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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071390
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】メトホルミンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 277/02 20060101AFI20240517BHJP
   C07C 279/26 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C07C277/02
C07C279/26
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024028125
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2020542432の分割
【原出願日】2019-02-05
(31)【優先権主張番号】18155451.0
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】コレイア カミーユ
(72)【発明者】
【氏名】ポリ ルノー
(72)【発明者】
【氏名】ジェルボー セルジュ
(72)【発明者】
【氏名】ディットマン マルク
(72)【発明者】
【氏名】マイヤール ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ヘルトナー セバスティアン
(57)【要約】
【課題】従来の製造方法の上記欠点を引き起こすことのない、メトホルミンの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、II型糖尿病の第一選択治療における重要な薬品であるメトホルミン塩酸塩の製造の改良方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メトホルミン塩酸塩の製造方法であって、
(a)塩化ジメチルアンモニウム、ジシアノジアミド及び、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、それぞれ0~20質量%の水及び0~50質量%のメトホルミン塩酸塩の混合物を70℃~250℃の範囲の温度に加熱し、その温度を0.1分~20時間維持するステップ、及び
(b)反応した混合物を冷却し、得られた結晶メトホルミン塩酸塩を回収するステップを有する、メトホルミン塩酸塩の製造方法。
【請求項2】
メトホルミン塩酸塩の製造方法であって、
(a)塩化ジメチルアンモニウム、ジシアノジアミド及び、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、それぞれ0~20質量%の水及び0~50質量%のメトホルミン塩酸塩を、連続的に攪拌し、混合物を70℃~250℃の範囲の温度に連続的に加熱しながら、反応器に連続的に送り込むステップ、及び
(b)反応した混合物を冷却し、得られた結晶メトホルミン塩酸塩を回収するステップを有する、メトホルミン塩酸塩の製造方法。
【請求項3】
混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、それぞれ0~20質量%、好ましくは0~10質量%、より好ましくは約5質量%、最も好ましくは0質量%のメトホルミン塩酸塩が存在することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)において、前記混合物を70℃~120℃の範囲の第1温度に加熱し、その温度で一定時間維持した後、120℃~250℃の範囲の第2温度に加熱し、その温度で一定時間維持することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法を1つの連続反応器又は直列に組み合わせた複数の連続反応器で行うことを特徴とする、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法を、直列に組み合わせた複数の連続反応器で行い、ステップ(a)において、前記混合物を第1反応器内で70℃~120℃の範囲の第1加熱温度に加熱し、その温度で一定時間維持した後、第2反応器内で110℃~160℃の範囲の第2加熱温度に加熱し、その温度で一定時間維持し、次いで第3反応器内で140℃~250℃の範囲の第3温度に加熱し、その温度で一定時間維持することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
加熱温度を一定時間維持する時間の合計が、0.1分~10時間の範囲であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第1加熱温度を0.1分~2時間維持し、第2加熱温度を0.1分~3時間維持し、第3加熱温度を0.1分~5時間維持することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
連続反応器が連続攪拌槽反応器、一軸又は二軸押出機、一軸又は二軸混練機又は連続攪拌槽反応器、一軸又は二軸押出機及び一軸又は二軸混練機の組み合わせであることを特徴とする、請求項2~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドが、モル比1.0~2.0:1、好ましくはモル比約1.15:1で互いに混合物中に存在することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a)において処理される混合物が、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、それぞれ0~10質量%、好ましくは0~5質量%、より好ましくは約3質量%の水を含有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(a)において処理される混合物が、溶融混合物の反応選択性及び/又は粘度を上げる添加剤を更に含有することを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
添加剤が、塩化ナトリウム、セライト又はシリカ、好ましくはセライト又はそれら物質2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
混合物中に存在する添加剤の量が、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、0.001~50質量%、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%であることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
混合物が、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、添加剤として約1質量%のセライトを有することを特徴とする、請求項11~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
20~50質量%の水を含有する塩化ジメチルアンモニウムの溶液を製造し、そのような溶液を、塩化ジメチルアンモニウム及び水の全量に対して、それぞれ0.1~20質量%の水、好ましくは0.1~10質量%の水、より好ましくは約0.1~6質量%の水を含有するように濃縮して混合物を製造し、水との混合物として塩化ジメチルアンモニウムを添加することを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、II型糖尿病の第一選択治療における重要な薬品であるメトホルミン塩酸塩の製造の改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メトホルミンは、以下に示すように、塩化ジメチルアンモニウムとジシアノジアミドとの縮合により製造することができる。
【化1】
【0003】
一般的には、該反応は、通常、炭化水素又はアルコール溶媒中、高温で行われる。
【0004】
キシレンなどの炭化水素を溶媒として選択することが開示されている先行技術の例としては、ドイツ特許第1023757号明細書、インド特許出願第1350/MUM/2007号明細書、インド特許出願第1346/MUM/2008号明細書及びフランス特許出願第2322860号明細書が挙げられる。
【0005】
アルコール溶媒を選択する先行技術の例としては、中国特許出願公開第105481726号明細書、中国特許第100391939号明細書及び中国特許出願公開第106795104号明細書が挙げられる。
【0006】
Anvar Shalmashi(Molbank、2008、M564)は、薄層クロマトグラフィー(TLC)プレート上でのマイクロ波照射によるメトホルミン塩酸塩の合成経路を開示している。
【0007】
先行技術に開示されている方法は全て、可燃性有機溶媒からの保護に関する安全上の配慮に加え、最終生成物の純度を確保するために溶媒の除去を考慮しなければならない。更に、最終生成物中の溶媒の残量を完全に除去することはできず、このことは毒物学的観点から重大である。原則としては、有機溶媒非存在下での反応は望ましく、且つ好ましいより安全な選択肢である。
【0008】
溶媒非存在下におけるメトホルミン塩酸塩の合成については、インド特許出願第189077号明細書に開示されている。その様な教示によると、ジシアノジアミド及び塩化ジメチルアンモニウム(反応物質)を湿メトホルミン塩酸塩(生成物)と1:1から1.3:1-3(in a ratio of from 1 : 1 to 1.3 : 1-3)の割合で混合し、150℃未満の温度で反応させる。反応物質を生成物へ十分に変換するためには、等モル以上の量のメトホルミン塩酸塩を反応混合物に添加する必要がある。
【0009】
少なくとも等モル量のメトホルミン塩酸塩を反応物質に添加するためには、反応器をより大きくし、エネルギー入力を増加させる必要があり、反応物質に対しての反応生成物の出力は低減する(生成物中のメトホルミン塩酸塩の一部のみが、新たに合成される)。更に、反応に送り込まれたメトホルミン塩酸塩は、反応混合物を加熱する際に分解を受けることがあるので、最終生成物中の不純物の含有量が増加することになり、反応後に反応生成物から除去しなければならない。更なるコストの上昇に加えて、反応の全期間が極めて長くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の課題は、従来の製造方法の上記欠点を引き起こすことのない、メトホルミンの製造方法を提供することである。特に、該方法は、有機溶媒の使用を避けるべきであり、少なくとも等モル量のメトホルミン塩酸塩の添加が不要であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの課題は、(a)塩化ジメチルアンモニウム、ジシアノジアミド及び、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、それぞれ0~20質量%の水及び0~50質量%のメトホルミン塩酸塩の混合物を70℃~250℃の範囲の温度に加熱し、その範囲の温度を0.1分~20時間維持するステップ、及び(b)反応した混合物を冷却し、得られた結晶メトホルミン塩酸塩を回収するステップを有する、メトホルミン塩酸塩の製造方法により達成された。
【0012】
従って、本発明は、メトホルミン塩酸塩の製造方法であって、(a)塩化ジメチルアンモニウム、ジシアノジアミド及び、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、それぞれ0~20質量%の水及び0~50質量%のメトホルミン塩酸塩の混合物を70℃~250℃の範囲の温度に加熱し、その範囲の温度を0.1分~20時間維持するステップ、及び(b)反応した混合物を冷却し、得られた結晶メトホルミン塩酸塩を回収するステップを有する、メトホルミン塩酸塩の製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
反応及び結晶化は発熱性であるから、ゆっくりと温度を上昇させることにより、バッチ式反応器内で放散される熱をより良く制御できる。
【0014】
好ましくは、全ての反応ステップが攪拌下、好ましくは一定の攪拌下に行われる。
【0015】
上記の方法は、バッチ処理である。ここで使用される「バッチ処理」という用語は、原料を反応器又は容器内で化合させ、生成物を反応の最後に取り除く方法を指す。
【0016】
或いは、本方法を連続処理として行うこともできる。ここで使用される「連続処理」という用語は、原料の流入と生成物の流出を連続的に行う方法を指す。そのような連続処理では、最初の出発材料から開始する一連の操作を完全に連続させ、最終生成物を合成することができるプラットフォームを可能にする。場合によっては、最終生成物の製造を、バッチとフロー処理とを組み合わせた合成によって行ってもよい。
【0017】
連続処理として前記方法を行うことは、生産性を上げ、メトホルミン塩酸塩の将来の需要を満たす、安全で迅速かつ大規模に実現可能な経路を提供するために、有利である。このようなメトホルミン塩酸塩の製造方法は、(a)塩化ジメチルアンモニウム、ジシアノジアミド及び、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、それぞれ0~20質量%の水及び0~50質量%のメトホルミン塩酸塩を、連続的に攪拌し、混合物を70℃~250℃の範囲の温度に連続的に加熱しながら、反応器に連続的に送り込むステップ、及び(b)反応した混合物を冷却し、得られた結晶メトホルミン塩酸塩を回収するステップを有する。従って、本発明はまた、(a)塩化ジメチルアンモニウム、ジシアノジアミド及び、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、それぞれ0~20質量%の水及び0~50質量%のメトホルミン塩酸塩を、連続的に攪拌し、混合物を70℃~250℃の範囲の温度に連続的に加熱しながら、反応器に連続的に送り込むステップ、及び(b)反応した混合物を冷却し、得られた結晶メトホルミン塩酸塩を回収するステップを有する、メトホルミン塩酸塩の製造方法に関する。
【0018】
本発明の方法の有利な実施形態では、連続処理と同様にバッチ処理でも、メトホルミン塩酸塩は、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、それぞれ0~20質量%、好ましくは0~10質量%、より好ましくは約5質量%、最も好ましくは0質量%の量で存在することができる。従って、本発明はまた、メトホルミン塩酸塩が、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、それぞれ0~20質量%、好ましくは0~10質量%、より好ましくは約5質量%、最も好ましくは0質量%の量で存在することを特徴とする方法に関する。
【0019】
連続又はバッチ処理のステップ(a)では、混合物を1又は2以上の異なる温度で段階的に、すなわち、1、2又はそれ以上の段階で加熱することができる。有利な実施形態では、ステップ(a)において、混合物を70℃~120℃の範囲の第1温度に加熱し、その温度で一定時間維持した後、120℃~250℃の範囲の第2温度に加熱し、その温度で一定時間維持する、2段階で混合物を加熱する。従って、本発明はまた、ステップ(a)において、混合物を70℃~120℃の範囲の第1温度に加熱し、その温度で一定時間維持した後、120℃~250℃の範囲の第2温度に加熱し、その温度で一定時間維持することを特徴とする方法に関する。
【0020】
連続処理は、1つの連続反応器でも、又は直列に組み合わせた複数の連続反応器でも行うことができる。従って、本発明は更に、1つの連続反応器又は直列に組み合わせた複数の連続反応器で行うことを特徴とする方法に関する。
【0021】
連続処理の有利な実施形態によれば、混合物を第1反応器中で70℃~120℃の範囲の第1温度に加熱し、その温度を一定時間維持した後、第2反応器中で110℃~160℃の範囲に加熱し、その温度を一定時間維持し、その後第3反応器中で140℃~250℃の範囲の第3温度に加熱し、その温度を一定時間維持する。このように、本発明はまた、ステップ(a)において、混合物を第1反応器中で70℃~120℃の範囲の第1温度に加熱し、その温度を一定時間維持した後、第2反応器中で110℃~160℃の範囲の第2温度に加熱し、その温度を一定時間維持し、その後第3反応器中で140℃~250℃の範囲の第3温度に加熱し、その温度を一定時間維持することを特徴とする、メトホルミン塩酸塩を製造する連続処理に関する。各ステップの温度及び滞留時間は、選択した反応器技術の種類に依存する。
【0022】
生成物を得るための原料の融解及び反応に必要な加熱時間は、連続又はバッチ処理を行うために使用する装置の種類や大きさ、原料の送り速度や攪拌速度などの適用する製造パラメーターや、加熱温度に応じて、広範囲にわたって変化することができる。通常の条件下で方法を行う場合、加熱温度を一定時間維持する時間の合計は、0.1分~10時間の範囲である。従って、本発明は更に、加熱温度を一定時間維持する時間の合計が、0.1分~10時間の範囲であることを特徴とする方法に関する。
【0023】
本発明の一例では、前記方法は連続処理であり、3段階で加熱を行う。そのような例では、加熱温度を、第1温度で0.1分~2時間、第2加熱温度で0.1分~3時間及び第3加熱温度で0.1分~5時間維持することが有利である。従って、本発明はまた、第1加熱温度を0.1分~2時間維持し、第2加熱温度を0.1分~3時間維持し、第3加熱温度を0.1分~5時間維持する、メトホルミンを製造する連続処理に関する。
【0024】
特に好ましい実施形態では、メトホルミン塩酸塩の製造方法が、(a)無水塩化ジメチルアンモニウム、ジシアノジアミド及び、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、0~20質量%の水を連続反応器に連続的に送り込み、該混合物を70℃~120℃の範囲の第1加熱温度に加熱し、その加熱温度を0.1~2時間維持した後、110℃~160℃の範囲の第2温度に昇温し、その温度範囲を0.1分~3時間維持し、次いで140℃~250℃の範囲の第3温度に昇温し、その温度を0.1分~5時間維持するステップ、及び(b)反応した混合物を冷却し、得られた結晶メトホルミン塩酸塩を回収するステップを有することを特徴とする。
【0025】
ここで使用される「約」は、明示的に示されているかどうかにかかわらず、整数、分数、割合などを含む数値を指す。「約」という用語は、一般的に、当業者が記載された値と同等である(例えば、同様の機能や結果を与える)と考える数値範囲(例えば、記載された値の±1~3%)を指す。場合によっては、「約」という用語には、最も近い有効数字に四捨五入された数値が含まれる場合がある。
【0026】
一般的に、本願において、「方法」という用語がそれ以上詳述されずに使用されている場合には、その開示はバッチ処理と連続処理の両者に関連している。「方法」という用語が「連続」という用語と共に使用されている、即ち、「連続処理」の場合は、その開示は、連続処理のみに関連し、バッチ処理には適用されない。逆も同様であり、「方法」という用語が「バッチ」と共に使用されている、即ち、「バッチ処理」の場合は、その開示は、バッチ処理のみに関連し、連続処理には適用されない。
【0027】
原則としては、融解物の取り扱いに好適であれば、いずれの公知連続反応器も本発明に記載の方法に使用できる。本方法を実行するために使用可能な適当な連続反応器には、連続攪拌槽反応器、一軸又は二軸押出機、一軸又は二軸混練機又は連続攪拌槽反応器、一軸又は二軸押出機及び一軸又は二軸混練機の組み合わせが含まれる。よって、本発明は同様に、連続反応器が連続攪拌槽反応器、一軸又は二軸押出機、一軸又は二軸混練機又は連続攪拌槽反応器、一軸又は二軸押出機及び一軸又は二軸混練機の組み合わせであることを特徴とする方法に関する。
【0028】
本発明の適切な実施形態によれば、塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドは、モル比1.0~2.0:1、好ましくはモル比約1.15:1で互いに混合物中に存在する。このように、本発明はまた、塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドが、モル比1.0~2.0:1、好ましくはモル比約1.15:1で互いに混合物中に存在することを特徴とする方法に関する。
【0029】
上述のように、本発明の方法のステップ(a)において使用される塩化ジメチルアンモニウム、ジシアノジアミドの混合物及び、メトホルミン塩酸塩の混合物が存在する場合には、メトホルミン塩酸塩の混合物は、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して20質量%までの水を含有する。好ましい実施形態によれば、該ステップにおける水の量は、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、それぞれ0~10質量%、好ましくは0~5質量%、より好ましくは約3質量%である。このように、本発明は同様に、ステップ(a)において処理される混合物が、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、それぞれ0~10質量%、好ましくは0~5質量%、より好ましくは約3質量%の水を含有することを特徴とする方法に関する。
【0030】
有利な実施形態によれば、反応混合物は、溶融混合物の反応選択性及び/又は粘度を上げる添加剤を含有してもよい。ここで使用される「反応選択性」という用語は、反応により得られた副生成物に対するメトホルミン塩酸塩の割合を指す。反応選択性が高い場合、副生成物由来の不純物は減少又は抑制される。溶融混合物の粘度が上昇すると、流れ方向に対する流れ戻りが減少するため、前記方法を連続処理として行う場合(例えば、押出機又は混練機により行う場合)に特に有利である。よって、本発明はまた、ステップ(a)において処理される混合物が、溶融混合物の反応選択性及び/又は粘度を上げる添加剤を更に含有することを特徴とする方法に関する。
【0031】
溶融物の反応選択性及び/又は粘度を上げる固体添加剤であれば、いずれの添加剤も使用できる。本発明の方法に特に好適な添加剤としては、塩化ナトリウム、セライト、シリカ又はそれら物質2種以上の混合物が挙げられる。好ましい添加剤はセライトである。従って、本発明は更に、添加剤が塩化ナトリウム、セライト又はシリカ、好ましくはメトホルミン塩酸塩、セライト又はそれら物質2種以上の混合物であることを特徴とする方法に関する。
【0032】
例示的な実施形態では、混合物中に存在する添加剤の量は、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、0.001~50質量%、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%である。従って、本発明はまた、混合物中に存在する添加剤の量が、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、0.001~50質量%、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%であることを特徴とする方法に関する。
【0033】
本方法の好ましい実施形態によれば、反応混合物は、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、添加剤として約1質量%のセライトを有する。このように、本発明はまた、反応混合物が、混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して、添加剤として約1質量%のセライトを有することを特徴とする方法に関する。
【0034】
固体塩化ジメチルアンモニウムは吸湿性であるので、大規模な配送や取り扱いは困難な傾向にあり、方法の頑健性に悪影響を与える可能性がある。このリスクを低減するためには、塩化ジメチルアンモニウムを20~50質量%の水を含有する水溶液として供給し、溶融混合物を形成するためにジシアノジアミドと混合する前に必要とされる水含有量に濃縮することができる。
【0035】
従って、本発明はまた、20~50質量%の水を含有する塩化ジメチルアンモニウムの溶液を製造し、前記溶液を、塩化ジメチルアンモニウム及び水の全量に対して、それぞれ0.1~20質量%の水、好ましくは0.1~10質量%の水、より好ましくは約0.1~6質量%の水を含有するように濃縮して混合物を製造し、水との混合物として塩化ジメチルアンモニウムを添加する方法に関する。
【0036】
塩化ジメチルアンモニウムと水との混合物は、連続処理(塩化ジメチルアンモニウムは塩化ジメチルアンモニウムと水との混合物として送り込まれる)と同様に、バッチ処理(塩化ジメチルアンモニウムとジシアノジアミドの混合物を、塩化ジメチルアンモニウムと水との混合物をジシアノジアミドと混合することにより製造する)に使用することができる。
【実施例0037】
実施例は、それに限定されることなく、本発明を例示する。
【0038】
実施例1(バッチ処理、1回の加熱ステップ)
250gのジシアノジアミド、315.22gの塩化ジメチルアンモニウム及び16.96mLの水を1Lの反応器に添加した。反応器を145℃に3時間加熱する。反応が進行するに従い、メトホルミン塩酸塩が混合物から沈殿する。反応器を室温に冷却し、脱塩水を反応器に添加し、得られたスラリーを除去する。メトホルミン塩酸塩は89%の純度で得られる。
【0039】
実施例2(バッチ処理、2回の加熱ステップ)
3432gのジシアノジアミド、4320gの塩化ジメチルアンモニウム及び232.5mLの水を反応器に添加した。均質な溶融物が形成されるまで反応器を105℃に加熱する。溶融混合物を12L二軸共回転バッチ混練機に移し、130℃で1時間、次いで145℃で2.5時間加熱する。反応が進行するに従い、メトホルミン塩酸塩が混合物から沈殿する。反応器を室温に冷却し、脱塩水を反応器に添加し、得られたスラリーを除去する。メトホルミン塩酸塩は94%の純度で得られる。
【0040】
実施例2(連続処理)
モル比1:1.15のジシアノジアミド及び塩化ジメチルアンモニウム及び水(混合物中に存在する塩化ジメチルアンモニウム及びジシアノジアミドの全量に対して3質量%)を100℃に熱した6L攪拌容器に連続的に送り込んだ。溶融混合物を4kg/時の速度で攪拌反応器に移し、15分の滞留時間の間135℃に加熱する。部分的に反応した材料を二軸混練機に連続的に排出し、175℃で45分間攪拌することにより完全に変換される。生成物を第2の混練機から4kg/時の速度で縦型二軸コンベアを介して回収フラスコに連続的に排出する。回収された固体混合物は89%純度のメトホルミンを含有する。
【0041】
実施例3(塩化ジメチルアンモニウムと水の混合物を使用するバッチ処理)
450gの70%塩化ジメチルアンモニウム水溶液を、蒸留塔を備える反応器に添加した。混合物を、水分含有量が概ね5%になるまで、130℃で2.5時間濃縮した。この混合物に、250gのジシアノジアミドを添加した。反応器を145℃に3時間加熱する。反応が進行するに従い、メトホルミン塩酸塩が混合物から沈殿する。反応器を室温に冷却し、脱塩水を反応器に添加し、得られたスラリーを除去する。
【外国語明細書】