(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071852
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】映像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182313
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】北原 和
(72)【発明者】
【氏名】有賀 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】秋元 肇
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA04
2H199DA13
2H199DA15
2H199DA20
2H199DA30
2H199DA46
(57)【要約】
【課題】焦点距離が異なる虚像を表示可能な映像表示装置を提供する。
【解決手段】映像表示装置は、画像を表示可能な表示装置と、前記表示装置から出射した光が入射され、P偏光及びS偏光のいずれかを選択的に出射可能な液晶素子と、前記液晶素子から出射された、P偏光及びS偏光のいずれか一方の光を反射し、他方の光を透過する反射型偏光部材と、前記他方の光を前記反射型偏光部材によって反射された前記一方の光が進む方向と同一方向に反射する反射部材と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示可能な表示装置と、
前記表示装置から出射した光が入射され、P偏光及びS偏光のいずれかを選択的に出射可能な液晶素子と、
前記液晶素子から出射された、P偏光及びS偏光のいずれか一方の光を反射し、他方の光を透過する反射型偏光部材と、
前記他方の光を前記反射型偏光部材によって反射された前記一方の光が進む方向と同一方向に反射する反射部材と、
を備えた映像表示装置。
【請求項2】
画像を表示可能な表示装置と、
前記表示装置から出射した光が入射され、P偏光及びS偏光のいずれかを選択的に出射可能な液晶素子と、
前記液晶素子から出射された光が入射する透光性部材と、
を備え、
前記透光性部材は、
前記液晶素子から出射された、P偏光及びS偏光のいずれか一方の光を反射し、他方の光を前記透光性部材内に入射させる第1面と、
前記他方の光を前記第1面によって反射された前記一方の光が進む方向と同一方向に反射する第2面と、
を有する映像表示装置。
【請求項3】
前記液晶素子から出射した光が入射し、前記画像に応じた第1の像を形成する結像光学系をさらに備え、
前記結像光学系は、前記第1の像側において略テレセントリック性を有し、
前記表示装置から出射する光が略ランバーシアン配光を有する請求項1または2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記表示装置から出射する光は、前記表示装置から出射する光の光軸に対して角度θの方向の光度が前記光軸上の光度のcosnθ倍で近似される配光パターンを有し、
前記nは0より大きい値である請求項3に記載の映像表示装置。
【請求項5】
前記nは、11以下である請求項4に記載の映像表示装置。
【請求項6】
前記表示装置は、複数のLED素子を有するLEDディスプレイである請求項1または2に記載の映像表示装置。
【請求項7】
前記LED素子から出射する光が、略ランバーシアン配光を有する請求項6に記載の映像表示装置。
【請求項8】
前記表示装置は、前記LED素子上に配置され、前記LED素子から出射する光が入射する波長変換部材をさらに有する請求項6に記載の映像表示装置。
【請求項9】
前記結像光学系は、
前記液晶素子から出射した光が入射する入力素子を含み、前記表示装置において互いに異なる位置から出射して前記入力素子に入射する前に互いに交差して前記第1の像に至る複数の主光線同士が、前記第1の像の前後で略平行になるように前記複数の主光線を屈曲する屈曲部と、
前記入力素子を経由した光が入射する出力素子を含み、前記屈曲部を経由した前記複数の主光線が、前記第1の像の形成位置に向かうように前記複数の主光線の進行方向を変更する方向変更部と、
を有する請求項3に記載の映像表示装置。
【請求項10】
前記液晶素子と前記結像光学系との間に配置され、前記液晶素子から前記結像光学系に向かう光の一部が通過する開口が設けられ、前記液晶素子から前記結像光学系に向かう光の他の一部を遮断する遮光部材をさらに備える請求項3に記載の映像表示装置。
【請求項11】
車両と、
前記車両に搭載された請求項1または2に記載の映像表示装置と、
を備えた自動車。
【請求項12】
前記画像がフロントウインドシールドより下部に視認可能である請求項11に記載の自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表示装置から出射した光を、複数のミラーで順次反射し、最後のミラーにおいて反射された光を、ウインドシールド等の反射部材で使用者に向けてさらに反射し、使用者に表示装置が表示する画像に応じた虚像を視認させる技術が開示されている。近年、立体的な虚像を表示したいという要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、焦点距離が異なる虚像を表示可能な映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態に係る映像表示装置は、画像を表示可能な表示装置と、前記表示装置から出射した光が入射され、P偏光及びS偏光のいずれかを選択的に出射可能な液晶素子と、前記液晶素子から出射された、P偏光及びS偏光のいずれか一方の光を反射し、他方の光を透過する反射型偏光部材と、前記他方の光を前記反射型偏光部材によって反射された前記一方の光が進む方向と同一方向に反射する反射部材と、を備える。
【0006】
本発明の実施形態に係る映像表示装置は、画像を表示可能な表示装置と、前記表示装置から出射した光が入射され、P偏光及びS偏光のいずれかを選択的に出射可能な液晶素子と、前記液晶素子から出射された光が入射する透光性部材と、を備える。前記透光性部材は、前記液晶素子から出射された、P偏光及びS偏光のいずれか一方の光を反射し、他方の光を前記透光性部材内に入射させる第1面と、前記他方の光を前記第1面によって反射された前記一方の光が進む方向と同一方向に反射する第2面と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、焦点距離が異なる虚像を表示可能な映像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る映像表示装置を示す端面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態における映像表示装置において、表示装置が表示する画像、液晶素子の状態、及び、反射型偏光部材に結像される虚像の関係を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る映像表示装置の表示装置を示す端面図である。
【
図4A】
図4Aは、第1の実施形態に係る映像表示装置の液晶素子を示す端面図である。
【
図4B】
図4Bは、第1の実施形態に係る映像表示装置の液晶素子の動作を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る映像表示装置の反射型偏光部材を示す斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、第1の実施形態に係る光源ユニットの原理を示す模式図である。
【
図6B】
図6Bは、実施例20に係る光源ユニットの原理を示す模式図である。
【
図7】
図7は、実施例1、11、20において、1つの発光エリアから出射する光の配光パターンを示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施例1~12および実施例20における第2の像の輝度の均一性を示すグラフである。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係る映像表示装置を示す端面図である。
【
図10】
図10は、第3の実施形態に係る映像表示装置を示す端面図である。
【
図11】
図11は、運転席にいる視認者から見た景色を示す模式図である。
【
図12】
図12は、第4の実施形態に係る映像表示装置の表示装置を示す断面図である。
【
図13】
図13は、第5の実施形態に係る映像表示装置の光源ユニットを示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、各実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、適宜簡略化又は強調されている。例えば、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。さらに、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
<第1の実施形態>
(全体構成と動作)
図1は、本実施形態に係る映像表示装置を示す端面図である。
図2は、本実施形態における映像表示装置において、表示装置が表示する画像、液晶素子の状態、及び、反射型偏光部材に結像される虚像の関係を示す図である。
図1においては、光Lの光路のうち、S偏光及びP偏光のいずれも通過し得る部分を実線で示し、S偏光のみが通過する部分及びS偏光による虚像が見える方向を一点鎖線で示し、P偏光のみが通過する部分及びP偏光による虚像が見える方向を二点鎖線で示している。後述する
図9及び
図10においても同様である。
【0011】
図1に示すように、自動車100は、車両101と、車両101に搭載された映像表示装置1と、を備える。視認者200は自動車100の搭乗者であり、例えば、運転者である。視認者200のアイボックス201は、視認者200の眼の前の空間のうち、後述する虚像を視認可能な範囲をいう。
【0012】
映像表示装置1は、光源ユニット10と、反射ユニット20と、を備える。反射ユニット20は、光源ユニット10から離隔し、光源ユニット10から出射した光を反射する。例えば、光源ユニット10は、車両101の客室の天井板102の上方に配置されている。光源ユニット10から出射した光は、天井板102の穴103を介して、反射ユニット20に入射する。反射ユニット20は、車両101のフロントウインドシールド104の下方であって客室内に露出している部分、例えば、ダッシュボード105付近に配置されている。光源ユニット10から出射した光は、光源ユニット10と反射ユニット20との間の位置Pにおいて、第1の像IM1を形成する。第1の像IM1は、実像であって中間像である。第1の像IM1が形成される条件については、後述する。
【0013】
光源ユニット10は、表示装置11と、液晶素子12と、入力素子13と、中間素子14と、出力素子15と、を備える。表示装置11は画像IMP及び画像IMS(以下、総称して「画像IM」ともいう)を表示可能である。表示装置11は、例えば、複数のLED(Light Emitting Diode)素子を有するLEDディスプレイである。液晶素子12は、表示装置11から出射した光が入射され、P偏光及びS偏光のいずれかを選択的に出射可能である。入力素子13は、液晶素子12から出射した光が入射し、この光を反射する。中間素子14は入力素子13から出射した光が入射し、この光を反射する。出力素子15は、中間素子14から出射した光が入射され、この光を反射する。出力素子15によって反射された光は、光源ユニット10から出射され、反射ユニット20に向かう。
【0014】
反射ユニット20は、反射型偏光部材21と、反射部材22と、を備える。反射型偏光部材21は、液晶素子12から出射されたP偏光及びS偏光のいずれか一方の光を反射し、他方の光を透過する。
図1に示す例では、反射型偏光部材21はS偏光を反射し、P偏光を透過させる。但し、反射型偏光部材21はP偏光を反射し、S偏光を透過させてもよい。
【0015】
反射部材22は、反射型偏光部材21を透過した上述の他方の光(例えば、P偏光)を、反射型偏光部材21によって反射された上述の一方の光(例えば、S偏光)が進む方向と同一方向に反射する。なお、「同一方向」とは、完全に同一な方向には限定されず、上述の一方の光と他方の光が共に視認者200のアイボックス201に入射する程度に同じであればよい。
【0016】
反射型偏光部材21がS偏光を反射し、P偏光を透過させる場合、液晶素子12からS偏光が出射したときは、
図1に一点鎖線で示すように、このS偏光は反射型偏光部材21によって反射され、視認者200のアイボックス201に入射する。これにより、視認者200は反射型偏光部材21の向こう側に、画像IMに応じた虚像IM2Sを視認する。視認者200から見て、反射型偏光部材21と虚像IM2Sとの距離は、第1の像IM1が形成される位置Pと反射型偏光部材21との距離と等しい。
【0017】
反射型偏光部材21がS偏光を反射し、P偏光を透過させる場合、液晶素子12からP偏光が出射したときは、
図1に二点鎖線で示すように、このP偏光は反射型偏光部材21を透過し、反射部材22によって反射され、再び反射型偏光部材21を透過して、視認者200のアイボックス201に入射する。これにより、視認者200は反射型偏光部材21の向こう側に、画像IMに応じた虚像IM2Pを視認する。視認者200から見て、反射型偏光部材21と虚像IM2Pとの距離は、第1の像IM1が形成される位置Pと反射部材22との距離と、反射部材22と反射型偏光部材21との距離の合計に等しい。
【0018】
したがって、視認者200から見て、虚像IM2S及び虚像IM2Pは、いずれも反射型偏光部材21の奥側に表示される。そして、視認者200は、虚像IM2Pを虚像IM2Sよりも遠方に視認する。また、表示装置11と液晶素子12を連動させることにより、虚像IM2Sと虚像IM2Pを相互に異なる映像にすることができる。この結果、映像表示装置1は立体的な虚像を表示できる。
【0019】
第1の期間においては、表示装置11にS偏光用の画像IMSを表示させる。また、液晶素子12にS偏光を透過させる。これにより、視認者は画像IMSに応じた虚像IM2Sを視認できる。虚像IM2Sには、例えば、自動車100の状態を示す情報を表示してもよい。
図2は、自動車100の速度を表示する例を示している。
【0020】
第2の期間においては、表示装置11にP偏光用の画像IMPを表示させる。また、液晶素子12にP偏光を透過させる。これにより、視認者は虚像IM2Pを視認できる。虚像IM2Pには、例えば、自動車100の周囲の情報やナビゲーション情報を表示してもよい。
図2は、自動車100を右側から追い抜こうとしている他の自動車の存在を表す例を示している。
【0021】
そして、虚像IM2Sを表示する第1の期間と、虚像IM2Pを表示する第2の期間とを、十分に短い周期、例えば、30fps以上の周期で繰り返すことにより、視認者200に虚像IM2Sと虚像IM2Pを同時に視認させることができる。このとき、虚像IM2Pは虚像IM2Sよりも遠くに視認される。
【0022】
次に、映像表示装置1の各部の構成について詳細に説明する。
以下、説明をわかりやすくするために、XYZ直交座標系を採用する。本実施形態では、車両101の前後方向を「X方向」とし、車両101の左右方向を「Y方向」とし、車両101の上下方向を「Z方向」とする。XY平面は、車両101の水平面である。X方向のうち矢印の方向(前方)を「+X方向」といい、その逆方向(後方)を「-X方向」ともいう。また、Y方向のうち矢印の方向(左方)を「+Y方向」といい、その逆方向(右方)を「-Y方向」ともいう。また、Z方向のうち矢印の方向(上方)を「+Z方向」といい、その逆方向(下方)を「-Z方向」ともいう。
【0023】
(表示装置)
図3は、本実施形態に係る映像表示装置の表示装置を示す端面図である。
図1に示すように、表示装置11は概ね-Z方向に向けて光を出射する。この光は画像IMを構成する。
【0024】
表示装置11においては、
図3に示すようなLED素子112が行列状に複数配列されている。表示装置11の各画素11pには、1つ又は複数のLED素子112が対応している。
【0025】
表示装置11において、各LED素子112は、基板111にフェースダウン実装されている。ただし、各LED素子は、基板にフェースアップ実装されていてもよい。各LED素子112は、半導体積層体112aと、アノード電極112bと、カソード電極112cと、を有する。
【0026】
半導体積層体112aは、p型半導体層112p1と、p型半導体層112p1上に配置される活性層112p2と、活性層112p2上に配置されるn型半導体層112p3と、を有する。半導体積層体112aには、例えばInXAlYGa1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y<1)で表せる窒化ガリウム系化合物半導体が用いられる。LED素子112が発光する光は、本実施形態では可視光である。
【0027】
アノード電極112bは、p型半導体層112p1に電気的に接続される。また、アノード電極112bは、配線118bに電気的に接続される。カソード電極112cは、n型半導体層112p3に電気的に接続される。また、カソード電極112cは、別の配線118aに電気的に接続される。各電極112b、112cには、例えば金属材料を用いることができる。
【0028】
本実施形態では各LED素子112の光出射面112sには、複数の凹部112tが設けられている。本明細書において「LED素子の光出射面」とは、LED素子の表面のうち、結像光学系18に入射する光が主に出射する面を意味する。本実施形態では、n型半導体層112p3において、活性層112p2と対向する面の反対側に位置する面が、光出射面112sに相当する。
【0029】
以下、各LED素子112から出射する光の光軸を、単に「光軸C」という。光軸Cは、例えば、複数の画素11pが配列される出射平面に平行であり、かつ、表示装置11の光出射側に位置する第1平面P1において、1つの画素11pからの光が照射される範囲のうち、輝度が最大となる点a1と、出射平面に平行であり、第1平面P1から離隔した第2平面P2において、このLED素子112からの光が照射される範囲のうち、輝度が最大となる点a2と、を結ぶ直線である。輝度が最大となる点が複数存在する場合、例えば、それらの点の中心点を、輝度が最大となる点としてもよい。なお、生産的な観点からは、光軸Cは出射平面と直交していることが望ましい。
【0030】
各LED素子112の光出射面112sに複数の凹部112tが設けられていることにより、各LED素子112から出射する光、すなわち各画素11pから出射する光は、
図3に破線で示すように、略ランバーシアン配光を有する。ここで「各画素から出射する光が略ランバーシアン配光を有する」とは、各画素の光軸Cに対して角度θの方向の光度が、nを0より大きい値として、光軸C上の光度のcos
nθ倍で近似できる配光パターンであることを意味する。ここで、nは、11以下であることが好ましく、1であることがより一層好ましい。なお、1つの画素11pから出射する光の光軸Cを含む平面は多数存在するが、各平面内においてこの画素11pから出射する光の配光パターンは、略ランバーシアン配光であり、また、nの数値も概ね等しい。
【0031】
ただし、各LED素子の構成は、上記に限定されない。例えば、各LED素子の光出射面には複数の凹部ではなく複数の凸部が設けられていてもよいし、複数の凹部および複数の凸部の両方が設けられていてもよい。また、成長基板が透光性を有する場合、半導体積層体から成長基板を剥離させず、光出射面に相当する成長基板の表面に複数の凹部および/または複数の凸部を設けてもよい。これらの形態においても、各LED素子から出射する光は、略ランバーシアン配光を有する。また、各LED素子において基板と対向するようにn型半導体層を設け、その上に活性層およびp型半導体層をこの順で積層し、p型半導体層において活性層と対向する面の反対側の面を、各LED素子の光出射面としてもよい。また、後述する他の実施形態で説明するように、各LED素子から出射する光が略ランバーシアン配光を有さなくても、各画素から最終的に出射する光が略ランバーシアン配光を有すればよい。
【0032】
(液晶素子)
図4Aは、本実施形態に係る映像表示装置の液晶素子を示す端面図である。
図4Bは、本実施形態に係る映像表示装置の液晶素子の動作を示す図である。
図1に示すように、液晶素子12は表示装置11の-Z方向側に配置されている。
【0033】
図4A及び
図4Bに示すように、液晶素子12は、偏光板12aと、透明電極板12bと、液晶層12cと、透明電極板12dを備える。偏光板12a、透明電極板12b、液晶層12c及び透明電極板12dは、表示装置11から出射した光の経路に沿ってこの順に積層されている。
【0034】
偏光板12aは、表示装置11から出射した光のうち、S偏光の一部を遮断するか、P偏光の一部を遮断し、残りを透過させる。
図4Bに示す例では、偏光板12aはS偏光の一部を遮断し、P偏光の大部分を透過させる。透明電極板12bと透明電極板12dとの間に電圧が印加されていないときは、液晶層12cは入射した光の偏光方向を変換する。
図4Bに示す例では、P偏光をS偏光に変換する。これにより、液晶素子12からS偏光が出射する。一方、透明電極板12bと透明電極板12dとの間に所定の電圧が印加されると、液晶層12cは入射した光をそのまま透過させる。これにより、液晶素子12からP偏光が出射する。
【0035】
(入力素子、中間素子、出力素子)
図1に示すように、入力素子13は、液晶素子12の-Z方向側に位置し、液晶素子12と対向するように配置される。入力素子13は、凹面状のミラー面13aを有するミラーである。入力素子13は、液晶素子12から出射した光を反射する。
【0036】
中間素子14は、入力素子13よりも-X+Z方向側に位置し、入力素子13と対向するように配置される。中間素子14は、凹面状のミラー面14aを有するミラーである。中間素子14は、入力素子13が反射した光をさらに反射する。
【0037】
入力素子13および中間素子14は、表示装置11の互いに異なる位置から出射した複数の主光線L同士が略平行になるように、複数の主光線Lを屈曲させる屈曲部16を構成する。ミラー面13a及び14aは、本実施形態では、バイコーニック面である。ただし、ミラー面13a及び14aは、球面の一部であってもよいし、自由曲面であってもよい。
【0038】
出力素子15は、表示装置11、液晶素子12、入力素子13及び中間素子14よりも+X方向側に位置し、中間素子14と対向するように配置される。出力素子15は、平坦なミラー面15aを有するミラーである。出力素子15は、入力素子13及び中間素子14を経由した光を、第1の像IM1の形成位置Pに向けて反射する。具体的には、出力素子15には、屈曲部16によって略平行となった複数の主光線Lが入射する。ミラー面15aは、-Z方向に向かうほど+X方向に向かうように、車両101の水平面であるXY平面に対して傾斜している。これにより、出力素子15は、中間素子14が反射した光を、-Z方向に向かうほど+X方向に向かうようにZ方向に対して傾斜した方向に反射する。このように、出力素子15は、屈曲部16によって略平行となった複数の主光線Lが、第1の像IM1の形成位置Pに向かうように、複数の主光線Lの方向を変更する方向変更部17を構成する。
【0039】
入力素子13、中間素子14及び出力素子15は、それぞれ、ガラス又は樹脂材料等からなる本体部材と、本体部材の表面に設けられてミラー面13a、14a、15aを構成する金属膜や誘電体多層膜等の反射膜と、により構成されていてもよい。また、入力素子13、中間素子14及び出力素子15は、それぞれ、全体が金属材料により構成されていてもよい。
【0040】
入力素子13、中間素子14及び出力素子15により、結像光学系18が構成されている。結像光学系18は、液晶素子12から出射した光が入射し、画像IMに応じた第1の像IM1を形成する。結像光学系18は、第1の像IM1を所定の位置に結像させるのに必要な全ての光学素子を含む光学系である。なお、結像光学系18には、中間素子14が設けられていなくてもよい。中間素子14があってもなくても、出力素子15には入力素子13を経由した光が入射する。
【0041】
結像光学系18は、第1の像IM1側において略テレセントリック性を有する。ここで「結像光学系18が、第1の像IM1側において略テレセントリック性を有する」とは、表示装置11における互いに異なる位置から出射して、結像光学系18を経由し、第1の像IM1に至る複数の主光線L同士が、第1の像IM1の前後において、略平行であることを意味する。異なる位置とは、例えば異なる画素11pである。「複数の主光線L同士が略平行」とは、光源ユニット10の構成要素の製造精度や組み立て精度等による誤差を許容するような実用的な範囲で、概ね平行であることを意味する。「複数の主光線L同士が略平行」である場合、例えば、主光線L同士のなす角は、10度以下である。
【0042】
結像光学系18が第1の像IM1側において略テレセントリック性を有する場合、複数の主光線L同士は、入力素子13に入射する前に交差する。以下、複数の主光線L同士が交差するポイントを「焦点F」という。そのため、結像光学系18が第1の像IM1側において略テレセントリック性を有するか否かは、例えば、光の逆進性を利用して以下の方法で確認できる。先ず、第1の像IM1が形成される位置付近に、レーザ光源等の平行光を出射可能な光源を配置する。この光源から出射した光を、結像光学系18の出力素子15に照射する。この光源から出射して出力素子15を経由した光は、中間素子14を介して入力素子13に入射する。そして、入力素子13から出射した光が液晶素子12に到達する前に、集光するポイント、すなわち焦点Fが存在する場合は、結像光学系18が第1の像IM1側において略テレセントリック性を有すると判断できる。
【0043】
結像光学系18が第1の像IM1側において略テレセントリック性を有するため、結像光学系18には、各画素11pから出射する光のうち、焦点F及びその近辺を通過する光が主に入射する。
【0044】
なお、結合光学系の構成及び位置は、第1の像側において略テレセントリック性を有する限り、上記に限定されない。例えば、方向変更部を構成する光学素子の数は、2以上であってもよい。
【0045】
(反射型偏光部材)
図5は、本実施形態に係る映像表示装置の反射型偏光部材を示す斜視図である。
反射型偏光部材21は、光源ユニット10から出射した光が入射する位置に配置されている。
図5に示すように、反射型偏光部材21は、例えば、ワイヤグリッド偏光板である。反射型偏光部材21は、透明板21a、透明な樹脂フィルム21b、及び、複数の金属ワイヤ21cを有する。反射型偏光部材21においては、透明板21aの表面に、透明な樹脂フィルム21bが配置されており、樹脂フィルム21b上に、複数の金属ワイヤ21cが相互に平行に等間隔で配列されている。
【0046】
また、透明板21aにおける樹脂フィルム21bが配置された表面は、凹面となっている。これにより、反射型偏光部材21は、LED素子から出射した光のうち、P偏光及びS偏光の一方を透過させ、他方を反射する。本実施形態においては、反射型偏光部材21は、P偏光を透過させ、S偏光を反射する。
図1に示すように、反射されたS偏光は視認者200のアイボックス201に入射する。
【0047】
(反射部材)
図1に示すように、反射部材22は、反射型偏光部材21を透過した偏光(例えば、P偏光)が入射する位置に配置されている。反射部材22は凹面状の反射面22aを有し、反射面22aによって、反射型偏光部材21から出射され反射面22aに入射した光を反射型偏光部材21に向けて反射する。反射部材22によって反射された光は、反射型偏光部材21を透過して、アイボックス201に入射する。反射部材22によって反射された光(例えば、P偏光)の進行方向は、反射型偏光部材21によって反射された光(例えば、S偏光)の進行方向に対して略同一方向である。
【0048】
反射部材22は、ガラスまたは樹脂材料等からなる本体部材と、本体部材の表面に設けられて反射面22aを構成する金属膜や誘電体多層膜等の反射膜と、により構成されていてもよい。また、反射部材22は、全体が金属材料により構成されていてもよい。一例では、反射面22aはバイコーニック面である。ただし、ミラー面は、球面の一部であってもよいし、自由曲面であってもよい。
【0049】
(効果)
本実施形態に係る映像表示装置1によれば、
図2に示すように、視認者200に、距離が相互に異なる2種類の虚像IM2S及びIM2Pを視認させることができる。これにより、映像表示装置1は焦点距離が相互に異なる虚像を表示可能である。画像IMS及び画像IMPを十分に短い周期で交互に表示することにより、視認者200に虚像IM2Sと虚像IM2Pを同時に視認させ、立体的な虚像を視認させることができる。
【0050】
また、本実施形態においては、結像光学系18が第1の像IM1側において略テレセントリック性を有することにより、小型で高品位な映像を表示できる。以下、この効果について詳細に説明する。
図6Aは、本実施形態に係る光源ユニットの原理を示す模式図である。
図6Bは、実施例20に係る光源ユニットの原理を示す模式図である。
実施例20の光学的特性については、後述する。
【0051】
図6Bに示すように、実施例20に係る光源ユニット2011においては、表示装置2110は、複数の画素2110pを含むLCD(Liquid Crystal Display)である。
図6Aでは、本実施形態における表示装置11の複数の画素11pのうちの2つの画素11pから出射する光の配光パターンを破線で示している。同様に、
図6Bでは、実施例20における表示装置2110の複数の画素2110pのうちの2つの画素2110pから出射する光の配光パターンを破線で示している。また、
図6Aおよび
図6Bでは、結像光学系18、2120を簡略化して示している。
【0052】
図6Bに示すように、実施例20における表示装置2110では、各画素2110pから出射する光は、光出射面2110sの法線方向に主に配光される。また、1つの画素2110pから出射する光の光軸を含む平面は多数存在するが、LCDである表示装置2110では、各平面内において1つの画素2110pから出射する光の配光パターンは、相互に異なる。そして、複数の平面のうちの一の平面内において、各画素2110pから出射する光は、光軸に対して角度θの方向の光度が、光軸上の光度のcos
20θ倍で近似される配光パターンを有する。
【0053】
このような表示装置2110においては、表示装置2110の同じ位置から出射した光でも、視認者の見る角度によって光度や色度が変化する。したがって、仮に結像光学系2120が、法線方向以外の方向から表示装置2110から出射する光を取り込んだ場合、全ての画素から出射する光の輝度を均一にしたとしても、第1の像IM1において輝度や色度のばらつきが生じる。すなわち、第1の像IM1の品位が低下する。したがって、第1の像IM1の品位が低下しないようにするためには、表示装置2110の各画素2110pから出射した光を法線方向から取り込む必要がある。その結果、結像光学系2120が大型化する。
【0054】
これに対して、本実施形態に係る光源ユニット10では、結像光学系18は、第1の像IM1側において略テレセントリック性を有し、表示装置11から出射する光が略ランバーシアン配光を有する。そのため、光源ユニット10を小型化しつつ、第1の像IM1の品位を向上できる。
【0055】
具体的には、表示装置11から出射する光が略ランバーシアン配光を有するため、表示装置11の各画素11pから出射した光の光度や色度の角度に対する依存性は、実施例20における表示装置2110の各画素2110pから出射する光の光度や色度の角度に対する依存性と比較して低い。特に、厳密なランバーシアン配光に近づくほど、すなわち、配光パターンの近似式であるcos
nθのnが1に近づくほど、表示装置11の各画素11pから出射した光の光度や色度は、角度によらず概ね均一になる。そのため、
図6Aに示すように、結像光学系18が焦点Fを通過した光を取り込んだとしても、すなわち、法線方向以外の方向から光を取り込んだとしても、第1の像IM1の輝度や色度のばらつきを抑制し、第1の像IM1の品位を向上できる。
【0056】
また、結像光学系18は、主に焦点Fを通過した光で第1の像IM1を形成するため、結像光学系18に入射する光の光径が広がることを抑制できる。これにより、入力素子13を小型化できる。さらに、出力素子15から出射する複数の主光線Lは、互いに略平行である。出力素子15から出射する複数の主光線L同士が互いに略平行であるということは、出力素子15において結像に寄与する光が照射される範囲が、第1の像IM1のサイズと概ね同じであるということである。そのため、結像光学系18の出力素子15も小型化できる。以上より、小型かつ品位が高い第1の像IM1を形成可能な光源ユニット10を提供できる。
【0057】
また、第1の像IM1は、光源ユニット10と反射ユニット20との間に形成される。このような場合、表示装置11のある一つの点から出射した光は、出力素子15を経由した後に、第1の像IM1の形成位置において集光する。一方、光源ユニット10と反射ユニット20との間に第1の像IM1が形成されない場合、表示装置11のある一つの点から出射した光の光径は、入力素子13から反射ユニット20に向けて、徐々に広がる。したがって、本実施形態では、出力素子15において、表示装置11のある一つの点から出射した光が照射される範囲を、第1の像IM1が形成されない場合と比較して、小さくできる。そのため、出力素子15を小型化できる。
【0058】
また、本実施形態に係る光源ユニット10は小型であるため、光源ユニット10を車両101内の限られたスペースに容易に配置できる。
【0059】
本実施形態においては、フロントウインドシールド104の奥側に虚像を視認させる一般的なヘッドアップディスプレイ(Head Up Display:HUD)とは異なり、虚像IM2P及び虚像IM2Sは、フロントウインドシールド104より下部に位置する、反射型偏光部材21の奥側に視認される。すなわち、自動車100においては、反射型偏光部材21がフロントウインドシールド104よりも下方に配置されているため、視認者200はフロントウインドシールド104よりも下方の位置に第2の像IM2を視認できる。このため車外の明るい景色によって虚像IM2P及び虚像IM2Sの視認性が低下する可能性が少なく、虚像IM2P及び虚像IM2Sが表示する情報を視認者200に伝達しやすくなる。
なお、反射型偏光部材21の手前に、例えば透明な保護スクリーン等を設置しても構わない。
【0060】
また、本実施形態における結像光学系18は、屈曲部16と、方向変更部17と、を有する。このように、結像光学系18において、主光線L同士を平行にする機能を有する部分と、第1の像IM1を所望の位置に形成する部分と、を別々にすることで、結像光学系18の設計が容易になる。
【0061】
また、結像光学系18内の光路の一部は、Z方向と直交するXY平面と交差する方向に延びる。そのため、結像光学系18をXY平面に沿う方向にある程度小型化できる。
【0062】
また、結像光学系18内の光路の他の一部は、Z方向と直交するXY平面に沿う方向に延びる。そのため、結像光学系18をZ方向にある程度小型化できる。
【0063】
<実施例>
次に、実施例に係る光源ユニットについて説明する。
図7は、実施例1、11、20において、1つの発光エリアから出射する光の配光パターンを示すグラフである。
図8は、実施例1~12および実施例20における第2の像の輝度の均一性を示すグラフである。
【0064】
実施例1~12および実施例20に係る映像表示装置は、光源ユニットと、反射ユニットと、を備え、光源ユニットは、行列状に配列された複数の発光エリアと、結像光学系とを備えるように、シミュレーションソフト上で設定した。各発光エリアが、第1の実施形態における表示装置11の各画素11pに相当する。
【0065】
図7では、横軸は発光エリアの光軸に対する角度であり、縦軸は、その角度における光度を光軸上の光度で除算することにより正規化した光度である。実施例1に係る表示装置は、
図7に示すように、各発光エリアから出射する光が、光軸に対して角度θの方向の光度が光軸上の光度のcosθ倍で表される配光パターンを有するように、シミュレーションソフト上で設定した。すなわち、実施例1では、各発光エリアから出射する光は、厳密なランバーシアン配光を有する。
【0066】
実施例2~12では、各発光エリアから出射する光が、光軸に対して角度θの方向の光度が光軸上の光度のcosnθ倍で表される配光パターンを有するように、シミュレーションソフト上で設定した。なお、実施例2では、n=2であり、実施例2から実施例12まで順に、nが1ずつ大きくなるように設定した。
【0067】
また、LCDの画素から出射する光の一の平面内の配光パターンを調査したところ、
図7に細い破線で示すような配光パターンであることがわかった。そして、前述したように、この配光パターンは、光軸に対して角度θの方向の光度が光軸上の光度のcos
20θ倍で表される配光パターンに近似できることがわかった。そこで、実施例20では、各発光エリアの光軸に対して角度θの方向の光度が、光軸上の光度のcos
20θ倍で表される配光パターンを有するように、シミュレーションソフト上で設定した。
【0068】
実施例1~12および実施例20における結像光学系は、いずれも第1の像側においてテレセントリック性を有するように設定した。
【0069】
次に、実施例1~12および実施例20のそれぞれについて、全ての発光エリアの輝度を一定にした場合に形成される第2の像の輝度分布をシミュレーションした。「第2の像」とは、上述の「虚像IM2S」及び「虚像IM2P」の総称である。この際、第2の像は、長辺が111.2mm、短辺が27.8mmの長方形とした。また、この際、第2の像が形成される平面を1mmの辺を有する正方形のエリアに区画し、各エリアの輝度値をシミュレーションした。そして、その際の第2の像の輝度の均一性を評価した。ここで、「輝度の均一性」とは、第2の像内の輝度の最大値に対する最小値の割合を百分率で表した値である。その結果を、
図8に示す。なお、
図8では、横軸は、各実施例であり、縦軸は輝度の均一性である。
【0070】
図8に示すように、nが大きくなるほど、輝度の均一性が低下することがわかった。これは、nが大きくなるほど、第2の像において中心から離れる位置の輝度が低下するためである。特に、実施例11、すなわちn=11で、輝度の均一性が30%であることがわかった。使用者は、第2の像と第2の像が形成されていない領域とを判別し易いため、第2の像の輝度の均一性は、30%以上あればよいと考えられる。
【0071】
したがって、結像光学系が略テレセントリック性を有するように構成した場合に、第1の像および第2の像の輝度ムラを抑制するためには、表示装置から出射する光が略ランバーシアン配光を有することが好ましいことがわかった。具体的には、配光パターンの近似式であるcosnθのnは、11以下であることが好ましく、1であることがより一層好ましいことがわかった。なお上記のようにnが1から外れるに従って第2の像の輝度の均一性が低下するが、このような輝度の不均一性を補完できるように、予め表示装置11の表示輝度に所定の輝度分布を設けておくことができる。例えば、表示装置11の各画素11pから出射する光が結像光学系18を経由することで、第2の像の外縁部の輝度が中心部の輝度より低下し易い場合は、表示装置11の外縁側の画素11pのLED素子112の出力を中心側の画素11pのLED素子112の出力よりも大きくなるように、表示装置11を制御してもよい。
【0072】
なお、実施例20においては、表示装置2110の各画素2110pから出射する光が略ランバーシアン配光ではないため、表示装置2110が大型化する。但し、第1の実施形態と同様に、焦点距離が相互に異なる2種類の虚像を表示できる。
【0073】
<第2の実施形態>
図9は、本実施形態に係る映像表示装置を示す端面図である。
図9に示すように、本実施形態に係る映像表示装置2は、第1の実施形態に係る映像表示装置1と比較して、反射型偏光部材21及び反射部材22の替わりに、透光性部材23が設けられている点が異なっている。透光性部材23は、液晶素子12から出射した光が入射する位置に配置されている。
【0074】
透光性部材23は、透光性材料、例えば、樹脂又はガラスにより形成されたブロックであり、第1面24と、第2面25と、を有する。第1面24は第1の実施形態における反射型偏光部材21と同様に機能し、第2面25は第1の実施形態における反射部材22と同様に機能する。
【0075】
第1面24は、液晶素子12から出射されたP偏光及びS偏光のいずれか一方の光を反射し、他方の光を透光性部材23内に入射させる。本実施形態においては、例えば、第1面24はS偏光を反射しP偏光を入射させる。但し、P偏光を反射しS偏光を入射させてもよい。第1面24は、例えば、ワイヤーグリッドフィルムによって構成されていてもよい。ワイヤーグリッドフィルムは、例えば、
図5に示す透明な樹脂フィルム21b及び複数の金属ワイヤ21cを含む。
【0076】
第2面25は、第1面24を介して透光性部材23内に入射した上述の他方の光(例えばS偏光)を、第1面24に向けて反射する。第2面25によって反射された光(例えばS偏光)の進行方向は、第1面24によって反射された上述の一方の光(例えばP偏光)が進む方向と同一である。第2面25は、例えば、金属膜や誘電体多層膜等の反射膜により構成することができる。一例では、第2面25はバイコーニック面である。ただし、第2面25は球面の一部であってもよいし、自由曲面であってもよい。
【0077】
本実施形態によれば、単一の透光性部材23の第1面24及び第2面25によって第1の実施形態における反射型偏光部材21及び反射部材22と同様な機能を実現することができる。これにより、第1面24と第2面25の位置関係が安定すると共に、反射ユニット20の低コスト化を図ることができる。また、透光性部材23がフロントウインドシールド104よりも下方に配置されているため、第1の実施形態と同様に、視認者200はフロントウインドシールド104よりも下方の位置に第2の像IM2を視認できる。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0078】
<第3の実施形態>
図10は、本実施形態に係る映像表示装置を示す端面図である。
図11は、運転席にいる視認者から見た景色を示す模式図である。
【0079】
図10に示すように、本実施形態に係る映像表示装置3においては、反射ユニット20から出射した光が、車両101のフロントウインドシールド104の内面において反射されて、視認者200のアイボックス201に到達する。
【0080】
これにより、
図11に示すように、視認者200は、フロントウインドシールド104越しに虚像IM2P及びIM2Sを視認することができる。虚像IM2Pは虚像IM2Sよりも遠くに視認される。
図11に示す例では、虚像IM2Sは車両101の情報、例えば、速度を表しており、虚像IM2Pはナビゲーション情報、例えば、前方にあるコーナーの方向を表している。但し、虚像IM2P及びIM2Sの内容はこれには限定されない。
【0081】
本実施形態によれば、視認者200はフロントウインドシールド104越しに虚像IM2P及び虚像IM2Sを視認することができる。これにより、視認者200は自動車100の前方から視線を外さずに、虚像IM2P及び虚像IM2Sに表示された内容を認識できる。このように、本実施形態に係る映像表示装置3は、例えば自動車100のHUDを構成する。
【0082】
また、本実施形態によれば、フロントウインドシールド104に対する光源ユニット10及び反射ユニット20の位置を調整することにより、虚像IM2Pと虚像IM2Sの位置関係を制御できる。例えば、
図11に示す例では、より遠方に視認される虚像IM2Pを虚像IM2Sよりも上方(+Z方向)に表示することができる。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0083】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明する。
図12は、本実施形態に係る映像表示装置の表示装置を示す断面図である。
【0084】
本実施形態における表示装置710は、n型半導体層712p3において活性層112p2と対向する面の反対側に位置する面が概ね平坦であり、保護層714、波長変換部材715、およびカラーフィルタ716をさらに有する点で、第1の実施形態における表示装置11と相違する。
【0085】
保護層714は、行列状に配列された複数のLED素子712を覆っている。保護層714には、例えば、硫黄(S)含有置換基もしくはリン(P)原子含有基を有する高分子材料、または、ポリイミド等の高分子マトリックスに高屈折率の無機ナノ粒子を付加した高屈折率ナノコンポジット材料等の透光性材料を用いることができる。
【0086】
波長変換部材715は、保護層714上に配置される。波長変換部材715は、一般的な蛍光体材料、ペロブスカイト蛍光体材料、または量子ドット(Quantum Dot:QD)等の波長変換材料を1種以上含む。各LED素子712から出射した光は、波長変換部材715に入射する。波長変換部材715に含まれる波長変換材料は、各LED素子712から出射した光が入射することにより、各LED素子712の発光ピーク波長と異なる発光ピーク波長の光を発する。波長変換部材715が発する光は、略ランバーシアン配光を有する。
【0087】
カラーフィルタ716は、波長変換部材715上に配置される。カラーフィルタ716は、LED素子712から出射した光の大部分を遮断可能である。これにより、各画素11pからは、主に波長変換部材715が発する光が出射する。そのため、各画素11pから出射する光は、
図12に破線で示すように、略ランバーシアン配光を有する。なお、LED素子から出射する光の大部分が波長変換部材に吸収される場合は、表示装置にカラーフィルタを設けなくてもよい。このように、LED素子の光出射面に複数の凹部または凸部を設けなくても、各画素から出射する光がランバーシアン配光を有するように構成できる。
【0088】
本実施形態においては、LED素子712の発光ピーク波長は、紫外光の領域であってもよいし、可視光の領域であってもよい。なお、少なくとも一つの画素11pから青色光を出射させたい場合、例えば、この画素11pのLED素子712から青色光を出射させ、この画素11pには、波長変換部材715及びカラーフィルタ716を設けなくとも良い。この場合、このLED素子712を覆うように光散乱パーティクルを含む光散乱部材を設けることで、この画素11pから出射する光が略ランバーシアン配光を有するように構成してもよい。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0089】
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態について説明する。
図13は、本実施形態に係る映像表示装置の光源ユニットを示す端面図である。
図13に示すように、本実施形態に係る映像表示装置の光源ユニット30は、第1の実施形態に係る光源ユニット10の構成に加えて、遮光部材19が設けられている点が異なっている。
【0090】
遮光部材19は、液晶素子12から入力素子13に向かう光路上に配置されている。遮光部材19には、液晶素子12から入力素子13に向かう光の一部が通過する開口19aが設けられている。遮光部材19は、液晶素子12から入力素子13に向かう光の他の一部を遮断する。
【0091】
本実施形態によれば、遮光部材19が設けられていることにより、迷光の発生を抑制し、虚像の品質をより一層向上させることができる。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0092】
なお、上述の各実施形態においては、視認者200に虚像IM2P及び虚像IM2Sを同時に認識させる例を示したが、これには限定されない。視認者200に虚像IM2P又は虚像IM2Sのいずれか一方のみを定常的に視認させてもよい。例えば、視認者200が偏光サングラスを着用している場合は、S偏光又はP偏光が偏光サングラスによって遮られる場合がある。この場合は、偏光サングラスによって遮られる偏光による表示は行わずに、遮られない偏光による表示のみを有効にしてもよい。
【0093】
また、上述の各実施形態においては、反射部材22又は透光性部材23の第2面25によって反射された光が、反射型偏光部材21又は透光性部材23の第1面24を透過する例を示したが、これには限定されない。光源ユニット10と反射型偏光部材21と反射部材22の位置関係によっては、反射部材22によって反射された光は反射型偏光部材21を透過せずに、直接的または間接的にアイボックス201に入射してもよい。
【0094】
前述の各実施形態は、本発明を具現化した例であり、本発明はこれらの実施形態には限定されない。例えば、前述の各実施形態において、いくつかの構成要素又は工程を追加、削除又は変更したものも本発明に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【0095】
実施形態は、以下の態様を含む。
【0096】
(付記1)
画像を表示可能な表示装置と、
前記表示装置から出射した光が入射され、P偏光及びS偏光のいずれかを選択的に出射可能な液晶素子と、
前記液晶素子から出射された、P偏光及びS偏光のいずれか一方の光を反射し、他方の光を透過する反射型偏光部材と、
前記他方の光を前記反射型偏光部材によって反射された前記一方の光が進む方向と同一方向に反射する反射部材と、
を備えた映像表示装置。
【0097】
(付記2)
画像を表示可能な表示装置と、
前記表示装置から出射した光が入射され、P偏光及びS偏光のいずれかを選択的に出射可能な液晶素子と、
前記液晶素子から出射された光が入射する透光性部材と、
を備え、
前記透光性部材は、
前記液晶素子から出射された、P偏光及びS偏光のいずれか一方の光を反射し、他方の光を前記透光性部材内に入射させる第1面と、
前記他方の光を前記第1面によって反射された前記一方の光が進む方向と同一方向に反射する第2面と、
を有する映像表示装置。
【0098】
(付記3)
前記液晶素子から出射した光が入射し、前記画像に応じた第1の像を形成する結像光学系をさらに備え、
前記結像光学系は、前記第1の像側において略テレセントリック性を有し、
前記表示装置から出射する光が略ランバーシアン配光を有する付記1または2に記載の映像表示装置。
【0099】
(付記4)
前記表示装置から出射する光は、前記表示装置から出射する光の光軸に対して角度θの方向の光度が前記光軸上の光度のcosnθ倍で近似される配光パターンを有し、
前記nは0より大きい値である付記3に記載の映像表示装置。
【0100】
(付記5)
前記nは、11以下である付記4に記載の映像表示装置。
【0101】
(付記6)
前記表示装置は、複数のLED素子を有するLEDディスプレイである付記3~5のいずれか1つに記載の映像表示装置。
【0102】
(付記7)
前記LED素子から出射する光が、略ランバーシアン配光を有する付記6に記載の映像表示装置。
【0103】
(付記8)
前記表示装置は、前記LED素子上に配置され、前記LED素子から出射する光が入射する波長変換部材をさらに有する付記6または7に記載の映像表示装置。
【0104】
(付記9)
前記結像光学系は、
前記液晶素子から出射した光が入射する入力素子を含み、前記表示装置において互いに異なる位置から出射して前記入力素子に入射する前に互いに交差して前記第1の像に至る複数の主光線同士が、前記第1の像の前後で略平行になるように前記複数の主光線を屈曲する屈曲部と、
前記入力素子を経由した光が入射する出力素子を含み、前記屈曲部を経由した前記複数の主光線が、前記第1の像の形成位置に向かうように前記複数の主光線の進行方向を変更する方向変更部と、
を有する付記3~8のいずれか1つに記載の映像表示装置。
【0105】
(付記10)
前記液晶素子と前記結像光学系との間に配置され、前記液晶素子から前記結像光学系に向かう光の一部が通過する開口が設けられ、前記液晶素子から前記結像光学系に向かう光の他の一部を遮断する遮光部材をさらに備える付記3~9のいずれか1つに記載の映像表示装置。
【0106】
(付記11)
車両と、
前記車両に搭載された付記1~10のいずれか1つに記載の映像表示装置と、
を備えた自動車。
【0107】
(付記12)
前記画像がフロントウインドシールドより下部に視認可能である付記11に記載の自動車。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、例えば、ヘッドアップディスプレイなどに利用することができる。
【符号の説明】
【0109】
1、2、3 映像表示装置
10 光源ユニット
11 表示装置
11p 画素
12 液晶素子
12a 偏光板
12b 透明電極板
12c 液晶層
12d 透明電極板
13 入力素子
13a ミラー面
14 中間素子
14a ミラー面
15 出力素子
15a ミラー面
16 屈曲部
17 方向変更部
18 結像光学系
19 遮光部材
19a 開口
20 反射ユニット
21 反射型偏光部材
21a 透明板
21b 樹脂フィルム
21c 金属ワイヤ
22 反射部材
22a 反射面
23 透光性部材
24 第1面
25 第2面
30 光源ユニット
100 自動車
101 車両
102 天井板
103 穴
104 フロントウインドシールド
105 ダッシュボード
111 基板
112 LED素子
112a 半導体積層体
112b アノード電極
112b、112c 電極
112c カソード電極
112p1 p型半導体層
112p2 活性層
112p3 n型半導体層
112s 光出射面
112t 凹部
118a 配線
118b 配線
200 視認者
201 アイボックス
710 表示装置
712 LED素子
712p3 n型半導体層
714 保護層
715 波長変換部材
716 カラーフィルタ
2011 光源ユニット
2110 表示装置
2110p 画素
2110s 光出射面
2120 結像光学系
C 光軸
F 焦点
IM、IMP、IMS 画像
IM1 第1の像
IM2P、IM2S 虚像(第2の像)
L 主光線
P 位置
P1 第1平面
P2 第2平面
a1、a2 点
θ 角度