(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071725
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ポリマー含有組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20240517BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20240517BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20240517BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q5/02
C08L101/02
C08L33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024056754
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 壯太
(57)【要約】
【課題】優れたコアセルベート生成能を示す水系の弱酸性組成物を提供すること。
【解決手段】(a)アニオン性界面活性剤を5~50質量%、
(b)カチオン性ポリマーを0.025~5質量%、
(c)(メタ)アクリル酸を構成単位とする重合体を0.1~5質量%、および
(d)水を20~80質量%
を含有する組成物であって、
pHが6.5以下である、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アニオン性界面活性剤を5~50質量%、
(b)カチオン性ポリマーを0.025~5質量%、
(c)(メタ)アクリル酸を構成単位とする重合体を0.1~5質量%、および
(d)水を20~80質量%
を含有する組成物であって、
pHが6.5以下である、組成物。
【請求項2】
前記(c)の重合体が、
以下の条件下で測定した周波数分散1rad/sでの貯蔵弾性率(G’)が10Pa以下である重合体である、請求項1記載の組成物。
[測定条件:上記(c)重合体を中和水溶液の全量に基づいて0.5質量%含有するpH6.5~7.5の中和水溶液につき、液温25℃、レオメーターの周波数を1Hzに設定したひずみ分散での貯蔵弾性率の測定により、後の周波数分散でのひずみを0.1%又は1%に決定し、当該ひずみの条件下で、角周波数0.1rad/sから300rad/sに変化させて得られた周波数分散での貯蔵弾性率の測定を行い、角周波数1rad/sでの貯蔵弾性率(G’)を求める。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマーを含有する組成物やその用途等に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪洗浄用組成物には、アニオン性界面活性剤やカチオン性ポリマーが洗浄成分として配合され得る。これらの成分により形成されるコアセルベートが、シリコーンやオイル成分を取り込み、それらを毛髪に吸着させる役割を担い、これによって高いコンディショニング効果が得られると考えられている。この観点からは、毛髪洗浄用として用いる組成物としては、コアセルベート生成能の高い(言い換えれば、コアセルベート生成量が多い)組成物が好ましい。
【0003】
毛髪洗浄用組成物の中でも、特に弱酸性の毛髪洗浄用組成物は低刺激であり頭皮に余計な負担をかけないことから、近年注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/129493号
【特許文献2】特開2015-224197号公報
【特許文献3】国際公開第2003/094875号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、コアセルベート生成能の高い新規な弱酸性組成物を提供すべく検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
(a)アニオン性界面活性剤を5~50質量%、
(b)カチオン性ポリマーを0.025~5質量%、
(c)(メタ)アクリル酸を構成単位とする重合体を0.1~5質量%、および
(d)水を20~80質量%
を含有する組成物であって、
pHが6.5以下である、組成物。
項2.
前記(c)の重合体が、
以下の条件下で測定した周波数分散1rad/sでの貯蔵弾性率(G’)が10Pa以下である重合体である、項1記載の組成物。
[測定条件:上記(c)重合体を中和水溶液の全量に基づいて0.5質量%含有するpH6.5~7.5の中和水溶液につき、液温25℃、レオメーターの周波数を1Hzに設定したひずみ分散での貯蔵弾性率の測定により、後の周波数分散でのひずみを0.1%又は1%に決定し、当該ひずみの条件下で、角周波数0.1rad/sから300rad/sに変化させて得られた周波数分散での貯蔵弾性率の測定を行い、角周波数1rad/sでの貯蔵弾性率(G’)を求める。]
【発明の効果】
【0007】
優れたコアセルベート生成能を示す新規な弱酸性組成物が提供される。当該組成物は、毛髪洗浄用組成物として特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、ポリマー含有組成物やその用途および製造方法等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0009】
本開示に包含されるポリマー含有組成物は、(a)アニオン性界面活性剤、(b)カチオン性ポリマー、(c)(メタ)アクリル酸由来の構成単位を含む重合体、および(d)水を含有する。本明細書では、これらの成分を(a)~(d)成分ということがある。また、当該ポリマー含有組成物を、本開示の組成物ということがある。なお、(c)成分は、重合体(ポリマー)であるが、ポリマー鎖にカルボキシ基を有しているため、アニオン性ポリマーである。また、界面活性剤ではない。このため、(c)成分と(a)成分および(b)成分とは区別される。
【0010】
(a)成分(アニオン性界面活性剤)としては、一般に毛髪洗浄用組成物に用いられる公知のアニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0011】
例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩;POE-ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE-ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩;ココイルグルタミン酸トリエタノールアミン、ココイルグリシンカリウム等のアミノ酸系アニオン性界面活性剤;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN-アシルサルコシン酸、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム、ラウリルメチルタウリッドナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、POEオレイルエーテルリン酸ナトリウム、POEステアリルエーテルリン酸等のリン酸エステル塩;ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム等のN-アシルグルタミン酸塩;硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等の高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩;POE-アルキルエーテルカルボン酸;POE-アルキルアリルエーテルカルボン酸塩;α-オレフィンスルホン酸塩;高級脂肪酸エステルスルホン酸塩;二級アルコール硫酸エステル塩;高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム;N-パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン;およびカゼインナトリウム等が挙げられる。
これらの中でも、より具体的には、ラウリル硫酸塩、ラウレス硫酸塩、ラウリルモノグリセリド硫酸塩、ラウリルサルコシンもしくはその塩、ラウロイルサルコシンもしくはその塩、ココイルもしくはその塩、(より具体的にはココイル硫酸塩、ココイルグルタミン酸塩、ココイルグリシン塩、ココイルメチルアラニン塩、ココイルアスパラギン酸塩、ココイルサルコシン塩)、トリデシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸もしくはその塩、ココイルイセチオン酸もしくはその塩等が挙げられる。また、これらの塩としては、例えばアルカリ金属塩(特にナトリウム塩、カリウム塩)、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、モノ、ジ、もしくはトリエタノールアミン塩等が挙げられる。
【0012】
(a)成分は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
(a)成分は、本開示の組成物において、5~50質量%含有される。当該範囲の上限または下限は例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49質量%であってもよい。例えば、当該範囲は10~40質量%であってもよい。
【0014】
(b)成分(カチオン性ポリマー)としては、一般に毛髪洗浄用組成物に用いられる公知のカチオン性ポリマーを好ましく用いることができる。例えば、第四級アンモニウムもしくはプロトン化アミノ基、またはそれらの混合物などのカチオン性窒素含有基を有するものが挙げられる。
【0015】
(b)成分としては、より具体的には、例えば、カチオン性アミンまたは第四級アンモニウム官能性を有するビニルモノマーと、(メタ)アクリルアミド、アルキルもしくはジアルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸アルキル、ビニルカプロラクトン、およびビニルピロリジンからなる群より選択される少なくとも1種との、コポリマーが挙げられる。アルキルもしくはジアルキル置換されたモノマーはC1~C7のアルキル基、より好ましくはC1~C3のアルキル基を有することが好ましい。さらに具体的には、カチオン性アミンまたは第四級アンモニウム官能性を有するビニルモノマーと、ビニルエステル、ビニルアルコール、無水マレイン酸、プロピレングリコール、およびエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種のコポリマーが挙げられる。
【0016】
カチオン性アミンは、第一級、第二級、または第三級アミンであってよく、第二級または第三級アミンが好ましく、第三級アミンがより好ましい。
【0017】
(b)成分の好ましい例として、四級アンモニウム塩ポリマーが挙げられ、より具体的には、例えば下記の四級アンモニウム塩ポリマーが挙げられる:
塩化メチルビニルイミダゾリニウムとビニルピロリドンとの共重合体(ポリクオタニウム-16);
1-ビニル-2-ピロリジンと、メタクリル酸ジメチルアミノエチルとの共重合体(ポリクオタニウム-11);
塩化ジメチルジアリルアンモニウムの重合体(ポリクオタニウム-6);
塩化ジメチルジアリルアンモニウムとアクリルアミドとの共重合体(ポリクオタニウム-7);
塩化ジメチルジアリルアンモニウムとアクリル酸との共重合体(ポリクオタニウム-22);
アクリル酸、塩化ジアリルジメチルアンモニウム、およびアクリル酸アミドの共重合体(ポリクオタニウム-39);
アクリル酸、アクリル酸メチル、および塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムの共重合体(ポリクオタニウム-47);
アクリルアミド、塩化ジメチルジアリルアンモニウム、および塩化メタクリルアミドプロピルトリモニウムの共重合体(ポリクオタニウム-94)。
【0018】
また、(b)成分には、カチオン性セルロース誘導体、カチオン性デンプン誘導体、およびカチオン性グアーガム誘導体などのカチオン性多糖ポリマーが含まれる。このようなカチオン性多糖ポリマーは、0.1~4meq/gの電荷密度を有するものがより好ましい。
【0019】
カチオン性セルロース誘導体としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロースに塩化グリシジルトリメチルアンモニウムを付加して得られる四級アンモニウム塩の重合体(ポリクオタニウム-10)や、ヒドロキシエチルセルロースに塩化グリシジルラウリルジメチルアンモニウムを付加重合して得られる四級アンモニウム塩の重合体(ポリクオタニウム-24)が好ましく挙げられる。
【0020】
カチオン性デンプン誘導体としては、例えば、第四級窒素含有セルロースエーテルと、エーテル化セルロースおよびデンプンのコポリマーが挙げられる。
カチオン性グアーガム誘導体としては、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド等が挙げられる。
【0021】
(b)成分は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
(b)成分は、本開示の組成物において、0.025~5質量%含有される。当該範囲の上限または下限は例えば0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、または4.9質量%であってもよい。例えば当該範囲は0.1~3質量%であってもよい。
【0023】
(c)成分((メタ)アクリル酸由来の構成単位を含む重合体)は、以下の(A-1)、および(A-2)からなる群より選択される少なくとも1種の重合体であることが好ましい。
【0024】
(A-1)次の(i)および(ii)を重合させて得られる共重合体
(A-2)次の(i)、(ii)、および(iii)を重合させて得られる共重合体
(i)(メタ)アクリル酸100質量部
(ii)エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物1質量部以下
(iii)アルキル基の炭素数が10~30である(メタ)アクリル酸アルキルエステル5質量部以下
なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」は、「メタクリル酸および/またはアクリル酸」と換言できる。
(c)成分は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる
上記(A-1)の共重合体および(A-2)の共重合体を、それぞれ重合体(A-1)、重合体(A-2)ということがある。なお、(c)成分は、重合体(A-1)および重合体(A-2)も含め、カルボキシル基含有水溶性重合体である。特に断らない限り、カルボキシル基含有水溶性重合体は、当該重合体が含有するカルボキシル基が中和されていない化合物(未中和化合物)、または、当該重合体が含有するカルボキシル基の一部、もしくは、全てが中和されている化合物(中和化合物)も包含する。
【0025】
なお、本明細書において、重合体(A-1)および重合体(A-2)は、(メタ)アクリル酸とエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物(架橋剤)とが重合している化合物(言い換えれば、(メタ)アクリル酸がエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物で架橋されている化合物)を包含する概念である。よって、重合体(A-1)および重合体(A-2)は、(メタ)アクリル酸に加え、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物をも重合している化合物(言い換えれば、(メタ)アクリル酸重合体が当該化合物で架橋されている化合物)を包含する。
【0026】
上記(ii)の使用量は、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、1質量部以下であり0.01~1質量部が好ましい。当該範囲(0.01~1質量部)の上限または下限は例えば0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、または0.95質量部であってもよい。当該範囲は例えば、0.02~0.9質量部がより好ましく、0.03~0.7質量部がさらに好ましい。
【0027】
上記(ii)としては、例えばペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。上記の通り、(ii)は架橋剤として働き得る化合物である。(ii)は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
上記(iii)は、(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が10~30である高級アルコールとのエステルである。当該アルキル基の炭素数は、例えば12~30、14~28、16~26、または18~24であることがより好ましい。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニル、およびメタクリル酸テトラコサニルが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、それぞれ単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、日本油脂株式会社製の商品名ブレンマーVMA70等の市販品を用いてもよい。
【0029】
上記(iii)の使用量は、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、5質量部以下であり、0.01~5質量部が好ましい。当該範囲(0.01~5質量部)の上限または下限は例えば0.05、0.1、0.2、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、または4.5質量部であってもよい。当該範囲は例えば、0.05~4質量部がより好ましい。
【0030】
(c)成分は、上記の通り、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を含む重合体であり、従ってモノマーとして(メタ)アクリル酸を用いて得られる重合体である。重合体(A-1)および(A-2)は、少なくとも(メタ)アクリル酸とエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを重合させて得られる。(i)と(ii)、または(i)と(ii)と(iii)、を重合する方法としては、これらをラジカル重合開始剤の存在下に重合溶媒中で重合させる方法が好ましく挙げられる。以下、より詳細に説明する。
【0031】
前記ラジカル重合開始剤としては、α,α’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビスメチルイソブチレート、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、第三級ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
前記ラジカル重合開始剤の使用量としては、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、0.01~0.45質量部が好ましく、0.01~0.4質量部がより好ましい。
【0033】
重合体(A-1)、および(A-2)のいずれも、例えば沈殿重合や逆相懸濁重合により好ましく調製することができる。またさらに、沈殿重合を、ポリオキシエチレン鎖を有するノニオン性界面活性剤が配合された重合溶媒中で行ってもよい。
【0034】
当該ポリオキシエチレン鎖を有するノニオン性界面活性剤としては、例えば多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、ヒドロキシ脂肪酸とエチレンオキサイドとのブロック共重合体、およびポリオキシエチレンヒマシ油等が好ましく挙げられる。
【0035】
多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と多価アルコール脂肪酸とのエステル化合物が好ましく挙げられる。また、ここでの多価アルコール脂肪酸としては、炭素数14~24の飽和もしくは不飽和の多価(特に2価)アルコール脂肪酸が好ましく、より具体的には、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソオレイン酸等が好ましく挙げられる。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と多価アルコール脂肪酸とのエステル化合物における、ポリオキシエチレンの酸化エチレン平均付加モル数としては、20~100程度、または30~70程度が挙げられる。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と多価アルコール脂肪酸とのエステル化合物として特に好ましいものとして、イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。
【0036】
ポリオキシエチレンヒマシ油としては、酸化エチレンの付加モル数が2~10程度のものが好ましく、2~5程度のものがさらに好ましい。
【0037】
ヒドロキシ脂肪酸とエチレンオキサイドとのブロック共重合体とは、言い換えれば、ポリヒドロキシ脂肪酸とポリオキシエチレンとからなる共重合体とも言える。ポリヒドロキシ脂肪酸の脂肪酸としては、炭素数14~22程度の脂肪酸が好ましく、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が好ましく挙げられ、ヒドロキシ脂肪酸としては、ヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシパルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸等が好ましく挙げられ、特にヒドロキシステアリン酸が好ましい。ヒドロキシステアリン酸としては、12-ヒドロキシステアリン酸が特に好ましい。ポリヒドロキシ脂肪酸としては、ポリヒドロキシステアリン酸が特に好ましい。ヒドロキシ脂肪酸とエチレンオキサイドとのブロック共重合体としては、12-ヒドロキシステアリン酸とエチレンオキサイドとのブロック共重合体が特に好ましい。
【0038】
当該ポリオキシエチレン鎖を有するノニオン性界面活性剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
当該ポリオキシエチレン鎖を有するノニオン性界面活性剤の使用量は、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、0.5~10質量部が好ましく、1~7.5質量部がより好ましい。
【0040】
また、前記重合溶媒としては、(i)、(ii)、および(iii)を溶解し、かつ得られる重合体を溶解しない溶媒であることが好ましい。このような重合溶媒の具体例としては、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、エチレンジクロライド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン等が挙げられる。これらの重合溶媒の中でも、品質が安定しており入手が容易であるという観点から、好ましくは、エチレンジクロライド、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、酢酸エチルが挙げられる。これらの重合溶媒は、それぞれ単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
前記重合溶媒の使用量としては、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、200~10000質量部が好ましく、300~2000質量部がより好ましい。重合溶媒を上記範囲内で使用することにより、重合反応が進行しても、重合体が凝集するのを好ましく抑制して均一に撹拌させ、且つ重合反応をより効率的に進行させることが可能になる。
【0042】
また、上記重合反応を行う際の雰囲気については、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気が挙げられる。
【0043】
上記重合反応を行う際の反応温度は、50~90℃が好ましく、55~75℃がより好ましい。このような反応温度で重合反応を行うことにより、反応溶液の粘度上昇を好ましく抑制し、反応制御をより容易にすることができる。
【0044】
上記重合反応を行う際の反応時間は、通常、2~10時間である。
【0045】
反応終了後は、反応溶液を80~120℃に加熱し、重合溶媒を除去することにより微粉末の重合体を単離することができる。
【0046】
また、(c)成分は、以下の条件下で測定した周波数分散1rad/sでの貯蔵弾性率(G’)が1000Pa以下である、重合体であることが好ましい。
[測定条件:上記(c)重合体を中和水溶液の全量に基づいて0.5質量%含有する中和度70%の中和水溶液につき、液温25℃、レオメーターの周波数を1Hzに設定したひずみ分散での貯蔵弾性率の測定により、後の周波数分散でのひずみを0.1%又は1%に決定し、当該ひずみの条件下で、角周波数0.1rad/sから300rad/sに変化させて得られた周波数分散での貯蔵弾性率の測定を行い、角周波数1rad/sでの貯蔵弾性率(G’)を求める]
【0047】
当該貯蔵弾性率(G’)は、以下の手順で決定される。
1)<測定用の中和水溶液の調整>
重合体((c)成分)濃度が中和水溶液の全量に基づいて0.5%となるように(c)成分を水に分散させ、攪拌下に、これにアルカリ水溶液を加え重合体の中和度が70%となるように調整しながら、重合体を溶解し、中和水溶液を得る。
2)<ひずみ分散によるひずみの決定>
1)で調製した中和水溶液の液温を25℃に、またレオメーター〔例えばTA Instruments社(型番:AR-2000ex)〕の周波数を1Hzに設定した後、ひずみを加えながら、貯蔵弾性率(G’)を測定し、貯蔵弾性率(G’)が低下してきたことが認められた時点で測定を終了する。
得られたひずみ分散グラフから、貯蔵弾性率(G’)がひずみ1%まで一定値を保っており、10%まで一定値を保てない場合、ひずみを1%とし、貯蔵弾性率(G’)がひずみ0.1%まで一定値を保っており、1%まで一定値を保てない場合、ひずみを0.1%とする。
3)<周波数分散による貯蔵弾性率の決定>
1)で調製した中和水溶液の液温25℃、上記の基準で決定したひずみ(0.1%または1%)の条件下で、角周波数を0.1~300rad/sに変化させる。
その測定値から、角周波数:1rad/sの貯蔵弾性率(G’)を採用する。
【0048】
当該貯蔵弾性率(G’)は、1000Pa以下であり、0.01~1000Paであることが好ましい。当該範囲の上限または下限は例えば0.02、0.03、0.04、0.05、0.1、0.5、1.0、5.0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、または990Paであってもよい。例えば当該範囲は0.01~500Paであってもよい。
【0049】
(c)成分は、本開示の組成物において、0.1~5質量%含有される。当該範囲の上限または下限は例えば0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、または4.9質量%であってもよい。例えば当該範囲は0.2~3質量%であってもよい。
【0050】
(d)成分(水)は、本開示の組成物において、20~80質量%含有される。当該範囲の上限または下限は例えば21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、または79質量%であってもよい。例えば当該範囲は25~75質量%であってもよい。
【0051】
また、特に限定はされないが、(b)成分と(c)成分とは、質量比((b)/(c))が0.2~10程度であることが好ましい。当該範囲の上限または下限は例えば0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、または9であってもよい。当該範囲は例えば0.5~4程度であってもよい。
また、特に限定はされないが、(a)成分と(b)成分とは、質量比((a)/(b))が10~100程度であることが好ましい。当該範囲の上限または下限は例えば15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95であってもよい。当該範囲は例えば30~90程度、40~80程度、または50~70程度であってもよい。
【0052】
本開示の組成物には、本開示に係る発明の効果を損なわない範囲で、上記(a)~(d)成分の他にも、毛髪洗浄用組成物に配合されることが公知の成分を用いることもできる。
【0053】
このようなその他成分としては、例えば(e)両性界面活性剤、(f)中和剤、(g)コンディショニング剤等が挙げられる。なお、これらの成分を(e)~(g)成分ということがある。
【0054】
(e)成分としては、例えばアルキルアミンオキシド、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルグリシン塩、アルキルカルボキシグリシン塩、アルキルアンホプロピオン酸塩、アルキルアンホグリシン塩、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルタイン、アシルタウリン塩、アシルグルタミン酸塩等が挙げられる。ここで、アルキルおよびアシル基は5~22個(5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22個)、好ましくは7~19個の炭素原子を有する。
【0055】
より具体的には、例えば次式:
【0056】
【0057】
で示されるアルキルアミドベタインが好ましく挙げられる。当該式中、R1は炭素数5~22(5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の直鎖もしくは分岐鎖状アルキル基を示す。なお、当該ベタインは、R1が異なるものの混合物であってもよく、例えばR1CO-がヤシ油脂肪酸残基であるものなども好ましく包含する。また、nは1~6(1、2、3、4、5、または6)を示し、特に3を示すこと(アルキルアミドプロピルベタイン)が好ましい。
【0058】
当該ベタインとしては、より具体的には例えばヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(すなわち、コカミドプロピルベタイン:CAPB)、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等が挙げられる。
【0059】
また、例えば次式:
【0060】
【0061】
で示されるアルキルベタインも好ましく挙げられる。当該式中、R2は炭素数1~22(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22)の直鎖もしくは分岐鎖状アルキル基を示す。
【0062】
当該ベタインとしては、より具体的には例えばトリメチルアミノ酢酸ベタイン(トリメチルグリシン)、ラウリルジメチル酢酸ベタイン、テトラデセルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0063】
(e)成分は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
(e)成分が用いられる場合には、本開示の組成物において、例えば3~30質量%程度含有され得る。当該範囲の上限または下限は例えば4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29質量%であってもよい。例えば当該範囲は5~25質量%程度であってもよい。
【0065】
また、特に限定はされないが、(e)成分が用いられる場合には、(a)成分と(e)成分とは、質量比((a)/(e))が0.2~5程度であることが好ましい。当該範囲の上限または下限は例えば0.5、1、2、3、または4であってもよい。当該範囲は例えば0.5~4程度であってもよい。
【0066】
(f)成分(中和剤)としては、例えばアルカリ金属水酸化物が好ましく挙げられ、具体的には例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが好ましく挙げられる。
【0067】
また例えば、有機アミンも好ましく挙げられ、具体的にはトリエタノールアミン等が好ましく挙げられる。
【0068】
(f)成分は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
(f)成分が用いられる場合には、その使用量は、本開示の組成物の粘度等に応じて、適宜設定することが可能である。例えば、(c)成分における(メタ)アクリル酸由来のカルボキシ基1モルに対して、例えば0.1モル%以上が挙げられる。また、上限は特に限定はされず、例えば前記カルボキシル基1モルに対して例えば3モル%程度が挙げられる。当該範囲(0.1~3モル%)の上限または下限は例えば0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、または2.5モル%であってもよい。当該範囲は例えば0.2~2モル%であってもよい。
【0070】
(g)成分(コンディショニング剤)としては、油性成分が好ましい。油性成分は毛髪にうるおい感を付与し得るものが好ましい。このような油性成分としては、例えば油脂、ロウ類、炭化水素、エステル油、高級アルコール、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、シリコーン、多価アルコール等が挙げられる。
【0071】
油脂の具体例としては、例えばアルガニアスピノサ核油、オリーブ油(オリブ油)、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、月見草油、杏仁油、パーシック油、桃仁油、パーム油、卵黄油等が挙げられる。
【0072】
ロウ類の具体例としては、例えばラノリン、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油等が挙げられる。
【0073】
炭化水素の具体例としては、例えばパラフィン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、スクワラン、ポリブテン、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、合成スクワラン等が挙げられる。
【0074】
エステル油の具体例としては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2-エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10~30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、2-エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0075】
高級アルコールの具体例としては、例えばセチルアルコール(セタノール)、2-ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2-オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、デシルテトラデカノール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0076】
高級脂肪酸の具体例としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ラノリン脂肪酸、18-メチルエイコサン酸等が挙げられる。
【0077】
アルキルグリセリルエーテルの具体例としては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0078】
シリコーンの具体例としては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
【0079】
多価アルコールとしては、例えばグリコール、グリセリン等が挙げられる。グリコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、高重合ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。グリセリンとしては、例えばグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0080】
(g)成分は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
(g)成分が用いられる場合には、本開示の組成物において、例えば5質量%以下程度含有され得る。下限は特に制限はされないが、例えば0.1質量%以上が挙げられる。当該範囲(0.1~5質量%)の上限または下限は例えば0.2、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、または4.5質量%であってもよい。例えば当該範囲は0.2~4質量%であってもよい。
【0082】
本開示の組成物は、pHが6.5以下であることが好ましい。当該pHの下限は特に限定はされないが、例えば1以上が挙げられる。当該下限は、例えば1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、または6.0以上であってもよい。なお、当該pHはpHメーターで測定される値である。
【0083】
本開示の組成物は、透過率が3%以上であるものが好ましく、5、10、20、30、40、50、または60%以上のものがより好ましく、70%以上のものがさらに好ましい。70%以上のもののなかでも、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、または90%以上のものが好ましい。なお、当該透過率は、組成物を光路長1cmのセルに入れて分光光度計により測定波長425nmにおける透過率を測定して求めた値(蒸留水の透過率を100%としたときの比率)である。
【0084】
本開示の組成物は、優れたコアセルベート生成能を示す。特に、以下の方法で算出するコアセルベート生成率が、3質量%以上であるものが好ましく、3.5、または4質量%以上であるものがより好ましい。当該コアセルベート生成率の上限は特に限定はされないが、例えば20質量%以下が挙げられる。当該上限は、例えば19、18、17、16、15、14、13、または12質量%以下であってもよい。
[コアセルベート生成率算出方法]
水で7倍希釈した組成物42gを40℃の恒温槽に16時間放置し、これを3000rpmで30分遠心分離後、上澄み液を除去し、残存物をコアセルベートとして、以下の式により、コアセルベート生成率(質量%)を算出する。
【0085】
【0086】
また、本開示の組成物は、比較的小さいコアセルベートサイズを示す。毛髪は凹凸が多いため、コアセルベートサイズが小さい方がコンディショニング効果が高い場合があると考えられる。より具体的には、本開示の組成物は、以下の方法で測定されるコアセルベートサイズ(メディアン径)が、0.1~30μmであるものが好ましい。当該範囲の上限または下限は例えば0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29μmであってもよい。例えば当該範囲は0.5~20μmがより好ましく、1~10μmがさらに好ましい。
【0087】
ここでの水での希釈倍率は、効果が得られる範囲であれば特に限定されないが、例えば2~10倍程度を挙げることができ、また例えば3~9倍程度であってもよい。
【0088】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0089】
以下、例を示して本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の実施形態は下記の例に限定されるものではない。
【0090】
ポリマーの製造
[製造例1]
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管及び冷却管を備えた500mL(ミリリットル)四つ口フラスコに、アクリル酸40g、ブレンマーVMA-70(日油株式会社製、メタクリル酸ステアリルが10~20質量部、メタクリル酸エイコサニルが10~20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59~80質量部及びメタクリル酸テトラコサニルの含有率が1質量%以下の混合物)0.88g、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル0.22g、2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)0.116g、及びノルマルヘキサン230.9gを仕込んだ。溶液を撹拌して均一に混合した後、反応容器(四つ口フラスコ)の上部空間、原料及び反応溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、60~65℃まで加熱した。その後、3時間60~65℃に保持した。60~65℃で1時間程度、保持した時点で、ノルマルヘキサン2.0gにポリオキシエチレンヒマシ油(日光ケミカル(株)製、商品名:CO-3、エチレンオキシド3モル付加物)0.26gとトリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(日本エマルジョン(株)製、商品名:RWIS-350、エチレンオキシド50モル付加物)0.98gとを溶解させたものを、反応容器に投入した。その後、生成したスラリーを100℃に加熱して、ノルマルヘキサンを留去し、さらに115℃、10mmHgの条件で、8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体38gを得た。以下当該共重合体を製造例1ポリマーと表記することがある。
【0091】
[製造例2]
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管及び冷却管を備えた500mL(ミリリットル)四つ口フラスコに、アクリル酸40g、ブレンマーVMA-70(日油株式会社製、メタクリル酸ステアリルが10~20質量部、メタクリル酸エイコサニルが10~20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59~80質量部及びメタクリル酸テトラコサニルの含有率が1質量%以下の混合物)0.4g、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル0.19g、2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)0.116g、及びノルマルヘキサン230.9gを仕込んだ。溶液を撹拌して均一に混合した後、反応容器(四つ口フラスコ)の上部空間、原料及び反応溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、60~65℃まで加熱した。その後、3時間60~65℃に保持した。60~65℃で1時間程度、保持した時点で、アクリル酸0.80gとノルマルヘキサン1.60gの混合溶媒に12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Hypermer B246)1.6gを溶解させたものを、反応容器に投入した。その後、生成したスラリーを100℃に加熱して、ノルマルヘキサンを留去し、さらに115℃、10mmHgの条件で、8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体39gを得た。以下当該共重合体を製造例2ポリマーと表記することがある。
【0092】
[製造例3]
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管および冷却管を備えた500mL四つ口フラスコに、アクリル酸45g(0.625モル)、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製:メタクリル酸ステアリルが10~20質量部、メタクリル酸エイコサニルが10~20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59~80質量部およびメタクリル酸テトラコサニルの含有量が1質量部以下の混合物)1.35g、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル0.02g、ノルマルヘキサン150gおよび2,2’-アゾビスメチルイソブチレート0.081g(0.00035モル)を仕込んだ。溶液を撹拌して均一に混合した後、反応容器(四つ口フラスコ)の上部空間、原料および溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、60~65℃に保持して4時間反応させた。反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、ノルマルヘキサンを留去し、さらに、110℃、10mmHgにて8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末状のアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体43gを得た。以下当該共重合体を製造例3ポリマーと表記することがある。
【0093】
[製造例4]
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管及び冷却管を備えた500mL(ミリリットル)四つ口フラスコに、アクリル酸40g、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル0.22g、2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)0.116g、及びノルマルヘキサン230.9gを仕込んだ。溶液を撹拌して均一に混合した後、反応容器(四つ口フラスコ)の上部空間、原料及び反応溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、60~65℃まで加熱した。その後、3時間60~65℃に保持した。60~65℃で1時間程度、保持した時点で、アクリル酸0.80gとノルマルヘキサン1.60gの混合溶媒に12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Hypermer B246)2.0gを溶解させたものを、反応容器に投入した。その後、生成したスラリーを100℃に加熱して、ノルマルヘキサンを留去し、さらに115℃、10mmHgの条件で、8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末のカルボキシビニルポリマー38gを得た。以下当該カルボキシビニルポリマーを製造例4ポリマーと表記することがある。
【0094】
[製造例5]
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管及び冷却管を取り付けた500mL四つ口フラスコに、アクリル酸45g(0.625モル)、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル0.27g、n-ヘキサン150g及び2,2’-アゾビスメチルイソブチレート0.153g(0.000931モル)を入れ、反応液を調製した。溶液を撹拌して均一に混合した後、反応容器の上部空間、原料及び溶媒中に存在している酸素を除去するために溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、反応液を60~65℃に保持して4時間反応させた。反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、n-ヘキサンを留去し、さらに、110℃、10mmHgにて8時間減圧乾燥することにより、カルボキシビニルポリマー42gを得た。以下当該カルボキシビニルポリマーを製造例5ポリマーと表記することがある。
【0095】
[製造例6]
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管及び冷却管を取り付けた500mL四つ口フラスコに、アクリル酸45g(0.625モル)、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル0.24g、n-ヘキサン150g及び2,2’-アゾビスメチルイソブチレート0.153g(0.000931モル)を入れ、反応液を調製した。溶液を撹拌して均一に混合した後、反応容器の上部空間、原料及び溶媒中に存在している酸素を除去するために溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、反応液を60~65℃に保持して4時間反応させた。反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、n-ヘキサンを留去し、さらに、110℃、10mmHgにて8時間減圧乾燥することにより、カルボキシビニルポリマー42gを得た。得られたカルボキシビニルポリマー粒子を直径35cmのステンレス製の皿に薄く均一に敷き詰め、これを温度30℃、相対湿度75%に調製した恒温恒湿機(型式:LH30―11M 株式会社ナガノ科学機械製作所製)で3時間静置した。このときの含水率は16重量%であった。これを80℃、2時間乾燥し、ピンミル型粉砕機(商品名:ファインインパクトミル ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕し顆粒状のカルボキシビニルポリマー粒子を得た後、1000μmの目開きの篩で分級し、粒度が調整された顆粒状のカルボキシビニルポリマー粒子を38g得た。以下当該カルボキシビニルポリマーを製造例6ポリマーと表記することがある。
【0096】
ポリマー含有組成物の調製
以下の手順に従い、表1a、表1bに示す組成を有する粘性組成物を調製した。撹拌装置として汎用撹拌機BL1200(新東科学株式会社製)を使用し、撹拌翼として45°傾斜4枚パドル翼を使用した。なお、各表に示す各成分の配合割合の単位は質量部である。
【0097】
[実施例1]
1)200mLビーカーにイオン交換水54.15g加え、300rpmで撹拌しながら製造例1ポリマー0.25gを添加し、500rpmで30分撹拌して、混合液(1)を得た。
2)混合液(1)を500rpmで撹拌しながら18質量%NaOH水溶液を0.10g添加し、1000rpmで30分撹拌して、混合液(2)を得た。なお、当該混合液中のポリマーの中和度は13%である。
3)混合液(2)を500rpmで撹拌しながら両性界面活性剤(コカミドプロピルベタイン、川研ファインケミカル株式会社製、ソフタゾリンCPB)を15g添加し5分撹拌し、アニオン性界面活性剤(ラウレス硫酸ナトリウム、花王株式会社製、エマール20C)を30g添加し20分撹拌して、混合液(3)を得た。
4)混合液(3)を500rpmで撹拌しながらカチオン性ポリマー(ポリクオタニウム-10、東邦化学工業株式会社製、カチナール HC-100)を0.5g添加し、1000rpmで30分撹拌し、粘性組成物100gを得た。
【0098】
[実施例2]
手順1)において、製造例1ポリマーを製造例2ポリマーに変更した以外は、実施例1と同様の手順に従い、粘性組成物を得た。
【0099】
[実施例3]
手順1)において、製造例1ポリマーを製造例3ポリマーに変更した以外は、実施例1と同様の手順に従い、粘性組成物を得た。
【0100】
[実施例4]
手順1)において、製造例1ポリマーを製造例4ポリマーに変更した以外は、実施例1と同様の手順に従い、粘性組成物を得た。
【0101】
[実施例5]
手順1)において、製造例1ポリマーを製造例5ポリマーに変更した以外は、実施例1と同様の手順に従い、粘性組成物を得た。
【0102】
[実施例6]
手順1)において、製造例1ポリマーを製造例6ポリマーに変更した以外は、実施例1と同様の手順に従い、粘性組成物を得た。
【0103】
[比較例1]
1)200mLビーカーにイオン交換水54.5g加え、500rpmで撹拌しながら両性界面活性剤(コカミドプロピルベタイン、川研ファインケミカル株式会社製、ソフタゾリンCPB)を15g添加し5分撹拌し、アニオン性界面活性剤(ラウレス硫酸ナトリウム、花王株式会社製、エマール20C)を30g添加し20分撹拌した(混合液(1))。
2)混合液(1)を500rpmで撹拌しながらカチオン性ポリマー(ポリクオタニウム-10、東邦化学工業株式会社製、カチナール HC-100)を0.5g添加し、1000rpmで30分撹拌し、粘性組成物100gを得た。
【0104】
【0105】
【0106】
得られた各実施例組成物および比較例組成物について、以下の様にして、pH、粘度、透過率、コアセルベート生成率およびそのサイズを測定した。結果を表2に示す。なお、沈殿分離の有無を確認すべく、各組成物を均一に振り混ぜてから16時間静置した後に目視で確認したところ、沈殿は観察されなかった。
【0107】
[pH測定]
pHメーター(ガラス電極式水素濃度指示計D-51:株式会社堀場製作所製)を用いて、液温25℃で粘性組成物のpHを測定した。
【0108】
[粘度測定]
B形粘度計BLII(東機産業株式会社製)を用いて、液温25℃で粘性組成物の粘度を測定した。
【0109】
[透過率測定]
透過率の測定には、島津製作所社製の分光光度計(型番:UV-1850)を用いた。まずサンプル(各組成物)をUV測定用のセル(光路長1cm)に入れ、コクサン製の卓上遠心機(型番:H-36)にて毎分2,000回転で2分間の操作により脱泡した。脱泡が完了していない場合は卓上遠心機にて同様の操作を行い、泡が試料上部から抜けることを確認した。その後、試料を分光光度計にセットし、測定波長を425nmとして透過率を測定した。なお、蒸留水を透過率100%になるように校正した。
【0110】
[コアセルベート生成率の算出]
1)50mL遠沈管に粘性組成物を6g、イオン交換水を36g加えて混合し、7倍希釈した粘性組成物を調製し(全量:42g)、40℃の恒温槽に16時間放置した。
2)卓上遠心機H-36(株式会社コクサン製、回転半径r:15cm)を用いて、当該7倍希釈粘性組成物を3000rpmで30分遠心分離後、上澄み液を除去し、残存物をコアセルベートとした。
3)除去した上澄み液の重量を測定し、コアセルベート生成率(質量%)を次式で算出した。
【0111】
【0112】
[コアセルベートサイズ測定]
1)50mLビーカーに水系組成物を3g、イオン交換水を18g加えて混合し、7倍希釈した粘性組成物を調製した(全量21g)。
2)回分セルに当該7倍希釈粘性組成物を加え、レーザー回折式粒度分布装置SALD-7100(株式会社島津製作所製)にセットし撹拌用プレートを稼働し、屈折率を1.60-0.10iに設定し、前記セット時点から、100~250秒後の粒径分布を測定した際のメディアン径をコアセルベートサイズとした。なお、組成物を水で7倍希釈する際、水を組成物に加えてから1分以内に混合を終了して回分セルに移すものとする。
【0113】
優れたコアセルベート生成能を示す新規な組成物が提供される。当該組成物は、毛髪洗浄用組成物として特に有用である。これにより、コンディショニング効果が高い毛髪洗浄用組成物を製造することができ、毛髪洗浄用組成物に配合することが多いシリコ-ン系コンディショニング成分の使用量を削減できるなど、環境保護に有用である。