(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071899
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】シリコンウェーハの洗浄方法、シリコンウェーハの製造方法、及びシリコンウェーハ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240520BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20240520BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H01L21/304 647Z
H01L21/306 D
H01L21/316 U
H01L21/304 643A
H01L21/304 648G
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182395
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】福島 和哉
(72)【発明者】
【氏名】柳井 涼一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮輔
【テーマコード(参考)】
5F043
5F058
5F157
【Fターム(参考)】
5F043AA31
5F043BB22
5F043DD02
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F058BA06
5F058BC02
5F058BE03
5F058BF69
5F157BB22
5F157BB42
5F157BC13
5F157BD33
5F157BE12
5F157BE46
5F157CB03
5F157CB32
5F157CE07
5F157CE10
5F157CE25
5F157DB02
5F157DB03
5F157DB14
5F157DB16
5F157DB37
(57)【要約】
【課題】本発明は、シリコンウェーハ上の自然酸化膜の厚さの均一性を向上させることのできる、シリコンウェーハの洗浄方法、シリコンウェーハの製造方法、及び、より均一な自然酸化膜を有するシリコンウェーハを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のシリコンウェーハの洗浄方法は、表層改質工程において、酸化剤をシリコンウェーハの中心から径方向にずらした位置から供給する。本発明のシリコンウェーハの製造方法は、上記のシリコンウェーハの洗浄方法を行うこと含む。本発明のシリコンウェーハは、所定の測定を行った場合に、測定された自然酸化膜の厚さを最大値で規格化したときの、前記シリコンウェーハの径方向における前記自然酸化膜の厚さの最大値と最小値との差が0.1以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉式のシリコンウェーハの洗浄方法であって、
酸化剤を用いて前記シリコンウェーハの表層を改質する、表層改質工程と、
エッチング液を用いて前記表層改質工程後の前記シリコンウェーハの表層をエッチングする、エッチング工程と、
リンス液を用いて前記シリコンウェーハの表面をリンス処理する、リンス工程と、を含み、
前記表層改質工程において、前記酸化剤を前記シリコンウェーハの中心から径方向にずらした位置から供給することを特徴とする、シリコンウェーハの洗浄方法。
【請求項2】
前記酸化剤は、オゾン水である、請求項1に記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
【請求項3】
前記エッチング液は、フッ化水素の水溶液である、請求項1又は2に記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
【請求項4】
前記リンス液は、純水である、請求項1又は2に記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
【請求項5】
前記酸化剤を供給する位置は、前記シリコンウェーハの中心から径方向に5mm以上75mm以下の範囲内でずらした位置である、請求項1又は2に記載のシリコンウェーハ洗浄方法。
【請求項6】
前記酸化剤を供給する位置は、前記シリコンウェーハの中心から径方向に15mm以上20mm以下の範囲内でずらした位置である、請求項5に記載のシリコンウェーハ洗浄方法。
【請求項7】
前記酸化剤は、オゾン水であり、
前記エッチング液は、フッ化水素の水溶液であり、
前記オゾン水の濃度は、20~30ppmの範囲内であり、且つ、フッ化水素の水溶液の濃度は、0.5~3.0質量%の範囲内である、請求項1又は2に記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
【請求項8】
前記表層改質工程、前記エッチング工程、及び前記リンス工程における、前記シリコンウェーハの回転数は、100~500rpmの範囲内である、請求項7に記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
【請求項9】
分光エリプソメーターにより、直径300mmの前記シリコンウェーハの中心から29.4mm間隔で自然酸化膜の厚さを測定し、測定された前記自然酸化膜の厚さを最大値で規格化した際の、前記シリコンウェーハの径方向における前記自然酸化膜の厚さの最大値と最小値との差が0.1以下となるように、前記酸化剤を供給する位置、前記酸化剤の濃度、前記エッチング液の濃度、前記酸化剤の流量、前記エッチング液の流量、前記シリコンウェーハの回転数のうちの少なくともいずれかを調整する工程を含む、請求項1又は2に記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のシリコンウェーハの洗浄方法を行うこと含むことを特徴とする、シリコンウェーハの製造方法。
【請求項11】
厚さが2nm以下の自然酸化膜を形成したシリコンウェーハであって、分光エリプソメーターにより、直径300mmの前記シリコンウェーハの中心から147mmまで29.4mm間隔で自然酸化膜の厚さを測定した場合に、測定された前記自然酸化膜の厚さを最大値で規格化した際の、前記シリコンウェーハの径方向における前記自然酸化膜の厚さの最大値と最小値との差が0.1以下であることを特徴とする、シリコンウェーハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの洗浄方法、シリコンウェーハの製造方法、及びシリコンウェーハに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハの表面には、空気雰囲気中で室温において形成される酸化膜や、薬液洗浄によって形成される酸化膜があり、これらを自然酸化膜若しくは化学酸化膜と称している(以下、自然酸化膜と称する)。自然酸化膜の厚さは、コンマ数nm(0.2nm前後)から2nm以下程度である。一般的なシリコンウェーハの洗浄工程で形成される自然酸化膜の厚さは、5Å(オングストローム)前後である。対して、熱処理により形成される酸化膜は熱酸化膜と称し、その厚さは3nm以上である。
【0003】
近年の半導体デバイスの高精度化、多層化、及び薄型化に伴い、半導体素子に用いられる各種膜の薄膜化が要求されている。例えばMOSトランジスタのゲート特性向上の方法として、ゲート酸化膜形成直前にシリコン表面を洗浄し、シリコン表面を水素終端にしたうえで、ゲート絶縁膜を形成する方法が開示されている(例えば特許文献1)。最新の半導体デバイスの歩留まりを向上させるためには、自然酸化膜のような極薄のシリコン酸化膜を面内で均一にかつ再現性良く形成させる必要がある(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-216156号公報
【特許文献2】特許第6791454号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、シリコンウェーハ上の自然酸化膜の厚さの均一性を向上させることのできる、シリコンウェーハの洗浄方法、シリコンウェーハの製造方法、及び、より均一な自然酸化膜を有するシリコンウェーハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)枚葉式のシリコンウェーハの洗浄方法であって、
酸化剤を用いて前記シリコンウェーハの表層を改質する、表層改質工程と、
エッチング液を用いて前記表層改質工程後の前記シリコンウェーハの表層をエッチングする、エッチング工程と、
リンス液を用いて前記シリコンウェーハの表面をリンス処理する、リンス工程と、を含み、
前記表層改質工程において、前記酸化剤を前記シリコンウェーハの中心から径方向にずらした位置から供給することを特徴とする、シリコンウェーハの洗浄方法。
ここで、「酸化剤を前記シリコンウェーハの中心から径方向にずらした位置から供給する」は、酸化剤を供給する供給管の延在方向の延長線とシリコンウェーハの表面との交点が、シリコンウェーハの中心から径方向にずれており、そのような位置の供給管から酸化剤を供給することを意味する。
【0007】
(2)前記酸化剤は、オゾン水である、上記(1)に記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
【0008】
(3)前記エッチング液は、フッ化水素の水溶液である、上記(1)又は(2)に記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
【0009】
(4)前記リンス液は、純水である、上記(1)又は(2)に記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
【0010】
(5)前記酸化剤を供給する位置は、前記シリコンウェーハの中心から径方向に5mm以上75mm以下の範囲内でずらした位置である、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載のシリコンウェーハ洗浄方法。
【0011】
(6)前記酸化剤を供給する位置は、前記シリコンウェーハの中心から径方向に15mm以上20mm以下の範囲内でずらした位置である、上記(5)に記載のシリコンウェーハ洗浄方法。
【0012】
(7)前記酸化剤は、オゾン水であり、前記エッチング液は、フッ化水素の水溶液であり、前記オゾン水の濃度は、20~30ppmの範囲内であり、且つ、前記フッ化水素の水溶液の濃度は、0.5~3.0質量%の範囲内である、上記(1)~(6)のいずれか1つに記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
【0013】
(8)前記表層改質工程、前記エッチング工程、及び前記リンス工程における、前記シリコンウェーハの回転数は、100~500rpmの範囲内である、上記(1)~(7)のいずれか1つに記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
【0014】
(9)分光エリプソメーターにより、直径300mmの前記シリコンウェーハの中心から29.4mm間隔で自然酸化膜の厚さを測定し、測定された前記自然酸化膜の厚さを最大値で規格化した際の、前記シリコンウェーハの径方向における前記自然酸化膜の厚さの最大値と最小値との差が0.1以下となるように、前記酸化剤を供給する位置、前記酸化剤の濃度、前記エッチング液の濃度、前記酸化剤の流量、前記エッチング液の流量、前記シリコンウェーハの回転数のうちの少なくともいずれかを調整する工程を含む、上記(1)~(8)のいずれか1つに記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
【0015】
(10)上記(1)~(9)のいずれか1つに記載のシリコンウェーハの洗浄方法を行うこと含むことを特徴とする、シリコンウェーハの製造方法。
【0016】
(11)厚さが2nm以下の自然酸化膜を形成したシリコンウェーハであって、分光エリプソメーターにより、直径300mmの前記シリコンウェーハの中心から147mmまで29.4mm間隔で自然酸化膜の厚さを測定した場合に、測定された前記自然酸化膜の厚さを最大値で規格化した際の、前記シリコンウェーハの径方向における前記自然酸化膜の厚さの最大値と最小値との差が0.1以下であることを特徴とする、シリコンウェーハ。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シリコンウェーハ上の自然酸化膜の厚さの均一性を向上させることのできる、シリコンウェーハの洗浄方法、シリコンウェーハの製造方法、及び、より均一な自然酸化膜を有するシリコンウェーハを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるシリコンウェーハの洗浄方法のフローチャートである。
【
図2】シリコンウェーハ、並びに、酸化剤及びエッチング液の供給管の位置関係を模式的に示す図である。
【
図3】実施例でのウェーハ上の自然酸化膜の厚さの計測箇所を示す図である。
【
図4】形成された自然酸化膜の厚さの測定結果を示す図である。
【
図5】
図4における自然酸化膜の厚さを最大値で規格化した結果を示す図である。
【
図6】薬液の種類別による自然酸化膜の厚さの均一性を比較した結果を示す図である。
【
図7】最終のオゾン水による処理時のシリコンウェーハの回転数を変化させた際の自然酸化膜の厚さ分布を示す図である。
【
図8】
図7における自然酸化膜の厚さを最大値で規格化した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
<シリコンウェーハの洗浄方法>
図1は、本発明の一実施形態にかかるシリコンウェーハの洗浄方法のフローチャートである。
図2は、シリコンウェーハ、並びに、酸化剤及びエッチング液の供給管の位置関係を模式的に示す図である。
【0021】
本実施形態のシリコンウェーハの洗浄方法は、枚葉式スピン洗浄機を用いた、枚葉式のシリコンウェーハの洗浄方法である。ここでいう、枚葉式シリコンウェーハの洗浄方法とは、ウェーハの中心を中心軸として水平方向にウェーハを回転させた状態で、所望とする薬液を薬液供給ノズルよりウェーハ表面に向けて供給することによりウェーハ表面を清浄する方法を意味する。
図1に示すように、本実施形態の方法では、まず、酸化剤を用いてシリコンウェーハWの表層の改質を行う(表層改質工程:ステップS101)。この工程では、
図2に示すように、シリコンウェーハWを回転させながら、供給管1を介してシリコンウェーハWの表面に酸化剤(本例では、オゾン水)を供給し、シリコンウェーハWの表面に接触させ、シリコンウェーハWの表面上に自然酸化膜を形成する。なお、ステップS101に先立って、適宜、SC-1(Standard Clean 1)洗浄や、SC-2(Standard Clean 2)洗浄を行うこともできる。
【0022】
酸化剤は、オゾン水とすることが好ましい。オゾン水の濃度は、20~30ppmの範囲内であることが好ましい。オゾン水の濃度を20ppm以上とすることにより、十分な厚さの自然酸化膜を形成することができ、一方で、オゾンの水への溶解限界に鑑みると、濃度の上限は、30ppm程度となる。ここでのppmとは、重量比を表したものである。オゾン水の流量は、0.5~1.5L/分とすることが好ましい。オゾン水による処理時間は、15~60秒とすることが好ましい。
【0023】
ここで、
図2に示すように、本実施形態では、酸化剤(本例ではオゾン水)をシリコンウェーハWの中心Оから径方向に(ウェーハWの縁側に)ずらした位置から供給する。より具体的には、酸化剤を供給する位置は、シリコンウェーハWの中心Оから径方向に5mm以上75mm以下の範囲内でずらした位置であることが好ましく、シリコンウェーハWの中心Оから径方向に15mm以上20mm以下の範囲内でずらした位置であることがさらに好ましい。
【0024】
次いで、エッチング液を用いてシリコンウェーハWの表層のエッチングを行う(エッチング工程:ステップS102)。この工程では、
図2に示すように、シリコンウェーハWを回転させながら、供給管2を介してシリコンウェーハWの表面にエッチング液(本例では、フッ化水素の水溶液)を供給し、シリコンウェーハWの表面に接触させる。これにより、表面改質工程(ステップS101)で形成された自然酸化膜がエッチングされる。なお、この工程(ステップS102が複数回行われる場合は、少なくとも最後のエッチング工程)では、自然酸化膜が残存する程度のエッチング量とする。
【0025】
エッチング液は、フッ化水素の水溶液とすることが好ましい。フッ化水素の水溶液の濃度は、0.5~3.0質量%の範囲内であることが好ましい。フッ化水素の水溶液の濃度を0.5質量%以上とすることにより、十分なエッチング作用を得ることができ、一方で、フッ化水素の水溶液の濃度を3.0質量%以下とすることにより、過剰なエッチングを抑制することができるからである。フッ化水素の水溶液の流量は、0.5~1.5L/分とすることが好ましい。フッ化水素の水溶液による処理時間は、1~10秒とすることが好ましい。
【0026】
図2に示すように、本実施形態では、エッチング液(本例ではフッ化水素の水溶液)は、シリコンウェーハWの中心Оの位置から(径方向にずらさずに)供給する。ただし、エッチング液は、シリコンウェーハWの中心Оの位置から径方向にずらして供給しても良い。
【0027】
本実施形態においては、
図1に示すように、表層改質工程(ステップS101)及びエッチング工程(ステップS102)を所定の回数(例えば2~4回)繰り返した後、後述のリンス工程(ステップS103)へと進む。なお、表層改質工程(ステップS101)及びエッチング工程(ステップS102)は、必ずしも繰り返して行う必要はない。また、リンス工程(ステップS103)も含めて、表層改質工程(ステップS101)、エッチング工程(ステップS102)、及びリンス工程(ステップS103)を(例えば2~4回)繰り返し行うこともできる。
【0028】
次いで、リンス液を用いたリンス処理(リンス工程:ステップS103)を行う。この工程では、シリコンウェーハWを回転させながら、供給管1、2とは別の供給管(図示せず)を介してシリコンウェーハWの表面にリンス液(本例では、純水)を供給し、シリコンウェーハWの表面の異物を洗い流す。
リンス液は、純水とすることが好ましく、DIW(DeIonized Water)とすることが特に好ましい。純水の流量は、0.5~1.5L/分とすることが好ましい。純水による処理時間は、1~30秒とすることが好ましい。本実施形態では、純水は、シリコンウェーハWの中心Оの位置から(径方向にずらさずに)供給する。ただし、純水は、シリコンウェーハWの中心Оの位置から径方向にずらして供給しても良い。
【0029】
ステップS101~ステップS103において、洗浄時のシリコンウェーハWの回転数は、100~500rpmの範囲内であることが好ましい。
【0030】
以下、本実施形態のシリコンウェーハの洗浄方法の作用効果について説明する。
本発明者らが、シリコンウェーハ上の自然酸化膜の厚さの不均一性の原因について鋭意検討したところ、酸化剤(オゾン水)をシリコンウェーハWの中心Oの位置から供給する従来の手法では、シリコンウェーハWの回転による径方向への(中心から縁側)遠心力がかかる中、供給した酸化剤(オゾン水)が中心Оから同心円状に波打つように径方向へと流れていくことにより、例えば直径をRとするときのR/2点付近や外周部において供給量のピークを形成するような流れとなり、このことが自然酸化膜の厚さが面内で不均一になる原因となっていることを突き止めた。
そこで、本実施形態では、酸化剤とエッチング液とリンス液とを用いる枚葉洗浄処理において、酸化剤を用いた表層改質工程(ステップS101)において、酸化剤(オゾン水)をシリコンウェーハWの中心Оから径方向にずらした位置から供給している。これにより、供給した酸化剤(オゾン水)が中心Оから同心円状に波打つように径方向へと流れていくことを避けて、上記のような酸化剤(オゾン水)の供給量のピークを低減することができる。
従って、本実施形態のシリコンウェーハの洗浄方法によれば、シリコンウェーハW上の自然酸化膜の厚さの均一性を向上させることができる。洗浄処理で形成した均一な厚さの酸化膜は、その後の熱酸化処理でも均一性が保たれることが想定され、半導体デバイス作成において歩留まり向上につながることが期待される。
【0031】
ここで、上述のように、酸化剤(オゾン水)を供給する位置は、シリコンウェーハWの中心から径方向に5mm以上75mm以下の範囲内でずらした位置であることが好ましい。シリコンウェーハWの中心から径方向に5mm以上ずらすことにより、上記の効果をより確実に得ることができ、一方で、シリコンウェーハWの中心から径方向に75mm以下ずらすことにより、酸化剤(オゾン水)のシリコンウェーハWの中心О付近への供給量が少なくなり過ぎないようにすることができ、これらにより、シリコンウェーハW上の自然酸化膜の厚さの均一性をより確実に向上させることができるからである。同様の理由により、酸化剤(オゾン水)を供給する位置は、シリコンウェーハWの中心Oから径方向に15mm以上20mm以下の範囲内でずらした位置であることがより好ましい。
【0032】
ここで、酸化剤(オゾン水)を供給する位置、酸化剤(オゾン水)の濃度、エッチング液(フッ化水素の水溶液)の濃度、酸化剤(オゾン水)の流量、エッチング液(フッ化水素の水溶液)の流量、シリコンウェーハWの回転数のうちの少なくともいずれかを、自然酸化膜の厚さの均一性を微調整するためのパラメータとして用いることもできる。
すなわち、例えば、自然酸化膜の均一性の指標として、分光エリプソメーターにより、直径300mmのシリコンウェーハWの中心から29.4mm間隔で自然酸化膜の厚さを測定し、測定された自然酸化膜の厚さを最大値で規格化した際の、シリコンウェーハWの径方向における自然酸化膜の厚さの最大値と最小値との差を用い、当該最大値と最小値との差が0.1以下であることを目標値として設定する。
そして、予め、酸化剤を供給する位置、酸化剤の濃度、エッチング液の濃度、酸化剤の流量、エッチング液の流量、シリコンウェーハの回転数のうちの少なくともいずれかと、自然酸化膜の厚さの均一性(例えば、面内の厚さの変動量のプロファイル)との関係データを得ておく。
現在の上記各洗浄条件と、自然酸化膜の厚さの面内プロファイルとに基づいて、上記目標値を達成するための、シリコンウェーハ面内の所定の領域(位置)の厚さの変動量(増加量や減少量)の目標値を定める。
上記関係データに基づいて、シリコンウェーハ面内の所定の領域の厚さの変動量の目標値を達成するのに適した上記各洗浄条件の補正値を求める。
そして、上記各洗浄条件の少なくともいずれかを求めた補正値の分だけ補正する調整を行った上で、次回以降の洗浄を行うことにより、シリコンウェーハ上の自然酸化膜の均一性をさらに向上させ得る。
【0033】
上記の微調整の変形例として、人工知能を用いた手法で上記の微調整を行うこともできる。すなわち、コンピュータの機械学習部(プロセッサ)により、面内の所定の領域(位置)の自然酸化膜の厚さの変動量を説明変数(入力)とし、上記各洗浄条件の少なくともいずれかの補正値を目的変数(出力)とした人工知能モデルを作成する(機械学習に必要な十分な学習データを予め用意する)。そして、作成した人工知能モデルにおいて、(上記シリコンウェーハWの径方向における自然酸化膜の厚さの最大値と最小値との差が例えば0.1以下であるという目標値に対応した、)面内の所定の領域(位置)の自然酸化膜の厚さの変動量が入力されると、上記各洗浄条件の少なくともいずれかの補正値が、機械学習部により出力される。その出力である補正値を用いて、上記各洗浄条件の少なくともいずれかを求めた補正値の分だけ補正する調整を行った上で、次回以降の洗浄を行う。なお、機械学習のアルゴリズムは、ニューラルネットワーク等の任意の既知のものを用いることができる。
【0034】
図2に示す例では、シリコンウェーハの主面に垂直な方向を上下方向としたとき、供給管1、2は、上方から下方に向かって(シリコンウェーハに近い側に向かって)、シリコンウェーハの径方向の縁側から中心に向かって傾斜している。供給管1の上下方向に対する傾斜角度θ1は、特には限定されないが、1~5°とすることができる。供給管2の上下方向に対する傾斜角度θ2は、特には限定されないが、1~5°とすることができる。これらの供給管1、2は、必ずしも、上下方向に対して傾斜している必要はなく、上下方向に(傾斜せずに)延在していても良い。また、上下方向に傾斜する場合においても、供給管1、2は、上方から下方に向かって(シリコンウェーハに近い側に向かって)、シリコンウェーハの径方向内側から外側に向かって傾斜していても良い。
【0035】
<シリコンウェーハの製造方法>
本発明の一実施形態にかかるシリコンウェーハの製造方法は、上記の実施形態にかかるシリコンウェーハの洗浄方法を行うこと含むものである。その他の工程は、既知の通り、インゴット引き上げ工程、スライス工程、研磨工程等を含むことができる。本実施形態のシリコンウェーハの製造方法によれば、シリコンウェーハW上の自然酸化膜の厚さの均一性を向上させることができる。
【0036】
<シリコンウェーハ>
本発明の一実施形態にかかるシリコンウェーハは、上記の実施形態にかかるシリコンウェーハの洗浄方法を行った後のものであり、厚さが2nm以下の自然酸化膜を形成したシリコンウェーハであって、分光エリプソメーターにより、直径300mmのシリコンウェーハの中心から147mmまで29.4mm間隔で自然酸化膜の厚さを測定した場合に、測定された自然酸化膜の厚さを最大値で規格化した際の、シリコンウェーハの径方向における自然酸化膜の厚さの最大値と最小値との差が0.1以下である。後述の実施例でも示されるように、本実施形態の方法によれば、より均一な厚さの自然酸化膜を有するシリコンウェーハを得ることができる。
【実施例0037】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0038】
本実施例ではサンプルとして径300mmのp型エピタキシャルシリコンウェーハ(以下、単にシリコンウェーハと称する)を用いた。まず、オゾン濃度を20ppmとしたオゾン水を用いて、ウェーハの回転数を300rpmとした洗浄処理を15秒間行った。次に、濃度が1%のフッ化水素の水溶液を用いて、シリコンウェーハの回転数を300rpmとした、酸化膜のエッチングを目的とする洗浄処理を4秒間実施した。この際のフッ化水素の水溶液によるエッチング処理は、酸化膜が完全に除去されない条件とした。次に、酸化膜形成のためにオゾン濃度を20ppmとしたオゾン水を用いて、ウェーハの回転数を300rpmとした洗浄処理を30秒間行い、このようにして、オゾン水による洗浄とフッ化水素の水溶液による洗浄とのセットを繰り返し3回行った。その後、最後にDIW(純水)の洗浄を30秒間実施した。いずれの洗浄処理においても、薬液の流量は1.0L/分とした。エピタキシャルシリコンウェーハに対して、供給管は、上方から下方に向かって(シリコンウェーハに近い側に向かって)、シリコンウェーハの径方向の縁側から中心に向かって傾斜するのもとし、上下方向に対する傾斜角度を4°とした。オゾン水による処理時の供給管の位置は、ウェーハの中心の場合、ウェーハの中心から径方向にそれぞれ、15mm、20mmにずらした場合の3条件でテストを実施した。枚葉洗浄処理したウェーハを分光エリプソメーターでウェーハ中心から29.4mm間隔、合計121点の測定点でウェーハ上の自然酸化膜の厚さを計測した。測定箇所を
図3に、ドットで示す。
【0039】
図4は、形成された自然酸化膜の厚さの測定結果を示す図である。
図4に示すように、ウェーハ上には、3~4Åほどの酸化膜が形成されていた。
図5は、
図4における自然酸化膜の厚さを最大値で規格化した結果を示す図である。
図4、
図5の横軸は、ウェーハの中心からの径方向距離で表される測定箇所(mm)、及び、供給管のウェーハ中心からの径方向距離(mm)である。
図5の縦軸は、自然酸化膜の厚さを最大値で規格化した値を示している。自然酸化膜の厚さの面内分布の標準偏差が低いほど面内分布の均一性が高いといえる。このことから、オゾン水の供給管の位置がウェーハ中心位置である場合よりも、オゾン水の供給管の位置をウェーハの径方向にずらした場合の方が、シリコンウェーハ面内の自然酸化膜の厚さの均一性が高くなったことがわかる。
【0040】
図5に関して、ウェーハの径方向の酸化膜の厚さの標準偏差と、最大値と最小値との差との関係を以下の表1に示す。表1から、ウェーハの径方向に関し、オゾン水の供給管の位置をウェーハの径方向にずらすことで標準偏差及び最大値と最小値との差の値が小さくなっていること、すなわち、シリコンウェーハ面内での酸化膜の厚さの均一性が高くなったことがわかる。また、ウェーハの周方向に関して中心からの距離が15mmの場合は、ウェーハの周方向に関して中心からの距離が20mmの場合と比較して同程度である。
【0041】
【0042】
実施形態の説明で述べたように、ウェーハ面内での自然酸化膜の厚さの最大値と最小値との差の値を指標とすることにより、シリコンウェーハの洗浄条件を調整することもできる。例えば、或る洗浄条件で洗浄したシリコンェーハの自然酸化膜の厚さの最大値と最小値との差の値が0.1以上であった場合、自然酸化膜の面内分布を確認し、シリコンウェーハのR/2付近(直径をRとしている)や外周部において自然酸化膜の厚さが厚かった場合、調整する洗浄条件として、例えば、最終のオゾン水処理時におけるシリコンウェーハの回転数を下げていくことで自然酸化膜の厚さの均一性を改善することができると考えられる。
【0043】
次に、供給する薬液による、供給位置をウェーハ中心からずらすことの効果の違いについて検証した。
図6は、薬液の種類別による自然酸化膜の厚さの均一性を比較した結果を示す図である。従来例は、オゾン水、フッ化水素の水溶液、純水のいずれもウェーハ中心から供給した場合の結果であり、発明例はオゾン水をウェーハ中心から径方向に20mmずらし、フッ化水素の水溶液及び純水は、ウェーハ中心から供給した場合の結果であり、比較例はフッ化水素の水溶液をウェーハ中心から20mmずらし、オゾン水及び純水はウェーハ中心から供給した場合の結果である。これらを比較すると、発明例の自然酸化膜の厚さの均一性は、従来例及び比較例対比で良好であったことがわかる。すなわち、オゾン水の供給位置をシリコンウェーハの中心から径方向にずらした場合に良好な結果が得られた。詳細なメカニズムは不明であるものの、本発明者らは、オゾン水等の薬液を吐出した際に起こる跳水による液膜の変化が薬液の反応速度のウェーハ径方向のバラつきに影響すると考えている。また、本発明者らは、オゾン水とフッ化水素の水溶液との処理で均一に自然酸化膜の除去や形成が行われているのではなく、2つの薬液のバランスで酸化膜の均一性が確保されていると考えている。
【0044】
次に、オゾン水の供給位置をウェーハ中心から15mmに固定した際の、最終のオゾン水供給時のシリコンウェーハの回転数を変化させる検証も実施した。回転数については100rpm、150rpm、200rpm、300rpmとした。
図7は、最終のオゾン水による処理時のシリコンウェーハの回転数を変化させた際の自然酸化膜の厚さ分布を示す図である。最終のオゾン水の供給時の回転数を下げることにより、さらに良好な自然酸化膜の厚さの面内分布を得ることができたことがわかる。
【0045】
図8は、
図7における自然酸化膜の厚さを最大値で規格化した結果を示す図である。また、
図8に関してウェーハ径方向の自然酸化膜の厚さの標準偏差と最大値と最小値との差の値との関係を以下の表2に示す。表2から、最終のオゾン水供給時のシリコンウェーハの回転数を基準値(POR:Point of Reference)から下げることで標準偏差及び最大値と最小値との差の値が、先の発明例と比べてさらに小さくなっているので、シリコンウェーハ面内での自然酸化膜の厚さの均一性が非常に高くなっているといえる。これは最終のオゾン水処理におけるシリコンウェーハの回転数を下げることで遠心力が小さくなり、これにより外周付近での酸化反応が増え、外周が持ち上がることで面内均一性がさらに良好になったものと考えられる。
【0046】
分光エリプソメーターにより、直径300mmの前記シリコンウェーハの中心から29.4mm間隔で自然酸化膜の厚さを測定し、測定された前記自然酸化膜の厚さを最大値で規格化した際の、前記シリコンウェーハの径方向における前記自然酸化膜の厚さの最大値と最小値との差が0.1以下となるように、前記酸化剤を供給する位置、前記酸化剤の濃度、前記エッチング液の濃度、前記酸化剤の流量、前記エッチング液の流量、前記シリコンウェーハの回転数のうちの少なくともいずれかを調整する工程を含む、請求項1又は2に記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
厚さが2nm以下の自然酸化膜を形成したシリコンウェーハであって、分光エリプソメーターにより、直径300mmの前記シリコンウェーハの中心から147mmまで29.4mm間隔で自然酸化膜の厚さを測定した場合に、測定された前記自然酸化膜の厚さを最大値で規格化した際の、前記シリコンウェーハの径方向における前記自然酸化膜の厚さの最大値と最小値との差が0.1以下であることを特徴とする、シリコンウェーハ。