(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071068
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ウェルアレイフィルター、ウェルアレイデバイス、及び、ウェルアレイフィルターの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 39/16 20060101AFI20240517BHJP
G01N 15/00 20240101ALN20240517BHJP
【FI】
B01D39/16 Z
G01N15/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181804
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康夫
(72)【発明者】
【氏名】大坂 享史
(72)【発明者】
【氏名】室田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 拓治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 杏奈
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 弘国
(72)【発明者】
【氏名】浅井 隆宏
【テーマコード(参考)】
4D019
【Fターム(参考)】
4D019AA03
4D019BA13
4D019BB09
4D019BD01
4D019CB03
4D019CB06
(57)【要約】
【課題】高開口率の自立したウェルアレイフィルターを提供する。
【解決手段】実施形態のウェルアレイフィルターは、細胞、粒子及び液滴の少なくとも1つを含む対象が通過しない大きさの貫通孔をウェル底部に有するウェルアレイフィルターであって、前記対象が通過可能な大きさの複数のウェル開口を有するウェル層と、前記ウェル層を支持する支持層と、を備え、前記支持層は、前記ウェル開口に対応する前記ウェル底部を複数備え、前記支持層において互いに隣り合う複数の前記ウェル底部の間の少なくとも一部は、分割されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞、粒子及び液滴の少なくとも1つを含む対象が通過しない大きさの貫通孔をウェル底部に有するウェルアレイフィルターであって、
前記対象が通過可能な大きさの複数のウェル開口を有するウェル層と、
前記ウェル層を支持する支持層と、を備え、
前記支持層は、前記ウェル開口に対応する前記ウェル底部を複数備え、
前記支持層において互いに隣り合う複数の前記ウェル底部の間の少なくとも一部は、分割されている、
ウェルアレイフィルター。
【請求項2】
前記支持層は、前記ウェル底部毎に完全に分割されている、
請求項1に記載のウェルアレイフィルター。
【請求項3】
前記支持層は、複数の前記ウェル底部をまとめて連結したウェル底構造体を複数備え、
前記支持層は、前記ウェル底構造体毎に分割されている、
請求項1に記載のウェルアレイフィルター。
【請求項4】
前記ウェルアレイフィルターは、光硬化性樹脂で形成されている、
請求項1から3の何れか一項に記載のウェルアレイフィルター。
【請求項5】
前記ウェル開口の開口率は、40%以上であり、
前記ウェル層の深さAと前記ウェル層において隣り合うウェル間の隔壁部の最小幅Bとの比A/Bは、2以上であり、
前記支持層の膜厚は、5μm以下である、
請求項1から3の何れか一項に記載のウェルアレイフィルター。
【請求項6】
前記支持層は、前記ウェル開口に通じる前記貫通孔を有する、
請求項1から3の何れか一項に記載のウェルアレイフィルター。
【請求項7】
前記ウェル開口は、前記ウェル層の厚み方向から見て多角形である、
請求項1から3の何れか一項に記載のウェルアレイフィルター。
【請求項8】
前記ウェル層は、前記ウェル開口を区画するウェル壁を備え、
複数の前記ウェル底部は、前記ウェル層の厚み方向から見て前記ウェル壁の幅方向中心位置と重なる部分で分割されている、
請求項1から3の何れか一項に記載のウェルアレイフィルター。
【請求項9】
前記支持層の厚み方向から見て、分割された前記ウェル底部の間の最小幅は、前記支持層の膜厚よりも大きい、
請求項1から3の何れか一項に記載のウェルアレイフィルター。
【請求項10】
前記ウェルアレイフィルターは、前記対象が配置される対象配置面を有し、
前記対象配置面は、細胞非接着性材料で覆われている、
請求項1から3の何れか一項に記載のウェルアレイフィルター。
【請求項11】
前記ウェルアレイフィルターの裏面を光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で観察したときに、前記ウェル底部の外形に沿う部分に線が現れる、
請求項1から3の何れか一項に記載のウェルアレイフィルター。
【請求項12】
前記対象を格納して整列させるためのウェルアレイデバイスであって、
請求項1から3の何れか一項に記載のウェルアレイフィルターを備える、
ウェルアレイデバイス。
【請求項13】
請求項1から3の何れか一項に記載のウェルアレイフィルターの製造方法であって、
前記支持層及び前記ウェル層を構成する材料を溶解する溶媒に不溶な犠牲膜を基板の上に形成する第1工程と、
前記第1工程の後、前記犠牲膜の上に前記支持層及び前記ウェル層を形成する第2工程と、
前記第2工程の後、前記犠牲膜を溶解し、前記支持層及び前記ウェル層を含む構造体を前記基板から剥離する第3工程と、を含む、
ウェルアレイフィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェルアレイフィルター、ウェルアレイデバイス、及び、ウェルアレイフィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、薄膜と支持膜とが積層された積層膜を用いた自立したウェルアレイフィルターが開示されている。薄膜は、薄膜中を厚さ方向に貫通する1以上の孔部からなる第1孔部を備える。支持膜は、支持膜中を厚さ方向に貫通する1以上の孔部からなる第2孔部を備える。第1孔部を構成する孔部の少なくとも一部と、第2孔部を構成する孔部の少なくとも一部とは、互いに連通している。第1孔部を構成する各孔のそれぞれの開口部は全て、第2孔部を構成する各孔のそれぞれの開口部内に含まれている。例えば、薄膜上に、ネガ型の感光性組成物を塗布することで、支持膜の前駆膜を形成する。支持膜の前駆膜に対して、露光及び現像を行うことで、開口を有するホールが規則的に配置された支持膜を、薄膜上に形成する。積層膜を構成する薄膜は、連続体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ウェルアレイフィルターを構成する薄膜(支持層)が連続体であって高開口率の場合、低開口率の場合と比べて、支持層のみが露出する部分が増えて機械的強度が低下しやすい。そのため、支持層の硬化収縮で発生する応力によって、支持層に歪みが生じる可能性が高い。そのため、高開口率の自立したウェルアレイフィルターを提供することが要求されている。
【0005】
そこで本発明は、高開口率の自立したウェルアレイフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様に係るウェルアレイフィルターは、細胞、粒子及び液滴の少なくとも1つを含む対象が通過しない大きさの貫通孔をウェル底部に有するウェルアレイフィルターであって、前記対象が通過可能な大きさの複数のウェル開口を有するウェル層と、前記ウェル層を支持する支持層と、を備え、前記支持層は、前記ウェル開口に対応する前記ウェル底部を複数備え、前記支持層において互いに隣り合う複数の前記ウェル底部の間の少なくとも一部は、分割されている。
【0007】
この構成によれば、支持層に加わる応力(例えば、支持層の硬化収縮に伴う応力)を分割されたウェル底部間で吸収することができるため、支持層が歪むことを抑制することができる。したがって、高開口率の自立したウェルアレイフィルターを提供することができる。
【0008】
(2)上記(1)に記載のウェルアレイフィルターでは、前記支持層は、前記ウェル底部毎に完全に分割されていてもよい。
【0009】
この構成によれば、支持層に加わる応力を分割されたウェル底部間で全体的に吸収することができるため、支持層が歪むことをより効果的に抑制することができる。
【0010】
(3)上記(1)に記載のウェルアレイフィルターでは、前記支持層は、複数の前記ウェル底部をまとめて連結したウェル底構造体を複数備え、前記支持層は、前記ウェル底構造体毎に分割されていてもよい。
【0011】
この構成によれば、支持層に加わる応力を分割されたウェル底部間で局所的に吸収することができる。加えて、支持層がウェル底部毎に完全に分割されている場合と比較して、機械的強度が高い。例えば、基板上に作製したウェルアレイをリフトオフによって自立体とする時に、分割した複数のウェル底部の一部が自立体から欠落する等の欠陥を防ぐことができる。
【0012】
(4)上記(1)から(3)の何れか一つに記載のウェルアレイフィルターは、光硬化性樹脂で形成されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、微細加工に好適なフォトリソグラフィ(例えば、フォトレジスト塗布、露光、現像の工程)によりウェルアレイフィルターを製造することができる。
【0014】
(5)上記(1)から(4)の何れか一つに記載のウェルアレイフィルターでは、前記ウェル開口の開口率は、40%以上であり、前記ウェル層の深さAと前記ウェル層において隣り合うウェル間の隔壁部の最小幅Bとの比A/Bは、2以上であり、前記支持層の膜厚は、5μm以下であってもよい。
【0015】
この構成によれば、ウェル開口の開口率が40%未満であり且つ比A/Bが2未満である場合と比較して、ウェル開口を高密度化しやすい。加えて、支持層の膜厚が5μm超過である場合と比較して、自家蛍光を抑制しやすい。
【0016】
(6)上記(1)から(5)の何れか一つに記載のウェルアレイフィルターでは、前記支持層は、前記ウェル開口に通じる前記貫通孔を有していてもよい。
【0017】
この構成によれば、ウェル開口から入る対象を支持層上で捕捉しつつ、貫通孔を通じて対象以外のもの(例えば、対象よりも小さい大きさを持つもの等)を排出させることができる。
【0018】
(7)上記(1)から(6)の何れか一つに記載のウェルアレイフィルターでは、前記ウェル開口は、前記ウェル層の厚み方向から見て多角形であってもよい。
【0019】
この構成によれば、ウェル開口がウェル層の厚み方向から見て円形である場合と比較して、ウェル開口を高密度化しやすい。
【0020】
(8)上記(1)から(7)の何れか一つに記載のウェルアレイフィルターでは、前記ウェル層は、前記ウェル開口を区画するウェル壁を備え、複数の前記ウェル底部は、前記ウェル層の厚み方向から見て前記ウェル壁の幅方向中心位置と重なる部分で分割されていてもよい。
【0021】
この構成によれば、複数のウェル底部がウェル層の厚み方向から見てウェル壁の幅方向中心位置と重ならない部分で分割されている場合と比較して、分割したウェル底部の間隙を確実にウェル壁で埋めることができるので、貫通孔以外からの液漏れを確実に防ぐことができる。
【0022】
(9)上記(1)から(8)の何れか一つに記載のウェルアレイフィルターでは、前記支持層の厚み方向から見て、分割された前記ウェル底部の間の最小幅は、前記支持層の膜厚よりも大きくてもよい。
【0023】
この構成によれば、分割されたウェル底部間の最小幅が支持層の膜厚以下の場合と比較して、フォトリソグラフィでウェル底部間を分割しやすい。
【0024】
(10)上記(1)から(9)の何れか一つに記載のウェルアレイフィルターは、前記対象が配置される対象配置面を有し、前記対象配置面は、細胞非接着性材料で覆われていてもよい。
【0025】
この構成によれば、対象配置面に対する細胞の接着を抑制することができる。
なお、対象配置面には、ウェル底部の上面のみならず、ウェル壁の側面、上面、及び、支持層の下面、並びに、ウェルアレイフィルター全体が含まれる。例えば、ウェル壁上に細胞が残らないようにする観点では、ウェル壁の上面が細胞非接着性材料で覆われることが重要となる。
【0026】
(11)上記(1)から(10)の何れか一つに記載のウェルアレイフィルターでは、前記ウェルアレイフィルターの裏面を光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で観察したときに、前記ウェル底部の外形に沿う部分に線が現れてもよい。
【0027】
この構成によれば、線が現れた場合は本発明の構造を特定できるため、侵害認定の容易化に寄与する。
【0028】
(12)本発明の一態様に係るウェルアレイデバイスは、前記対象を格納して整列させるためのウェルアレイデバイスであって、上記(1)から(11)の何れか一つに記載のウェルアレイフィルターを備える。
【0029】
この構成によれば、上記のウェルアレイフィルターを備えるため、単位面積あたりに、より多くの対象を格納し整列させることができるウェルアレイデバイスを提供することができる。
【0030】
(13)本発明の一態様に係るウェルアレイフィルターの製造方法は、上記(1)から(11)の何れか一つに記載のウェルアレイフィルターの製造方法であって、前記支持層及び前記ウェル層を構成する材料を溶解する溶媒に不溶な犠牲膜を基板の上に形成する第1工程と、前記第1工程の後、前記犠牲膜の上に前記支持層及び前記ウェル層を形成する第2工程と、前記第2工程の後、前記犠牲膜を溶解し、前記支持層及び前記ウェル層を含む構造体を前記基板から剥離する第3工程と、を含む。
【0031】
この方法によれば、第2工程において支持層に加わる応力(例えば、支持層の硬化収縮に伴う応力)を分割されたウェル底部間で吸収することができるため、支持層が歪むことを抑制することができる。したがって、高開口率の自立したウェルアレイフィルターを提供することができる。
【発明の効果】
【0032】
本態様のウェルアレイフィルター、ウェルアレイデバイス、及び、ウェルアレイフィルターの製造方法によれば、高開口率の自立したウェルアレイフィルターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】第1実施形態のウェルアレイフィルターの上面図。
【
図2】
図1のII-II断面図とともにキャピラリーを示す図。
【
図5】第1実施形態のウェルアレイフィルターの製造方法の説明図。
図5(A)は第1工程の説明図、
図5(B)は
図5(A)に続く工程の説明図、
図5(C)は
図5(B)に続く工程の説明図、
図5(D)は
図5(C)に続く工程の説明図、
図5(E)は
図5(D)に続く工程の説明図、
図5(F)は
図5(E)に続く工程の説明図。
【
図6】第1の比較例の低開口率ウェルアレイの説明図。
【
図7】第2の比較例の高開口率ウェルアレイの説明図。
【
図8】第2の比較例において膜が歪んだ状態を示す図。
【
図9】第1実施形態のウェルアレイフィルターの作用説明図。
【
図12】第1の実施例(第1実施形態に相当)のウェハ上の支持層(ウェル層形成前)を走査型電子顕微鏡で観察した上面図。
【
図13】第1の実施例の支持層上のウェル層(ウェル層形成後)を走査型電子顕微鏡で観察した上面図。
【
図14】第2の実施例(第2実施形態に相当)のウェハ上の支持層(ウェル層形成前)を走査型電子顕微鏡で観察した上面図。
【
図15】第2の実施例の支持層上のウェル層(ウェル層形成後)を走査型電子顕微鏡で観察した上面図。
【
図16】実施例(ウェル開口幅20μm、ウェル底部本体幅25μmに相当)のウェルアレイフィルターの裏面を光学顕微鏡で観察した図。
図16(A)は5000倍での観察、
図16(B)は2000倍での観察。
【
図17】実施例(ウェル開口幅20μmに相当)のウェルアレイフィルターの裏面を走査型電子顕微鏡で観察した図。
【
図18】実施例(ウェル開口幅50μmに相当)のウェルアレイフィルターの裏面を走査型電子顕微鏡で観察した図。
【
図19】実施例のウェルアレイフィルターの断面を走査型電子顕微鏡で観察した図とともに各寸法を示す図。
【
図21】実施例1のウェルアレイフィルターを走査型電子顕微鏡で観察した図。
図21(A)は斜視図、
図21(B)は断面図、
図21(C)は上面図。
【
図22】実施例2のウェルアレイフィルターを走査型電子顕微鏡で観察した図。
図22(A)は斜視図、
図22(B)は断面図、
図22(C)は上面図。
【
図23】実施例3のウェルアレイフィルターを走査型電子顕微鏡で観察した図。
図23(A)は斜視図、
図23(B)は断面図、
図23(C)は上面図。
【
図24】実施例4のウェルアレイフィルターを走査型電子顕微鏡で観察した図。
図24(A)は斜視図、
図24(B)は断面図、
図24(C)は上面図。
【
図25】実施例5のウェルアレイフィルターを走査型電子顕微鏡で観察した図。
図25(A)は斜視図、
図25(B)は断面図、
図25(C)は上面図。
【
図26】実施例6のウェルアレイフィルターを走査型電子顕微鏡で観察した図。
図26(A)は斜視図、
図26(B)は断面図、
図26(C)は上面図。
【
図27】実施例7のウェルアレイフィルターを走査型電子顕微鏡で観察した図。
図27(A)は斜視図、
図27(B)は断面図、
図27(C)は上面図。
【
図28】実施例8のウェルアレイフィルターを走査型電子顕微鏡で観察した図。
図28(A)は斜視図、
図28(B)は断面図、
図28(C)は上面図。
【
図29】比較例のウェルアレイフィルターの上面図。
【
図32】比較例のウェルアレイフィルターの上面を光学顕微鏡で観察した図。
【
図33】比較例のウェルアレイフィルターの裏面を走査型電子顕微鏡で観察した斜視図。
【
図34】比較例のウェルアレイフィルターの裏面を走査型電子顕微鏡で観察した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明の実施形態について図面を基に説明する。図面には、必要に応じてXYZ座標系を示している。本明細書においては、必要に応じてXYZ座標系に沿って各方向を定めて説明する。本実施形態において、X方向は第1方向の一例であり、水平面に沿う方向である。Y方向は、水平面において第1方向と直交する第2方向の一例である。Z方向は、第1方向及び第2方向のそれぞれと直交する第3方向の一例であり、鉛直方向に沿う方向である。+Z方向は、鉛直方向の上側に相当する。-Z方向は、鉛直方向の下側に相当する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、特徴となる部分を拡大して示している場合がある。以下の説明で用いる図面では、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0035】
<第1実施形態>
<ウェルアレイフィルター>
図1は、第1実施形態のウェルアレイフィルター1の上面図である。
図2は、
図1のII-II断面図とともにキャピラリー2を示す図である。
図3は、第1実施形態の支持層20の上面図である。
図4は、第1実施形態のウェル層10の上面図である。
図1から
図4に示すように、ウェルアレイフィルター1は、細胞、粒子及び液滴の少なくとも1つを含む対象3が通過しない大きさの貫通孔23をウェル底部21に有する。
【0036】
ウェルアレイフィルター1は、対象3(細胞、粒子又は液滴)を格納して整列させるためのウェルアレイデバイスの構成要素である。例えば、ウェルアレイデバイスは、対象3として試料(細胞、粒子又は液滴)を個別に格納可能な試料室を有していてもよい。この場合、ウェルアレイフィルター1は、試料室に対応する格納部(ウェル開口11に対応するウェル底部21)を有するフィルム状の部材であってもよい。
【0037】
ウェルアレイフィルター1は、対象3が通過可能な大きさの複数のウェル開口11を有するウェル層10と、ウェル層10を支持する支持層20と、を備える。支持層20は、ウェル開口11に対応するウェル底部21を複数備える。支持層20において互いに隣り合う複数のウェル底部21の間の少なくとも一部は、分割されている。本実施形態に係る支持層20は、ウェル底部21毎に完全に分割されている。
【0038】
例えば、ウェルアレイフィルター1は、キャピラリー2を押し当てても破損しない程度の柔軟性を持つ。例えば、ウェルアレイフィルター1は、支持層20上のウェル層10に対して上方からキャピラリー2を押し当てた場合であっても、ウェル層10及び支持層20のそれぞれが破損しない程度の柔軟性を持つとよい。
【0039】
例えば、ウェルアレイフィルター1は、焦点距離を一定にした場合でも、膜全面でフォーカスが合うように形成されていることが望ましい。
【0040】
本実施形態に係るウェルアレイフィルター1は、光硬化性樹脂で形成されている。例えば、ウェルアレイフィルター1は、ネガ型レジストで形成されている。なお、ウェルアレイフィルター1を構成する材料は、格納する対象3に応じて任意に選択することができる。ただし、対象3が通過しない大きさの貫通孔23が規則的に整列したものである場合は、ウェルアレイフィルター1を構成する材料は、ネガ型フォトレジスト又はポリジメチルシロキサン(PDMS)であることが望ましく、ネガ型フォトレジストが最も望ましい。
【0041】
ウェルアレイフィルター1は、対象3が配置される対象配置面22を有している。対象配置面22には、ウェル底部21の上面のみならず、ウェル壁12の側面、上面、及び、支持層20の下面、並びに、ウェルアレイフィルター1全体が含まれる。例えば、ウェル壁12上に細胞が残らないようにする観点では、ウェル壁12の上面が細胞非接着性材料で覆われることが重要となる。本実施形態では、ウェルアレイフィルター1全体(対象配置面22に相当)が、細胞非接着性材料で覆われている。例えば、対象配置面22は、細胞非接着性ポリマーでコーティングされている。例えば、細胞非接着性ポリマーとしては、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)ポリマー、ポリオリゴエチレングリコールメタクリレート(PEG)、ポリ-2-メトキシエチルアクリレート(PMEA)、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられる。
【0042】
本実施形態に係るウェル開口11の開口率は、40%以上である。ウェル開口11の開口率(以下「ウェル開口率」ともいう。)は、ウェルアレイフィルター1の上面視(平面視)で(ウェル層10の厚み方向から見て)、ウェルアレイフィルター1全体の面積に対するウェル開口11全体の面積の割合に相当する。例えば、更に高開口率のウェルアレイフィルター1を実現する観点からは、ウェル開口率は、50%以上であることが望ましく、60%以上であることがより望ましい。
【0043】
本実施形態に係るウェル開口11は、平面視で六角形(多角形の一例)である。具体的には、ウェル開口11を形成するためのレチクル(フォトマスクの一例)の平面視形状は、六角形である。一方、ウェル開口11の平面視形状は、実際は角丸を有する六角形形状である。複数のウェル開口11の平面視形状は、それぞれ実質的に同じ六角形の外形を有している。
【0044】
例えば、ウェル開口11の幅(以下「ウェル開口幅」ともいう。)Cは、対象3(細胞、粒子又は液滴)が1個以上入る大きさであることが望ましい。ウェル開口幅Cは、ウェル開口11の平面視形状が六角形の場合は、ウェル開口11において互いに対向する2辺の間隔に相当する。図の例では、対象3として球状の細胞又は粒子が1個入る大きさのウェル開口幅Cを示す。
【0045】
ウェル層10は、ウェル開口11を区画するウェル壁12を備える。ウェル層10の深さAとウェル層10において隣り合うウェル間の隔壁部の最小幅Bとの比A/Bは、2以上である。ウェル層10の深さ(以下「ウェル深さ」ともいう。)Aは、支持層20の上面からウェル層10の上面までの距離に相当する。ウェル層10において隣り合うウェル間の隔壁部の最小幅(以下「ウェル壁幅」ともいう。)Bは、ウェル開口11の平面視形状が六角形の場合は、ウェル層10(ウェル開口11を区画するウェル壁12)において互いに対向する2辺の間隔に相当する。例えば、ウェル開口11を更に高密度化する観点からは、比A/Bは、2.5以上であることが望ましく、4以上であることがより望ましい。
【0046】
例えば、ウェル深さAは、細胞又は粒子のサイズよりも大きいことが望ましい。例えば、ウェル深さAは、10μm以上であることが望ましい。例えば、球状の細胞又は粒子の直径が15μm程度の場合は、より確実に格納する観点からは、ウェル深さAは、20μm以上であることが望ましく、30μm以上であることがより望ましい。例えば、観察の妨げにならないようにするとともに、自家蛍光を抑制する観点からは、ウェル深さAは、200μm以下であることが望ましい。
【0047】
例えば、ウェル壁幅Bは、ウェル壁12上に細胞又は粒子が乗らない程度の大きさであることが望ましい。例えば、ウェル壁幅Bは、細胞又は粒子のサイズよりも小さいことが望ましい。例えば、ウェル壁幅Bは、20μm以下であることが望ましい。例えば、球状の細胞又は粒子の直径が15μm程度の場合は、より確実にウェル壁12上に乗らないようにする観点、ウェル開口11を更に高密度化する観点からは、ウェル壁幅Bは、15μm以下であることが望ましく、10μm以下であることがより望ましい。本実施形態のウェル壁幅Bは、10μm程度である。
【0048】
ウェル体積Vは、ウェル開口11の平面視での面積と、ウェル深さAとを基に計算される。例えば、キャピラリーを用いてウェルの内容物を回収して後続の分析に用いる場合、ウェル体積Vは、後続の分析への液体の持ち込み量を最小限にできる体積であることが望ましい。
【0049】
例えば、支持層20の膜厚Tは、自家蛍光を可及的に下げることができる膜厚であることが望ましい。支持層20の膜厚Tは、支持層20の上面と下面との間隔(平均値)に相当する。例えば、支持層20の膜厚Tは、5μm以下である。例えば、自家蛍光を更に下げる観点からは、支持層20の膜厚Tは、3μm以下であることがより望ましい。
【0050】
支持層20は、ウェル開口11に通じる貫通孔23を有している。図の例では、支持層20は、ウェル開口11に対応するウェル底部21の中央部に平面視円形の貫通孔23を2つ有する。なお、貫通孔23の構成態様は、特に限定されず、ウェル開口11に通じていれば、どのような平面視形状であってもよいし、貫通孔23の個数も限定されない。
【0051】
例えば、貫通孔23の直径は、対象3(細胞、粒子又は液滴)が通過しない大きさであることが望ましい。例えば、貫通孔23の直径(以下「貫通孔径」ともいう。)Dは、対象3以外のもの(例えば、対象3よりも小さい大きさを持つもの等)を排出させることが可能な大きさであることが望ましい。例えば、球状の細胞又は粒子の直径が15μm程度の場合は、より確実に貫通孔23を通過しないようにする観点からは、貫通孔径Dは、10μm以下であることが望ましく、5μm以下であることがより望ましい。
【0052】
本実施形態に係る複数のウェル底部21は、平面視でウェル壁12の幅方向中心位置(ウェル壁幅Bの中央に相当)と重なる部分で分割されている。本実施形態に係るウェルアレイフィルター1では、平面視で(支持層20の厚み方向から見て)、分割されたウェル底部21の間の最小幅(以下「ウェル底部間幅」ともいう。)Sは、支持層20の膜厚Tよりも大きい。本実施形態では、ウェル底部間幅Sは、ウェル壁幅Bよりも小さい。なお、図中において符号Wは、平面視におけるウェル底部21の幅(以下「ウェル底部本体幅」ともいう。)を示す。
【0053】
<ウェルアレイフィルターの製造方法>
本実施形態に係るウェルアレイフィルター1の製造方法は、上記のウェルアレイフィルター1の製造方法であって、支持層20及びウェル層10を構成する材料を溶解する溶媒に不溶な犠牲膜31を基板30の上に形成する第1工程と、第1工程の後、犠牲膜31の上に支持層20及びウェル層10を形成する第2工程と、第2工程の後、犠牲膜31を溶解し、支持層20及びウェル層10を含む構造体を基板30から剥離する第3工程と、を含む。
【0054】
図5は、第1実施形態のウェルアレイフィルター1の製造方法の説明図である。
図5(A)は第1工程の説明図、
図5(B)は
図5(A)に続く工程の説明図、
図5(C)は
図5(B)に続く工程の説明図、
図5(D)は
図5(C)に続く工程の説明図、
図5(E)は
図5(D)に続く工程の説明図、
図5(F)は
図5(E)に続く工程の説明図である。
図5(A)を併せて参照し、第1工程では、犠牲膜31を基板30上に形成する。
【0055】
例えば、犠牲膜31の材料としては、ポリビニルアルコール樹脂、デキストリン、デキストラン、ゼラチン、にかわ、カゼイン、セラック、アラビアゴム、澱粉、蛋白質、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、スチレン系エラストマー、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸との共重合体、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びアルギン酸ナトリウム等が挙げられる。例えば、基板30の材料としては、シリコン、ガラス及びPETフィルム等が挙げられる。
【0056】
犠牲膜31の形成方法は、特に限定されないが、犠牲膜31形成用の塗布液を基板30上に塗布する方法が望ましい。例えば、犠牲膜31形成用の塗布液を基板30上に塗布する方法としては、ロールコータ、リバースコータ及びバーコータ等の接触転写型塗布装置、並びに、スピンナー(回転式塗布装置)及びカーテンフローコータ等の非接触型塗布装置を用いる方法が挙げられる。塗布後に形成された塗布膜を加熱等の方法で乾燥させることで、犠牲膜31が形成される。犠牲膜31の膜厚は、特に限定されない。例えば、犠牲膜31を速やかに溶解させる観点からは、犠牲膜31の膜厚は、10nm以上180nm以下であることが望ましい。第1工程の後、第2工程に移行する。
【0057】
図5(B)から
図5(E)を併せて参照し、第2工程では、犠牲膜31の上に支持層20及びウェル層10を形成する。
先ず、犠牲膜31の上に支持層20のレジストを塗布することで、支持層20の前駆膜32を形成する(
図5(B)参照)。例えば、支持層20の前駆膜32の膜厚は、膜厚1.0μm以上1.2μm以下の支持層20が形成されるように調整される。例えば、支持層20のレジストの材料としては、ネガ型フォトレジストが挙げられる。
【0058】
次に、支持層20の前駆膜32の表面を位置選択的に露光した後に現像する。例えば、支持層20の前駆膜32の表面を位置選択的に露光する方法としては、ネガ型フォトレジスト用のマスクを介して露光を行う方法が挙げられる。例えば、現像液は、ネガ型フォトレジストの種類に応じて選択される。このような方法により、犠牲膜31の上に、支持層20が形成される(
図5(C)参照)。
【0059】
次に、犠牲膜31の上にウェル層10のレジストを塗布することで、ウェル層10の前駆膜33を形成する(
図5(D)参照)。例えば、ウェル層10の前駆膜33の膜厚は、膜厚23μm以上25μm以下のウェル層10が形成されるように調整される。例えば、ウェル層10のレジストの材料としては、ネガ型フォトレジストが挙げられる。
【0060】
次に、ウェル層10の前駆膜33の表面を位置選択的に露光した後に現像する。例えば、ウェル層10の前駆膜33の表面を位置選択的に露光する方法としては、ネガ型フォトレジスト用のマスクを介して露光を行う方法が挙げられる。例えば、現像液は、ネガ型フォトレジストの種類に応じて選択される。このような方法により、犠牲膜31の上に、支持層20及びウェル層10が形成される(
図5(E)参照)。第2工程の後、第3工程に移行する。
【0061】
図5(F)を併せて参照し、第3工程では、犠牲膜31を溶解し、支持層20及びウェル層10を含む構造体を基板30から剥離する。犠牲膜31を溶解させる溶解液は、支持層20及びウェル層10を劣化又は溶解させない液体であれば、特に限定されない。例えば、犠牲膜31を溶解させる溶解液としては、水、酸性又は塩基性の水溶液、有機溶剤、及び、有機溶剤の水溶液等が挙げられる。
【0062】
以上の工程により、本実施形態のウェルアレイフィルター1が作製される。このようにして作製されるウェルアレイフィルター1は、支持層20において互いに隣り合う複数のウェル底部21の間の少なくとも一部が分割されている。そのため、高開口率の自立したウェルアレイフィルター1として好適に使用される。
【0063】
ところで、支持層20が連続体である場合は、以下の問題がある。
まず、第1の比較例として、支持層が連続体であって低開口率の場合を説明する。
図6は、第1の比較例の低開口率ウェルアレイの説明図である。
図6に示すように、第1の比較例の低開口率ウェルアレイは、犠牲膜31の上に沿って連続するように形成された支持層1020(以下「連続体支持層1020」ともいう。)と、連続体支持層1020の上に形成されたウェル層1010と、を備える。第1の比較例のウェル開口率は、実施形態のウェル開口率よりも低い。
【0064】
第1の比較例の場合、ウェル層1010下の連続体支持層1020の硬化収縮に伴う応力の一部は、ウェル層1010の硬化収縮の応力によってキャンセルされる。第1の比較例の場合、ウェル層1010の部分は、高膜厚のため、機械的強度が高く、収縮が起こりにくい。また、支持層1020のみが露出している部分の面積は小さく、機械的強度が強い高膜厚のウェル層1010で囲まれているため、硬化収縮によって支持層1020が歪みにくい。
【0065】
次に、第2の比較例として、支持層が連続体であって高開口率の場合を説明する。
図7は、第2の比較例の高開口率ウェルアレイの説明図である。
図8は、第2の比較例において膜が歪んだ状態を示す図である。
図7及び
図8を併せて参照し、第2の比較例の高開口率ウェルアレイは、犠牲膜31の上に形成された連続体支持層2020と、連続体支持層2020の上に形成されたウェル層2010と、を備える。第2の比較例のウェル開口率は、第1の比較例のウェル開口率よりも高い。
【0066】
第2の比較例の場合、第1の比較例よりもウェル層2010部分の占める割合が少ないため、連続体支持層2020の硬化収縮に伴う応力は、ウェル層2010の硬化収縮の応力によってキャンセルされにくい。そのため、第2の比較例の場合、連続体支持層2020の部分は機械的強度が低く、収縮が起こりやすい。例えば、連続体支持層2020の一部に応力が集中すると、
図8に示すように歪んだ状態となる可能性が高い。
【0067】
これに対し、本実施形態のウェルアレイフィルター1は、支持層20において互いに隣り合う複数のウェル底部21の間の少なくとも一部が分割されていることで、上記の問題が生じる可能性は低い。
図9は、第1実施形態のウェルアレイフィルター1の作用説明図である。
図9に示すように、本実施形態のウェルアレイフィルター1は、支持層20をタイル状に断片化した構造、又は、タイルが部分的に連結した構造を持つ。図の例では、支持層20を構成するタイル(ウェル底部21に相当)は、完全に分割されている。
【0068】
本実施形態の場合、支持層20の硬化収縮は、層全体ではなく、局所的に起こるようになる。そのため、本実施形態の場合、上記の比較例よりも、支持層20の硬化収縮に伴う応力が小さくなる。したがって、本実施形態によれば、上記の比較例よりも厚みの薄い支持層20で、高開口率の自立したウェルアレイフィルター1を作製することができる。
【0069】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態に係るウェルアレイフィルター1は、細胞、粒子及び液滴の少なくとも1つを含む対象3が通過しない大きさの貫通孔23をウェル底部21に有する。ウェルアレイフィルター1は、対象3が通過可能な大きさの複数のウェル開口11を有するウェル層10と、ウェル層10を支持する支持層20と、を備える。支持層20は、ウェル開口11に対応するウェル底部21を複数備える。支持層20において互いに隣り合う複数のウェル底部21の間の少なくとも一部は、分割されている。
この構成によれば、支持層20に加わる応力(例えば、支持層20の硬化収縮に伴う応力)を分割されたウェル底部21間で吸収することができるため、支持層20が歪むことを抑制することができる。したがって、高開口率の自立したウェルアレイフィルター1を提供することができる。
【0070】
本実施形態に係る支持層20は、ウェル底部21毎に完全に分割されている。
この構成によれば、支持層20に加わる応力を分割されたウェル底部21間で全体的に吸収することができるため、支持層20が歪むことをより効果的に抑制することができる。
【0071】
本実施形態に係るウェルアレイフィルター1は、光硬化性樹脂で形成されている。
この構成によれば、微細加工に好適なフォトリソグラフィ(例えば、フォトレジスト塗布、露光、現像の工程)によりウェルアレイフィルター1を製造することができる。
【0072】
本実施形態に係るウェル開口11の開口率は、40%以上である。ウェル層10の深さAとウェル層10において隣り合うウェル間の隔壁部の最小幅Bとの比A/Bは、2以上である。支持層20の膜厚Tは、5μm以下である。
この構成によれば、ウェル開口11の開口率が40%未満であり且つ比A/Bが2未満である場合と比較して、ウェル開口11を高密度化しやすい。加えて、支持層20の膜厚Tが5μm超過である場合と比較して、自家蛍光を抑制しやすい。
【0073】
本実施形態に係る支持層20は、ウェル開口11に通じる貫通孔23を有している。
この構成によれば、ウェル開口11から入る対象3を支持層20上で捕捉しつつ、貫通孔23を通じて対象3以外のもの(例えば、対象3よりも小さい大きさを持つもの等)を排出させることができる。
【0074】
本実施形態に係るウェル開口11は、平面視で多角形である。
この構成によれば、ウェル開口11が平面視で円形である場合と比較して、ウェル開口11を高密度化しやすい。
【0075】
本実施形態に係るウェル層10は、ウェル開口11を区画するウェル壁12を備える。複数のウェル底部21は、平面視でウェル壁12の幅方向中心位置と重なる部分で分割されている。
この構成によれば、複数のウェル底部21が平面視でウェル壁12の幅方向中心位置と重ならない部分で分割されている場合と比較して、分割したウェル底部21の間隙を確実にウェル壁12で埋めることができるので、貫通孔23以外からの液漏れを確実に防ぐことができる。
【0076】
本実施形態に係るウェルアレイフィルター1では、平面視で、分割されたウェル底部21の間の最小幅Sは、支持層20の膜厚Tよりも大きい。
この構成によれば、分割されたウェル底部21間の最小幅Sが支持層20の膜厚T以下の場合と比較して、フォトリソグラフィでウェル底部21間を分割しやすい。
【0077】
本実施形態に係るウェルアレイフィルター1は、対象3が配置される対象配置面22を有している。対象配置面22は、細胞非接着性材料で覆われている。
この構成によれば、対象配置面22に対する細胞の接着を抑制することができる。なお、対象配置面22には、ウェル底部21の上面のみならず、ウェル壁12の側面、上面、及び、支持層20の下面、並びに、ウェルアレイフィルター1全体が含まれる。本実施形態では、ウェル壁12の上面を含むウェルアレイフィルター1全体が、細胞非接着性材料で覆われている。そのため、ウェル壁12上に細胞が残らないようにする観点でも、好適である。
【0078】
本実施形態に係るウェルアレイデバイスは、対象3を格納して整列させるためのウェルアレイデバイスであって、上記のウェルアレイフィルター1を備える。
この構成によれば、上記のウェルアレイフィルター1を備えるため、単位面積あたりに、より多くの対象を格納し整列させることができるウェルアレイデバイスを提供することができる。
【0079】
本実施形態に係るウェルアレイフィルター1の製造方法は、上記のウェルアレイフィルター1の製造方法であって、支持層20及びウェル層10を構成する材料を溶解する溶媒に不溶な犠牲膜31を基板30の上に形成する第1工程と、第1工程の後、犠牲膜31の上に支持層20及びウェル層10を形成する第2工程と、第2工程の後、犠牲膜31を溶解し、支持層20及びウェル層10を含む構造体を基板30から剥離する第3工程と、を含む。
この方法によれば、第2工程において支持層20に加わる応力(例えば、支持層20の硬化収縮に伴う応力)を分割されたウェル底部21間で吸収することができるため、支持層20が歪むことを抑制することができる。したがって、高開口率の自立したウェルアレイフィルター1を提供することができる。
【0080】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態の支持層220の上面図である。
上述した第1実施形態では、支持層20がウェル底部21毎に完全に分割されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図10に示すように、支持層220は、ウェル底部221毎に完全に分割されていなくてもよい。第2実施形態において、上述した第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、詳細説明は省略する。
【0081】
本実施形態に係る支持層220は、複数のウェル底部221と、互いに隣り合う2つのウェル底部221同士を連結する連結部225と、を備える。本実施形態では、支持層220は、ウェル底部221毎に部分的に分割されている。なお、図中において符号Jは、平面視における連結部225の幅(以下「連結部幅」ともいう。)を示す。
【0082】
図の例では、ウェル底部221の平面視形状は、六角形(多角形の一例)である。連結部225は、平面視で互いに隣り合う2つの六角形の間において、互いに対向する2つの辺の中央部同士を連結するように設けられている。なお、連結部225の設置場所は上記に限らない。例えば、連結部225は、平面視で互いに隣り合う2つの六角形の角部同士を連結するように設けられていてもよい。
【0083】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態に係る支持層220は、ウェル底部221毎に部分的に分割されている。
この構成によれば、支持層220に加わる応力を分割されたウェル底部221間で局所的に吸収することができる。加えて、支持層20がウェル底部21毎に完全に分割されている場合と比較して、機械的強度が高い。例えば、リソグラフィーのリフトオフ時に、ウェル底部221が欠落する等の欠陥が発生することを防ぐことができる。
【0084】
<第3実施形態>
図11は、第3実施形態のウェル底構造体327の上面図である。
上述した第1実施形態では、支持層20がウェル底部21毎に完全に分割されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図11に示すように、支持層320は、複数のウェル底部321をまとめて連結したウェル底構造体327を複数備えていてもよい。
図11においては、貫通孔23等の図示を省略している。第3実施形態において、上述した第1実施形態と同様の構成の詳細説明は省略する。
【0085】
本実施形態に係る支持層320は、ウェル底構造体327毎に分割されている。図の例では、ウェル底構造体327は、3つのウェル底部321をまとめて連結して構成されている。なお、ウェル底構造体327の構成態様は、上記に限らない。例えば、ウェル底構造体327は、2つ又は4つ以上のウェル底部321をまとめて連結して構成されていてもよい。
【0086】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態に係る支持層320は、複数の前記ウェル底部321をまとめて連結したウェル底構造体327を複数備える。支持層320は、ウェル底構造体327毎に分割されている。
この構成によれば、支持層320に加わる応力を分割されたウェル底部321間で局所的に吸収することができる。加えて、支持層20がウェル底部21毎に完全に分割されている場合と比較して、機械的強度が高い。例えば、リソグラフィーのリフトオフ時に、ウェル底部321が欠落する等の欠陥が発生することを防ぐことができる。
【0087】
<変形例>
上述した実施形態では、ウェルアレイフィルターは、光硬化性樹脂で形成されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ウェルアレイフィルターは、熱硬化性樹脂で形成されていてもよい。例えば、ウェルアレイフィルターの形成材料は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0088】
上述した実施形態では、ウェル開口の開口率は、40%以上であり、ウェル層の深さAとウェル層において隣り合うウェル間の隔壁部の最小幅Bとの比A/Bは、2以上であり、支持層の膜厚は、5μm以下である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ウェル開口の開口率は、40%未満であってもよい。例えば、比A/Bは、2未満であってもよい。例えば、支持層の膜厚は、5μm超過であってもよい。例えば、ウェル開口の開口率、比A/B、及び、支持層の膜厚は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0089】
上述した実施形態では、支持層は、ウェル開口に通じる貫通孔を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、支持層は、ウェル開口に通じる貫通孔を有しなくてもよい。例えば、支持層の構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0090】
上述した実施形態では、ウェル開口は、ウェル層の厚み方向から見て多角形である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ウェル開口は、ウェル層の厚み方向から見て円形であってもよい。例えば、ウェル開口をウェル層の厚み方向から見た形状(平面視形状に相当)は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0091】
上述した実施形態では、ウェル層は、ウェル開口を区画するウェル壁を備え、複数のウェル底部は、ウェル層の厚み方向から見てウェル壁の幅方向中心位置と重なる部分で分割されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、複数のウェル底部は、ウェル層の厚み方向から見てウェル壁の幅方向中心位置と重ならない部分で分割されていてもよい。例えば、ウェル底部の分割態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0092】
上述した実施形態では、支持層の厚み方向から見て、分割されたウェル底部の間の最小幅は、支持層の膜厚よりも大きい例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、分割されたウェル底部間の最小幅は、支持層の膜厚以下であってもよい。例えば、支持層の厚み方向から見て、分割されたウェル底部の間の最小幅の大きさは、設計仕様に応じて変更することができる。
【0093】
上述した実施形態では、ウェルアレイフィルターは、対象が配置される対象配置面を有し、対象配置面は、細胞非接着性材料で覆われている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、対象配置面は、細胞非接着性材料で覆われていなくてもよい。例えば、対象配置面の少なくとも一部は、外部に露出していてもよい。例えば、対象配置面は、細胞接着性材料で覆われていてもよい。例えば、対象配置面の被覆態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0094】
本実施形態のウェルアレイフィルターにおいて格納・整列される対象(細胞、粒子又は液滴)は、特に限定されない。例えば、対象として細胞を用いる場合は、単一の細胞のみからなっていてもよいし、複数の細胞の集合体であってもよい。例えば、細胞には、細胞塊(細胞集団)が含まれる。
【0095】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは可能である。また、上述した各変形例を組み合わせても構わない。
【実施例0096】
次に、本発明の上記実施形態に係るウェルアレイフィルターについて、実施例を示して詳細に説明する。なお、下記の実施例は、本発明が適用された具体的な一例であり、本発明を限定するものではない。
【0097】
<第1の実施例(第1実施形態に相当)の観察結果>
図12は、第1の実施例(第1実施形態に相当)のウェハ上の支持層(ウェル層形成前)を走査型電子顕微鏡で観察した上面図である。
図13は、第1の実施例の支持層上のウェル層(ウェル層形成後)を走査型電子顕微鏡で観察した上面図である。
図12及び
図13を併せて参照し、第1の実施例では、ウェル底部間幅(2.6μm)がウェル壁幅(9.3μm)よりも小さい条件で、ウェルアレイフィルターを作製した。第1の実施例では、ウェル底部本体幅を27.8μm、ウェル開口幅を21.4μmとした。
【0098】
<第2の実施例(第2実施形態に相当)の観察結果>
図14は、第2の実施例(第2実施形態に相当)のウェハ上の支持層(ウェル層形成前)を走査型電子顕微鏡で観察した上面図である。
図15は、第2の実施例の支持層上のウェル層(ウェル層形成後)を走査型電子顕微鏡で観察した上面図である。
図14及び
図15を併せて参照し、第2の実施例では、ウェル底部間幅(4.6μm)がウェル壁幅(8.8μm)よりも小さい条件で、ウェルアレイフィルターを作製した。第2の実施例では、ウェル底部本体幅を55.6μm、ウェル開口幅を52.5μmとした。
【0099】
<ウェルアレイフィルターの裏面の観察結果>
図16は、実施例(ウェル開口幅20μm、ウェル底部本体幅25μmに相当)のウェルアレイフィルターの裏面を光学顕微鏡(具体的には、ハイロックス社製のデジタルマイクロスコープHRX-01;同軸落射照明で撮影)で観察した図である。
図16(A)は5000倍での観察、
図16(B)は2000倍での観察である。
図17は、実施例(ウェル開口幅20μmに相当)のウェルアレイフィルターの裏面を走査型電子顕微鏡(具体的には、日立ハイテクノロジーズ社製のS-4700型電界放出型走査電子顕微鏡;加速電圧10kV;1500倍での観察)で観察した図である。
図18は、実施例(ウェル開口幅50μmに相当)のウェルアレイフィルターの裏面を走査型電子顕微鏡(具体的には、日立ハイテクノロジーズ社製のSU-5000型電界放出型走査電子顕微鏡;加速電圧5kV;1000倍での観察)で観察した図である。
図16から
図18を併せて参照し、実施例に係るウェルアレイフィルターでは、ウェルアレイフィルターの裏面(下面に相当)を光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で観察したときに、ウェル底部の外形に沿う部分に線が現れることが確認された。
【0100】
以上の説明したように、本実施例に係るウェルアレイフィルターでは、ウェルアレイフィルターの裏面を光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で観察したときに、ウェル底部の外形に沿う部分に線が現れる。
この構成によれば、線が現れた場合は本発明の構造を特定できるため、侵害認定の容易化に寄与する。
【0101】
<高開口率の自立したウェルアレイフィルターの作製例>
図19は、実施例のウェルアレイフィルターの断面を走査型電子顕微鏡で観察した図とともに各寸法を示す図である。表1は、実施例のウェルアレイフィルターの作製条件とともに各寸法を示す表である。
【0102】
【0103】
図19及び表1を併せて参照し、ウェル開口幅及びウェル壁幅は、実施例のウェルアレイフィルターの断面を走査型電子顕微鏡で観察した像において、ウェル深さ50%の位置で計測した値とした。
【0104】
実施例1から実施例5は、レチクル1(フォトマスクの一例)を用い、ウェル層形成時の露光量を変えて、パターンを作製した。レチクル1は、平面視六角形のウェル開口を持つウェルアレイフィルター作製用のマスクであって、ウェル底部本体幅27.5μm、ウェル底部間幅2.5μm、ウェル開口幅20μm、ウェル壁幅10μmとなるように設計した。
【0105】
実施例6及び実施例7は、レチクル2(フォトマスクの一例)を用い、ウェル層形成時の露光量を変えて、パターンを作製した。レチクル2は、平面視六角形のウェル開口を持つウェルアレイフィルター作製用のマスクであって、ウェル底部本体幅56μm、ウェル底部間幅4μm、ウェル開口幅52μm、ウェル壁幅8μmとなるように設計した。
【0106】
実施例8は、レチクル3(フォトマスクの一例)を用い、ウェル層形成時の露光量を変えて、パターンを作製した。レチクル3は、平面視六角形のウェル開口を持つウェルアレイフィルター作製用のマスクであって、ウェル底部本体幅56μm、ウェル底部間幅4μm、連結部幅10μm、ウェル開口幅52μm、ウェル壁幅8μmとなるように設計した。
【0107】
図20は、ウェル上面図とともに各寸法を示す図である。表2は、先行特許(従来技術)と実施例とを比較した表である。
【0108】
【0109】
図20及び表2を併せて参照し、ウェル開口幅は、先行特許において平面視円形のウェル開口を有する場合は、開口径(ウェル開口の直径)とした。ウェル開口間最小幅は、先行特許において平面視円形のウェル開口を有する場合は、平面視で隣り合う2つのウェル開口を区画する壁部の最小幅とした。中心間距離は、先行特許において平面視円形のウェル開口を有する場合は、平面視で隣り合う2つのウェル開口の中心間の距離とした。
【0110】
実施例においては、パターン化したウェハを液体窒素で冷却した後に切断し、その後、p-メンタンに浸漬して得たウェルアレイフィルターを、走査型電子顕微鏡で観察した。上記のように得たウェルアレイフィルターの平面視サイズは、21mm×21mmとした。
【0111】
図21は、実施例1のウェルアレイフィルターを走査型電子顕微鏡で観察した図である。
図21(A)は斜視図、
図21(B)は断面図、
図21(C)は上面図である。
図22は、実施例2のウェルアレイフィルターを走査型電子顕微鏡で観察した図である。
図22(A)は斜視図、
図22(B)は断面図、
図22(C)は上面図である。
図23は、実施例3のウェルアレイフィルターを走査型電子顕微鏡で観察した図である。
図23(A)は斜視図、
図23(B)は断面図、
図23(C)は上面図である。
図24は、実施例4のウェルアレイフィルターを走査型電子顕微鏡で観察した図である。
図24(A)は斜視図、
図24(B)は断面図、
図24(C)は上面図である。
図25は、実施例5のウェルアレイフィルターを走査型電子顕微鏡で観察した図である。
図25(A)は斜視図、
図25(B)は断面図、
図25(C)は上面図である。
図26は、実施例6のウェルアレイフィルターを走査型電子顕微鏡で観察した図である。
図26(A)は斜視図、
図26(B)は断面図、
図26(C)は上面図である。
図27は、実施例7のウェルアレイフィルターを走査型電子顕微鏡で観察した図である。
図27(A)は斜視図、
図27(B)は断面図、
図27(C)は上面図である。
図28は、実施例8のウェルアレイフィルターを走査型電子顕微鏡で観察した図。
図28(A)は斜視図、
図28(B)は断面図、
図28(C)は上面図である。
【0112】
図21から
図28を併せて参照し、実施例1から実施例8のいずれの条件であっても、自立したウェルアレイフィルターが得られることが確認された。
【0113】
<連続体支持層を持つ比較例のウェルアレイフィルターの作製例>
図29は、比較例のウェルアレイフィルターの上面図である。
図30は、比較例の支持層の上面図である。
図31は、比較例のウェル層の上面図である。
図29から
図31を併せて参照し、比較例のウェルアレイフィルターは、連続体支持層の上にウェル層を重ね合わせることにより作製した。比較例では、連続体支持層の膜厚1μm、ウェル層の膜厚50μm、ウェル底部本体幅46μm、ウェル底部間幅4μmとなるようにウェルアレイフィルターを作製した。
【0114】
図32は、比較例のウェルアレイフィルターの上面を光学顕微鏡で観察した図である。
図33は、比較例のウェルアレイフィルターの裏面を走査型電子顕微鏡で観察した斜視図である。
図34は、比較例のウェルアレイフィルターの裏面を走査型電子顕微鏡で観察した平面図である。
図32から
図34を併せて参照し、比較例では、ウェルアレイフィルターの上面又は裏面を、光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で観察したときに、皺(皺状の欠陥)が現れることが確認された。この原因は、ウェル層の硬化収縮時に連続体支持層に働く応力、及び、連続体支持層そのものの硬化収縮による応力によって、ウェル層及び連続体支持層が犠牲膜から機械的に剥離し、上側に持ち上がったことによるものと推定される。
【0115】
以上説明したように、本実施例によれば、先行特許に比べてウェル開口率が高く、かつ、ウェル深さが深い構造体を作製できることが確認された。したがって、本実施例によれば、ウェル開口に入らず壁の上に残る細胞又は粒子を最小限にできるとともに、細胞又は粒子を高密度に整列できることが分かった。
本発明のウェルアレイフィルター、ウェルアレイデバイス、及び、ウェルアレイフィルターの製造方法を利用すれば、高開口率の自立したウェルアレイフィルターを提供することが可能となる。
1…ウェルアレイフィルター、3…対象、10…ウェル層、11…ウェル開口、12…ウェル壁、20…支持層、21…ウェル底部、22…対象配置面、23…貫通孔、30…基板、31…犠牲膜、327…ウェル底構造体、A…ウェル深さ(ウェル層の深さ)、B…ウェル壁幅(ウェル層において隣り合うウェル間の隔壁部の最小幅)、S…ウェル底部間幅(分割されたウェル底部の間の最小幅)、T…支持層の膜厚