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▶ 住友精化株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071553
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】高純度一酸化窒素の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/24 20060101AFI20240517BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C01B21/24 Z
B01D53/26 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024049197
(22)【出願日】2024-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川上 純一
(57)【要約】
【課題】 高純度の一酸化窒素を効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】
一酸化窒素を含む粗ガスとアルカリ水溶液とを接触させて、前記粗ガスに含まれる不純物を除去した処理ガスを得るアルカリ洗浄工程と、
水を吸着する吸着剤が充填された吸着塔に、前記処理ガスを導入して、前記処理ガスに含まれる水を、吸着剤に吸着させて除去する乾燥工程と、を含む高純度一酸化窒素の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化窒素を含む粗ガスとアルカリ水溶液とを接触させて、前記粗ガスに含まれる不純物を除去した処理ガスを得るアルカリ洗浄工程と、
水を吸着する吸着剤が充填された吸着塔に、前記処理ガスを導入して、前記処理ガスに含まれる水を、吸着剤に吸着させて除去する乾燥工程と、を含む高純度一酸化窒素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度一酸化窒素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一酸化窒素は、例えば、半導体プロセスにおいてシリコン表面に酸窒化膜を形成するための材料ガスとして用いられる場合がある。一酸化窒素は、アンモニア酸化法、硫酸第一鉄と亜硝酸ナトリウムとを反応させる方法、硝酸と亜硫酸ガスとを反応させる方法など様々な方法で生成され得るが、一般に、生成した一酸化窒素を含む粗ガスには、二酸化窒素、亜酸化窒素が副生成物として含まれ、この他に原料、副原料由来の水、二酸化炭素、二酸化硫黄などが混入している。半導体プロセスにおいて、酸窒化膜を形成するうえでは、原料ガスとしての一酸化窒素については、より高純度であることが望まれる。また、近年問題視されている地球温暖化への対策として、原料使用量の削減やエネルギー原単位の改善など、効率的な一酸化窒素の製造方法が望まれる。
高純度の一酸化窒素を得るための手法のうち比較的簡易な方法として、活性アルミナ、ゼオライト、シリカゲルなどの無機系吸着剤に、所定条件で一酸化窒素を含む粗ガスを通流する手法が知られている。無機系吸着剤を利用するこのような手法は、例えば、下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4153429号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の一酸化窒素の製造方法では、不純物が多く含まれており、半導体等の高純度を要求される用途の原料としては未だ十分とはいえなかった。従って、本発明は、高純度の一酸化窒素を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一酸化窒素を含む粗ガスとアルカリ水溶液とを接触させて、前記粗ガスに含まれる不純物を除去した処理ガスを得るアルカリ洗浄工程と、
水を吸着する吸着剤が充填された吸着塔に、前記処理ガスを導入して、前記処理ガスに含まれる水を、吸着剤に吸着させて除去する乾燥工程と、を含む高純度一酸化窒素の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高純度の一酸化窒素を効率よく製造する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0008】
本発明に係る高純度一酸化窒素の製造方法は、一酸化窒素を含む粗ガスとアルカリ水溶液とを接触させて、前記粗ガスに含まれる不純物を除去した処理ガスを得るアルカリ洗浄工程と、水を吸着する吸着剤が充填された吸着塔に、前記処理ガスを導入して、前記処理ガスに含まれる水を、吸着剤に吸着させて除去する乾燥工程と、を含む。
【0009】
(アルカリ洗浄工程)
アルカリ洗浄工程は、反応で得られた前記粗ガスをアルカリ水溶液に接触させ、前記粗ガスに同伴する酸性のミストや不純物などを除去する。
【0010】
アルカリ洗浄工程に用いられるアルカリは特に制限されるものではないが、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが挙げられる。
【0011】
前記アルカリ水溶液と前記粗ガスとの接触は、例えば、ラシヒリングまたはベルルサドルなどの充填物が充填された充填塔へ、前記アルカリ水溶液を循環させて気液向流接触させる方法や、回転式ガス吸引装置などを用いて、前記アルカリ水溶液を貯留した吸収液槽に前記粗ガスをバブリングして気液接触させる方法などが挙げられる。
【0012】
前記アルカリ洗浄工程で得られる処理ガスは、前記アルカリ水溶液のミストを含んでいるため、洗浄水と前記処理ガスとを接触させて、前記アルカリ水溶液のミストを除去する水洗装置を設けてもよい。前記洗浄水は、例えば水、濃硫酸などが挙げられる。
【0013】
(乾燥工程)
乾燥工程は、前記アルカリ洗浄工程で得られた前記処理ガスを吸着剤と接触させることにより行う。
【0014】
前記吸着剤は、水を吸着する吸着剤が用いられ、例えば、シリカゲル、活性アルミナまたはゼオライトが挙げられる。前記吸着剤は、単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
本発明において、前記処理ガスと前記吸着剤との接触は、前記吸着剤が充填された触媒槽に前記処理ガスを導入することにより好適に行われる。
【0015】
(充填工程)
充填工程は、乾燥塔に導入し、得られた一酸化窒素を含む精製ガスを昇圧させ、容器弁を備えた充填容器内に充填されることにより行う。
【0016】
前記充填容器の容量は、特に限定しないが、例えば、10L、47Lから選ばれる。
【0017】
前記充填容器の材質は、特に限定はしないが、例えば、マンガン鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金、クロム-モリブデン鋼から選ばれる。この中でもマンガン鋼は特に好ましい。なお、マンガン鋼として、例えば、JIS G 4053:2016にて規定されるSSMn438や、JIS G 3429:2018にて規定されるSTH12などを使用することができる。
【0018】
前記充填容器内側の表面粗度は、特に限定はしないが、例えば、内表面の少なくとも一部の表面粗さRmax=1μm程度、25μm程度から選ばれる。この中でも、Rmax=1μm程度は特に好ましい。ここで、表面粗さRmaxは、JIS B 0601:1982にて規定される最大高さを表す。
【0019】
前記容器弁のバルブボディの材質は、特に限定しないが、例えば、ステンレス鋼が使われる。
【0020】
これらの工程によって前記不純物が除去され、生成物である一酸化窒素の純度を、99.99%以上とすることも可能である。このような高純度の一酸化窒素は、半導体製造分野を含む高純度を要求される種々の用途に利用可能である。
【実施例0021】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
一酸化窒素を含む粗ガスを、アルカリ洗浄塔、次いで、水洗塔に導入し、水洗塔後段から排出された一酸化窒素を含む粗ガスを、活性アルミナが充填された第1の乾燥塔に導入した後、圧縮機で昇圧して、活性アルミナが充填された第2の乾燥塔に導入し、一酸化窒素を含む精製ガスを得た。得られた一酸化窒素を含む精製ガスを昇圧させ、ステンレス鋼製容器弁を備えた内容積47Lのマンガン鋼容器内に充填した。
【0023】
容器内に充填したガスを容器弁および供給配管を介し分析計にて分析した結果、不純物である酸素は検出下限未満(20volppm未満)、窒素は220volppm、二酸化炭素は検出下限未満(0.1volppm未満)、二酸化窒素は55volppm、亜酸化窒素は108volppm、水分は0.1volppmであり、一酸化窒素の純度は99.9vol%以上であった。
【0024】
なお、酸素および窒素はガスクロマトグラフィー、二酸化炭素、二酸化窒素および亜酸化窒素はフーリエ変換赤外分光法、水分分析はキャビティリングダウン分光法(CRDS:cavity ring-down spectroscopy)、で行った。
【0025】
(実施例2~10)
実施例1と同じ操作を繰り返し、得られたガス中の不純物を実施例1と同じ装置を用いて測定したところ、下表の結果を得た。













【0026】
(実施例11)
一酸化窒素を含む粗ガスを、アルカリ洗浄塔、次いで、水洗塔に導入し、脱気水に接触させた。そして、水洗塔後段から排出された一酸化窒素を含む粗ガスを、活性アルミナが充填された第1の乾燥塔に導入した後、圧縮機で昇圧して、ゼオライトが充填された第2の乾燥塔に導入し、一酸化窒素を含む精製ガスを得た。得られた一酸化窒素を含む精製ガスを昇圧させ、ステンレス鋼製容器弁を備えた内容積47Lのマンガン鋼容器内に充填した。
【0027】
シリンダ内に充填したガスを容器弁および供給配管を介し分析した結果、不純物である酸素は0.2volppm、窒素は12volppm、二酸化炭素、水素と水分は検出下限未満(0.1volppm未満)、二酸化窒素は2volppm、亜酸化窒素は20volppm、一酸化炭素とTHC(Total HydroCarbon;不純物として含まれる全炭化水素)は検出下限未満(1volppm未満)、鉄は検出下限未満(0.5wtppb未満)、クロム、ニッケル、銅、亜鉛、ナトリウムおよびカルシウムは検出下限未満(1.0wtppb未満)であり、一酸化窒素の純度は99.99vol%以上であった。
【0028】
なお、水素、酸素および窒素はガスクロマトグラフィー、二酸化炭素、二酸化窒素、亜酸化窒素、一酸化炭素およびメタンはフーリエ変換赤外分光法、水分分析はキャビティリングダウン分光法(CRDS:cavity ring-down spectroscopy)、金属分析(鉄、クロム、ニッケル、銅、亜鉛、ナトリウムおよびカルシウム)は誘導結合プラズマ質量分析法で行った。
【0029】
(実施例12~25)
実施例11と同じ操作を繰り返し、得られたガス中の不純物を実施例11と同じ装置を用いて測定したところ、下表の結果を得た。