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特開2024-71341画像形成装置、画像形成方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071341
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240517BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117081
(22)【出願日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2022181821
(32)【優先日】2022-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽田 篤史
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB27
2C056EC08
2C056EC37
2C056EC42
2C056FA10
2C056HA58
(57)【要約】
【課題】ノズルごとに着弾のばらつきを補正することができる画像形成装置、画像形成方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】記録媒体に対して記録ヘッドからインクを吐出させて画像を形成する画像形成装置であって、印刷データを取得する取得部と、取得部により取得された印刷データから記録ヘッドにインクを吐出させるための吐出データに変換する変換部と、吐出データに対して、記録ヘッドの副走査方向に並ぶ複数のノズルで構成されたノズル列のノズルごとに、インクの吐出の態様を変更する補正マスクパターンを適用する補正部と、補正マスクパターンが適用された吐出データに基づいて、記録ヘッドのそれぞれのノズルから記録媒体に対して吐出させる吐出制御部と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して記録ヘッドからインクを吐出させて画像を形成する画像形成装置であって、
印刷データを取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記印刷データから前記記録ヘッドにインクを吐出させるための吐出データに変換する変換部と、
前記吐出データに対して、前記記録ヘッドの副走査方向に並ぶ複数のノズルで構成されたノズル列の該ノズルごとに、インクの吐出の態様を変更する補正マスクパターンを適用する補正部と、
前記補正マスクパターンが適用された前記吐出データに基づいて、前記記録ヘッドのそれぞれの前記ノズルから前記記録媒体に対して吐出させる吐出制御部と、
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記記録ヘッドの前記ノズル列の前記ノズルごとに、インクの吐出のタイミングを変更する前記補正マスクパターンを適用する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記記録ヘッドの前記ノズル列の前記ノズルごとに、インクの吐出のための前記記録ヘッドに印加する電圧の駆動波形を変更する前記補正マスクパターンを適用する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
操作入力に応じて前記補正マスクパターンを設定する設定部と、
前記設定部により設定された前記補正マスクパターンを記憶する記憶部と、
をさらに備え、
前記補正部は、前記記憶部に記憶された前記補正マスクパターンを前記吐出データに適用する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記補正部は、前記記録ヘッドから吐出されるインクの色ごとに異なる前記補正マスクパターンを適用する請求項1~4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドは、複数であり、
前記補正部は、前記記録ヘッドごとに異なる前記補正マスクパターンを適用する請求項1~4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記補正部は、前記記録ヘッドの前記ノズル列ごとに異なる前記補正マスクパターンを適用する請求項1~4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
記録媒体に対して記録ヘッドからインクを吐出させて画像を形成する画像形成方法であって、
印刷データを取得する取得ステップと、
取得した前記印刷データから前記記録ヘッドにインクを吐出させるための吐出データに変換する変換ステップと、
前記吐出データに対して、前記記録ヘッドの副走査方向に並ぶ複数のノズルで構成されたノズル列の該ノズルごとに、インクの吐出の態様を変更する補正マスクパターンを適用する補正ステップと、
前記補正マスクパターンが適用された前記吐出データに基づいて、前記記録ヘッドのそれぞれの前記ノズルから前記記録媒体に対して吐出させる吐出制御ステップと、
を有する画像形成方法。
【請求項9】
記録媒体に対して記録ヘッドからインクを吐出させて画像を形成する画像形成装置を制御するコンピュータに、
印刷データを取得する取得ステップと、
取得した前記印刷データから前記記録ヘッドにインクを吐出させるための吐出データに変換する変換ステップと、
前記吐出データに対して、前記記録ヘッドの副走査方向に並ぶ複数のノズルで構成されたノズル列の該ノズルごとに、インクの吐出の態様を変更する補正マスクパターンを適用する補正ステップと、
前記補正マスクパターンが適用された前記吐出データに基づいて、前記記録ヘッドのそれぞれの前記ノズルから前記記録媒体に対して吐出させる吐出制御ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出する複数のノズルが配列された記録ヘッドと、記録媒体とを相対移動させながら記録媒体上にインクを吐出し画像を形成するインクジェットプリンタが知られている。このようなインクジェットプリンタでは、記録ヘッドを主走査方向に移動させながらノズルから記録媒体上にインクを吐出する主走査動作と、記録ヘッドまたは記録媒体を副走査方向に移動させる副走査動作とを交互に繰り返し行い画像を形成する。この場合、インクジェットプリンタによって形成される印刷画像は、ノズル列からインクを吐出して形成された多数のドットから構成される。このため、記録媒体上におけるインクの着弾位置であるドットの形成位置が、所定の目標位置からずれている場合には、用紙等の記録媒体上に綺麗な印刷画像を描くことができない。そのため、記録媒体の搬送精度または記録ヘッドのノズル吐出特性等に起因する着弾ずれを補正する技術が知られている。
【0003】
このような着弾ずれを補正する技術として、搬送気流に基づく吐出タイミングの調整の要否判断、および、吐出周波数と着弾ずれ量とを関連付けたプロファイルデータから、吐出タイミングを制御する構成が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、着弾位置のずれの補正は、記録ヘッドのノズル列単位で行うため、ノズルごとのばらつきに対して対応することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ノズルごとに着弾のばらつきを補正することができる画像形成装置、画像形成方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、記録媒体に対して記録ヘッドからインクを吐出させて画像を形成する画像形成装置であって、印刷データを取得する取得部と、前記取得部により取得された前記印刷データから前記記録ヘッドにインクを吐出させるための吐出データに変換する変換部と、前記吐出データに対して、前記記録ヘッドの副走査方向に並ぶ複数のノズルで構成されたノズル列の該ノズルごとに、インクの吐出の態様を変更する補正マスクパターンを適用する補正部と、前記補正マスクパターンが適用された前記吐出データに基づいて、前記記録ヘッドのそれぞれの前記ノズルから前記記録媒体に対して吐出させる吐出制御部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ノズルごとに着弾のばらつきを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る画像形成装置の外観構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る画像形成装置のキャリッジの下面の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4図4は、従来の画像形成装置におけるインクの着弾位置を説明する図である。
図5図5は、従来の画像形成装置におけるインクの着弾位置のずれを補正する動作を説明する図である。
図6図6は、実施形態に係る画像形成装置の機能ブロックの構成の一例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る画像形成装置におけるインクの着弾位置のずれを補正する動作を説明する図である。
図8図8は、実施形態に係る画像形成装置においてインクの着弾位置のずれを補正するために用いる記録ヘッドの駆動波形の一例を示す図である。
図9図9は、実施形態に係る画像形成装置の全体動作の流れの一例を示すフローチャートである。
図10図10は、変形例1に係る画像形成装置におけるインクの着弾位置のずれを補正する動作を説明する図である。
図11図11は、変形例2に係る画像形成装置におけるインクの径のばらつきを補正する動作を説明する図である。
図12図12は、変形例2に係る画像形成装置においてインクの径のばらつきを補正するために用いる記録ヘッドの駆動波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照しながら、本発明に係る画像形成装置、画像形成方法およびプログラムの実施形態を詳細に説明する。また、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではなく、以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、およびいわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下の実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換、変更および組み合わせを行うことができる。
【0010】
また、コンピュータソフトウェアとは、コンピュータの動作に関するプログラム、その他コンピュータによる処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものをいう(以下、コンピュータソフトウェアは、ソフトウェアという)。アプリケーションソフトとは、ソフトウェアの分類のうち、特定の作業を行うために使用されるソフトウェアの総称である。一方、オペレーティングシステム(OS)とは、コンピュータを制御し、アプリケーションソフト等がコンピュータ資源を利用可能にするためのソフトウェアのことである。オペレーティングシステムは、入出力の制御、メモリやハードディスク等のハードウェアの管理、プロセスの管理といった、コンピュータの基本的な管理・制御を行っている。アプリケーションソフトウェアは、オペレーティングシステムが提供する機能を利用して動作する。プログラムとは、コンピュータに対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わせたものをいう。また、プログラムに準ずるものとは、コンピュータに対する直接の指令ではないためプログラムとは呼べないが、コンピュータの処理を規定するという点でプログラムに類似する性質を有するものをいう。例えば、データ構造(データ要素間の相互関係で表される、データの有する論理的構造)がプログラムに準ずるものに該当する。
【0011】
(画像形成装置の概略構成)
図1は、実施形態に係る画像形成装置の外観構成の一例を示す図である。図2は、実施形態に係る画像形成装置のキャリッジの下面の一例を示す図である。図1および図2を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置1の概略構成の一例について説明する。
【0012】
図1に示す画像形成装置1は、キャリッジに搭載された記録ヘッドによりインクを吐出して用紙等の記録媒体に画像を形成するシリアル方式の画像形成装置である。画像形成装置1は、図1に示すように、プラテン15と、側板18a、18bと、ガイドロッド19と、キャリッジ20と、ガイドレール29と、を備えている。
【0013】
プラテン15は、インクの吐出対象(印刷対象)となる記録媒体Pを載置する台部材である。
【0014】
左右の側板18a、18bは、双方に架け渡されたガイドロッド19と共にキャリッジ20を支持する板部材である。また、側板18a、18bは、キャリッジの主走査方向(図1に示すX方向)の移動を規制する役割を有する。
【0015】
ガイドロッド19は、側板18aと側板18bとの間に架け渡され、キャリッジ20を支持しつつ、キャリッジ20の主走査方向の移動をガイドする部材である。
【0016】
キャリッジ20は、内部にインクを吐出する記録ヘッドを搭載し、ガイドロッド19に沿って主走査方向に往復移動する部材である。また、キャリッジ20は、図示しない昇降機構により上下方向(図1に示すZ方向)にも移動可能となっている。キャリッジ20は、図2に示すように、記録ヘッド30Kと、記録ヘッド30Cと、記録ヘッド30Mと、記録ヘッド30Yと、を搭載している。記録ヘッド30K、30C、30M、30Yは、図2に示すように、主走査方向(X方向)に配列され、Z方向下向きにインクを吐出するように配置されている。
【0017】
記録ヘッド30Kは、K(ブラック)のインクを吐出する記録ヘッド31Kと、記録ヘッド32Kと、記録ヘッド33Kと、を含む。記録ヘッド31K、32K、33Kは、図2に示すように、それぞれ副走査方向の異なる位置に配置されており、それぞれ副走査方向に配列された複数のノズルを有する。
【0018】
記録ヘッド30Cは、C(シアン)のインクを吐出する記録ヘッド31Cと、記録ヘッド32Cと、記録ヘッド33Cと、を含む。記録ヘッド31C、32C、33Cは、図2に示すように、それぞれ副走査方向の異なる位置に配置されており、それぞれ副走査方向に配列された複数のノズルを有する。
【0019】
記録ヘッド30Mは、M(マゼンタ)のインクを吐出する記録ヘッド31Mと、記録ヘッド32Mと、記録ヘッド33Mと、を含む。記録ヘッド31M、32M、33Mは、図2に示すように、それぞれ副走査方向の異なる位置に配置されており、それぞれ副走査方向に配列された複数のノズルを有する。
【0020】
記録ヘッド30Yは、Y(イエロー)のインクを吐出する記録ヘッド31Yと、記録ヘッド32Yと、記録ヘッド33Yと、を含む。記録ヘッド31Y、32Y、33Yは、図2に示すように、それぞれ副走査方向の異なる位置に配置されており、それぞれ副走査方向に配列された複数のノズルを有する。
【0021】
なお、記録ヘッド30K、30C、30M、30Yは、それぞれ、副走査方向の異なる位置に配置された3つの記録ヘッドを備えるものとしているが、これに限定されるものではなく、1、2または4以上の記録ヘッドを備えるものとしてもよい。
【0022】
また、記録ヘッド30K、30C、30M、30Yについて、任意の記録ヘッドを示す場合、または総称する場合、単に「記録ヘッド30」と称する場合がある。また、記録ヘッド31K~33K、31C~33C、31M~33M、31Y~33Yについても、任意の記録ヘッドを示す場合、または総称する場合、単に「記録ヘッド30」と称する場合がある。
【0023】
また、記録ヘッド30から吐出されるインクは上述のようにCMYKのカラーインクに限定されるものではなく、例えば、透明インク、メタリック色インクまたは蛍光インク等を含むものとしてもよい。
【0024】
各記録ヘッド30は、圧力発生手段としての圧電素子を備え、駆動信号に応じて収縮し、収縮に伴う圧力変化によってインクを吐出する。
【0025】
ガイドレール29は、プラテン15の下部に副走査方向に延びるレール部材である。側板18a、18b、ガイドロッド19およびキャリッジ20は、一体となってガイドレール29に沿って副走査方向に往復移動する。
【0026】
なお、図1に示す画像形成装置1の例では、キャリッジ20が主走査方向および副走査方向に往復移動することにより、記録媒体Pに対してインクを吐出する構成を示したが、これに限定されるものではない。例えば、画像形成装置1では、キャリッジ20を主走査方向に移動させ、記録媒体Pを副走査方向に搬送する構成であってもよく、記録媒体Pを主走査方向および副走査方向に移動させる構成であってもよい。
【0027】
また、画像形成装置1は、キャリッジ20に基づくシリアル方式の画像形成装置であるものとしたが、これに限定されるものではなく、ワンパスで印刷を行うライン方式の画像形成装置であってもよい。
【0028】
(画像形成装置のハードウェア構成)
図3は、実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図3を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置1のハードウェア構成について説明する。
【0029】
図3に示すように、画像形成装置1は、制御部100と、操作パネル120と、センサ130と、ヘッドドライバ16と、主走査モータ17と、副走査モータ18と、を備えている。
【0030】
制御部100は、画像形成装置1の全体の動作および各種処理を制御するコントローラである。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、NVRAM(Non-Volatile RAM)104と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)105と、印刷制御部106と、主走査駆動部107と、I/O108と、通信I/F109と、副走査駆動部110と、を有する。
【0031】
CPU101は、画像形成装置1全体の制御を行う演算装置である。ROM102は、CPU101が実行するプログラム等の固定データを記憶する不揮発性記憶装置である。RAM103は、CPU101による演算処理のワークエリアとなる揮発性記憶装置である。また、RAM103は、画像データ等を一時的に記憶する。
【0032】
NVRAM104は、画像形成装置1の電源が遮断されている間もデータおよびプログラム等を保持する不揮発性記憶装置である。
【0033】
ASIC105は、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理、その他の画像形成装置1全体を制御するための入出力信号を処理する集積回路である。
【0034】
印刷制御部106は、CPU101による制御に従って、ヘッドドライバ16を介して記録ヘッド30の吐出動作を制御する制御回路である。印刷制御部106は、記録ヘッド30を駆動するためのデータをヘッドドライバ16へ転送する。例えば、印刷制御部106は、吐出データをシリアルデータで転送すると共に、吐出データの転送に要する転送クロック、ラッチ信号、制御信号等をヘッドドライバ16に出力する。ヘッドドライバ16は、シリアルに入力される記録ヘッド30の一行分に相当する吐出データに基づいて、印刷制御部106から受信した吐出データに対応する電圧の駆動波形を構成する駆動パルスを、記録ヘッド30の圧力発生手段に対して選択的に印加することにより、記録ヘッド30を駆動してインクを吐出させる。
【0035】
主走査駆動部107は、CPU101による制御に従って、主走査モータ17の動作を制御する駆動回路である。主走査モータ17は、主走査駆動部107による制御に従って、キャリッジ20を主走査方向に移動させるモータ装置である。
【0036】
I/O108は、センサ130からの情報を取得し、画像形成装置1の各部の制御に利用される情報を抽出するためのインターフェース回路である。センサ130は、例えば、記録媒体Pに形成された印刷画像を読み取る光学センサ、および印字中のヒータの温度を検出する温度センサ等である。
【0037】
通信I/F109は、PC(Personal Computer)2との間でデータ(印刷データ等)および信号の送受信を行うインターフェース回路である。具体的には、通信I/F109は、PC2からケーブルまたはネットワークを介してデータや信号の送受信を行う。通信I/F109がネットワークを介してPC2と通信する場合、例えば、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)に準拠しているものとすればよい。通信I/F109の受信バッファに格納された印刷データは、CPU101によって解析され、ASIC105によって画像処理およびデータの並び替え処理等が行われ、印刷制御部106によって吐出データとしてヘッドドライバ16へ転送される。
【0038】
副走査駆動部110は、CPU101による制御に従って、副走査モータ18の回転駆動を制御する駆動回路である。副走査モータ18は、副走査駆動部110による制御に従って、回転することにより、側板18a、18b、ガイドロッド19およびキャリッジ20を一体としてガイドレール29に沿って往復移動させるモータ装置である。
【0039】
操作パネル120は、各種情報の入力および出力を行うタッチパネル等の装置である。
【0040】
なお、図3に示した画像形成装置1のハードウェア構成は一例を示すものであり、図3に示した構成要素を全て含む必要はなく、または、その他の構成要素を含むものとしてもよい。
【0041】
(従来技術の問題点について)
図4は、従来の画像形成装置におけるインクの着弾位置を説明する図である。図5は、従来の画像形成装置におけるインクの着弾位置のずれを補正する動作を説明する図である。図4および図5を参照しながら、従来技術の問題点について説明する。
【0042】
まず、図4を参照しながら、記録ヘッド30に構成されたノズルから吐出されたインクの着弾位置について説明する。図4(a)に示すように、記録ヘッド30は、上述したように、複数のノズルNが副走査方向に配列されたノズル列を有する。ここで、各ノズルNからインクが吐出され、記録媒体P上に着弾して形成されたものをドットDと称して説明する。
【0043】
記録ヘッド30のノズル列から吐出されたインクにより形成される各ドットDは、ノズル列のすべてのノズルNから同時にインクを吐出させる場合、理想的には図4(b)に示すように、副走査方向に一直線に並んで形成されるはずである。しかし、実際には、ノズル列の各ノズルNの吐出特性または形成位置等のばらつきに起因して、ノズル列のすべてのノズルNから同時にインクを吐出させた場合、図4(c)に示すように、各ドットDが一直線上に並ばずに着弾位置のずれが生じる。このように、インクの着弾位置にずれが生じると、例えば、細かい文字または細線等がぼやけてしまい、記録媒体Pに形成された印刷画像の画像品質のレベルが低下してしまう。
【0044】
また、例えば、図5(a)に示すように、記録ヘッド30として、異なるインクを吐出する記録ヘッド30_1、30_2、30_3、30_4が構成されている場合に、それぞれから吐出されたインクで形成されるドットをドットD1、D2、D3、D4とする。この場合、従来技術のように、インクの着弾位置の補正を、記録ヘッド30_1、30_2、30_3、30_4それぞれのノズル列単位で行うものとすると、図5(b)に示すように、各ドットが一直線に並ばない状態のまま主走査方向での位置調整ができるに留まり、ノズル単位で着弾位置のずれを補正することができないとい問題がある。
【0045】
以下、上記の問題に対応するために、ノズル単位で着弾位置のずれを補正することができる画像形成装置1の詳細な機能について説明する。
【0046】
(画像形成装置の機能ブロックの構成および動作)
図6は、実施形態に係る画像形成装置の機能ブロックの構成の一例を示す図である。図7は、実施形態に係る画像形成装置におけるインクの着弾位置のずれを補正する動作を説明する図である。図8は、実施形態に係る画像形成装置においてインクの着弾位置のずれを補正するために用いる記録ヘッドの駆動波形の一例を示す図である。図6図8を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置1の機能ブロックの構成および動作について説明する。
【0047】
図6に示すように、画像形成装置1は、データ取得部201(取得部)と、画像処理部202(変換部の一例)と、補正部203と、吐出制御部204と、移動制御部205と、設定部206と、記憶部207と、を有する。
【0048】
データ取得部201は、PC2から通信I/F109を介して、印刷データを取得する機能部である。
【0049】
画像処理部202は、データ取得部201により取得された印刷データに対して、CMYK変換処理、減階調処理、画像変換処理等の所定のデータ処理を行い、記録媒体Pにインクを吐出して画像形成するための吐出データを生成する機能部である。
【0050】
補正部203は、画像処理部202により生成された吐出データに対して、後述する補正マスクパターンを適用し、記録ヘッド30のノズル列のノズルごとにインクの吐出タイミングを調整してインクの着弾位置を補正する機能部である。この場合、補正部203は、記憶部207に記憶された補正マスクパターンを参照し、当該補正マスクパターンを吐出データに適用する。
【0051】
ここで、補正部203の動作の詳細について説明する。図7(a)に示すように、記録ヘッド30は、上述したように、複数のノズルNが副走査方向に配列されたノズル列を有する。ここで、各ノズルNからインクが吐出され、記録媒体P上に着弾して形成されたものをドットDと称して説明する。図7(b)に、吐出データに適用する通常のマスクパターンMP1を示している。ここでは、説明を簡潔にするため、ノズル列のノズル数が4つ(ノズルN1~N4)であり、吐出データの主走査方向の画素数(ドット数)が4であるものとして説明する。したがって、マスクパターンMP1は、図7(b)に示すように、4×4のマトリクスとし、各行はそれぞれノズルN1~N4に対応し、各列はインクの吐出順を示している。このマスクパターンMP1の各要素の値は、図7(c)に示すマスクデータで示されるように、0(吐出なし)または1(吐出あり)の2値で構成されている。このマスクパターンMP1を吐出データに適用することによって、マスクパターンMP1の1(吐出あり)に対応する吐出データの画素値に従って、インクが吐出され、0(吐出なし)に対応する吐出データの画素値についてはインクが吐出されないことになる。すなわち、マスクパターンMP1を吐出データに適用することによって、単に吐出するか否かについて制御されるに留まり、その結果、記録ヘッド30のノズル列の各ノズルNについて吐出特性または形成位置等のばらつきが存在すると、図7(d)に示すように、記録ヘッド30のノズル列の各ノズルNから同じタイミングで吐出されたインクのドットDが、副走査方向に一直線上に並ばずに着弾位置のずれが生じる。図7(d)に示す例では、ノズルN2から吐出されるインクのドットDがノズルN1と比較して少し早いタイミングで吐出がされているため、着弾位置が少し先行しており、ノズルN4から吐出されるインクのドットDがノズルN1と比較して早いタイミングで吐出がされているため、着弾位置が先行している。
【0052】
一方、本実施形態では、上述のマスクパターンMP1の代わりに、図7(e)に示す補正マスクパターンMPを用いる。補正マスクパターンMPは、図7(e)に示すように、4×4のマトリクスとし、各行はそれぞれノズルN1~N4に対応し、各列はインクの吐出順を示している。本実施形態では、この補正マスクパターンMPの各要素の値を、多値化して2ビットの値としている。すなわち、補正マスクパターンMPの各要素の値は、図7(f)に示すマスクデータで示されるように、00(吐出なし)、01(駆動波形(1)(遅延0ms))、10(行動波形(2)(遅延1ms))、11(駆動波形(3)(遅延2ms))の4値で構成されている。
【0053】
補正部203は、当該補正マスクパターンMPを吐出データに適用する。これによって、後述するように、吐出制御部204は、吐出データの画素値に対応するインクを、当該画素値に対応する補正マスクパターンMPの要素の値に従って吐出する。すなわち、吐出制御部204は、当該要素の値が01(駆動波形(1)(遅延0ms))の場合、図8に示すように、遅延のない駆動波形によってインクを吐出する。また、吐出制御部204は、当該要素の値が10(駆動波形(2)(遅延1ms))の場合、図8に示すように、1[ms]だけ遅延したタイミングの駆動波形によってインクを吐出する。また、吐出制御部204は、当該要素の値が11(駆動波形(3)(遅延2ms))の場合、図8に示すように、2[ms]だけ遅延したタイミングの駆動波形によってインクを吐出する。また、吐出制御部204は、当該要素の値が00(吐出なし)の場合には、インクを吐出しない。このように、補正部203により補正マスクパターンMPが吐出データに適用されることによって、記録ヘッド30のノズル列の各ノズルNについて吐出特性または形成位置等のばらつきに対する補正が可能となり、図7(g)に示すように、記録ヘッド30のノズル列の各ノズルNから同じタイミングで吐出されたインクのドットDが、副走査方向に一直線上に並び、ノズルごとに着弾位置のずれを補正することができる。具体的には、補正後においては、図7(g)に示すように、ノズルN2によるインクの吐出のタイミングを1[ms]だけ遅延させ、ノズルN4によるインクの吐出のタイミングを2[ms]だけ遅延させた結果、各ノズルから同じタイミングで吐出されたインクのドットDが、副走査方向に一直線上に並んでいる。
【0054】
なお、図7(e)に示した補正マスクパターンの例では、各要素の値を多値化するために2ビットの値としているが、これに限定されるものではなく、3ビット以上の値とすることによって、さらに細かい種類の駆動波形を適用することができる。
【0055】
また、上述では補正マスクパターンの要素の値によって、図8に示すように、駆動波形に遅延を持たせることにより、インクの吐出の態様の変更の一例としてインクの吐出のタイミングを調整するものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、補正マスクパターンの要素の値によって、インクの吐出の態様の変更の一例として記録ヘッド30に印加する電圧の駆動波形の形状を変えるものとしてもよい。これによって、例えば、記録ヘッド30に形成されたノズル径のばらつき等に起因するインク滴の径のばらつきを補正することができる。また、補正マスクパターンの要素の値によって、インクの吐出の態様の変更の一例として、インクの吐出のタイミングと、駆動波形の形状との双方を調整できるようにしてもよい。
【0056】
図6に戻って、説明を続ける。
【0057】
吐出制御部204は、補正部203により補正マスクパターンが適用された吐出データに基づいて、印刷制御部106を介して、記録ヘッド30の各ノズルから記録媒体Pに対してインクを吐出させる機能部である。すなわち、吐出制御部204は、上述したように、吐出データの画素値に対応するインクを、当該画素値に対応する補正マスクパターンの要素の値に従って吐出させる。
【0058】
移動制御部205は、吐出データに基づいて、主走査駆動部107および副走査駆動部110を介して、キャリッジ20の主走査方向および副走査方向の移動を制御する機能部である。
【0059】
設定部206は、操作パネル120に対する操作、またはPC2に対する操作を介して、補正マスクパターンの各要素の値を設定する機能部である。設定部206は、設定した補正マスクパターンを、記憶部207に記憶させる。ここで、記録ヘッド30のノズル列の各ノズルから吐出されたインクの着弾位置のずれ(主走査方向のずれ)については、例えば、事前にずれ確認用のチャートを印刷して確認することによって得るものとしてもよく、または、当該印刷したチャートを読み取る読取装置を画像形成装置1が備えているものとし、当該読取装置により読み取られた読取データに基づいてどれだけ着弾位置のずれがあるのかを自動的に得るものとしてもよい。そして、得られた着弾位置のずれから各ドットに対応させるマスクデータを決定し、設定部206により補正マスクパターンが設定されるものとすればよい。なお、設定部206は、上述の着弾位置のずれを示す読取データから、自動で補正マスクパターンを設定するものとしてもよい。
【0060】
記憶部207は、設定部206により設定された補正マスクパターンを記憶する機能部である。記憶部207は、図3に示したRAM103またはNVRAM104によって実現される。
【0061】
上述のデータ取得部201、画像処理部202、補正部203、吐出制御部204、移動制御部205および設定部206は、例えば、図3に示したCPU101によりプログラムが実行されることによって実現される。なお、これらの機能部の一部または全部は、ソフトウェアであるプログラムではなく、FPGAまたはASIC等のハードウェア回路(集積回路)によって実現されてもよい。
【0062】
なお、図6に示す画像形成装置1の各機能部は、機能を概念的に示したものであって、このような構成に限定されるものではない。例えば、図6に示す画像形成装置1で独立した機能部として図示した複数の機能部を、1つの機能部として構成してもよい。一方、図6に示す画像形成装置1で1つの機能部が有する機能を複数に分割し、複数の機能部として構成するものとしてもよい。
【0063】
(画像形成装置の全体動作の流れ)
図9は、実施形態に係る画像形成装置の全体動作の流れの一例を示すフローチャートである。図9を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置1の全体動作の流れについて説明する。
【0064】
<ステップS11>
画像形成装置1の設定部206は、操作パネル120に対する操作、またはPC2に対する操作を介して、補正マスクパターンの各要素の値を設定し、当該補正マスクパターンを記憶部207に記憶させる。そして、ステップS12へ移行する。
【0065】
<ステップS12>
画像形成装置1のデータ取得部201は、PC2から通信I/F109を介して、印刷データを取得する。そして、ステップS13へ移行する。
【0066】
<ステップS13>
画像形成装置1の画像処理部202は、データ取得部201により取得された印刷データに対して、CMYK変換処理、減階調処理、画像変換処理等の所定のデータ処理を行い、記録媒体Pにインクを吐出して画像形成するための吐出データを生成する。そして、ステップS14へ移行する。
【0067】
<ステップS14>
画像形成装置1の補正部203は、画像処理部202により生成された吐出データに対して、記憶部207に記憶された補正マスクパターンを適用する。そして、ステップS15へ移行する。
【0068】
<ステップS15>
画像形成装置1の吐出制御部204は、補正部203により補正マスクパターンが適用された吐出データに基づいて、印刷制御部106を介して、記録ヘッド30の各ノズルから記録媒体Pに対してインクを吐出させて印刷処理を行う。この場合、画像形成装置1の移動制御部205は、吐出データに基づいて、主走査駆動部107および副走査駆動部110を介して、キャリッジ20の主走査方向および副走査方向の移動を制御する。すなわち、吐出制御部204および移動制御部205は、吐出データに基づいて、互いに協調しながら動作する。これによって、記録ヘッド30のノズル列のノズルごとにインクの吐出タイミングが調整されインクの着弾位置が補正される。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る画像形成装置1では、データ取得部201は、印刷データを取得し、画像処理部202は、データ取得部201により取得された印刷データから記録ヘッド30にインクを吐出させるための吐出データに変換し、補正部203は、吐出データに対して、記録ヘッド30の副走査方向に並ぶ複数のノズルで構成されたノズル列の当該ノズルごとに、インクの吐出の態様を変更する補正マスクパターンを適用し、吐出制御部204は、補正マスクパターンが適用された吐出データに基づいて、記録ヘッド30のそれぞれのノズルから記録媒体Pに対して吐出させるものとしている。これによって、記録ヘッド30のノズル列の各ノズルNから同じタイミングで吐出されたインクのドットDが、副走査方向に一直線上に並び、ノズルごとに着弾のばらつきを補正することができる。
【0070】
また、本実施形態に係る画像形成装置1では、補正部203は、記録ヘッド30のノズル列のノズルごとに、インクの吐出のタイミングを変更する補正マスクパターンを適用することもできる。これによって、記録ヘッド30のノズル列の各ノズルについて吐出特性または形成位置等のばらつきに対する補正が可能となる。
【0071】
また、本実施形態に係る画像形成装置1では、補正部203は、記録ヘッド30のノズル列のノズルごとに、インクの吐出のための記録ヘッド30に印加する電圧の駆動波形を変更する補正マスクパターンを適用することもできる。これによって、記録ヘッド30に形成されたノズル径のばらつき等に起因するインク滴の径のばらつきを補正することができる。
【0072】
(変形例1)
変形例1に係る画像形成装置1について、本実施形態に係る画像形成装置1と相違する点を中心に説明する。なお、本変形例に係る画像形成装置1の全体構成、ハードウェア構成および機能ブロックの構成は、上述の実施形態で説明した構成と同様である。
【0073】
図10は、変形例1に係る画像形成装置におけるインクの着弾位置のずれを補正する動作を説明する図である。図10を参照しながら、本変形例に係る画像形成装置1におけるインクの着弾位置のずれを補正する動作について説明する。
【0074】
本変形例に係る画像形成装置1は、例えば、図10(a)に示すように、キャリッジ20に搭載されたカラーAのインクを吐出する記録ヘッド30Aと、カラーBのインクを吐出する記録ヘッド30Bとを含むものとする。記録ヘッド30Aは、複数のノズルNAが副走査方向に配列されたノズル列を有する。記録ヘッド30Bは、複数のノズルNBが副走査方向に配列されたノズル列を有する。ここで、各ノズルNA、各ノズルNBからインクが吐出され、記録媒体P上に着弾して形成されたものを、それぞれドットDA、ドットDBと称して説明する。
【0075】
本変形例では、画像形成装置1は、カラーAのインクを吐出する記録ヘッド30Aに対して図10(b)に示す補正マスクパターン、カラーBのインクを吐出する記録ヘッド30Bに対して図10(e)に示す補正マスクパターンを用いる。図10(b)に示す補正マスクパターンは、4×4のマトリクスとし、各行はそれぞれノズルNA1~NA4に対応し、各列はインクの吐出順を示している。図10(e)に示す補正マスクパターンは、4×4のマトリクスとし、各行はそれぞれノズルNB1~NB4に対応し、各列はインクの吐出順を示している。本変形例においても、一例として、これらの補正マスクパターンの各要素の値を、多値化して2ビットの値としている。すなわち、それぞれの補正マスクパターンの各要素の値は、図10(c)に示すマスクデータで示されるように、00(吐出なし)、01(駆動波形(1)(遅延0ms))、10(行動波形(2)(遅延1ms))、11(駆動波形(3)(遅延2ms))の4値で構成されている。
【0076】
補正部203は、吐出データのうち記録ヘッド30Aに対応する部分に、図10(b)に示す補正マスクパターンを適用し、吐出データのうち記録ヘッド30Bに対応する部分に、図10(e)に示す補正マスクパターンを適用する。これによって、吐出制御部204は、吐出データの画素値に対応するインクを、当該画素値に対応する補正マスクパターンの要素の値に従って吐出する。すなわち、吐出制御部204は、当該要素の値が01(駆動波形(1)(遅延0ms))の場合、上述の図8に示したように、遅延のない駆動波形によってインクを吐出する。また、吐出制御部204は、当該要素の値が10(行動波形(2)(遅延1ms))の場合、上述の図8に示したように、1[ms]だけ遅延したタイミングの駆動波形によってインクを吐出する。また、吐出制御部204は、当該要素の値が11(駆動波形(3)(遅延2ms))の場合、上述の図8に示したように、2[ms]だけ遅延したタイミングの駆動波形によってインクを吐出する。また、吐出制御部204は、当該要素の値が00(吐出なし)の場合には、インクを吐出しない。このように、補正部203により、インクの色ごとに異なる補正マスクパターンが吐出データに適用されることによって、記録ヘッド30A、30Bそれぞれのノズル列の各ノズルについて吐出特性または形成位置等のばらつきに対する補正が可能となり、図10(d)および図10(f)に示すように、記録ヘッド30A、30Bそれぞれにおいて、ノズル列の各ノズルNから同じタイミングで吐出されたインクのドットDA、DBが、副走査方向に一直線上に並び、それぞれのインクの色においてノズルごとに着弾位置のずれを補正することができる。これによって、マルチカラーでの着弾精度が向上する。
【0077】
なお、インクの色ごとに異なる補正マスクパターンを適用することに限定されるものではなく、記録ヘッド30ごとに、または記録ヘッド30のノズル列ごとに異なる補正マスクパターンを適用するものとしてもよい。
【0078】
(変形例2)
変形例2に係る画像形成装置1について、本実施形態に係る画像形成装置1と相違する点を中心に説明する。なお、本変形例に係る画像形成装置1の全体構成、ハードウェア構成および機能ブロックの構成は、上述の実施形態で説明した構成と同様である。
【0079】
図11は、変形例2に係る画像形成装置におけるインクの径のばらつきを補正する動作を説明する図である。図12は、変形例2に係る画像形成装置においてインクの径のばらつきを補正するために用いる記録ヘッドの駆動波形の一例を示す図である。図11および図12を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置1の補正部203の動作の詳細について説明する。
【0080】
図11(a)に示すように、記録ヘッド30は、複数のノズルNが副走査方向に配列されたノズル列を有する。図11(b)に、吐出データに適用する通常のマスクパターンMP1を示している。ここでは、説明を簡潔にするため、ノズル列のノズル数が4つ(ノズルN1~N4)であり、吐出データの主走査方向の画素数(ドット数)が4であるものとして説明する。したがって、マスクパターンMP1は、図11(b)に示すように、4×4のマトリクスとし、各行はそれぞれノズルN1~N4に対応し、各列はインクの吐出順を示している。このマスクパターンMP1の各要素の値は、図11(c)に示すマスクデータで示されるように、0(吐出なし)または1(吐出あり)の2値で構成されている。このマスクパターンMP1を吐出データに適用することによって、マスクパターンMP1の1(吐出あり)に対応する吐出データの画素値に従って、インクが吐出され、0(吐出なし)に対応する吐出データの画素値についてはインクが吐出されないことになる。すなわち、マスクパターンMP1を吐出データに適用することによって、単に吐出するか否かについて制御されるに留まり、その結果、記録ヘッド30のノズル列の各ノズルNについてノズル径等のばらつきが存在すると、図11(d)に示すように、記録ヘッド30のノズル列の各ノズルNから同じタイミングで吐出されたインクのドットDの径にばらつきが生じる。図11(d)に示す例では、ノズルN2から吐出されるインクのドットDの径がノズルN1、N3から吐出されるインクのドットDの径より大きく、ノズルN4から吐出されるインクのドットDの径がノズルN1、N3から吐出されるインクのドットDの径より小さくなっている。
【0081】
一方、本変形例では、上述のマスクパターンMP1の代わりに、図11(e)に示す補正マスクパターンMPaを用いる。補正マスクパターンMPaは、図11(e)に示すように、4×4のマトリクスとし、各行はそれぞれノズルN1~N4に対応し、各列はインクの吐出順を示している。本変形例では、この補正マスクパターンMPaの各要素の値を、多値化して2ビットの値としている。すなわち、補正マスクパターンMPaの各要素の値は、図11(f)にマスクデータで示されるように、00(駆動波形なし(吐出なし))、01(駆動波形(1)(ドット径:中))、10(駆動波形(2)(ドット径:小))、11(駆動波形(3)(ドット径:大))の4値で構成されている。
【0082】
補正部203は、当該補正マスクパターンMPaを吐出データに適用する。これによって、吐出制御部204は、吐出データの画素値に対応するインクを、当該画素値に対応する補正マスクパターンMPaの要素の値に従って吐出する。すなわち、吐出制御部204は、当該要素の値が01(駆動波形(1)(ドット径:中))の場合、図12に示すように、ドット径が中となる駆動波形によってインクを吐出する。また、吐出制御部204は、当該要素の値が10(駆動波形(2)(ドット径:小))の場合、図12に示すように、ドット径が小となる駆動波形によってインクを吐出する。また、吐出制御部204は、当該要素の値が11(駆動波形(3)(ドット径:大))の場合、図12に示すように、ドット径が大となる駆動波形によってインクを吐出する。また、吐出制御部204は、当該要素の値が00(駆動波形なし(吐出なし))の場合には、インクを吐出しない。このように、補正部203により補正マスクパターンMPaが吐出データに適用されることによって、記録ヘッド30のノズル列の各ノズルNについてノズル径等のばらつきに対する補正が可能となり、図11(g)に示すように、記録ヘッド30のノズル列の各ノズルNから同じ吐出量で吐出されたインクのドットDが、副走査方向に一直線上に並び、ノズルごとにインクのドットDの径のばらつきを補正することができる。具体的には、補正後においては、図11(g)に示すように、ノズルN2によるインクのドット径が小さくなるように吐出させ、ノズルN4によるインクのドット径が大きくなるように吐出させた結果、各ノズルから同じ吐出量で吐出されたインクのドットDの径が、均一の大きさになっている。
【0083】
なお、図11(e)に示した補正マスクパターンの例では、各要素の値を多値化するために2ビットの値としているが、これに限定されるものではなく、3ビット以上の値とすることによって、さらに細かい種類の駆動波形を適用することができる。
【0084】
以上のように、本変形例に係る画像形成装置1では、補正部203は、記録ヘッド30のノズル列のノズルごとに、インクの吐出のための記録ヘッド30に印加する電圧の駆動波形を変更する補正マスクパターンを適用することもできる。これによって、記録ヘッド30に形成されたノズル径のばらつき等に起因するインクのドットの径のばらつきを補正することができる。
【0085】
なお、補正マスクパターンの要素の値によって、インクの吐出の態様の変更の一例として、上述の実施形態の図7および図8で説明したインクの吐出のタイミングと、本変形例のインクのドットの径との双方を調整できるようにしてもよい。
【0086】
なお、上述の実施形態および各変形例において、画像形成装置1およびPC2の機能の少なくともいずれかがプログラムの実行によって実現される場合、そのプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。また、上述の実施形態および各変形例において、画像形成装置1およびPC2で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Compact Disk-Recordable)、またはDVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。また、上述の実施形態および各変形例において、画像形成装置1およびPC2で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上述の実施形態および各変形例において、画像形成装置1およびPC2で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。また、上述の実施形態および各変形例において、画像形成装置1およびPC2で実行されるプログラムは、上述した各機能部のうち少なくともいずれかを含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPUが上述の記憶装置からプログラムを読み出して実行することにより、上述の各機能部が主記憶装置上にロードされて生成されるようになっている。
【0087】
本発明の態様は、以下の通りである。
<1>記録媒体に対して記録ヘッドからインクを吐出させて画像を形成する画像形成装置であって、
印刷データを取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記印刷データから前記記録ヘッドにインクを吐出させるための吐出データに変換する変換部と、
前記吐出データに対して、前記記録ヘッドの副走査方向に並ぶ複数のノズルで構成されたノズル列の該ノズルごとに、インクの吐出の態様を変更する補正マスクパターンを適用する補正部と、
前記補正マスクパターンが適用された前記吐出データに基づいて、前記記録ヘッドのそれぞれの前記ノズルから前記記録媒体に対して吐出させる吐出制御部と、
を備えた画像形成装置である。
<2>前記補正部は、前記記録ヘッドの前記ノズル列の前記ノズルごとに、インクの吐出のタイミングを変更する前記補正マスクパターンを適用する前記<1>に記載の画像形成装置である。
<3>前記補正部は、前記記録ヘッドの前記ノズル列の前記ノズルごとに、インクの吐出のための前記記録ヘッドに印加する電圧の駆動波形を変更する前記補正マスクパターンを適用する前記<1>に記載の画像形成装置である。
<4>操作入力に応じて前記補正マスクパターンを設定する設定部と、
前記設定部により設定された前記補正マスクパターンを記憶する記憶部と、
をさらに備え、
前記補正部は、前記記憶部に記憶された前記補正マスクパターンを前記吐出データに適用する前記<1>~<3>のいずれか一項に記載の画像形成装置である。
<5>前記補正部は、前記記録ヘッドから吐出されるインクの色ごとに異なる前記補正マスクパターンを適用する前記<1>~<4>のいずれか一項に記載の画像形成装置である。
<6>前記記録ヘッドは、複数であり、
前記補正部は、前記記録ヘッドごとに異なる前記補正マスクパターンを適用する前記<1>~<4>のいずれか一項に記載の画像形成装置である。
<7>前記補正部は、前記記録ヘッドの前記ノズル列ごとに異なる前記補正マスクパターンを適用する前記<1>~<4>のいずれか一項に記載の画像形成装置である。
<8>記録媒体に対して記録ヘッドからインクを吐出させて画像を形成する画像形成方法であって、
印刷データを取得する取得ステップと、
取得した前記印刷データから前記記録ヘッドにインクを吐出させるための吐出データに変換する変換ステップと、
前記吐出データに対して、前記記録ヘッドの副走査方向に並ぶ複数のノズルで構成されたノズル列の該ノズルごとに、インクの吐出の態様を変更する補正マスクパターンを適用する補正ステップと、
前記補正マスクパターンが適用された前記吐出データに基づいて、前記記録ヘッドのそれぞれの前記ノズルから前記記録媒体に対して吐出させる吐出制御ステップと、
を有する画像形成方法である。
<9>記録媒体に対して記録ヘッドからインクを吐出させて画像を形成する画像形成装置を制御するコンピュータに、
印刷データを取得する取得ステップと、
取得した前記印刷データから前記記録ヘッドにインクを吐出させるための吐出データに変換する変換ステップと、
前記吐出データに対して、前記記録ヘッドの副走査方向に並ぶ複数のノズルで構成されたノズル列の該ノズルごとに、インクの吐出の態様を変更する補正マスクパターンを適用する補正ステップと、
前記補正マスクパターンが適用された前記吐出データに基づいて、前記記録ヘッドのそれぞれの前記ノズルから前記記録媒体に対して吐出させる吐出制御ステップと、
を実行させるためのプログラムである。
【符号の説明】
【0088】
1 画像形成装置
2 PC
15 プラテン
16 ヘッドドライバ
17 主走査モータ
18 副走査モータ
18a、18b 側板
19 ガイドロッド
20 キャリッジ
29 ガイドレール
30、30C、30K、30M、30Y 記録ヘッド
30A、30B 記録ヘッド
30_1~30_4 記録ヘッド
31C~33C 記録ヘッド
31M~33M 記録ヘッド
31K~33K 記録ヘッド
31Y~33Y 記録ヘッド
100 制御部
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 NVRAM
105 ASIC
106 印刷制御部
107 主走査駆動部
108 I/O
109 通信I/F
110 副走査駆動部
120 操作パネル
130 センサ
201 データ取得部
202 画像処理部
203 補正部
204 吐出制御部
205 移動制御部
206 設定部
207 記憶部
D、D1~D4 ドット
DA、DB ドット
MP、MPa 補正マスクパターン
MP1 マスクパターン
N、NA、NB ノズル
P 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0089】
【特許文献1】特開2014-000724号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12