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特開2024-71232液体吐出装置およびギャップ許容範囲設定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071232
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】液体吐出装置およびギャップ許容範囲設定方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182066
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】毛利野 哲
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB12
2C056EB13
2C056EB37
2C056EC12
2C056EC80
2C056FA10
2C056HA12
2C056HA29
(57)【要約】
【課題】記録媒体の種類によらずに印刷品質を高くする。
【解決手段】液滴を吐出する記録ヘッドと、記録媒体を保持するプラテンと、印刷データに応じて前記記録ヘッドから液滴を吐出させることで前記プラテンに保持された記録媒体に印刷を行う制御手段と、前記記録ヘッドと前記プラテンに保持された記録媒体の記録面とのギャップを計測する計測手段と、を有し、前記制御手段は、前記プラテンに保持された記録媒体の種類を特定可能な情報と前記計測手段にて計測されたギャップとに応じて、当該種類の記録媒体に対する印刷を許容する、前記記録ヘッドと前記記録媒体の記録面とのギャップの範囲を設定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する記録ヘッドと、
記録媒体を保持するプラテンと、
印刷データに応じて前記記録ヘッドから液滴を吐出させることで前記プラテンに保持された記録媒体に印刷を行う制御手段と、
前記記録ヘッドと前記プラテンに保持された記録媒体の記録面とのギャップを計測する計測手段と、を有し、
前記制御手段は、前記プラテンに保持された記録媒体の種類を特定可能な情報と前記計測手段にて計測されたギャップとに応じて、当該種類の記録媒体に対する印刷を許容する、前記記録ヘッドと前記記録媒体の記録面とのギャップの範囲を設定する、液体吐出装置。
【請求項2】
前記プラテンは、前記記録媒体の種類に応じて用意されており、
前記制御手段は、前記プラテンの種類を示す情報と前記計測手段にて計測されたギャップとに応じて前記ギャップの範囲を設定する、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記プラテンの種類を検知して前記制御手段に通知するプラテン検知手段を有し、
前記制御手段は、前記プラテン検知手段から通知されたプラテンの種類と前記計測手段にて計測されたギャップとに応じて前記ギャップの範囲を設定する、
請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記記録媒体の種類そのものを示す情報と前記計測手段にて計測されたギャップとに応じて前記ギャップの範囲を設定する、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記記録媒体の種類そのものを示す情報は、前記印刷データに含まれており、
前記制御手段は、前記印刷データに含まれた前記記録媒体の種類そのものを示す情報と前記計測手段にて計測されたギャップとに応じて前記ギャップの範囲を設定する、
請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記記録媒体の種類を特定可能な情報と前記計測手段にて計測されたギャップとに応じて、前記記録ヘッドから液滴を吐出させる際の印字モードを設定する、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記計測手段は、指定されたルートで前記プラテン上を走査することで、前記記録ヘッドと前記プラテンに保持された記録媒体の記録面とのギャップを計測する、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記計測手段は、前記記録媒体の種類に応じて前記プラテン上を走査することで、前記記録ヘッドと前記プラテンに保持された記録媒体の記録面とのギャップを計測する、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記計測手段は、前記プラテンに保持された記録媒体に対して非接触にて、当該記録媒体の記録面と前記記録ヘッドとのギャップを計測する、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
液滴を吐出する記録ヘッドと、記録媒体を保持するプラテンと、印刷データに応じて前記記録ヘッドから液滴を吐出させることで前記プラテンに保持された記録媒体に印刷を行う制御手段と、を有する液体吐出装置にて、前記プラテンに保持された記録媒体に対する印刷を許容する、前記記録ヘッドと前記記録媒体の記録面とのギャップの範囲を前記記録媒体の種類に応じて設定するギャップ許容範囲設定方法であって、
前記記録ヘッドと前記プラテンに保持された記録媒体の記録面とのギャップを計測し、
前記記録媒体の種類を特定可能な情報と前記計測されたギャップとに応じて、当該種類の記録媒体に対する印刷を許容する、前記記録ヘッドと前記記録媒体の記録面とのギャップの範囲を設定する、ギャップ許容範囲設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置およびギャップ許容範囲設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、記録媒体に対して記録ヘッドから液滴を吐出させて印刷を行うことから、記録ヘッドと記録媒体の記録面とのギャップが一定でないと、記録媒体の記録面における液滴の着弾状態が一定とはならず、印刷品質が低下してしまう。そのため、インクジェットプリンタでは、記録ヘッドと記録媒体の記録面とのギャップが均一であることが好ましい。
【0003】
特許文献1は、記録ヘッドと記録媒体の記録面とのギャップに応じてインク滴速度や駆動波形などを選定する技術を開示している。特許文献2は、記録ヘッドと記録媒体とのギャップを検知し、主走査の移動速度およびギャップの自動調整を行う技術を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷が行われる記録媒体が用紙の場合は、用紙端部の捲れなどはあるものの、記録面はあくまでおおよそ平面状に保たれていることが前提であった。これに対して、いわゆるガーメントプリンタでは、加工済みの布あるいは布状製品に印刷を行う。加工済みの布製品である帽子あるいは靴のような立体物は平坦面に固定することが困難であり、平坦面に矯正しながら固定したとしてもどうしても凹凸が生じてしまう。そのため、プラテンに保持された状態にて記録面と記録ヘッドとのギャップが一定とはならない。一方、同じ布製品でもTシャツの主に胴体部分あるいはハンカチなどのように、記録面はおおよそ平面状となるものも存在する。
【0005】
このように、ガーメントプリンタにて印刷が行われる記録媒体においても、記録媒体の種類に応じて、凹凸が生じることで記録ヘッドとのギャップが一定でないものと、記録面がおおよそ平面状であることで記録ヘッドとのギャップがほぼ一定なものとが存在する。
【0006】
本発明は、記録媒体の種類によらずに印刷品質を高くすることができる液体吐出装置およびギャップ許容範囲設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドと、
記録媒体を保持するプラテンと、
印刷データに応じて前記記録ヘッドから液滴を吐出させることで前記プラテンに保持された記録媒体に印刷を行う制御手段と、
前記記録ヘッドと前記プラテンに保持された記録媒体の記録面とのギャップを計測する計測手段と、を有し、
前記制御手段は、前記プラテンに保持された記録媒体の種類を特定可能な情報と前記計測手段にて計測されたギャップとに応じて、当該種類の記録媒体に対する印刷を許容する、前記記録ヘッドと前記記録媒体の記録面とのギャップの範囲を設定する。
【0008】
また、本発明のギャップ許容範囲設定方法は、
液滴を吐出する記録ヘッドと、記録媒体を保持するプラテンと、印刷データに応じて前記記録ヘッドから液滴を吐出させることで前記プラテンに保持された記録媒体に印刷を行う制御手段と、を有する液体吐出装置にて、前記プラテンに保持された記録媒体に対する印刷を許容する、前記記録ヘッドと前記記録媒体の記録面とのギャップの範囲を前記記録媒体の種類に応じて設定するギャップ許容範囲設定方法であって、
前記記録ヘッドと前記プラテンに保持された記録媒体の記録面とのギャップを計測し、
前記記録媒体の種類を特定可能な情報と前記計測されたギャップとに応じて、当該種類の記録媒体に対する印刷を許容する、前記記録ヘッドと前記記録媒体の記録面とのギャップの範囲を設定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録媒体の種類によらずに印刷品質を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の基礎となる構成例を示す外観斜視図である。
図2】本発明の一実施形態の基礎となる構成例を示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態の基礎となる構成例を示す正面図である。
図4】本発明の第1実施形態の外観斜視図である。
図5図4に示した状態からプラテンを取り外した状態を示す外観斜視図である。
図6】プラテンの裏面の構成を示す図である。
図7】第1実施形態にて用いられるプラテンの例を示す外観斜視図である。
図8】第1実施形態にて用いられるプラテンの例を示す外観斜視図である。
図9】第1実施形態にて用いられるプラテンの例を示す外観斜視図である。
図10】第1実施形態における基準許容ギャップ量を設定するフローを示す図である。
図11】凹凸がある記録媒体をプラテン上にセットした状態を示す図である。
図12】第1実施形態における許容ギャップ量の設定フローを示す図である。
図13】ギャップ計測センサによる記録媒体の記録面の走査を説明するための図である。
図14】ギャップ計測センサによる記録媒体の記録面の走査を説明するための図である。
図15】ギャップ計測センサによる記録媒体の記録面の走査を説明するための図である。
図16】ギャップ計測センサによる記録媒体の記録面の走査を説明するための図である。
図17】第1実施形態における印刷処理のフローを示す図である。
図18】第2実施形態における許容ギャップ量の設定フローを示す図である。
図19】第3実施形態における許容ギャップ量の設定フローを示す図である。
図20】第4実施形態における許容ギャップ量の設定フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0012】
なお、各実施形態に係る明細書および図面の記載に関して、実質的に同一のまたは対応する機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する場合がある。また、理解を容易にするために、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。
【0013】
[基礎となる全体構成]
まず、本発明の液体吐出装置の基礎となる全体構成について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態の基礎となる構成例を示す外観斜視図である。図2は、本発明の一実施形態の基礎となる構成例を示す平面図である。図3は、本発明の一実施形態の基礎となる構成例を示す正面図である。
【0015】
本例は図1図3に示すように、キャリッジ11とプラテン30とコントローラボード61とを有するプリンタ1である。
【0016】
キャリッジ11は、4つの記録ヘッド12を主走査方向Xに並べて搭載している。4つの記録ヘッド12はそれぞれ、液体を吐出するノズルを配列したノズル列を副走査方向Yに2列有している。プリンタ1は、キャリッジ11内の記録ヘッド12の直上に、吐出に使用するインクを一時的に貯留しておくためのヘッドタンクを有している。プリンタ1は、さらにインク供給チューブ、インク供給ポンプおよびインクカートリッジ13を有しており、ヘッドタンクは、インク供給チューブおよびインク供給ポンプを介してインクカートリッジ13と接続されている。プリンタ1は、必要に応じてインク供給ポンプを稼働することでインクカートリッジ13からヘッドタンクにインクを補給する。
【0017】
プリンタ1は、主走査方向Xに延びた一対のガイドロッド22a,22bと、ガイドロッド22a,22bに沿って駆動するタイミングベルト21とを有している。記録ヘッド12を搭載したキャリッジ11は、ガイドロッド22a,22bに保持されており、主走査モータ27によりタイミングベルト21が駆動することでガイドロッド22a,22bに沿って主走査方向Xに往復移動する。
【0018】
プリンタ1は、キャリッジ11の主走査方向Xに沿って、キャリッジ11の位置を検出するために周期的にスリットが形成もしくは印刷されたエンコーダーシート26を有している。キャリッジ11は、エンコーダーシート26のスリットを読み取る読み取りセンサを有している。キャリッジ11は、読み取りセンサでエンコーダーシート26のスリットを読み取りながら吐出位置でタイミングを合わせてコントローラボード61の制御により記録ヘッド12から液滴となるインク滴を吐出することで画像を形成して印刷を行う。
【0019】
プリンタ1は、プラテン昇降機構32を有している。印刷が行われる記録媒体が載置されるプラテン30は、プラテン昇降機構32上に搭載されており、上下方向Zの位置が調整可能となっている。プリンタ1は、主走査方向Xと直交する副走査方向Yに延びたガイドレール24と、ガイドレール24上に移動可能に載置されたスライダ25と、ガイドレール24に沿って駆動するタイミングベルト23とを有している。プラテン昇降機構32はスライダ25上に搭載されており、副走査方向Yの駆動機構およびコントローラボード61によりタイミングベルト23が駆動することでスライダ25およびプラテン昇降機構32が副走査方向Yに移動可能となっている。これにより、プラテン30も、副走査方向Yに往復移動する。
【0020】
コントローラボード61は、コントローラボード61に搭載されたソフトウェアに従って、モータ、ソレノイドなどの稼働(出力)やセンサなどの入力信号を処理し制御する。コントローラボード61は、プリンタ1に接続された情報処理装置から送信された印刷データの印刷制御、およびUSBメモリーなどの外部記憶媒体やコントローラボード61に記録された印刷データを読み出しての印刷制御処理も行う。
【0021】
プリンタ1は、主走査方向Xの一端側に、記録ヘッド12の機能の維持回復を行うメンテナンスユニット70を有している。メンテナンスユニット70は、プリンタ1の非稼働(非印刷)時に記録ヘッド12のインク露出部を乾燥から保護するために記録ヘッド12のインク吐出口(ノズル)が設けられたノズル面を覆うキャップを有している。キャップとしては、保湿キャップ71と吸引キャップ72とを有している。保湿キャップ71は、ただ単に記録ヘッド12のノズル面を覆い乾燥から保護するためだけの機能を備えている。吸引キャップ72は、保湿キャップ71の機能に加え、吸引ポンプに接続され、記録ヘッド12から主に増粘したインクを吸引することで記録ヘッド12を適切な状態に回復する機能を備えている。吸引ポンプで吸引されたインクは、プリンタ1内部の廃液チューブを経由し、プリンタ1の背面側のポートに接続されたプリンタ1外部の廃液チューブを経て廃液ボトルに排出される。また、メンテナンスユニット70は、吸引後のノズル面に残った余分なインクを清掃し記録ヘッド12のノズルの状態を回復するためのワイパ73を備えている。吸引キャップ72にて記録ヘッド12を吸引した後にワイパ73で記録ヘッド12のノズル面を拭くことで余分なインクを掻き落とし、記録ヘッド12のノズルに正常なメニスカスを形成する。
【0022】
プリンタ1は、主走査方向Xの他端側に、印字途中で空気に触れることで乾燥し粘度が上がってしまったインクを捨て吐出するための左空吐出受け74を有している。左空吐出受け74には、適切なタイミングでコントローラボード61からの指示によりインクが捨て打ちされる。
【0023】
プリンタ1は、プラテン30上に載置された記録媒体がプラテン30の移動によって通過する領域の上方であって、主走査方向Xにおける記録媒体の両側に対応して一対の高さ検知センサ41を有する。高さ検知センサ41は、例えば、発光部と受光部とから構成され、発光部から射出した射出光を受光部にて受光した光量に基づき、プラテン30上に載置された記録媒体の高さを検知する。
【0024】
また、プリンタ1は、プリンタ1を駆動させるための電源ユニット53と、電源ボタン51と、操作部52とを有している。操作部52は、液晶ディスプレイとタッチパネルとから構成されており、プリンタ1に対する操作が可能であるとともに、情報が表示される。
【0025】
上記のように構成されたプリンタ1にて記録媒体となるTシャツに印刷を行う場合は、その印刷は下記手順にて行う。
【0026】
まず、Tシャツをプラテン30にセットする。その後、操作部52に対する操作により、スライダ25を移動させてプラテン30をプリンタ1の後方へ完全に引き込む動作を行う。
【0027】
プラテン30を引き込む際、プラテン30上のTシャツが記録ヘッド12に干渉するか否かを高さ検知センサ41で検知する。Tシャツが記録ヘッド12に干渉する場合は、プラテン30の引き込みをその場で停止するか、あるいは、プラテン30をプリンタ1の前面のTシャツをセットした位置まで戻す。一方、Tシャツが記録ヘッド12に干渉せず、プラテン30のプリンタ1の後方への引き込みが問題なく完了した場合は、印刷データ待機状態となる。
【0028】
印刷データ待機状態において、プリンタ1に接続されたパーソナルコンピュータなどの情報処理装置から送信された印刷データをプリンタ1が受信した場合、コントローラボード61の制御によって、受信した印刷データに従って印刷動作を開始する。また、コントローラボード61に印刷データが予め蓄積されていた場合は、その印刷データを操作部52で選択することによって印刷動作を開始する。
【0029】
印刷動作が開始すると、まず、スライダ25を移動させてプラテン30を印刷開始位置となるプリンタ1の後方に移動させる。その後、コントローラボード61の制御によって、キャリッジ11が主走査方向Xに1スキャン分移動しながら印刷データに応じて記録ヘッド12からインクを吐出することで、1行分の印刷を行う。
【0030】
1行分の印刷が完了すると、スライダ25を移動させてプラテン30をプリンタ1の手前側に向かって副走査方向Yに1行分移動させて改行処理を行うことで、Tシャツを次の印刷位置へと移動させる。スライダ25の移動が完了すると、上記同様にキャリッジ11が主走査方向Xに1スキャン分移動しながら記録ヘッド12からインクを吐出することで、1行分の印刷を行う。
【0031】
このキャリッジ11の1スキャン分の移動およびその際の記録ヘッド12からのインクの吐出、並びにその後のスライダ25の移動の繰り返しを行うことで所望の領域に印刷を行う。そして、印刷が完了するとプラテン30をプリンタ1の手前まで排出して印刷完了となる。
【0032】
Tシャツなどの凹凸がある記録媒体2をプラテン30上にセットした場合、記録媒体2の記録面のプラテン30の表面からの高さは、記録媒体2の凹凸によって異なっている。そのため、記録ヘッドと記録媒体2との間のギャップが異なる領域が存在する。
【0033】
ここで、記録ヘッドと記録媒体との間のギャップが適切な範囲であるかどうかを判断する構成が考えられる。その場合、凹凸がある記録媒体は上述したように、記録ヘッドと記録媒体2との間のギャップが異なる領域が存在する。そのため、上記判断を行うための基準を凹凸がある記録媒体に基づいて設定すると、平坦な記録媒体に印刷を行う際に、記録ヘッドと記録媒体の記録面とのギャップが上記基準の最大ギャップであったとしても、ギャップが適切な範囲であると判断されてしまう。そのような状態で平坦な記録媒体に印刷を行うと、ギャップが狭い時に比べてインクミストやインク滴着弾位置のズレが発生しやすくなってしまう。
【0034】
以下に、上述したプリンタ1を基礎とした本発明の液体吐出装置について実施形態を例に挙げて説明する。なお、以下の説明において、記録ヘッドと記録媒体の記録面との間のギャップとは、記録ヘッドのノズル面と記録媒体の記録面との間のギャップを示す。
【0035】
〈第1実施形態〉
[全体構成]
図4は、本発明の第1実施形態の外観斜視図である。図5は、図4に示した状態からプラテン30を取り外した状態を示す外観斜視図である。図6は、プラテン30の裏面の構成を示す図である。
【0036】
本実施形態における液体吐出装置は図4及び図5に示すように、図1図3に示した構成に、ギャップ計測センサ42およびIDチップ読み取り部34をさらに有するプリンタ100である。
【0037】
ギャップ計測センサ42は、本発明にて計測手段の一例となるものである。ギャップ計測センサ42は、キャリッジ11上に搭載されている。ギャップ計測センサ42は、記録媒体がセットされたプラテン30上をキャリッジ11の移動とともに走査していき、キャリッジ11に搭載された記録ヘッド12とプラテン30に保持された記録媒体の記録面とのギャップを計測する。ギャップ計測センサ42は、例えば、記録媒体に対して光を照射し、記録媒体の記録面にて反射した反射光を受光した光量に基づいてギャップを計測するように、記録媒体に非接触にてギャップを計測するものが考えられる。その場合、ギャップ計測センサ42が記録媒体に接触しないため、記録媒体の表面が擦れてしまうことがなく好ましい。
【0038】
プリンタ100は、プラテン昇降機構32上にプラテンセット部31を有している。プラテンセット部31に、Tシャツ、トートバッグ、帽子、靴など様々な種類の記録媒体に応じた種類のプラテンをセットし、印刷することができる。プラテンセット部31は、平板状であり、記録媒体がセットされる面に2つのプラテンセット穴33を有している。
【0039】
図6に示すようにプラテン30は、その裏面に、円筒状の2つの突起35を有している。プラテン30は、突起35がプラテンセット部31のプラテンセット穴33に差し込まれることで、プリンタ100に対する位置が決まり、プリンタ100にセットされる。
【0040】
また、プラテンセット部31は、記録媒体がセットされる面にIDチップ読み取り部34を有している。IDチップ読み取り部34は、本発明にてプラテン検知手段の一例となるものである。プラテン30は、セットされる記録媒体に応じて用意されており、その種類を識別するためにプラテン30はIDチップを搭載している。このIDチップには、プラテンの種類を示す情報となるプラテンIDが書き込まれている。プラテン30がプラテンセット部31にセットされると、プラテン30に搭載されたIDチップがIDチップ読み取り部34に接触し、IDチップに書き込まれたプラテンIDが読み取られる。コントローラボード61には、プラテン30の種類がプラテンIDと対応づけて記憶されており、それにより、コントローラボード61は、プラテンセット部31にセットされたプラテン30の種類を判別する。
【0041】
[プラテンの例]
図7図9は、第1実施形態にて用いられるプラテンの例を示す外観斜視図である。
【0042】
図4及び図5に示したプリンタ100は、プラテンセット部31に図7に示したプラテン130をセットすることができる。プラテン130は、その表面に帽子セット部131を有している。帽子セット部131に帽子をセットすることでプリンタ100にて帽子に印刷を行うことができる。
【0043】
図4及び図5に示したプリンタ100は、プラテンセット部31に図8に示したプラテン230をセットすることができる。プラテン230は、その表面に袖セット部231を有している。袖セット部231にシャツの袖をセットすることでプリンタ100にてシャツの袖に印刷を行うことができる。
【0044】
図4及び図5に示したプリンタ100は、プラテンセット部31に図9に示したプラテン330をセットすることができる。プラテン330は、その表面に靴セット部331を有している。靴セット部331に靴をセットすることでプリンタ100にて靴に印刷を行うことができる。
【0045】
このように、プラテンセット部31にセットされるプラテンは、プリンタ100にて印刷が行われる記録媒体の種類に応じて、種類が異なるものが用意されている。コントローラボード61は、プラテンの種類を示す情報に基づいて記録媒体の種類を特定することができる。
【0046】
[許容ギャップ量の設定]
図10は、第1実施形態における基準許容ギャップ量を設定するフローを示す図である。図11は、凹凸がある記録媒体をプラテン30上にセットした状態を示す図である。
【0047】
上述したように、Tシャツなどの凹凸がある記録媒体2をプラテン30上にセットした場合、記録ヘッドと記録媒体2の記録面との間のギャップが異なる領域が存在する。そこで、記録媒体2の種類毎に、記録ヘッド12と記録媒体2の記録面との間にて印刷を許容するためのギャップ量を設定する。
【0048】
表1に示すように、本実施形態にて用いられるプラテンの種類毎に、記録ヘッド12と記録媒体2の記録面との間にて印刷を許容するためのギャップ量が基準許容ギャップ量として設定されている。また、後述する許容ギャップ量を設定する際に使用する許容ギャップ加算量が設定されている。許容ギャップ加算量は、本実施形態にて用いられるプラテンの種類毎に、印刷の精度は若干低下するものの、その低下を許容できるのであれば印刷を許容してもよいものとして、製造時あるいはユーザーが操作部52を介して予め設定しておくことが考えられる。なお、表1に示す情報は、コントローラボード61の記憶部内にテーブルとして記憶されている。
【0049】
【表1】
【0050】
コントローラボード61は、表1に示す情報に基づいて、プリンタ100にセットされるプラテンに応じた基準許容ギャップ量を設定する(ステップS1)。なお、基準許容ギャップ量とは、図11に示すように、記録媒体2の印刷範囲面(記録面)の下限L(記録ヘッドのノズル面から最も遠い印刷範囲面)を0としたときの、印刷範囲面のZ軸上向き方向の上限Hまでの範囲の数値を指す。すなわち、記録ヘッド12と記録媒体2の記録面との間のギャップ量とは、記録ヘッド12と記録媒体2の記録面とのギャップの範囲をいう。例えば、表1に示すものにおいては、ノーマルプラテンの印刷範囲は、Z軸方向で0~2mm以内を印刷が許容できるギャップ量とするということである。
【0051】
ところで、図11に示すように、記録ヘッド12のノズル面から記録媒体2の記録面までのギャップは、記録媒体2のプラテン30へのセット状態や記録媒体2自体の形状などに依存する。例えば、記録媒体2が、皺がある状態でプラテン30にセットされた場合は、記録媒体2がプラテン30に対して密着しておらず記録面が平面状にはなっていない状態となる。
【0052】
本実施形態においては、印刷が許容できるギャップの範囲となるギャップ量を、表1に示した基準許容ギャップ量のみではなく、プラテン30にセットされた記録媒体2の記録面と記録ヘッド12とのギャップを用いて設定する。
【0053】
図12は、第1実施形態における許容ギャップ量の設定フローを示す図である。
【0054】
まず、プラテンセット部31にプラテン30がセットされると、コントローラボード61がプラテン30の種類を判別する(ステップS11)。上述したように、プラテン30がプラテンセット部31にセットされると、プラテン30に搭載されたIDチップがIDチップ読み取り部34に接触し、IDチップに書き込まれたプラテンIDが読み取られる。これにより、コントローラボード61は、プラテンセット部31にセットされたプラテン30の種類を判別する。このように、プラテン30に搭載されたIDチップに書き込まれたプラテンIDを読み取ってプラテン30の種類を判別することで、プラテン30の種類を人手で入力するなどといった手間を省くことができる。なお、プラテン30の種類を判別する方法は、これに限らず、例えば、ユーザーの操作部52を介した入力情報に基づいてプラテン30の種類を判別してもよいし、印刷データ内にプラテン30の種類を示す情報を含ませてもよい。もしくは、ギャップ計測センサ42を主走査方向X及び副走査方向Yに移動させることでプラテン30の形状をスキャンして計測することで、コントローラボード61に予め記憶されたプラテン形状と照合してプラテン30の種類を判別してもよい。
【0055】
次に、プラテン30上に記録媒体がセットされた状態で、ギャップ計測センサ42が、記録媒体2の記録面を走査し、記録ヘッド12と記録媒体2の記録面との間のギャップを計測し、ギャップ量を算出する(ステップS12)。ギャップ量の算出は、記録ヘッド12と記録媒体2の記録面の最小高さの領域との間のギャップと、記録ヘッド12と記録媒体2の記録面の最大高さの領域との間のギャップとから算出することができる。このギャップ計測センサ42の走査は、コントローラボード61の制御によって行われる。この際、ギャップ量に、記録ヘッド12と記録媒体2との間の最小必要距離(例えば0.5mm)を加算しておくと、記録ヘッド12と記録媒体2との擦れによる印字障害を回避できるため好ましい。
【0056】
図13図16は、ギャップ計測センサ42による記録媒体2の記録面の走査を説明するための図である。
【0057】
ギャップ計測センサ42は、記録媒体2の印刷範囲を主走査方向X及び副走査方向Yに移動することで、記録ヘッド12と記録媒体2の記録面との間のギャップを計測する。その際、ステップS11にて判別されたプラテンがノーマルプラテンであれば、ギャップ計測センサ42が図13中の矢印で示すように略面状に走査することが好ましい。具体的には、ギャップ計測センサ42が、主走査方向Xのスキャン後に副走査方向Yにわずかに移動し、主走査方向Xをスキャンし、また副走査方向Yに移動するというように略面状に走査することが好ましい。また、走査の簡略化と時間短縮のためには、例えば図14に示すように、ギャップ計測センサ42を主走査方向Xまたは副走査方向Yのみに一直線上に走査させることも考えられる。このように、ギャップ計測センサ42は、指定されたルートでプラテン30上を走査することで、記録ヘッド12とプラテン30に保持された記録媒体2の記録面とのギャップを計測する。これにより、記録ヘッド12とプラテン30に保持された記録媒体2の記録面とのギャップを効率的に計測することができる。なお、ギャップ計測センサ42を主走査方向Xおよび副走査方向Yに走査する際に、プラテン30上の記録媒体が記録ヘッド12に干渉するか否かを高さ検知センサ41で検知することも考えられる。そのような構成とすることで、全体の処理時間を短縮することができる。
【0058】
また、走査範囲についても、例えば、ステップS11にて判別されたプラテンが図7に示したような帽子用のプラテン130であれば、図15中の縞領域のように、帽子102がセットされる範囲のみをギャップ計測センサ42が走査するように構成してもよい。また、例えば、ステップS11にて判別されたプラテンが図8に示したような袖用のプラテン230であれば、図16中の縞領域のように、袖202がセットされる範囲のみをギャップ計測センサ42が走査するように構成してもよい。このように、ギャップ計測センサ42は、記録媒体の種類に応じてプラテン上を走査することで、記録ヘッド12とプラテンに保持された記録媒体の記録面とのギャップを計測する。これにより、記録ヘッド12とプラテンに保持された記録媒体の記録面とのギャップを効率的に計測することができる。
【0059】
なお、上述したギャップ計測センサ42の走査ルート及び走査範囲については、操作部52を介して選択するようにしてもよいし、プラテンの種類に応じて自動設定されるようにしてもよい。あるいは、印刷データから印刷予定の範囲のみを抽出して走査するようにしてもよい。
【0060】
ギャップ計測センサ42によってギャップが計測されると、コントローラボード61は、ギャップ計測センサ42にて計測されたギャップによるギャップ量が、表1に示した基準許容ギャップ量以内であるかどうかを判断する(ステップS13)。その際、コントローラボード61は、表1に示した基準許容ギャップ量のうち、ステップS11にて判別したプラテンの種類に応じた基準許容ギャップ量を、ギャップ計測センサ42にて計測されたギャップによるギャップ量と比較する。
【0061】
ギャップ計測センサ42にて計測されたギャップによるギャップ量が、表1に示した基準許容ギャップ量以内である場合は、コントローラボード61は、表1に示した基準許容ギャップ量を、印刷を許容する許容ギャップ量に設定する(ステップS14)。コントローラボード61は、設定した許容ギャップ量を記憶部に記憶する。
【0062】
一方、ギャップ計測センサ42にて計測されたギャップによるギャップ量が、表1に示した基準許容ギャップ量以内ではない場合は、コントローラボード61は、計測されたギャップによるギャップ量が所定のギャップ量以内であるかどうかを判断する。具体的には、コントローラボード61は、ギャップ計測センサ42にて計測されたギャップによるギャップ量が、表1に示した基準許容ギャップ量と許容ギャップ加算量とを加算した量以内であるかどうかを判断する(ステップS15)。
【0063】
ギャップ計測センサ42にて計測されたギャップによるギャップ量が、表1に示した基準許容ギャップ量と許容ギャップ加算量とを加算した量以内ではない場合は、コントローラボード61は、許容ギャップ量の設定に失敗した旨を記録する(ステップS16)。またその際、コントローラボード61は、許容ギャップ量の設定に失敗した旨を操作部52に表示する。
【0064】
ギャップ計測センサ42にて計測されたギャップによるギャップ量が、表1に示した基準許容ギャップ量と許容ギャップ加算量とを加算した量以内である場合は、コントローラボード61は、警告と問い合わせを操作部52に表示する(ステップS17)。この場合、計測されたギャップによるギャップ量が表1に示した基準許容ギャップ量以内ではないことで、記録ヘッド12のノズル面と記録媒体の記録面とのギャップが大きすぎる領域が存在することになる。それにより、記録ヘッド12から吐出されたインクの着弾位置がずれて形成される画像に影響が出たり、着弾までの距離が遠いことでインクミストの発生量が多くなったりという不都合が生じる。そのため、コントローラボード61は、印刷された画像に異常が発生して印刷の精度が低下するリスクを操作部52に表示する。またその際に、そのようなリスクを許容するかどうかを操作部52に表示することで問い合わせる。
【0065】
そして、リスクを許容する旨が操作部52を介して指定された場合(ステップS18)、コントローラボード61は、表1に示した基準許容ギャップ量と許容ギャップ加算量とを加算した量を、印刷を許容する許容ギャップ量に設定する(ステップS19)。コントローラボード61は、設定した許容ギャップ量を記憶部に記憶する。
【0066】
一方、リスクを許容しない旨が操作部52を介して指定された場合は、ステップS16における処理に移行し、コントローラボード61は、許容ギャップ量の設定に失敗した旨を記録する。
【0067】
このようにして、コントローラボード61は、印刷を許容する許容ギャップ量を設定する。
【0068】
[印刷処理]
図17は、第1実施形態における印刷処理のフローを示す図である。
【0069】
上述した処理にて許容ギャップ量の設定に成功した場合は、コントローラボード61は、プラテンにセットされた記録媒体に対する印刷を行う。
【0070】
まず、プラテン30上に記録媒体がセットされた状態で、ギャップ計測センサ42が、記録媒体の記録面を走査し、記録ヘッド12と記録媒体の記録面との間のギャップを計測し、ギャップ量を算出する(ステップS21)。ギャップ量の算出は、ステップS12における処理と同様に、計測したギャップを用いて行う。このギャップ計測センサ42の走査は、コントローラボード61の制御によって行われる。なお、図12に示した処理から引き続き本印刷処理を行う場合は、ステップS21における処理を省略することも考えられる。また、印刷処理の直前にプリンタ100の設定が変更される可能性もあるため、印刷処理の直前に図12に示した処理を行うことが考えられる。
【0071】
ギャップ計測センサ42によってギャップ量が算出されると、コントローラボード61は、算出されたギャップ量が、ステップS14またはステップS19にて設定された許容ギャップ量以内であるかどうかを判断する(ステップS22)。
【0072】
算出されたギャップ量がステップS14またはステップS19にて設定された許容ギャップ量以内である場合は、コントローラボード61は、プラテン昇降機構32によってプラテンの高さを調整した後に印刷を実施する(ステップS23)。ギャップ計測センサ42は、上述したように、記録ヘッド12と記録媒体の記録面とのギャップを計測する。そのため、記録面の最大高さが記録ヘッド12に接することがなく、かつ、記録面の最小高さが、許容ギャップ量に応じて印刷を許容できる高さとなるように、コントローラボード61はプラテンの高さを調整する。なお、プラテンの高さを手動で調整してもよい。
【0073】
一方、算出されたギャップ量がステップS14またはステップS19にて設定された許容ギャップ量以内ではない場合は、コントローラボード61は、印刷を中止する(ステップS24)。その場合は、コントローラボード61が操作部52に警告を表示させることが好ましい。
【0074】
このように、印刷を許容するかどうかを判断するための許容ギャップ量を、帽子用のプラテンや靴用のプラテンがセットされているときは凸凹メディア用の許容ギャップ量に設定する。また、ノーマルプラテンがセットされている時はノーマルプラテン用の許容ギャップ量を設定する。すなわち、本実施形態においては、記録媒体に応じた許容ギャップ量を設定している。それにより、平面形状の記録媒体に印刷を行う場合に、許容ギャップ量をいたずらに広げることなく適切な判定をすることが可能となり、インクミスト発生やインク滴の着弾位置ずれを最小限にとどめることができる。その結果、記録媒体の種類によらずに記録ヘッドと記録媒体の記録面とのギャップによる印刷の精度の低下を抑制し、印刷品質を高くすることができる。
【0075】
また、本実施形態においては、記録媒体の種類に応じて用意されたプラテンの種類毎に基準許容ギャップ量が設定されており、プラテンの種類を示す情報を用いて記録媒体の種類を判別している。そのため、記録媒体の種類に応じたプラテンをプラテンセット部31にセットするだけで、上述した効果を得ることができる。
【0076】
〈第2実施形態〉
第1実施形態においては、記録媒体の種類に応じて用意されたプラテンの種類を示す情報を用いて記録媒体の種類を特定して判別しているが、記録媒体の種類そのものを示す情報を用いて記録媒体の種類を特定して判別してもよい。
【0077】
表2に示すように、本実施形態においては、記録媒体の種類毎に、記録ヘッド12と記録媒体との間にて印刷を許容するためのギャップ量が基準許容ギャップ量として設定されている。また、第1実施形態と同様に、許容ギャップ量を設定する際に使用する許容ギャップ加算量が設定されている。なお、表2に示す情報は、操作部52を介してプリンタ100本体に設定してもよいし、プリンタ100に接続されたパーソナルコンピュータなどの情報処理装置から送信してもよい。これらによって得られた情報は、コントローラボード61の記憶部内にテーブルとして記憶される。
【0078】
【表2】
【0079】
図18は、第2実施形態における許容ギャップ量の設定フローを示す図である。
【0080】
まず、許容ギャップ量を設定する記録媒体の種類を判別する(ステップS31)。この際、記録媒体の種類そのものを示す情報として、数値や文字列データを用いることが考えられる。また、記録媒体に対する印刷範囲を示す情報を用いて記録媒体の種類を判別してもよい。さらに、記録媒体の種類そのものを示す情報を印刷データに含ませてもよい。それにより、コントローラボード61は、許容ギャップ量を設定する記録媒体の種類を判別する。
【0081】
その後、図12に示したステップS12~S19における処理と同様の処理を行い(ステップS32~S39)、許容ギャップ量を設定する。
【0082】
なお、記録媒体の種類とプラテンの種類が一致するかどうかによって印刷の可否を判断することも有用である。その場合、第1実施形態にて示した方法によってプラテンの種類を判別し、本実施形態にて示した方法によって記録媒体の種類を判別することになる。例えば、ノーマルプラテンがプリンタにセットされた状態で記録媒体の種類がパーカーと判別されている場合は印刷するものの、記録媒体の種類が帽子と判別されている場合は印刷を停止して警告を表示することが考えられる。これにより、誤印刷を防ぐことができる。
【0083】
本実施形態においても、記録媒体に応じた許容ギャップ量を設定することになる。それにより、平面形状の記録媒体に印刷を行う場合に、許容ギャップ量をいたずらに広げることなく適切な判定をすることが可能となり、インクミスト発生やインク滴の着弾位置ずれを最小限にとどめることができる。
【0084】
また、記録媒体の種類そのものを示す情報を印刷データに含ませることで、記録媒体の種類そのものを示す情報を、操作部52を介して入力したり選択したりする手間を生じさせることがなくなる。
【0085】
〈第3実施形態〉
上述した実施形態において、ギャップ計測センサ42が計測したギャップによるギャップ量に応じて、記録ヘッド12からインクを吐出させる際の印字モードを設定することも考えられる。
【0086】
表3に示すように、本実施形態においては、ギャップ計測センサ42が計測したギャップによるギャップ量に応じて、記録ヘッド12からインクを吐出させる際の印字モードとなる吐出波形の強さとインクのサイズとが設定されている。ここで、吐出波形の強さは、記録ヘッド12からインクを吐出させるためにコントローラボード61から記録ヘッド12に印加する電圧値によって制御することができる。また、吐出波形の強さを強くすることで、記録媒体に着弾するインクのサイズを大きくすることができる。なお、表3に示す情報は、操作部52を介してプリンタ100本体に設定してもよいし、プリンタ100に接続されたパーソナルコンピュータなどの情報処理装置から送信してもよい。これらによって得られた情報は、コントローラボード61の記憶部内にテーブルとして記憶される。
【0087】
【表3】
【0088】
図19は、第3実施形態における許容ギャップ量の設定フローを示す図である。
【0089】
まず、図12に示したステップS11~S14における処理と同様の処理を行う(ステップS41~S44)。それにより、ギャップ計測センサ42にて計測されたギャップによるギャップ量が、表1に示した基準許容ギャップ量以内である場合は、コントローラボード61は、表1に示した基準許容ギャップ量を、印刷を許容する許容ギャップ量に設定する。
【0090】
次に、コントローラボード61は、表3に示した情報を参照し、記録ヘッド12からインクを吐出させる際の印字モードをギャップ通常に設定する(ステップS45)。表3に示したように、ギャップ通常として設定される印字モードにおいては、吐出波形の強さおよびインクのサイズを標準とする。
【0091】
一方、計測されたギャップによるギャップ量が、表1に示した基準許容ギャップ量以内ではない場合は、コントローラボード61は、ギャップ計測センサ42にて計測されたギャップによるギャップ量が所定のギャップ量以内であるかどうかを判断する。具体的には、コントローラボード61は、ギャップ計測センサ42にて計測されたギャップによるギャップ量が、表1に示した基準許容ギャップ量と許容ギャップ加算量とを加算した量以内であるかどうかを判断する(ステップS46)。
【0092】
ギャップ計測センサ42にて計測されたギャップによるギャップ量が、表1に示した基準許容ギャップ量と許容ギャップ加算量とを加算した量以内ではない場合は、コントローラボード61は、許容ギャップ量の設定に失敗した旨を記録する(ステップS47)。またその際、コントローラボード61は、許容ギャップ量の設定に失敗した旨を操作部52に表示する。
【0093】
一方、ギャップ計測センサ42にて計測されたギャップによるギャップ量が、表1に示した基準許容ギャップ量と許容ギャップ加算量とを加算した量以内である場合は、コントローラボード61は、許容ギャップ加算量を加算した量を許容ギャップ量に設定する。具体的には、コントローラボード61は、表1に示した基準許容ギャップ量と許容ギャップ加算量とを加算した量を、印刷を許容する許容ギャップ量に設定する(ステップS48)。コントローラボード61は、設定した許容ギャップ量を記憶部に記憶する。
【0094】
次に、コントローラボード61は、表3に示した情報を参照し、記録ヘッド12からインクを吐出させる際の印字モードをギャップ大に設定する(ステップS49)。表3に示したように、ギャップ大として設定される印字モードにおいては、吐出波形の強さを強くし、インクのサイズを大とする。なお、吐出波形の強さを強くすることは、記録ヘッド12からインクを吐出させるためにコントローラボード61から記録ヘッド12に印加する電圧値を、吐出波形の強さを標準とした場合と比べて高くすることで実現できる。また、インクのサイズを大きくすることは、吐出波形の強さを、インクのサイズを標準とした場合と比べて強くすることで実現できる。
【0095】
このようにして、コントローラボード61は、印刷を許容する許容ギャップ量を設定する。
【0096】
このように本実施形態においては、ギャップ計測センサ42にて計測されたギャップによるギャップ量に応じて、記録ヘッド12からインクを吐出させる際の印字モードとなる吐出波形の強さとインクのサイズとを設定している。具体的には、ギャップ計測センサ42にて計測されたギャップによるギャップ量が大きな場合に、記録ヘッド12からインクを吐出させる際の吐出波形の強さを強くしてインクのサイズを大きくしている。これにより、ギャップ計測センサ42にて計測されたギャップによるギャップ量が大きな場合であっても、記録媒体の記録ヘッド12との間のギャップが大きな領域にインクを比較的安定して着弾させることができ、印刷の精度の低下を抑制できる。
【0097】
〈第4実施形態〉
図20は、第4実施形態における許容ギャップ量の設定フローを示す図である。
【0098】
まず、図18における処理と同様に、許容ギャップ量を設定する記録媒体の種類を判別する(ステップS51)。
【0099】
その後、図19に示したステップS42~S49における処理と同様の処理を行い(ステップS52~S59)、許容ギャップ量を設定する。
【0100】
このように本実施形態においても、ギャップ計測センサ42にて計測されたギャップによるギャップ量に応じて、記録ヘッド12からインクを吐出させる際の印字モードとなる吐出波形の強さとインクのサイズとを設定している。これにより、ギャップ計測センサ42にて計測されたギャップによるギャップ量が大きな場合であっても、記録媒体の記録ヘッド12との間のギャップが大きな領域にインクを比較的安定して着弾させることができ、印刷の精度の低下を抑制できる。
【0101】
なお、上記各実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせなど、ここで示した構成に本発明を限定するものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0102】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
(付記1)
液滴を吐出する記録ヘッドと、
記録媒体を保持するプラテンと、
印刷データに応じて前記記録ヘッドから液滴を吐出させることで前記プラテンに保持された記録媒体に印刷を行う制御手段と、
前記記録ヘッドと前記プラテンに保持された記録媒体の記録面とのギャップを計測する計測手段と、を有し、
前記制御手段は、前記プラテンに保持された記録媒体の種類を特定可能な情報と前記計測手段にて計測されたギャップとに応じて、当該種類の記録媒体に対する印刷を許容する、前記記録ヘッドと前記記録媒体の記録面とのギャップの範囲を設定する、液体吐出装置。
(付記2)
前記プラテンは、前記記録媒体の種類に応じて用意されており、
前記制御手段は、前記プラテンの種類を示す情報と前記計測手段にて計測されたギャップとに応じて前記ギャップの範囲を設定する、
付記1に記載の液体吐出装置。
(付記3)
前記プラテンの種類を検知して前記制御手段に通知するプラテン検知手段を有し、
前記制御手段は、前記プラテン検知手段から通知されたプラテンの種類と前記計測手段にて計測されたギャップとに応じて前記ギャップの範囲を設定する、
付記2に記載の液体吐出装置。
(付記4)
前記制御手段は、前記記録媒体の種類そのものを示す情報と前記計測手段にて計測されたギャップとに応じて前記ギャップの範囲を設定する、
付記1に記載の液体吐出装置。
(付記5)
前記記録媒体の種類そのものを示す情報は、前記印刷データに含まれており、
前記制御手段は、前記印刷データに含まれた前記記録媒体の種類そのものを示す情報と前記計測手段にて計測されたギャップとに応じて前記ギャップの範囲を設定する、
付記4に記載の液体吐出装置。
(付記6)
前記制御手段は、前記記録媒体の種類を特定可能な情報と前記計測手段にて計測されたギャップとに応じて、前記記録ヘッドから液滴を吐出させる際の印字モードを設定する、
付記1乃至5のいずれかに記載の液体吐出装置。
(付記7)
前記計測手段は、指定されたルートで前記プラテン上を走査することで、前記記録ヘッドと前記プラテンに保持された記録媒体の記録面とのギャップを計測する、
付記1乃至6のいずれかに記載の液体吐出装置。
(付記8)
前記計測手段は、前記記録媒体の種類に応じて前記プラテン上を走査することで、前記記録ヘッドと前記プラテンに保持された記録媒体の記録面とのギャップを計測する、
付記1乃至7のいずれかに記載の液体吐出装置。
(付記9)
前記計測手段は、前記プラテンに保持された記録媒体に対して非接触にて、当該記録媒体の記録面と前記記録ヘッドとのギャップを計測する、
付記1乃至8のいずれかに記載の液体吐出装置。
(付記10)
液滴を吐出する記録ヘッドと、記録媒体を保持するプラテンと、印刷データに応じて前記記録ヘッドから液滴を吐出させることで前記プラテンに保持された記録媒体に印刷を行う制御手段と、を有する液体吐出装置にて、前記プラテンに保持された記録媒体に対する印刷を許容する、前記記録ヘッドと前記記録媒体の記録面とのギャップの範囲を前記記録媒体の種類に応じて設定するギャップ許容範囲設定方法であって、
前記記録ヘッドと前記プラテンに保持された記録媒体の記録面とのギャップを計測し、
前記記録媒体の種類を特定可能な情報と前記計測手段にて計測されたギャップとに応じて、当該種類の記録媒体に対する印刷を許容する、前記記録ヘッドと前記記録媒体の記録面とのギャップの範囲を設定する、ギャップ許容範囲設定方法。
【符号の説明】
【0103】
1,100 プリンタ
2 記録媒体
11 キャリッジ
12 記録ヘッド
13 インクカートリッジ
21,23 タイミングベルト
22a,22b ガイドロッド
24 ガイドレール
25 スライダ
26 エンコーダーシート
27 主走査モータ
30,130,230,330 プラテン
31 プラテンセット部
32 プラテン昇降機構
33 プラテンセット穴
34 ICチップ読み取り部
35 突起
41 高さ検知センサ
42 ギャップ計測センサ
51 電源ボタン
52 操作部
53 電源ユニット
61 コントローラボード
70 メンテナンスユニット
71 保湿キャップ
72 吸引キャップ
73 ワイパ
74 左空吐出受け
102 帽子
131 帽子セット部
202 袖
231 袖セット部
331 靴セット部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0104】
【特許文献1】特開2002-79668号公報
【特許文献2】特開2007-268743号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20