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特開2024-71580液状油性組成物、及び該液状油性組成物を含有する化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071580
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】液状油性組成物、及び該液状油性組成物を含有する化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20240517BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K8/891
A61Q19/00
A61Q1/00
A61K8/37
A61K8/86
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024050108
(22)【出願日】2024-03-26
(62)【分割の表示】P 2023571452の分割
【原出願日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2022132567
(32)【優先日】2022-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】猪子石 洋吾
(72)【発明者】
【氏名】加知 久典
(72)【発明者】
【氏名】大山 慶一
(57)【要約】
【課題】皮膚に塗布した場合に、2次付着抑制効果及び強度と持続力のある撥水性を付与することができる液状油性組成物、並びに当該液状油性組成物を配合した化粧料を提供する。
【解決手段】本発明の液状油性組成物は、成分(A):25℃における動粘度が4~12mm/sのジメチコン;成分(B):25℃で液体であって、ジメチコン相溶性値が、1.75以上であるエステル油;および成分(C):25℃で液体であって、ジメチコン相溶性値が、1.75未満であるエステル油、を含有し、25℃において透明かつ均一であり、かつ、液状油性組成物100質量部に対しマカデミアナッツ油を8質量部添加した混合物から、成分(A)が分離する。ただし、本発明の液状油性組成物は、特定の多価アルコール変性シリコーンを含有しない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):25℃における動粘度が4~12mm/sのジメチコン;
成分(B):25℃で液体であり、下記式(I)で求められるジメチコン相溶性値が、1.75以上であるエステル油であって、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリエチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル(脂肪鎖に2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクチル構造を有する)、リンゴ酸ジイソステアリル(脂肪鎖に2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクチル構造を有する)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロパンジオール、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(脂肪鎖に2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクチル構造を有する)、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、及びペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル(脂肪鎖に2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクチル構造を有する)からなる群から選ばれる1種又は2種以上のエステル油;および
成分(C):25℃で液体であり、下記式(I)で求められるジメチコン相溶性値が、1.75未満であるエステル油であって、ジイソステアリン酸プロパンジオール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、及びヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルからなる群から選ばれる1種又は2種以上のエステル油
を含有する液状油性組成物であって、
25℃において透明かつ均一であり、かつ、
液状油性組成物100質量部に対しマカデミアナッツ油を8質量部添加した混合物から、成分(A)が分離する液状油性組成物(ただし、下記平均組成式(i)で示される多価アルコール変性シリコーンを除く。
R1R2R3SiO(4-a-b-c/2 (i)
〔但し、式中R1は炭素数1~30のアルキル基、アリール基、アラルキル基又はフッ素置換アルキル基、アミノ置換アルキル基、カルボキシ置換アルキル基及び下記一般式(ii)
-C2d-O-(CO)(CO)-R4 (ii)
で示される有機基から選択される同種または異種の有機基を示し(式中、R4は炭素数4~30の炭化水素基、又はR5-(CO)-で示される有機基、R5は炭素数1~30の炭化水素基を示し、dは0≦d≦15の整数、e、fはそれぞれ0≦e≦50、0≦f≦50の整数を示す。)、
R2は下記一般式(iii)
-Q-O-X (iii)
で示し(式中、Qはエーテル結合及びエステル結合の少なくとも一方を含有してもよい炭素数3~20の二価の炭化水素基を示し、Xは水酸基を少なくとも2個有する多価アルコール置換炭化水素基を示す。)、
R3は下記一般式(iv)
【化1】
で表されるオルガノシロキサンを示し(式中、R1は上記と同様であり、gは1≦g≦5の整数、hは0≦h≦500の整数を示す。)、
a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5を示す。〕)。
【数1】
【請求項2】
前記成分(B)と前記成分(C)の質量比((B)/(C))は、0.32~18.00であり、
前記成分(B)と前記成分(C)との合計量と、前記成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、1.50~12.33である、請求項1に記載の液状油性組成物。
【請求項3】
前記成分(B)及び前記成分(C)からなる混合物の25℃における粘度が、30~1200mPa・sである、請求項1に記載の液状油性組成物。
【請求項4】
前記液状油性組成物100質量%に対して、成分(A)の含有量が8.30質量%~32.50質量%であり、成分(B)の含有量が24.70質量%~71.20質量%であり、成分(C)の含有量が5.00質量%~67.00質量%である、請求項1に記載の液状油性組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の液状油性組成物を含有する化粧料。
【請求項6】
さらに、成分(D):粉体を含有する請求項5に記載の化粧料。
【請求項7】
前記成分(D)が、体質顔料、着色顔料またはパール顔料である、請求項6に記載の化粧料。
【請求項8】
化粧料全体に対する前記成分(D)の含有割合が、1質量%~30質量%である、請求項6に記載の化粧料。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載の液状油性組成物を原料として含有させる、化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状油性組成物、及び該液状油性組成物を含有する化粧料に関する。
本願は、2022年8月23日に、日本に出願された特願2022-132567号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
一般に、化粧料における化粧崩れの原因としては、内的要因と外的要因がある。
内的要因としては、汗及び涙といった水分、並びに、皮脂といった油分など人からの分泌物が化粧料と触れることが挙げられる。外的要因としては、マスクや衣類等との接触による化粧料のマスクや衣類等への付着が挙げられる。以下、このような化粧料の付着を「2次付着」と称することがある。このような要因から化粧膜を保護し、化粧膜を持続させることは大きな課題となっている。
【0003】
汗による化粧崩れに対しては、化粧料中にシリコーン樹脂等の撥水性基材を配合することによって解決する方法が提案されている。また、皮脂による化粧崩れに対しては、フッ素系油剤のような撥水撥油性基材を配合することによって解決する方法が提案されている。
【0004】
特許文献1では、例えば、ジメチルシリコーンにフルオロアルキル基を導入したフッ素変性シリコーンを含有する化粧料が挙げられている。また、特許文献2では、皮膜形成剤のシリコーン樹脂に加えて、特定の粉体を配合することで、伸びが良くなめらかであり、肌への負担感が無く、化粧の効果が長時間にわたって持続し、化粧膜の均一性に優れた効果を得られる乳化化粧料が挙げられている。
【0005】
しかし、ジメチルシリコーンにフルオロアルキル基を導入したフッ素変性シリコーンや皮膜形成剤であるシリコーン樹脂は、化粧膜の維持は良好になるものの、他の化粧料成分との相溶性が悪い。結果として、保存中に分離するなど安定性に難があることや、相溶性を良くするために併用する成分に制約があることで、感触が限定されてしまうことがあった。
【0006】
また、皮膜形成剤であるシリコーン樹脂により化粧膜を形成させるには、溶媒を蒸散させるために肌へ塗布後15分程度の時間を要すること、化粧膜形成後に突っ張る使用感が出てしまうこともあった。
【0007】
このような背景から、化粧料の2次付着を抑制し、強度と持続力のある撥水性を有し、かつ、他の化粧料成分との相溶性が良く、処方上の制約が少ない化粧料原料の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平06-184312号公報
【特許文献2】特開2006-265213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、皮膚に塗布した場合に、2次付着抑制効果及び強度と持続力のある撥水性を付与することができる液状油性組成物、並びに当該液状油性組成物を配合した化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、ジメチコンとの相溶性が異なる2種以上のエステル油とジメチコンを特定の割合で含む均一状態の液状油性組成物について、エステル油の分子構造の特徴から計算されるジメチコン相溶性値に基づき適切なエステル油を用いることで、課題を解決できることを見いだした。すなわち、この液状油性組成物を含む化粧料が、皮脂と混合することで、化粧料の優れた2次付着抑制の効果及び強度と持続力のある優れた撥水性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1] 成分(A):25℃における動粘度が2~12mm/sのジメチコン;
成分(B):25℃で液体であって、下記式(I)で求められるジメチコン相溶性値が、1.75以上であるエステル油;および
成分(C):25℃で液体であって、下記式(I)で求められるジメチコン相溶性値が、1.75未満であるエステル油、
を含有する液状油性組成物であって、
25℃において透明かつ均一であり、かつ、
液状油性組成物100質量部に対しマカデミアナッツ油を8質量部添加した混合物から、成分(A)が分離する液状油性組成物。
【0012】
【数1】
【0013】
[2] 前記成分(B)と前記成分(C)の質量比((B)/(C))は、0.32~18.00であり、
前記成分(B)と前記成分(C)との合計量と、前記成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、1.50~12.33である、前記[1]の液状油性組成物。
[3] 前記成分(B)が、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリエチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル(脂肪鎖に2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクチル構造を有する)、リンゴ酸ジイソステアリル(脂肪鎖に2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクチル構造を有する)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロパンジオール、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(脂肪鎖に2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクチル構造を有する)、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、及びペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル(脂肪鎖に2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクチル構造を有する)からなる群から選ばれる1種又は2種以上のエステル油である、前記[1]又は[2]の液状油性組成物。
[4] 前記成分(C)が、ジイソステアリン酸プロパンジオール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、及びヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルからなる群から選ばれる1種又は2種以上のエステル油である、前記[1]~[3]のいずれかの液状油性組成物。
[5] 前記成分(B)及び前記成分(C)からなる混合物の25℃における粘度が、30~1200mPa・sである、前記[1]~[4]のいずれかの液状油性組成物。
[6] 前記[1]~[5]のいずれかの液状油性組成物を含有する化粧料。
[7] さらに、成分(D):粉体を含有する、前記[6]の化粧料。
[8] さらに、成分(E):水、及び成分(F):界面活性剤を含有し、水中油型乳化化粧料又は油中水型乳化化粧料である、前記[6]又は[7]の化粧料。
[9] 前記[1]~[5]のいずれかの液状油性組成物を原料として含有させる、化粧料の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、化粧料の2次付着抑制効果を発揮し、強度と持続力のある撥水性を付与することができる液状油性組成物、及び該液状油性組成物を配合した化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1及び比較例1の撮影写真(実写)、及びそれらの写真を二値化処理した図である。
図2】実施例42及び比較例50の撮影写真(実写)、及びそれらの写真を二値化処理した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
数値範囲について、「A以上B以下」を「A~B」と表記する場合がある。例えば「1~10質量部」と記載した場合、1質量部から10質量部までの範囲であって下限値(1質量部)と上限値(10質量部)を含む数値範囲、すなわち「1質量部以上10質量部以下」を意味する。
【0017】
<液状油性組成物>
まず、本実施形態の液状油性組成物について概要を説明する。
本実施形態の液状油性組成物は、以下の特定のジメチコン(成分(A))、及び特定のエステル油(成分(B)、成分(C))を含有する。成分(A)、成分(B)、成分(C)について、詳しくは後述する。
成分(A):25℃における動粘度が2~12mm/sのジメチコンの1種又は2種以上。
成分(B):25℃で液体のエステル油であって、後述の式1で求められるエステル油のジメチコン相溶性値が、1.75以上であるエステル油の1種又は2種以上。
成分(C):25℃で液体のエステル油であって、後述の式1で求められるエステル油のジメチコン相溶性値が、1.75未満であるエステル油の1種又は2種以上。
【0018】
本実施形態の液状油性組成物は、次の2つの性質を有する。
液状油性組成物は、25℃において透明で均一である(以下、「相溶性1」)。
液状油性組成物は、液状油性組成物100質量部に対して、マカデミアナッツ油8質量部を添加すると、相溶しない(以下、「相溶性2」)。
【0019】
なお、液状油性組成物の外観が、透明かつ均一な状態である場合、液状油性組成物を構成する成分は互いに相溶性がある、又は相溶すると定義する。ここで、「相溶する」又は「相溶性がある」とは、混合物(液状油性組成物)を目視で観察したときに、分離、曇り、及び濁りを生じていない透明な状態のことをいい、「相溶しない」又は「相溶性がない」とは、混合物を目視で観察したときに、分離、曇り、又は濁りを生じた状態のことをいう。
【0020】
(相溶性1)
前記相溶性1を満たす液状油性組成物は、液状油性組成物を構成する各成分が、25℃において、互いに相溶している。
【0021】
(相溶性2)
前記相溶性2において「相溶しない」とは、液状油性組成物にマカデミアナッツ油を添加した混合物を目視で観察したときに、分離、曇り又は濁りを生じる状態であることを意味する。
【0022】
マカデミアナッツ油と成分(A)は、どのような比率で混合をしても相溶しないが、マカデミアナッツ油と成分(B)、及び、マカデミアナッツ油と成分(C)は、どのような比率で混合をしても相溶するという性質を有している。このような各成分のマカデミアナッツ油に対する相溶性の違いにより、液状油性組成物にマカデミアナッツ油を混ぜると、マカデミアナッツ油と成分(B)及び成分(C)とは相溶し、成分(A)が分離する。つまり、相溶性1及び相溶性2をどちらも備える本実施形態の液状油性組成物は、マカデミアナッツ油と混合させる前は透明で均一な液状組成物であるが、マカダミアナッツ油と混合することによって、相溶性がなくなる。
【0023】
本実施形態において、マカデミアナッツ油は、皮脂の代替として利用されている。マカデミアナッツ油の構成脂肪酸は、皮脂を構成するトリグリセライドの構成脂肪酸と類似している。このため、マカデミアナッツ油と皮脂は、成分(A)であるジメチコン、成分(B)であるエステル油、及び成分(C)であるエステル油に対する相溶性の点で、同様の挙動を示す。したがって、本実施形態においては、皮脂の代わりにマカデミアナッツ油を用い、液状油性組成物に皮脂が混ざった場合の液状油性組成物の挙動を確認している。より具体的には、当該液状油性組成物を皮膚に塗布した際に皮脂との相溶性がないことを、マカデミアナッツ油を添加した場合の相溶性で確認している(相溶性2)。
【0024】
成人の肌上の皮脂量と、塗布する化粧料の通常量との相対的な関係から、液状油性組成物を皮膚に塗布した場合、当該液状油性組成物に混じる皮脂量は、液状油性組成物100質量部に対して8質量部程度である。相溶性2においては、肌上で皮脂が混じった液状油性組成物により近似させた状態の相溶性を確認するため、「液状油性組成物100質量部に対して、マカデミアナッツ油8質量部を添加した場合における相溶性」を、相溶性の判断基準としている。
【0025】
すなわち、相溶性1及び相溶性2をどちらも備える本実施形態の液状油性組成物は、肌に塗布する前は透明で均一な液状組成物であるが、肌に塗布すると、当該液状油性組成物と肌上の皮脂が接触して混ざることによって、当該液状油性組成物の相溶性がなくなり、成分(B)及び成分(C)から成分(A)が分離する。分離した成分(A)は、肌上に、成分(A)膜を形成する(以下、成分(A)膜を、シリコーン膜と称することがある)。この液状油性組成物から分離して形成されたシリコーン膜は、撥水性を発揮することに加えて、従来技術を用いて形成される化粧膜と比較して、つっぱり感がなく、柔軟性があるシリコーン膜である。さらに、当該シリコーン膜が保護膜として機能することによって、2次付着抑制効果も発揮される。
【0026】
通常の被膜形成剤は、固形物と固形物を溶解させる溶剤で構成されている。この被膜形成剤を肌上に塗布して、溶剤を揮発させることで、固形物が肌上に残り固まり、被膜が形成される。この被膜は固形であるため、形状を自由に変化させることができず、肌の動きに追随できないため、つっぱり感を生じると考えられる。その一方で、本実施形態で形成されるシリコーン膜は、固形物ではなく液体であり、肌上で固まらないため、つっぱり感を生じにくいと推察される。
【0027】
以上のように、相溶性1(25℃で透明で均一)及び相溶性2(8質量%のマカデミアナッツ油存在下で相溶しない)を満たす液状油性組成物は、肌に塗布することにより皮脂と混じり、肌上でシリコーン膜(成分(A)膜)を形成し、当該シリコーン膜によって、二次付着抑制と撥水性とを示す。また、形成されたシリコーン膜は、つっぱり感がなく、柔軟性を有するものである。
【0028】
すなわち、肌に塗布した液状油性組成物は、肌側から順に、当該液状油性組成物に皮脂が加わり、成分(A)が除かれた液状油性組成物からなる薄膜と、当該薄膜の表面に形成されたシリコーン膜と、の積層構造を有する塗布膜を形成する。以降において、当該液状油性組成物に皮脂を加えた上で成分(A)が除かれた液状油性組成物からなる薄膜を、「エステル油膜」ということがある。
【0029】
本実施形態の効果である、優れた2次付着抑制、及び、強度と持続力のある優れた撥水性は、当該液状油性組成物の塗布膜の表面に形成されたシリコーン膜により達成される機能である。そして、相溶性2を備える液状油性組成物は、皮膚に塗布されることによって、薄膜(エステル油膜)の表面にシリコーン膜が形成される。したがって、実験により、液状油性組成物の2次付着抑制、化粧膜の柔軟性、撥水性の強度、撥水性の持続力等の各種効果を確認しなくても、相溶性2の要件を満たす本発明に係る液状油性組成物であれば、それらの効果を発揮できるものであるということが言える。
【0030】
<<成分(A)>>
次に、本発明に係る液状油性組成物に用いる成分(A)について説明をする。
【0031】
シリコーン油は、下記一般式(1)で表される構造を有する液状物質の総称である。本実施形態の液状油性組成物に用いる成分(A)は、下記式(2)で表されるように、R部分の構造がメチル基のものであり、一般的にジメチコンと呼ばれる。
【0032】
【化1】
【0033】
【化2】
【0034】
ジメチコンは、重合度が大きくなるに従い動粘度が高くなる。ジメチコンの種類は、動粘度の値を用いて区別するのが通例である。
【0035】
本発明及び本願明細書において、動粘度とは、25℃における粘度を同温度のその流動的粘性液体の密度で除した値である。動粘度の単位としては、通例、平方ミリメートル毎秒(mm/s)で示す。
【0036】
ジメチコンの粘度は、「医薬部外品原料規格2021(厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課)」の「55.粘度測定法 第2法 回転粘度計法」に記載された方法で測定することができる。具体的には、B型粘度計を用いて、読み値が10~90になるようにローターと回転数を適宜選択し、回転開始から60秒後の値を読み取ることにより、粘度を測定することができる。
ジメチコンの密度は、比重瓶を用いることにより測定することができる。
【0037】
本実施形態の液状油性組成物に用いる成分(A)のジメチコンとしては、25℃における動粘度が、4~12mm/sであり、5~12mm/sであることが好ましく、5~10mm/sであることがより好ましい。成分(A)のジメチコンの25℃における動粘度が、前記範囲内であることにより、十分な2次付着抑制効果が得られる。成分(A)としては、前記範囲内の動粘度を有するジメチコンを単独で用いてもよく、2種類以上混合して用いてもよい。
【0038】
成分(A)のジメチコンとしては、市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、25℃における動粘度が5mm/sのジメチコン(商品名「KF-96L-5cs」、信越化学工業(株)製)、25℃における動粘度が10mm/sのジメチコン(商品名「KF-96A-10cs」、信越化学工業(株)製)を挙げることができる。
【0039】
<<成分(B)及び成分(C)>>
次に、本発明に係る液状油性組成物に用いる成分(B)、及び成分(C)について説明をする。
【0040】
成分(B)は、25℃において液状で、ジメチコン相溶性値が1.75以上のエステル油である。成分(C)は、25℃において液状で、ジメチコン相溶性値が1.75未満のエステル油である。
【0041】
[エステル油のジメチコン相溶性値]
エステル油のジメチコン相溶性値は、下記式(I)から求めることができる。
【0042】
【数2】
【0043】
「エステル油のジメチコン相溶性値」は、エステル油とジメチコンの相溶性を評価する値である。エステル油のジメチコン相溶性値は、エステル油の分子構造を基に決定される炭素分岐値及び酸素値を用いて、前記式(I)から算出される。エステル油のジメチコン相溶性値は、値が大きいほど、当該エステル油がジメチコンと相溶しやすく、値が小さいほど、当該エステル油がジメチコンと相溶しにくいことを示している。
【0044】
炭素分岐値とは、エステル油とジメチコンとの相溶を促進する、エステル油中の末端のメチル基の数を反映する値である。炭素分岐値の算出に用いた数字の「12」は炭素の原子量である。
【0045】
一般的に、分子構造中に類似する構造を有する物質同士は相溶しやすい。ジメチコンは前記式(2)で表されるように、側鎖にメチル基を有するシリコーン油(ポリジメチルシロキサン)であり、分子構造内に多くのメチル基を有する。したがって、エステル油の側鎖のメチル基の数が多くなるほど、エステル油とジメチコンとは、相溶しやすくなる。
【0046】
一方、酸素値は、エステル油とジメチコンとの相溶性を阻害する、エステル油中の酸素原子周辺の極性状態を反映する値である。酸素値の算出に用いた数字の「16」は酸素の原子量である。
【0047】
ジメチコンは側鎖にメチル基を有するシリコーン油であり、極性が小さい。したがって、エステル油の極性が大きくなるほど、エステル油とジメチコンとは、相溶しにくくなる。このような背景から、酸素値を算出する式において、-3、0.5、及び-0.1等、官能基に応じた相溶性への寄与度の大小を表す係数を用いている。
【0048】
ここで、炭素分岐値の算出に用いる炭素分岐の数は、分岐構造が確定しているエステル油の場合、「4級炭素の数×2+3級炭素の数」により求められる数字である。
【0049】
分岐構造が確定していないエステル油の場合、炭素分岐値の算出に用いる炭素分岐の数は、HNMRチャートから求めることができる。まず、エステル油を構成する脂肪酸及び/又はアルコールのHNMRチャートを得る。得られたHNMRチャートから、脂肪酸及びアルコールのそれぞれの炭素分岐数を算出する。その後に、炭素分岐数を求めた脂肪酸及びアルコールから得られるエステル油の炭素分岐数を算出する。
【0050】
具体的な方法としては、次に示すとおりである。HNMRを測定する機器は、特に限定されず市販されているものを使用することができる。
【0051】
エステル油を構成する脂肪酸及びアルコールを分析する前処理として、分析対象のエステル油の加水分解を行ってもよい。まず、分析対象のエステル油を、水酸化カリウムを用いてケン化する。次に、塩酸を用いて過剰量の水酸化カリウムを中和して、生じたアルコールを溶媒抽出により回収する。アルコールを取り除いた後の脂肪酸ケン化物を、再び塩酸を用いて中和し、脂肪酸を溶媒抽出により回収する。アルコール、脂肪酸それぞれの回収物から、溶媒を取り除き、HNMRの試料とする。
【0052】
まず、エステル油を構成する脂肪酸及び/又はアルコールのHNMRを測定する。得られたチャート中の脂肪酸のカルボン酸基又はアルコールのヒドロキシル基に由来するプロトンに帰属されるピーク面積を1としたときの、メチル基由来のプロトンに帰属されるピークの面積比を算出する。次に、メチル基由来のプロトンの面積比を3で除した後、炭素主鎖の末端分のメチル基の数に相当する1を引く。この方法で得られた数が脂肪酸又はアルコールに含まれる炭素分岐数である。最後にエステル合成時の仕込みモル比からエステル油を構成する脂肪酸及び/又はアルコールの炭素分岐数を合計することでエステル油の炭素分岐数とすることができる。このHNMRチャートから炭素分岐数を算出する方法は、脂肪酸及び/又はアルコールが混合物である場合や、分岐数が整数ではない場合にも適用できる。
【0053】
HNMRにて解析する際、溶媒にCDClを、基準物質にテトラメチルシランを用いた場合、ケミカルシフトはメチル基由来のプロトンは1.2~0.8ppm、ヒドロキシル基由来のプロトンは4.0~4.5ppm、カルボン酸基由来のプロトンは10~13ppmの領域である。
【0054】
[式(I)の導出]
前記式(I)は、後述する実施例に記載しているように、以下の通りにして求められる。
まず、エステル油のジメチコン相溶性値を算出するために、各種動粘度のジメチコンと各種エステル油との質量比が1:1である混合物について、25℃における相溶性の有無を調べる。
【0055】
一般に、ジメチコンは、その粘度が大きいほど、エステル油との相溶が困難になることが知られている。したがって、粘度の高いジメチコンと相溶するエステル油は、その粘度より低いジメチコンとも相溶するので、幅広い粘度のジメチコンと相溶することができ、ジメチコンとの相溶性が高いエステル油と言われる。
【0056】
次に、使用した各種エステル油の炭素分岐数をHNMRチャートから求め、ヒドロキシル基の数、エステル基の数、エーテル基の数を、エステル油を構成する脂肪酸及びアルコールの構造、並びにエステル油の水酸基価から求める。炭素分岐数から炭素分岐値を導き出し、ヒドロキシル基の数、エステル基の数、及びエーテル基の数からは、酸素値を導き出す。
【0057】
そして、各種動粘度のジメチコンと各種エステル油との質量比が1:1である混合物の、25℃における相溶性と、エステル油の構造的特徴が整合するように調整することで、式(I)が導出される。式(I)に従い、炭素分岐値と酸素値との和に、10000を掛けたものを、エステル油の分子量の2乗で割り、得られる値をジメチコン相溶性値とする。
【0058】
ジメチコンとの相溶性に優れるエステル油ほど、エステル油の構造的特徴から導き出したジメチコン相溶性値が大きい値を示す傾向にある。一方で、ジメチコンとの相溶性が悪いエステル油ほど、エステル油の構造的特徴から導き出したジメチコン相溶性値が小さい値を示す傾向にある。
【0059】
例えば、動粘度10mm/sのジメチコンと各種エステル油とを1:1の質量比で混合した混合物の相溶性と、前記式(I)を用いて算出したジメチコン相溶性値とから、ジメチコン相溶性値が1.75以上であるエステル油は、動粘度10mm/sのジメチコンと相溶すると判断できる。
【0060】
このように、式(I)より算出したジメチコン相溶性値が1.75以上のエステル油は、ジメチコンとの相溶性を実験によって確認しなくとも、成分(B)として使用可能と判断することができる。同様に、式(I)により算出したジメチコン相溶性値が1.75未満のエステル油は、ジメチコンとの相溶性を実験によって確認しなくとも、成分(C)として使用可能と判断することができる。
【0061】
本実施形態の式(I)は、例えば、動粘度5mm/s及び10mm/sのジメチコン等、異なる動粘度を有する少なくとも2種のジメチコンとエステル油と、を1:1の質量比で混合した混合物の相溶性の判断基準としても利用することができる。
【0062】
成分(B)のエステル油としては、25℃において液状、かつ、ジメチコン相溶性値が1.75以上のエステル油であればいずれも使用することができる。また、成分(C)のエステル油としては、25℃において液状、かつ、ジメチコン相溶性値が1.75未満のエステル油であればいずれも使用することができる。
【0063】
成分(B)及び成分(C)のエステル油としては、アルコールとカルボン酸から生成される化合物であるカルボン酸エステルであり、構造中にヒドロキシル基又はカルボキシル基を有していてもよい。
【0064】
カルボン酸エステルを構成するアルコールとしては、炭素数1~22個の脂肪族アルコール、又は多価アルコールが好ましい。
【0065】
カルボン酸エステルを構成する脂肪族アルコールとしては、炭素数5~20個のアルコールが好ましく、具体的には、イソノナノール、トリデカノール、2-エチルヘキサノール、セタノール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコールが好ましい。
【0066】
カルボン酸エステルを構成する多価アルコールとしては、2~8価の多価アルコールが好ましく、炭素数2~16の2~6価の多価アルコールがより好ましく、具体的には、プロパンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが好ましい。
【0067】
なお、メチル分岐のイソステアリルアルコールは、工業的に一般的に用いられているイソステアリン酸を還元して得られる。工業的に一般的に用いられているイソステアリン酸は、ダイマー酸合成時の副生成物であるモノマー酸を水素添加して得られるカルボン酸である。当該ダイマー酸合成の出発物質は、主にオレイン酸であるが、リノール酸及びリノレン酸も含まれうる。このため、工業的に汎用されているイソステアリン酸は、主鎖に対して平均1.3個のメチル基の分岐を有している(稲葉恵一、平野二郎(編集)、「新版 脂肪酸化学 第2版」、株式会社幸書房、1997年4月25日、第224ページ)。
【0068】
一方、2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクタン酸は、一般的に「イソステアリン酸」と称される。
【0069】
そこで、以下の説明においては、前記2種のイソステアリン酸由来のアルコールを区別するため、2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクタン酸を還元して得られたアルコールに由来する置換基については「(脂肪鎖に2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクチル構造を有する)」と記載する場合がある。
【0070】
カルボン酸エステルを構成するカルボン酸としては、炭素数1~22個の脂肪酸が好ましく、カルボン酸は、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有していてもよい。具体的には、カプリル酸、カプリン酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、ヒドロキシステアリン酸が好ましい。
【0071】
イソステアリルアルコールの説明で記載したように、構造は異なるが、「イソステアリン酸」と称される化合物が複数存在する。以下の説明において、イソステアリルアルコールと同様に、2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクタン酸、及びこのカルボン酸に由来する置換基については「(脂肪鎖に2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクチル構造を有する)」と記載する場合がある。
【0072】
成分(B)のエステル油としては、特に限定されず、例えば、イソノナン酸イソノニル[10.91]、イソノナン酸イソトリデシル[6.54]、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール[6.28]、トリエチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)[3.79]、トリイソステアリン酸グリセリル(脂肪鎖に2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクチル構造を有する)[3.78]、リンゴ酸ジイソステアリル(脂肪鎖に2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクチル構造を有する)[3.72]、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル[3.31]、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール[3.28]、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロパンジオール[2.92]、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(脂肪鎖に2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクチル構造を有する)[2.68]、エチルヘキサン酸セチル[2.07]、パルミチン酸エチルヘキシル[2.07]、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル[1.99]、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル(脂肪鎖に2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクチル構造を有する)[1.89]等が挙げられる。化合物名に続く[ ]内の数字は、前記式(I)を用いてエステル油の構造的特徴から算出したジメチコン相溶性値である。成分(B)のエステル油としては、これらの1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、成分(B)のエステル油としては、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリエチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロパンジオール、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、エチルヘキサン酸セチル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、または、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチルが好ましい。特に、構造中にヒドロキシル基を有するが、ジメチコンと相溶する点、粉体と相性が良いから、成分(B)のエステル油としては、リンゴ酸ジイソステアリルが好ましい。
【0073】
成分(B)のエステル油としては、市販のエステル油を使用することができる。当該市販品としては、日清オイリオグループ(株)製の各種エステル油を使用することができ、具体的には、イソノナン酸イソノニル(商品名「サラコス99」)、イソノナン酸イソトリデシル(商品名「913」)ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(商品名「サラコス525」)、トリエチルヘキサノイン(商品名「T.I.O」)、トリイソステアリン(商品名「サラコス3318」、リンゴ酸ジイソステアリル(商品名「コスモール222」)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(商品名「サラコス5408」)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(商品名「エステモールN-01」)、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロパンジオール(商品名「サラコスPR-85」)、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(商品名「コスモール43N」)、エチルヘキサン酸セチル(商品名「サラコス816T」)、パルミチン酸エチルヘキシル(商品名「サラコスP-8」)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(商品名「O.D.O」)、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル(商品名「サラコスDP-518N」)等を使用することができる。
【0074】
成分(C)のエステル油としては、特に限定されず、例えば、ジイソステアリン酸プロパンジオール[1.71]、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン[1.36]、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル[1.04]、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2[0.82]、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2[0.48]、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル[-1.18]等が挙げられる。化合物名に続く[ ]内の数字は、前記式(I)を用いてエステル油の構造的特徴から算出したジメチコン相溶性値である。成分(C)のエステル油としては、これらの1種又は2種以上を使用することができる。特に、ジメチコン相溶性値が小さく、効率よくジメチコンと分離する点から、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルが好ましい。
【0075】
成分(C)のエステル油としては、市販のエステル油を使用することができる。当該市販品としては、日清オイリオグループ(株)製の各種エステル油を使用することができ、具体的には、ジイソステアリン酸プロパンジオール(商品名「サラコスPR-17」)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(商品名「サラコス6318V」)、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル(商品名「サラコス5418V」)、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2(商品名「コスモール44V」)、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(商品名「コスモール43V」)、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル(商品名「サラコスEH」)等を使用することができる。
【0076】
エステル油の前記ジメチコン相溶性値は、成分(A)とエステル油とを、1:1の質量比で混合した場合の相溶性と相関する。具体的には、25℃において液状であるエステル油のうち、ジメチコン相溶性値が1.75以上のエステル油は、成分(A)と1:1の質量比で混合した場合に相溶性がある。一方で、25℃において液状であるエステル油のうち、ジメチコン相溶性値が1.75未満のエステル油は、成分(A)と1:1の質量比で混合した場合に相溶性がない。このため、本実施形態の液状油性組成物は、前記ジメチコン相溶性値を用いない、次の態様として示すこともできる。
【0077】
すなわち、本実施形態の液状油性組成物は、以下のジメチコン(成分(A2))、及び以下のエステル油(成分(B2)、成分(C2))を含有し、25℃において透明で均一であり(相溶性1)、かつ、液状油性組成物100質量部に対しマカデミアナッツ油を8質量部添加した混合物から、成分(A2)が分離する(相溶性2)、液状油性組成物である。
成分(A2):25℃における動粘度が4~12mm/sのジメチコンの1種又は2種以上
成分(B2):25℃で液体のエステル油であって、成分(A)と1:1の質量比(成分(A):成分(B2)の質量比=1:1)で混合した場合に、相溶性があるエステル油の1種又は2種以上
成分(C2):25℃で液体のエステル油であって、成分(A)と1:1の質量比(成分(A):成分(C2)の質量比=1:1)で混合した場合に、相溶性がないエステル油の1種又は2種以上
【0078】
成分(A2)は、前記成分(A)と同じである。
また、成分(B2)のエステル油としては、25℃において液状で、ジメチコン相溶係数が1.75以上のエステル油、すなわち前記成分(B)のエステル油であれば、いずれのエステル油も使用することができる。
また、成分(C2)のエステル油としては、25℃において液状で、ジメチコン相溶係数が1.75未満のエステル油、すなわち前記成分(C)のエステル油であれば、いずれのエステル油も使用することができる。
【0079】
成分(B2)と成分(C2)の混合物の25℃における粘度は、10~1500mPa・sであることが好ましく、30~1200mPa・sであることがより好ましく、50~1100mPa・sであることがより好ましく、100~1000mPa・sであることが最も好ましい。成分(B2)と成分(C2)の混合物の25℃における粘度が前記範囲内にあることにより、本実施形態の液状油性組成物は、皮脂が混じった場合に、シリコーン膜がより形成しやすくなる。成分(B)と成分(C)の混合物の25℃における粘度も、同様である。ここで、成分(B2)と成分(C2)の混合物の25℃における粘度は、例えば、B型粘度計を用い、読み値が10~90になるようにローターと回転数を適宜選択し、回転開始から60秒後の値を読み取ることで、測定することができる。
【0080】
本実施形態の液状油性組成物において、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、0.32~18.00であることが好ましく、0.40~14.24であることがより好ましい。
また、本実施形態の液状油性組成物において、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、1.50~12.33であることが好ましく、2.08~11.05がより好ましい。前記質量比((B)/(C))及び、前記質量比({(B)+(C)}/(A))の条件を満たすことで、本実施形態の液状油性組成物は、皮脂が混じった場合に、シリコーン膜がより形成しやすくなる。つまり、前記質量比((B)/(C))及び、前記質量比({(B)+(C)}/(A))の条件を満たすことで、より高い2次付着抑制効果と、強度と持続力のある優れた撥水性とが得られる。質量比((B2)/(C2))及び、前記質量比({(B2)+(C2)}/(A2))も同様である。
【0081】
以下、本実施形態の液状油性組成物において、成分A、成分B、及び成分Cの組み合わせと、好ましい配合割合を記載する。以下の記載においては、成分Aと成分Bと成分Cの和を100質量%とする。また、以下の例示において、ジメチコンの末尾の記載はジメチコンの25℃における動粘度を示す。例えば、「ジメチコン5cs」は、動粘度が5センチストークス(5cs)のジメチコンであることを意味する。1センチストークスは、1mm/sである。
【0082】
成分(A)がジメチコン5~10csであり、成分(B)がトリエチルヘキサン酸グリセリルであり、成分(C)がヒドロキシステアリン酸エチルへキシルである場合、成分(A)は12.50~17.30質量%であることが好ましく、成分(B)は31.40~41.20質量%であることが好ましく、成分(C)は45.00~53.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、0.59~0.92であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、4.78~7.00であることが好ましい。
【0083】
成分(A)がジメチコン5csであり、成分(B)がトリエチルヘキサン酸グリセリルであり、成分(C)がヒドロキシステアリン酸エチルへキシルである場合、成分(A)は15.60~17.30質量%であることが好ましく、成分(B)は31.40~34.70質量%であることが好ましく、成分(C)は48.00~53.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、0.59~0.72であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、4.78~5.41であることが好ましい。
【0084】
成分(A)がジメチコン10csであり、成分(B)がイソノナン酸イソノニルであり、成分(C)がヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルである場合、成分(A)は30.00~32.50質量%であることが好ましく、成分(B)は30.00~32.50質量%であることが好ましく、成分(C)は35.00~40.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、0.75~0.93であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、2.08~2.33であることが好ましい。
【0085】
成分(A)がジメチコン10csであり、成分(B)がイソノナン酸イソトリデシルであり、成分(C)がヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルである場合、成分(A)は8.30~8.80質量%であることが好ましく、成分(B)は24.70~26.20質量%であることが好ましく、成分(C)は65.00~67.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、0.37~0.40であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、10.36~11.05であることが好ましい。
【0086】
成分(A)がジメチコン10csであり、成分(B)がジエチルヘキサン酸ネオペンチルグルコールであり、成分(C)がヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルである場合、成分(A)は9.00~9.50質量%であることが好ましく、成分(B)は27.00~28.50質量%であることが好ましく、成分(C)は62.00~64.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、0.42~0.46であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、9.53~10.11であることが好ましい。
【0087】
成分(A)がジメチコン10csであり、成分(B)がトリエチルヘキサン酸グリセリルであり、成分(C)がヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルである場合、成分(A)は12.50~13.80質量%であることが好ましく、成分(B)は37.50~41.20質量%であることが好ましく、成分(C)は45.00~50.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、0.75~0.92であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、6.25~7.00であることが好ましい。
【0088】
成分(A)がジメチコン10csであり、成分(B)がトリイソステアリン酸グリセリルであり、成分(C)がヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルである場合、成分(A)は14.50~15.80質量%であることが好ましく、成分(B)は43.50~47.20質量%であることが好ましく、成分(C)は37.00~42.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、1.04~1.28であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、5.33~5.90であることが好ましい。
【0089】
成分(A)がジメチコン10csであり、成分(B)がテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルであり、成分(C)がヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルである場合、成分(A)は16.30~17.50質量%であることが好ましく、成分(B)は48.70~52.50質量%であることが好ましく、成分(C)は30.00~35.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、1.39~1.75であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、4.71~5.13であることが好ましい。
【0090】
成分(A)がジメチコン10csであり、成分(B)がジカプリン酸ネオペンチルグリコールであり、成分(C)がヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルである場合、成分(A)は16.30~18.00質量%であることが好ましく、成分(B)は48.70~54.00質量%であることが好ましく、成分(C)は28.00~35.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、1.39~1.93であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、4.56~5.13であることが好ましい。
【0091】
成分(A)がジメチコン10csであり、成分(B)がジ(カプリル酸/カプリン酸)プロパンジオールであり、成分(C)がヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルである場合、成分(A)は16.30~18.00質量%であることが好ましく、成分(B)は48.70~54.00質量%であることが好ましく、成分(C)は28.00~35.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、1.39~1.93であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、4.56~5.13であることが好ましい。
【0092】
成分(A)がジメチコン10csであり、成分(B)がトリイソステアリン酸ポリグリセリル-2であり、成分(C)がヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルである場合、成分(A)は19.50~21.30質量%であることが好ましく、成分(B)は58.50~63.70質量%であることが好ましく、成分(C)は15.00~22.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、2.66~4.25であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、3.69~4.13であることが好ましい。
【0093】
成分(A)がジメチコン10csであり、成分(B)がエチルヘキサン酸セチルであり、成分(C)がヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルである場合、成分(A)は11.80~13.00質量%であることが好ましく、成分(B)は35.20~39.00質量%であることが好ましく、成分(C)は48.00~53.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、0.66~0.81であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、6.69~7.47であることが好ましい。
【0094】
成分(A)がジメチコン10csであり、成分(B)がトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルであり、成分(C)がヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルである場合、成分(A)は21.30~23.80質量%であることが好ましく、成分(B)は63.70~71.20質量%であることが好ましく、成分(C)は5.00~15.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、4.25~14.24であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、3.20~3.69であることが好ましい。
【0095】
成分(A)がジメチコン10csであり、成分(B)がペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチルであり、成分(C)がヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルである場合、成分(A)は20.00~22.00質量%であることが好ましく、成分(B)は60.00~66.00質量%であることが好ましく、成分(C)は12.00~20.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、3.00~5.50であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、3.55~4.00であることが好ましい。
【0096】
成分(A)がジメチコン10csであり、成分(B)がリンゴ酸ジイソステアリルであり、成分(C)がジイソステアリン酸プロパンジオールである場合、成分(A)は12.50~16.30質量%であることが好ましく、成分(B)は37.50~48.70質量%であることが好ましく、成分(C)は35.00~50.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、0.75~1.39であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、5.13~7.00であることが好ましい。
【0097】
成分(A)がジメチコン10csであり、成分(B)がリンゴ酸ジイソステアリルであり、成分(C)がトリイソステアリン酸トリメチロールプロパンである場合、成分(A)は18.80~19.50質量%であることが好ましく、成分(B)は56.20~58.50質量%であることが好ましく、成分(C)は22.00~25.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、2.25~2.66であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、4.13~4.32であることが好ましい。
【0098】
成分(A)がジメチコン10csであり、成分(B)がリンゴ酸ジイソステアリルであり、成分(C)がテトライソステアリン酸ペンタエリスリチルである場合、成分(A)は18.80~20.00質量%であることが好ましく、成分(B)は56.20~60.00質量%であることが好ましく、成分(C)は20.00~25.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、2.25~3.00であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、4.00~4.32であることが好ましい。
【0099】
成分(A)がジメチコン10csであり、成分(B)がリンゴ酸ジイソステアリルであり、成分(C)がトリイソステアリン酸ポリグリセリル-2である場合、成分(A)は20.00~21.00質量%であることが好ましく、成分(B)は60.00~63.00質量%であることが好ましく、成分(C)は16.00~20.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、3.00~3.94であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、3.76~4.00であることが好ましい。
【0100】
成分(A)がジメチコン10csであり、成分(B)がリンゴ酸ジイソステアリルであり、成分(C)がテトライソステアリン酸ポリグリセリル-2である場合、成分(A)は18.80~20.00質量%であることが好ましく、成分(B)は56.20~64.00質量%であることが好ましく、成分(C)は20.00~25.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、2.25~3.20であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、4.00~5.67であることが好ましい。
【0101】
成分(A)がジメチコン10csであり、成分(B)がリンゴ酸ジイソステアリルであり、成分(C)がヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルである場合、成分(A)は20.00~21.00質量%であることが好ましく、成分(B)は60.00~63.00質量%であることが好ましく、成分(C)は16.00~20.00質量%であることが好ましい。この場合、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、3.00~3.94であることが好ましく、成分(B)と成分(C)との合計量と、成分(A)の質量比({(B)+(C)}/(A))は、3.76~4.00であることが好ましい。
【0102】
<化粧料>
次に、本発明に係る化粧料について説明をする。
【0103】
本実施形態の化粧料は、前記実施形態に係る液状油性組成物を含有する化粧料である。当該化粧料は、前記液状油性組成物のみからなるものであってもよく、さらにその他の成分を含有していてもよい。化粧料の油性成分として使用する場合は、当該化粧料の化粧料全体に対する前記液状油性組成物の含有割合は5~60質量%であることが好ましく、10~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがさらに好ましい。
【0104】
本実施形態の化粧料に含有されている、前記液状油性組成物に由来する成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の合計量は、当該化粧料が相溶性2を有している限り、特に限定されるものではない。本実施形態の化粧料の化粧料全体に対する前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記成分(C)の合計含有量の割合は、例えば、5質量%以上とすることができ、10~60質量%が好ましく、15~50質量%以上がより好ましく、20~45質量%がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
【0105】
本発明に係る化粧料は、透明、半透明、乳化(白濁)のいずれの外観であってもよく、液状、クリーム状などのいずれの形態をとることもできる。
【0106】
本発明に係る液状油性組成物を使用した化粧料としては、特に限定されず、例えば、ファンデーションなどのメイク化粧品や、サンスクリーン化粧品、乳液、クリーム、美容液、化粧水などのスキンケア化粧品が挙げられる。
【0107】
(成分(D))
本実施形態の化粧料は、さらに、成分(D)として粉体を含有させることができる。
【0108】
成分(D)の粉体としては、一般的に化粧料に使用されるいずれの粉体を用いることができる。成分(D)の粉体としては、特に限定されず、例えば、体質顔料、着色顔料、パール顔料等を用いることができる。
【0109】
また、成分(D)の粉体の形状は、特に限定されず、球状、板状、針状、粒状、紡錘状、薄片状、及び不定形等のいずれの形状でもよい。
【0110】
体質顔料としては、特に限定されず、例えば、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、ベントナイト、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機顔料及びこれらの複合粉体;ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ナイロン、シリコーン樹脂、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、シルクパウダー、セルロース、Nε-ラウロイル-L-リジン等からなる有機粉体、及びこれらの複合粉体;前記無機粉体と前記有機粉体との複合粉体等が挙げられる。
【0111】
着色顔料としては、特に限定されず、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、赤酸化鉄、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物;マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体;カーボンブラック等の無機顔料;タール系色素、レーキ顔料等の有機顔料;カルミン等の天然色素等が挙げられる。
【0112】
パール顔料としては、特に限定されず、例えば、雲母、合成金雲母等を酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、紺青、酸化クロム、カルミン、有機顔料等の着色剤で被覆したパール顔料等を用いることができる。これらの粉体は、通常の方法により、撥水処理、撥水・撥油化処理等の各種表面処理を施して用いてもよい。
【0113】
成分(D)の粉体として、金属酸化物粉体のような紫外線遮蔽の効果を有する粉体を含有させることにより、サンスクリーン化粧料(日焼け止め用化粧料)を製造することもできる。
【0114】
紫外線遮蔽の効果を有する金属酸化物粉体としては、特に限定されず、例えば、平均粒径が10~100nmであると、肌に塗付した時に白浮きが抑えられるためより好ましい。
【0115】
紫外線遮蔽効果を有する金属酸化物粉体としては、特に限定されず、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を使用することができる。
【0116】
また、形状は、特に限定されず、例えば、球状、針状、紡錘状、板状、薄片状等が挙げられる。表面活性を低下させるために、シリカ、アルミナ等の無機化合物により処理されていても良い。
【0117】
本実施形態の化粧料が成分(D)を含有する場合、化粧料全体に対する成分(D)の含有割合は、化粧料の種類によって適切な含有量が異なるが、1~90質量%であることが好ましく、1~60質量%であることがより好ましく、1~30質量%であることがさらに好ましい。例えば、本実施形態の化粧料が、油中水型乳化ファンデーション、乳化型アイシャドウ、又はサンスクリーンの場合、当該化粧料中の成分(D)の含有量は、1~30質量%が好適である。
【0118】
(成分(E)及び成分(F))
本実施形態の化粧料は、さらに、成分(E)として水、成分(F)として界面活性剤を含有させることができる。
【0119】
これらの成分を含有させることにより、本実施形態の化粧料を、乳化化粧料とすることができる。本実施形態の化粧料としては、油中水型乳化化粧料(W/O乳化化粧料)であってもよく、水中油型乳化化粧料(O/W乳化化粧料)であってもよい。
【0120】
成分(E)の水としては、特に限定されず、例えば、イオン交換水、蒸留水、果実由来の水、深層海洋水などのいずれも使用できる。
【0121】
成分(E)を含有する本実施形態の化粧料中の成分(E)の含有割合は、特に限定されず、化粧料の種類等を考慮して適宜調整することができる。本実施形態の化粧料中の成分(E)の含有割合としては、1~80質量%であることが好ましく、10~70質量%であることがより好ましく、20~60質量%であることがさらに好ましい。
【0122】
成分(F)としての界面活性剤は、一般に化粧品に使用できる界面活性剤をいずれも使用できる。中でも、ポリオキシエチレン変性シリコーン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン水添ひまし油などの非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0123】
成分(F)を含有する本実施形態の化粧料中の成分(F)の含有割合は、特に限定されず、化粧料の種類等を考慮して適宜調整することができる。本実施形態の化粧料中の成分0.01~10質量%であることが好ましく、0.05~5質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることがさらに好ましい。
【0124】
本発明に係る化粧料は、さらに本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料に一般的に添加される添加剤を含有させることができる。当該添加剤としては、例えば、酸化防止剤、酸化防止助剤、防腐剤、紫外線吸収剤、多価アルコール、水溶性高分子、pH調整剤、無機塩又は有機酸塩、キレート剤、ビタミン類、有機溶剤、香料、各種エキス等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0125】
酸化防止剤としては、特に制限されず、例えば、油溶性ビタミンC誘導体、トコフェロール類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、及び没食子酸エステル類等が挙げられる。酸化防止剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0126】
酸化防止助剤としては、特に制限されず、例えば、リン酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、ケファリン、ヘキサメタフォスフェイト、フィチン酸、及びエチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。酸化防止助剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0127】
防腐剤としては、特に制限されず、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、フェノキシエタノール等が挙げられる。防腐剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0128】
紫外線吸収剤としては、以下に制限されないが、例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABA と略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル等の安息香酸系紫外線吸収剤;ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等のアントラニル酸系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等の桂皮酸系紫外線吸収剤;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン、5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン、及び2,4,6-トリアニリノ-p-(カルボ-2’-エチルヘキシル-1’-オキシ)1,3,5-トリアジン、4-tent-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、エチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、エチルヘキシルトリアジン、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、オキシベンゾン-3等が挙げられる。紫外線吸収剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
多価アルコールとしては、以下に制限されないが、例えば、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール(1,3-ブタンジオール)、ペンチレングリコール(1,2-ペンタンジオール)、ネオペンチレングリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、イソプレングリコール(3-メチル-1,3-ブタンジオール)、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン等が挙げられる。多価アルコールとしては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0130】
水溶性高分子としては、特に制限されず、天然の水溶性高分子であってもよく、半合成の水溶性高分子であってもよく、合成の水溶性高分子であってもよい。本発明に係る化粧料に含有させる水溶性増粘剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0131】
天然の水溶性高分子としては、特に制限されず、例えば、寒天、グルコマンナン、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)等の植物系高分子;キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等の微生物系高分子;及びコラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子;が挙げられる。
【0132】
半合成の水溶性高分子としては、特に制限されず、例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子;メチルセルロース、ニトロセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子;及びアルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子;等が挙げられる。
【0133】
合成の水溶性高分子としては、特に制限されず、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子;ポリエチレングリコール20,000、40,000、60,000等のポリオキシエチレン系高分子;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体共重合系高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子;ポリエチレンイミン、及びカチオンポリマー等が挙げられる。
【0134】
pH調整剤としては、特に制限されず、例えば、エデト酸、エデト酸二ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びトリエタノールアミン等が挙げられる。pH調整剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0135】
無機塩としては、特に制限されず、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。有機酸塩としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、及びそれらの塩や、アスコルビン酸及びその塩や、アスコルビン酸誘導体及びその塩等が挙げられる。
【0136】
キレート剤としては、特に制限されず、例えば、エデト酸二ナトリウム、エデト酸塩、及びヒドロキシエタンジホスホン酸等が挙げられる。キレート剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0137】
ビタミン類としては、特に制限されず、例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンE、ビタミンK及びそれらの誘導体、パントテン酸及びその誘導体、ビオチン等が挙げられる。
【0138】
エキス類としては、特に制限されず、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出エキスなどが挙げられる。
【実施例0139】
以下、具体的な実施例に基づいて、本発明についてさらに詳しく説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例の内容に何ら限定されるものではない。
【0140】
[1.液状油性組成物の評価]
表1に、成分(B)及び成分(C)と略称との対応表を示す。
表2に、成分(B)及び成分(C)について、各動粘度のジメチコンとの相溶性の実験結果及びジメチコン相溶性値を示す。
表3に、ジメチコン相溶性値及びジメチコン相溶性値の計算に用いた分子構造的要因を示す。
【0141】
ジメチコンと成分(B)又は成分(C)との相溶性は、後述する[液状油性組成物の調製及び相溶性1の評価]に沿って、調製及び評価した。
【0142】
その結果、ジメチコンと相溶性のあるエステル油は、ジメチコン相溶係数が1.75以上となることが確認できた。一方で、ジメチコンと相溶性のないエステル油は、ジメチコン相溶係数が1.75未満となることが確認できた。
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】
【0145】
【表3】
【0146】
使用したジメチコンはいずれも信越化学工業(株)製で、25℃における動粘度が1mm/sのジメチコンは商品名「KF-96A-1cs」(以下、「ジメチコン1cs」と略す)、動粘度が2mm/sのジメチコンは商品名「KF-96L-2cs」(以下、「ジメチコン2cs」と略す)、動粘度が5mm/sのジメチコンは商品名「KF-96A-5cs」(以下、「ジメチコン5cs」と略す)、動粘度が10mm/sのジメチコンは商品名「KF-96A-10cs」(以下、「ジメチコン10cs」と略す)、動粘度が20mm/sのジメチコンは商品名「KF-96A-20cs」(以下、「ジメチコン20cs」と略す)、動粘度が100mm/sのジメチコンは製品名「KF-96A-100cs」(以下、「ジメチコン100cs」と略す)、動粘度が100万mm/sのジメチコンは製品名「KF-96H-100万cs」(以下、「ジメチコン100万cs」と略す)のジメチコンを、それぞれ使用した。以下、成分(A)に相当しないジメチコンを、成分(A’)と称することがある。
【0147】
成分(B)として、全て、日清オイリオグループ(株)製の市販品である、イソノナン酸イソノニル(商品名「サラコス99」)、イソノナン酸イソトリデシル(商品名「サラコス913」)ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(商品名「サラコス525」)、トリエチルヘキサン酸グリセリル(商品名「T.I.O」)、トリイソステアリン酸グリセリル(商品名「サラコス3318」)、リンゴ酸ジイソステアリル(商品名「コスモール222」)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(商品名「サラコス5408」)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(商品名「エステモールN-01」)、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロパンジオール(商品名「サラコスPR-85」)、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(商品名「コスモール43N」)、エチルヘキサン酸セチル(商品名「サラコス816T」)、パルミチン酸エチルヘキシル(商品名「サラコスP-8」)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(商品名「O.D.O」)、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル(商品名「サラコスDP-518N」)を使用した。
【0148】
成分(C)として、全て、日清オイリオグループ(株)製の市販品である、ジイソステアリン酸プロパンジオール(商品名「サラコスPR-17」)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(商品名「サラコス6318V」)、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル(商品名「サラコス5418V」)、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2(商品名「コスモール44V」)、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(商品名「コスモール43V」)、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル(商品名「サラコスEH」)を使用した。
【0149】
本発明の一つの形態である液状油性組成物について例示する。
表4~表14に、液状油性組成物の配合(質量%)と液状油性組成物の評価を示す。表4~表14の成分欄の数値は、それぞれ質量%を意味する。
【0150】
(液状油性組成物の原料)
顔料として、大東化成社(株)製の酸化鉄(商品名「OTS-2 RED R-516」)を使用した。
マカデミアナッツ油として、横関油脂工業株式会社のマカデミアナッツ油(商品名「精製マカダミアナッツ油」)を使用した。
【0151】
[液状油性組成物の調製方法]
表4~表14に示す配合の成分(A)又は成分(A’)、成分(B)、成分(C)を、同じスクリュー管に秤取り、その後よく振り混ぜることにより、液状油性組成物を調製した。
表4~表7で得られた液状油性組成物については、後述する方法で、相溶性1,相溶性2、成分(B)と成分(C)の混合物の粘度、顔料の2次付着抑制の効果、撥水性の強度、及び撥水性の持続力を調べ、総合評価(顔料の2次付着抑制の効果、撥水性の強度と持続力)を行った。
また、表8~表14で得られた液状油性組成物については、後述する方法で、相溶性1、及び相溶性2を調べた。
【0152】
[相溶性1の評価方法]
調製した液状油性組成物を入れたスクリュー管を25℃にて5分放置した。その後、液状油性組成物の外観を目視にて確認し、以下に示す相溶性1の評価基準を用いて相溶性を評価した。この調製した液状油性組成物の相溶性を、相溶性1と定義する。
【0153】
[相溶性1の評価基準]
S :25℃において、外観が、分離、曇りや濁りを生じていない透明で均一な状態で、相溶している(相溶性あり)。
IS:25℃において、外観が、分離、曇りや濁りを生じた状態で、相溶していない(相溶性なし)。
【0154】
本願発明に係る液状油性組成物は、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の混合物が透明で均一なこと、すなわち相溶性1が評価「S」であること、を要件とする。
【0155】
[相溶性2の評価方法]
相溶性1の評価をした液状油性混合物100質量部に、マカデミアナッツ油を8質量部加えた後、よく振り混ぜた。次いで当該スクリュー管を25℃にて5分放置した。その後、液状油性組成物の外観を目視にて確認し、以下に示す相溶性2の評価基準を用いて相溶性を評価した。液状油性組成物にマカデミアナッツ油を加えた後の液状油性組成物の相溶性を、相溶性2と定義する。
【0156】
[相溶性2の評価基準]
S :外観が、分離、曇りや濁りを生じていない透明で均一な状態で、相溶している(相溶性あり)。
IS:外観が、分離、曇りや濁りを生じた状態で、相溶していない(相溶性なし)。
【0157】
本願発明に係る液状油性組成物は、液状油性組成物100質量部に対して、マカデミアナッツ油8質量部添加した場合に、相溶しないこと、すなわち相溶性2が評価「IS」であること、を要件とする。
【0158】
[相溶性1及び相溶性2の評価]
液状油性組成物において、相溶性1が評価「S」であり、かつ、相溶性2が評価「IS」であるとき、液状油性組成物は、本願発明の効果を奏する。
【0159】
[成分(B)と成分(C)の混合物の粘度]
成分(B)と成分(C)との混合物の25℃における粘度は、B型粘度計を用いて測定した。粘度の測定においては、読み値が10~90になるようにローターと回転数を適宜選択し、回転開始から60秒後の値を読み取り、粘度値に換算した。
【0160】
[顔料の2次付着抑制の効果の評価方法]
(I)表4、表5、表6、表7に示す配合で成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を配合して、液状油性組成物を得た。得られた液状油性組成物の総質量に対して、5質量%の顔料を加えた。顔料として酸化鉄を使用した。その後、超音波洗浄機に入れ、時々振り混ぜながら、60分間超音波処理を行った。
(II)洗浄して皮脂を除いた前腕内側部に、3cm×3cmの部位を作成した。作成した部位に、除いた皮脂の代替皮脂としてマカデミアナッツ油を3μL塗布した。(III)マカデミアナッツ油を塗布した上から、(I)で調製した顔料を含む液状油性組成物を9μL塗布し、3分間静置した。
(IV)塗布部を覆い隠すようにティッシュペーパーをかぶせ、上から軽く押さえた。その後、ティッシュペーパーを剥がし、ティッシュペーパーへの顔料の転写具合を評価した。
【0161】
[2次付着面積の算出]
ティッシュペーパーへの顔料の転写具合は、ティッシュを、被写体(ティッシュ)から25cmの高さから撮影し、撮影した画像を画像処理することによって評価した。画像処理条件は画像処理ソフトウェア「imageJ」にて、転写範囲を全て含み、かつ、中心になるようにトリミングを行い、二値化処理後、黒色部の面積を算出した。二値化処理では、まず、撮影した画像(カラー画像)を8bit変換でグレーススケール画像にした。その後、グレースケール画像の、画素値:0~195の範囲を黒、画素値:196~255の範囲を白として、二値化処理を行った。
【0162】
実施例1及び比較例1の撮影写真(実写)、及びそれらの写真を二値化処理した図を図1に示す。
【0163】
[顔料の2次付着抑制の評価基準]
[2次付着面積の算出条件]で算出した黒色部の検出面積の割合を用いて、顔料の2次付着抑制を評価した。
A:検出面積が25%未満。
B:検出面積が25%以上28%未満。
C:検出面積が28%以上30%未満。
D:検出面積が30%以上。
検出面積が30%以上となるDは、効果なしと判断した。
【0164】
[撥水性の強度の評価方法]
(I)50mm×50mmのPMMA製プレートに、マカデミアナッツ油を3μL塗布した。
(II)その上に、表3及び表4に示した配合で調製した液状油性組成物を9μL塗布した。
(III)その後、3分間放置した後、当該プレートに塗布した塗膜に、イオン交換水20μLを滴下し、当該プレートを傾けて、水滴が動き出す角度を測定した。
【0165】
[撥水性の強度の評価基準]
A:プレートの傾斜角度が、40度未満で動き出した。
B:プレートの傾斜角度が、40度以上41度未満で動き出した。
C:プレートの傾斜角度が、42度以上43度未満で動き出した。
D:プレートの傾斜角度が、43度以上でも動かなかった。
【0166】
[撥水性の持続力の評価方法]
(I)[撥水性の強度の評価方法]と同様に調製したPMMA製プレートを、40℃に保温したイオン交換水に10分間浸漬し、自然乾燥させた。
(II)その後、プレートに塗布した塗膜に、イオン交換水20μLを滴下し、当該プレートを傾けて、水滴が動き出す角度を測定した。
【0167】
[撥水性の持続力の評価基準]
A:プレートの傾斜角度が、34度未満で動き出した。
B:プレートの傾斜角度が、34度以上35度未満で動き出した。
C:プレートの傾斜角度が、35度以上36度未満で動き出した。
D:プレートの傾斜角度が、36度以上でも動かなかった。
【0168】
[顔料の2次付着抑制の効果、撥水性の強度と持続力の総合評価]
評価対象の液状油性組成物の顔料の2次付着抑制の効果、撥水性の強度、及び撥水性の持続力の各評価でつけられた評点について、評価はAを4点、Bを3点、Cを2点、Dを1点として点数化し、各評価点数の和を総合評価点とした。ただし、評価対象の液状油性組成物の顔料の2次付着抑制の効果、撥水性の強度、及び撥水性の持続力の各評価でつけられた評点において、いずれかの項目においてD評価がつけられた液状油性組成物は、本発明の効果を奏さないと判断した。
【0169】
【表4】
【0170】
【表5】
【0171】
【表6】
【0172】
【表7】
【0173】
【表8】
【0174】
【表9】
【0175】
【表10】
【0176】
【表11】
【0177】
【表12】
【0178】
【表13】
【0179】
【表14】
【0180】
表4~表7の結果から、成分(A)としてジメチコン5cs、又はジメチコン10csを使用した配合で、相溶性1がS(相溶性あり)評価、相溶性2がIS(相溶性なし)評価である実施例1~7の液状油性組成物は、優れた顔料の2次付着抑制の効果、強度と持続力のある優れた撥水性を有していたことが確認された。これは、皮膚塗布したことにより、皮脂と混じって成分(A)が分離して、表面にシリコーン膜が形成されたためと推察された。
【0181】
一方で、比較例1の液状油性組成物は、成分(A)としてジメチコン10csを使用しているが、成分(C)を含有していない液状油性組成物であり、相溶性1及び相溶性2でS(相溶性あり)と評価され、結果として、顔料の2次付着抑制の効果、撥水性の強度と持続力が低い液状油性組成物であった。また、比較例2の液状油性組成物は、成分(A)としてジメチコン10csを使用しているが、成分(B)を含有しない液状油性組成物であり、相溶性1及び相溶性2で、IS(相溶性なし)と評価された。比較例2の液状油性組成物は、不均一な状態であったため、2次付着抑制の効果、撥水性の強度と持続力の評価を行わなかった。
【0182】
また、比較例3及び比較例5の液状油性組成物は、成分(A)としてジメチコン10csを使用しているが、相溶性1及び相溶性2でIS(相溶性なし)と評価された。比較例3及び5の液状油性組成物は、不均一な状態であったため、2次付着抑制の効果、撥水性の強度と持続力の評価を行わなかった。
また、比較例4、比較例6及び比較例7の液状油性組成物は、成分(A)としてジメチコン10csを使用しているが、相溶性1及び相溶性2でS(相溶性あり)と評価され、かつ、顔料の2次付着抑制の効果、撥水性の強度と持続力が低い液状油性組成物であった。
【0183】
比較例8の液状油性組成物は、成分(A)としてジメチコン5csを使用しているが、相溶性1及び相溶性2でS(相溶性あり)と評価された。相溶性の評価が同じであった比較例4、比較例6及び比較例7の評価結果から判断すると、比較例8の液状油性組成物も、顔料の2次付着抑制の効果、撥水性の強度と持続力が低い液状油性組成物である可能性が高い。
また、比較例9の液状油性組成物は、成分(A)としてジメチコン5csを使用しているが、相溶性1及び相溶性2でIS(相溶性なし)と評価された。比較例9の液状油性組成物は、不均一な状態であったため、2次付着抑制の効果、撥水性の強度と持続力の評価を行わなかった。
【0184】
そして、ジメチコン20csを使用した比較例10、11の液状油性組成物は、相溶性1がS(相溶性あり)評価、相溶性2がIS(相溶性なし)評価であったにもかかわらず、顔料の2次付着抑制の効果が低かった。この結果から、ジメチコン20csは、成分(A)のジメチコンとしては使用できないことがわかった。
また、ジメチコン20csを使用した比較例12の液状油性組成物は、相溶性1及び相溶性2でS(相溶性あり)と評価された。相溶性の評価が同じであった比較例4、比較例6及び比較例7の評価結果から判断すると、比較例12の液状油性組成物も、顔料の2次付着抑制の効果、撥水性の強度と持続力が低い液状油性組成物である可能性が高い。
また、ジメチコン20csを使用した比較例13の液状油性組成物は、相溶性1及び相溶性2でIS(相溶性なし)と評価された。比較例13の液状油性組成物は、不均一な状態であったため、2次付着抑制の効果、撥水性の強度と持続力の評価を行わなかった。
【0185】
実施例6の配合で、ジメチコン10csをジメチコン1csに代えた比較例14、及びジメチコン10csをジメチコン2csに代えた比較例15の液状油性組成物は、相溶性1及び相溶性2でS(相溶性あり)と評価された。相溶性の評価が同じであった比較例4、比較例6及び比較例7の評価結果から判断すると、比較例14及び15の液状油性組成物も、顔料の2次付着抑制の効果、撥水性の強度と持続力が低い液状油性組成物である可能性が高い。この結果から、ジメチコン1cs、及びジメチコン2csは、成分(A)のジメチコンとしては使用できないことがわかった。
【0186】
これらの結果から、相溶性1が評価「S」で、相溶性2が評価「IS」であった場合、分離したジメチコンによりシリコーン膜が形成され、その結果、本発明の効果を発揮したということがわかった。
【0187】
表8~表10、表13の実施例8~41の液状油性組成物については、顔料の2次付着抑制の効果、及び撥水性の強度と持続力は行っていない。しかし、成分(A)としてジメチコン10csを使用し、相溶性1でS(相溶性あり)、相溶性2でIS(相溶性なし)と評価されたため、同じように成分(A)としてジメチコン10csを使用して、かつ、相溶性の評価が同じであった実施例1~5の評価結果から判断すると、実施例8~41の液状油性組成物も、優れた顔料の2次付着抑制の効果、強度と持続力のある優れた撥水性を有する油性組成物である可能性が高い。
また、表10~表12、表14の比較例16~49の液状油性組成物についても、顔料の2次付着抑制の効果、及び撥水性の強度と持続力は行っていない。しかし、相溶性1及び相溶性2でS(相溶性あり)と評価された比較例の液状油性組成物は、成分(A)としてジメチコン10csを使用して、かつ、相溶性の評価が同じであった比較例4、比較例6及び比較例7の評価結果から判断すると、顔料の2次付着抑制の効果、撥水性の強度と持続力が低い液状油性組成物である可能性が高い。
また、表10~表12、表14で相溶性1及び相溶性2でIS(相溶性なし)と評価された比較例の液状油性組成物は、不均一な状態であったため、2次付着抑制の効果、撥水性の強度と持続力の評価は行わなかった。
【0188】
[2.化粧料の評価]
続いて、本発明のもう一つの形態である、液状油性組成物を含む化粧料について調べた。表15及び表16に示す実施例42及び実施例43と比較例50~54の化粧料を、後述する方法で調製した後、後述する評価方法及び評価基準にて評価した。油中水型ファンデーションでは、「化粧料の2次付着抑制の効果」、「化粧膜の柔軟性」、「撥水性の強度」、「撥水性の持続力」を評価した。また、水中油型保湿クリームでは、「化粧膜の柔軟性」、「撥水性の強度」、「撥水性の持続力」を評価した。
【0189】
[化粧料の2次付着抑制の評価方法]
(I)洗浄し皮脂を除いた前腕内側部に、3cm×3cmの部位を作成した。作成部位に、除いた皮脂の代替として、マカデミアナッツ油を3μL塗布した。
(II)その上から評価対象となる化粧料を18μL塗布し3分間静置した。
(III)塗布部を覆い隠すようにティッシュペーパーをかぶせ上から軽く押さえ剥がし、ティッシュペーパーへの顔料の転写具合を評価した。
【0190】
[2次付着面積の算出]
2次付着面積の算出は、前述の液状油性組成物の[2次付着面積の算出]と同様にして行った。
【0191】
実施例42及び比較例50の撮影写真(実写)、及びそれらの写真を二値化処理した図を、図2に示す。
【0192】
[化粧料の2次付着抑制の効果の評価基準]
[2次付着面積の算出条件]で算出した黒色部の検出面積の割合を用いて、顔料の2次付着抑制を評価した。
A:検出面積が15%未満。
B:検出面積が15%以上20%未満。
C:検出面積が20%以上25%未満。
D:検出面積が25%以上。
検出面積が30%以上となるDは、効果なしと判断した。
【0193】
[化粧膜の柔軟性の評価方法]
(I)洗浄し皮脂を除いた前腕内側部に、3cm×3cmの部位を作成した。
(II)作成部位に除いた皮脂の代替皮脂として、マカデミアナッツ油を3μL塗布した。
(III)マカデミアナッツ油の上から、評価対象となる化粧料を18μL塗布し、30分間静置した。
(IV)この塗布した箇所の感触を、モニター10名で評価した。
【0194】
[化粧膜の柔軟性の評価基準]
A:10名中8~10名が、化粧膜の柔軟性を感じた。
B:10名中5~7名が、化粧膜の柔軟性を感じた。
C:10名中2~4名が、化粧膜の柔軟性を感じた。
D:10名中1名以下が、化粧膜の柔軟性を感じた。
【0195】
[撥水性の強度の評価方法]
(I)50mm×50mmのPMMA製プレートに、マカデミアナッツ油を5μL塗布した。
(II)その上に評価対象の化粧料を20μl塗布し、5分放置した。
(III)プレートに塗布した塗膜に、イオン交換水20μLを滴下し、当該プレートを傾けて、水滴が動き出す角度を測定した。
【0196】
[撥水性の強度の評価基準]
A:プレートの傾斜角度が、40度未満で動き出した。
B:プレートの傾斜角度が、40度以上42度未満で動き出した。
C:プレートの傾斜角度が、42度以上43度未満で動き出した。
D:プレートの傾斜角度が、43度以上でも動かなかった。
【0197】
[撥水性の持続力の評価方法]
(I)撥水性の強度の評価と同様に調製したPMMA製プレートを、40℃に保温したイオン交換水に10分間浸漬し、自然乾燥させた。
(II)その後、プレートに塗布した塗膜に、イオン交換水20μLを滴下し、当該プレートを傾けて、水滴が動き出す角度を測定した。
【0198】
[撥水性の持続力の評価基準]
A:プレートの傾斜角度が、34度未満で動き出した。
B:プレートの傾斜角度が、34度以上35度未満で動き出した。
C:プレートの傾斜角度が、35度以上36度未満で動き出した。
D:プレートの傾斜角度が、36度以上でも動かなかった。
【0199】
[油中水型ファンデーション:2次付着抑制の効果、化粧膜の柔軟性、撥水性の強度、撥水性の持続力の総合評価]
評価対象の化粧料の顔料の2次付着抑制の効果、化粧膜の柔軟性、撥水性の強度、及び撥水性の持続力について、各評価でつけられた評点を、Aを4点、Bを3点、Cを2点、Dを1点として点数化し、各評価点数の和を総合評価点とした。
【0200】
[水中油型保湿クリーム:化粧膜の柔軟性、撥水性の強度、撥水性の持続力の総合評価]
評価対象の化粧料の化粧膜の柔軟性、撥水性の強度、及び撥水性の持続力の各評価でつけられた評点について、Aを4点、Bを3点、Cを2点、Dを1点として点数化し、各評価点数の和を総合評価点とした。
【0201】
(油中水型ファンデーション)
油中水型ファンデーション(本発明に係る化粧料)として、実施例1の液状油性組成物、すなわち成分(A)としてジメチコン10cs、成分(B)としてリンゴ酸ジイソステアリル、成分(C)としてヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルを、(B)/(C)質量比を3.0及び{(B)+(C)}/(A)質量比を4.0で混合し、その液状油性組成物を配合した油中水型ファンデーションを製造した。
【0202】
表15に、油中水型ファンデーションの処方及び評価結果を示す。なお、ポリエーテル変性シリコーンとして、信越化学工業社製の商品「KF-6017」を使用した。トリメチルシロキシケイ酸として、信越化学工業社製の商品「KF-7312J」を皮膜形成剤として使用した。
【0203】
[油中水型ファンデーションの製造方法]
油中水型ファンデーションは、次のa~c工程により製造した。
a:成分1~10を加温溶解し、均一に混合した。
b:成分11~13を加温溶解し、均一に混合した。
c:80℃のa工程で得られた混合物に80℃のb工程で得られた混合物を加え乳化し、冷却した。
【0204】
【表15】
【0205】
表15に示すように、実施例42の化粧料は、優れた顔料の2次付着抑制の効果、シリコーン膜の柔軟性、強度と持続力のある優れた撥水性を有していることが確認された。比較例50は成分(A)を含まず、比較例51は成分(C)を含まない、液状油性組成物を用いた化粧料であり、化粧膜の柔軟さは良好であったものの、顔料の2次付着抑制の効果、撥水性の強度と持続力は低いものであった。比較例52は、比較例50の配合に皮膜形成剤としてトリメチルシロキシケイ酸を加えたものであったが、2次付着抑制の効果、撥水性の強度と持続力は低いものであり、化粧膜の柔軟性も劣るものであった。
【0206】
これらの結果から、相溶性1が評価「S」で、相溶性2が評価「IS」であった場合、分離したジメチコン(成分(A))によりシリコーン膜が形成され、その結果、本発明の効果を発揮したということがわかる。
【0207】
(水中油型保湿クリーム)
油性成分として、実施例1の液状油性組成物、すなわち、成分(A)としてジメチコン10cs、成分(B)としてリンゴ酸ジイソステアリル、成分(C)としてヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルを、(B)/(C)質量比が3.0、{(B)+(C)}/(A)質量比が4.0となる割合で混合し、その液状油性組成物を配合した水中油型クリームを製造した。
【0208】
表16に、水中油型保湿クリームの処方及び評価結果を示す。なお、セタノールは花王社製「カルコール6870」を、ステアリン酸ポリグリセリル-10は日清オイリオグループ社製「サラコスPGMSV」を、ジステアリン酸ポリグリセリ-10は日清オイリオグループ社製「サラコスPGDSV」を使用した。
【0209】
[水中油型保湿クリームの製造方法]
水中油型保湿クリームは、次のa~c工程により製造した。
a:成分1~4を加温溶解し、均一に混合した。
b:成分5~8を加温溶解し、均一に混合した。
c:80℃のb工程で得られた混合物に80℃のa工程で得られた混合物を加え乳化し、冷却した。
【0210】
【表16】
【0211】
表16に示すように、実施例43の化粧料は、当該化粧料を塗布して形成された塗布膜には、柔軟性、強度と持続力のある優れた撥水性、を有していることが確認された。一方で、比較例53及び比較例54は化粧膜の柔軟性は優れていたものの、撥水性の強度と持続力は低いものであった。
これらの結果から、相溶性1が評価「S」で、相溶性2が評価「IS」であった場合、分離したジメチコン(成分(A))によりシリコーン膜が形成され、その結果、本発明の効果を発揮したということがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0212】
本発明によれば、化粧料の2次付着抑制効果を発揮し、強度と持続力のある撥水性を付与することができる液状油性組成物、及び該液状油性組成物を配合した化粧料を提供することができる。
図1
図2