(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071024
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、ヘッドモジュール、ヘッドユニット、液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/055 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
B41J2/055
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181725
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】平林 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】益田 俊顕
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF40
2C057AG44
2C057AG75
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ダンパー部材の強度を確保すること。
【解決手段】液体を吐出するノズルと、ノズルに通じる個別液室と、個別液室内に圧力を発生させる圧電素子と、可撓性のダンパー、および、ダンパーを保持するダンパーフレーム21を有するダンパー部材と、を備えた液体吐出ヘッドであって、ダンパー部材は、ダンパーに面したキャビティ231を有するダンパー領域23と、ダンパー領域23よりもダンパー部材の長手方向の一方側および他方側にそれぞれ設けられた、ダンパー部材の外部に連通する貫通孔25と、貫通孔25に連通し、ダンパー部材の外周端に連通する第1連通路31と、一方で貫通孔25に連通し、他方でキャビティ231に連通する第2連通路32と、を有し、一方の貫通孔25に連通する一方の第1連通路31の少なくとも一部と、他方の貫通孔25に連通する他方の第1連通路31の少なくとも一部とが同一直線上に配置されないことを特徴とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルと、
前記ノズルに通じる個別液室と、
前記個別液室内に圧力を発生させる圧力発生部材と、
可撓性のダンパー、および、前記ダンパーを保持する保持部材を有するダンパー部材と、を備えた液体吐出ヘッドであって、
前記保持部材は、
前記ダンパーに面したキャビティを有するダンパー領域と、
前記ダンパー領域よりも前記ダンパー部材の長手方向の一方側および他方側にそれぞれ設けられた、前記ダンパー部材の外部に連通する貫通孔と、
前記貫通孔に連通し、前記ダンパー部材の外周端に連通する第1連通路と、
一方で前記貫通孔に連通し、他方で前記キャビティに連通する第2連通路と、を有し、
一方の前記貫通孔に連通する一方の第1連通路の少なくとも一部と、他方の前記貫通孔に連通する他方の第1連通路の少なくとも一部とが同一直線上に配置されないことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
液体を吐出するノズルと、
前記ノズルに通じる個別液室と、
前記個別液室内に圧力を発生させる圧力発生部材と、
可撓性のダンパー、および、前記ダンパーを保持する保持部材を有するダンパー部材と、を備えた液体吐出ヘッドであって、
前記保持部材は、
前記ダンパーに面したキャビティを有するダンパー領域と、
前記ダンパー領域外に設けられ、前記ダンパー部材の外部に連通する貫通孔と、
前記貫通孔に連通し、前記ダンパー部材の外周端に連通する第1連通路と、
一方で前記貫通孔に連通し、他方で前記キャビティに連通する第2連通路と、を有し、
前記第1連通路の少なくとも一部と、前記第2連通路の前記貫通孔に連通する部分とが同一直線上に配置されないことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
液体を吐出するノズルと、
前記ノズルに通じる個別液室と、
前記個別液室内に圧力を発生させる圧力発生部材と、
可撓性のダンパー、および、前記ダンパーを保持する保持部材を有するダンパー部材と、を備えた液体吐出ヘッドであって、
前記保持部材は、
前記ダンパーに面したキャビティを有するダンパー領域と、
前記ダンパー領域外に設けられ、前記ダンパー部材の外部に連通する貫通孔と、
一方で前記貫通孔に連通し、他方で前記キャビティに連通する第2連通路と、
前記キャビティ同士をつなぐ第3連通路と、を有し、
前記第2連通路の前記キャビティに連通する部分と前記第3連通路の少なくとも一部とが同一直線上に配置されないことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
液体を吐出するノズルと、
前記ノズルに通じる個別液室と、
前記個別液室内に圧力を発生させる圧力発生部材と、
可撓性のダンパー、および、前記ダンパーを保持する保持部材を有するダンパー部材と、を備えた液体吐出ヘッドであって、
前記保持部材は、
前記ダンパーに面したキャビティを複数有するダンパー領域と、
前記キャビティ同士をつなぐ複数の第3連通路と、を有し、
前記第3連通路は他の連通路を介して前記ダンパー部材外に連通し、
前記第3連通路同士の少なくとも一部が同一直線上に配置されないことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
長手方向の一方側に設けられた前記貫通孔は、前記ダンパー領域よりも長手方向の一方側の領域の一方側の端部側に設けられ、
長手方向の他方側に設けられた前記貫通孔は、前記ダンパー領域よりも長手方向の他方側の領域の他方側の端部側に設けられる請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記ダンパー部材は、
前記ダンパー領域に設けられた複数の前記キャビティと、
複数の前記キャビティ同士をつなぐ第3連通路と、を有し、
一方の前記第1連通路の少なくとも一部と、他方の前記第1連通路の少なくとも一部と、前記第2連通路の少なくとも一部と、前記第3連通路の少なくとも一部とのすべてが、同一直線上に配置されない請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1から6いずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを複数備えたヘッドモジュール。
【請求項8】
請求項7記載のヘッドモジュールを複数備えたヘッドユニット。
【請求項9】
請求項1から6いずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、ヘッドモジュール、ヘッドユニット、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電体を変形させて液体としてのインクを吐出する液体吐出ヘッドでは、圧電体の変形時に、隣接する液室への振動の伝播やインク流量の変動による振動を吸収するためのダンパー部材が設けられる。
【0003】
このダンパー部材が振動するキャビティは閉空間として設けられ、キャビティ内の圧力を逃がすための連通路や連通孔がキャビティ内に設けられる。
【0004】
例えば特許文献1(特開2015-116769号公報)では、一方がダンパー室に連通し、他方が大気連通孔に連通する連通路を有する連通路形成部材が設けられる。
【0005】
しかし、ダンパー部材内に大気側と連通する連通路や連通孔を設けることにより、ダンパー部材の強度が低下し、破損しやすくなるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダンパー部材の強度を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、液体を吐出するノズルと、前記ノズルに通じる個別液室と、前記個別液室内に圧力を発生させる圧力発生部材と、可撓性のダンパー、および、前記ダンパーを保持する保持部材を有するダンパー部材と、を備えた液体吐出ヘッドであって、前記保持部材は、前記ダンパーに面したキャビティを有するダンパー領域と、前記ダンパー領域よりも前記ダンパー部材の長手方向の一方側および他方側にそれぞれ設けられた、前記ダンパー部材の外部に連通する貫通孔と、前記貫通孔に連通し、前記ダンパー部材の外周端に連通する第1連通路と、一方で前記貫通孔に連通し、他方で前記キャビティに連通する第2連通路と、を有し、一方の前記貫通孔に連通する一方の第1連通路の少なくとも一部と、他方の前記貫通孔に連通する他方の第1連通路の少なくとも一部とが同一直線上に配置されないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ダンパー部材の強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】液体吐出ヘッド内のダンパー部材を含む層構成を示す分解斜視図である。
【
図4】ダンパーフレームおよびダンパーを示す斜視図である。
【
図6】本発明とは異なる連通路の配置を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る連通路の配置を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る連通路の配置を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る連通路の配置を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る連通路の配置を示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る連通路の配置を示す図である。
【
図12】ヘッドモジュールのヘッド短手方向に沿う断面図である。
【
図14】ヘッドモジュールのノズル面側から見た分解斜視図である。
【
図15】ヘッドモジュールのヘッド、ベース部材およびカバー部材を表す分解斜視図である。
【
図17】ヘッドユニットの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
図1は、液体吐出ヘッド内のダンパー部材などを示す斜視図である。液体吐出ヘッド内には、ノズル板10、圧電素子を保持する保持基板50、ダンパー部材などが積層される。
【0012】
ダンパー部材20は、ダンパーを保持する保持部材としてのダンパーフレーム21と、可撓性のダンパー22とからなる。ダンパー22は、ダンパーフレーム21のノズル板側の面全体に形成され、薄膜状をなしている。ダンパー22およびダンパー22はSiを含むSi系材料からなる。本実施形態のダンパーフレーム21およびダンパー22は、シリコンウエハを切り出して一体的に形成された後、ダンパーフレーム21およびダンパー22に分離されて互いに接着される。
【0013】
以下、
図2~
図5を用いてダンパー部材のより詳細な構成について説明する。
図2は、ダンパーフレーム21をノズル板側から見た底面図である。
図3は
図2の貫通孔周辺を抜き出した拡大図である。
図4は
図3の部分のダンパーフレーム21およびダンパー22を示した斜視図である。
図5は
図3のA-A線断面図である。
図2の上下方向をダンパー部材20、ダンパーフレーム21およびダンパー22の長手方向、
図2の左右方向を短手方向、
図2の紙面に直交する方向を厚み方向とする。以下、これらの方向を単に長手方向、短手方向、厚み方向とも称する。
【0014】
図2に示すように、ダンパー部材20は、その中央側にダンパー領域23を有する。ダンパー領域23には、ダンパー室であるキャビティ231が長手方向に複数並設される。またダンパー部材20は、ダンパー領域23よりも外側に、ダンパー部材20の外周側部分を構成するダンパー外領域24を有する。ダンパー外領域24に、
図2の紙面に直交する方向である厚み方向に貫通した貫通孔25、ダンパーフレーム21の外周端であるダイシングライン26が設けられる。このダンパーフレーム21の外周端は、ウエハからチップを切り出してダンパーフレーム21を形成する際に、その切り取り面となる部分である。特に本実施形態のダンパーフレーム21は、その長手方向中央位置に対してその一方側と他方側とが略対称な形状をなす。
図2のダンパーフレーム21の白色部分が、シリコンで埋められた部分である。またキャビティ231や後述の連通路などは厚み方向のダンパー22側に空間が設けられる。
【0015】
図3に示すように、各キャビティ231の間には、各キャビティ231を長手方向に連通させる第3連通路33が設けられる。ダンパー領域23の最も長手方向外側のキャビティ231であるキャビティ231Aは、第2連通路32により貫通孔25と連通している。貫通孔25は、第1連通路31によりダイシングライン26と連通している。
図2に示すように、貫通孔25は、ダンパー外領域24の長手方向両側にそれぞれ設けられる。それぞれの貫通孔25が、第1連通路31によりダイシングライン26と連通し、第2連通路32により各キャビティ231に連通している。
【0016】
図4および
図5に示すように、各キャビティ231は、ダンパーフレーム21の上側部分とダンパー22との間に形成された空間である。このキャビティ231は、第3連通路33あるいは第2連通路32の部分でキャビティ231外と連通する以外は閉じられた空間である。貫通孔25はその厚み方向のそれぞれの側でダンパー部材20の外部に連通する。また第1連通路31はダイシングライン26を介してダンパー部材20の外部に連通する。第3連通路33はキャビティ231同士を連通させる連通路であるのに対して、第1連通路31および第2連通路32は、キャビティ231をダンパー部材20の外部に連通させるための他の連通路でもある。また第2連通路32は、他の連通路を介して間接的にキャビティ231あるいは貫通孔25に連通していてもよい。
【0017】
共通液室から個別液室にインクが供給され、圧電素子により個別液室内が加圧されてノズルからインクが吐出される。この際、ダンパー22のキャビティ231に対向する部分であるメンブレンが振動して圧力変動を吸収できる。そして、このキャビティ231が第3連通路33および第2連通路32を介して貫通孔25に連通することにより、また第1連通路31を介してダイシングライン26に連通することにより、キャビティ231内の圧力をダンパー部材20の外部へ逃がすことができる。
【0018】
ここで、これらの連通路31~33の配置によっては、ダンパーフレーム21の強度低下が生じてしまう。例えば
図6に示すように、一方側の第1連通路31から一方側の第2連通路、各第3連通路、他方側の第2連通路、そして他方側の第1連通路31までに至る連通路が同一直線上に配置される。このように、強度的に弱い連通路の部分が連続して配置される構成では、この連通路の部分でダンパーフレーム21の強度が低下する。つまり、ダイシングやテープの貼り付けなどのウエハプロセスや組み立て作業時に、この連通路31~33を境にしてダンパーフレーム21に割れが生じる等、ダンパーフレーム21のこの部分が外力に対して破損しやすい状態になるという問題がある。なお、
図6では便宜上、各キャビティおよび第3連通路33の幅を大きく記載しており、その個数は実際とは異なる。
【0019】
これに対して本実施形態では、
図7に示すように、一方側の第1連通路31と他方側の第1連通路31とが同一直線上に配置されない構成とする。これにより、ダンパーフレーム21の連通路を配置することによる強度低下を抑制できる。従って、ダンパーフレーム21が連通路を境にして割れることを防止できるなど、ダンパーフレーム21、つまり、ダンパー部材20の強度を向上させることができ、ダンパー部材20を破損しにくい構造にすることができる。上記の一方側の第1連通路31と他方側の第1連通路31とが同一直線上に配置されない、とは、ダンパーフレーム21の厚み方向に垂直な平面である
図7の平面上において、一方側の第1連通路31を他方側の第1連通路31の側へ延長した時にその少なくとも一部が同一直線上に配置されないことを言う。また別の言い方をすると、一方側の第1連通路31と他方側の第1連通路31との少なくとも一部が、短手方向の同じ位置に配置されないように配置される構成であってもよい。さらに別の言い方をすると、長手方向の中央位置でダンパーフレーム21を折り返したときに、一方側の第1連通路31と他方側の第1連通路31との少なくとも一部が重ならないように配置される構成であってもよい。
【0020】
また
図7の実施形態では、第2連通路32の貫通孔25に連通する部分である第1連通部32aと第1連通路31とが同一直線上に配置されない構成とする。これにより、ダンパー部材20の強度を向上させることができる。
【0021】
また
図8に示す実施形態のように、一方側の第1連通路31と他方側の第1連通路31とが同一直線上に配置され、第2連通路32の貫通孔25に連通する部分である第1連通部32aと第1連通路31とが同一直線上に配置されない構成とすることもできる。本実施形態においても、
図6の構成と比較してダンパー部材20の強度を向上させることができる。
【0022】
図9に示す実施形態では、第3連通路33の一部が同一直線上に配置されない構成をしている。具体的には、一方側の第3連通路33と他方側の第3連通路33とが同一直線上に配置されない構成である。これにより、ダンパー部材20の強度を向上させることができる。また、第3連通路33と第1連通路31とが同一直線上に配置されない。これにより、ダンパー部材20の強度を向上させることができる。
【0023】
図10に示す実施形態では、第2連通路32のキャビティ231に連通する第2連通部32bと第3連通路33とが同一直線上に配置されない構成とする。これにより、ダンパー部材20の強度を向上させることができる。
【0024】
図11に示す実施形態では、
図10の実施形態に加えて、第1連通路31が第2連通路32の第1連通部32aおよび第3連通路と同一直線上に配置されない構成とする。このように、第1連通路31の配置をさらにずらすことによって、よりダンパー部材20の強度を向上させることができる。
【0025】
以上のように、一方の第1連通路31の少なくとも一部と他方の1連通路31との少なくとも一部を同一直線上に配置しない、第3連通路33同士の少なくとも一部を同一直線上に配置しない、第1連通路31の少なくとも一部と第2連通路32の第1連通部32aとを同一直線上に配置しない、第2連通路32の第2連通部32bと第3連通路33の少なくとも一部とを同一直線上に配置しない、というそれぞれの構成により、ダンパー部材20の強度を向上させることができる。また、これらのいずれかの構成を組み合わせることにより、同一直線上に配置される連通路の範囲をより小さくしてダンパー部材20の強度をより向上させることができる。なお、例えば
図7の実施形態では、一方の第1連通路31の全部と他方の第1連通路31の全部とが同一直線上に配置されない場合を示したが、その一部であってもよく、その他の連通路の場合についても同様である。
【0026】
また、各貫通孔25はダンパーフレーム21の長手方向端部側に設けられる。本実施形態では特に、長手方向一方側の貫通孔25が、ダンパー領域23よりも長手方向一方側のダンパー外領域24を長手方向に二分割した時に、長手方向一方側の領域に設けられる。また長手方向他方側の貫通孔25が、ダンパー領域23よりも長手方向他方側のダンパー外領域24を長手方向に二分割した時に、長手方向他方側の領域に設けられる。これにより、ダンパーフレーム21におけるアライメント精度を向上させることができる。また、長手方向の両側に貫通孔25を配置することで、各キャビティ231内の空気を長手方向の両側から外部へ逃がすことができ、各キャビティ231内の空気を外側へ逃がしやすくすることができる。これにより、各キャビティ231内の空気抵抗をより低減し、各キャビティ231における空気抵抗を均一化できる。
【0027】
次に、上記のダンパー部材を有する液体吐出ヘッドを備えたヘッドモジュールついて
図12から
図15を参照して説明する。
図12は一実施形態に係るヘッドモジュールのヘッド短手方向に沿う断面説明図、
図13は同ヘッドモジュールの分解斜視説明図、
図14は同ヘッドモジュールのノズル面側から見た分解斜視説明図、
図15は同ヘッドモジュールのヘッド、ベース部材およびカバー部材を表す分解斜視説明図である。なお、
図12はヘッドモジュール内の構造を概略的に示したものであり、便宜上一部の部材の縮尺を変更したり、構成の一部を簡略化したりしている。
【0028】
ヘッドモジュール100は、液体を吐出する液体吐出ヘッドである複数の液体吐出ヘッド101と、ベース部材102と、カバー部材103と、放熱部材104と、マニホールド105と、プリント基板(PCB)106と、モジュールケース107とを備えている。
【0029】
複数の液体吐出ヘッド101は、ノズル11を形成したノズル板10と、ノズル11に通じる個別液室13などを形成する個別流路板12と、圧力発生部材としての圧電素子40を含む振動板14と、振動板14に積層した保持基板50と、保持基板50に積層した共通流路部材70などを備えている。
【0030】
個別流路板12は、個別液室13とともに、個別液室13に通じる供給側個別流路15、個別液室13に通じる回収側個別流路16を形成している。
【0031】
保持基板50は、供給側個別流路15に振動板14の開口14aを介して通じる供給側中間個別流路51と、回収側個別流路16に振動板14の開口14bを介して通じる回収側中間個別流路52とを形成している。
【0032】
共通流路部材70は、供給側中間個別流路51に通じる供給側共通流路71と、回収側中間個別流路52に通じる回収側共通流路72を形成している。供給側共通流路71はマニホールド105の流路151を介して供給ポート81に通じている。回収側共通流路72はマニホールド105の流路152を介して回収ポート82に通じている。
【0033】
プリント基板106と液体吐出ヘッド101の圧電素子40とはフレキシブル配線部材90を介して接続され、フレキシブル配線部材90にはドライバIC(駆動回路)91が実装されている。
【0034】
本実施形態では、複数の液体吐出ヘッド101が間隔を空けてベース部材102に取付けられている。液体吐出ヘッド101のベース部材102への取付けは、ベース部材102に設けた開口部121に液体吐出ヘッド101を挿入し、ベース部材102に接合固定したカバー部材103に、液体吐出ヘッド101のノズル板10の周縁部を接合して固定している。また、液体吐出ヘッド101の共通流路部材70の外部に設けたフランジ部70aをベース部材102に接合して固定している。
【0035】
なお、液体吐出ヘッド101とベース部材102に固定構造は限定されるものではなく、接着、カシメ、ねじ固定などで行うことができる。
【0036】
ここで、ベース部材102は線膨張係数が低い材料で形成されていることが好ましい。例えば、鉄にニッケルを添加した42alloy(アロイ)や、インバー材などを挙げることができる。本実施形態では、インバー材を使用している。これにより、液体吐出ヘッド101が発熱して、ベース部材102の温度が上昇しても、ベース部材102の膨張量が少ないため、所定のノズル位置からのノズルのずれが生じにくくなり、着弾位置ずれを抑制できる。
【0037】
同様に、ノズル板10および個別流路板12、振動板14はシリコン単結晶基板で形成し、ベース部材102の線膨張係数を略同じにしている。
【0038】
これにより、熱膨張によるノズル位置ずれを低減することができる。
【0039】
次に、本発明に係る液体吐出装置の一例について
図16および
図17を参照して説明する。
図16は同装置の概略説明図、
図17は同装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
【0040】
この液体吐出装置である印刷装置500は、連続体510を搬入する搬入手段501と、搬入手段501から搬入された連続体510を印刷手段505に案内搬送する案内搬送手段503と、連続体510に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う印刷手段505と、連続体510を乾燥する乾燥手段507と、連続体510を搬出する搬出手段509などを備えている。
【0041】
連続体510は搬入手段501の元巻きローラ511から送り出され、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、搬出手段509の各ローラによって案内、搬送されて、搬出手段509の巻取りローラ591にて巻き取られる。
【0042】
この連続体510は、印刷手段505において、搬送ガイド部材559上をヘッドユニット550に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液体によって画像が印刷される。
【0043】
ここで、ヘッドユニット550には、
図17に示すように、本発明に係る二つのヘッドモジュール100A、100Bを共通ベース部材552に備えている。
【0044】
そして、ヘッドモジュール100の搬送方向と直交する方向における液体吐出ヘッド101の並び方向をヘッド配列方向とするとき、ヘッドモジュール100Aのヘッド列1A1,1A2で同じ色の液体を吐出する。同様に、ヘッドモジュール100Aのヘッド列1B1、1B2を組とし、ヘッドモジュール100Bのヘッド列1C1、1C2を組とし、ヘッド列1D1、1D2を組として、それぞれ所要の色の液体を吐出する。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0046】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0047】
「液体」にはインクだけでなく塗料や前処理液、バインダー、オーバーコート液を含む。
【0048】
本願において、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドを有するキャリッジを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体吐出装置には、液体が付着可能なものである記録媒体に対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0049】
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0050】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0051】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0052】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0053】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0054】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0055】
また、「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0056】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0057】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1>
液体を吐出するノズルと、
前記ノズルに通じる個別液室と、
前記個別液室内に圧力を発生させる圧力発生部材と、
可撓性のダンパー、および、前記ダンパーを保持する保持部材を有するダンパー部材と、を備えた液体吐出ヘッドであって、
前記保持部材は、
前記ダンパーに面したキャビティを有するダンパー領域と、
前記ダンパー領域よりも前記ダンパー部材の長手方向の一方側および他方側にそれぞれ設けられた、前記ダンパー部材の外部に連通する貫通孔と、
前記貫通孔に連通し、前記ダンパー部材の外周端に連通する第1連通路と、
一方で前記貫通孔に連通し、他方で前記キャビティに連通する第2連通路と、を有し、
一方の前記貫通孔に連通する一方の第1連通路の少なくとも一部と、他方の前記貫通孔に連通する他方の第1連通路の少なくとも一部とが同一直線上に配置されないことを特徴とする液体吐出ヘッドである。
<2>
液体を吐出するノズルと、
前記ノズルに通じる個別液室と、
前記個別液室内に圧力を発生させる圧力発生部材と、
可撓性のダンパー、および、前記ダンパーを保持する保持部材を有するダンパー部材と、を備えた液体吐出ヘッドであって、
前記保持部材は、
前記ダンパーに面したキャビティを有するダンパー領域と、
前記ダンパー領域外に設けられ、前記ダンパー部材の外部に連通する貫通孔と、
前記貫通孔に連通し、前記ダンパー部材の外周端に連通する第1連通路と、
一方で前記貫通孔に連通し、他方で前記キャビティに連通する第2連通路と、を有し、
前記第1連通路の少なくとも一部と、前記第2連通路の前記貫通孔に連通する部分とが同一直線上に配置されないことを特徴とする液体吐出ヘッドである。
<3>
液体を吐出するノズルと、
前記ノズルに通じる個別液室と、
前記個別液室内に圧力を発生させる圧力発生部材と、
可撓性のダンパー、および、前記ダンパーを保持する保持部材を有するダンパー部材と、を備えた液体吐出ヘッドであって、
前記保持部材は、
前記ダンパーに面したキャビティを有するダンパー領域と、
前記ダンパー領域外に設けられ、前記ダンパー部材の外部に連通する貫通孔と、
一方で前記貫通孔に連通し、他方で前記キャビティに連通する第2連通路と、
前記キャビティ同士をつなぐ第3連通路と、を有し、
前記第2連通路の前記キャビティに連通する部分と前記第3連通路の少なくとも一部とが同一直線上に配置されないことを特徴とする液体吐出ヘッドである。
<4>
液体を吐出するノズルと、
前記ノズルに通じる個別液室と、
前記個別液室内に圧力を発生させる圧力発生部材と、
可撓性のダンパー、および、前記ダンパーを保持する保持部材を有するダンパー部材と、を備えた液体吐出ヘッドであって、
前記保持部材は、
前記ダンパーに面したキャビティを複数有するダンパー領域と、
前記キャビティ同士をつなぐ複数の第3連通路と、を有し、
前記第3連通路は他の連通路を介して前記ダンパー部材外に連通し、
前記第3連通路同士の少なくとも一部が同一直線上に配置されないことを特徴とする液体吐出ヘッドである。
<5>
前記保持部材は、前記ダンパー領域外に設けられ、前記ダンパー部材の外部に連通する貫通孔を有し、
前記貫通孔は、前記ダンパー領域よりも前記ダンパー部材の長手方向の一方側および他方側にそれぞれ設けられ、
長手方向の一方側に設けられた前記貫通孔は、前記ダンパー領域よりも長手方向の一方側の領域の一方側の端部側に設けられ、
長手方向の他方側に設けられた前記貫通孔は、前記ダンパー領域よりも長手方向の他方側の領域の他方側の端部側に設けられる<1>から<4>いずれか記載の液体吐出ヘッドである。
<6>
前記ダンパー部材は、
前記ダンパー領域に設けられた複数の前記キャビティと、
複数の前記キャビティ同士をつなぐ第3連通路と、
前記貫通孔に連通し、前記ダンパー部材の外周端に連通する第1連通路と、
一方で前記貫通孔に連通し、他方で前記キャビティに連通する第2連通路と、を有し、
一方の前記第1連通路の少なくとも一部と、他方の前記第1連通路の少なくとも一部と、前記第2連通路の少なくとも一部と、前記第3連通路の少なくとも一部とのすべてが、同一直線上に配置されない<1>から<5>いずれか記載の液体吐出ヘッドである。
<7>
<1>から<6>いずれか記載の液体吐出ヘッドを複数備えたヘッドモジュールである。
<8>
<7>記載のヘッドモジュールを複数備えたヘッドユニットである。
<9>
<1>から<6>いずれか記載の液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置である。
【符号の説明】
【0058】
11 ノズル
13 個別液室
20 ダンパー部材
21 ダンパーフレーム(保持部材)
22 ダンパー
23 ダンパー領域
231 キャビティ
25 貫通孔
26 ダイシングライン
31 第1連通路
32 第2連通路
33 第3連通路
40 圧電素子(圧力発生部材)
100 ヘッドモジュール
101 液体吐出ヘッド
500 印刷装置(液体吐出装置)
550 ヘッドユニット
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】