行時に従動回転する。
【0023】
定着ベルト29が掛け渡される供給ローラ31は金属製の基部31aとその周囲に設けられた供給部31bとを備えており、基部31aを定着装置15の図示しないフレームに回転自在に支持され、同フレームに固定された図示しないモータ等の駆動手段によって回転駆動される。供給ローラ31は
図2において時計回り方向に回転駆動され、これにより定着ベルト29が
図2に矢印で示す方向に走行駆動される。
供給部31bは、フェルト、アラミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)等の不織布や、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)またはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の耐熱性及びオイル保持性を有する繊維体によって構成されており、アミノシリコーンオイル等の耐熱性を有する低粘度の潤滑剤が含浸されている。
定着ベルト29が掛け渡されるテンションローラ32は図示しない支持部材によって回転自在に支持されており、この支持部材は定着装置15の図示しないフレームに移動可能に支持されている。図示しない支持部材にはテンションローラ32を
図2において左方へと付勢する圧縮ばね32aが取り付けられており、これにより定着ベルト29にはテンションローラ32によって所定の張力が付与されている。
【0024】
摺動パッド33は、図示しない支持部材によって定着装置15の図示しないフレームに固定されている。これにより、後述する加圧ローラ35で加圧された際にも摺動パッド33の位置が変わらず、均一な幅の定着ニップを得ることができる。なお、加圧ローラ35の押圧力を制御することにより、定着ニップの幅を制御可能である。
摺動パッド33は、転写シートSの搬送方向に沿ってニップ形成面を有しており、定着ベルト29との摺動抵抗を低減させるためにニップ形成面にはフッ素樹脂層が設けられていて、ニップ形成面の両端部には曲面加工が施されている。なお、本実施形態ではニップ形成面を湾曲形成したが平面であってもよい。湾曲形成する場合には、転写シートSの搬送に支障がない程度に形成される。
【0025】
摺動パッド33としては、耐熱性部材で構成されることが好ましい。これにより、トナー定着温度域での熱による変形が防止され、安定した定着ニップを確保して出力画像の安定化を図ることができる。
摺動パッド33を構成可能な耐熱性部材としては、例えばポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマ(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の一般的な耐熱性樹脂が挙げられる。
【0026】
回収部材34は、摺動パッド33と定着ベルト29との間に設けられている。回収部材34については後述する。
加圧ローラ35は、定着ベルト29の外周部であって定着ベルト29を介して摺動パッド33と対向する位置に配置されており、定着ベルト29を介して摺動パッド33に圧接離間可能に構成されている。加圧ローラ35は、外周面に例えばシリコンゴムからなる弾性層を有する弾性体であり、定着ベルト29を介して摺動パッド33に圧接した際に弾性変形することにより、
図3に示す定着ニップNを形成する。
定着装置15の図示しないフレームに固定された板状部材からなるガイド部材36は、搬送コンベヤ37によって搬送された転写シートSを定着ニップNに向けて案内する。
【0027】
供給ローラ31が回転駆動することにより、定着ベルト29が走行駆動されると共に加熱ローラ30が従動回転され、供給部31bから定着ベルト29の内面に潤滑剤が供給される。搬送コンベヤ37によって定着装置15に送られてきた転写シートSはガイド部材36によって定着ニップNに案内され、加圧ローラ35の従動回転に伴い定着ニップNを搬送される。このとき、ヒータ30aから加熱ローラ30及び定着ベルト29を介して転写シートSに熱が伝えられて転写シートS上の転写トナーが溶融され、加圧ローラ35による圧力との相互作用により転写シートS上にトナー像が定着される。
【0028】
上述の構成において、供給ローラ31から定着ベルト29の内面に供給される潤滑剤は低粘度であるため、
図2に示す定着ベルト29の内側である内周部の高さ方向における下部に集まり、
図2に符号38で示す潤滑剤過多領域を形成する傾向がある。このような潤滑剤過多領域38が形成されると、潤滑剤過多領域38から潤滑剤が定着ベルト29の両端部から外部に漏出し、機内や画像に付着することにより機内汚損や画像不良を引き起こしていた。また、漏出により潤滑剤が枯渇すると、摺動パッド33と定着ベルト29との摩擦抵抗が上昇して定着ベルト29の摩耗が促進され、定着ベルト29の耐久性を十分に確保できなかった。さらに、潤滑剤過多領域38からフェルト製の回収部材によって潤滑剤を回収する際に、潤滑剤にトナーや塵埃等の粒子が混在すると潤滑剤が高粘度化して低トルクを維持できず、定着ベルト29の耐久性を十分に確保できないという問題点があった。さらに、フェルト材に含まれるアラミドやポリエチレンテレフタラート(PET)等の不織布は、定着ベルト29の基材に用いられているポリイミドに対して高速で摺動させると、ポリイミドの摩耗が促進されると共に潤滑剤の高粘度化がさらに促進されるという性質を有しており、定着ベルト29の耐久性が低下するという問題点があった。
【0029】
上述した問題点の発生を防止する本発明の回収部材34を以下に説明する。
回収部材34は、定着装置15の図示しないフレームに一端を固定されており、他端を定着ベルト29と摺動パッド33との間に配置されている。回収部材34は、供給部31bと同様に、フェルト、アラミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)等の不織布や、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)またはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の耐熱性及びオイル保持性を有する繊維体等によって構成されている。
回収部材34は、
図4に示すように、その幅方向長さが摺動パッド33の幅方向長さよりも大きく形成されており、その幅方向における両端部34a,34aのみを定着ベルト29の内面に接触させている。両端部34aが定着ベルト29の内面に接触する位置は上述の潤滑剤過多領域38と一致するように、回収部材34の配置位置が決定されている。
図4において、符号39は定着ベルト29を走行可能に支持するガイドリブを、白抜き矢印は定着ニップNの形成時における潤滑剤の移動方向をそれぞれ示している。潤滑剤過多領域38は、定着ベルト29の幅方向においてガイドリブ39と摺動パッド33との間の位置に形成される。
【0030】
この構成により、回収部材34によって定着ベルト29の内面において最も潤滑剤が集まる潤滑剤過多領域38に溜まった潤滑剤を回収でき、定着ベルト29の両端部からの潤滑剤の漏出を防止できる。また、回収部材34は両端部34a,34aのみを定着ベルト29の内面に接触させるので定着ベルト29の内面における摩耗を最小限に抑えることができ、定着ベルト29の耐久性を維持することができる。
【0031】
図5は、上述した実施形態の変形例を示している。この変形例は上記実施形態と比較すると、第二回収部材40を有する点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
回収部材34と同様の材質で形成された第二回収部材40は、
図5に示すように、定着ベルト29の外側である外周部の高さ方向における下部、すなわち定着ベルト29の外周面であって潤滑剤過多領域38と対応する位置に配置されている。すなわち第二回収部材40は、
図4に示すように、定着ベルト29を介して両端部34aと対向する位置にそれぞれ配置されている。第二回収部材40は、ガイドリブ39に取り付けられた図示しないブラケットによって支持されている。
この構成により、定着ベルト29に供給された潤滑剤の供給量が回収部材34により回収可能な許容量を超えた場合であっても、定着ベルト29の外部で第二回収部材40が潤滑剤を吸収するため、機内の汚損を防止でき異常画像の発生を防止できる。
【0032】
上記実施形態及び変形例では、本発明が適用可能な画像形成装置としてフルカラーのプリンタ1を用いた例を示したが、本発明が適用可能な画像形成装置としてはこれに限られず、複写装置、ファクシミリ、複合機等にも本発明は適用可能である。
また上記実施形態では、画像が形成される被記録媒体として転写シートSを用いる構成を示したが、この転写シートSとは記録紙には限定されず、厚紙、ハガキ、ロール紙、封筒、普通紙、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、OHPフィルム、樹脂フィルム等も含まれ、シート状で画像形成可能であればどのようなものを用いてもよい。
【0033】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
[1]無端状のベルト部材と、前記ベルト部材を加熱する加熱部材と、前記ベルト部材を走行可能に支持する支持部材と、前記ベルト部材の内周部に配置され、前記ベルト部材を外方に向けて押圧する押圧部材と、前記ベルト部材を介して前記押圧部材を押圧して、前記ベルト部材と共に被記録媒体が挟持搬送される定着ニップを形成する加圧部材と、前記ベルト部材の内面に潤滑剤を供給する供給部材と、前記内面に付着した潤滑剤を回収する回収部材とを備え、前記回収部材は、前記内周部の高さ方向における下部に配置されかつ幅方向両端部のみが前記内面に接触する定着装置である。
[2]前記ベルト部材の外周部の高さ方向における下部に配置されかつ軸方向両端部のみが前記ベルト部材の外面に接触する第二回収部材を有することを特徴とする[1]に記載の定着装置である。
[3][1]または[2]に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0035】
1 画像形成装置(プリンタ)
15 定着装置
29 ベルト部材(定着ベルト)
30 加熱部材(加熱ローラ)
31 供給部材(供給ローラ)
32 支持部材(テンションローラ)
33 押圧部材(摺動パッド)
34 回収部材
34a 両端部
35 加圧部材(加圧ローラ)
40 第二回収部材
N 定着ニップ
S 被記録媒体(転写シート)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】特許第4533233号公報
【特許文献2】特開2014-174358号公報
【特許文献3】特開2002-372881号公報
【特許文献4】特開2018-72379号公報
【特許文献5】特開2020-71340号公報