(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071351
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187906
(22)【出願日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2022181763
(32)【優先日】2022-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】渋谷和人
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033BA11
2H033BA12
2H033BB03
2H033BB04
2H033BB12
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BB35
2H033BE00
2H033CA39
(57)【要約】
【課題】リバーマークの異常画像と横白スジの異常画像を抑制する。
【解決手段】固定押圧部材26及びローラ21、22、23、24に張架された無端ベルト25と、無端ベルト25を挟んで固定押圧部材26に対向配置された加圧回転体30と、を有し、加圧回転体30と固定押圧部材26との間にニップ部が形成された定着装置20において、ニップ部を形成する固定押圧部材26のニップ形成面は、用紙搬送方向D1に3つの湾曲部26a、26b、26cを有する、ことを特徴とする定着装置20により解決される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定押圧部材及びローラに張架された無端ベルトと、
前記無端ベルトを挟んで前記固定押圧部材に対向配置された加圧回転体と、を有し、
前記加圧回転体と前記固定押圧部材との間にニップ部が形成された定着装置において、
前記ニップ部を形成する前記固定押圧部材のニップ形成面は、用紙搬送方向に3つの湾曲部を有する、ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記3つの湾曲部は、用紙搬送方向上流から順に第一湾曲部、第二湾曲部、第三湾曲部であり、前記固定押圧部材は、前記第一湾曲部から前記第二湾曲部に向かって前記加圧回転体の回転中心から離れる方向に形成されており、前記第二湾曲部から前記第三湾曲部に向かって前記加圧回転体の回転中心に近づく方向に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記第三湾曲部の湾曲開始点がニップ部出口の位置に一致する、ことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記第一湾曲部の曲率半径は前記第二湾曲部の曲率半径より小さい、ことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項5】
前記第三湾曲部の曲率半径は前記第二湾曲部の曲率半径より小さい、ことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の定着装置を有する画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、固定押圧部材及びローラに張架された無端ベルトと、無端ベルトを挟んで固定押圧部材に対向配置された加圧回転体と、を有し、加圧回転体と固定押圧部材との間にニップ部が形成された定着装置(摺動定着装置)が知られている。
【0003】
このような定着装置において、ニップ部出口から分離補助部材位置の間における近接ニップ領域において用紙の波打ちが生じると、定着ベルトと記録媒体の接触部と非接触部が存在し、リバーマークと呼ばれるスジ状の凹凸が画像に発生する問題がある。例えば特許文献1に開示された摺動定着装置では、ニップ部内の下流側における面圧を高めることでグロスむら(光沢むら)などの異常画像が抑制される。ここで、グロスむら(光沢むら)はリバーマークに相当する。
【0004】
異常画像を抑制するための従来技術では、ニップ部内の用紙搬送方向下流側を高面圧化するために、固定押圧部材の用紙搬送方向下流側に加圧ローラを食い込ませているが、ニップ部内の用紙搬送方向下流側と中央部とで加圧ローラの潰れ量が異なる。そのため、ニップ部出口側において用紙を引っ張る方向に定着ベルトとシートの線速差(搬送速度差)が生じるため、用紙後端がニップ部中央を抜けた後、急激にシートの搬送速度が上がり、用紙後端のバリや炭酸カルシウム等の固着物が定着ベルト側に掻き取られる作用が働いていた。
【0005】
よって、掻き取られて定着ベルト側に付着した用紙後端のバリや固着物がベルト上を一周回り、定着時に画像に転写されることで、用紙搬送方向と直交する方向に横白スジなどの異常画像が発生してしまう問題があった。すなわち、リバーマークの異常画像の抑制と横白スジの異常画像の抑制が両立されなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、リバーマークの異常画像と横白スジの異常画像を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するため、固定押圧部材及びローラに張架された無端ベルトと、前記無端ベルトを挟んで前記固定押圧部材に対向配置された加圧回転体と、を有し、前記加圧回転体と前記固定押圧部材との間にニップ部が形成された定着装置において、前記ニップ部を形成する前記固定押圧部材のニップ形成面は、用紙搬送方向に3つの湾曲部を有する、ことを特徴とする定着装置を提案する。
【発明の効果】
【0008】
リバーマークの異常画像と横白スジの異常画像を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】
図1の画像形成装置に装着される定着装置の概略断面図である。
【
図3】
図2の定着装置における固定押圧部材の概略構成図である。
【
図4】従来の固定押圧部材(a)と
図3の固定押圧部材(b)を示す概略構成図である。
【
図5】
図4(a)の固定押圧部材と
図4(b)の固定押圧部材の面圧比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(画像形成装置)
以下に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置100の一実施形態を示す概略構成図である。
【0011】
画像形成装置100は、例えばプリンタ、複写機、ファックス等、トナーを用いて画像形成を行う装置であって、シート状体に形成されたトナー画像(未定着画像)を定着する定着装置を備える。本実施形態の画像形成装置100は、本発明の実施形態に係る定着装置20を備えたタンデム型中間転写式であり、給紙トレイ44を有する給紙テーブル200を下部に備える。
【0012】
以下の説明で「画像形成装置」とは、紙、OHPシート、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に現像剤やインクを付着させて画像形成を行う装置を意味する。また「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することをも意味する。
【0013】
また、「シート状体」とは紙(用紙)に限らず、OHPシート、布帛なども含み、現像剤やインクを付着させることができる媒体の意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものも含む。以下の実施形態ではシート状体を「用紙」として説明し、また各構成部品の説明にある寸法、材質、形状、その相対配置などは例示であって、特に特定的な記載がない限りこの発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
【0014】
画像形成装置100の内部には、複数の画像形成手段18Y,18M,18C,18Kが並設されたタンデム型中間転写式のタンデム型画像形成部11が設けられている。これらの符号に付けた添え字Y,M,C,Kは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色をそれぞれ示している。
【0015】
画像形成装置100には、中央付近に無端ベルト状の中間転写体(以下、中間転写ベルト)10が設けられている。この中間転写ベルト10は、複数のローラ(14、15a、15b、16a等)に掛け回されて支持され、
図1中の時計回りに回転搬送可能である。
【0016】
図1の構成例では、こうした支持ローラの1つである二次転写対向ローラ16aの中間転写ベルト10の回転方向下流側に、中間転写ベルト用のクリーニング装置17を設けている。クリーニング装置17は画像転写後に中間転写ベルト10上に残留する残留トナーを除去する。
【0017】
支持ローラ14と支持ローラ15a間に張り渡した中間転写ベルト10の上部には、その搬送方向に沿って、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4つの画像形成手段18Y,18M,18C,18Kが配置される。符号は以下、18(Y,M,C,K)のように略記する。
【0018】
こうして、4つの画像形成手段18(Y,M,C,K)が横に並べて配置され、上述のようにタンデム型画像形成部11を構成する。このタンデム型画像形成部11の各画像形成手段18(Y,M,C,K)はそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー画像を担持する像担持体としての感光体ドラム40(Y,M,C,K)を有している。
【0019】
タンデム型画像形成部11の上部には、2つの露光装置12が設けられている。各露光装置12はそれぞれ2つの画像形成手段(18Yと18M、18Cと18K)に対応して設けられている。各露光装置12は、例えば半導体レーザ、半導体レーザアレイ、あるいはマルチビーム光源等の光源装置と、カップリング光学系と、ポリゴンミラー等による共通の光偏向器と、2系統の走査結像光学系等で構成される光走査方式の露光装置である。
【0020】
各露光装置12は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報に応じて、各感光体ドラム40(Y,M,C,K)に露光を行い、静電潜像を形成する。また、各画像形成手段18(Y,M,C,K)の感光体ドラム40(Y,M,C,K)の周囲には、露光に先立って各感光体ドラムを均一に帯電する帯電装置と、露光によって形成された静電潜像を各色のトナーで現像する現像装置と、感光体ドラム上の転写残トナーを除去する感光体用クリーニング装置が設けられている。
【0021】
さらに、各感光体ドラム40(Y,M,C,K)から中間転写ベルト10にトナー画像を転写する一次転写位置には、一次転写ローラ62(Y,M,C,K)が設けられている。一次転写ローラ62(Y,M,C,K)は、中間転写ベルト10を間に挟んで各感光体ドラム40(Y,M,C,K)に対向するように設けられ、一次転写手段の構成要素となる。
【0022】
中間転写ベルト10を支持する複数の支持ローラのうち、支持ローラ14は中間転写ベルト10を回転駆動する駆動ローラであり、例えばギヤ、プーリ、ベルト等の駆動伝達機構を介してモータと接続されている。また、ブラックの単色画像を中間転写ベルト10上に形成する場合には、移動機構により、この支持ローラ14以外の支持ローラ15a及び15bを移動させて、感光体ドラム40(Y,M,C)を中間転写ベルト10から離間させることが可能である。この他、バックアップローラ63も支持するローラとして設けられている。
【0023】
中間転写ベルト10を挟んでタンデム型画像形成部11と反対の側には、二次転写装置13を備えている。この二次転写装置13は、二次転写対向ローラ16aに二次転写ローラ16bを押し当てて転写電界を印加することで、中間転写ベルト10上の画像をシート状の用紙Pに転写する。
【0024】
また、二次転写装置13の搬送方向下流側には、用紙P上の転写画像を定着する定着装置20を備える。二次転写装置13で画像が転写された用紙Pは、2つの搬送ローラ37に支持された搬送ベルト38により、定着装置20へと搬送される。搬送ベルト38に代えて、固定されたガイド部材を使用したり、搬送ローラや搬送コロ等を使用したりしてもよい。タンデム型画像形成部11、二次転写装置13および定着装置20の下方に、用紙Pの両面に画像を記録できるように、用紙Pを反転して搬送するシート反転装置39を備えている。
【0025】
(用紙の搬送)
用紙Pの搬送は次のように行われる。まず、給紙テーブル200の給紙ローラ42の1つが選択的に回転され、ペーパーバンク43に多段に設けられた給紙トレイ44の1つから用紙Pを繰り出す。その繰り出された用紙Pは、分離ローラ45で1枚ずつに分離されて給紙路46に導入され、給紙搬送ローラ対47で搬送されると共に、画像形成装置100内の給紙路48に導かれた後、用紙Pの先端が位置決めローラ(レジストローラ)対49に突き当てられて止められる。
【0026】
また、手差しトレイ51を用いる場合には、給紙ローラ50が回転され、手差しトレイ51上の用紙Pが繰り出される。繰り出された用紙Pは、分離ローラ52で1枚ずつ分離された後、手差し給紙路53に導入され、同様にして用紙Pの先端が位置決めローラ対49に突き当てられて止められる。
【0027】
その後、中間転写ベルト10上のフルカラーのトナー画像形成にタイミングを合わせて位置決めローラ対49が回転され、中間転写ベルト10と二次転写ローラ16bとの間の二次転写位置に用紙Pが送り込まれる。そして、中間転写ベルト10上のフルカラーのトナー画像が用紙P上に一括転写される。
【0028】
そのトナー画像が転写された用紙Pは、搬送ベルト38によって搬送され、本発明の実施形態に係る定着装置20へ送り込まれる。その後、定着装置20によって用紙Pのトナー画像に熱と圧力が加えられることで用紙Pにトナー画像が転写・定着される。トナー画像が定着された用紙Pは、排出ローラ56により排紙トレイ57上に排出されてスタックされる。
【0029】
両面印刷の場合、片面に画像が定着された用紙Pは、シート反転装置39に導入されて反転された後、再び二次転写位置へ導かれる。そして用紙Pの裏面にも画像が転写され、定着装置20で定着された後、当該用紙Pは排出ローラ56によって排紙トレイ57上に排出される。
【0030】
(定着装置)
次に、
図2を参照して本発明の実施形態に係る定着装置20の実施形態について説明する。
定着装置20は、
図2のように、複数のローラ21、22、23、24と、これらローラ21、22、23、24と固定押圧部材26に張架された無端ベルトとしての無端状の定着ベルト25と、この定着ベルト25に対して接離可能に設けられた加圧回転体としての加圧ローラ30を有する。加圧ローラ30に代えて加圧ベルトを使用してもよい。
【0031】
複数のローラ21、22、23、24は、内部に加熱手段を有して駆動手段により回転駆動される定着ローラ21と、張架ローラ22と、付勢手段29を備えた圧力調整ローラ23と、張架ローラ24とで構成される。定着ローラ21のための駆動手段に代えて、加圧ローラ30は駆動手段としてのモータにより回転してもよく、当該回転により定着ベルト25が従動回転し得る。加圧ローラ30は、定着ベルト25を介して固定押圧部材26と加圧接触し、加圧ローラ30と固定押圧部材26との間にニップ部が形成される。
【0032】
図2は、加圧ローラ30と定着ベルト25が接触している状態を示している。この接触状態で、用紙P上に形成された未定着トナー像Tをニップ部で溶融・加圧し、用紙P上に定着させる。
【0033】
トナー像が形成された用紙Pは、入口ガイド27側からニップ部に進入し、出口ガイド29側に排出される。ニップ部出口の定着ベルト25側には分離部材28が備えられ、ニップ部から排出された用紙Pが定着ベルト25に巻き付くのを防止する。
【0034】
(固定押圧部材)
固定押圧部材26は、定着ベルト25の内側に挿入された高剛性の支持部材31を介して、定着ベルト25の内側において定着装置20のフレームに固定支持されている。これにより、加圧ローラ30の加圧力で固定押圧部材26の位置が変位したり、固定押圧部材26が撓んだりするのを防止し、均一なニップ幅が安定して得られるようにしている。なお、加圧ローラ30の固定押圧部材26側への押圧力(加圧力)を制御することにより、ニップ幅の大きさを制御することも可能である。
【0035】
なお、固定押圧部材26のZ方向長さ(紙面垂直方向)は、定着ベルト25のZ方向長さよりも短く、固定押圧部材26は用紙Pの用紙搬送方向D1にニップ形成面を有する。また、固定押圧部材26は定着ベルト25との摺動抵抗を低減するため、ニップ形成面の両端部がR形状に加工され、定着ベルト25と接触する面にフッ素樹脂の層が設けられている。
【0036】
固定押圧部材26は耐熱性部材で構成するのが好ましい。これにより、トナー定着温度域での熱変形を防止し、安定したニップ部の状態を確保し、出力画質の安定化を図ることができる。固定押圧部材26を構成する耐熱性部材としては、例えば、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの一般的な耐熱性樹脂が挙げられる。
【0037】
(張架ローラ)
張架ローラ22は、固定押圧部材26の上流側近傍に配設され、定着ベルト25の回転によって従動回転する。また、固定押圧部材26に対する張架ローラ22の位置によって、定着ベルト25と、固定押圧部材26のニップ形成面とのなす角、すなわち、ニップ形成面に入る定着ベルト25と、固定押圧部材26のニップ形成面(X方向平面)の面法線とのなす角が規定される。
【0038】
(圧力調整ローラ)
圧力調整ローラ23は固定押圧部材26の下流側に配設され、定着ベルト25の回転によって従動回転する。また、付勢手段29が、定着ベルト25を外向きに押すように圧力調整ローラ23を押し、定着ベルト25に張力を与える。付勢手段29としては、例えば、圧縮スプリング等が挙げられる。
【0039】
(定着ローラ)
定着ローラ21は、張架ローラ22の上流側に配設されている。定着ローラ21はその内部に加熱手段33を備え、加熱手段33で加熱された定着ローラ21によって定着ベルト25が加熱される。加熱手段33はハロゲンヒータやニクロム線等で構成される。
【0040】
加熱手段33の出力制御は、例えば、定着ローラ21に当接した定着ベルト25の表面温度の検出結果に基づいて行うことができる。定着ローラ21は、加圧ローラ30と定着ベルト25とが接触している状態においては、定着ベルト25の回転によって従動回転するが、加圧ローラ30が離間した状態においては、定着ローラ21に連結された駆動手段により独立して回転し、その回転によって定着ベルト25を回転させる。
【0041】
(加圧ローラ)
加圧ローラ30は、例えば、SUS304等で形成した円筒体の芯金上に、フッ素ゴム、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性層が形成されたローラである。円筒体の内部には熱源としてのヒータを配設してもよい。これによりニップ部での温度の落ち込みを防ぐことができる。当該ヒータはハロゲンヒータやニクロム線等で構成することができる。
【0042】
加圧ローラ30は、接離機構60により図中Yで示す方向へ移動する。例えば、+Y方向へ移動することにより定着ベルト25を介して固定押圧部材26と加圧接触してニップ部を形成する。一方、-Y方向へ移動することにより、定着ベルト25と離間する。
【0043】
また、加圧ローラ30は加圧ローラ30を回転駆動させる駆動手段を備え、図中矢印D2で示す方向へ回転する。加圧ローラ30と定着ベルト25が接触した状態において、定着ベルト25は矢印D3へ示す方向へ回転する。
【0044】
定着ベルト25は多層構造の無端ベルトであり、例えば、基材及び離型層によって構成される2層構造のベルト、又は基材、弾性層及び離型層によって構成される3層構造のベルトである。3層構造にして定着ベルト25に弾性層を設けることにより、トナー像へ定着ベルト25表面が密着しやすくなり、画質が向上する。
【0045】
図3は、本発明の実施形態に係る固定押圧部材の概略構成図である。
図示のように、ニップ部を形成する固定押圧部材26のニップ形成面は、X方向である用紙搬送方向D1に又は固定押圧部材26の長手方向と交差する方向に、3つの湾曲部を有する。具体的には、固定押圧部材26の3つの湾曲部は、用紙搬送方向上流から順に第一湾曲部26a、第二湾曲部26b、第三湾曲部26cであり、固定押圧部材26のニップ形成面は、第一湾曲部26aから第二湾曲部26bに向かって加圧ローラ30の回転中心から離れる方向に形成されており、第二湾曲部26bから第三湾曲部26cに向かって加圧ローラ30の回転中心に近づく方向に形成されている。
【0046】
言い換えれば、第一湾曲部26a及び第三湾曲部26cは加圧ローラ30に対して凸状に形成されており、第二湾曲部26bは加圧ローラ30に対して凹状に、すなわち加圧ローラ30から遠ざかる方向に形成されている。
【0047】
図3において、第三湾曲部26cの湾曲開始点はニップ部出口の位置に合わされている。これにより、横白スジの異常画像の発生をより効果的に抑制することができる。
【0048】
また、第一湾曲部26aの曲率半径Raは第二湾曲部26bの曲率半径Rbより小さい(Ra<Rb)。これにより、用紙Pがニップ部に進入するための受け口を大きくし、用紙Pを確実にニップ部に進入させることができる。
【0049】
また、第三湾曲部26cの曲率半径Rcは第二湾曲部26bの曲率半径Rbより小さい(Rc<Rb)。これにより、ニップ部出口における用紙Pと定着ベルト25又は加圧ローラ30の分離性を高めることができる。
【0050】
図4は、従来の固定押圧部材(a)と本発明の実施形態に係る固定押圧部材(b)を示す概略構成図である。
図4(a)において、従来の固定押圧部材26はニップ部入口とニップ部出口にのみ変曲点を有し、加圧ローラ30の潰れ量がニップ部中央とニップ部出口では異なるため、ニップ部中央とニップ部出口で線速差(用紙搬送速度)が生じる。図示の例では、ニップ部中央での線速はvであり、ニップ部出口での線速はv’であるため、線速差は(v’-v)>0となる。
【0051】
線速差(v’-v)は、ニップ部出口において用紙Pを引っ張る方向の力をもたらすため、用紙後端がニップ部中央を抜けた後、用紙搬送速度が急に上がることで、線速差(v’-v)は、用紙後端のバリや炭酸カルシウム等の固着物を掻き取って定着ベルト25側に付着させるよう作用する。
【0052】
このようにして掻き取られて定着ベルト25に付着した用紙後端のバリや固着物が一周回って、定着時に用紙P上のトナー画像に転写されることで、用紙搬送方向D1と直交する方向に異常画像(横白スジ)が発生する。
【0053】
これに対して、
図4(b)に示す本発明の実施形態の定着装置によれば、固定押圧部材26のニップ形成面は用紙搬送方向D1に3つの湾曲部を有し、第二湾曲部26bは加圧ローラ30に対して緩やかな凹状に形成されている。そのため、本実施形態における定着装置の用紙Pのニップ部中央での線速vと用紙Pのニップ部出口での線速v’の線速差(v’-v)が、従来の定着装置における線速差に比べて小さくなる。つまり、本実施形態における定着装置のニップ部出口における定着ベルト25と用紙Pの線速差は、従来の形態におけるそれより小さい。よって、定着ベルト25と用紙Pの線速差に起因する、用紙後端のバリや炭酸カルシウム等の固着物の定着ベルト25側への付着が抑制され、ひいては横白スジの異常画像が抑制される。言い換えれば、加圧ローラ30のニップ部中央における角速度ωb=v/rと加圧ローラ30のニップ部出口の角速度ωc=v’/r’が近似し、加圧ローラ30によって搬送される用紙搬送速度と定着ベルト25の線速との線速差が小さくなるように、加圧ローラ30が固定押圧部材26の第三湾曲部26cから分離されている。
【0054】
図5は、従来技術による固定押圧部材と本発明の実施形態に係る固定押圧部材の面圧比較を示す図である。
図中横軸は、固定押圧部材26の用紙搬送方向位置を示すものであり、従って面圧が0より大きい範囲が、加圧ローラ30と固定押圧部材26の間に形成されるニップ部又は固定押圧部材26のニップ形成面に相当する。逆に、面圧が0の範囲ではニップ部又はニップ形成面は存在しない。また、用紙搬送方向は、図中右から左に向かっている。
【0055】
従来の形態による固定押圧部材は、ニップ部出口側(図中の搬送方向下流位置)において加圧ローラの潰れ量を増やすことで用紙後端側に対する面圧が上げられている。ニップ部出口側における無加圧領域を無くすことで、用紙Pの波打ちによるグロスむら(リバーマーク)を無くしている。だが、このような面圧分布を実現するためには、固定押圧部材のニップ部出口側を押し込む必要があり、固定押圧部材が押し込まれると、上述した異常画像(横白スジ)が発生してしまう。
【0056】
一方で、本発明の実施形態によれば、固定押圧部材26の形状によって面圧分布を決定することができる。そのため、固定押圧部材26のニップ部出口側を無理に押し込むことなく、ニップ部出口側の無加圧領域を無くすことができる。言い換えれば、固定押圧部材26が、ニップ部中央からニップ部出口側に向かって加圧ローラ30の回転中心に近づくため、ニップ部出口側の面圧がニップ中央部と均一となる。これにより、用紙Pの波打ちによるグロスむら(リバーマーク)の異常画像を抑制することができる。
【0057】
また
図4に関連して説明したように、本発明の実施形態に係る固定押圧部材26の場合、ニップ部中央とニップ部出口での線速差(v’-v)が小さいため、異常画像(横白スジ)も生じない。したがって、リバーマークの異常画像の抑制と横白スジの異常画像の抑制を両立させることができる。
【0058】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る定着装置20は、ニップ形成面の搬送方向中央部が緩やかな凹み形状を有する。具体的には、固定押圧部材26のニップ形成面には用紙搬送方向D1に見て3つの湾曲部がある。3つの湾曲部は、用紙搬送方向上流から順に第一湾曲部26a、第二湾曲部26b、第三湾曲部26cである。固定押圧部材26は、用紙搬送方向上流の第一湾曲部26aから第二湾曲部26bにかけて加圧ローラ30の回転中心から離れる方向に凹んでおり、第二湾曲部26bから第三湾曲部26cにかけて加圧ローラ30の回転中心に近づく方向に膨出している。これにより、リバーマークの異常画像と横白スジの異常画像を抑制することができる。
【0059】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
(態様1)
固定押圧部材及びローラに張架された無端ベルトと、
前記無端ベルトを挟んで前記固定押圧部材に対向配置された加圧回転体と、を有し、
前記加圧回転体と前記固定押圧部材との間にニップ部が形成された定着装置において、
前記ニップ部を形成する前記固定押圧部材のニップ形成面は、用紙搬送方向に3つの湾曲部を有する、ことを特徴とする定着装置。
(態様2)
前記3つの湾曲部は、用紙搬送方向上流から順に第一湾曲部、第二湾曲部、第三湾曲部であり、前記固定押圧部材は、前記第一湾曲部から前記第二湾曲部に向かって前記加圧回転体の回転中心から離れる方向に形成されており、前記第二湾曲部から前記第三湾曲部に向かって前記加圧回転体の回転中心に近づく方向に形成されている、ことを特徴とする態様1に記載の定着装置。
(態様3)
前記第三湾曲部の湾曲開始点がニップ部出口の位置に一致する、ことを特徴とする態様1又は2に記載の定着装置。
(態様4)
前記第一湾曲部の曲率半径は前記第二湾曲部の曲率半径より小さい、ことを特徴とする態様1~3のいずれか一態様に記載の定着装置。
(態様5)
前記第三湾曲部の曲率半径は前記第二湾曲部の曲率半径より小さい、ことを特徴とする態様1~4のいずれか一態様に記載の定着装置。
(態様6)
態様1~5のいずれか一態様に記載の定着装置を有する画像形成装置。
【符号の説明】
【0060】
20 定着装置
21、22、23、24 ローラ
25 定着ベルト(無端ベルト)
26 固定押圧部材
26a 第一湾曲部
26b 第二湾曲部
26c 第三湾曲部
30 加圧ローラ(加圧回転体)
100 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】