(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071160
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/88 20060101AFI20240517BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240517BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240517BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240517BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K8/88
A61K8/19
A61Q1/00
A61Q19/00
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181964
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】岡 康孝
(72)【発明者】
【氏名】笹本 茜
(72)【発明者】
【氏名】近藤 明宏
(72)【発明者】
【氏名】武田 博之
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB031
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB232
4C083AB242
4C083AC012
4C083AC112
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC441
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD161
4C083AD162
4C083BB01
4C083BB23
4C083BB25
4C083CC02
4C083CC19
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE17
4C083FF01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】金属、金属酸化物または水酸化物からなる無機粉体を含んでも、優れた粘度安定性とさっぱりとした触感とを同時に備える化粧料組成物を提供する。
【解決手段】本発明の化粧料組成物は、成分(a)と成分(b)とを含有する。前記成分(a)が、下記一般式(1)で表される非イオン性ポリアミノ酸誘導体であり、前記成分(b)が、金属、金属酸化物または水酸化物からなる無機粉体である。
(式中、R
1は炭素原子数3~18の炭化水素基を示し、R
2は炭素原子数2~5のヒドロキシアルキル基、炭素原子数3~6のメトキシアルキル基、及び炭素原子数4~7のエトキシアルキル基からなる群から選択される基を示す。n/m=40/60~60/40。(n+m)/l=80/20~100/0。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(a)と成分(b)とを含有することを特徴とする化粧料組成物であって、
前記成分(a)が、下記一般式(1)で表される非イオン性ポリアミノ酸誘導体であり、
前記成分(b)が、金属、金属酸化物または水酸化物からなる無機粉体である、化粧料組成物。
【化1】
(式中、R
1は炭素原子数3~18の炭化水素基を示し、R
2は炭素原子数2~5のヒドロキシアルキル基、炭素原子数3~6のメトキシアルキル基、及び炭素原子数4~7のエトキシアルキル基からなる群から選択される基を示す。n、m、lは、それぞれ、分子中のα型又はβ型ポリアスパラギン酸単量体単位A-U、B-U、C-Uのモル数を示す。単量体単位A-UとB-Uのモル比、n/mが40/60~60/40であり、かつ、単量体単位A-U及び-Uの総モル数と単量体単位C-Uのモル数との比、(n+m)/lが、80/20~100/0である。前記非イオン性ポリアミノ酸誘導体において、単量体単位A-U、単量体単位B-U、及び単量体単位C-Uの結合形態は、ランダム状、ブロック状、テーパード状のいずれであってもよい。)
【請求項2】
前記成分(b)が親油性表面処理された金属酸化物及び親水性表面処理された金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
更に成分(c)として、界面活性剤を含むである、請求項1又は2に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
前記成分(c)がポリエーテルシリコーン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル群から選択される少なくとも1種を含む、請求項3に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
水をさらに含む請求項1又は2に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
前記化粧料組成物の合計100質量%に対して、前記成分(A)の含有量が0.05~10質量%である請求項1又は2に記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料用増粘剤にはカルボマー及びキサンタンガムが市場で最も多く使用されている。カルボマーについて、他の増粘剤にはない特徴として非常に高い増粘性と肌に塗る際のさっぱりとした触感が挙げられる。カルボマーはポリアクリル酸系ポリマーである。金属イオンの静電反発による増粘効果であるため、金属イオンを存在した系では、粘度安定性に問題があった。キサンタンガムについて、天然ガムからなり、親水性の天然のガム質による増粘効果であるため、金属イオンを存在しても、粘度安定性に問題がない。しかし、キサンタンガムは、肌に塗る際のさっぱりとした触感がなく、べたつきの触感に問題があった。
一方、塩の存在下でも増粘作用や起泡増泡作用を低下させることがない非イオン性のポリアミノ酸誘導体が報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、増粘剤以外の化粧料有効成分、特に金属、金属酸化物または水酸化物からなる無機粉体を含む化粧料組成物について検討がなく、また、肌に塗る際の触感について評価がなかった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明のポリアスパラギン酸誘導体は側鎖の長鎖アルキル基による疎水―疎水相互作用によって増粘性発現する為、特定な無機粉体を含んでも、優れた粘度安定性が観測されながら、肌に塗る際のさっぱりとした触感も観測された。本発明は、金属、金属酸化物または水酸化物からなる無機粉体を含んでも、優れた粘度安定性とさっぱりとした触感とを同時に備える化粧料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の内容は、以下の実施態様[1]~[6]を含む。
[1] 成分(a)と成分(b)とを含有することを特徴とする化粧料組成物であって、
前記成分(a)が、下記一般式(1)で表される非イオン性ポリアミノ酸誘導体であり、
前記成分(b)が、金属、金属酸化物または水酸化物からなる無機粉体である、化粧料組成物。
【化1】
(式中、R
1は炭素原子数3~18の炭化水素基を示し、R
2は炭素原子数2~5のヒドロキシアルキル基、炭素原子数3~6のメトキシアルキル基、及び炭素原子数4~7のエトキシアルキル基からなる群から選択される基を示す。n、m、lは、それぞれ、分子中のα型又はβ型ポリアスパラギン酸単量体単位A-U、B-U、C-Uのモル数を示す。単量体単位A-UとB-Uのモル比、n/mが40/60~60/40であり、かつ、単量体単位A-U及び-Uの総モル数と単量体単位C-Uのモル数との比、(n+m)/lが、80/20~100/0である。前記非イオン性ポリアミノ酸誘導体において、単量体単位A-U、単量体単位B-U、及び単量体単位C-Uの結合形態は、ランダム状、ブロック状、テーパード状のいずれであってもよい。)
[2] 前記成分(b)が親油性表面処理された金属酸化物及び親水性表面処理された金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]に記載の化粧料組成物。
[3] 更に成分(c)として、界面活性剤を含むである、[1]又は[2]に記載の化粧料組成物。
[4] 前記成分(c)がポリエーテルシリコーン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル群から選択される少なくとも1種を含む、[3]に記載の化粧料組成物。
[5] 水をさらに含む[1]~[4]の何れかに記載の化粧料組成物。
[6] 前記化粧料組成物の合計100質量%に対して、前記成分(A)の含有量が0.05~10質量%である[1]~[5]の何れかに記載の化粧料組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金属、金属酸化物または水酸化物からなる無機粉体を含んでも、優れた粘度安定性とさっぱりとした触感とを同時に備える化粧料組成物を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の非イオン性ポリアミノ酸誘導体の増粘発現機構を説明するために用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態のみに限定されるものではない。
【0010】
「~」は「~」という記載の前の値以上、「~」という記載の後の値以下を意味する。
【0011】
(化粧料組成物)
本発明の一実施形態の化粧料組成物(本実施形態の化粧料組成物)は、成分(a)と成分(b)とを含有する。前記成分(a)が、下記一般式(1)で表される非イオン性ポリアミノ酸誘導体である。前記成分(b)が、金属、金属酸化物または水酸化物からなる無機粉体である。
【0012】
【0013】
(式中、R1は炭素原子数3~18の炭化水素基を示し、R2は炭素原子数2~5のヒドロキシアルキル基、炭素原子数3~6のメトキシアルキル基、及び炭素原子数4~7のエトキシアルキル基からなる群から選択される基を示す。n、m、lは、それぞれ、分子中のα型又はβ型ポリアスパラギン酸単量体単位A-U、B-U、C-Uのモル数を示す。単量体単位A-UとB-Uのモル比、n/mが40/60~60/40であり、かつ、単量体単位A-U及び-Uの総モル数と単量体単位C-Uのモル数との比、(n+m)/lが、80/20~100/0である。前記非イオン性ポリアミノ酸誘導体において、単量体単位A-U、単量体単位B-U、及び単量体単位C-Uの結合形態は、ランダム状、ブロック状、テーパード状のいずれであってもよい。)
【0014】
<成分(a)>
本実施形態に係る上記一般式(1)で示す非イオン性ポリアミノ酸誘導体は、モノアミンを用いて、ポリコハク酸イミド(PSI)を開環して得られるモノアミン変性ポリアスパラギン酸誘導体である。
本実施形態に係る上記一般式(1)で示す非イオン性ポリアミノ酸誘導体は、分子中のα型又はβ型ポリアスパラギン酸単量体単位A-U、B-U、C-Uを有し、かつ、単量体単位A-U、B-U、C-Uのモル比(A-U:B-U:C-U)がn:m:lである。n/mが45/55~60/40であることが好ましく、50/50~55/45であることがより好ましい。n/mがこの範囲である場合、水への相溶と増粘性に優れる。(n+m)/lが、85/15~100/0であることが好ましく、95/5~100/0であることがより好ましい。1=0であてもよい。単量体単位A-U、単量体単位B-U、及び単量体単位C-Uの結合形態は、非イオン性ポリアミノ酸誘導体の水溶性と増粘効果を両立する観点から、直鎖状であることが好ましい。
【0015】
本実施形態の非イオン性ポリアミノ酸誘導体において、単量体単位A-U、B-U、C-Uは、それぞれ、疎水性アミンA由来の構造単位、親水性アミンB由来の構造単位,コハク酸イミド由来の構造単位である(後述の合成方法で詳細に説明する)。各構造単位のモル数は、合成時に用いた各原料の配合量で調整することができる。例えば、後述の合成方法において、ポリコハク酸イミド(PSI)とモノアミンとの配合比、各種のモノアミンの配合比などを用いて調製することができる。得られた非イオン性ポリアミノ酸誘導体における各単量体単位A-U、B-U、C-Uの実際の組成は、1HNMRから算出することができる。
【0016】
〔ポリコハク酸イミド(PSI)〕
本実施形態に係るポリコハク酸イミド(PSI)は、以下式(2)に表すポリマーである。
【0017】
【0018】
ポリコハク酸イミド(PSI)の製造方法については特に限定されないが、例えば、アスパラギン酸をリン酸の存在下で真空中170~190℃で加熱、脱水縮合することにより製造される。更に高分子量のポリコハク酸イミド(PSI)を得る場合には、上記のようにして得られたポリコハク酸イミド(PSI)をジシクロヘキシルカルボジイミド等の縮合剤で処理すればよい。ポリコハク酸イミド(PSI)の分子量は、特に限定されない。例えば、重量平均分子量で2万以上であることが好ましく、5万以上であることがより好ましく、7万以上であることがさらに好ましい。ポリコハク酸イミド(PSI)の分子量は、50万以下であることが好ましく、20万以下であることがより好ましい。この場合の重量平均分子量は、GPC法によるポリスチレンを標準物質とした換算値である。
【0019】
〔モノアミン〕
本実施形態に係るモノアミンは、下記一般式(3)と一般式(4)に表すモノアミンである。
R1-HN3 (3)
(式中、R1は炭素原子数3~18の炭化水素基を示す。)
R2-NH3 (4)
(式中、R2は炭素原子数2~5のヒドロキシアルキル基、炭素原子数3~6のメトキシアルキルメチル基、及び炭素原子数4~7のエトキシアルキルメチル基からなる群から選択される基を示す。)
【0020】
上記一般式(3)に表すモノアミンにおいて、R1は炭素原子数3~18の炭化水素基を示すことが好ましく、炭素原子数6~14の炭化水素基を示すことがより好ましく、炭素原子数10~12の炭化水素基を示すことが更に好ましい。R1おける炭化水素基はアルキル基であることが好ましい。前記アルキル基が分岐構造を含まない直鎖状であることが好ましい。
上記一般式(3)に表すモノアミンにおけるR1としては、例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基等の分岐状アルキル基;シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロブチルエチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロブチルプロピル基、シクロペンチルプロピル基、シクロヘキシルプロピル基、シクロブチルブチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルブチル基等のシクロアルキルアルキル基;プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基が挙げられる。
上記一般式(3)に表すモノアミンとしては、n-ドデシルアミンが挙げられる。
【0021】
上記一般式(4)に表すモノアミンにおいて、R2は炭素原子数2~5のヒドロキシアルキル基、炭素原子数3~6のメトキシアルキルメチル基、及び炭素原子数4~7のエトキシアルキルメチル基からなる群から選択される基を示すことが好ましく、炭素原子数2~4のヒドロキシアルキル基、炭素原子数4~6のメトキシアルキルメチル基、及び炭素原子数4~5のエトキシアルキルメチル基からなる群から選択される基を示すことがより好ましい。
【0022】
上記一般式(4)に表すモノアミンにおけるR1としては、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基などのヒドロキシアルキル基;ヒドロキシエトキシエチル基などのヒドロキシアルコキシ基;メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、メトキシペンチル基、エトキシメチル基などのメトキシアルキル基;エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシペンチル基などのエトキシアルキル基などが挙げられる。
上記一般式(4)に表すモノアミンとしては、ヒドロキシプロピルアミン、イソプロパノールアミン、エタノールアミンが挙げられる。
【0023】
〔非イオン性ポリアミノ酸誘導体の製造方法〕
本実施形態に係る変非イオン性ポリアミノ酸誘導体の製造方法としては、モノアミンとの反応によるポリコハク酸イミド(PSI)の開環反応方法が挙げられる。ポリコハク酸イミド(PSI)と前記モノアミンとを反応させることにより、ポリコハク酸イミド(PSI)のイミド環は開環する。前記モノアミンの全使用量を、ポリコハク酸イミド(PSI)の単量体単位の当量に対して、1倍当量未満使用して開環反応を行なう場合は、一般的には、未反応イミド環が残存する。
本実施形態に係る変非イオン性ポリアミノ酸誘導体の製造方法において、前記モノアミンが、上記一般式(3)に表すモノアミン(疎水性アミンAともいうことがある)と一般式(4)に表すモノアミン(親水性アミンBともいうことがある)とを含み、かつ、疎水性アミンAと親水性アミンBのモル比が45/55~60/40であることが好ましい。前記モノアミンが、疎水性アミンAと親水性アミンBを含み、かつ、疎水性アミンAと親水性アミンBのモル比が50/55~55/45であることがより好ましい。
【0024】
本実施形態に係る変非イオン性ポリアミノ酸誘導体の製造方法において、前記モノアミンが、疎水性アミンAと親水性アミンBを含む以外に、疎水性アミンAと親水性アミンB以外のモノアミンなどを含んでもよい。その場合、前記モノアミンにおける疎水性アミンAと親水性アミンBの合計モル数が、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。また、前記モノアミンが、疎水性アミンAと親水性アミンBであってもよい。
【0025】
上記未反応イミド環が残存したままでも良いし、他のモノアミンを用いてさらに開環反応を行なっても良い。また、所望により、上記未反応イミド環を、エタノールアミン、システアミン、ジブチルアミン等の置換アミンで開環しても良い。
【0026】
「有機溶剤」
本実施形態に係る非イオン性ポリアミノ酸誘導体の製造方法において、有機溶剤は、ポリコハク酸イミド(PSI)及びモノアミンを実質的に溶解するものであれば、及び又は、反応の進行を実質的に阻害しないものであれば、特に制限されない。
【0027】
上記有機溶剤の具体例としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の非プロトン性極性有機溶剤が挙げられ、これらは単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0028】
「モノアミンの使用量」
本実施形態に係るモノアミンの全使用量は、有機溶剤に実質的に溶解すれば、及び又は、反応の進行を実質的に阻害しなければ、特に制限されない。前記使用量は、一般的には、ポリコハク酸イミド(PSI)の単量体単位の当量に対して、0.1~10倍当量が用いられ、0.1~1.0倍当量が好ましい。
【0029】
「塩基性触媒」
本実施形態に係る非イオン性ポリアミノ酸誘導体の製造方法において、任意に用いる塩基性触媒は、反応速度を実質的に促進するものであれば、特に制限されない。上記塩基性触媒の具体例としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン(DABCO)等の脂肪族3級アミン、N-メチルモルホリン等の脂環式3級アミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン等の芳香族3級アミン及びテトラメチルグアニジン等が挙げられ、これらは単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0030】
「塩基性触媒の使用量」
本実施形態に係る非イオン性ポリアミノ酸誘導体の製造方法において、塩基性触媒の使用量は、反応速度を実質的に促進すれば、特に制限されない。上記した塩基性触媒の使用量は、一般的には、モノアミンの当量に対して、0~2倍当量を用いる。アミノ酸エステルが鉱酸塩の場合には、さらに、中和当量分の塩基を加える。
【0031】
「反応温度」
本実施形態に係る非イオン性ポリアミノ酸誘導体の製造方法において、反応温度は、反応の進行を実質的に維持できれば、特に制限されない。上記反応温度は、一般的には、5~150℃の温度範囲から選択され、通常、室温が選択される。上記反応温度は、5~150℃の温度範囲から、使用するモノアミンに最適な温度を選択することもできる。
【0032】
「反応系の濃度」
本実施形態に係る非イオン性ポリアミノ酸誘導体の製造方法において採用する反応系の濃度は、反応の進行を実質的に維持できれば、特に制限されない。上記反応系の濃度は、ポリコハク酸イミド(PSI)の濃度を基準として選択され、一般的には、ポリコハク酸イミド(PSI)濃度は1~50重量%の濃度範囲から選択される。上記反応系の濃度は、ポリコハク酸イミド(PSI)濃度は1~50重量%の範囲から、使用するモノアミンに最適な濃度を選択することもできる。
【0033】
<非イオン性ポリアミノ酸誘導体の単離方法>
本実施形態に係る非イオン性ポリアミノ酸誘導体の製造方法において採用される反応終了後に反応液から生成重合体を単離する方法は、実質的に、反応生成物を所望の純度で単離できるものであれば、特に制限されない。上記単離方法は、公知・公用のいずれの方法によってもよい。一般的には、濃縮、再結晶、又は再沈澱等の公知・公用の単離操作が採用される。
【0034】
上記単離方法の具体例としては、例えば、反応終了後に、適当な温度において、反応生成物が溶解している反応液に、過剰の貧溶媒(例えば、酢酸エチル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等)を加え、析出した反応生成物の結晶を、デカンテーション、濾過又は吸引濾過等により単離し、該結晶を溶解しない貧溶媒で充分に洗浄後、乾燥する方法等が挙げられる。他の具体例としては、例えば、反応終了後に、適当な温度において、反応生成物が溶解している反応液を、前記と同じ過剰の貧溶媒に加え、析出した反応生成物の結晶を、前記と同様にして単離し、洗浄し、乾燥する方法等が挙げられる。
【0035】
本実施形態に係る非イオン性ポリアミノ酸誘導体の製造方法において、得らえた非イオン性ポリアミノ酸誘導体を単離せず、反応後の混合液をそのまま用いてもよい。また、必要に応じて、溶媒以外の一部未反応原料のみを除去し、後述の組成物に参加してもよい。また、混合液の溶媒を増減して、濃度を調整してもよい。
【0036】
<非イオン性ポリアミノ酸誘導体の増粘発現機構>
本実施態様の非イオン性ポリアミノ酸誘導体の増粘効果は、
図1に示す増粘発現機構で説明することができる。
非イオン性ポリアミノ酸誘導体において、ポリアスパラギン酸鎖上の側鎖に疎水性のアルキル基が存在する。この側鎖の疎水基同士の分子会合により、増粘効果が発現した。例えば、非イオン性ポリアミノ酸誘導体の水溶液を攪拌すると、シェアを強め、この分子会合が解散し、低粘度になり、静置すると、シェアを弱め、この分子会合が形成し、高粘度になる。
【0037】
<成分(b)>
本実施形態にかかる成分(b)は、金属、金属酸化物または水酸化物からなる無機粉体である。
前記金属、金属酸化物または水酸化物からなる無機粉体としては、例えば、無機粉末(例えば、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、窒化ホウ素等、無機白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等)、無機赤色系顔料(例えば、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等)、無機褐色系顔料(例えば、γ-酸化鉄等)、無機黄色系顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等)、無機黒色系顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等)、無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等)、無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等)、無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等)、パール顔料(例えば、酸化チタンコ-テッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等)、金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等)、ジルコニウム、バリウム等が挙げられる。
中でも、白色顔料として挙げられる二酸化チタン、酸化亜鉛等は、紫外線を散乱する機能に優れることから好適に使用される。
本実施形態にかかる成分(b)が、親油性表面処理された金属酸化物及び親水性表面処理された金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
本実施形態にかかる成分(b)の具体例としては、例えば、シリカ被覆酸化チタン微粒子(堺化学工業(株)製STR-100W)、酸化亜鉛(テイカ(株)製、MZ-300)、酸化鉄などが挙げられる。
【0038】
本実施形態の化粧料組成物における成分(b)の含有率は、特定の値に限定されない。成分(b)の含有率は、本実施形態の化粧料組成物の総質量に対して、例えば、0.1質量%~50質量%であり、0.5質量%~25質量%であってもよく、3質量%~20質量%であってもよい。
【0039】
<界面活性剤>
本実施形態の化粧料組成物が、成分(c)として、さらに界面活性剤を含んでも良い。本実施形態にかかる界面活性剤として、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、特定のノニオン性界面活性剤に限定されなく、例えば、ポリエーテルシリコーン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。本実施形態にかかる界面活性剤は、ポリエーテルシリコーン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0040】
本実施形態の化粧料組成物における成分(c)の含有率は、特定の値に限定されない。成分(c)の含有率は、本実施形態の化粧料組成物の総質量に対して、例えば、0.01質量%~15質量%であり、0.05質量%~5質量%であってもよく、0.1質量%~2質量%であってもよい。
【0041】
<水>
本実施形態の化粧料組成物は、水を含まなくてもよい。例えば、後述の方法で得られた本実施形態化粧料組成物に対して、さらに、乾燥処理などを行い、粉末状の化粧料組成物を得ることができる。
【0042】
本実施形態の化粧料組成物は、水を含んでもよい。例えば、前述の方法で得られた本実施形態化粧料組成物を、脱水処理を行ず、そのまま、使用してもよい。本実施形態の水としては、例えば、イオン交換水などが挙げられる。
また、化粧料組成物が水を含む場合、「水を含む化粧料組成物」を「化粧料溶液」と言うこともある。
水を含む化粧料組成物の合計100質量%に対して、水の含有量が40質量%~99.99質量%であってもよく、60質量%~99.95質量%であってもよく、80質量%~99.9質量%であってもよい。
【0043】
化粧料組成物が水を含む場合には、そのpH値が4.5~8.0の範囲であることが好ましく、5~7の範囲であることがより好ましい。
pH値の調製方法としては、特に限定がなく、酸性物質や塩基性物質を用いて調製する方法が挙げられる。酸の具体例としては、クエン酸などの有機酸が挙げられる。塩基の具体例としては、アンモニアなどの有機塩基性化合物や水酸化ナトリウムなどの無機塩基性化合物が挙げられる。
【0044】
<その他の成分>
本実施形態の化粧料組成物は、さらに、その他の成分を含んでもよい。例えば、前記成分(b)以外の化粧料有効成分などが挙げられる。また、化粧料によく使用される添加剤、例えば、界面活性剤、油性造膜成分(オイル)、紫外線吸収剤(けい皮酸2EH等)などが挙げられる。
【0045】
〔油性造膜成分〕
油性造膜成分としては、ロウ類(ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ラノリン、液状ラノリン、ジョジョバロウ等)、炭化水素油(流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュワックス等)、脂肪酸エステル(ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸コレステリル、ミツロウ脂肪酸2-オクチルドデシル等)、シリコーン油(鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、平均分子量20万以上のシリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン)等が挙げられる。
【0046】
〔紫外線吸収剤〕
紫外線吸収剤としては、安息香酸系紫外線吸収剤(パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル)、アントラニル酸系紫外線吸収剤(ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート)、サリチル酸系紫外線吸収剤(アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート)、ケイ皮酸系紫外線吸収剤(オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート)、トリアジン系紫外線吸収剤(ビスレゾルシニルトリアジン。さらに具体的には、ビス{〔4-(2-エチルヘキシロキシ)-2-ヒドロキシ〕フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス{4-(2-エチルヘキシロキシカルボニル)アニリノ}1,3,5-トリアジン、その他の紫外線吸収剤(3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジアニソイルメタン、4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン、5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン。ジモルホリノピリダジノンなどのピリダジン誘導体)等が挙げられる。
【0047】
〔その他の化粧料有効成分〕
本実施形態にかかる化粧料有効成分としては、例えば、高級アルコール、低級アルコール、多価アルコール、pH調整剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、物理的及び化学的日焼け止め剤、ビタミン類、皮膚保護剤、油脂、炭化水素油剤、保湿剤、制汗剤、洗浄剤、香料、化粧料用着色剤、抗菌剤、殺菌剤、感触向上剤及び泡安定化剤、他の増粘剤などが挙げられる。なお、本実施形態にかかる化粧料有効成分には、前記成分(b)、前記界面活性剤、前記油性造膜成分、前記紫外線吸収剤を含まないとする。
【0048】
<化粧料組成物の調製方法>
本実施形態の化粧料組成物を調製する方法としては、例えば、前述の本実施形態に係る非イオン性ポリアミノ酸誘導体を所定の量で秤量し、必要があれば、水、又はその他の成分を所定の量を添加し、攪拌して調製する方法が挙げられる。
本実施形態の化粧料組成物が水を含む場合、先に、本実施形態に係る非イオン性ポリアミノ酸誘導体の水分散液を調製し、必要があれば、他の成分と混合してもよい。
本実施形態の化粧料組成物が水を含まない場合、固体状の非イオン性ポリアミノ酸誘導体を所定の量で秤量し、必要があれば、他の固形成分と混合してもよい。あるいは、先に非イオン性ポリアミノ酸誘導体と水とを含む分散液を調製し、必要があれば、他の成分と混合して混合液を作成し、乾燥処理を行ってから調製してもよい。
【0049】
本実施形態の化粧料組成物が水を含む場合、水中油型エマルジョンであることが好ましい。
【実施例0050】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
(原料)
アスパラギン酸:YIXING QIANCHENG BIO-ENGINEERING社製、99.97%純度
リン酸:関東化学社製、85%純度
ジメチルホルムアミド:関東化学社製、99.5%純度
n-ドデシルアミン(LA):花王株式会社製、ファーミン 20D
ヒドロキシプロピルアミン(AP):関東化学社製、97%純度
イソプロパノールアミン(iAP):関東化学社製、98%純度
エタノールアミン(AEE):関東化学社製、99%純度
酢酸エチル:関東化学社製、99.0%純度
酸化チタン:シリカ被覆酸化チタン微粒子、堺化学工業株式会社製STR-100W)
酸化亜鉛:テイカ(株)製、MZ-300
クエン酸:和光純薬富士フィルム株式会社製
カルボマー(NTC CAARBOMER 381):日光ケミカルズ社製
キサンタンガム:CP-KELCO社製
紫外線吸収剤(けい皮酸2EH):BASF社製「UVINUL MC80」
グリコール(GLY/BG=1/5) GLY:阪本薬品社製 BG:高級アルコール工業株式会社製
エタノール:関東化学社製、98%純度
PEG-11メチルエーテルジメチコン:信越化学工業株式会社製
スクワラン:日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL スクワラン」
オイル:INEOS Oligomers USA LLC 社製 SILKFLO 364
【0051】
(合成例1)
<ポリコハク酸イミド(PSI)の合成>
アスパラギン酸160部と85%リン酸83部を乳鉢で混合し、トレイに移し替えて、190℃、1.3kPa、6時間反応させた。反応混合物を粉砕した後、蒸留水を用いて、ろ液が中性になるまで洗浄し、80℃にて真空乾燥することにより、重量平均分子量13万のポリコハク酸イミド(PSI)115部を得た。
【0052】
<ポリコハク酸イミド(PSI)の重量平均分子量の測定>
ポリコハク酸イミド(PSI)の重量平均分子量は、GPC法(示差屈折計)によるポリスチレン換算値を求めた。測定には、G1000HHRカラム、G4000HHRカラム、及びGMHHR-Hカラム(TSKgel(登録商標)、東ソー株式会社)を使用した。溶離液には、10mM臭化リチウムを含むジメチルホルムアミドを使用した。
【0053】
(合成例2)
<ヒドロキシプロピルアミン(AP)変性ポリアスパラギン酸誘導体の合成>
反応容器内にPSI9.40gとDMF34.00gを入れ、70℃加熱下で完全に溶解させた。次いで、疎水性アミンAとしてn-ドデシルアミン(以下LAと略記する)8.65g(こはく酸イミド単位に対して55モル%)と、親水性アミンBとしてヒドロキシプロピルアミン(以下APと略記する)3.38g(こはく酸イミド単位に対して45モル%)を添加し、反応容器内の温度を70℃に保ちながら6時間反応させ、次いで反応容器を冷却し、室温になったところで一晩静置させた。その後、反応液を酢酸エチル300mL中に攪拌しながら排出することにより反応物を沈澱させ、濾過により回収し、ポリアスパラギン酸誘導体(PASP1)を得た。疎水性アミンAと親水性アミンBとのモル比、A/Bが55/45であった。以下の方法で、本合成例で得られたポリアスパラギン酸誘導体(PASP1)の1.5%水溶液の粘度を評価した。その結果を表1に示す。
本合成例で得られたポリアスパラギン酸誘導体(PASP1)の組成比は、1HNMRで算出した。その結果が表1Aに示す。
【0054】
(合成例3)
<ヒドロキシプロピルアミン(AP)変性ポリアスパラギン酸誘導体の合成>
疎水性アミンAと親水性アミンBとのモル比、A/Bが50/50であった以外は、合成例2と同様な方法でポリアスパラギン酸誘導体(PASP2)を得た。合成例2と同様な方法で粘度を評価した。その結果を表1に示す。
本合成例で得られたポリアスパラギン酸誘導体(PASP1)の組成比は、1HNMRで算出した。その結果が表1Aに示す。
【0055】
(合成例4)
<イソプロパノールアミン(iAP)変性ポリアスパラギン酸誘導体の合成>
LAの使用量を7.87g(こはく酸イミド単位に対して50モル%)、イソプロパノールアミン(以下iAPと略記する)の使用量を3.76g(こはく酸イミド単位に対して50モル%)に変更したこと以外は、合成例2と同様にしてポリアスパラギン酸誘導体を合成した。疎水性アミンAと親水性アミンBとのモル比、A/Bが55/45であった。以下の方法で、本合成例で得られたポリアスパラギン酸誘導体(PASP3)の1.5%水溶液の粘度を評価した。その結果を表1に示す。
(合成例5)
<イソプロパノールアミン(iAP)変性ポリアスパラギン酸誘導体の合成>
疎水性アミンAと親水性アミンBとのモル比、A/Bが50/50であった以外は、合成例4と同様な方法でポリアスパラギン酸誘導体(PASP4)を得た。合成例2と同様な方法で粘度を評価した。その結果を表1に示す。
【0056】
(合成例6)
<エタノールアミン(AEE)変性ポリアスパラギン酸誘導体の合成>
LAの使用量を8.65g(こはく酸イミド単位に対して55モル%)、エタノールアミン(AEE)AEE(以下(AEE)と略記する)の使用量を1.54g(こはく酸イミド単位に対して45モル%)に変更したこと以外は、合成例2と同様にしてポリアスパラギン酸誘導体(PASP5)を合成した。疎水性アミンAと親水性アミンBとのモル比、A/Bが55/45であった。以下の方法で、本合成例で得られたポリアスパラギン酸誘導体(PASP5)の1.5%水溶液の粘度を評価した。その結果を表1に示す。
本合成例で得られたポリアスパラギン酸誘導体(PASP1)の組成比は、1HNMRで算出した。その結果が表1Aに示す。
【0057】
(合成例7)
<エタノールアミン(AEE)変性ポリアスパラギン酸誘導体の合成>
疎水性アミンAと親水性アミンBとのモル比、A/Bが50/50であった以外は、合成例6と同様な方法でポリアスパラギン酸誘導体(PASP6)を得た。合成例2と同様な方法で粘度を評価した。その結果を表1に示す。
本合成例で得られたポリアスパラギン酸誘導体(PASP1)の組成比は、1HNMRで算出した。その結果が表1Aに示す。
【0058】
(参考例6、参考例7)
合成例2と同様な方法で、カルボマー(日光ケミカルズ社製、NTC-CARBOMER381)の水溶液、キサンタンガム(CP Kelco 社製、KELTROL CG)の水溶液の粘度をそれぞれ評価した。その結果を表1に示す。
【0059】
(ポリアスパラギン酸誘導体の組成比の算出方法)
1HNMRを用いて、ポリアスパラギン酸誘導体の組成比を算出した。
1HNMRの測定条件:ポリアスパラギン酸誘導体0.1gを重水素化ジメチルスルホキシド0.6mLに溶解して測定サンプルを作製し、60℃の加温条件で測定
ポリアスパラギン酸誘導体の組成比は次の式で算出した。
モノアミン(3)/モノアミン(4)(モル比)=(モノアミン(3)のメチル基の積分値/3)/(モノアミン(4)のメチレン基の積分値/2)
【0060】
【0061】
【0062】
(実施例1~6)
<化粧料組成物の調製>
100mlマヨネーズ瓶に、シリカ被覆酸化チタン微粒子(堺化学工業(株)製STR-100W)を10g入れ、水を90g添加した。これにφ0.5ジルコニアビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。ビーズを分離後、合成例で得られたポリアスパラギン酸誘導体(PASP1~6)1.5%水溶液に対し、それぞれ、下記の表2に掲げた組成を有する化粧料組成物を調製した。
【0063】
(実施例7~12)
100mlマヨネーズ瓶に、酸化亜鉛(テイカ(株)製、MZ-300)を10g入れ、水を90g添加した。これにφ0.5ジルコニアビーズを100g入れ、ペイントシェーカーで60分間分散した。ビーズを分離後、ポリアスパラギン酸誘導体1.5%水溶液に対し、下記の表2に掲げた組成を有する化粧料組成物を調製した。
【0064】
<粘度評価>
回転式レオメーター MCR102でせん断粘度を測定した後、増粘溶液L1を40℃の恒温機内で保存した。7日間保存した後に測定した粘度が初期粘度の60%以上を保持し流動性を保てている場合を○×と評価した。また、60%未満になっているもの、あるいはゲル化を起こし流動性を失ってしまった場合を×と評価した。
【0065】
<触感評価>
組成物を肌に塗布し、その際のべたつきの有無を専門評価パネル10名により、以下の基準で評価した。
<評価基準>
A:優れていると回答したパネルが8~10名。
B:優れていると回答したパネルが5~7名。
C:優れていると回答したパネルが4名以下。
【0066】
(比較例1、比較例3)
カルボマー(日光ケミカルズ社製、NTC-CARBOMER381)を用い、下記の表3に掲げた化粧料組成物を調製した。
【0067】
(比較例2、比較例4)
キサンタンガム(CP Kelco 社製、KELTROL CG)を用い、下記の表3に掲げた化粧料組成物を調製した。
【0068】
【0069】
【0070】
(実施例13、比較例5、比較例6)
合成例2で得られたポリアスパラギン酸誘導体(PSAP1)、カルボマー(日光ケミカルズ社製、NTC-CARBOMER381)、及びキサンタンガム(CP Kelco 社製、KELTROL CG)をそれぞれ用い、下記の表4に掲げた化粧料組成物を調製した。
実施例1と同様に粘度安定性及び触感を評価した。その結果を表4に示す。
【0071】
【0072】
(考察)
表2~4に示すように、本発明のポリアスパラギン酸組成物は、カルボマー、キサンタンガムと比較して優れた粘度安定性が観測された。ポリアスパラギン酸組成物に用いたポリアスパラギン酸誘導体は側鎖の長鎖アルキル基による疎水―疎水相互作用によって増粘性発現する為、粘度を維持できるのに対し、カルボキシビニルポリマーは、側鎖カルボン酸部と多価金属イオンとの反応により、カルボキシビニルポリマーのゲル構造が破壊され、粘性が低下してしまった。キサンタンガムはポリアスパラギン酸組成物同様、粘度を維持するが、自身が持つガム特性により、べたつきが生じる為、好ましい触感が得られなかった。