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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071045
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】部品及び部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20240517BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20240517BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
H01L21/52 E
H01L21/52 D
C09J5/00
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181768
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】松本 真二
(72)【発明者】
【氏名】八代 徹
(72)【発明者】
【氏名】金子 史育
(72)【発明者】
【氏名】松岡 悠斗
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 剛史
(72)【発明者】
【氏名】近藤 浩
【テーマコード(参考)】
4J040
5F047
【Fターム(参考)】
4J040EC041
4J040EK032
4J040FA131
4J040HD30
4J040HD35
4J040KA03
4J040KA12
4J040KA13
4J040KA23
4J040KA42
4J040NA19
4J040PA00
4J040PA20
4J040PA32
4J040PA42
5F047BA34
5F047BA35
5F047BB11
5F047BB16
(57)【要約】
【課題】2つの部材の貼合せ後のずれを防止することができ、かつボイドの発生を抑制することができる部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】第1の部材上の所定領域に第1の硬化型液体組成物を付与する工程と、付与された前記第1の硬化型液体組成物を硬化させて仮固定機能部を形成する工程と、前記第1の部材上の、前記仮固定機能部の内側領域に第2の硬化型液体組成物を付与する工程と、第2の部材を、前記仮固定機能部及び付与された前記第2の硬化型液体組成物に接するように配置して仮固定する工程と、前記第2の硬化型液体組成物を硬化させて固着機能部を形成することで前記第2の部材を固着させる工程と、を含む部品の製造方法である。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材上の所定領域に第1の硬化型液体組成物を付与する工程と、
付与された前記第1の硬化型液体組成物を硬化させて仮固定機能部を形成する工程と、
前記第1の部材上の、前記仮固定機能部の内側領域に第2の硬化型液体組成物を付与する工程と、
第2の部材を、前記仮固定機能部及び付与された前記第2の硬化型液体組成物に接するように配置して仮固定する工程と、
前記第2の硬化型液体組成物を硬化させて固着機能部を形成することで前記第2の部材を固着させる工程と、
を含むことを特徴とする部品の製造方法。
【請求項2】
前記仮固定機能部が89gf以上のタック力を有する、請求項1に記載の部品の製造方法。
【請求項3】
前記固着機能部の体積に対して、前記仮固定機能部の体積が50%以下となるように前記第1の硬化型液体組成物を付与する、請求項1に記載の部品の製造方法。
【請求項4】
前記第1の硬化型液体組成物及び前記第2の硬化型液体組成物をインクジェット法で付与する、請求項1に記載の部品の製造方法。
【請求項5】
第1の部材と、
第2の部材と、
前記第1の部材と前記第2の部材とを仮固定可能な仮固定機能部と、
前記第1の部材と前記第2の部材とを固着可能な固着機能部と、
を有し、
前記仮固定機能部の内側領域に前記固着機能部を有することを特徴とする部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品及び部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板では高集積化及び高速化に伴いICチップ等の発熱性部品による温度上昇が増加し、実装回路の接着及び接続に対する耐熱信頼性が要求されている。接着性及び接続信頼性を低下させる要因としては、半導体(ダイ)と該半導体(ダイ)に接着する各種材料との線膨張係数差から生じる熱応力が挙げられる。具体的には半導体(ダイ)の線膨張係数が約3ppm/K程度であることに対し、実装基板では15ppm/K以上と大きいことから、リフローなどの作製プロセス工程及び駆動発熱などによるヒートサイクルにより熱応力が発生することで、半導体(ダイ)の接着及び接続不良が発生しやすい。
【0003】
従来、ダイとダイ、及びダイと基板を接着するダイボンディング部材としては、溶液系のダイボンディングペースト、シート状のダイアタッチフィルムなどが用いられてきた。これらのダイボンディング部材では、高集積ダイによる発熱増加やスマートフォン等の装置の薄型化により、高耐熱化及び薄膜化が要求されている。これに対し、接着部の薄膜化により装置の薄型化が可能になると共に、発熱したダイの放熱効果が得られることが知られている。均一な厚さでダイボンディング部材を薄膜形成する方式としては、インクジェット印刷で硬化性樹脂組成物をダイボンディング部材として塗布することが提案されている。
【0004】
例えば、アウトガスの低減及び耐熱接着信頼性の向上を目的として、光硬化性及び熱硬化性を有し、かつ液状である硬化性組成物を、インクジェット装置を用いて塗布する塗布工程と、前記塗布工程後に300mW/cm以上の照度で光を照射する光照射工程と、電子部品を配置した後、加熱硬化させる加熱工程とを備える電子部品の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、ボイドの発生がなく、150℃~300℃の熱時接着性を発現し、耐熱性及び耐久性を有する半導体装置実現を製造することを目的として、接着剤が反応性希釈材を含み、前記反応性希釈材の沸点より低い温度と、前記反応性希釈材の沸点範囲温度との2段階で硬化させる半導体装置の製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
また、半導体チップの反りが少なく、ボイドやチップクラックの発生がない信頼性の高い半導体装置の製造方法を提供する目的で、絶縁性接着剤をスクリーン印刷により塗布乾燥した後、半導体チップとリードフレームとを接着固定する半導体装置の製造方法が提案されている(特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、2つの部材の貼合せ後のずれを防止することができ、かつボイドの発生を抑制することができる部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としての本発明の部品の製造方法は、第1の部材上の所定領域に第1の硬化型液体組成物を付与する工程と、付与された前記第1の硬化型液体組成物を硬化させて仮固定機能部を形成する工程と、前記第1の部材上の、前記仮固定機能部の内側領域に第2の硬化型液体組成物を付与する工程と、第2の部材を、前記仮固定機能部及び付与された前記第2の硬化型液体組成物に接するように配置して仮固定する工程と、前記第2の硬化型液体組成物を硬化させて固着機能部を形成することで前記第2の部材を固着させる工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2つの部材の貼合せ後のずれを防止することができ、かつボイドの発生を抑制することができる部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、仮固定機能部1と、固着機能部2とからなる接着性構造物の一実施形態を示す概略上面図である。
図1B図1Bは、仮固定機能部1と、固着機能部2とからなる接着性構造物の別の一実施形態を示す概略上面図である。
図1C図1Cは、仮固定機能部1と、固着機能部2とからなる接着性構造物の別の一実施形態を示す概略上面図である。
図1D図1Dは、仮固定機能部1と、固着機能部2とからなる接着性構造物の別の一実施形態を示す概略上面図である。
図2A図2Aは、図1Cに示す接着性構造物を形成する際の、仮固定機能部形成工程後の概略上面図であり、仮固定機能部の内側領域の説明図である。
図2B図2Bは、図1Dに示す接着性構造物を形成する際の、仮固定機能部形成工程後の概略上面図であり、仮固定機能部の内側領域の説明図である。
図3図3は、本発明の部品の製造方法をフローチャートで示す説明図である。
図4A図4Aは、本発明の部品の製造方法において、図3のステップ5で第1の部材(下部部材)の仮固定機能部の内側領域に固着機能部形成用インクを付与した後、ステップ8で仮固定機能部1と固着機能部形成用インク2aとからなる層に第2の部材(上部部材)4を貼り合わせる前の状態を模式的に示す断面図である。
図4B図4Bは、本発明の部品の製造方法において、図3のステップ8で仮固定機能部1と固着機能部形成用インク2aとからなる層と、第2の部材(上部部材)4とを貼り合わせている途中の様子を模式的に示す断面図である。
図4C図4Cは、本発明の部品の製造方法において、ステップ8で仮固定機能部1と固着機能部形成用インク2aとからなる層と、第2の部材(上部部材)4とを貼り合わせ後の状態を模式的に示す断面図である。
図5図5は、本発明の部品の一実施形態を示す概略説明図(厚み方向の断面模式図)である。
図6A図6Aは、実施例1の貼合せサンプルにおける空隙の様子を示す上面観察像である。
図6B図6Bは、比較例1の貼合せサンプルにおける空隙の様子を示す上面観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(部品及び部品の製造方法)
本発明の部品の製造方法は、第1の部材上の所定領域に第1の硬化型液体組成物を付与する工程(以下、「第1の硬化型液体組成物付与工程」と称することがある)と、付与された前記第1の硬化型液体組成物を硬化させて仮固定機能部を形成する工程(以下、「仮固定機能部形成工程」と称することがある)と、前記第1の部材上の、前記仮固定機能部の内側領域に第2の硬化型液体組成物を付与する工程(以下、「第2の硬化型液体組成物付与工程」と称することがある)と、第2の部材を、前記仮固定機能部及び付与された前記第2の硬化型液体組成物に接するように配置して仮固定する工程(以下、「仮固定工程」と称することがある)と、前記第2の硬化型液体組成物を硬化させて固着機能部を形成することで前記第2の部材を固着させる工程(以下、「固着工程」と称することがある)と、を含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0012】
本発明の部品は、第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材とを仮固定可能な仮固定機能部と、前記第1の部材と前記第2の部材とを固着可能な固着機能部と、を有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
本発明の部品は、前記仮固定機能部の内側領域に前記固着機能部を有する。
本発明の部品は、本発明の部品の製造方法により好適に製造される。
【0013】
なお、本明細書において、前記部品における仮固定機能部及び固着機能部からなる部材を「接着性構造物」と称することがある。即ち、本発明は、第1の部材と、第2の部材とを接着性構造物で固着する方法を含む。また、本発明の部品は、第1の部材と、第2の部材とが、接着性構造物で固着されてなるものである。
【0014】
従来、ボイドの発生を低減し、高信頼性を実現する部品の製造方法として、インクジェット法以外の従来技術は、ディスペンサやスクリーン印刷であり、部品の接着層の薄膜化が実現できていないという問題があった。
【0015】
また、特許文献1の電子部品の製造方法のように、光硬化性材料及び熱硬化性材料を含むインクを、インクジェット装置を用いて塗布して光照射により仮硬化膜を形成した後に部品を貼り合わせた場合では、部品の貼合せ面は仮硬化した膜面となり、膜の流動性が低くなる。そのため、部品の凹凸形状に合わせて膜が流動することができず、空隙が発生するという問題があった。接着層に空隙があると、電子部品の駆動、並びに環境下の発熱及び熱サイクルにおいて、空隙を起点とした接着層の剥がれが発生する懸念がある。また、空隙は接着層の熱抵抗を上昇させる懸念があり、素子の動作に悪影響を与えることが懸念される。仮硬化膜を形成せずに部品を貼り合わせた場合では、膜の流動性が高いことで部品の凹凸形状に合わせて膜が流動し、空隙が発生しない。一方で、膜の流動性が高いことで、貼り合わせた部品を固定することができず、貼り合わせた部品がずれてしまうという問題があった。部品がずれてしまうと、その後のワイヤーボンディング工程に進むことができない可能性があり、歩留りを低下させるという問題があった。
【0016】
特許文献2及び3の半導体装置の製造方法は、ボイドの発生がない方法であるが、接着剤が、薄膜化及び高精細パターンを実現可能なインクジェット法に適用できる組成及び粘度ではなく、低粘度の接着剤上で部材を安定して固定することはできないという問題があった。
【0017】
これらの従来技術に対し、本発明の部品の製造方法は、2つの部材の貼合せ後のずれを防止することができ、かつボイドの発生を抑制することができる。
第1の部材と第2の部材の貼合せ後にボイド(空隙)が多いと、部品の接着力の低下や熱抵抗の上昇を招く。また、部品の自己発熱や環境に伴う温度変化によって、部品積層体が熱膨張と収縮を繰り返すが、空隙を起点として接着性構造物の破壊が進行し、結果として部品剥がれを引き起こすという問題がある。したがって、ボイドの発生を抑制することで、接着力が向上する効果や、熱サイクル環境下で部材が剥がれない等の信頼性を向上する効果が期待できる。
【0018】
以下に、本発明の部品の製造方法の説明と併せて、本発明の部品について説明するが、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、修正、又は削除などの当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用及び効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0019】
<第1の硬化型液体組成物付与工程>
前記第1の硬化型液体組成物付与工程は、第1の部材上の所定領域に第1の硬化型液体組成物を付与する工程である。
【0020】
<<第1の部材>>
前記第1の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、発熱性部品、冷却部品、基板、電極などが挙げられる。
【0021】
前記発熱性部品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、半導体(ダイ)、半導体パッケージ(ICチップ)、バッテリー、LED、コンデンサー、抵抗、ダイオードなどが挙げられる。これらの中でも、前記発熱性部品としては、近年の高集積化及び高速化に伴い、温度上昇による実装回路の接着及び接続に対する耐熱信頼性が要求されている半導体及び半導体パッケージ(ICチップ)が好ましい。
【0022】
前記冷却部品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記発熱性部品の熱を空冷、液冷、相変化冷却、熱電冷却などにより冷却する部品であることが好ましい。前記冷却部品の具体例としては、ヒートシンク、ヒートパイプ、マイクロチャンネル、ペルチェ素子、放熱シート、ヒートスプレッダーなどが挙げられる。
【0023】
前記基板としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、PCB/PWB基板(ガラスエポキシ基板、酸化アルミナ等のセラミック基板、銅基板、ポリイミド基板)、BGAパッケージ用基板、リードフレームなどが挙げられる。
【0024】
前記電極としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、Au、Ag、Pd、Cu、Ni、Pt、Fe、Co等の金属、Sn/Pb、Sn/Ag/Cu等の半田材料などが挙げられる。
【0025】
前記第1の部材上の「所定領域」とは、後述する仮固定工程において第2の部材を配置する領域内であり、かつ、後述する仮固定機能部形成工程で形成される仮固定機能部の内側領域に、後述する固着工程で形成される固着機能部を形成可能な領域であるが、前記第1の部材と前記第2の部材との貼合せ後に、これらの部材のずれを防止することができ、かつボイドの発生を抑制することができる領域であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0026】
図1A図1B図1C、及び図1Dは、仮固定機能部1と、固着機能部2とからなる接着性構造物の一実施形態を示す概略上面図であり、前記所定領域としては、図1A図1B図1C図1Dなどに示すような仮固定機能部1の領域などが挙げられるが、上記した通り、前記第1の部材と前記第2の部材との貼合せ後に、これらの部材のずれを防止することができ、かつボイドの発生を抑制することができる領域であれば、これに限られるものではない。
【0027】
一般的に、半導体パッケージ(ICチップ)は、上面から見た形状が長方形や正方形等の四角形であるため、以下に、第2の部材が四角形である場合を例に、前記所定領域について具体的に説明する。
第2の部材が四角形である場合は、図1Aに示すように四角形の四辺全てを囲むように、前記第1の部材上に前記第1の硬化型液体組成物を付与する方法、図1Bに示すように、四角形の角を除く辺を形成するように、前記第1の部材上に前記第1の硬化型液体組成物を付与する方法、図1Cに示すように、四角形の角を除く辺の一部のみを形成するように、前記第1の部材上に前記第1の硬化型液体組成物を付与する方法、図1Dに示すように、四角形の角のみに、前記第1の部材上に前記第1の硬化型液体組成物を付与する方法などが挙げられる。これらの中でも、第2の部材のずれの防止の点から、四角形の第2の部材に対して、辺又は角に対称的に前記仮固定機能部が形成できるように前記第1の部材上に前記第1の硬化型液体組成物を付与することが好ましく、辺又は角の4か所に対称的に前記仮固定機能部が形成できるように前記第1の部材上に前記第1の硬化型液体組成物を付与することがより好ましい。更に、辺又は角の全部又は一部に前記仮固定機能部が形成できるように前記第1の部材上に前記第1の硬化型液体組成物を付与するか否かは、第1の部材及び第2の部材との組合せによる、ボイドの発生しそうな領域に応じて、適宜選択することができる。また、第2の部材が四角形以外の円形などの場合であっても同様に、第2の部材の外周を固定できるように仮固定機能部を形成することできれば、前記所定領域の形状としては、特に制限はない。
【0028】
前記第1の部材上の所定領域に第1の硬化型液体組成物を付与し、仮固定機能部を形成することは、「パターン形成」又は「パターニング形成」などと称する。
本明細書において、「パターン形成」又は「パターニング形成」とは、前記仮固定機能部を予め決められた位置及び形状に選択的に配することを意味する。したがって、前記接着性構造物の厚さ方向と直行する方向において、前記仮固定機能部と前記固着機能部の疎密分布を形成すること;前記接着性構造物において、前記仮固定機能部及び前記固着機能部を所望形状に意図的(人工的)に形成することの少なくともいずれかを意味する。したがって、前記「パターン形成」又は「パターニング形成」には、任意形状に意図せず(自然発生的に)形成される海島構造は含まれない。
これは前記部品の製造方法、特に前記接着性構造物の形成方法に起因するものであり、前記パターン形成又はパターニング形成は、前記部品の製造方法により実現可能である。
【0029】
<<第1の硬化型液体組成物>>
前記第1の硬化型液体組成物は、硬化して硬化物を形成する組成物である。
【0030】
なお、本発明において「硬化する」とは、ポリマーが形成されることを表すが、固化する場合に限られず、増粘する場合や、固化と増粘がともに生じる場合なども含まれる。
また、「固化物(硬化物)」とは、ポリマーを表すが、固体に限られず、増粘物や、固体と増粘物の混合物なども含まれる。
【0031】
前記第1の硬化型液体組成物付与工程において、前記第1の硬化型液体組成物は、前記仮固定機能部を形成するための仮固定機能部形成用インクとして用いられる。したがって、前記第1の硬化型液体組成物付与工程は、仮固定機能部形成用インク付与工程と称することがある。
【0032】
前記第1の硬化型液体組成物は、硬化型モノマーを含有する組成物であるが、活性エネルギー線硬化型液体組成物であることが好ましい。
前記活性エネルギー線硬化型液体組成物としては、例えば、光硬化型液体組成物、熱硬化型液体組成物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記仮固定機能部を形成する点から、前記第1の硬化型液体組成物は、少なくとも光硬化型液体組成物を含有することが好ましい。また、前記第1の硬化型液体組成物が、光硬化型液体組成物に加えて熱硬化型液体組成物を含有する場合は、仮固定機能部を形成する時は光硬化で所定領域に仮固定機能部を形成しやすく、かつ後述する固着機能部形成工程において、接着性を高める点から熱硬化することで更に接着性を向上することができる点で好ましい。
【0033】
前記仮固定機能部を形成する前記第1の硬化型液体組成物が含有する前記硬化型モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリレートなどが挙げられる。また、前記第1の硬化型液体組成物は、更に必要に応じて、前記硬化型モノマー以外のその他の成分を含有していてもよい。
前記第1の硬化型液体組成物を硬化した前記仮固定機能部の組成(即ち、原材料である前記第1の硬化型液体組成物の組成)は、例えば、赤外吸収分光法(IR)などにより分析することができる。
【0034】
-硬化型モノマー-
前記硬化型モノマーとしての前記アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、イソボルニルアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
-その他の成分-
前記第1の硬化型液体組成物の前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、前記アクリレート以外のモノマー、シリコーン化合物、無機粒子、樹脂及び/又は樹脂粒子、密着改良剤、溶媒、光重合開始剤、熱重合開始剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
--シリコーン化合物--
前記シリコーン化合物としては、特に制限はなく、一般的なシリコーン化合物の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリジメチルシロキサンの片末端又は両末端に反応基を有するシリコーン化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記シリコーン化合物は、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記シリコーン化合物の市販品としては、例えば、サイラプレーン(登録商標)FM-3311、FM-3321、FM-3325(以上、JNC株式会社製)、STP-103-UV、STP-104-UV(以上、信越シリコーン株式会社製)などが挙げられる。
【0038】
前記シリコーン化合物の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記第1の硬化型液体組成物の全質量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、5質量%~50質量%がより好ましく、5質量%~30質量が更に好ましい。前記シリコーン化合物の含有量が1質量%~50質量%であると、前記アクリレートとの相溶性に優れ、粘度を低くすることができる点で好ましく、5質量%~30質量%であると、主成分である前記アクリレートの硬化物の特性を損なうことなく硬化物である仮固定機能部を形成することができる点でより好ましい。
【0039】
-無機粒子-
前記第1の硬化型液体組成物が前記無機粒子を含有すると、前記接着性構造物の線膨張係数をより低減し、前記第1の硬化型液体組成物の硬化物である仮固定機能部の強度をより向上することができる。
前記無機粒子としては、特に制限はなく、公知の無機粒子の中から適宜選択することができ、例えば、セラミック材料、磁性体粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記セラミック材料としては、例えば、シリカ(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)などが挙げられる。前記セラミック材料は、樹脂材料に比べて線膨張係数が小さく、ガラス転移点が高いため、前記接着性構造物の線膨張係数を低減すると共に、高温状態での膜強度を向上する効果が得られるため、前記接着性構造物が高温状態となった時の熱膨張を抑制する機能を付与することができる。
【0041】
前記磁性体粒子としては、例えば、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)などが挙げられる。前記磁性体粒子は、電磁波をシールドする機能を付与することができる。
【0042】
前記無機粒子は、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記無機粒子の市販品としては、例えば、AEROSIL(登録商標)OX50、AEROSIL(登録商標)50、AEROSIL(登録商標)90G、AEROSIL(登録商標)130、AEROSIL(登録商標)150、AEROSIL(登録商標)200、AEROSIL(登録商標)300、AEROSIL(登録商標)380、AEROSIL(登録商標)RM50、AEROSIL(登録商標)R711、AEROSIL(登録商標)R7200、AEROXIDE(登録商標)P25、AEROXIDE(登録商標)P90 AluC(以上、日本アエロジル株式会社製)、シーホスター(登録商標)KE-S10、シーホスター(登録商標)KE-S30、シーホスター(登録商標)KE-S50(以上、日本触媒株式会社製)などが挙げられる。
【0043】
前記無機粒子の1次平均粒径(D50)としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、0.1μm~5μmが好ましく、0.1μm~1μmがより好ましい。前記無機粒子の1次平均粒径(D50)が0.1μm以上であると、前記第1の硬化型液体組成物の粘度の増加を抑制することができ、5μm以下であると、インクジェット印刷法により吐出する際の微小ノズル穴が詰まりにくい。
前記無機粒子の1次平均粒径(D50)は、動的画像解析法、動的光散乱法(DLS)などにより測定することができる。
【0044】
前記第1の硬化型液体組成物における前記無機粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第1の硬化型液体組成物の全質量に対して、5質量%~70質量%が好ましく、5質量%~50質量%がより好ましい。前記無機粒子の含有量が5質量%以上であると、線熱膨張及び膜強度の効果を得やすく、70質量%以下であると、前記接着性構造物が脆くなりにくく、また前記第1の硬化型液体組成物の粘度の増加を抑制できるためインクジェット印刷法に好適に用いることができる。
【0045】
-樹脂及び/又は樹脂粒子-
前記第1の硬化型液体組成物が前記樹脂及び又は樹脂粒子を含有すると、前記第1の硬化型液体組成物の硬化物である仮固定機能部の柔軟性、耐熱性、及びタック性をより向上することができ、熱応力をより緩和させることができる。また、前記第1の硬化型液体組成物の粘度をより適度な粘度に調整しやすく、これにより前記第1の硬化型液体組成物の硬化物である仮固定機能部の弾性を調整しやすい。
【0046】
前記樹脂及び/又は樹脂粒子としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、熱応力を緩和するためにガラス転移点(Tg)が低いものが好ましく、ガラス転移点(Tg)が30℃以下程度と、室温と同程度であるものがより好ましい。
前記樹脂及び/又は樹脂粒子のガラス転移点(Tg)は、熱分析法(TG-DTA、DSCなど)で測定することができる。
【0047】
このような前記樹脂及び/又は樹脂粒子としては、低弾性及び柔軟性の少なくともいずれかの性質を有する直鎖状のポリマーを有する材料が好ましく、例えば、スチレンブタジエン系樹脂、アクリルニトリルブタジエン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、エステル系樹脂、ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、スチレン系樹脂、セルロース系樹脂、アミド系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、メラミン樹脂、フッ素系樹脂、及びこれらの複数種の混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。更に、アクリル系共重合体内部にゴム状ポリマーを配したコアシェル型の多層構造のポリマー粒子でもよい。これらの中でも、前記樹脂及び/又は樹脂粒子としては、スチレンブタジエン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂が、耐熱性が良好であるため好ましい。
【0048】
ここで、前記樹脂及び/又は樹脂粒子が「低弾性」であるとは、弾性率500MPa以下の材料を意味する。
前記樹脂及び/又は樹脂粒子の弾性率は、例えば、微小硬度計(例えば、FISCHERSCOPE(登録商標)HM2000、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)で押し込み弾性率を測定することにより確認することができる。
【0049】
また、前記樹脂及び/又は樹脂粒子が「柔軟性」を有するとは、弾性変形仕事率が70%以上の材料を意味する。
前記樹脂及び/又は樹脂粒子の弾性変形仕事率は、例えば、微小硬度計(例えば、FISCHERSCOPE(登録商標)HM2000、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)で押し込み弾性率を測定することにより確認することができる。
【0050】
前記樹脂及び/又は樹脂粒子は、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記樹脂の市販品としては、例えば、アルフォン(登録商標)US-1000、アルフォン(登録商標)UH-2000、アルフォン(登録商標)UC-3000、アルフォン(登録商標)UG-4000、アルフォン(登録商標)UF-5000、アルフォン(登録商標)US-600などが挙げられる。
【0051】
前記樹脂粒子の市販品としては、例えば、カネエース(登録商標)MX-150、カネエース(登録商標)MX-553(以上、株式会社カネカ製)、ファインスフェア(登録商標)MG-155、ファインスフェア(登録商標)MG-351、ファインスフェア(登録商標)MG-451、ファインスフェア(登録商標)MG-651、ファインスフェア(登録商標)PZP-1003、ファインスフェア(登録商標)BGK-001(以上、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製)、メタブレン(登録商標)C-223A、メタブレン(登録商標)C-215AC-201A、メタブレン(登録商標)C-140A、メタブレン(登録商標)E-860A、メタブレン(登録商標)E-870A、メタブレン(登録商標)E-875A、メタブレン(登録商標)W-300A、メタブレン(登録商標)W-450A、メタブレン(登録商標)W-600A、メタブレン(登録商標)W-377、メタブレン(登録商標)S-2002、メタブレン(登録商標)S-2006、メタブレン(登録商標)S-2501、メタブレン(登録商標)S-2030、メタブレン(登録商標)S-2100、メタブレン(登録商標)S-2200、メタブレン(登録商標)SRK200A、メタブレン(登録商標)SX-006、メタブレン(登録商標)SX-00(以上、三菱ケミカル株式会社製)、ゼフィアック F351、スタフィロイド AC-3355、AC-3816N、AC-3832SD、AC-4030、AC-3388(以上、アイカ工業株式会社製)などが挙げられる。
【0052】
前記樹脂粒子の1次平均粒径(D50)としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、0.1μm~5μmが好ましく、0.1μm~1μmがより好ましい。前記樹脂粒子の1次平均粒径(D50)が0.1μm以上であると、前記第1の硬化型液体組成物の粘度の増加を抑制することができ、5μm以下であると、インクジェット印刷法により吐出する際の微小ノズル穴が詰まりにくい。
前記樹脂粒子の1次平均粒径(D50)は、動的画像解析法、動的光散乱法(DLS)などにより測定することができる。
【0053】
前記第1の硬化型液体組成物における前記樹脂粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第1の硬化型液体組成物の全質量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、5質量%~50質量%がより好ましく、3質量%~20質量%が更に好ましい。前記樹脂粒子の含有量が1質量%以上であると、更に熱応力を好適に緩和することができ、50質量%以下であると、前記第1の硬化型液体組成物の粘度の増加を抑制できるためインクジェット印刷法に好適に用いることができ、また高温時においてバブルやボイドの原因となりにくい。
【0054】
-密着改良剤-
前記第1の硬化型液体組成物が前記密着改良剤を含有すると、前記仮固定機能部の接着性を向上させることができる。
前記密着改良剤としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、有機物及びケイ素を含有し、分子中に2種以上の異なった反応基を有するシランカップリング剤が、第1の部材及び第2の部材(特に、半導体及び基板)との接着性を向上することができるため、特に好ましい。
【0055】
前記密着改良剤は、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記密着改良剤の市販品としては、例えば、DOWSIL Z-6040、DOWSIL Z-6062(以上、DOW社製)、KBM-403(信越シリコーン株式会社製)などが挙げられる。
【0056】
前記第1の硬化型液体組成物における前記密着改良剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第1の硬化型液体組成物の全質量に対して、0.1質量%~20質量%が好ましく、0.1質量%~5質量%がより好ましい。前記密着改良剤の含有量が0.1質量%以上であると、密着効果を得ることができ、20質量%以下であると、前記第1の硬化型液体組成物により得られる硬化物である仮固定機能部の強度の低下を抑制できる。
【0057】
-溶媒-
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テルピネオール、1-メトキシ-2-プロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸2-メトキシエチル、酢酸2-メトキシブチル、2-ブタノンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
前記第1の硬化型液体組成物における前記溶媒の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第1の硬化型液体組成物の粘度が適性であれば含有しないことが好ましい。
前記第1の硬化型液体組成物が前記溶媒を添加する場合は、前記第1の硬化型液体組成物の全質量に対して、1質量%~10質量%が好ましく、1質量%~5質量%がより好ましい。前記溶媒の含有量が1質量%以上であると、前記第1の硬化型液体組成物の溶媒成分の管理が容易となると共に、低粘度化することができ、インクジェット印刷法に好適に用いることができ、10質量%以下であると、高温時においてバブルやボイドの原因となりにくい。
【0059】
前記第1の硬化型液体組成物の粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、インクジェット法で吐出できる粘度であることが好ましく、25℃において、200mPa・s以下であることがより好ましく、50mPa・s以下であることが更に好ましい。前記第1の硬化型液体組成物の粘度が200mPa・s以下であると、該第1の硬化型液体組成物を高温加熱することなくインクジェット法で仮固定機能部を薄膜化でき、また均一に塗工することできることができる。更に、前記第1の硬化型液体組成物の粘度が200mPa・s以下であると、塗工量を調整しやすく前記仮固定機能部を薄膜化することができ、充填性能が向上し、バブル及びボイドの発生を低減することができる。
なお、前記第1の硬化型液体組成物の粘度は、インクジェット法で吐出する場合は、粘度が低い方が好ましいため、その下限値については特に制限はない。
【0060】
--光重合開始剤--
前記光重合開始剤としては光カチオン重合開始剤及び光ラジカル開始剤の少なくともいずれかを用いることができる。
【0061】
前記光カチオン重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スルホニウムイオンやヨードニウムイオンをカチオン部とするオニウム塩等の光酸発生剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記光カチオン重合開始剤としては、金属部への腐食性が少ないアニオン部を有する化合物が好ましい。
前記光カチオン重合開始剤の具体例としては、アニオン部(発生酸)がB(C、PF(Cなどの化合物が挙げられる。
【0062】
前記光カチオン硬化開始剤は、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記光カチオン硬化開始剤の市販品としては、例えば、CPI(登録商標)-110P、CPI(登録商標)-110A、CPI(登録商標)-210S、CPI(登録商標)-110B、CPI(登録商標)-310B、CPI(登録商標)-410B、CPI(登録商標)-310FG、IK-1FG(以上、サンアプロ株式会社製)などが挙げられる。
【0063】
前記光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルフェノン化合物、アシルフォスシンオキサイド化合物、オキシフェニル酢酸エステル化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
前記光ラジカル重合開始剤は、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、Omnirad 184(former Irgacure 184)、Omnirad 651(former Irgacure 651)、Omnirad 1173(former Irgacure 1173)、Omnirad 2959(former Irgacure 2959)、Omnirad 369(former Irgacure 369)、Omnirad 907(former Irgacure 907)、Omnirad BMS、Omnirad DETX、Omnirad TPO H(former Irgacure TPO)、Omnirad 819(former Irgacure 819)(以上、IGM Resins B.V.製)、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02、Irgacure OXE03、Irgacure OXE04(以上、BASFジャパン株式会社製)などが挙げられる。
【0065】
前記第1の硬化型液体組成物における前記光重合開始剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第1の硬化型液体組成物の全質量に対して、0.1質量%~10質量%が好ましく、0.2質量%~2質量%がより好ましい。前記光重合開始剤の含有量が0.1質量%~10質量%であると、適性に硬化反応を完了させることができ、未反応分が反応性不純物として残量しにくい。
【0066】
--熱重合開始剤--
前記第1の硬化型液体組成物は、活性エネルギー線を照射されることで硬化して硬化物を形成することができれば、熱硬化性のモノマーを含有していてもよい。この場合、熱重合開始剤を含むことが、固着工程において、第1の部材と第2の部材とをより強力に固着できる点で好ましい。
【0067】
前記熱重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スルホニウムイオンやヨードニウムイオンをカチオン部とするオニウム塩等の光酸発生剤などが挙げられる。
【0068】
前記熱重合開始剤は、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記熱重合開始剤の市販品としては、例えば、サンエイドSI-60L、サンエイドSI-80L、サンエイドSI-100L、サンエイドSI-110L、サンエイドSI-150(以上、三新化学工業株式会社製)、TA-100、TA-100FG、IK-1、IK-1FG(サンアプロ株式会社製)Omnicat 250(former Irgacure 250)、Omnicat 270(former Irgacure 270)(以上、IGM Resins B.V.社製)などが挙げられる。
【0069】
前記第1の硬化型液体組成物における前記熱重合開始剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第1の硬化型液体組成物の全質量に対して、0.1質量%~10質量%が好ましく、0.2質量%~2質量%がより好ましい。前記熱重合開始剤の含有量が0.1質量%~10質量%であると、適性に硬化反応を完了させることができ、未反応分が反応性不純物として残量しにくい。
【0070】
前記第1の硬化型液体組成物の粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、インクジェット法で吐出できる粘度であることが好ましく、25℃において、200mPa・s以下であることがより好ましく、50mPa・s以下であることが更に好ましい。前記第1の硬化型液体組成物の粘度が200mPa・s以下であると、該第1の硬化型液体組成物を高温加熱することなくインクジェット法で仮固定機能部を薄膜化でき、また均一に塗工することできることができる。更に、前記第1の硬化型液体組成物の粘度が200mPa・s以下であると、塗工量を調整しやすく前記仮固定機能部を薄膜化することができ、充填性能が向上し、バブル及びボイドの発生を低減することができる。
なお、前記第1の硬化型液体組成物の粘度は、インクジェット法で吐出する場合は、粘度が低い方が好ましいため、その下限値については特に制限はない。
【0071】
前記第1の硬化型液体組成物の粘度は、常法により測定することができ、例えば、JIS Z8803に記載の方法などを用いることができる。また、その他に、例えば、コーンプレート型回転粘度計(例えば、VISCOMETER TVE-22L、東機産業株式会社製)により、コーンロータ(1°34’×R24)を使用し、回転数10rpm、恒温循環水の温度を20℃~65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整には、循環恒温槽(例えば、VISCOMATE VM-150III、東機産業株式会社製)を用いることができる。
【0072】
前記第1の硬化型液体組成物の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、ディスペンスコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット法などの各種印刷法などが挙げられる。これらの中でも、印刷版を用いずにパターン形成が可能であり、非接触で塗膜形成が可能な、スプレーコート法、ディスペンスコート法、インクジェット法が好ましい。これらの塗工方法により、前記仮固定機能部の所定領域に合わせたオンデマンドな塗工が可能となる。また、前記仮固定機能部の塗工方法としては、高精細なパターン形成が可能であるため前記所定領域に好適に仮固定機能部を形成することができ、また塗工量を精密に制御できることで、薄膜で均一性に優れ、これにより熱伝導率向上の効果が期待できる点で、特にインクジェット法が好ましい。
【0073】
特にUV LEDアレイをインクジェットヘッドに搭載したインクジェット印刷システムにより、ジェッティングした着弾滴をUV LEDで即時硬化させることにより高精度なパターン形成が可能となる。インクジェット印刷に適用するインクは微小径ノズルで吐出するため、一般的に5mPa・s~200mPa・s程度の低粘度インクが適している。
【0074】
前記第1の部材上の所定領域に前記第1の硬化型液体組成物を付与する際の、該第1の硬化型液体組成物の付与量としては、該第1の硬化型液体組成物を硬化して形成する仮固定機能部が第2の部材を仮固定できる量であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第1の硬化型液体組成物を硬化して形成する仮固定機能部の体積が、後述する第2の硬化型液体組成物を硬化して形成する固着機能部の体積に対して50%以下となるように、前記第1の部材上の所定領域に付与することが好ましい。これにより、前記接着性構造物における前記固着機能部の比率が高まり、接着強度を向上させることができる。
【0075】
<仮固定機能部形成工程>
前記仮固定機能部形成工程は、前記第1の硬化型液体組成物付与工程で付与された前記第1の硬化型液体組成物を硬化させて仮固定機能部を形成する工程である。
【0076】
なお、前記第1の硬化型液体組成物付与工程と、前記仮固定機能部形成工程とは、1回ずつ行ってもよく、連続して複数回繰り返してもよい。前記第1の硬化型液体組成物付与工程と、前記仮固定機能部形成工程とを連続して複数回繰り返すことにより、前記仮固定機能部の厚さを調整することができ、これにより前記接着性構造物の厚さを調整することができる。
【0077】
前記第1の硬化型液体組成物を硬化させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性エネルギー線を照射する方法などが挙げられる。
【0078】
<<活性エネルギー線>>
前記活性エネルギー線としては、前記第1の硬化型液体組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、赤外線、紫外線、電子線、α線、β線、γ線、X線などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記第1の硬化型液体組成物が光硬化型液体組成物を含有する場合は、紫外線照射により硬化させる(光硬化させる)ことが好ましい。
【0079】
前記活性エネルギー線として紫外線、電子線、α線、β線、γ線、X線等を用いて前記第1の硬化型液体組成物を硬化させることを「光硬化」と称することがある。
前記活性エネルギー線が紫外線の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
【0080】
前記活性エネルギー線として赤外線を用いて前記第1の硬化型液体組成物を硬化させることを「熱硬化」と称することがある。
前記熱硬化のプロセスには、直接的な赤外線照射だけでなく、間接的に赤外線を利用する形態、例えば、熱風式オーブンやホットプレート等による加熱を含む。
【0081】
<<仮固定機能部>>
前記仮固定機能部は、第1の部材と第2の部材とを仮固定する部材である。前記部品の製造方法において、第1の部材と、第2の部材とを仮固定することにより、これらの2つの部材の貼合せ後のずれを防止することができる。
【0082】
前記仮固定機能部は、後述する固着工程において、前記第2の硬化型液体組成物が硬化して固着機能部を形成するまでの間に、第1の部材と第2の部材とを固定する機能を少なくとも有していればよいが、更に、前記接着性構造物の厚さを制御する機能、前記第2の硬化型液体組成物付与工程における第2の硬化型液体組成物のはみ出しを抑制する機能、部品の熱変形による応力を緩和する機能などの付加的な機能も有することが好ましい。
【0083】
前記仮固定機能部は、タック性を有することにより、第1の部材と、第2の部材とを仮固定する。
本発明において、「タック性を有する」とは、タック力が89gf以上であることを意味する。したがって、前記仮固定機能部は、固着機能部と比較して接着力が低いものであるが、第1の部材と第2の部材とを仮固定するために十分なタック力を有するものである。
【0084】
更に、前記仮固定機能部は、低弾性であることが好ましい。
前記仮固定機能部の弾性率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記固着機能部より低いことが好ましく、3,000MPa以下が好ましく、2,000MPa以下がより好ましく、500MPa以下が更に好ましい。前記仮固定機能部の弾性率が3,000MPa以下であると、柔軟性が高いため、仮固定工程において、第2の部材を貼り合わせた際に、第2の部材の自重若しくは荷重により仮固定機能部が変形し、第2の部材との接触面積が広がるように変形し、ボイドの発生をより好適に防ぐことができる。
【0085】
前記仮固定機能部の弾性率は、例えば、ガラス基板の表面に成膜及び硬化した前記仮固定機能部の膜について、微小硬度計(例えば、FISCHERSCOPE(登録商標)HM2000、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)で押し込み弾性率を測定する方法、走査型プローブ顕微鏡(SPM)により測定する方法などにより確認することができる。
【0086】
また、前記仮固定機能部は、タック性の他、低弾性であり、かつ柔軟性を有することが好ましい。これにより、ワイヤーボンディング、フリップチップ等の配線部において優れた充填性を有しながらパターニング塗工することが可能となり、接着性構造物の剥離起点となるバブルやボイドの発生を抑制することができる点でも有利である。
【0087】
<第2の硬化型液体組成物付与工程>
前記第2の硬化型液体組成物付与工程は、前記第1の部材上の、前記仮固定機能部の内側領域に第2の硬化型液体組成物を付与する工程である。
【0088】
前記仮固定機能部の内側領域とは、前記接着性構造物の上面から見た場合に、図1A及び図1Bで示すような形状の場合は、仮固定機能部1で囲まれた領域の内側を意味する。
【0089】
また、前記接着性構造物の上面から見た場合に、図1Cで示すような形状の場合の前記仮固定機能部の内側領域について、図2Aを用いて説明する。図2Aは、図1Cに示す接着性構造物を形成する際の、仮固定機能部形成工程後の概略上面図である。図2Aで示すように、仮固定機能部1aと、該仮固定機能部1aと対向する仮固定機能部1bとが存在する場合、仮固定機能部1aと仮固定機能部1bとが対向する側面とは反対側の側面に、それぞれ仮想線L及び仮想線Lを引く。同様にして、仮固定機能部1cと、該仮固定機能部1cと対向する仮固定機能部1dとが存在する場合、仮固定機能部1cと仮固定機能部1dとが対向する側面とは反対側の側面に、それぞれ仮想線L及び仮想線Lを引く。これらの仮想線L、仮想線L、仮想線L3、及び仮想線Lにより囲まれた領域の内側を、前記仮固定機能部の内側領域とする。なお、図1Cでは、仮想線L、仮想線L、仮想線L3、及び仮想線Lにより囲まれた領域より小さい領域に固着機能部を形成しているが、この態様においては、仮想線L、仮想線L、仮想線L3、及び仮想線Lにより囲まれた領域の内側領域であり、かつ所望の固着機能を奏する限り、固着機能部を形成する領域(前記第2の硬化型液体組成物を付与する領域)の大きさは特に制限はない。
【0090】
また、前記接着性構造物の上面から見た場合に、図1Dで示すような形状の場合の前記仮固定機能部の内側領域について、図2Bを用いて説明する。図2Bは、図1Dに示す接着性構造物を形成する際の、仮固定機能部形成工程後の概略上面図である。図2Bで示すように、仮固定機能部1aと、仮固定機能部1aと対向する仮固定機能部1bが存在し、仮固定機能部1cと、仮固定機能部1cと対向する仮固定機能部1dが存在する場合、仮固定機能部1aと仮固定機能部1bとが対向する側面とは反対側の側面、及び仮固定機能部1cと仮固定機能部1dとが対向する側面とは反対側の側面を通るように、それぞれ仮想線L、仮想線L、仮想線L3、及び仮想線Lを引く。これらの仮想線L、仮想線L、仮想線L3、及び仮想線Lにより囲まれた領域の内側を、前記仮固定機能部の内側領域とする。なお、図1Dでは、仮想線L、仮想線L、仮想線L3、及び仮想線Lにより囲まれた領域より小さい領域に固着機能部を形成しているが、この態様においては、仮想線L、仮想線L、仮想線L3、及び仮想線Lにより囲まれた領域の内側領域であり、かつ所望の固着機能を奏する限り、固着機能部を形成する領域(前記第2の硬化型液体組成物を付与する領域)の大きさは特に制限はない。
【0091】
ここでは、第2の部材が四角形である場合について具体例を挙げて説明したが、第2の部材が円形や三角形等の他の形状の場合であっても、第2の部材の外周を固定できるように仮固定機能部1を配し、第2の部材の内部を固着機能部2で固着することができるようにして、一の仮固定機能部1と、他の仮固定機能部1とが対向する側面とは反対側の側面に仮想線を引くことで、仮固定機能部の内側領域を決定することができる。
【0092】
<<第2の硬化型液体組成物>>
前記第2の硬化型液体組成物は、硬化して硬化物を形成する組成物である。
前記第2の硬化型液体組成物付与工程において、前記第2の硬化型液体組成物は、前記固着機能部を形成するための固着機能部形成用インクとして用いられる。したがって、前記第2の硬化型液体組成物付与工程は、固着機能部形成用インク付与工程と称することがある。
【0093】
前記第2の硬化型液体組成物は、硬化型モノマーを含有する組成物であり、活性エネルギー線硬化型液体組成物であることが好ましい。
前記活性エネルギー線硬化型液体組成物としては、例えば、光硬化型液体組成物、熱硬化型液体組成物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、第1の部材と第2の部材とを強固に固着する固着機能部を形成する点から、前記第2の硬化型液体組成物は、少なくとも熱硬化型液体組成物を含有することが好ましい。また、前記第2の硬化型液体組成物は、更に必要に応じて、前記硬化型モノマー以外のその他の成分を含有していてもよい。
前記第2の硬化型液体組成物を硬化した前記固着機能部の組成(即ち、原材料である前記第2の硬化型液体組成物の組成)は、例えば、赤外吸収分光法(IR)などにより分析することができる。
【0094】
前記第2の硬化型液体組成物は、第2の部材を貼り合わせた後、後述する固着工程で硬化するため、第2の部材の貼合せ時までは液状の流動性を有している。そのため、第1の部材及び第2の部材が表面に凹凸形状を有するものであっても、該凹凸形状に合わせて流動し、第1の部材と第2の部材との貼合せ後の空隙を埋め、ボイドの発生を抑制することができる。また、第2の部材を貼り合わせる際に気泡を巻き込んだ場合であっても、液状の流動性により、気泡を外に排出することができ、これによってもボイドの発生を抑制することができる。
【0095】
-硬化型モノマー-
前記固着機能部を形成する前記第2の硬化型液体組成物が含有する前記硬化型モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多官能の脂環式エポキシ化合物、オキセタン化合物、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、(メタ)アクリレートモノマー、ウレタンモノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記第2の硬化型液体組成物は、多官能の脂環式エポキシ化合物、オキセタン化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物を含有することが、該第2の硬化型液体組成物の硬化物である固着機能部に強い接着性を付与できる点で好ましく、多官能の脂環式エポキシ化合物及びオキセタン化合物を含有することがより好ましい。
【0096】
前記第2の硬化型液体組成物が前記多官能の脂環式エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物以外のモノマーを含有すると、前記多官能の脂環式エポキシ化合物と前記オキセタン化合物との相溶性を向上することができる。また、前記第2の硬化型液体組成物の粘度をより適度な粘度に調整しやすく、これにより前記第2の硬化型液体組成物の硬化物である固着機能部の膜弾性を調整しやすく、更に接着性を向上することができる。また、光硬化機能を付与することもできる。
【0097】
--多官能の脂環式エポキシ化合物--
前記多官能の脂環式エポキシ化合物は、硬化反応が速いため、前記固着機能部の製造効率を向上することができ、また、前記多官能の脂環式エポキシ化合物の硬化物のガラス転移点(Tg)が高いため、前記第2の硬化型液体組成物の硬化物である固着機能部に耐熱性を付与することができる。
【0098】
前記多官能の脂環式エポキシ化合物(モノマー)としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
【化1】
前記一般式(1)において、X及びYはそれぞれ独立して、芳香族性を有しない、飽和又は不飽和の炭素環を1以上含む炭化水素を表し、nは1~3の整数を表す。X及びYの炭素環の炭素には、0個、1個、又は2個の一価の有機基が結合している。X及びYは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0100】
これらの中でも、前記一般式(1)で表される化合物としては、下記一般式(1a)で表される化合物が好ましい。
【化2】
前記一般式(1a)において、X1及びY1はそれぞれ独立して、5員環又は6員環の飽和炭素環を表す。X1及びY1の炭素環の炭素には、0個、1個、又は2個の一価の有機基が結合している。X1及びY1は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0101】
前記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、下記構造式1~構造式5のいずれかで表される化合物などが挙げられる。
【化3】
【0102】
【化4】
前記一般式(2)において、X及びYはそれぞれ独立して、芳香族性を有しない、飽和又は不飽和の炭素環を1以上含む炭化水素を表し、Zは脂環式炭化水素又は1官能の脂環式エポキシを表し、mは0又は1の整数を表す。X及びYの炭素環の炭素には、0個、1個、又は2個の一価の有機基が結合している。X及びYは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0103】
これらの中でも、前記一般式(2)で表される化合物としては、下記一般式(2a)で表される化合物が好ましい。
【化5】
前記一般式(2a)において、X1及びY1はそれぞれ独立して、5員環又は6員環の飽和炭素環を表す。X1及びY1の炭素環の炭素には、0個、1個、又は2個の一価の有機基が結合している。X1及びY1は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0104】
前記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、下記構造式6~構造式11のいずれかで表される化合物などが挙げられる。
【化6】
【0105】
【化7】
前記一般式(3)において、X及びYはそれぞれ独立して、芳香族性を有しない、飽和又は不飽和の炭素環を1以上含む炭化水素を表し、(A)qはCHを表すか、若しくは、Aは下記一般式(3a)で表される置換基又は下記一般式(3b)で表される置換基を表し、qは1又は2の整数を表す。X及びYの炭素環の炭素には、0個、1個、又は2個の一価の有機基が結合している。X及びYは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【化8】
【化9】
(ただし、一般式前記(3a)及び前記一般式(3b)において、*は結合手を表す。)
【0106】
前記一般式(3)で表される化合物の具体例としては、下記構造式12~構造式14のいずれかで表される化合物などが挙げられる。
【化10】
(ただし、前記構造式13において、nは1又は2の整数を表す。)
【0107】
これらの中でも、前記多官能の脂環式エポキシ化合物としては、構造式1で表される化合物、構造式6で表される化合物、構造式7で表される化合物、及び構造式8で表される化合物の少なくともいずれかを含有することが、インクジェット印刷法により吐出可能な粘度とすることができ、かつ接着性及び耐熱性が良好である点で好ましい。
【0108】
前記多官能の脂環式エポキシ化合物は、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記多官能の脂環式エポキシ化合物の市販品としては、例えば、エポカリックTHI-DE、エポカリックDE-102、エポカリックDE-103、VNBB-ME(以上、ENEOS株式会社製)、DCPD-DE(日本材料技研株式会社製)、セロキサイド(CEL)8010P、CEL2010P、CEL2081、CEL2000(以上、株式会社ダイセル製)などが挙げられる。
【0109】
前記第2の硬化型液体組成物における前記多官能の脂環式エポキシ化合物の含有量としては、特に制限はなく、前記オキセタン化合物の種類などに応じて、適宜選択することができるが、前記第2の硬化型液体組成物をインクジェット印刷法により吐出可能な粘度とすることができることが好ましく、前記第2の硬化型液体組成物の全質量に対して、10質量%~95質量%が好ましく、30質量%~70質量%がより好ましい。前記多官能の脂環式エポキシ化合物の含有量が10質量%以上であると、前記第2の硬化型液体組成物により得られる固着機能部の耐熱性及び接着性が良好であり、95%以下であると、前記第2の硬化型液体組成物により得られる固着機能部の柔軟性が良好である。
【0110】
前記多官能の脂環式エポキシ化合物の硬化物は、前記多官能の脂環式エポキシ化合物のエポキシ基が重合開始剤により開環し、重合することで架橋して得られる。以下に、カチオン重合開始剤を用いたエポキシ化合物の硬化反応のスキームの一例を示す。
【化11】
【0111】
--オキセタン化合物--
前記オキセタン化合物は、前記第2の硬化型液体組成物の粘度を調整すること、特に前記多官能の脂環式エポキシ化合物に起因する粘度を低下させることができる。また、前記第2の硬化型液体組成物の硬化物である固着機能部に柔軟性を付与することができる。具体的には、前記多官能の脂環式エポキシ化合物と前記オキセタン化合物同士、及び前記オキセタン化合物同士の少なくともいずれかが重合し、鎖状に長くなる程、高い柔軟性を付与することができる。前記オキセタン化合物に代えて、従来のアクリロニトリル共重合体(ゴム)や(メタ)アクリルモノマーなどを用いた場合は、組成物の粘度が高くなってしまい、インクジェット印刷法の吐出の適した粘度の組成物が得難いという問題や、熱硬化反応し得る材料が限られてしまうという問題があった。そのため、インクジェット印刷法で吐出可能な粘度とすることができ、かつ低分子量のモノマーから熱硬化反応により架橋するという点で、前記第2の硬化型液体組成物が、前記多官能の脂環式エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物を含有することが重要である。
【0112】
前記オキセタン化合物(モノマー)としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、下記一般式(4)で表される化合物、下記一般式(5)で表される化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】
【化12】
前記一般式(4)において、R1は一価の有機基を表す。
【0114】
前記一般式(4)で表される化合物の具体例としては、下記構造式15~構造式20のいずれかで表される化合物などが挙げられる。
【化13】
【0115】
前記一般式(5)において、R2は2価の炭化水素基、R3-O-R4、又はR3-O-R4-O-R5からなるエーテル基を含む2価の有機基を表す。R3、R4、及びR5はそれぞれ独立して、炭化水素基を表す。R3、R4、及びR5は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0116】
前記一般式(5)で表される化合物の具体例としては、下記構造式21~構造式23のいずれかで表される化合物などが挙げられる。
【化14】
(ただし、構造式22において、nは1又は2の整数を表す。)
【0117】
これらの中でも、前記オキセタン化合物としては、構造式15で表される化合物、構造式17で表される化合物、構造式21で表される化合物、及び構造式22で表される化合物の少なくともいずれかを含有することが、インクジェット印刷法により吐出可能な粘度とすることができ、かつ接着性及び柔軟性が良好である点で好ましい。
【0118】
前記オキセタン化合物としては、前記固着機能部の柔軟性の点で、該オキセタン化合物単独の硬化物のガラス転移点(Tg)が100℃以下であることが好ましい。
前記オキセタン化合物単独の硬化物のガラス転移点(Tg)は、例えば、オキセタン化合物に熱重合開始剤としてサンエイドSI-150(三新化学工業株式会社製)を1質量%添加し、これを2枚のガラス間に注入した後、100℃で2時間加熱し、更に200℃で1時間加熱し、更に260℃で5分間熱硬化処理した後、硬化物を2枚のガラスから剥離して作製した測定用サンプルを用いて、レオメーター(ARES-G2、TAインスツルメント製)で、下記測定条件に設定して測定することができる。
[測定条件]
・測定方法:Torsion振動
・測定用サンプルセット:10gfテンション(Gap可変:初期値約10mm)
・歪条件:最低トルク0.3g・cm(歪可変:初期値0.05%、最大値1%)
・温度:25℃~300℃、20℃/分間
・サンプル形状:約20mm×5mm(厚さ:100μm)
【0119】
また、前記オキセタン化合物は、光硬化性及び熱硬化性を付与する点で、オキセタンアクリレート基を有するオキセタンアクリレートを含有することが好ましい。前記オキセタン化合物がオキセタンアクリレートを含有することで、光硬化及び熱硬化を併用する場合に、良好な接着力が得られる。前記オキセタンアクリレートとしては、前記構造式20で表される化合物を含有することが好ましい。
【0120】
前記オキセタン化合物は、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記オキセタン化合物の市販品としては、例えば、アロンオキセタンOXT-101、アロンオキセタンOXT-212、アロンオキセタンOXT-121、アロンオキセタンOXT-221(以上、東亜合成株式会社製)、ETERNACOLL(登録商標)HBOX、OXBP、OXIPA(以上、宇部興産株式会社製)、OXE-10((3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレート)、OXE-30((3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレート)、MEDOL-10((3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレート)(以上、大阪有機化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0121】
前記第2の硬化型液体組成物における前記オキセタン化合物の含有量としては、特に制限はなく、前記多官能の脂環式エポキシ化合物の種類などに応じて、適宜選択することができるが、前記第2の硬化型液体組成物をインクジェット印刷法により吐出可能な粘度とすることが好ましく、5質量%~90質量%が好ましく、30質量%~70質量%がより好ましい。前記オキセタン化合物の含有量が5質量%以上であると、前記第2の硬化型液体組成物により得られる固着機能部の柔軟性が良好であり、また前記第2の硬化型液体組成物をインクジェット印刷法による吐出に好適な低粘度とすることができ、90%以下であると、前記第2の硬化型液体組成物により得られる固着機能部の耐熱性及び接着性が良好である。
【0122】
前記オキセタン化合物の含有量は、前記第2の硬化型液体組成物が前記多官能の脂環式エポキシ化合物以外の成分を含む場合、前記第2の硬化型液体組成物の全質量に対する含有量であってもよいが、下記式(1)で算出される含有量であることが好ましい。
オキセタン化合物の含有量(質量%)=オキセタン化合物の合計質量/(多官能の脂環式エポキシ化合物の合計質量+オキセタン化合物の合計質量)×100 ・・・ 式(1)
【0123】
前記オキセタン化合物の硬化物は、前記オキセタン化合物のオキセタン基が重合開始剤により開環し、重合することで架橋して得られる。以下に、カチオン重合開始剤を用いたオキセタン化合物の硬化反応のスキームの一例を示す。
【化15】
前記オキセタン化合物の硬化反応のスキームにおけるオキセタン化合物は前記一般式(4)で表される化合物であり、R8はエチル基を表し、R9は-CH-O-R1を表し、R1は一価の有機基を表す。
【0124】
--グリシジルエーテル型エポキシ化合物--
前記グリシジルエーテル型エポキシ化合物(モノマー)としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、アリルジグリシジルエーテル、ビスフェノール型ジグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0125】
前記グリシジルエーテル型エポキシ化合物の具体例としては、下記構造式24から構造式29のいずれかで表される化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【化16】
(ただし、前記構造式24おいて、nは12を表す。また、構造式26において、nは9を表す)
【0126】
前記グリシジルエーテル型エポキシ化合物は、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記グリシジルエーテル型エポキシ化合物の市販品としては、例えば、リカレジンDME-100(新日本理化株式会社製)、エポライトM-1230、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト1600、エポライト80MF、エポライト100MF(以上、共栄社化学株式会社製)、ショウフリー(登録商標)PETG、ショウフリー(登録商標)BATG(以上、昭和電工株式会社製)デナコールEX-614B、デナコールEX-313、デナコールEX-512、デナコールEX-321、デナコールEX-321L、デナコールEX-612、デナコールEX-614、デナコールEX-622、デナコールEX-314、デナコールEX-421、デナコールEX-521、デナコールEX-411、デナコールEX-171、デナコールEX-146、デナコールEX-121、デナコールEX-141、デナコールEX-145、デナコールEX-147、デナコールEX-192、デナコールEX-731、デナコールEX-991L(以上、ナガセケムテックス株式会社製)、YL9028(三菱化学株式会社製)などが挙げられる。
【0127】
--グリシジルアミン型エポキシ化合物--
前記グリシジルアミン型エポキシ化合物(モノマー)としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、下記一般式(6)で表される化合物、下記一般式(7)で表される化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【化17】
前記一般式(6)において、R6は1価の脂肪族、芳香族、又は脂環式の炭化水素基、若しくは、脂肪族、芳香族、又は脂環式の炭化水素基から選択される2つ以上が結合した基、更にこれらの炭化水素基又は炭化水素基の2つ以上が結合した基にグリシジルエーテル基が結合された基を表す。
【化18】
前記一般式(7)において、R7は1価の脂肪族、芳香族、又は脂環式の炭化水素基、若しくは、脂肪族、芳香族、脂環式の炭化水素基から選択される2つ以上が結合した基を表す。
【0128】
前記グリシジルアミン型エポキシ化合物の具体例としては、下記構造式30から構造式36のいずれかで表される化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【化19】
【0129】
前記グリシジルアミン型エポキシ化合物は、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記グリシジルアミン型エポキシ化合物の市販品としては、例えば、スミエポキシELM-434、ELM-100(住友化学株式会社製)、アデカレジンEP-3950S、P-3950L、EP-3980S(株式会社ADEKA製)、YH-523、YH-513、YH-404(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、TETRAD-X(三菱ガス化学トレーディング株式会社)などが挙げられる。
【0130】
--(メタ)アクリレートモノマー--
前記(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に制限はなく、一般的な光重合型又は熱重合型(メタ)アクリレートモノマーの中から目的に応じて適宜選択することができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0131】
前記(メタ)アクリレートモノマーは、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記(メタ)アクリレートモノマーの市販品としては、例えば、AOMA(登録商標)(日本触媒株式会社製)、HEA(ヒドロキシエチルアクリレート)、HPA(ヒドロキシプロピルアクリレート)、4-HBA(4-ヒドロキシブチルアクリレート)、AIB(イソブチルアクリレート)、TBA(t-ブチルアクリレート)、NOAA(n-オクチルアクリレート)、INAA(イソノニルアクリレート)、ビスコート#197(ノニルアクリレート)、IDAA(ノニルアクリレート)、LA(ラウリルアクリレート)、STA(ステアリルアクリレート)、ISTA(イソステアリルアクリレート)、IBXA(イソボルニルアクリレート)、ビスコート#155(シクロヘキシルアクリレート)、ビスコート#196(3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート)、ビスコート#160(ベンジルアクリレート)、ビスコート#192(フェノキシエチルアクリレート)、ビスコート#150(テトラヒドロフルフリルアクリレート)、ビスコート#190(エチルカルビトールアクリレート)、2-MTA(メトキシエチルアクリレート)、ビスコート#MTG(メトキシトリエチレングリコールアクリレート)、ビスマーMPE400A(メトキシポリエチレングリコールアクリレート)、ビスマーMPE550A(メトキシポリエチレングリコールアクリレート)、ビスコート#200(環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート)(以上、大阪有機化学工業株式会社製)、A-LEN-10(エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート)、AM-90G(エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート)、AM-130G(エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート)、AMP-20GY(エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート)、A-SA(2-アクリロイルオキシエチルコハク酸)、701A(2-ヒドロキシ-3-メタクリルプロピルアクリレート)、A-200(ポリエチレングリコール#200ジアクリレート)、A-400(ポリエチレングリコール#400ジアクリレート)、A-600(ポリエチレングリコール#600ジアクリレート)、A-100(ポリエチレングリコール#100ジアクリレート)、ABE-300(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート)、A-BPE-10(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート)、A-BPE-20(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート)、A-BPE-4(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート)、A-DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、A-DOD-N(1,10-デカンジオールジアクリレート)、A-HD-N(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート)、A-NOD-N(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート)、APG-200(トリプロピレングリコールジアクリレート)、APG-400(ポリプロピレングリコール#400ジアクリレート)、APG-700(ポリプロピレングリコール#700ジアクリレート)、A-PTMG-65(ポリテトラメチレングリコール#650ジアクリレート)、A-9300(ポリテトラメチレングリコール#650ジアクリレート)、A-GLY-9E(エトキシ化グリセリントリアクリレート)、A-GLY-20E(エトキシ化グリセリントリアクリレート)、A-TMM-3(ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート)、A-TMM-3L(ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート)、A-TMPT(トリメチロールプロパントリアクリレート)、AD-TMP(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)、ATM-35E(エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、A-TMMT(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、A-9550(ジペンタエリスリトールポリアクリレート)、A-DPH(5官能~6官能(アルコキシ化)ジペンタエリスリトールポリアクリレート)(以上、新中村化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0132】
--ウレタンモノマー--
前記ウレタンモノマーとしては、特に制限はなく、一般的なウレタンモノマーの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレートモノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0133】
前記ウレタンモノマーは、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記ウレタンモノマーの市販品としては、例えば、UF-3003、UF-3003M、UF-3007、UF-3007M、UF-3123M(以上、共栄社化学株式会社製)などが挙げられる。
【0134】
前記多官能の脂環式エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物以外のモノマーの含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記第2の硬化型液体組成物の全質量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、5質量%~50質量%がより好ましく、5質量%~30質量%が更に好ましい。前記多官能の脂環式エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物以外のモノマーの含有量が1質量%~50質量%であると、前記多官能の脂環式エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物との相溶性に優れ、粘度を低くすることができる点で好ましく、5質量%~30質量%であると、主成分である前記多官能の脂環式エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物の硬化物の特性を損なうことなく硬化物である固着機能部を得ることができる点で好ましい。
【0135】
-その他の成分-
前記第2の硬化型液体組成物の前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、シリコーン化合物、無機粒子、樹脂及び/又は樹脂粒子、密着改良剤、溶媒、光重合開始剤、熱重合開始剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、これらのその他の成分は、前記第1の硬化型液体組成物と同様のものを使用することができ、好ましい含有量等も同じであるため、説明を省略する。
【0136】
前記第2の硬化型液体組成物の粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、インクジェット法で吐出できる粘度であることが好ましく、25℃において、200mPa・s以下であることがより好ましく、50mPa・s以下であることが更に好ましい。前記第2の硬化型液体組成物の粘度が200mPa・s以下であると、該第2の硬化型液体組成物を高温加熱することなくインクジェット法で固着機能部を薄膜化でき、また均一に塗工することできることができる。更に、前記第2の硬化型液体組成物の粘度が200mPa・s以下であると、塗工量を調整しやすく前記固着機能部を薄膜化することができ、充填性能が向上し、バブル及びボイドの発生を低減することができる。
前記第2の硬化型液体組成物の粘度は、前記第1の硬化型液体組成物の粘度と同様の方法で測定することができる。
【0137】
前記第2の硬化型液体組成物の粘度は、前記多官能の脂環式エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物の構造や含有量などに応じて調製することができる。
【0138】
前記第2の硬化型液体組成物の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、ディスペンスコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット法などの各種印刷法などが挙げられる。これらの中でも、印刷版を用いずにパターン形成が可能であり、非接触で塗膜形成が可能な、スプレーコート法、ディスペンスコート法、インクジェット法が好ましい。これらの塗工方法により、前記固着機能部の所定領域に合わせたオンデマンドな塗工が可能となる。また、前記固着機能部の塗工方法としては、高精細なパターン形成が可能であり、また塗工量を精密に制御できることで、薄膜で均一性に優れ、これにより熱伝導率向上の効果が期待できる点で、特にインクジェット法が好ましい
【0139】
前記固着機能部が、前記第2の硬化型液体組成物をインクジェット印刷法により吐出して形成される場合、前記第2の硬化型液体組成物の着弾滴を重ねて厚膜化してもよい。
【0140】
<仮固定工程>
前記仮固定工程は、第2の部材を、前記仮固定機能部及び付与された前記第2の硬化型液体組成物に接するように配置して仮固定する工程である。
前記した通り、前記仮固定機能部はタック性を有するため、前記仮固定工程において前記第2の部材を貼り合わせた後に、第1の部材と第2の部材とがずれることを防止することができる。
【0141】
前記仮固定機能部に前記第2の部材を貼り合わせる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱する方法、圧力を付与する方法などが挙げられる。
【0142】
前記仮固定機能部に前記第2の部材を貼り合わせる際に加熱する場合の加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0143】
前記仮固定機能部に前記第2の部材を貼り合わせる際に付与する圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1N~30Nが好ましく、0.2N~20Nがより好ましい。前記圧力が0.1N以上であると、前記第2の部材を仮固定機能部に安定して固定することが可能であり、30N以下であると、過度な荷重による第2の硬化型液体組成物の漏れ出しを抑制することが可能である。
【0144】
<<第2の部材>>
前記第2の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、発熱性部品、冷却部品、基板、電極などが挙げられる。これらは、前記第1の部材と同様のものを使用することができる。
前記第2の部材は、前記第1の部材と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0145】
<固着工程>
前記固着工程は、前記第2の硬化型液体組成物を硬化させて固着機能部を形成することで前記第2の部材を固着させる工程である。
【0146】
前記第2の硬化型液体組成物を硬化させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性エネルギー線を照射する方法などが挙げられる。
前記活性エネルギー線としては、前記<仮固定機能部形成工程>の項目に記載のものと同様のものを使用することができる。これらの中でも、前記第2の硬化型液体組成物が熱硬化型液体組成物を含有する場合は、赤外線照射により硬化させる(熱硬化させる)ことが好ましい。
【0147】
前記熱硬化を行う場合の温度及び時間としては、特に制限はなく、前記第2の硬化型液体組成物の材料などに応じて適宜選択することができるが、加熱の温度としては、80℃~300℃が好ましく、100℃~200℃がより好ましい。また、加熱の時間としては、1分間~180分間が好ましく、10分間~120分間がより好ましい。
【0148】
<<固着機能部>>
前記固着機能部は、第1の部材と第2の部材とを固着する部材である。
【0149】
前記固着機能部の弾性率としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記仮固定機能部より高いことが好ましく、500MPa以上10,000MPa以下が好ましく、500MPa以上6,000MPa以下がより好ましい。前記固着機能部の弾性率が、500MPa以上であると、該接着部の鋼性に優れ、10,000MPa以下であると脆性破壊しにくい。
前記固着機能部の弾性率は、前記仮固定機能部の弾性率と同様の方法で測定することができる。
【0150】
前記固着機能部のガラス転移点(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、耐熱性の点で、150℃以上であることが好ましい。前記固着機能部のガラス転移点(Tg)が150℃以上であると、高温環境での接着性に優れる。
前記固着機能部のガラス転移点(Tg)は、例えば、前記第2の硬化型液体組成物を2枚のガラス間に注入し、硬化処理した後、硬化物をガラスから剥離したサンプルについて、レオメーター(ARES-G2、TAインスツルメント製)で、下記測定条件に設定して測定することができる。
[測定条件]
・測定方法:Torsion振動
・測定用サンプルセット:10gfテンション(Gap可変:初期値約10mm)
・歪条件:最低トルク0.3g・cm(歪可変:初期値0.05%、最大値1%)
・温度:25℃~300℃、20℃/分間
【0151】
以上で説明した前記部品の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。
図3は、本発明の部品の製造方法をフローチャートで示す説明図である。本発明の部品の製造方法は、少なくとも図3のステップ3と、ステップ4と、ステップ5と、ステップ8と、ステップ9とを含み、好ましくは、ステップ1と、ステップ2と、ステップ6と、ステップ7とを更に含む。
【0152】
ステップ1(S1)は、接着性構造物を直接形成する第1の部材(下部部材)を準備するステップである。
【0153】
ステップ2(S2)は、仮固定機能部形成用インク付与工程の前に、必要に応じて前処理を実施するステップである。
前記前処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、洗浄処理、表面改質処理、表面修飾処理、加熱処理などが挙げられる。これらの処理は、1つの処理を単独で実施してもよく、2つ以上の処理を同時又は個別に実施してもよい。
【0154】
前記洗浄処理としては、例えば、プラズマ洗浄処理などが挙げられる。
前記表面改質処理としては、例えば、UVオゾン処理などが挙げられる。
前記表面修飾処理としては、例えば、シランカップリング剤による表面修飾処理などが挙げられる。
前記加熱処理としては、例えば、オーブンやホットプレートによる加熱処理などが挙げられる。
【0155】
ステップ3(S3)は、第1の部材(下部部材)に仮固定機能部形成用インク(第1の硬化型液体組成物)を付与するステップである。仮固定機能部形成用インクの付与は、好ましくはインクジェット法を用いる。
【0156】
ステップ4(S4)は、仮固定機能部形成用インクを硬化して、仮固定機能部に変換するステップである。具体的には、仮固定機能部形成用インクの塗膜に、活性エネルギー線を照射することで、仮固定機能部形成用インクの重合反応を進めて硬化し、仮固定機能部を形成する。活性エネルギー線の照射がUV照射である場合、仮固定機能部形成用インクの塗工直後に硬化させることができるため、仮固定機能部を所望の形状にパターニングしやすい利点がある。
ステップ3とステップ4を連続で複数回繰り返して、仮固定機能部の膜厚を調整することもできる。
【0157】
ステップ5(S5)は、固着機能部形成用インク(第1の硬化型液体組成物)を、仮固定機能部が形成されていない領域であり、かつ仮固定機能部の内側領域に付与するステップである。固着機能部形成用インクの付与は、好ましくはインクジェット法を用いる。
【0158】
ステップ6(S6)は、後処理を行うステップである。後処理は、第1の部材上の仮固定機能部の内側領域に付与した固着機能部形成用インクを変換するために行う。後処理としては、活性エネルギー線を照射することにより行われる。ステップ6の後処理は、ステップ5と同時に実施してもよく、別々のステップとして実施してもよい。
ステップ6における「材料の変換」とは、溶媒の蒸発、化学反応などを含むが、ステップ9のように固着機能部形成用インクを完全に硬化させて固着機能部を形成することは除かれる。具体的には、前記固着機能部形成用インクに含まれる溶媒(低分子モノマーを含む)を1質量%~70質量%蒸発させる、及び/又は、前記固着機能部形成用インクの粘度が200mPa・sになるまで増粘させるステップであることが好ましい。材料の変換は、次のステップで不具合を生じさせないために好ましく実施する。
【0159】
ステップ7(S7)は、光硬化した仮固定機能部と、ステップ5で付与した固着機能部形成用インク、好ましくはステップ6で後処理して変換した固着機能部形成用インクとからなる層の上面(前記層の第1の部材3と接する面とは反対側の面)に設置する、第2の部材(上部部材)を準備するステップである。
【0160】
ステップ8(S8)は、前記仮固定機能部と、前記固着機能部形成用インクとからなる層に、第2の部材(上部部材)を貼り合わせて接合し、部材接合体を得るステップである。好ましくは、貼り合わせ後に、外部から熱又は圧力を加えて、前記仮固定機能部と、前記固着機能部形成用インクとからなる層と第2の部材とを密着させる。
【0161】
ステップ9(S9)は、前記部材接合体を加熱し、前記仮固定機能部と、前記固着機能部形成用インクとからなる層の固着機能部形成用インクを硬化させ、固着機能部を形成するステップである。
【0162】
次に、ステップ5からステップ9について、図面を用いて更に詳細に説明する。
図4Aは、製造途中の部品の断面の一部を示す図であり、ステップ5で第1の部材(下部部材)3の仮固定機能部1の内側領域に固着機能部形成用インク(第2の硬化型液体組成物)2aを付与した後、ステップ8で仮固定機能部1と固着機能部形成用インク2aとからなる層に第2の部材(上部部材)4を貼り合わせる前の状態を模式的に示す断面図である。図4Aでは、仮固定機能部の一例として、仮固定機能部形成用インク(第1の硬化型液体組成物)を光硬化した樹脂膜(固体)として説明するが、硬化反応が途中段階(仮硬化状態)であってもよい。この実施形態では、固着機能部形成用インク2aは、インクジェット法により第1の部材上に塗工され、第2の部材を貼り合わせた後、熱硬化により硬化させて、第1の部材と第2の部材とを固着する。
【0163】
図4Bは、製造途中の部品の断面の一部を示す図であり、ステップ8で仮固定機能部1と固着機能部形成用インク2aとからなる層と、第2の部材(上部部材)4とを貼り合わせている途中の様子を模式的に示す断面図である。固着機能部形成用インク2aと第2の部材4の接触界面では、固着機能部形成用インク2aが流動性を有し、濡れ広がりやすい液体状態であるために、第2の部材4の面全域に広がることができる。そのため、第2の部材4と固着機能部形成用インク2aとの界面にボイドが発生しにくい。一方、固体の仮固定機能部1は、低弾性及び柔軟性を有し、第2の部材の自重若しくは荷重により変形し、第2の部材との接触面積が広がるように変形する。
【0164】
図4Cは、製造途中の部品の断面の一部を示す図であり、ステップ8で仮固定機能部1と固着機能部形成用インク2aとからなる層と、第2の部材(上部部材)4とを貼り合わせ後の状態を模式的に示す断面図である。仮固定機能部1は低弾性であることにより、第2の部材4の貼合せ時の荷重変形から元に戻る変形が抑制される。また、仮固定機能部1はタック性を有しており、第2の部材4を固定することができる。この仮固定機能により、製造工程での部品の搬送や熱プロセス時に、第2の部材4が仮固定機能部1と固着機能部形成用インク2aとからなる層からずれることを抑制することができる。
【0165】
<部品>
次に、本発明の部品、好ましくは、本発明の部品の製造方法で製造された部品の一実施形態について、図面を用いて更に詳細に説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0166】
図5は、本発明の部品の一実施形態を示す概略説明図(厚み方向の断面も式図)である。この一実施形態では、固着機能部の形成に熱硬化型液体組成物を用い、仮固定機能部の形成に光硬化型液体組成物を用いた場合を例に説明する。
仮固定機能部1と、固着機能部2とからなる接着性構造物は、第1の部材3と第2の部材4に接触している。仮固定機能部1は、固着機能部2を硬化させる前の段階で、第2の部材4を第1の部材3に固定する機能を有する。固着機能部2は、前記固着機能部形成用インクの硬化後に第2の部材4を固着し、固定する機能を有する。
【0167】
前記接着性構造物の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、層状であってもよく、ブロック状であってもよい。
【0168】
本明細書において「層状」とは、厚さが1,000μm以下の場合を示し、ブロック状とは、厚さが1,000μm超の場合を示す。以下、層状の接着性構造物を「接着層」と称することがある。
これらの形状は、目的とする使用態様に応じて適宜選択することができる。例えば、薄膜化が要求される半導体(ダイ)と該半導体(ダイ)に接着する各種材料との接着には、層状の接着性構造物を好適に使用することができる。
【0169】
前記接着性構造物が層状の場合、その厚さとしては、1,000μm以下であるが、1μm~500μmが好ましく、薄型化への要求及び熱抵抗を下げる観点から、1μm~50μmがより好ましく、放熱性の点で1μm~30μmが更に好ましく、1μm~20μmが特に好ましい。前記接着性構造物の厚さを1μm~30μmにすることで、前記接着性構造物を発熱性部品(例えば、半導体)の接着に使用した場合に該発熱性部品の放熱性が向上すると共に、半導体装置の薄型化が可能になる。
【0170】
前記接着性構造物の厚さは、触針計(Alpha-Step D-500、KLA-Tenchore社製)、光学反射分光式測定器(F50 フィルメトリクス社製)、レーザー顕微鏡(VK―X1000、キーエンス株式会社製)などで測定することができる。なお、本明細書において「厚さ」とは、前記レーザー顕微鏡で、任意の3箇所について測定し、平均値を算出した「平均厚さ」を意味する。
【0171】
[空隙率]
前記部品における前記接着性構造物と前記第2の部材(上部部材)との間の空隙率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20%未満が好ましく、10%未満が更に好ましい。前記部品における前記接着性構造物と前記第2の部材(上部部材)との間の空隙はない方が好ましいため、前記空隙率の下限値としては、0%である。
【0172】
前記部品における前記接着性構造物と前記第2の部材(上部部材)との間の空隙率は、超音波探傷検査(SAT)装置を用いる、空隙率測定用の貼合せサンプルを作製して光学顕微鏡で観察する、などの方法により確認することができる。
空隙率測定用の貼合せサンプルとしては、例えば、第2の部材をガラス基板として前記接着性構造物で固着した貼合せサンプルなどが挙げられる。前記貼合せサンプルを、第2の部材としてのガラス基板側から見た上面観察像を、マイクロスコープ(例えば、VHX-7000、キーエンス株式会社製)を用いて貼合せサンプル全体が視野に入る倍率(20倍)で撮影する。この上面観察像を、空隙に該当する白色成分と、空隙がなく貼り付いている領域に該当する黒色成分とに二値化する。更に二値化した画像を解析し、白色成分の面積を算出し、下記式(2)に基づき空隙率を算出することができる。
空隙率(%)=白色成分の面積/接着層の全面積×100 ・・・ 式(2)
なお、前記式(2)において、「接着層の全面積」は、前記上面観察像において、前記接着層の全面積より第2の部材としてのガラス基板の全面積の方が小さい場合は、「ガラス基板の全面積」に置き換えてもよい。
【実施例0173】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、別段の断りない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。
【0174】
(調製例1-1:固着機能部形成用インク1の調製)
固着機能部形成用インク1を下記条件で作製した。
脂環式エポキシモノマー(エポカリックTHI-DE、ENEOS株式会社製)35部、グリシジルアミンエーテル系4官能エポキシモノマー(TETRAD-X、三菱ガス化学トレーディング株式会社製)20部、オキセタンモノマー(OXT-221、東亜合成株式会社製)5部、オキセタンモノマー(OXT-101、東亜合成株式会社製)30部、オキセタンモノマー(OXT-212、東亜合成株式会社製)10部、及び熱重合開始剤(サンエイドSI-150、三新化学工業株式会社製)1部を混合し、熱硬化性の[固着機能部形成用インク1](質量比は、エポカリックTHI-DE:TETRAD-X:OXT-221:OXT-101:OXT-212:サンエイドSI-150=35:20:5:30:10:1)を調製した。
【0175】
(調製例2-1:仮固定機能部形成用インク1の調製)
仮固定機能部形成用インク1を下記条件で作製した。
トリデシルアクリレート(SR489D、アルケマ製)74部、単官能ベンゼン環含有アクリレート(AMP-20GY、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、新中村化学工業株式会社製)20部、アクリル酸(三菱ケミカル株式会社製)5部、及び光重合開始剤(Omnirad TPO H(former Irgacure TPO)IGM Resins B.V.製)5部を混合し、光硬化性の[仮固定機能部形成用インク1](質量比は、SR489D:AMP-20GY:アクリル酸:Omnirad TPO H=74:20:5:5)を調製した。
【0176】
(調製例2-2:仮固定機能部形成用インク2の調製)
仮固定機能部形成用インク2を下記条件で作製した。
イソデシルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)50部、テトラヒドロフルフリルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)5部、アクリル酸(三菱ケミカル株式会社製)5部、イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)15部、アクリル系モノマー(AB-6、東亜合成株式会社製)25部、及び光重合開始剤(Omnirad TPO H(former Irgacure TPO)IGM Resins B.V.製)5部を混合し、光硬化性の[仮固定機能部形成用インク2](質量比は、イソデシルアクリレート:テトラヒドロフルフリルアクリレート:アクリル酸:イソボルニルアクリレート:AB-6:Omnirad TPO H=50:5:5:15:25:5)を調製した。
【0177】
(実施例1)
実施例1では、部品保持安定性及び空隙率を評価するための図1A及び図5に示す構成の貼合せサンプルA、並びに、タック力を評価するための仮固定機能部のみからなる接着層を有する貼合せサンプルBを以下の方法で作製した。
【0178】
<貼合せサンプルAの作製>
第1の部材3として、コア材/銅配線/ソルダーレジストから構成されるBGAパッケージ用基板(以下、「BGA基板」と称することがある)を準備した。第2の部材4としてのガラス基板(日本電気硝子株式会社製)を準備し、仮固定機能部1及び固着機能部2からなる接着層で接着した貼合せサンプルAとした。
仮固定機能部1及び固着機能部2は、それぞれインクジェット印刷により形成した。インクジェット装置は、インクジェットヘッドとしてMH5420(株式会社リコー製)を搭載したインクジェット装置(Stage JET、株式会社トライテック製)を用いた。
具体的な方法は以下の通りである。
【0179】
<<設計>>
第1の部材3としてのBGA基板の厚さ方向に直行する方向の表面の中心に、図1Aに示すように、縦4.5mm、横4.5mmの正方形の固着機能部形成領域を設計した。このとき、前記固着機能部形成領域の中心と、前記BGA基板の中心が同一となるようにした。次に、縦4.5mm、横4.5mmの正方形の固着機能部形成領域の周囲に、幅が0.3mmとなるように仮固定機能部形成領域を設計した。
【0180】
<<仮固定機能部形成用インク付与工程>>
仮固定機能部形成用インクとして、調製例2-1で調製した[仮固定機能部形成用インク1]を用い、前記設計に基づき、前記BGA基板上の前記仮固定機能部形成領域にインクジェット印刷した。このとき、[仮固定機能部形成用インク1]の液滴量を制御して平均厚さを10μmとした。
【0181】
<<仮固定機能部形成工程>>
吐出した[仮固定機能部形成用インク1]の着弾滴をHonle LEDcube100(honle uv technology製)を用いてUV LED(365nm)で光硬化し、図1A及び図5に示すような仮固定機能部を形成した。
【0182】
<<固着機能部形成用インク付与工程>>
固着機能部形成用インクとして、調製例1-1で調製した[固着機能部形成用インク1]を用い、前記設計に基づき、前記BGA基板上に形成した仮固定機能部の内部の縦4.5mm、横4.5mmの正方形の前記固着機能部形成領域にインクジェット印刷した。このとき、[固着機能部形成用インク1]の液滴量を制御して平均厚さを10μmとした。
【0183】
<<仮固定工程>>
光硬化した仮固定機能部と、液状の固着機能部形成用インクとからなる接着層の第1の部材3としてのBGA基板と接する面とは反対の面の接着層上に、第2の部材4としての縦5mm、横5mm、厚さ0.5mmの正方形のガラス基板を貼り合わせた。
【0184】
<<固着工程>>
ガラス基板を貼り合わせた後、100℃で1時間加熱し、更に200℃で1時間加熱することで、固着機能部形成用インクを硬化して固着機能部を形成し、第1の部材3としてのBGA基板と、第2の部材4としてのガラス基板とを、仮固定機能部及び固着機能部からなる接着層で貼り合わせた、図1A及び図3に示す構成の貼合せサンプルAを作製した。
【0185】
<貼合せサンプルBの作製>
第1の部材3として、コア材/銅配線/ソルダーレジストから構成されるBGAパッケージ用基板(BGA基板)を準備した。第2の部材4としてのガラス基板(日本電気硝子株式会社製)を準備し、仮固定機能部1のみからなる接着層で接着した貼合せサンプルBとした。
【0186】
具体的には、前記<貼合せサンプルAの作製>において、<<固着機能部形成用インク付与工程>>及び<<固着工程>>を行わなかったこと以外は、前記<貼合せサンプルAの作製>と同様の方法で、<<設計>>、<<仮固定機能部形成用インク付与工程>>及び<<仮固定機能部形成工程>>を行い、タック力評価用の貼合せサンプルBを作製した。
【0187】
(実施例2)
実施例1の<貼合せサンプルAの作製>及び<貼合せサンプルBの作製>における<<仮固定機能部形成用インク付与工程>>において、調製例2-1で調製した[仮固定機能部形成用インク1]を、調製例2-2で調製した[仮固定機能部形成用インク2]に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、貼合せサンプルA及び貼合せサンプルBを作製した。
【0188】
(実施例3)
実施例1の<貼合せサンプルAの作製>及び<貼合せサンプルBの作製>における<<仮固定機能部形成用インク付与工程>>において、調製例2-1で調製した[仮固定機能部形成用インク1]を、SUN013A(積水化学株式会社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、貼合せサンプルA及び貼合せサンプルBを作製した。
【0189】
(比較例1)
実施例1の<貼合せサンプルAの作製>及び<貼合せサンプルBの作製>における<<仮固定機能部形成用インク付与工程>>において、調製例2-1で調製した[仮固定機能部形成用インク1]を、IJSR-4000(太陽インキ株式会社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、貼合せサンプルA及び貼合せサンプルBを作製した。
【0190】
<<評価>>
実施例1~4及び比較例1で作製した貼合せサンプルBを用いて、以下の方法で、タック力を評価した。また、実施例1~4及び比較例1で作製した貼合せサンプルAを用いて、以下の方法で、部品保持安定性及び空隙率を評価した。結果を下記表1に示した。
【0191】
-タック力-
実施例1~4及び比較例1において、タック力評価用の貼合せサンプルBを作製後、タッキング試験機(TAC-II、株式会社レスカ製)を用いて以下の測定条件で、貼合せサンプルBの第2の部材4としてのガラス基板に両面テープ付きプローブを接触後、引き剥がした際の最大荷重を読み取り、プローブの面積で除した上で、単位面積当たりの応力を算出した。試験は1種類の貼合せサンプルBにつき5回実施し、その平均値を貼合せサンプルBの第2の部材4側のプローブタック最大値Fとした。
[測定条件]
・ 温度:23℃
・ 相対湿度:45%
・ プローブ押し込み速度:30mm/分間
・ プローブ引き上げ速度:120mm/分間
・ 荷重:50gf
・ 接触時間(加圧時間):60秒間
・ プローブ直径:5mm
・ プローブの形状:円状
【0192】
-貼合せ工程後の部品保持安定性-
実施例1~4及び比較例1の<貼合せサンプルAの作製>の<<仮固定工程>>の後、かつ<<固着工程>>の前のサンプルを、23℃、相対湿度45%の雰囲気下にて、重力方向に対して垂直な方向を0°とした場合に、30°の傾斜を有する面に30分間静置した。この際、専門評価者が、第1の部材3としてのBGA基板と、第2の部材4としてのガラス基板とのずれの有無を目視にて確認し、下記評価基準に基づき評価した。
[評価基準]
〇:第1の部材3としてのBGA基板と、第2の部材4としてのガラス基板とのずれがない
×:第1の部材3としてのBGA基板と、第2の部材4としてのガラス基板とのずれがある
【0193】
-空隙率-
実施例1~4及び比較例1の貼合せサンプルAを作製後、第2の部材4としてのガラス基板側から見た上面観察像を、マイクロスコープ(VHX-7000、キーエンス株式会社製)を用いて貼合せサンプルA全体が視野に入る倍率(20倍)で撮影した。この上面観察像を、空隙に該当する白色成分と、空隙がなく貼り付いている領域に該当する黒色成分とに二値化した。更に二値化した画像を解析し、白色成分の面積を算出し、下記式(2)に基づき空隙率を算出した。この空隙率より、下記評価基準に基づき評価した。
空隙率の評価の上面観察像の一例として、実施例1の結果を図6Aに示し、比較例1の結果を図6Bに示した。
空隙率(%)=白色成分の面積/ガラス基板の全面積×100 ・・・ 式(2)
なお、式(2)において、「ガラス基板の全面積」は、前記上面観察像におけるガラス基板全体の表面積を示し、ここでは25mmである。
[評価基準]
〇:空隙率が10%未満
△:空隙率が10%以上20%未満
×:空隙率が20%以上
【0194】
【表1】
【0195】
また、図6Bより比較例1では白く見える空隙が多かったのに対し、図6Aより実施例 では空隙が少なかった。
【0196】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 第1の部材上の所定領域に第1の硬化型液体組成物を付与する工程と、
付与された前記第1の硬化型液体組成物を硬化させて仮固定機能部を形成する工程と、
前記第1の部材上の、前記仮固定機能部の内側領域に第2の硬化型液体組成物を付与する工程と、
第2の部材を、前記仮固定機能部及び付与された前記第2の硬化型液体組成物に接するように配置して仮固定する工程と、
前記第2の硬化型液体組成物を硬化させて固着機能部を形成することで前記第2の部材を固着させる工程と、
を含むことを特徴とする部品の製造方法である。
<2> 前記仮固定機能部が89gf以上のタック力を有する、前記<1>に記載の部品の製造方法である。
<3> 前記固着機能部の体積に対して、前記仮固定機能部の体積が50%以下となるように前記第1の硬化型液体組成物を付与する、前記<1>から<2>のいずれかに記載の部品の製造方法である。
<4> 前記第1の硬化型液体組成物及び前記第2の硬化型液体組成物をインクジェット法で付与する、前記<1>から<3>のいずれかに記載の部品の製造方法。
<5> 第1の部材と、
第2の部材と、
前記第1の部材と前記第2の部材とを仮固定可能な仮固定機能部と、
前記第1の部材と前記第2の部材とを固着可能な固着機能部と、
を有し、
前記仮固定機能部の内側領域に前記固着機能部を有することを特徴とする部品である。
【0197】
前記<1>から<4>のいずれかに記載の部品の製造方法、及び前記<5>に記載の部品は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0198】
1 仮固定機能部
1a、1b、1c、1d 仮固定機能部
2 固着機能部
2a 固着機能部形成用インク
3 第1の部材
4 第2の部材
、L、L、L 仮想線
【先行技術文献】
【特許文献】
【0199】
【特許文献1】特許第6391543号
【特許文献2】特開2009-295688号公報
【特許文献3】特開平9-260408号公報
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B