(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071417
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】プリプレグの製造方法、プリプレグ、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
B29B 11/16 20060101AFI20240517BHJP
C08L 79/00 20060101ALI20240517BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240517BHJP
C08L 35/06 20060101ALI20240517BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20240517BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20240517BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240517BHJP
B29K 105/10 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
B29B11/16
C08L79/00 B
C08L63/00 A
C08L35/06
C08K9/06
C08K5/3445
H05K1/03 610T
H05K1/03 610H
B29K105:10
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038196
(22)【出願日】2024-03-12
(62)【分割の表示】P 2022123936の分割
【原出願日】2018-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2017068062
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白男川 芳克
(72)【発明者】
【氏名】垣谷 稔
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩
(72)【発明者】
【氏名】串田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】金子 辰徳
(57)【要約】
【課題】寸法変化量のバラつきが小さいプリプレグの製造方法を提供し、且つ、寸法変化量のバラつきが小さいプリプレグ、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供すること。さらに、ビアの位置ずれ不良の発生が少ないプリプレグ、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供すること。
【解決手段】熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させた後、該熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化してプリプレグ前駆体を得る工程、及び前記プリプレグ前駆体を得る工程の後に、表面加熱処理工程を有し、前記表面加熱処理工程は、熱源温度200~700℃でプリプレグ前駆体の表面を加熱処理する工程である、プリプレグの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させた後、該熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化してプリプレグ前駆体を得る工程、及び
前記プリプレグ前駆体を得る工程の後に、表面加熱処理工程を有し、
前記表面加熱処理工程は、熱源温度200~700℃でプリプレグ前駆体の表面を加熱処理する工程である、
プリプレグの製造方法。
【請求項2】
熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させた後、該熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化してプリプレグ前駆体を得る工程、及び
前記プリプレグ前駆体を得る工程の後に、表面加熱処理工程を有し、
前記表面加熱処理工程は、プリプレグ前駆体の表面温度が40~130℃となるようにプリプレグ前駆体の表面を加熱処理する工程である、
プリプレグの製造方法。
【請求項3】
前記プリプレグ前駆体を得る工程の後、且つ前記表面加熱処理工程の前に、プリプレグ前駆体を5~60℃に冷却する工程を有する、請求項1又は2に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項4】
前記表面加熱処理の時間が1.0~10.0秒である、請求項1~3のいずれか1項に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂組成物が(A)マレイミド化合物を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項6】
前記(A)成分が、(a1)少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物と、(a2)下記一般式(a2-1)で示されるモノアミン化合物と、(a3)下記一般式(a3-1)で示されるジアミン化合物とを反応させて得られる、N-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物である、請求項5に記載のプリプレグの製造方法。
【化1】
(一般式(a2-1)中、R
A4は、水酸基、カルボキシ基及びスルホン酸基から選択される酸性置換基を示す。R
A5は、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子を示す。tは1~5の整数、uは0~4の整数であり、且つ、1≦t+u≦5を満たす。但し、tが2~5の整数の場合、複数のR
A4は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、uが2~4の整数の場合、複数のR
A5は同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【化2】
(一般式(a3-1)中、X
A2は、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基又は-O-を示す。R
A6及びR
A7は、各々独立に、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基又はスルホン酸基を示す。v及びwは、各々独立に、0~4の整数である。)
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに
(B)エポキシ樹脂、
(C)置換ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂、及び
(D)アミノシラン系カップリング剤で処理されたシリカ
を含有する、請求項5又は6に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項8】
前記(B)成分が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項7に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項9】
前記(C)成分が、下記一般式(C-i)で表される構造単位と下記式(C-ii)で表される構造単位とを有する共重合樹脂である、請求項7又は8に記載のプリプレグの製造方法。
【化3】
(式中、R
C1は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、R
C2は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、水酸基又は(メタ)アクリロイル基である。xは、0~3の整数である。但し、xが2又は3である場合、複数のR
C2は同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【請求項10】
基材及び熱硬化性樹脂組成物を含有してなり、下記方法に従って求める標準偏差σが0.012%以下であるプリプレグ。
標準偏差σの算出方法:
プリプレグ1枚の両面に厚さ18μmの銅箔を重ね、190℃、2.45MPaにて90分間加熱加圧成形し、厚さ0.1mmの両面銅張積層板を作製する。こうして得られた両面銅張積層板について、面内に直径1.0mmの穴開けを
図1に記載の1~8の場所に実施する。
図1に記載のたて糸方向(1-7、2-6、3-5)及びよこ糸方向(1-3、8-4、7-5)の各3点ずつの距離を画像測定機を使用して測定し、各測定距離を初期値とする。その後、外層銅箔を除去し、乾燥機にて185℃で60分間加熱する。冷却後、初期値の測定方法と同様にして、たて糸方向(1-7、2-6、3-5)及びよこ糸方向(1-3、8-4、7-5)の各3点ずつの距離を測定する。各測定距離の初期値に対する変化率からそれらの変化率の平均値を求め、該平均値に対する標準偏差σを算出する。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法により得られた、請求項10に記載のプリプレグ。
【請求項12】
前記熱硬化性樹脂組成物が(A)マレイミド化合物を含有する、請求項10に記載のプリプレグ。
【請求項13】
前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに
(B)エポキシ樹脂、
(C)置換ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂、及び
(D)アミノシラン系カップリング剤で処理されたシリカ
を含有する、請求項10又は12に記載のプリプレグ。
【請求項14】
前記熱硬化性樹脂組成物が、(G)エポキシ樹脂及び(H)エポキシ樹脂硬化剤を含有する、請求項10に記載のプリプレグ。
【請求項15】
前記熱硬化性樹脂組成物が、(K)シリコーン変性マレイミド化合物及び(L)イミダゾール化合物を含有する、請求項10に記載のプリプレグ。
【請求項16】
請求項10~15のいずれか1項に記載のプリプレグと金属箔とを含有してなる積層板。
【請求項17】
請求項10~15のいずれか1項に記載のプリプレグ又は請求項16に記載の積層板を含有してなるプリント配線板。
【請求項18】
請求項17に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
【請求項19】
前記熱硬化性樹脂組成物が、(G)エポキシ樹脂及び(H)エポキシ樹脂硬化剤を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項20】
前記熱硬化性樹脂組成物が、(K)シリコーン変性マレイミド化合物及び(L)イミダゾール化合物を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のプリプレグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグの製造方法、プリプレグ、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化及び多機能化が一段と進み、これに伴い、LSI(Large Scale Integration)、チップ部品等の高集積化が進み、その形態も多ピン化及び小型化へと急速に変化している。このため、電子部品の実装密度を向上するために、多層プリント配線板の微細配線化の開発が進められている。これらの要求に合致する多層プリント配線板の製造手法として、例えば、プリプレグ等を絶縁層として用い、必要な部分のみ、例えばレーザ照射によって形成したビアホール(以下、「レーザビア」ともいう)で接続しながら配線層を形成するビルドアップ方式の多層プリント配線板が、軽量化、小型化及び微細配線化に適した手法として主流になりつつある。
【0003】
多層プリント配線板では微細な配線ピッチで形成された複数層の配線パターン間の高い電気的接続信頼性及び優れた高周波特性を備えていることが重要であり、また、半導体チップとの高い接続信頼性が要求される。特に、近年、多機能型携帯電話端末等のマザーボードにおいて、高速通信化、配線の高密度化、配線板の極薄化と共に、配線板の配線幅(L)と間隔(S)(以下、配線幅と間隔とを合わせて[L/S]と表記することがある)も狭小化する傾向にある。このようなL/Sの狭小化に伴い、配線板を歩留り良く安定して生産することが困難となりつつある。また、従来の配線板の設計では、通信障害等を考慮して、一部の層に「スキップ層」と呼ばれる配線パターンの無い層を設けている。電子機器が高機能になって配線設計量が増加して配線板の層数が増加していくが、前記スキップ層を設けることにより、マザーボードの厚みがより一層増加するという問題が生じている。
これらの問題を改善する方法として、配線板に使用される絶縁材料の比誘電率を低下させることが有効である。絶縁材料の比誘電率の低下により、L/Sのインピーダンスコントロールをし易くなることから、L/Sを現状設計に近い形状で安定生産でき、スキップ層を減らすことで層数の減少が可能となる。そのため、配線板に使用される絶縁材料には、比誘電率の小さい材料特性が求められる。
【0004】
近年、電子機器の高密度化に伴い、薄型化と低価格化が進んでいる携帯電話等のマザーボードにおいても、薄型化に対応するために比誘電率が低い材料が求められている。また、サーバー、ルータ、携帯基地局等に代表される通信系の機器においても、より高周波帯領域で使用されるようになってきており、また、電子部品のはんだ付けに高融点の鉛フリーはんだが利用されるようになってきたことから、これらに使用される基板の材料としては、低誘電率、高ガラス転移温度(高Tg)であり、且つ、リフロー耐熱性に優れた材料が求められる傾向にある。
【0005】
また、多機能型携帯電話端末等に使用されるマザーボードは、配線密度の増加及びパターン幅の狭小化に伴い、層間を接続する際には、小径なレーザビアによる接続が要求されている。接続信頼性の観点から、フィルドめっきが使用される事例が多く、内層銅とめっき銅の界面における接続性が非常に重要であることから、基材のレーザ加工性の向上も求められる傾向にある。
基材のレーザ加工後に、樹脂の残渣成分を除去する工程(デスミア処理工程)が行われることが一般的である。レーザビア底面及び壁面においてデスミア処理が行われることから、デスミア処理によって基材の樹脂成分が大量に溶解した場合、樹脂の溶解によりレーザビア形状が著しく変形するおそれがあり、また、壁面の凹凸のバラつきによるめっき付き回りの不均一性が生じる等の種々の問題が起こり得る。このことから、デスミア処理によって基材の樹脂成分が溶解する量、いわゆるデスミア溶解量が適正な値となることが求められる。
【0006】
配線板に使用される絶縁材料に求められる種々の特性の中でも、比誘電率を小さくすることを目的として、比誘電率の小さいエポキシ樹脂を含有させる方法、シアネート基を導入する方法、ポリフェニレンエーテルを含有させる方法等が用いられてきた。例えば、エポキシ樹脂を含有した樹脂組成物(特許文献1参照)、ポリフェニレンエーテルとビスマレイミドとを含有した樹脂組成物(特許文献2参照)、ポリフェニレンエーテルとシアネート樹脂とを含有した樹脂組成物(特許文献3参照)、スチレン系熱可塑性エラストマー等及び/又はトリアリルシアヌレート等の少なくとも一方を含有した樹脂組成物(特許文献4参照)、ポリブタジエンを含有した樹脂組成物(特許文献5参照)、ポリフェニレンエーテル系樹脂と、多官能性マレイミド及び/又は多官能性シアネート樹脂と、液状ポリブタジエンと、を予備反応させてなる樹脂組成物(特許文献6参照)、不飽和二重結合基を有する化合物を付与又はグラフトさせたポリフェニレンエーテルと、トリアリルシアヌレート及び/又はトリアリルイソシアヌレート等とを含有した樹脂組成物(特許文献7参照)、ポリフェニレンエーテルと不飽和カルボン酸又は不飽和酸無水物との反応生成物と、多官能性マレイミド等とを含有した樹脂組成物(特許文献8参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58-69046号公報
【特許文献2】特開昭56-133355号公報
【特許文献3】特公昭61-18937号公報
【特許文献4】特開昭61-286130号公報
【特許文献5】特開昭62-148512号公報
【特許文献6】特開昭58-164638号公報
【特許文献7】特開平2-208355号公報
【特許文献8】特開平6-179734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、配線板に使用される絶縁材料には比誘電率を小さくすること等の種々の特性が求められる傾向にあるが、小径なレーザビアによる層間接続に関して、プリプレグの寸法変化量のバラつきが小さいことも、最も重要な特性の一つとして挙げられる。マザーボードの薄型化に伴い、プリプレグの積層方法としては多段階積層方法を必要とし、プリプレグには複数回の熱量及び積層時の応力が加えられることになる。そのため、プリプレグの寸法変化量のバラつき(熱収縮量のバラつきを意味する)が大きい場合、積層する毎に層間を接続するビアの位置ずれ不良の発生が起こり得る。このことから、プリプレグの熱収縮量のバラつきを安定化することが求められる。
しかしながら、本発明者らの検討によると、従来の樹脂組成物を含有してなるプリプレグでは、この寸法変化量のバラつきが十分に抑制されないため、この点においてさらなる改善の余地があることが判明した。
【0009】
そこで、本発明の課題は、寸法変化量のバラつきが小さいプリプレグの製造方法を提供すること、及び、寸法変化量のバラつきが小さいプリプレグ、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供することにある。
また、本発明の課題は、ビアの位置ずれ不良の発生が少ないプリプレグ、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させた後、該熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化してプリプレグ前駆体を得た後に、所定の熱源温度でプリプレグ前駆体の表面を加熱処理してプリプレグを得る表面加熱処理工程を経ることによって得られるプリプレグが、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、係る知見に基づいて完成したものである。
【0011】
本発明は、下記[1]~[20]に関する。
[1]熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させた後、該熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化してプリプレグ前駆体を得る工程、及び
前記プリプレグ前駆体を得る工程の後に、表面加熱処理工程を有し、
前記表面加熱処理工程は、熱源温度200~700℃でプリプレグ前駆体の表面を加熱処理する工程である、
プリプレグの製造方法。
[2]熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させた後、該熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化してプリプレグ前駆体を得る工程、及び
前記プリプレグ前駆体を得る工程の後に、表面加熱処理工程を有し、
前記表面加熱処理工程は、プリプレグ前駆体の表面温度が40~130℃となるようにプリプレグ前駆体の表面を加熱処理する工程である、
プリプレグの製造方法。
[3]前記プリプレグ前駆体を得る工程の後、且つ前記表面加熱処理工程の前に、プリプレグ前駆体を5~60℃に冷却する工程を有する、上記[1]又は[2]に記載のプリプレグの製造方法。
[4]前記表面加熱処理の時間が1.0~10.0秒である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
[5]前記熱硬化性樹脂組成物が(A)マレイミド化合物を含有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
[6]前記(A)成分が、(a1)少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物と、(a2)下記一般式(a2-1)で示されるモノアミン化合物と、(a3)下記一般式(a3-1)で示されるジアミン化合物とを反応させて得られる、N-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物である、上記[5]に記載のプリプレグの製造方法。
【化1】
(一般式(a2-1)中、R
A4は、水酸基、カルボキシ基及びスルホン酸基から選択される酸性置換基を示す。R
A5は、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子を示す。tは1~5の整数、uは0~4の整数であり、且つ、1≦t+u≦5を満たす。但し、tが2~5の整数の場合、複数のR
A4は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、uが2~4の整数の場合、複数のR
A5は同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【化2】
(一般式(a3-1)中、X
A2は、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基又は-O-を示す。R
A6及びR
A7は、各々独立に、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基又はスルホン酸基を示す。v及びwは、各々独立に、0~4の整数である。)
[7]前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに
(B)エポキシ樹脂、
(C)置換ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂、及び
(D)アミノシラン系カップリング剤で処理されたシリカ
を含有する、上記[5]又は[6]に記載のプリプレグの製造方法。
[8]前記(B)成分が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[7]に記載のプリプレグの製造方法。
[9]前記(C)成分が、下記一般式(C-i)で表される構造単位と下記式(C-ii)で表される構造単位とを有する共重合樹脂である、上記[7]又は[8]に記載のプリプレグの製造方法。
【化3】
(式中、R
C1は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、R
C2は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、水酸基又は(メタ)アクリロイル基である。xは、0~3の整数である。但し、xが2又は3である場合、複数のR
C2は同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
[10]基材及び熱硬化性樹脂組成物を含有してなり、下記方法に従って求める標準偏差σが0.012%以下であるプリプレグ。
標準偏差σの算出方法:
プリプレグ1枚の両面に厚さ18μmの銅箔を重ね、190℃、2.45MPaにて90分間加熱加圧成形し、厚さ0.1mmの両面銅張積層板を作製する。こうして得られた両面銅張積層板について、面内に直径1.0mmの穴開けを
図1に記載の1~8の場所に実施する。
図1に記載のたて糸方向(1-7、2-6、3-5)及びよこ糸方向(1-3、8-4、7-5)の各3点ずつの距離を画像測定機を使用して測定し、各測定距離を初期値とする。その後、外層銅箔を除去し、乾燥機にて185℃で60分間加熱する。冷却後、初期値の測定方法と同様にして、たて糸方向(1-7、2-6、3-5)及びよこ糸方向(1-3、8-4、7-5)の各3点ずつの距離を測定する。各測定距離の初期値に対する変化率からそれらの変化率の平均値を求め、該平均値に対する標準偏差σを算出する。
[11]上記[1]~[9]のいずれかに記載の製造方法により得られた、上記[10]に記載のプリプレグ。
[12]前記熱硬化性樹脂組成物が(A)マレイミド化合物を含有する、上記[10]に記載のプリプレグ。
[13]前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに
(B)エポキシ樹脂、
(C)置換ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂、及び
(D)アミノシラン系カップリング剤で処理されたシリカ
を含有する、上記[10]又は[12]に記載のプリプレグ。
[14]前記熱硬化性樹脂組成物が、(G)エポキシ樹脂及び(H)エポキシ樹脂硬化剤を含有する、上記[10]に記載のプリプレグ。
[15]前記熱硬化性樹脂組成物が、(K)シリコーン変性マレイミド化合物及び(L)イミダゾール化合物を含有する、上記[10]に記載のプリプレグ。
[16]上記[10]~[15]のいずれかに記載のプリプレグと金属箔とを含有してなる積層板。
[17]上記[10]~[15]のいずれかに記載のプリプレグ又は上記[16]に記載の積層板を含有してなるプリント配線板。
[18]上記[17]に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
[19]前記熱硬化性樹脂組成物が、(G)エポキシ樹脂及び(H)エポキシ樹脂硬化剤を含有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
[20]前記熱硬化性樹脂組成物が、(K)シリコーン変性マレイミド化合物及び(L)イミダゾール化合物を含有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、寸法変化量のバラつきが小さいプリプレグの製造方法を提供すること、及び、寸法変化量のバラつきが小さいプリプレグ、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供することができる。また、本発明は、ビアの位置ずれ不良の発生が少ないプリプレグ、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージも提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例における寸法変化量のバラつきの測定に用いる評価基板の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値及び上限値と任意に組み合わせられる。
また、本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本発明に含まれる。
【0015】
[プリプレグの製造方法]
本発明は、熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させた後、該熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化してプリプレグ前駆体を得る工程(工程1)、及び
前記プリプレグ前駆体を得る工程の後に、表面加熱処理工程(工程3)を有するプリプレグの製造方法であり、前記工程3は、熱源温度200~700℃でプリプレグ前駆体の表面を加熱処理してプリプレグを得る工程である。
前記工程3は、前記プリプレグ前駆体を得る工程の後に、プリプレグ前駆体の表面温度が40~130℃となるようにプリプレグ前駆体の表面を加熱処理してプリプレグを得る表面加熱処理工程ということもできる。
なお、通常、前記プリプレグ前駆体を得る工程(工程1)の後、且つ前記表面加熱処理工程(工程3)の前に、プリプレグ前駆体を5~35℃に冷却する工程(工程2)を有することが好ましい。
以下、工程1~3について順に説明し、その後、プリプレグを構成する基材及び熱硬化性樹脂組成物について説明する。
【0016】
<工程1>
工程1は、熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸した後、該熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化してプリプレグ前駆体を得る工程である。
熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸する方法としては、特に限定されないが、ホットメルト法、ソルベント法等が挙げられる。
ホットメルト法は、加熱により低粘度化した熱硬化性樹脂組成物を直接基材に含浸させる方法であり、例えば、熱硬化性樹脂組成物を剥離性に優れる塗工紙等に一旦塗工して樹脂フィルムを形成した後、それを基材にラミネートする方法、ダイコーター等により熱硬化性樹脂組成物を基材に直接塗工する方法等が挙げられる。
ソルベント法は、熱硬化性樹脂組成物に有機溶剤を含有させて樹脂ワニスとした状態で基材に含浸させる方法であり、例えば、基材を樹脂ワニスに浸漬させた後、乾燥する方法等が挙げられる。
【0017】
熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸した後、加熱処理を施すことによって、熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化させたプリプレグ前駆体を得ることができる。
ここで、前記ホットメルト法を適用する場合、B-ステージ化は、前記樹脂フィルムを基材にラミネートする際における加熱と同時に行ってもよい。すなわち、前記樹脂フィルムを、加熱しながら基材にラミネートしつつ、そのまま加熱を継続して、熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化してプリプレグ前駆体を得てもよい。その場合、前記ラミネート時における加熱温度とB-ステージ化する際の加熱温度は、同一であっても異なっていてもよい。前記樹脂フィルムを基材にラミネートする際における加熱温度は、特に限定されないが、好ましくは15~150℃であり、20~130℃であってもよく、20~100℃であってもよい。
また、前記ソルベント法を適用する場合、B-ステージ化は、前記樹脂ワニスを乾燥させる際の加熱と同時に行ってもよい。すなわち、基材を樹脂ワニスに浸漬させた後、加熱により有機溶媒を乾燥させつつ、そのまま加熱を継続して、熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化してプリプレグ前駆体を得てもよい。その場合、前記ラミネート時における加熱温度とB-ステージ化する際の加熱温度は、同一であっても異なっていてもよい。前記樹脂ワニスを乾燥させる際の加熱温度は、特に限定されないが、好ましくは10~190℃であり、15~180℃であってもよく、15~170℃であってもよい。
【0018】
本工程1におけるB-ステージ化の条件は、熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化できる条件であれば特に限定されず、熱硬化性樹脂の種類等に応じて適宜決定すればよい。加熱温度としては、例えば、好ましくは70~190℃であり、80~180℃であってもよく、120~180℃であってもよく、140~180℃であってもよい。加熱方法としては、特に制限はなく、パネルヒーターによる加熱方法、熱風による加熱方法、高周波による加熱方法、磁力線による加熱方法、レーザによる加熱方法、これらを組み合せた加熱方法等が挙げられる。これらの中でも、パネルヒーターによる加熱方法、熱風による加熱方法が簡便であり好ましい。また、加熱時間としては、例えば、1~30分間であり、2~20分間であってもよく、2~10分間であってもよく、2~6分間であってもよい。
【0019】
<工程2>
工程2は、工程1で得られたプリプレグ前駆体を冷却する工程である。すなわち、工程2は、工程1において、加熱処理を施して熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化させて得たプリプレグ前駆体を、少なくとも該加熱処理を行った温度よりも低い温度に冷却する工程である。
工程2を実施することにより、熱硬化性樹脂組成物のB-ステージ化及び冷却という、一般的にプリプレグを製造する際に付与する熱履歴を受けることとなり、得られたプリプレグ前駆体は、従来のプリプレグに発生する、寸法変化の要因となるひずみ等を内在する傾向にある。
このように、後述する工程3の前に、加熱(工程1)及び冷却(工程2)という熱履歴に起因するひずみ等を内在させておくことにより、工程3による上記ひずみ等の解消及び寸法変化量の均一化が効果的に実現し易くなるため、好ましい。さらに、一度工程3によって解消された、加熱(工程1)及び冷却(工程2)という熱履歴に起因するひずみは、工程3以降に、同じ熱履歴を付与しても発生することがないか、又は発生しても非常に小さいものとなるため、本発明によって得られるプリプレグは、寸法変化量のバラつきが極めて小さいものとなる傾向にある。
【0020】
プリプレグ前駆体の冷却は、自然放冷によって行ってもよく、送風装置、冷却ロール等の冷却装置を用いて行ってもよい。なお、生産性の観点から、送風装置によって冷却を行うことが好ましい。本工程における冷却後のプリプレグ前駆体の表面温度は、通常、5~60℃であり、10~45℃が好ましく、10~30℃がより好ましく、室温がさらに好ましい。
なお、本明細書において、室温とは、加熱、冷却等の温度制御なしの雰囲気温度をいうものとし、一般に、15~25℃程度であるが、天候、季節等によって変わり得るため、該範囲に限定されるものではない。
【0021】
<工程3>
工程3は、前記工程1又は前記工程2で得たプリプレグ前駆体に対して、熱源温度200~700℃でプリプレグ前駆体の表面を加熱処理してプリプレグを得る表面加熱処理工程であり、プリプレグ前駆体の表面温度が40~130℃となるようにプリプレグ前駆体の表面を加熱処理してプリプレグを得る表面加熱処理工程ということもできる。
本工程3によって、寸法変化量のバラつきが小さいプリプレグとなる。その正確な理由は明らかではないが、本工程3により、工程1又は工程2で得たプリプレグ前駆体中における基材のひずみを解消し、該ひずみに由来する硬化時の寸法変化を低減することにより、寸法変化量のバラつきが低減されたものと考えられる。該寸法変化量のバラつきの低減によって、ビアの位置ずれ不良の発生が少なくなる。
【0022】
工程3における表面加熱処理の加熱方法としては、特に制限はなく、パネルヒーターによる加熱方法、熱風による加熱方法、高周波による加熱方法、磁力線による加熱方法、レーザによる加熱方法、これらを組み合せた加熱方法等が挙げられる。これらの中でも、表面温度の制御の容易性の観点から、パネルヒーターによる加熱方法、熱風による加熱方法が好ましい。
本発明の一態様においては、表面加熱処理は熱源温度200~700℃で実施するが、プリプレグの生産性をより良好に保つ観点、及びプリプレグをB-ステージ状態に保ち、成形性を良好に保ちつつ寸法変化量のバラつきを低減させる観点から、工程1においてB-ステージ化させる際の加熱処理よりも高温且つ短時間で行うことが好ましい。当該観点から、表面加熱処理の際の熱源温度は、好ましくは250~700℃、より好ましくは300~600℃、さらに好ましくは350~550℃である。特に、パネルヒーター又は熱風による加熱方法を実施する場合、前記温度範囲で表面加熱処理を実施することが好ましい。
なお、本発明の一態様においては、表面加熱処理は、プリプレグの成形性を良好に保ちつつ、寸法変化量のバラつきを低減する観点から、プリプレグ前駆体の表面温度が、例えば、好ましくは40~130℃、より好ましくは40~110℃、さらに好ましくは60~90℃となるように実施する。前記熱源温度にてプリプレグ前駆体の表面温度を当該範囲とすることが好ましい。
表面加熱処理の加熱時間は、特に制限されるものではないが、プリプレグの生産性を良好に保つ観点、及びプリプレグをB-ステージ状態に保ち、成形性を良好に保ちつつ寸法変化量のバラつきを低減させる観点から、1.0~10.0秒が好ましく、1.5~6.0秒がより好ましく、2.0~4.0秒がさらに好ましい。
表面加熱処理による、プリプレグ前駆体の表面温度の上昇値(すなわち、表面加熱処理前の表面温度と表面加熱処理中に到達する最高表面温度との差の絶対値)は、プリプレグの成形性を良好に保ちつつ、寸法変化量のバラつきを低減する観点から、5~110℃が好ましく、20~90℃がより好ましく、40~70℃がさらに好ましい。
但し、表面加熱処理の詳細な加熱条件は、熱源温度を前述の範囲とすることによってプリプレグ前駆体の表面温度が表面加熱処理を実施する前の表面温度より上昇する条件であればよく、得られるプリプレグの諸特性(例えば、流動性)に著しく影響を与えない範囲であれば特に限定されず、熱硬化性樹脂の種類等に応じて適宜決定すればよい。
【0023】
工程3で得られたプリプレグは、プリプレグの取扱い性及びタック性の観点から、これを冷却する冷却工程に供することが好ましい。プリプレグの冷却は、自然放冷によって行ってもよく、送風装置、冷却ロール等の冷却装置を用いて行ってもよい。冷却後のプリプレグの温度は、通常、5~80℃であり、8~50℃が好ましく、10~30℃がより好ましく、室温がさらに好ましい。
【0024】
以上のようにして得られる本発明のプリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物の固形分換算の含有量は、20~90質量%が好ましく、30~85質量%がより好ましく、50~80質量%がさらに好ましい。
本発明のプリプレグの厚さは、例えば、0.01~0.5mmであり、成形性及び高密度配線を可能にする観点から、0.02~0.3mmが好ましく、0.05~0.2mmがより好ましい。
【0025】
以下、本発明のプリプレグの製造に用いる基材及び熱硬化性樹脂組成物について順に詳述する。
〔基材〕
本発明のプリプレグを構成する基材としては、シート状補強基材が用いられ、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。基材の材質としては、紙、コットンリンターのような天然繊維;ガラス繊維及びアスベスト等の無機繊維;アラミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、テトラフルオロエチレン及びアクリル等の有機繊維;これらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、難燃性の観点から、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維基材としては、Eガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラス等を用いた織布又は短繊維を有機バインダーで接着したガラス織布;ガラス繊維とセルロース繊維とを混沙したもの等が挙げられる。より好ましくは、Eガラスを使用したガラス織布である。
これらの基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット又はサーフェシングマット等の形状を有する。なお、材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され、1種を単独で使用してもよいし、必要に応じて、2種以上の材質及び形状を組み合わせることもできる。
基材の厚さは、例えば、0.01~0.5mmであり、成形性及び高密度配線を可能にする観点から、0.015~0.2mmが好ましく、0.02~0.15mmがより好ましい。これらの基材は、耐熱性、耐湿性、加工性等の観点から、シランカップリング剤等で表面処理したもの、機械的に開繊処理を施したものであることが好ましい。
【0026】
ところで、前記特許文献1~8に記載のプリプレグは、比較的良好な比誘電率を示すが、近年の市場の厳しい要求を満たすことが出来ない事例が多くなってきた。また、寸法変化量のバラつきが十分に抑制されないのみならず、高耐熱性、高金属箔接着性、高ガラス転移温度、低熱膨張性、成形性及びめっき付き回り性(レーザ加工性)のいずれかが不十分となることも多く、この点においても、さらなる改善の余地がある。また従来は、前記特性に対して全てを満足するという観点からの材料開発が十分になされていないのが実情である。
しかし、本発明では、前記本発明のプリプレグの製造方法を利用しながら熱硬化性樹脂組成物の成分を以下のものとすることによって、寸法変化量のバラつきを十分に抑制することに加えて、高耐熱性、高金属箔接着性、高ガラス転移温度、低熱膨張性、成形性及びめっき付き回り性(レーザ加工性)を満足させることができる。この観点から、下記の熱硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0027】
〔熱硬化性樹脂組成物〕
本発明で使用し得る熱硬化性樹脂組成物は、特に制限されるものではないが、寸法変化量のバラつきを十分に抑制することに加えて、高耐熱性、高金属箔接着性、高ガラス転移温度、低熱膨張性、成形性及びめっき付き回り性(レーザ加工性)を満足させる観点から、(A)マレイミド化合物を含有する熱硬化性樹脂組成物(以下、熱硬化性樹脂組成物[I]と称する)であることが好ましい。同様の観点から、熱硬化性樹脂組成物[I]は、さらに、(B)エポキシ樹脂、(C)置換ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂、及び(D)アミノシラン系カップリング剤で処理されたシリカを含有することがより好ましい。同様の観点から、熱硬化性樹脂組成物[I]は、(E)硬化剤を含有することが好ましく、また、難燃性の観点から、(F)難燃剤を含有することが好ましい。
また、寸法変化量のバラつきを十分に抑制する観点から、(G)エポキシ樹脂及び(H)エポキシ樹脂硬化剤、並びに必要に応じて、(I)硬化促進剤及び(J)無機充填材を含有するエポキシ樹脂組成物[II]であってもよいし、(K)シリコーン変性マレイミド化合物及び(L)イミダゾール化合物、並びに必要に応じて(M)無機充填材を含有する熱硬化性樹脂組成物[III]であってもよい。
【0028】
まず、熱硬化性樹脂組成物[I]が含有する各成分について詳細に説明する。
<(A)マレイミド化合物>
(A)成分はマレイミド化合物(以下、マレイミド化合物(A)と称することがある)であり、好ましくはN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物であり、より好ましくは、(a1)少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物[以下、マレイミド化合物(a1)と略称する]と、(a2)下記一般式(a2-1)
【化4】
(一般式(a2-1)中、R
A4は、水酸基、カルボキシ基及びスルホン酸基から選択される酸性置換基を示す。R
A5は、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子を示す。tは1~5の整数、uは0~4の整数であり、且つ、1≦t+u≦5を満たす。但し、tが2~5の整数の場合、複数のR
A4は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、uが2~4の整数の場合、複数のR
A5は同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
で示されるモノアミン化合物[以下、モノアミン化合物(a2)と略称する]と、(a3)下記一般式(a3-1)
【化5】
(一般式(a3-1)中、X
A2は、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基又は-O-を示す。R
A6及びR
A7は、各々独立に、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基又はスルホン酸基を示す。v及びwは、各々独立に、0~4の整数である。)
で示されるジアミン化合物[以下、ジアミン化合物(a3)と略称する]とを反応させて得られる、N-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物である。
以下、マレイミド化合物(A)に関する記載は、上記のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物の記載として読むこともできる。
【0029】
マレイミド化合物(A)の重量平均分子量(Mw)は、有機溶媒への溶解性の観点及び機械強度の観点から、好ましくは400~3,500、より好ましくは400~2,300、さらに好ましくは800~2,000である。なお、本明細書における重量平均分子量は、溶離液としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(標準ポリスチレン換算)で測定された値であり、より具体的には実施例に記載の方法により測定された値である。
【0030】
(マレイミド化合物(a1))
マレイミド化合物(a1)は、少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物である。
マレイミド化合物(a1)としては、複数のマレイミド基のうちの任意の2個のマレイミド基の間に脂肪族炭化水素基を有する(但し、芳香族炭化水素基は存在しない)マレイミド化合物[以下、脂肪族炭化水素基含有マレイミドと称する]であるか、又は、複数のマレイミド基のうちの任意の2個のマレイミド基の間に芳香族炭化水素基を含有するマレイミド化合物[以下、芳香族炭化水素基含有マレイミドと称する]が挙げられる。これらの中でも、高耐熱性、低比誘電率、高金属箔接着性、高ガラス転移温度、低熱膨張性、成形性及びめっき付き回り性の観点から、芳香族炭化水素基含有マレイミドが好ましい。芳香族炭化水素基含有マレイミドは、任意に選択した2つのマレイミド基の組み合わせのいずれかの間に芳香族炭化水素基を含有していればよく、また、芳香族炭化水素基と共に脂肪族炭化水素基を有していてもよい。
マレイミド化合物(a1)としては、高耐熱性、低比誘電率、高金属箔接着性、高ガラス転移温度、低熱膨張性、成形性及びめっき付き回り性の観点から、1分子中に2個~5個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物が好ましく、1分子中に2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物がより好ましい。また、マレイミド化合物(a1)としては、高耐熱性、低比誘電率、高金属箔接着性、高ガラス転移温度、低熱膨張性、成形性及びめっき付き回り性の観点から、下記一般式(a1-1)~(a1-4)のいずれかで表される芳香族炭化水素基含有マレイミドであることがより好ましく、下記一般式(a1-1)、(a1-2)又は(a1-4)で表される芳香族炭化水素基含有マレイミドであることがさらに好ましく、下記一般式(a1-2)で表される芳香族炭化水素基含有マレイミドであることが特に好ましい。
【0031】
【0032】
上記式中、RA1~RA3は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基を示す。XA1は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S-S-又はスルホニル基を示す。p、q及びrは、各々独立に、0~4の整数である。sは、0~10の整数である。
RA1~RA3が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、高耐熱性、低比誘電率、高金属箔接着性、高ガラス転移温度、低熱膨張性、成形性及びめっき付き回り性の観点から、好ましくは炭素数1~3の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチル基、エチル基である。
【0033】
XA1が示す炭素数1~5のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、高耐熱性、低比誘電率、高金属箔接着性、高ガラス転移温度、低熱膨張性、成形性及びめっき付き回り性の観点から、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基であり、より好ましくはメチレン基である。
XA1が示す炭素数2~5のアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、高耐熱性、低比誘電率、高金属箔接着性、高ガラス転移温度、低熱膨張性、成形性及びめっき付き回り性の観点から、イソプロピリデン基が好ましい。
XA1としては、上記選択肢の中でも、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基が好ましい。より好ましいものは前述の通りである。
p、q及びrは、各々独立に、0~4の整数であり、高耐熱性、低比誘電率、高金属箔接着性、高ガラス転移温度、低熱膨張性、成形性及びめっき付き回り性の観点から、いずれも、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。
sは、0~10の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0~5、より好ましくは0~3である。特に、一般式(a1-3)で表される芳香族炭化水素基含有マレイミド化合物は、sが0~3の混合物であることが好ましい。
【0034】
マレイミド化合物(a1)としては、具体的には、例えば、N,N’-エチレンビスマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素基含有マレイミド;N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-[1,3-(2-メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[1,3-(4-メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-(1,4-フェニレン)ビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、1,4-ビス(4-マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス(4-マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド等の芳香族炭化水素基含有マレイミドが挙げられる。
【0035】
これらの中でも、反応率が高く、より高耐熱性化できるという観点からは、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ジスルフィド、N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましく、安価であるという観点からは、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミドが好ましく、溶剤への溶解性の観点からは、ビス(4-マレイミドフェニル)メタンが特に好ましい。
マレイミド化合物(a1)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
(モノアミン化合物(a2))
モノアミン化合物(a2)は、下記一般式(a2-1)で示されるモノアミン化合物である。
【化7】
【0037】
上記一般式(a2-1)中、RA4は、水酸基、カルボキシ基及びスルホン酸基から選択される酸性置換基を示す。RA5は、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子を示す。tは1~5の整数、uは0~4の整数であり、且つ、1≦t+u≦5を満たす。但し、tが2~5の整数の場合、複数のRA4は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、uが2~4の整数の場合、複数のRA5は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
RA4が示す酸性置換基としては、溶解性及び反応性の観点から、好ましくは水酸基、カルボキシ基であり、耐熱性も考慮すると、より好ましくは水酸基である。
tは1~5の整数であり、高耐熱性、低比誘電率、高金属箔接着性、高ガラス転移温度、低熱膨張性、成形性及びめっき付き回り性の観点から、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。
RA5が示す炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。
RA5が示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
uは0~4の整数であり、高耐熱性、低比誘電率、高金属箔接着性、高ガラス転移温度、低熱膨張性、成形性及びめっき付き回り性の観点から、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0又は1、特に好ましくは0である。
モノアミン化合物(a2)としては、高耐熱性、低比誘電率、高金属箔接着性、高ガラス転移温度、低熱膨張性、成形性及びめっき付き回り性の観点から、より好ましくは下記一般式(a2-2)又は(a2-3)で表されるモノアミン化合物であり、さらに好ましくは下記一般式(a2-2)で表されるモノアミン化合物である。但し、一般式(a2-2)及び(a2-3)中のRA4、RA5及びuは、一般式(a2-1)中のものと同じであり、好ましいものも同じである。
【0038】
【0039】
モノアミン化合物(a2)としては、例えば、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、o-アミノ安息香酸、m-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸、o-アミノベンゼンスルホン酸、m-アミノベンゼンスルホン酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、3,5-ジヒドロキシアニリン、3,5-ジカルボキシアニリン等の、酸性置換基を有するモノアミン化合物が挙げられる。
これらの中でも、溶解性及び反応性の観点からは、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、p-アミノ安息香酸、3,5-ジヒドロキシアニリンが好ましく、耐熱性の観点からは、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノールが好ましく、誘電特性、低熱膨張性及び製造コストも考慮すると、p-アミノフェノールがより好ましい。
モノアミン化合物(a2)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
(ジアミン化合物(a3))
ジアミン化合物(a3)は、下記一般式(a3-1)で示されるジアミン化合物である。
【化9】
(式中、X
A2は、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基又は-O-を示す。R
A6及びR
A7は、各々独立に、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基又はスルホン酸基を示す。v及びwは、各々独立に、0~4の整数である。)
【0041】
XA2が示す炭素数1~3の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、プロピリデン基等が挙げられる。
XA2としては、メチレン基が好ましい。
RA6及びRA7が示す炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。
v及びwは、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。
【0042】
ジアミン化合物(a3)としては、下記一般式(a3-1’)で示されるジアミン化合物が好ましい。
【化10】
(式中、X
A2、R
A6、R
A7、v及びwは、前記一般式(a3-1)中のものと同じであり、好ましい態様も同じである。)
【0043】
ジアミン化合物(a3)としては、具体的には、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、2,2’-ビス(4,4’-ジアミノジフェニル)プロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,6,6’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジブロモ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,6,6’-テトラメチルクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,6,6’-テトラブロモ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。これらの中でも、安価であるという観点から、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンが好ましく、溶剤への溶解性の観点から、4,4’-ジアミノジフェニルメタンがより好ましい。
【0044】
マレイミド化合物(a1)、モノアミン化合物(a2)及びジアミン化合物(a3)の反応は、好ましくは有機溶媒の存在下、反応温度70~200℃で0.1~10時間反応させることにより実施することが好ましい。
反応温度は、より好ましくは70~160℃、さらに好ましくは70~130℃、特に好ましくは80~120℃である。
反応時間は、より好ましくは1~6時間、さらに好ましくは1~4時間である。
【0045】
(マレイミド化合物(a1)、モノアミン化合物(a2)及びジアミン化合物(a3)の使用量)
マレイミド化合物(a1)、モノアミン化合物(a2)及びジアミン化合物(a3)の反応において、三者の使用量は、モノアミン化合物(a2)及びジアミン化合物(a3)が有する第1級アミノ基当量[-NH2基当量と記す]の総和と、マレイミド化合物(a1)のマレイミド基当量との関係が、下記式を満たすことが好ましい。
0.1≦〔マレイミド基当量〕/〔-NH2基当量の総和〕≦10
〔マレイミド基当量〕/〔-NH2基当量の総和〕を0.1以上とすることにより、ゲル化及び耐熱性が低下することがなく、また、10以下とすることにより、有機溶媒への溶解性、金属箔接着性及び耐熱性が低下することがないため、好ましい。
同様の観点から、より好ましくは、
1≦〔マレイミド基当量〕/〔-NH2基当量の総和〕≦9 を満たし、より好ましくは、
2≦〔マレイミド基当量〕/〔-NH2基当量の総和〕≦8 を満たす。
【0046】
(有機溶媒)
前述の通り、マレイミド化合物(a1)、モノアミン化合物(a2)及びジアミン化合物(a3)の反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。
有機溶媒としては、当該反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限はない。例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒を包含する窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒を包含する硫黄原子含有溶媒;酢酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒などが挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒が好ましく、低毒性であるという観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、γ-ブチロラクトンがより好ましく、揮発性が高く、プリプレグの製造時に残溶剤として残り難いことも考慮すると、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミドがさらに好ましく、ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
有機溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機溶媒の使用量に特に制限はないが、溶解性及び反応効率の観点から、マレイミド化合物(a1)、モノアミン化合物(a2)及びジアミン化合物(a3)の合計100質量部に対して、好ましくは25~1,000質量部、より好ましくは40~700質量部、さらに好ましくは60~250質量部となるようにすればよい。マレイミド化合物(a1)、モノアミン化合物(a2)及びジアミン化合物(a3)の合計100質量部に対して25質量部以上とすることによって溶解性を確保し易くなり、1,000質量部以下とすることによって、反応効率の大幅な低下を抑制し易い。
【0047】
(反応触媒)
マレイミド化合物(a1)、モノアミン化合物(a2)及びジアミン化合物(a3)の反応は、必要に応じて、反応触媒の存在下に実施してもよい。反応触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン系触媒;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール系触媒;トリフェニルホスフィン等のリン系触媒などが挙げられる。
反応触媒は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
反応触媒の使用量に特に制限はないが、マレイミド化合物(a1)とモノアミン化合物(a2)の質量の総和100質量部に対して、好ましくは0.001~5質量部である。
【0048】
<(B)エポキシ樹脂>
(B)成分はエポキシ樹脂(以下、エポキシ樹脂(B)と称することがある)であり、好ましくは1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂である。
1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、グリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂、グリシジルエステルタイプのエポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂(B)は、主骨格の違いによっても種々のエポキシ樹脂に分類され、上記それぞれのタイプのエポキシ樹脂において、さらに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアルキルフェノール共重合ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルクレゾール共重合ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;トリアジン骨格含有エポキシ樹脂;フルオレン骨格含有エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂などに分類される。
これらの中でも、高耐熱性、低比誘電率、高金属箔接着性、高ガラス転移温度、低熱膨張性、成形性及びめっき付き回り性の観点から、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、低熱膨張性及び高ガラス転移温度の観点から、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂がさらに好ましい。
エポキシ樹脂(B)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
エポキシ樹脂(B)のエポキシ当量は、好ましくは100~500g/eq、より好ましくは120~400g/eq、さらに好ましくは140~300g/eq、特に好ましくは170~240g/eqである。
ここで、エポキシ当量は、エポキシ基あたりの樹脂の質量(g/eq)であり、JIS K 7236(2001年)に規定された方法に従って測定することができる。具体的には、株式会社三菱ケミカルアナリテック製の自動滴定装置「GT-200型」を用いて、200mlビーカーにエポキシ樹脂2gを秤量し、メチルエチルケトン90mlを滴下し、超音波洗浄器溶解後、氷酢酸10ml及び臭化セチルトリメチルアンモニウム1.5gを添加し、0.1mol/Lの過塩素酸/酢酸溶液で滴定することにより求められる。
エポキシ樹脂(B)の市販品としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂「EPICLON(登録商標)N-673」(DIC株式会社製、エポキシ当量;205~215g/eq)、ナフタレン型エポキシ樹脂「HP-4032」(三菱ケミカル株式会社製、エポキシ当量;152g/eq)、ビフェニル型エポキシ樹脂「YX-4000」(三菱ケミカル株式会社製、エポキシ当量;186g/eq)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂「HP-7200H」(DIC株式会社製、エポキシ当量;280g/eq)等が挙げられる。なお、エポキシ当量は、その商品の製造会社のカタログに記載された値である。
【0050】
<(C)特定の共重合樹脂>
(C)成分は、置換ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂(以下、共重合樹脂(C)と称することがある)である。置換ビニル化合物としては、例えば、芳香族ビニル化合物、脂肪族ビニル化合物、官能基置換ビニル化合物等が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、1-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン等が挙げられる。脂肪族ビニル化合物としては、例えば、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン等が挙げられる。官能基置換ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル;メチルアクリレート、メチルメタクリレート等の(メタ)アクリロイル基を有する化合物などが挙げられる。
これらの中でも、置換ビニル化合物としては、芳香族ビニル化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
(C)成分としては、下記一般式(C-i)で表される構造単位と下記式(C-ii)で表される構造単位とを有する共重合樹脂が好ましい。
【0051】
【化11】
(式中、R
C1は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、R
C2は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、水酸基又は(メタ)アクリロイル基である。xは、0~3の整数である。但し、xが2又は3である場合、複数のR
C2は同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【0052】
R
C1及びR
C2が表す炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。
R
C2が表す炭素数2~5のアルケニル基としては、例えば、アリル基、クロチル基等が挙げられる。該アルケニル基としては、好ましくは炭素数3~5のアルケニル基、より好ましくは炭素数3又は4のアルケニル基である。
R
C2が表す炭素数6~20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニリル基等が挙げられる。該アリール基としては、好ましくは炭素数6~12のアリール基、より好ましくは6~10のアリール基である。
xは、好ましくは0又は1、より好ましくは0である。
一般式(C-i)で表される構造単位においては、R
C1が水素原子であり、xが0である下記一般式(C-i-1)で表される構造単位、つまりスチレンに由来する構造単位が好ましい。
【化12】
【0053】
共重合樹脂(C)中における、置換ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位の含有比率[置換ビニル化合物に由来する構造単位/無水マレイン酸に由来する構造単位](モル比)は、好ましくは1~9、より好ましくは2~9、さらに好ましくは3~8、特に好ましくは3~7である。また、前記式(C-ii)で表される構造単位に対する前記一般式(C-i)で表される構造単位の含有比率[(C-i)/(C-ii)](モル比)も同様に、好ましくは1~9、より好ましくは2~9、さらに好ましくは3~8、特に好ましくは3~7である。これらのモル比が1以上、好ましくは2以上であれば、誘電特性の改善効果が十分となる傾向にあり、9以下であれば、相容性が良好となる傾向にある。
共重合樹脂(C)中における、置換ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位との合計含有量、及び、一般式(C-i)で表される構造単位と式(C-ii)で表される構造単位との合計含有量は、それぞれ、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは実質的に100質量%である。
共重合樹脂(C)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは4,500~18,000、より好ましくは5,000~18,000、より好ましくは6,000~17,000、さらに好ましくは8,000~16,000、特に好ましくは8,000~15,000、最も好ましくは9,000~13,000である。
【0054】
なお、スチレンと無水マレイン酸の共重合樹脂を用いることによりエポキシ樹脂を低誘電率化する手法は、プリント配線板用材料に適用すると基材への含浸性及び銅箔ピール強度が不十分となるため、一般的には避けられる傾向にある。そのため、前記共重合樹脂(C)を用いることも一般的には避けられる傾向にあるが、本発明は、前記共重合樹脂(C)を用いながらも、前記(A)成分及び(B)成分を含有させることにより、高耐熱性、低比誘電率、高金属箔接着性、高ガラス転移温度及び低熱膨張性を有し、且つ成形性及びめっき付き回り性に優れる熱硬化性樹脂組成物となることが判明して成し遂げられたものである。
【0055】
(共重合樹脂(C)の製造方法)
共重合樹脂(C)は、置換ビニル化合物と無水マレイン酸とを共重合することにより製造することができる。
置換ビニル化合物は、前述の通りである。置換ビニル化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。さらに、前記置換ビニル化合物及び無水マレイン酸以外にも、各種の重合可能な成分を共重合させてもよい。
また、該置換ビニル化合物、特に芳香族ビニル化合物に、フリーデル・クラフツ反応、又はリチウム等の金属系触媒を用いた反応を通じて、アリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、ヒドロキシ基等の置換基を導入してもよい。
【0056】
共重合樹脂(C)としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、「SMA(登録商標)1000」(スチレン/無水マレイン酸=1、Mw=5,000)、「SMA(登録商標)EF30」(スチレン/無水マレイン酸=3、Mw=9,500)、「SMA(登録商標)EF40」(スチレン/無水マレイン酸=4、Mw=11,000)、「SMA(登録商標)EF60」(スチレン/無水マレイン酸=6、Mw=11,500)、「SMA(登録商標)EF80」(スチレン/無水マレイン酸=8、Mw=14,400)[以上、CRAY VALLEY社製]等が挙げられる。
【0057】
<(D)アミノシラン系カップリング剤で処理されたシリカ>
(D)成分として、シリカの中でも、アミノシラン系カップリング剤で処理されたシリカ(以下、アミノシラン系カップリング剤で処理されたシリカ(D)と称することがある)を用いると、低熱膨張性が向上するという効果以外に、前記(A)~(C)成分との密着性が向上することによりシリカの脱落が抑制されるため、過剰なデスミアによるレーザビア形状の変形等を抑制する効果が得られるために好ましい。
【0058】
アミノシラン系カップリング剤としては、具体的には、下記一般式(D-1)で表されるケイ素含有基と、アミノ基とを有するシランカップリング剤が好ましい。
【化13】
(式中、R
D1は、炭素数1~3のアルキル基又は炭素数2~4のアシル基である。yは、0~3の整数である。)
【0059】
RD1が表す炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
RD1が表す炭素数2~4のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、アクリル基が挙げられる。これらの中でも、アセチル基が好ましい。
【0060】
アミノシラン系カップリング剤は、アミノ基を1つ有していてもよいし、2つ有していてもよいし、3つ以上有していてもよいが、通常は、アミノ基を1つ又は2つ有する。
アミノ基を1つ有するアミノシラン系カップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、2-プロピニル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]カルバメート等が挙げられるが、特にこれらに制限されるものではない。
アミノ基を2つ有するアミノシラン系カップリング剤としては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ウレア、1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ウレア等が挙げられるが、特にこれらに制限されるものではない。
【0061】
アミノシラン系カップリング剤で処理されたシリカ(D)の代わりに、(D)成分以外の無機充填材として、例えば、エポキシシラン系カップリング剤、フェニルシラン系カップリング剤、アルキルシラン系カップリング剤、アルケニルシラン系カップリング剤、アルキニルシラン系カップリング剤、ハロアルキルシラン系カップリング剤、シロキサン系カップリング剤、ヒドロシラン系カップリング剤、シラザン系カップリング剤、アルコキシシラン系カップリング剤、クロロシラン系カップリング剤、(メタ)アクリルシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、イソシアヌレートシラン系カップリング剤、ウレイドシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、スルフィドシラン系カップリング剤又はイソシアネートシラン系カップリング剤等で処理されたシリカ;表面処理されていないシリカなどを用いることもできるが、前記効果の観点から、アミノシラン系カップリング剤で処理されたシリカ(D)を用いることが好ましい。
また、アミノシラン系カップリング剤で処理されたシリカ(D)と、上記したその他のカップリング剤で処理されたシリカとを併用してもよい。この場合、特に制限されるものではないが、その他のカップリング剤で処理されたシリカの含有量は、アミノシラン系カップリング剤で処理されたシリカ(D)100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下、特に好ましくは10質量部以下、最も好ましくは5質量部以下である。
【0062】
前記シリカとしては、例えば、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカが挙げられる。乾式法シリカとしては、さらに、製造法の違いにより、破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ(溶融球状シリカ)が挙げられる。シリカは、低熱膨張性及び樹脂に充填した際の高流動性の観点から、溶融シリカが好ましい。
該シリカの平均粒子径に特に制限はないが、0.1~10μmが好ましく、0.1~6μmがより好ましく、0.1~3μmがさらに好ましく、1~3μmが特に好ましい。シリカの平均粒子径を0.1μm以上にすることで、高充填した際の流動性を良好に保つことができ、また、10μm以下にすることで、粗大粒子の混入確率を減らして粗大粒子に起因する不良の発生を抑えることができる。ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
また、該シリカの比表面積は、好ましくは4cm2/g以上、より好ましくは4~9cm2/g、さらに好ましくは5~7cm2/gである。
【0063】
<(E)硬化剤>
熱硬化性樹脂組成物[I]は、さらに、(E)成分として硬化剤(以下、硬化剤(E)と称することがある)を含有してもよい。硬化剤(E)としては、ジシアンジアミド;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン等の、ジシアンジアミドを除く鎖状脂肪族アミン;イソホロンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、N-アミノエチルピペラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等の環状脂肪族アミン;キシレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミンなどが挙げられる。これらの中でも、金属箔接着性及び低熱膨張性の観点から、ジシアンジアミドが好ましい。
該ジシアンジアミドは、H2N-C(=NH)-NH-CNで表され、融点は通常、205~215℃、より純度の高いものでは207~212℃である。ジシアンジアミドは、結晶性物質であり、斜方状晶であってもよいし、板状晶であってもよい。ジシアンジアミドは、純度98%以上のものが好ましく、純度99%以上のものがより好ましく、純度99.4%以上のものがさらに好ましい。ジシアンジアミドとしては、市販品を使用することができ、例えば、日本カーバイド工業株式会社製、東京化成工業株式会社製、キシダ化学株式会社製、ナカライテスク株式会社製等の市販品を使用することができる。
【0064】
<(F)難燃剤>
熱硬化性樹脂組成物[I]は、さらに、(F)成分として難燃剤(以下、難燃剤(F)と称することがある)を含有してもよい。ここで、前記硬化剤の中でもジシアンジアミド等は難燃剤としての効果も有するが、本発明においては、硬化剤として機能し得るものは硬化剤に分類し、(F)成分には包含されないこととする。
難燃剤としては、例えば、臭素や塩素を含有する含ハロゲン系難燃剤;リン系難燃剤;スルファミン酸グアニジン、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤;シクロホスファゼン、ポリホスファゼン等のホスファゼン系難燃剤;三酸化アンチモン等の無機系難燃剤などが挙げられる。これらの中でも、リン系難燃剤が好ましい。
リン系難燃剤としては、無機系のリン系難燃剤と、有機系のリン系難燃剤がある。
無機系のリン系難燃剤としては、例えば、赤リン;リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム;リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物;リン酸;ホスフィンオキシドなどが挙げられる。
有機系のリン系難燃剤としては、例えば、芳香族リン酸エステル、1置換ホスホン酸ジエステル、2置換ホスフィン酸エステル、2置換ホスフィン酸の金属塩、有機系含窒素リン化合物、環状有機リン化合物、リン含有フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中でも、芳香族リン酸エステル、2置換ホスフィン酸の金属塩が好ましい。ここで、金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、チタン塩、亜鉛塩のいずれかであることが好ましく、アルミニウム塩であることが好ましい。また、有機系のリン系難燃剤の中では、芳香族リン酸エステルがより好ましい。
【0065】
芳香族リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ-2,6-キシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)、ビスフェノールA-ビス(ジフェニルホスフェート)、1,3-フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。
1置換ホスホン酸ジエステルとしては、例えば、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル、フェニルホスホン酸ビス(1-ブテニル)等が挙げられる。
2置換ホスフィン酸エステルとしては、例えば、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル等が挙げられる。
2置換ホスフィン酸の金属塩としては、例えば、ジアルキルホスフィン酸の金属塩、ジアリルホスフィン酸の金属塩、ジビニルホスフィン酸の金属塩、ジアリールホスフィン酸の金属塩等が挙げられる。これら金属塩は、前述の通り、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、チタン塩、亜鉛塩のいずれかであることが好ましい。
有機系含窒素リン化合物としては、例えば、ビス(2-アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物;リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム等が挙げられる。
環状有機リン化合物としては、例えば、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等が挙げられる。
これらの中でも、芳香族リン酸エステル、2置換ホスフィン酸の金属塩及び環状有機リン化合物から選択される少なくとも1種類が好ましく、芳香族リン酸エステルがより好ましい。
【0066】
また、前記芳香族リン酸エステルは、下記一般式(F-1)もしくは(F-2)で表される芳香族リン酸エステルであることが好ましく、前記2置換ホスフィン酸の金属塩は、下記一般式(F-3)で表される2置換ホスフィン酸の金属塩であることが好ましい。
【化14】
【0067】
(式中、RF1~RF5は各々独立に、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子である。e及びfは各々独立に0~5の整数であり、g、h及びiは各々独立に0~4の整数である。
RF6及びRF7は各々独立に、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数6~14のアリール基である。Mは、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、カルシウム原子、マグネシウム原子、アルミニウム原子、チタン原子、亜鉛原子である。jは、1~4の整数である。)
【0068】
RF1~RF5が表す炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。RF1~RF5が表すハロゲン原子としては、フッ素原子等が挙げられる。
e及びfは、0~2の整数が好ましく、2がより好ましい。g、h及びiは、0~2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
RF6及びRF7が表す炭素数1~5のアルキル基としては、RF1~RF5の場合と同じものが挙げられる。
RF6及びRF7が表す炭素数6~14のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基等が挙げられる。該芳香族炭化水素基としては、炭素数6~10のアリール基が好ましい。
jは金属イオンの価数と等しく、つまり、Mの種類に対応して1~4の範囲内で変化する。
Mとしては、アルミニウム原子が好ましい。なお、Mがアルミニウム原子である場合、jは3である。
【0069】
(熱硬化性樹脂組成物[I]の各成分の含有量)
熱硬化性樹脂組成物[I]中、(A)~(D)成分の含有量は、特に制限されるわけではないが、(A)~(C)成分の総和100質量部に対して、(A)成分が15~65質量部、(B)成分が15~50質量部、(C)成分が10~45質量部、(D)成分が30~70質量部であることが好ましい。
(A)~(C)成分の総和100質量部に対して(A)成分が15質量部以上であることにより、高耐熱性、低比誘電率、高ガラス転移温度及び低熱膨張性が得られる傾向にある。一方、65質量部以下であることにより、熱硬化性樹脂組成物[I]の流動性及び成形性が良好となる傾向にある。
(A)~(C)成分の総和100質量部に対して(B)成分が15質量部以上であることにより、高耐熱性、高ガラス転移温度及び低熱膨張性が得られる傾向にある。一方、50質量部以下であることにより、高耐熱性、低比誘電率、高ガラス転移温度及び低熱膨張性となる傾向にある。
(A)~(C)成分の総和100質量部に対して(C)成分が10質量部以上であることにより、高耐熱性及び低比誘電率が得られる傾向にある。一方、45質量部以下であることにより、高耐熱性、高金属箔接着性及び低熱膨張性が得られる傾向にある。
(A)~(C)成分の総和100質量部に対して(D)成分が30質量部以上であることにより、優れた低熱膨張性が得られる傾向にある。一方、70質量部以下であることにより、耐熱性が得られ、且つ熱硬化性樹脂組成物[I]の流動性及び成形性が良好となる傾向にある。
【0070】
また、熱硬化性樹脂組成物[I]に(E)成分を含有させる場合、その含有量は、(A)~(C)成分の総和100質量部に対して、0.5~6質量部であることが好ましい。
(A)~(C)成分の総和100質量部に対して(E)成分が0.5質量部以上であることにより、高金属箔接着性及び優れた低熱膨張性が得られる傾向にある。一方、6質量部以下であることにより、高耐熱性が得られる傾向にある。
【0071】
また、熱硬化性樹脂組成物[I]に(F)成分を含有させる場合、その含有量は、難燃性の観点から、(A)~(C)成分の総和100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.5~10質量部である。特に、(F)成分としてリン系難燃剤を用いる場合、難燃性の観点から、(A)~(C)成分の総和100質量部に対して、リン原子含有率が0.1~3質量部となる量が好ましく、0.2~3質量部となる量がより好ましく、0.5~3質量部となる量がさらに好ましい。
【0072】
(その他の成分)
熱硬化性樹脂組成物[I]には、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、添加剤及び有機溶剤等のその他の成分を含有させることができる。これらは1種を単独で含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよい。
【0073】
(添加剤)
添加剤としては、例えば、前記(D)成分以外の無機充填材、硬化促進剤、着色剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、密着性向上剤、有機充填剤等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
(有機溶剤)
熱硬化性樹脂組成物[I]は、希釈することによって取り扱いを容易にするという観点及び後述するプリプレグを製造し易くする観点から、有機溶剤を含有してもよい。本明細書では、有機溶剤を含有させた熱硬化性樹脂組成物を、樹脂ワニスと称することがある。
該有機溶剤としては、特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤を含む、窒素原子含有溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤を含む硫黄原子含有溶剤;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル等のエステル系溶剤などが挙げられる。
これらの中でも、溶解性の観点から、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、窒素原子含有溶剤が好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンがさらに好ましく、メチルエチルケトンが特に好ましい。
有機溶剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
熱硬化性樹脂組成物[I](樹脂ワニス)における有機溶剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物[I]の取り扱いが容易になる程度に適宜調整すればよく、また、樹脂ワニスの塗工性が良好となる範囲であれば特に制限はないが、熱硬化性樹脂組成物[I]由来の固形分濃度(有機溶剤以外の成分の濃度)が好ましくは30~90質量%、より好ましくは40~80質量%、さらに好ましくは50~80質量%となるようにする。
【0076】
次に、エポキシ樹脂組成物[II]が含有する各成分について詳細に説明する。なお、前記熱硬化性樹脂組成物[I]との重複を避けるために、エポキシ樹脂組成物[II]は、熱硬化性樹脂組成物[I]が含有する(A)マレイミド化合物を含有していなくてもよいが、特にその態様に限定されるものではなく、前記(A)マレイミド化合物を含有していてもよい。
【0077】
<(G)エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂組成物[II]が含有する(G)エポキシ樹脂としては、前記熱硬化性樹脂組成物[I]中の(B)エポキシ樹脂と同じものが挙げられ、同様に説明される。それらの中でも、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、低熱膨張性及び高ガラス転移温度の観点から、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂がさらに好ましい。
【0078】
<(H)エポキシ樹脂硬化剤>
エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、各種フェノール樹脂化合物、酸無水物化合物、アミン化合物、ヒドラジット化合物等が挙げられる。フェノール樹脂化合物としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等が挙げられ、酸無水物化合物としては、例えば、無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルハイミック酸等が挙げられる。また、アミン化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、グアニル尿素等が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂硬化剤の中でも、信頼性を向上させる観点から、ノボラック型フェノール樹脂が好ましく、クレゾールノボラック樹脂がより好ましい。
【0079】
ノボラック型フェノール樹脂は、市販品を用いてよく、例えば、「TD2090」(DIC株式会社製、商品名)等のフェノールノボラック樹脂、「KA-1165」(DIC株式会社製、商品名)等のクレゾールノボラック樹脂などが挙げられる。また、例えば、「フェノライトLA-1356」(DIC株式会社製、商品名)、「フェノライトLA7050シリーズ」(DIC株式会社製、商品名)等のトリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂の市販品が挙げられ、例えば、「フェノライトLA-3018」(DIC株式会社製、商品名)等のトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂が挙げられる。
【0080】
エポキシ樹脂組成物[II]は、必要に応じて、(I)硬化促進剤及び(J)無機充填材を含有していてもよい。
<(I)硬化促進剤>
エポキシ樹脂組成物[II]は、(G)エポキシ樹脂と(H)エポキシ樹脂硬化剤との反応促進の観点から、(I)硬化促進剤を含有することが好ましい。(I)硬化促進剤としては、例えば、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート等のイミダゾール化合物;トリフェニルホスフィン等の有機リン化合物;ホスホニウムボレート等のオニウム塩;1,8-ジアザビシクロウンデセン等のアミン類;3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレアなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、イミダゾール化合物が好ましく、2-エチル-4-メチルイミダゾールがより好ましい。
【0081】
<(J)無機充填材>
エポキシ樹脂組成物[II]は、低熱膨張化の観点から(J)無機充填材を含有することが好ましい。(J)無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、低熱膨張係数の観点から、シリカが好ましい。
無機充填材の平均粒径は、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、0.3μm以上であることがさらに好ましい。
無機充填材は表面処理を施したものであってもよい。例えば、無機充填材としてシリカを使用する場合、表面処理として、シランカップリング剤処理を施していてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、アミノシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、アミノシランカップリング剤で表面処理を施したシリカが好ましい。
【0082】
(エポキシ樹脂組成物[II]の各成分の含有量)
エポキシ樹脂組成物[II]中、(G)~(J)成分の含有量は、特に制限されるわけではないが、(G)~(J)成分の総和100質量部に対して、(G)成分が5~50質量部、(H)成分が5~50質量部、(I)成分が0.001~1質量部、(J)成分が20~80質量部であることが好ましい。より好ましくは、(G)~(J)成分の総和100質量部に対して、(G)成分が5~35質量部、(H)成分が5~40質量部、(I)成分が0.001~1質量部、(J)成分が35~80質量部である。
【0083】
(その他の成分)
エポキシ樹脂組成物[II]には、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、添加剤及び有機溶剤等のその他の成分を含有させることができる。これらは1種を単独で含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよい。
【0084】
(添加剤)
添加剤としては、例えば、着色剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、密着性向上剤、有機充填剤等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0085】
(有機溶剤)
有機溶剤については、前記熱硬化性樹脂組成物[I]における有機溶剤の説明と同様に説明される。
【0086】
次に、熱硬化性樹脂組成物[III]が含有する各成分について詳細に説明する。
<(K)シリコーン変性マレイミド化合物>
(K)シリコーン変性マレイミド化合物は、シロキサン骨格を有するマレイミド化合物であれば特に制限はない。例えば、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(k-1)[以下、「マレイミド化合物(k-1)」ともいう]と、1分子中に少なくとも2個の第一級アミノ基を有するシロキサン化合物(k-2)[以下、「シロキサン化合物(k-2)」ともいう]との付加反応物等が好ましく挙げられ、マレイミド化合物(k-1)とシロキサン化合物(k-2)とモノアミン化合物[以下、「モノアミン化合物(k-3)」ともいう]との付加反応物であることがより好ましい。
マレイミド化合物(k-1)としては、熱硬化性樹脂組成物[I]における(A)マレイミド化合物の説明中のマレイミド化合物(a1)と同じものを使用できる。
シロキサン化合物(k-2)は、下記一般式(k-2-1)で表される構造単位を含有することが好ましい。
【0087】
【化15】
(一般式(k-2-1)中、R
k1及びR
k2は各々独立に、炭素数1~5のアルキル基、フェニル基、又は置換基を有するフェニル基を示す。)
【0088】
Rk1及びRk2が示す炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
「置換基を有するフェニル基」における、フェニル基が有する置換基としては、例えば、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、炭素数2~5のアルキニル基が挙げられる。該炭素数1~5のアルキル基としては、前記したものと同じものが挙げられる。該炭素数2~5のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。炭素数2~5のアルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
Rk1及びRk2は、いずれも炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0089】
シロキサン化合物(k-2)としては、下記一般式(k-2-2)で表されるシロキサンジアミンがより好ましい。
【0090】
【化16】
(一般式(k-2-2)中、R
k1及びR
k2は、一般式(k-2-1)中のものと同じである。R
k3及びR
k4は各々独立に、炭素数1~5のアルキル基、フェニル基、又は置換基を有するフェニル基を示す。R
k5及びR
k6は各々独立に、2価の有機基を表し、mは2~100の整数である。)
【0091】
Rk3及びRk4が示す炭素数1~5のアルキル基、フェニル基、及び置換基を有するフェニル基は、Rk1及びRk2における説明と同様に説明される。Rk3及びRk4としては、メチル基が好ましい。
Rk5及びRk6が示す2価の有機基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-又はこれらが組み合わされた2価の連結基等が挙げられる。該アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1~10のアルキレン基が挙げられる。該アルケニレン基としては、炭素数2~10のアルケニレン基が挙げられる。該アルキニレン基としては、炭素数2~10のアルキニレン基が挙げられる。該アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等の炭素数6~20のアリーレン基が挙げられる。
これらの中でも、Rk5及びRk6としては、アルキレン基、アリーレン基が好ましい。
mは、好ましくは2~50の整数、より好ましくは3~40の整数、さらに好ましくは5~30の整数、さらに好ましくは7~30の整数である。
【0092】
シロキサン化合物(k-2)の官能基当量に特に制限はないが、好ましくは300~3,000g/mol、より好ましくは300~2,000g/mol、さらに好ましくは300~1,500g/molである。
【0093】
シロキサン化合物(k-2)としては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、「KF-8010」(アミノ基の官能基当量:430g/mol)、「X-22-161A」(アミノ基の官能基当量:800g/mol)、「X-22-161B」(アミノ基の官能基当量:1,500g/mol)、「KF-8012」(アミノ基の官能基当量:2,200g/mol)、「KF-8008」(アミノ基の官能基当量:5,700g/mol)、「X-22-9409」(アミノ基の官能基当量:700g/mol)、「X-22-1660B-3」(アミノ基の官能基当量:2,200g/mol)(以上、信越化学工業株式会社製)、「BY-16-853U」(アミノ基の官能基当量:460g/mol)、「BY-16-853」(アミノ基の官能基当量:650g/mol)、「BY-16-853B」(アミノ基の官能基当量:2,200g/mol)(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)、「XF42-C5742」(アミノ基の官能基当量:1,280g/mol)、「XF42-C6252」(アミノ基の官能基当量:1,255g/mol)、「XF42-C5379」(アミノ基の官能基当量:745g/mol)(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
モノアミン化合物(k-3)としては、前記熱硬化性樹脂組成物[I]におけるモノアミン化合物(a2)と同じものを使用することができ、好ましいものも同じである。
【0095】
前述の通り、(K)シリコーン変性マレイミド化合物の一態様は、前記マレイミド化合物(k-1)と、前記シロキサン化合物(k-2)と、必要に応じてモノアミン化合物(k-3)とを反応させることによって製造することができる。
該反応において、マレイミド化合物(k-1)、シロキサン化合物(k-2)及び必要に応じて使用するモノアミン化合物(k-3)それぞれの使用割合としては、ゲル化防止及び耐熱性の観点から、マレイミド化合物(k-1)のマレイミド基の当量が、シロキサン化合物(k-2)及びモノアミン化合物(k-3)の第一級アミノ基の当量の総和を超えることが好ましく、マレイミド化合物(k-1)のマレイミド基の当量と、シロキサン化合物(k-2)及びモノアミン化合物(k-3)の第一級アミノ基の当量の総和との比〔(k-1)/[(k-2)+(k-3)]が、1~15であることが好ましく、2~10であることがより好ましく、3~10であることがさらに好ましい。
反応温度は、生産性及び均一に反応を進行させる観点から、70~150℃が好ましく、90~130℃がより好ましい。また、反応時間に特に制限は無いが、0.1~10時間が好ましく、1~6時間がより好ましい。
【0096】
<(L)イミダゾール化合物>
(L)イミダゾール化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-1-メチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、4-エチル-2-メチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-エチル-4'-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン等のイミダゾール化合物;イソシアネートマスクイミダゾール、エポキシマスクイミダゾール等の変性イミダゾール化合物;1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート等の、前記イミダゾール化合物とトリメリト酸との塩;前記イミダゾール化合物とイソシアヌル酸との塩;前記イミダゾール化合物と臭化水素酸との塩などが挙げられる。これらの中でも、変性イミダゾール化合物が好ましく、イソシアネートマスクイミダゾールがより好ましい。イミダゾール化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0097】
<(M)無機充填材>
(M)無機充填材としては、前記エポキシ樹脂組成物[II]における(J)無機充填材の説明と同様に説明される。
【0098】
(熱硬化性樹脂組成物[III]の各成分の含有量)
熱硬化性樹脂組成物[III]中、(K)~(M)成分の含有量は、特に制限されるわけではないが、(K)~(M)成分の総和100質量部に対して、(K)成分が15~80質量部、(L)成分が0.01~5質量部、(M)成分が15~80質量部であることが好ましい。より好ましくは、(K)~(M)成分の総和100質量部に対して、(K)成分が30~65質量部、(L)成分が0.01~3質量部、(M)成分が30~65質量部である。
【0099】
(その他の成分)
熱硬化性樹脂組成物[III]には、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、添加剤及び有機溶剤等のその他の成分を含有させることができる。これらは1種を単独で含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよい。
【0100】
(添加剤)
添加剤としては、例えば、前記(M)成分以外の無機充填材、着色剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、密着性向上剤、有機充填剤等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0101】
(有機溶剤)
有機溶剤については、前記熱硬化性樹脂組成物[I]における有機溶剤の説明と同様に説明される。
【0102】
[プリプレグ]
本発明の製造方法により得られるプリプレグは、寸法変化量のバラつきが小さく、さらに、前記熱硬化性樹脂組成物を用いたものであれば、高耐熱性、高金属箔接着性、高ガラス転移温度、低熱膨張性、成形性及びめっき付き回り性(レーザ加工性)にも優れる。
【0103】
また、本発明によれば、以下のプリプレグを提供することができる。本発明の製造方法により得られるプリプレグも、以下のプリプレグに該当し、換言すると、以下のプリプレグは、本発明の製造方法により製造することができる。
基材及び熱硬化性樹脂組成物を含有してなり、下記方法に従って求める標準偏差σが0.012%以下であるプリプレグ。
標準偏差σの算出方法:
プリプレグ1枚の両面に厚さ18μmの銅箔を重ね、190℃、2.45MPaにて90分間加熱加圧成形し、厚さ0.1mmの両面銅張積層板を作製する。こうして得られた両面銅張積層板について、面内に直径1.0mmの穴開けを
図1に記載の1~8の場所に実施する。
図1に記載のたて糸方向(1-7、2-6、3-5)及びよこ糸方向(1-3、8-4、7-5)の各3点ずつの距離を画像測定機を使用して測定し、各測定距離を初期値とする。その後、外層銅箔を除去し、乾燥機にて185℃で60分間加熱する。冷却後、初期値の測定方法と同様にして、たて糸方向(1-7、2-6、3-5)及びよこ糸方向(1-3、8-4、7-5)の各3点ずつの距離を測定する。各測定距離の初期値に対する変化率[(加熱処理後の測定値-初期値)×100/初期値]からそれらの変化率の平均値を求め、該平均値に対する標準偏差σを算出する。
前記画像測定機に特に制限は無いが、例えば、「QV-A808P1L-D」(Mitutoyo社製)を使用することができる。
【0104】
前記標準偏差σは、好ましくは0.011%以下、より好ましくは0.010%以下、さらに好ましくは0.009%以下である。標準偏差σの下限値に特に制限はないが、通常、0.003%以上であり、0.005%以上であってもよいし、0.006%以上であってもよいし、0.007%以上であってもよい。
【0105】
[積層板]
本発明の積層板は、前記プリプレグと金属箔とを含有してなるものである。例えば、前記プリプレグを1枚用いるか又は必要に応じて2~20枚重ね、その片面又は両面に金属箔を配置した構成で、好ましくは加熱して積層成形することにより製造することができる。なお、金属箔を配置した積層板を、金属張積層板と称することがある。
金属箔の金属としては、電気絶縁材料用途で用いられるものであれば特に制限されないが、導電性の観点から、好ましくは、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、又はこれらの金属元素のうちの少なくとも1種を含む合金であることが好ましく、銅、アミルニウムがより好ましく、銅がさらに好ましい。
積層板の成形条件としては、電気絶縁材料用積層板及び多層板の公知の成形手法を適用することができ、例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100~250℃、圧力0.2~10MPa、加熱時間0.1~5時間で成形することができる。
また、本発明のプリプレグと内層用プリント配線板とを組合せ、積層成形して、多層板を製造することもできる。
金属箔の厚みに特に制限はなく、プリント配線板の用途等により適宜選択できる。金属箔の厚みは、好ましくは0.5~150μm、より好ましくは1~100μm、さらに好ましくは5~50μm、特に好ましくは5~30μmである。
【0106】
なお、金属箔にめっきをすることによりめっき層を形成することも好ましい。
めっき層の金属は、めっきに使用し得る金属であれば特に制限されない。めっき層の金属は、好ましくは、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、及びこれらの金属元素のうちの少なくとも1種を含む合金の中から選択されることが好ましい。
めっき方法としては特に制限はなく、公知の方法、例えば電解めっき法、無電解めっき法が利用できる。
【0107】
[プリント配線板]
本発明は、前記プリプレグ又は前記積層板を含有してなるプリント配線板をも提供する。
本発明のプリント配線板は、金属張積層板の金属箔に対して回路加工を施すことにより製造することができる。回路加工は、例えば、金属箔表面にレジストパターンを形成後、エッチングにより不要部分の金属箔を除去し、レジストパターンを剥離後、ドリルにより必要なスルーホールを形成し、再度レジストパターンを形成後、スルーホールに導通させるためのメッキを施し、最後にレジストパターンを剥離することにより行うことができる。このようにして得られたプリント配線板の表面にさらに上記の金属張積層板を前記したのと同様の条件で積層し、さらに、上記と同様にして回路加工して多層プリント配線板とすることができる。この場合、必ずしもスルーホールを形成する必要はなく、バイアホールを形成してもよく、両方を形成することができる。このような多層化は必要枚数行われる。
【0108】
[半導体パッケージ]
本発明の半導体パッケージは、本発明のプリント配線板に半導体を搭載してなるものである。本発明の半導体パッケージは、本発明のプリント配線板の所定の位置に、半導体チップ、メモリ等を搭載して製造することができる。
【実施例0109】
次に、下記の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明をいかなる意味においても制限するものではない。本発明に係る熱硬化性樹脂組成物を用いて、樹脂ワニス、樹脂ワニスを用いて作製したプリプレグ前駆体、該プリプレグ前駆体に表面加熱処理を実施したプリプレグ、さらに銅張積層板を作製し、作製された銅張積層板を評価した。評価方法を以下に示す。
【0110】
[評価方法]
<1.耐熱性(リフローはんだ耐熱性)>
各例で作製した4層銅張積層板を用いて、最高到達温度を266℃とし、260℃以上の恒温槽環境下で30秒間4層銅張積層板を流すことを1サイクルとし、目視にて基板が膨れたと確認できるまでのサイクル数を求めた。サイクル数が多いほど、耐熱性に優れる。
【0111】
<2.比誘電率(Dk)>
ネットワークアナライザ「8722C」(ヒューレットパッカード社製)を用い、トリプレート構造直線線路共振器法により、1GHzにおける両面銅張積層板の比誘電率の測定を実施した。試験片サイズは、200mm×50mm×厚さ0.8mmで、1枚の両面銅張積層板の片面の中心にエッチングにより幅1.0mmの直線線路(ライン長さ200mm)を形成し、裏面は全面に銅を残してグランド層とした。もう1枚の両面銅張積層板について、片面を全面エッチングし、裏面はグランド層とした。これら2枚の両面銅張積層板を、グランド層を外側にして重ね合わせ、ストリップ線路とした。測定は25℃で行った。
比誘電率が小さいほど好ましい。
【0112】
<3.金属箔接着性(銅箔ピール強度)>
金属箔接着性は、銅箔ピール強度によって評価した。各例で作製した両面銅張積層板を銅エッチング液「過硫酸アンモニウム(APS)」(株式会社ADEKA製)に浸漬することにより3mm幅の銅箔を形成して評価基板を作製し、オートグラフ「AG-100C」(株式会社島津製作所製)を用いて銅箔のピール強度を測定した。値が大きいほど、金属箔接着性に優れることを示す。
【0113】
<4.ガラス転移温度(Tg)>
各例で作製した両面銅張積層板を銅エッチング液「過硫酸アンモニウム(APS)」(株式会社ADEKA製)に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置「Q400EM」(TAインスツルメンツ社製)を用い、評価基板の面方向(Z方向)の30~260℃における熱膨張特性を観察し、膨張量の変曲点をガラス転移温度とした。
【0114】
<5.低熱膨張性>
各例で作製した両面銅張積層板を銅エッチング液「過硫酸アンモニウム(APS)」(株式会社ADEKA製)に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置「Q400EM」(TAインスツルメンツ社製)を用いて、評価基板の面方向の熱膨張率(線膨張率)を測定した。なお、試料が有する熱歪みの影響を除去するため、昇温-冷却サイクルを2回繰り返し、2回目の温度変位チャートの、30℃~260℃の熱膨張率[ppm/℃]を測定し、低熱膨張性の指標とした。値が小さいほど、低熱膨張性に優れている。なお、表中には、Tg未満(「<Tg」と表記する。)における熱膨張率とTg超(「>Tg」と表記する。)における熱膨張率とに分けて記載した。
測定条件 1st Run:室温→210℃(昇温速度10℃/min)
2nd Run:0℃→270℃(昇温速度10℃/min)
銅張積層板は、さらなる薄型化が望まれており、これに併せて銅張積層板を構成するプリプレグの薄型化も検討されている。薄型化されたプリプレグは、反りやすくなるため、熱処理時におけるプリプレグの反りが小さいことが望まれる。反りを小さくするためには、基材の面方向の熱膨張率が小さいことが有効である。
【0115】
<6.めっき付き回り性(レーザ加工性)>
各例で作製した4層銅張積層板に対して、レーザマシン「LC-2F21B/2C」(日立ビアメカニクス株式会社製)を用いて、目標穴径80μm、ガウシアン、サイクルモードにより、銅ダイレクト法、パルス幅15μs×1回、7μs×4回を行い、レーザ穴開けを実施した。
得られたレーザ穴開け基板に関して、膨潤液「スウェリングディップセキュリガントP」(アトテックジャパン株式会社製)を70℃、5分、粗化液「ドージングセキュリガントP500J」(アトテックジャパン株式会社製)を70℃、9分、中和液「リダクションコンディショナーセキュリガントP500」(アトテックジャパン株式会社製)を40℃、5分の条件で使用し、デスミア処理を実施した。この後、無電解めっき液「プリガントMSK-DK」(アトテックジャパン株式会社製)を30℃、20分、電気めっき液「カパラシドHL」(アトテックジャパン株式会社製)を24℃、2A/dm2、2時間を実施し、レーザ加工基板にめっきを施した。
得られたレーザ穴開け基板の断面観察を実施し、めっきの付き回り性を確認した。めっきの付き回り性の評価方法として、レーザ穴上部のめっき厚みとレーザ穴底部のめっき厚みの差が、レーザ穴上部のめっき厚みの10%以内であることが付き回り性として好ましいことから、100穴中における、この範囲に含まれる穴の存在割合(%)を求めた。
【0116】
<7.成形性>
各例で作製した4層銅張積層板について、外層銅を除去した後、樹脂の埋め込み性として、340mm×500mmの面内中における、ボイド及びかすれの有無を目視によって確認し、成形性の指標とした。ボイド及びかすれが無い場合、「良好」と示し、ボイド又はかすれが有る場合には、その旨を示す。ボイド及びかすれが無い場合、成形性が良好であると言える。
【0117】
<8.寸法変化量のバラつきの評価>
各例で作製した両面銅張積層板について、面内に直径1.0mmの穴開けを
図1の通りに実施した。
図1に記載の通り、ガラスクロスのたて糸方向(1-7、2-6、3-5)及びよこ糸方向(1-3、8-4、7-5)の各3点ずつの距離を画像測定機「QV-A808P1L-D」(Mitutoyo社製)を使用して測定し、各測定距離を初期値とした。その後、外層銅箔を除去し、乾燥機にて185℃で60分間加熱した。冷却後、初期値の測定方法と同様にして、たて糸方向(1-7、2-6、3-5)及びよこ糸方向(1-3、8-4、7-5)の各3点ずつの距離を測定した。各測定距離の初期値に対する変化率[(測定値-初期値)×100/初期値]からそれらの変化率の平均値を求め、該平均値に対する標準偏差σを算出し、該標準偏差σを寸法変化量のバラつきの指標とした。標準偏差σの値が小さいことが、寸法変化量のバラつきが小さく、好ましいことを示す。
【0118】
以下、実施例及び比較例で使用した各成分について説明する。
【0119】
(A)成分:下記製造例1で製造したマレイミド化合物(A)の溶液を用いた。
[製造例1]
温度計、攪拌装置及び還流冷却管付き水分定量器を備えた容積1Lの反応容器に、4,4’-ジアミノジフェニルメタン19.2g、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン174.0g、p-アミノフェノール6.6g及びジメチルアセトアミド330.0gを入れ、100℃で2時間反応させて、酸性置換基とN-置換マレイミド基とを有するマレイミド化合物(A)(Mw=1,370)のジメチルアセトアミド溶液を得、(A)成分として用いた。
なお、上記重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A-2500、A-5000、F-1、F-2、F-4、F-10、F-20、F-40)[東ソー株式会社製]を用いて3次式で近似した。GPCの条件は、以下に示す。
装置:(ポンプ:L-6200型[株式会社日立ハイテクノロジーズ製])、
(検出器:L-3300型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ製])、
(カラムオーブン:L-655A-52[株式会社日立ハイテクノロジーズ製])
カラム;TSKgel SuperHZ2000+TSKgel SuperHZ2300(全て東ソー株式会社製)
カラムサイズ:6.0mm×40mm(ガードカラム)、7.8mm×300mm(カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:20mg/5mL
注入量:10μL
流量:0.5mL/分
測定温度:40℃
【0120】
(B)成分:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂「EPICLON(登録商標)N-673」(DIC株式会社製)
(C-1)成分:「SMA(登録商標)EF40」(スチレン/無水マレイン酸=4、Mw=11,000、CRAY VALLEY社製)
(C-2)成分:「SMA(登録商標)3000」(スチレン/無水マレイン酸=2、Mw=7,500、CRAY VALLEY社製)
(C-3)成分:「SMA(登録商標)EF80」(スチレン/無水マレイン酸=8、Mw=14,400、CRAY VALLEY社製)
(C-4)成分:「SMA(登録商標)1000」(スチレン/無水マレイン酸=1、Mw=5,000、CRAY VALLEY社製)
【0121】
(D)成分:アミノシラン系カップリング剤により処理された溶融シリカ(平均粒子径:1.9μm、比表面積5.8m2/g)
他の無機充填材:「F05-30」(非処理の破砕シリカ、平均粒子径:4.2μm、比表面積5.8m2/g、福島窯業株式会社製)
【0122】
(E)成分:ジシアンジアミド(日本カーバイド工業株式会社製)
(F)成分:「PX-200」(芳香族リン酸エステル(下記構造式参照)、大八化学工業株式会社製)
【化17】
【0123】
[実施例1~13、比較例1~4]
上記に示した各成分を下記表1~4の通りに配合(但し、溶液の場合は固形分換算量を示す。)し、さらに溶液の不揮発分が65~75質量%になるようにメチルエチルケトンを追加し、各実施例及び各比較例の熱硬化性樹脂組成物に関して樹脂ワニスを調製した。
得られた各樹脂ワニスをIPC規格#3313のガラスクロス(0.1mm)に含浸させ、温度160℃に設定したパネルヒーターで4分間乾燥してB-ステージ化した(工程1)後、室温(約20℃)へ放冷し(工程2)、プリプレグ前駆体を得た。なお、比較例においては、このままプリプレグとして用いた。
各実施例においては、得られたプリプレグ前駆体に対して、表面加熱処理を温度500℃に設定したパネルヒーターで3秒間、表面加熱処理(製品表面温度70℃)を行い、その後、室温(約20℃)まで冷却してプリプレグを作製した(工程3)。
【0124】
(両面銅張積層板の作製及び性能評価)
前記プリプレグ8枚を重ねたものの両面に厚さ18μmの銅箔「3EC-VLP-18」(三井金属株式会社製)を重ね、温度190℃、圧力25kgf/cm2(2.45MPa)にて90分間加熱加圧成形し、厚さ0.8mm(プリプレグ8枚分)の両面銅張積層板を作製し、該銅張積層板を用いて、前記方法に従って、比誘電率、金属箔接着性、ガラス転移温度(Tg)及び低熱膨張性について測定及び評価した。
またプリプレグ1枚の両面に厚さ18μmの銅箔「3EC-VLP-18」(三井金属株式会社製)を重ね、温度190℃、圧力25kgf/cm2(2.45MPa)にて90分間加熱加圧成形し、厚さ0.1mm(プリプレグ1枚分)の両面銅張積層板を作製し、該両面銅張積層板を用いて、前記方法に従って、寸法変化量のバラつきについて測定及び評価した。
【0125】
(4層銅張積層板の作製及び性能評価)
一方で、前記プリプレグ1枚を使用し、両面に厚さ18μmの銅箔「YGP-18」(日本電解株式会社製)を重ね、温度190℃、圧力25kgf/cm2(2.45MPa)にて90分間加熱加圧成形し、厚さ0.1mm(プリプレグ1枚分)の両面銅張積層板を作製した後、両銅箔面に内層密着処理(「BF処理液」(日立化成株式会社製)を使用。)を施し、厚さ0.05mmのプリプレグを1枚ずつ重ね両面に厚さ18μmの銅箔「YGP-18」(日本電解株式会社製)を重ね、温度190℃、圧力25kgf/cm2(2.45MPa)にて90分間加熱加圧成形して4層銅張積層板を作製した。該4層銅張積層板を用いて、前記方法に従って、耐熱性、めっき付き回り性及び成形性の評価を実施した。
結果を表1~4に示す。
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
[実施例14]
実施例1における樹脂ワニスの調製の代わりに、下記の成分を用いて樹脂ワニスを調製した。
ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:NC-3000、エポキシ当量:280~300g/eq)19質量部、クレゾールノボラック樹脂(DIC株式会社製、商品名:KA-1165、水酸基当量:119g/eq)16質量部、2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製)0.02質量部、溶融シリカ(株式会社アドマテックス製、アミノシランカップリング剤処理をした溶融シリカ、平均粒径:2μm)65質量部を混合し、溶媒(メチルエチルケトン)で希釈することによって、樹脂ワニス(固形分濃度:70質量%)を調製した。
その他の工程は実施例1と同様に行うことにより、プリプレグを得た。得られたプリプレグを用いて、実施例1と同様の方法により両面銅張積層板を作製し、該両面銅張積層板を用いて寸法変化量のバラつきについて測定及び評価したところ、標準偏差σの値は0.010%であった。
【0131】
[実施例15]
実施例1における樹脂ワニスの調製の代わりに、下記の成分を用いて樹脂ワニスを調製した。
攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2Lの反応容器に、KF-8010(両末端アミン変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製)75.7gと、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン(大和化成工業株式会社製、商品名:BMI-1000)168.0gと、p-アミノフェノール(東京化成株式会社製)6.4gと、溶媒(メチルエチルケトン)250.0gとを入れ、100℃で3時間反応させることにより、シリコーン変性マレイミド化合物を得た。当該シリコーン変性マレイミド化合物49.5質量部、溶融シリカ50質量部(アドマテックス株式会社製、アミノシランカップリング剤処理をした溶融シリカ)及びイソシアネートマスクイミダゾール0.5質量部(第一工業製薬株式会社製、商品名:G-8009L)を混合し、溶媒(メチルエチルケトン)で希釈することによって、樹脂ワニス(固形分濃度:70質量%)を調製した。
その他の工程は実施例1と同様に行うことにより、プリプレグを得た。得られたプリプレグを用いて、実施例1と同様の方法により両面銅張積層板を作製し、該両面銅張積層板を用いて寸法変化量のバラつきについて測定及び評価したところ、標準偏差σの値は0.009%であった。
【0132】
以上の結果より、以下のことがわかった。
実施例ではプリプレグ前駆体に対して表面加熱処理を実施したため、表面加熱処理を非実施の比較例に対して標準偏差σが小さくなり、寸法変化量のバラつきが十分に抑制された。
また、実施例1~13では、リフローはんだ耐熱性が耐熱要求レベル以上の10サイクル以上を達成し、低比誘電率、高金属箔接着性及び高ガラス転移温度が得られ、且つ低熱膨張性を示した。また、壁面からのガラスクロスの飛び出しや、適度な粗化形状を有すことから、良好なめっき付き回り性を有していることを確認した。成形性においても、樹脂の埋め込み性は良好であり、かすれ及びボイド等の異常は確認されなかった。それらの中でも、実施例1~10においては、実施例11~13よりも、比誘電率及び金属箔接着性がより良好であり、その他の特性も安定して発現していた。