(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070925
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 9/00 20060101AFI20240517BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20240517BHJP
B24B 49/04 20060101ALI20240517BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
B24B9/00 601H
B24B49/10
B24B49/04 Z
H01L21/304 621E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181552
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】小寺 健治
(72)【発明者】
【氏名】洪 國維
(72)【発明者】
【氏名】大橋 弘尭
(72)【発明者】
【氏名】山野邊 北斗
(72)【発明者】
【氏名】石川 翔
【テーマコード(参考)】
3C034
3C049
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB73
3C034CA02
3C034CA12
3C034CA26
3C034CA30
3C034CB03
3C034CB08
3C034CB18
3C034DD10
3C034DD20
3C049AA05
3C049AA12
3C049AA13
3C049AA16
3C049AC02
3C049BA02
3C049BA07
3C049BA09
3C049BB02
3C049BB06
3C049BB08
3C049BB09
3C049BC02
3C049CA01
3C049CB01
5F057AA02
5F057AA19
5F057BA11
5F057CA16
5F057DA06
5F057EB22
5F057GA13
5F057GB31
(57)【要約】
【課題】ウェハなどの基板の周縁部の研磨量を検出することができる研磨装置が提供される。
【解決手段】研磨装置は、基板Wの周縁部の研磨量を検出するセンサ構造体100を備える。センサ構造体100は、接触面102aを有するセンサヘッド102と、センサヘッド102の変位により基板Wの周縁部の研磨量を検出する変位センサ101と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持して回転させる基板ステージと、
前記基板の周縁部に研磨具を押し付ける研磨ヘッドと、
前記周縁部の研磨量を検出するセンサ構造体と、を備え、
前記センサ構造体は、
前記周縁部に接触する接触面を有するセンサヘッドと、
前記センサヘッドの変位により前記周縁部の研磨量を検出する変位センサと、を備えている、研磨装置。
【請求項2】
前記研磨装置は、前記研磨ヘッドおよび前記センサ構造体の動作を制御する制御装置を備えており、
前記制御装置は、前記研磨ヘッドによって研磨された前記周縁部の研磨対象領域と同じ領域の研磨量を前記センサ構造体に検出させる、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記研磨装置は、前記センサ構造体を傾斜させるセンサチルト機構を備えており、
前記制御装置は、前記センサチルト機構の動作により、前記センサ構造体の傾斜角度を前記研磨ヘッドの傾斜角度と同期させて、前記接触面を前記周縁部に接触させる、請求項2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記センサチルト機構の動作により、前記センサ構造体の傾斜角度を変更して、前記基板の回転方向における基準値を取得し、
前記研磨ヘッドの傾斜角度と同一の傾斜角度で前記センサ構造体を前記周縁部に押し付けて、前記基準値からの変位量を、前記研磨ヘッドによって研磨された研磨量に決定する、請求項3に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記基板の研磨終点を決定するための目標研磨量を記憶しており、
前記制御装置は、前記決定された研磨量が前記目標研磨量に到達したら、前記周縁部の研磨を終了する、請求項4に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記周縁部における複数の研磨角度を記憶しており、
前記制御装置は、前記複数の研磨角度のうちの1つの研磨角度における研磨量が前記目標研磨量に到達したら、前記研磨ヘッドの傾斜角度とともに、前記センサ構造体の傾斜角度を変更して、前記複数の研磨角度のうちの他の研磨角度における研磨量を取得する、請求項5に記載の研磨装置。
【請求項7】
前記センサ構造体は、
前記センサヘッドを前記周縁部に付勢する付勢部材と、
前記センサヘッドの移動方向を直線方向に規制するリニアガイドと、を備えている、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項8】
前記接触面は、前記周縁部に形成されたノッチよりも大きな幅を有している、請求項1に記載の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造の過程において、ウェハの周縁部には種々の膜が形成される。これらの膜は、パーティクルの原因となりうるので、膜を周縁部から除去する必要がある。そこで、研磨テープなどの研磨具を備えた研磨装置を用いて、ウェハの周縁部を研磨し、周縁部から膜を除去する。この研磨装置は、ウェハをその軸心を中心に回転させながら、研磨具をウェハの周縁部に押し付けることにより、周縁部を研磨するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ウェハの周縁部は、傾斜しており、かつ小さな領域を有しているため、一般的に、ウェハの周縁部の研磨量を精度よく、検出することは困難である。研磨量を精度よく検出することは、ウェハの研磨終点を正確に決定することに寄与するため、非常に重要である。
【0005】
そこで、本発明は、ウェハなどの基板の周縁部の研磨量を精度よく、検出することができる研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、基板を保持して回転させる基板ステージと、前記基板の周縁部に研磨具を押し付ける研磨ヘッドと、前記周縁部の研磨量を検出するセンサ構造体と、を備える研磨装置が提供される。前記センサ構造体は、前記周縁部に接触する接触面を有するセンサヘッドと、前記センサヘッドの変位により前記周縁部の研磨量を検出する変位センサと、を備えている。
【0007】
一態様では、前記研磨装置は、前記研磨ヘッドおよび前記センサ構造体の動作を制御する制御装置を備えており、前記制御装置は、前記研磨ヘッドによって研磨された前記周縁部の研磨対象領域と同じ領域の研磨量を前記センサ構造体に検出させる。
一態様では、前記研磨装置は、前記センサ構造体を傾斜させるセンサチルト機構を備えており、前記制御装置は、前記センサチルト機構の動作により、前記センサ構造体の傾斜角度を前記研磨ヘッドの傾斜角度と同期させて、前記接触面を前記周縁部に接触させる。
一態様では、前記制御装置は、前記センサチルト機構の動作により、前記センサ構造体の傾斜角度を変更して、前記基板の回転方向における基準値を取得し、前記研磨ヘッドの傾斜角度と同一の傾斜角度で前記センサ構造体を前記周縁部に押し付けて、前記基準値からの変位量を、前記研磨ヘッドによって研磨された研磨量に決定する。
【0008】
一態様では、前記制御装置は、前記基板の研磨終点を決定するための目標研磨量を記憶しており、前記制御装置は、前記決定された研磨量が前記目標研磨量に到達したら、前記周縁部の研磨を終了する。
一態様では、前記制御装置は、前記周縁部における複数の研磨角度を記憶しており、前記制御装置は、前記複数の研磨角度のうちの1つの研磨角度における研磨量が前記目標研磨量に到達したら、前記研磨ヘッドの傾斜角度とともに、前記センサ構造体の傾斜角度を変更して、前記複数の研磨角度のうちの他の研磨角度における研磨量を取得する。
【0009】
一態様では、前記センサ構造体は、前記センサヘッドを前記周縁部に付勢する付勢部材と、前記センサヘッドの移動方向を直線方向に規制するリニアガイドと、を備えている。
一態様では、前記接触面は、前記周縁部に形成されたノッチよりも大きな幅を有している。
【発明の効果】
【0010】
研磨装置は、基板の周縁部の研磨量を検出するセンサ構造体を備えているため、基板の周縁部の研磨量を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(a)および
図1(b)は、基板の周縁部を示す拡大断面図である。
【
図2】ウェハの周縁部を研磨するための研磨装置を示す模式図である。
【
図3】研磨ヘッドを傾斜させるヘッドチルト機構を示す図である。
【
図4】ヘッドチルト機構により上下に傾動する研磨ヘッド(およびセンサ構造体)を示す図である。
【
図6】センサ構造体を傾斜させるセンサチルト機構を示す図である。
【
図7】ウェハの周縁部の研磨量を検出するフローチャートを示す図である。
【
図9】ウェハを回転しながら取得した基準値の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1(a)および
図1(b)は、基板の周縁部を示す拡大断面図である。より具体的には、
図1(a)はいわゆるストレート型の基板の断面図であり、
図1(b)はいわゆるラウンド型の基板の断面図である。基板の例としては、ウェハが挙げられる。基板の周縁部は、ベベル部、トップエッジ部、およびボトムエッジ部を含む領域として定義される。
【0013】
図1(a)のウェハWにおいて、ベベル部は、上側傾斜部(上側ベベル部)P、下側傾斜部(下側ベベル部)Q、および側部(アペックス)Rから構成されるウェハWの最外周面(符号Sで示す)である。
図1(b)のウェハWにおいては、ベベル部は、ウェハWの最外周面を構成する、湾曲した断面を有する部分(符号Sで示す)である。
【0014】
トップエッジ部は、ベベル部Sよりも半径方向内側に位置する環状の平坦部T1である。ボトムエッジ部は、トップエッジ部とは反対側に位置し、ベベル部Sよりも半径方向内側に位置する環状の平坦部T2である。トップエッジ部T1およびボトムエッジ部T2は、ベベル部Sに接続されている。トップエッジ部T1は、デバイスが形成された領域を含むこともある。
【0015】
図2は、ウェハの周縁部を研磨するための研磨装置を示す模式図である。この研磨装置は、基板の一例であるウェハWを保持して回転させる基板ステージ32と、基板ステージ32に保持されているウェハWの周縁部に研磨具としての研磨テープ42を押し付ける研磨ヘッド34と、を備えている。
【0016】
基板ステージ32は、ウェハWを真空吸着により保持する基板保持面37と、基板保持面37を回転させるステージモータ39と、を備えている。ウェハWは、その裏面が下向きの状態で、図示しない搬送装置により基板保持面37上に載置される。基板保持面37には溝37aが形成されており、この溝37aは真空ライン40に連通している。真空ライン40は、図示しない真空源(例えば真空ポンプ)に接続されている。
【0017】
真空ライン40を通じて基板保持面37の溝37aに真空が形成されると、ウェハWは真空吸引により基板保持面37上に保持される。この状態でステージモータ39は、基板保持面37を回転させ、ウェハWをその軸線を中心に回転させる。基板保持面37の直径はウェハWの直径よりも小さく、ウェハWの裏面の中心側領域は基板保持面37によって保持される。ウェハWの周縁部の全体は、基板保持面37から外側にはみ出している。
【0018】
研磨ヘッド34は、基板保持面37に隣接して配置されている。より具体的には、研磨ヘッド34は、基板保持面37上のウェハWの周縁部に対向して配置されている。研磨ヘッド34は、研磨具としての研磨テープ42を支持する複数のガイドローラー43と、研磨テープ42をウェハWの周縁部に押し付ける押圧部材(例えば、押圧パッド)44と、押圧部材44に押圧力を付与するアクチュエータとしてのエアシリンダ45と、を備えている。
【0019】
エアシリンダ45は、押圧部材44に連結されており、押圧部材44を基板保持面37に向かって移動させるように構成されている。エアシリンダ45は押圧部材44に押圧力を与え、これにより押圧部材44は、研磨テープ42をウェハWの周縁部に押し付ける。なお、研磨具として、研磨テープ42に代えて砥石を用いてもよい。
【0020】
研磨装置は、基板保持面37に保持されたウェハWに近接または離間する方向に、研磨ヘッド34を移動させるヘッド移動機構60Aを備えている。ヘッド移動機構60Aは、研磨ヘッド34に連結された連結ブロック66Aと、連結ブロック66Aを介して研磨ヘッド34を移動させるリニアアクチュエータ67Aと、を備えている。リニアアクチュエータ67Aは、例えば、ボールねじ機構およびサーボモータの組み合わせ(図示せず)であり、研磨ヘッド34を、ウェハWを研磨する位置に近接(または離間)させるように構成されている。
【0021】
研磨装置は、研磨ヘッド34に組み込まれたテープ送り機構50を備えている。テープ送り機構50は、研磨テープ42を送るように構成されている。研磨テープ42の一端は巻き出しリール51に接続され、他端は巻き取りリール52に接続されている。テープ送り機構50は、研磨テープ42を巻き出しリール51から研磨ヘッド34を経由して巻き取りリール52に所定の速度で送るように構成されている。使用される研磨テープ42の例としては、表面に砥粒が固定されたテープ、または硬質の不織布からなるテープなどが挙げられる。
【0022】
研磨装置は、基板保持面37に保持されたウェハWの上方に配置された純水供給ノズル57を備えている。純水供給ノズル57は、ウェハWに純水を供給するように構成されている。純水供給ノズル57は、基板保持面37の中心の上方に配置されている。回転するウェハWの上面に供給された純水は、遠心力によりウェハWの上面の全体に広がり、ウェハWの上面全体を覆う。したがって、純水は、ウェハWの周縁部の研磨中にウェハWの上面にパーティクルが付着することを防止することができる。
【0023】
図2に示すように、研磨装置は、ウェハWの周縁部の研磨量を検出するセンサ構造体100を備えている。センサ構造体100は、ウェハWの周縁部に接触する接触面102aを有するセンサヘッド102と、センサヘッド102に接続されており、かつセンサヘッド102の変位によりウェハWの周縁部の研磨量を検出する変位センサ101と、を備えている。変位センサ101の一例として、近接センサ、深さセンサ、レーザースケールなどの検出器を挙げることができる。センサヘッド102は、高硬度の板部材(例えば、ウレタンゴム90度など)に摺動性の良いコーティングを施したもの、もしくは、高硬度の板部材に、ウェハとの接触による衝撃を吸収する軟質(例えば、樹脂製)の板材を貼り合わせたもので構成されている。
【0024】
センサ構造体100は、センサヘッド102をウェハWの周縁部に接触させることにより、研磨ヘッド34によって研磨されたウェハWの周縁部の研磨量を検出するように構成されている。センサ構造体100の詳細な構造については、後述する。
【0025】
研磨装置は、基板保持面37に保持されたウェハWに近接または離間する方向に、センサ構造体100を移動させるヘッド移動機構60Bを備えている。ヘッド移動機構60Bは、センサ構造体100に連結された連結ブロック66Bと、連結ブロック66Bを介してセンサ構造体100を移動させるリニアアクチュエータ67Bと、を備えている。ヘッド移動機構60Bは、ヘッド移動機構60Aと同様の構造を有しているため、ヘッド移動機構60Bの詳細な説明を省略する。
【0026】
図2に示すように、研磨装置は、その構成要素の動作を制御する制御装置80を備えている。制御装置80は、専用のコンピュータまたは汎用のコンピュータから構成される。制御装置80は、プログラムを格納した記憶装置110と、プログラムに従って演算を実行する処理装置120と、を備えている。
【0027】
図2に示す実施形態では、制御装置80は、研磨ヘッド34、センサ構造体100、ヘッド移動機構60A,60B、およびステージモータ39に電気的に接続されており、これら研磨ヘッド34、センサ構造体100、ヘッド移動機構60A,60B、およびステージモータ39の動作を制御するように構成されている。制御装置80は、純水供給ノズル57の動作を制御してもよい。
【0028】
図3は、研磨ヘッドを傾斜させるヘッドチルト機構を示す図である。
図4は、ヘッドチルト機構により上下に傾動する研磨ヘッド(およびセンサ構造体)を示す図である。
図3に示すように、研磨装置は、研磨ヘッド34を基板ステージ32上のウェハWの表面に対して傾斜(傾動)させるヘッドチルト機構81を備えている。ヘッドチルト機構81は、研磨ヘッド34を保持するクランクアーム55と、クランクアーム55に連結されたサーボモータ56と、を備えている。
【0029】
クランクアーム55の一端は研磨ヘッド34に固定されており、クランクアーム55の他端はサーボモータ56に連結されている。クランクアーム55は全体として基板保持面37と平行である。制御装置80は、サーボモータ56に電気的に接続されている。サーボモータ56は、制御装置80の指令に従って、クランクアーム55を時計回りおよび反時計回りに所定の角度だけ交互に回転させると、研磨ヘッド34の全体がウェハWの表面に対して上下に傾動する(
図4の矢印参照)。このようにして、制御装置80は、ヘッドチルト機構81の動作を制御することができる。
【0030】
ウェハWの周縁部は次のようにして研磨される。基板保持面37に保持されたウェハWは、その軸線を中心としてステージモータ39により回転される。回転するウェハWの上面に液体供給ノズル57から純水が供給される。研磨ヘッド34は、研磨テープ42をウェハWの周縁部に押し付けながら、上下に傾動する。研磨テープ42は、純水の存在下で、回転するウェハWの周縁部に摺接し、これにより周縁部を研磨する。
【0031】
図5は、センサ構造体の拡大図を示す図である。
図5に示すように、センサ構造体100は、変位センサ101およびセンサヘッド102と、センサヘッド102をウェハWの周縁部に向かって付勢する付勢部材103と、変位センサ101が固定されたベースプレート104と、センサヘッド102の移動方向を直線方向に規制するリニアガイド108と、を備えている。
【0032】
付勢部材103は、センサヘッド102およびベースプレート104に固定されている。本実施形態では、付勢部材103はばねであるが、一実施形態では、センサヘッド102を付勢するエアシリンダであってもよい。付勢部材103は、回転するウェハWの周縁部に接触するセンサヘッド102が勢いよく跳ね返されず、かつウェハWを必要以上に撓ませない程度の付勢力で、センサヘッド102をウェハWの周縁部に押し付ける。
【0033】
リニアガイド108は、ベースプレート104に固定されたガイドレール105と、センサヘッド102に固定され、かつガイドレール105に装着されたスライダ106と、を備えている。スライダ106がガイドレール105に沿って移動すると、スライダ106に固定されたセンサヘッド102は、直線方向に移動する。
【0034】
図6は、センサ構造体を傾斜させるセンサチルト機構を示す図である。
図6に示すように、研磨装置は、センサ構造体100を基板ステージ32上のウェハWの表面に対して傾斜(傾動)させるセンサチルト機構151を備えている。センサチルト機構151は、センサ構造体100を保持するクランクアーム155と、クランクアーム155に連結されたサーボモータ156と、を備えている。
【0035】
クランクアーム155の一端はセンサ構造体100に固定されており、クランクアーム155の他端はサーボモータ156に連結されている。クランクアーム155は全体として基板保持面37と平行である。制御装置80は、サーボモータ156に電気的に接続されている。サーボモータ156は、制御装置80の指令に従って、クランクアーム155を時計回りおよび反時計回りに所定の角度だけ交互に回転させると、センサ構造体100の全体がウェハWの表面に対して上下に傾動する(
図4の矢印参照)。このようにして、制御装置80は、センサチルト機構151の動作を制御することができる。
【0036】
本実施形態では、ヘッドチルト機構81およびセンサチルト機構151は同一の構造を有しているが、一実施形態では、これらヘッドチルト機構81およびセンサチルト機構151は、異なる構造を有してもよい。
【0037】
図6に示すように、センサヘッド102の接触面102aは、ウェハWの周縁部に形成されたノッチNtよりも大きな幅を有している。したがって、ウェハWが回転している状態で、センサヘッド102をウェハWの周縁部に押し付けても、センサヘッド102がノッチNtに入り込むことはなく、ノッチNt(および/またはセンサヘッド102)の破損を防止することができる。
【0038】
回転するウェハWには、回転力が作用しているため、変位センサ101を直接、ウェハWの周縁部に接触させることにより、変位センサ101はウェハWの回転力の影響を受けて、ウェハWの周縁部の研磨量を精度よく検出することができないおそれがある。本実施形態では、センサ構造体100はセンサヘッド102をウェハWの周縁部に接触させる構造を有しているため、変位センサ101は、センサヘッド102を介して、ウェハWの周縁部の研磨量を精度よく検出することができる。
【0039】
さらに、センサヘッド102を設けることにより、変位センサ101が直接、ウェハWの周縁部に接触することを防止することができる。結果として、変位センサ101の、ノッチNtとの接触に起因する破損を防止することができる。
【0040】
制御装置80は、研磨ヘッド34によって研磨されたウェハWの周縁部の研磨対象領域と同じ領域(研磨量検出領域)の研磨量をセンサ構造体100に検出させるように構成されている。制御装置80は、ヘッドチルト機構81およびセンサチルト機構151の動作を同期させるように構成されている。したがって、制御装置80は、センサチルト機構151の動作により、センサ構造体100の傾斜角度を研磨ヘッド34の傾斜角度と同期させて、センサヘッド102の接触面102aを、研磨中のウェハWの周縁部に接触させる。
【0041】
このような構成により、制御装置80は、センサ構造体100の研磨量検出領域を研磨ヘッド34の研磨対象領域と一致させることができ、結果として、センサ構造体100は、ウェハWの周縁部の研磨量をリアルタイムで検出することができる。制御装置80は、センサ構造体100から送られた研磨量に基づいて、研磨ヘッド34およびセンサ構造体100の動作を制御する。
【0042】
図7は、ウェハの周縁部の研磨量を検出するフローチャートを示す図である。まず、制御装置80は、基板ステージ32の基板保持面37上に保持されたウェハWを回転させ、回転しているウェハWの周縁部にセンサ構造体100のセンサヘッド102を押し付ける(
図7のステップS101参照)。
【0043】
その後、制御装置80は、センサヘッド102をウェハWの周縁部に押し付けながら、センサ構造体100の傾斜角度を連続的に変更し、ウェハWの研磨角度ごとの基準値を取得する(
図7のステップS102参照)。制御装置80は、基準値を取得することにより、ウェハWの周縁部の初期状態を記憶する。
【0044】
図8は、ウェハの研磨角度の一例を示す図である。
図8に示す実施形態では、ウェハWの周縁部に沿った5つの研磨角度(研磨角度1~研磨角度5)が設けられており、制御装置80の記憶装置110は、これら5つの研磨角度を記憶している。一実施形態では、少なくとも1つの研磨角度が設けられてもよい。
【0045】
図9は、ウェハを回転しながら取得した基準値の変化を示す図である。
図9では、横軸はウェハWの回転角度(0度~360度)を示しており、縦軸は変位センサ101の移動距離を示している。
図9に示すように、制御装置80は、ウェハWを回転させた状態で、センサヘッド102をウェハWの周縁部に押し付けて、ウェハWの回転角度ごとの基準値を取得する。
【0046】
このような工程を繰り返して、すべての研磨角度に対する基準値を取得する。例えば、5つの研磨角度が設けられている場合には、制御装置80は、研磨角度1~研磨角度5におけるウェハWの回転角度ごとの基準値を取得する。
【0047】
例えば、制御装置80は、センサチルト機構151を動作させて、センサ構造体100の傾斜角度を研磨角度1(
図8参照)に決定し、回転しているウェハWの周縁部にセンサヘッド102を押し付けながら、研磨角度1におけるウェハWの周縁部の基準値を変位センサ101に検出させる。
【0048】
次いで、制御装置80は、センサチルト機構151を動作させて、センサ構造体100の傾斜角度を研磨角度2(
図8参照)に決定し、回転しているウェハWの周縁部にセンサヘッド102を押し付けながら、研磨角度2におけるウェハWの周縁部の基準値を変位センサ101に検出させる。このようにして、制御装置80は、記憶装置110に記憶された研磨角度のすべてにおけるウェハWの周縁部の基準値を変位センサ101に検出させる。
【0049】
図9に示す実施形態では、変位センサ101の移動距離は連続的に変化しており、ウェハWの回転角度における基準値も連続的に変化している。このような場合、制御装置80は、連続的に変化する基準値を平均化してもよい。
【0050】
図7のステップS102の後、制御装置80は、研磨ヘッド34の傾斜角度と同一の傾斜角度でセンサ構造体100をウェハWの周縁部に押し付ける。このとき、研磨ヘッド34は、ウェハWの周縁部を連続的に研磨しているため、センサヘッド102は、付勢部材103によりウェハWの中心に向かって変位する。
【0051】
変位センサ101は、その基準値からの変位量を検出する。変位センサ101によって検出された変位量は、研磨ヘッド34によって研磨された研磨量に相当するため、制御装置80は、変位センサ101によって検出された変位量を、研磨ヘッド34によって研磨された研磨量に決定する。
【0052】
図7のステップS103に示すように、制御装置80は、研磨ヘッド34の傾斜角度と同じ傾斜角度でセンサヘッド102をウェハWの周縁部に押し付けて、研磨量をリアルタイムで決定(測定)する。制御装置80の記憶装置110は、ウェハWの研磨終点を決定するための目標研磨量を記憶している。したがって、制御装置80は、決定された研磨量が目標研磨量に到達したら、研磨ヘッド34の傾斜角度とともに、センサ構造体100の傾斜角度を変更して、研磨すべき研磨角度を研磨済みの研磨角度(例えば、研磨角度1)から新たな研磨角度(例えば、研磨角度2)に変更する。
【0053】
図7のステップS104に示すように、すべての研磨角度における研磨量が目標研磨量に到達したら、制御装置80は、ウェハWの周縁部の研磨を終了させる。一実施形態では、1つの研磨角度が設けられている場合には、制御装置80は、決定された研磨量が目標研磨量に到達したら、ウェハWの周縁部の研磨を終了する。
【0054】
ウェハWの周縁部は、傾斜しており、かつ小さな領域を有しているため、一般的に、ウェハWの周縁部の研磨量を精度よく、研磨角度ごとに検出することは困難である。本実施形態によれば、研磨ヘッド34とは別に設けられたコンパクトなセンサ構造体100は、研磨ヘッド34の傾斜角度と同一の傾斜角度でウェハWの周縁部に接触することができる。したがって、センサ構造体100は、研磨中のウェハWの周縁部の研磨量を研磨角度ごとにリアルタイムで検出することができる。
【0055】
研磨ヘッド34は、ウェハWの周縁部に接触した瞬間からウェハWの周縁部の研磨を開始する。したがって、研磨ヘッド34にセンサ(すなわち、変位センサ101に相当するセンサ)を設けても、上記センサは、ゼロ研磨量(研磨開始時における研磨量)を検出することができない。結果として、上記センサは、所望の研磨量を検出することができないおそれがある。
【0056】
本実施形態では、センサ構造体100は、研磨ヘッド34とは別に設けられているため、研磨ヘッド34と同時にウェハWの周縁部に接触することができる。したがって、変位センサ101は、ゼロ研磨量を検出することができ、結果として、所望の研磨量を確実に検出することができる。
【0057】
基板ステージ32は、その据え付け誤差に起因して、ウェハWを傾斜して保持する場合がある。この場合、基板ステージ32に保持されたウェハWが回転すると、ウェハWの表面が水平方向に対して傾斜してしまう。この状態で、研磨ヘッド34をウェハWの周縁部に接触させても、研磨ヘッド34は、安定的に、ウェハWの周縁部を研磨することができない。さらに、ウェハWの中心および基板ステージ32の回転中心がずれている場合、ウェハWは偏心回転してしまい、研磨ヘッド34は、安定的に、ウェハWの周縁部を研磨することができない。
【0058】
本実施形態では、センサ構造体100は、センサヘッド102をウェハWの周縁部に接触させる接触型のセンサ構造を有している。したがって、制御装置80は、変位センサ101によって検出された変位量に基づいて、研磨中におけるウェハWの配置状態(例えば、ウェハWの傾斜、ウェハWの偏心回転)を認識することができる。
【0059】
センサヘッド102をウェハWの周縁部に接触(面接触)させることにより、ウェハWが水平方向に対して傾斜して回転している場合であっても、センサヘッド102は、ウェハWの周縁部から離間することなく、ウェハWの周縁部に接触し続けることができる。結果として、制御装置80は、ウェハWの配置状態における影響を最小限に留めつつ、研磨量を測定することができる。
【0060】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0061】
32 基板ステージ
34 研磨ヘッド
37 基板保持面
37a 溝
39 ステージモータ
40 真空ライン
42 研磨テープ
43 ガイドローラー
44 押圧部材
45 エアシリンダ
50 テープ送り機構
51 巻き出しリール
52 巻き取りリール
55 クランクアーム
56 サーボモータ
57 純水供給ノズル
60A,60B ヘッド移動機構
66A,66B 連結ブロック
67A,67B リニアアクチュエータ
80 制御装置
81 ヘッドチルト機構
100 センサ構造体
101 変位センサ
102 センサヘッド
102a 接触面
103 付勢部材
104 ベースプレート
105 ガイドレール
106 スライダ
108 リニアガイド
110 記憶装置
120 処理装置
151 センサチルト機構
155 クランクアーム
156 サーボモータ