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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071429
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 45/00 20060101AFI20240517BHJP
   B24B 41/047 20060101ALI20240517BHJP
   B24D 7/02 20060101ALI20240517BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20240517BHJP
   B23B 31/06 20060101ALI20240517BHJP
   H01L 21/304 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
B24B45/00 Z
B24B41/047
B24B45/00 A
B24D7/02 B
B23Q11/00 Z
B23B31/06
H01L21/304 631
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040651
(22)【出願日】2024-03-15
(62)【分割の表示】P 2020037294の分割
【原出願日】2020-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 宰
(57)【要約】
【課題】砥石交換の際に、砥石を簡単に取り外すことができる加工装置を提供する。
【解決手段】スピンドルに連結されたスピンドルフランジ17と、スピンドルフランジ17の下面に略密着してスピンドルフランジ17に着脱自在に取り付けられた台金部37と、台金部37の下面に設置されて台金部37と一体化された砥石部38と、を備える砥石14と、スピンドルフランジ17と台金部37との密着箇所にエア100を吹き付けるエア吹出口29a、29bと、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルフランジと、
前記スピンドルフランジの一面に略密着して前記スピンドルフランジに着脱自在に取り付けられた台金部と、前記台金部の一面に設置されて前記台金部と一体化された砥石部と、を備える砥石と、
前記スピンドルフランジと前記台金部との密着箇所にエアを吹き付けるエア吹出口と、
を備え、
前記エア吹出口は、
前記台金部に水平方向に亘って密着する前記スピンドルフランジの第1の密着面との境界部分から外部に向けて前記第1の密着面に沿って前記エアを噴出する第1のエア吹出口と、
前記台金部に垂直方向に亘って密着する前記スピンドルフランジの第2の密着面との境界部分から外部に向けて前記第2の密着面に沿って前記エアを噴出する第2のエア吹出口と、
を備えている、ことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記スピンドルフランジ内に、前記エア吹出口に連通するエア回路が形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記エア吹出口から吹き出すエアの流量を調整可能な調整弁を更に備える、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石でウエハを加工する加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造分野では、シリコンウエハ等の半導体ウエハ(以下、「ウエハ」という)を薄膜に形成するために、ウエハの裏面を研削する裏面研削が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、スピンドルの先端に連結されたスピンドルフランジにカップ型砥石が取り付けられた研削装置が開示されている。カップ型砥石は、スピンドルフランジに、図示しない10本程度のボルトで締結されており、スピンドルフランジに対して着脱自在に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-309673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の研削装置では、作業員が手作業で10本程度のボルトを締結することによって、カップ型砥石がスピンドルフランジに取り付けられるため、カップ型砥石の着脱作業が煩雑になりがちであった。
【0006】
また、ボルトで締結されたカップ型砥石は、スピンドルフランジとの間にスラリー等の水が入り易い。そのため、従来では摩耗した砥石交換の際に、水の表面張力よってカップ型砥石とスピンドルフランジが吸着し合い、カップ型砥石がスピンドルフランジから外れにくい場合がある。そして、無理に外そうとして、カップ型砥石をチャックに当ててしまい、チャックが破損する虞や、カップ型砥石がスピンドルフランジに噛んでしまい外せなくなる虞もある。また、その結果として、研削装置のメンテナンス時間が長くなってしまい、一日当たりの製品生産量が落ちてしまうという問題点があった。
【0007】
そこで、砥石交換の際に、砥石を簡単に取り外すことができる加工装置を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載の発明は、スピンドルフランジと、前記スピンドルフランジの一面に略密着して前記スピンドルフランジに着脱自在に取り付けられた台金部と、前記台金部の一面に設置されて前記台金部と一体化された砥石部と、を備える砥石と、前記スピンドルフランジと前記台金部との密着箇所にエアを吹き付けるエア吹出口と、を備え、前記エア吹出口は、前記台金部に水平方向に亘って密着する前記スピンドルフランジの第1の密着面との境界部分から外部に向けて前記第1の密着面に沿って前記エアを噴出する第1のエア吹出口と、前記台金部に垂直方向に亘って密着する前記スピンドルフランジの第2の密着面との境界部分から外部に向けて前記第2の密着面に沿って前記エアを噴出する第2のエア吹出口と、を備えている、加工装置を提供する。
【0009】
この構成によれば、交換等で砥石を取り外す際、エア吹出口からエアを吹き出すと、エアはスピンドルフランジと台金部との密着箇所に吹き付けられる。そして、スピンドルフランジと台金部との密着箇所に砥石をスピンドルフランジから引き剥す力が作用し、砥石をスピンドルフランジから簡単に取り外すことができる。さらに、交換等で砥石を取り外す際、第1のエア吹出口からエアを吹き出すと、エアはスピンドルフランジと台金部との密着箇所に吹き付けられて、砥石をスピンドルフランジ部から引き剥す力が作用する。また、第2のエア吹出口からエアを吹き出すと、吹き出されたエアが砥石をスピンドルフランジから外す方向に力を作用する。したがって、第1のエア吹出口から吹き出されたエアの力と、第2のエア吹出口から吹き出されたエアの力とで、砥石をスピンドルフランジから簡単に取り外すことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記スピンドルフランジ内に、前記エア吹出口に連通するエア回路が形成されている、加工装置を提供する。
【0011】
この構成によれば、エア吹出口に連通するエア回路を、スピンドルフランジ内の空いているスペース等を利用してスピンドルフランジ内にコンパクトに設けることができる。したがって、加工装置自体の形状を大きく変えずに、加工装置内にエア回路を設けることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、前記エア吹出口から吹き出すエアの流量を調整可能な調整弁を更に備える、加工装置を提供する。
【0013】
この構成によれば、調整弁により、エア吹出口から吹き出すエアの流量、すなわちエアの力を調整して、砥石をスピンドルフランジから取り外すのに最適な力を簡単に得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
発明によれば、交換等で砥石を取り外す際、エア吹出口からスピンドルフランジと台金部との密着箇所に吹き付けて、砥石をスピンドルフランジ部から強制的に引き剥がして簡単に取り外すことができる。これにより、加工装置のメンテナンス時間の短縮が図れるとともに、一日当たりの製品生産量の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る加工装置を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示すメインユニット及び搬送ユニットの内部構造を示す縦断側面図である。
図3】前記加工装置に適用された砥石を、スピンドルフランジの下面に取り付けた状態で斜め下方から見た斜視図である。
図4】スピンドルフランジに砥石を取り付けた状態で示す、スピンドルフランジと砥石の構造を説明する縦断面図ある。
図5】スピンドルフランジから砥石を取り外した状態で示す、スピンドルフランジと砥石の構造を説明する縦断面図ある。
図6図5に示すスピンドルフランジの一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、砥石交換の際に、砥石を簡単に取り外すことができる加工装置を提供するという目的を達成するために、ウエハを加工する加工装置であって、円板状のスピンドルフランジと、前記スピンドルフランジの一面に略密着して前記スピンドルフランジに着脱自在に取り付けられた環状の台金部と、前記台金部の一面に設置されて前記台金部と一体化された砥石部と、を備える砥石と、前記スピンドルフランジと前記台金部との密着箇所にエアを吹き付けるエア吹出口と、を備える構成としたことにより実現した。
【実施例0017】
以下、本発明の実施形態に係る一実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0018】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0019】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0020】
また、以下の説明において、上下や左右等の方向を示す表現は、絶対的なものではなく、本発明の加工装置の各部が描かれている姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。また、実施例の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付している。
【0021】
図1及び図2は本発明の実施形態に係る加工装置10の一実施例を示すものである。なお、図1は、図2に示すスピンドル送り機構11C及び搬送ユニット12を省略して、加工装置10の基本的構成を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示すメインユニット11及び搬送ユニット12の内部構造を示す縦断側面図である。
【0022】
図1及び図2において、加工装置10は、ウエハWの裏面を研磨するものであり、具体的には、サファイア又は炭化ケイ素等の難削材製基板の裏面(デバイスが形成された表面とは反対側の面)を研磨するものである。しかしながら、加工装置10の加工対象はこれらに限定されず、例えば、ガラス又はシリコン等であっても良く、若しくは支持基板に取り付けられた複合基板等であっても構わない。
【0023】
加工装置10は、メインユニット11と、搬送ユニット12と、加工装置10の全体の動作を制御する制御ユニット13と、を備えている。
【0024】
メインユニット11は、図1及び図2に示すようにアーチ状をしたコラム11Aと、砥石14が取り付けられたスピンドル15と、スピンドル15を垂直方向Vに摺動可能に支持する3つのリニアガイド11Bと、スピンドル15を垂直方向Vに昇降させるスピンドル送り機構11Cと、を備えている。
【0025】
コラム11Aは図1に示すように前面11Aaに開口を設けて垂直方向Vに、上下に貫通して凹設された溝11Abを有する。
【0026】
スピンドル15は、スピンドルケーシング16を介してコラム11Aの溝11Ab内に、上下方向(垂直方向V)摺動可能に収容されている。スピンドル15には、図2に示すように、下端部に連結されるスピンドルフランジ17を介して砥石14が着脱自在に取り付けられている。また、図示しないがスピンドル15は、図示しないモータによって回転され、砥石14と共に一体に回転する。砥石14及びスピンドルフランジ17の詳しい構成については後述する。
【0027】
リニアガイド11Bは、図1に示すように、コラム11A内で、溝11Abの前方部に配置された、スピンドルケーシング16の前側左右両端部を支持する左右2つの前方リニアガイド11Baと、溝11Abの後方部(後面)に配置された、スピンドルケーシング16の後方中央を支持する1つの後方リニアガイド11Bbと、で構成される。その前方リニアガイド11Ba及び後方リニアガイド11Bbは、スピンドル15の軸線(垂直方向V)に沿って互いに平行に設けられている。これにより、前方リニアガイド11Baと後方リニアガイド11Bbとは、スピンドルケーシング16の案内レールとして機能する。
【0028】
スピンドル送り機構11Cは、図2に示すように、スピンドルケーシング16に連結されたスライダ18と、スピンドルケーシング16を上下(垂直方向V)に昇降させるボールネジ19と、ボールネジ19を回転させるスピンドル用モータ20と、を備えている。そして、スピンドル用モータ20が駆動してボールネジ19が正又は負方向に回転すると、そのボールネジ19の回転方向に応じて、スライダ18がスピンドルケーシング16及びスピンドル15と共に垂直方向Vに下降又は上昇する。これにより、スピンドル15の下端に取り付けられている砥石14も一緒に下降又は上昇し、砥石14の下降によりウエハWが研削される。
【0029】
また、メインユニット11には、ウエハWの厚みを計測する図示しないインプロセスゲージが設けられている。そして、インプロセスゲージが計測したウエハWの厚みが所望の値に達すると、スピンドル用モータ20の駆動によりボールネジ19が逆回転され、スライダ18がスピンドルケーシング16及びスピンドル15と共に上昇する。また、スピンドル15の下端に取り付けられている砥石14もウエハWから離れるようになっている。
【0030】
搬送ユニット12は、ウエハWを吸着保持可能なチャックテーブル21と、チャックテーブル21を載置するスライダ22と、スライダ22を駆動させるスライダ駆動機構23と、を備えている。
【0031】
チャックテーブル21は、図示しない負圧源に接続されており、ウエハWをチャックテーブル21上に吸着保持することができる。また、チャックテーブル21は、チャックテーブル用モータ24によってチャックテーブル21の軸中心回りに回動可能である。
【0032】
スライダ駆動機構23は、スライダ22とレール25とベルト・プーリ機構26とスライダ用モータ27を備える。そして、スライダ用モータ27の駆動を、ベルト・プーリ機構26を介してスライダ22に伝え、スライダ22をチャックテーブル21と共にレール25上を一体に、図2中の左右方向にスライドできるようになっている。
【0033】
加工装置10の動作は、制御ユニット13によって制御される。制御ユニット13は、加工装置10を構成する構成要素をそれぞれ決められた手順に従って制御するものである。制御ユニット13は、例えば、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御ユニット13の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。
【0034】
このような構成による加工装置10は、制御ユニット13の制御の下で、以下の手順によりウエハWを研削する。まず、ウエハWをチャックテーブル21上に吸着保持する。
【0035】
次に、スライダ22によってウエハWを砥石14の下方まで搬入した後、スピンドル用モータ20が駆動される。スピンドル用モータ20が駆動すると、ボールネジ19が順回転し、スライダ22に連結されたスピンドルケーシング16がスピンドル15及び砥石14と共に下降して、砥石14をウエハWの近傍まで接近させる。また、スピンドル用モータ20に加えてチャックテーブル用モータ24も駆動させ、砥石14及びチャックテーブル21をそれぞれ回転させながら、砥石14がウエハWの一面(裏面)に押し当てられ、ウエハWが研削される。
【0036】
ウエハWが所望の厚みまで研削されると、制御ユニット13は、スピンドル用モータ20の駆動及びチャックテーブル用モータ24の駆動を各々停止させる。これにより、砥石14及びチャックテーブル21の回転も停止する。
【0037】
次いで、スピンドル用モータ20が逆転駆動され、ボールネジ19を逆回転させる。ボールネジ19の逆回転により、スピンドル送り機構11Cに連結されたスピンドルケーシング16がスピンドル15と砥石14を伴って上昇し、砥石14をウエハWから離間させる。次に、スライダ22によりウエハWをチャックテーブル21と共にメインユニット11の後方まで搬送する。その後、チャックテーブル21によるウエハWの吸着保持を解除し、加工装置10によるウエハWの研削加工が終了する。
【0038】
次に、砥石14をスピンドルフランジ17に着脱する機構、特にスピンドルフランジ17から砥石14をスムーズに取り外す機構について、図3乃至図6を使用して詳しく説明する。
【0039】
図3は、スピンドルフランジ17の下面に砥石14を取り付けた状態で、砥石14の下方向より見た斜視図である。図4及び図5は、図3の縦断面図あり、図4はスピンドルフランジ17に砥石14を取り付けた状態で示している図、図5はスピンドルフランジ17から砥石14が外れた状態で示している図である。また、図6は、図5に示すスピンドルフランジ17の一部を拡大して示している図である。
【0040】
図3乃至図6において、スピンドルフランジ17は図2に示したスピンドル15の下端に連結固定されて、スピンドル15と一体化されて設けられるものであり、略円板状に形成されている。
【0041】
スピンドルフランジ17の本体部17Aの下面には、外径が本体部17Aの外径よりも小さい円形をした小径突出部17Bが一定に設けられている。小径突出部17Bの下面には、内周面に下方開口部から上方に進むに従って徐々に中心側に向かって傾斜している傾斜面28を設けてなる逆摺鉢状をした凹部29が形成されている。凹部29内には、インナープレート30が配設されている。
【0042】
インナープレート30は、スピンドルフランジ17の凹部29内に略密着して収容可能な円板形状の部材であり、外周面には凹部29の傾斜面28に対応した傾斜面30aが設けられている。そして、インナープレート30は、凹部29内に収容されて、ボルト31でスピンドルフランジ17の下側に取り付けられている。
【0043】
また、スピンドルフランジ17の本体部17A内には、エア100を運ぶエア回路32が形成されている。エア回路32は、エア100を取り入れるエア供給口33aとエア供給口33aから取り入れたエア100を外部に噴出させる第1のエア吹出口であるエア吹出口34aとを有した第1のエア回路32aと、同じくエア100を取り入れるエア供給口33bとエア供給口33bから取り入れたエア100を外部に噴出させる第2のエア吹出口であるエア吹出口34bとを有した第2のエア回路32bと、を有する。なお、第1のエア回路32aのエア吹出口34a及び第2のエア回路32bのエア吹出口34bの開口径は、各回路32a、32bの通路径よりも小さく設定をし、エア100を噴き出す勢いを増大させるために絞っている。
【0044】
また、第1のエア回路32aのエア吹出口34aは、小径突出部17Bと本体部17Aとの境界部分に形成され、エア100が、小径突出部17Bの根元から本体部17Aの外周底面17aに沿って略水平方向、すなわち砥石14が着脱される方向に対してエア100が略垂直に吹き出す設定になっている。一方、第2のエア回路32bのエア吹出口34bは、同じく小径突出部17Bと本体部17Aとの境界部分に形成され、エア100が、小径突出部17Bの根元から小径突出部17Bの外周面17bに沿って略垂直方向、すなわち砥石が着脱される方向に対してエア100が略平行に吹き出す設定になっている。第1のエア回路32aのエア吹出口34a及び第2のエア回路32bのエア吹出口34bは、好ましくは、円周方向に略等間隔で各々複数個ずつ設けられる。
【0045】
また、第1のエア回路32aのエア供給口33a及び第2のエア回路32bのエア供給口33bは、それぞれエア源35と連結される。また、エア源35とエア供給口33a、及びエア源35とエア供給口33bとの間には、それぞれエア100の流量を調整可能な流量調整弁36a、36bが設けられている。
【0046】
砥石14は、環状の台金部37と、台金部37の一面に設置され砥石部38と、を備える。
【0047】
台金部37は、環状に形成されている。また、台金部37の断面は、傾斜面37aと、内周面37bと、外周面37cと、上面37dと、下面37eとを有して、概略五角形の断面を呈している。台金部37の、内径はスピンドルフランジ17の小径突出部17Bの外径に略等しく、外径はスピンドルフランジ17の本体部17Aの外径に略等しく形成されている。また、台金部37の厚み、すなわち外周面37cの高さは、スピンドルフランジ17の下面に設けられている凹部29内にインナープレート30を収容して取り付けた状態での、スピンドルフランジ17の外周底面17aからの突出量よりも大きく設定されている。なお、傾斜面37aの傾斜角度は約30度であり、内周面37bから外周側に向かって下がるようにして傾斜している。
【0048】
砥石部38は、台金部37の下面37eに、台金部37の外周に沿って複数設置されて、台金部37と一体化されている。
【0049】
そして、砥石14は、スピンドルフランジ17に取り付けて使用されるとき、図3及び図5に示すように、砥石部38を下側に向け、かつ、台金部37の上面37dをスピンドルフランジ17の外周底面17aに密着当接させた状態で、図示しない取付ネジを用いてスピンドルフランジ17に固定して取り付けられる。また、この取付状態では、台金部37の内周面37bとスピンドルフランジ17における小径突出部17Bの外周面17bとの間も略密着当接した状態になる。
【0050】
このように構成された加工装置10では、研削加工時にスラリー等の水を使用した場合には、スピンドルフランジ17の外周底面17aと台金部37の上面37dとの間、及び小径突出部17Bの外周面17bと台金部37の内周面37bとの間に、それぞれ水が浸入することがある。水の浸入は、スピンドルフランジ17の外周底面17aと台金部37の上面37dとの間、及び小径突出部17Bの外周面17bと台金部37の内周面37bとの間に、それぞれ表面張力により吸着力を発生させる。そのため、砥石部38が摩耗した砥石14の交換の際に、砥石14がスピンドルフランジ17から外れにくい場合がある。
【0051】
そこで、本実施例の加工装置10では、制御ユニット13による制御の下で、エア回路32からエア100を噴き出し、スピンドルフランジ17の外周底面17aと台金部37の上面37dとの間、及び小径突出部17Bの外周面17bと台金部37の内周面37bとの間に、それぞれエア100を吹き付け、その吹き付けたエア100の力でそれぞれの間における表面張力等を弱めて強制的に引き剥がし、簡単に取り外しができるようにしている。
【0052】
更に詳述すると、砥石14をスピンドルフランジ17から取り外す場合、まず、砥石14をスピンドルフランジ17に取り付けている図示しない取付ネジを取り外す。次いで、図4に示すように、エア供給口33aを通して第1のエア回路32a内に、エア源35からエア100を送り込む。そのエア100の送り量は、流量調整弁36aにより調整される。また、第1のエア回路32a内に送り込まれたエア100は、第1のエア回路32a内で圧縮されて、エア吹出口34aからスピンドルフランジ17の外周底面17aと台金部37の上面37dとの間に向けて略水平に吹き付けられ、スピンドルフランジ17の外周底面17aと台金部37の上面37dとの間の水を吹き飛ばしながら、剥離力を付与する。そして、エア100を所定の時間供給したら第1のエア回路32a内へのエア100の供給が停止される。
【0053】
続いて、図5に示すように、エア供給口33bを通して第2のエア回路32b内に、エア源35からエア100が送り込まれる。ここでのエア100の送り量も、流量調整弁36bにより調整される。また、第2のエア回路32b内に送り込まれたエア100は、第2のエア回路32b内で圧縮され、エア吹出口34bからスピンドルフランジ17の外周面17bと台金部37の上面37dの間に向けて略垂直に吹き付けられ、スピンドルフランジ17の外周面17bと台金部37の上面37dの間の水を吹き飛ばしながら、砥石14に下向きの剥離力を付与する。この下向きの剥離力により、砥石14はスピンドルフランジ17からスムーズに取り外される。これにより、別の砥石14と交換することができる。
【0054】
なお、第1のエア回路32aに通じるエア吹出口43aを設ける位置と第2のエア回路32bに通じるエア吹出口43bを設ける位置を円周方向に所定の間隔ずつずらして設け、吹き出すエア100が互いに干渉しないようにした場合には、第1のエア回路32aに通じるエア吹出口43aと第2のエア回路32bに通じるエア吹出口43bからそれぞれ同時にエア100を吹き出し、砥石14の剥離力を付与することも可能である。
【0055】
したがって、本実施例の加工装置10によれば、交換等で砥石14を取り外す際、エア吹出口34a、34bからエア100を吹き出すと、エア100はスピンドルフランジ17と台金部37との密着箇所に吹き付けられ、砥石14をスピンドルフランジ17から強制的に引き剥がして簡単に取り外すことができる。これにより、加工装置10のメンテナンス時間の短縮が図れるとともに、一日当たりの製品生産量の向上が期待できる。
【0056】
また、スピンドルフランジ17内に、エア吹出口34a、34bを有するエア回路32を設けているので、スピンドルフランジ17内にコンパクトに設けることができ、加工装置10の大きさを変えることなくエア回路32を設けることができる。
【0057】
また、エア回路32は、スピンドルフランジ17と台金部37との密着箇所に向けてエア100が略水平に吹き出すエア吹出口34aと、砥石14が着脱される垂直方向と略平行にエア100が吹き出すエア吹出口34bとを有しているので、エア吹出口34aから吹き出されたエア100の力と、エア吹出口34bから吹き出されたエア100の力とで、砥石14をスピンドルフランジ17から簡単に取り外すことができる。
【0058】
また、エア源35とエア回路32との間にエア100を流す量を調整可能な流量調整弁36a、36bを設けているので、流量調整弁36a、36bにより、エア吹出口34a、34bから吹き出すエア100の流量、すなわちエア100の力を調整して、砥石14をスピンドルフランジ17から取り外すのに最適な力を簡単に得ることができる。
【0059】
なお、上記実施例では、エア回路32は、エア供給口33a及びエア吹出口34aを有する第1のエア回路32aと、エア供給口33b及びエア吹出口34bを有する第2のエア回路32b、の両方を設けた構造を開示したが、第1のエア回路32aと第2のエア回路32bのいずれか一方を設けた構造であってもよい。
【0060】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を成すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0061】
10 :加工装置
11 :メインユニット
11A :コラム
11Aa :前面
11Ab :溝
11B :リニアガイド
11Ba :前方リニアガイド
11Bb :後方リニアガイド
11C :スピンドル送り機構
12 :搬送ユニット
13 :制御ユニット
14 :砥石
15 :スピンドル
16 :スピンドルケーシング
17 :スピンドルフランジ
17A :本体部
17B :小径突出部
17a :外周底面
17b :外周面
18 :スライダ
19 :ボールネジ
20 :スピンドル用モータ
21 :チャックテーブル
22 :スライダ
23 :スライダ駆動機構
24 :チャックテーブル用モータ
25 :レール
26 :プーリ機構
27 :スライダ用モータ
28 :傾斜面
29 :凹部
30 :インナープレート
30a :傾斜面
31 :ボルト
32 :エア回路
32a :第1のエア回路
32b :第2のエア回路
33a :エア供給口
33b :エア供給口
34a :エア吹出口
34b :エア吹出口
35 :エア源
36a :流量調整弁
36b :流量調整弁
37 :台金部
37a :傾斜面
37b :内周面
37c :外周面
37d :上面
37e :下面
38 :砥石部
100 :エア
V :垂直方向
W :ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6