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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071920
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 147/04 20060101AFI20240520BHJP
   C10M 149/02 20060101ALI20240520BHJP
   C10M 153/02 20060101ALI20240520BHJP
   C10M 155/02 20060101ALI20240520BHJP
   C10M 155/04 20060101ALI20240520BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20240520BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20240520BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20240520BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20240520BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20240520BHJP
   C10N 40/12 20060101ALN20240520BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20240520BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20240520BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20240520BHJP
【FI】
C10M147/04
C10M149/02
C10M153/02
C10M155/02
C10M155/04
C10N30:00 A
C10N30:06
C10N40:02
C10N40:04
C10N40:08
C10N40:12
C10N40:00 A
C10N40:30
C10N40:25
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182435
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】甲嶋 宏明
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 頼由
(72)【発明者】
【氏名】澤田 英夫
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104CD04C
4H104CE01C
4H104CH01C
4H104CJ10C
4H104CJ15C
4H104LA03
4H104LA11
4H104PA01
4H104PA02
4H104PA05
4H104PA07
4H104PA09
4H104PA20
4H104PA42
4H104PA44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】摩擦低減効果および耐摩耗性を改善した潤滑油組成物が求められている。
【解決手段】基油と、下記式(1)で表されるフッ素含有化合物とを含む、潤滑油組成物。

(式中、Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基またはオキシフルオロアルキレン基を表し、Rは、複数有する場合には、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表し、少なくとも一つのRは、炭素数6~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基であり、Xは、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子またはホウ素原子であり、mは、1~100の整数であり、nは、Xの価数である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油と、下記式(1)で表されるフッ素含有化合物とを含む、潤滑油組成物。
【化1】
(式中、
Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基またはオキシフルオロアルキレン基を表し、
Rは、複数有する場合には、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表し、少なくとも一つのRは、炭素数6~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基であり、
Xは、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子またはホウ素原子であり、
mは、1~100の整数であり、
nは、Xの価数である。)
【請求項2】
式(1)で表されるフッ素含有化合物の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、0.01~5.0質量%である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
下記式(1a)で表される化合物と、下記式(1b)で表される化合物とを重合反応させる工程と、
前記重合反応により得られた化合物と、炭素数6~30の直鎖または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を含むアルコールとを反応させる工程とを含む、下記式(1)で表されるフッ素含有化合物の製造方法。
【化2】
(式中、Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基またはオキシフルオロアルキレン基を表す。)
【化3】
(式中、
Rは、複数有する場合には、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~30の直鎖または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を表し、
Xは、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子またはホウ素原子であり、
nは、Xの価数である。)
【化4】
(式中、
Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基またはオキシフルオロアルキレン基を表し、
Rは、複数有する場合には、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表し、少なくとも一つのRは、炭素数6~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基であり、
Xは、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子またはホウ素原子であり、
mは、1~100の整数であり、
nは、Xの価数である。)
【請求項4】
下記式(1)で表されるフッ素含有化合物。
【化5】
(式中、
Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基またはオキシフルオロアルキレン基を表し、
Rは、複数有する場合には、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表し、少なくとも一つのRは、炭素数6~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基であり、
Xは、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子またはホウ素原子であり、
mは、1~100の整数であり、
nは、Xの価数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物および潤滑油用添加剤として好適なフッ素含有化合物、並びにフッ素含有化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油組成物には、省燃費性の観点から摩擦低減が、装置寿命の観点から耐摩耗性等が求められる。潤滑油組成物にそのような特性を付与するため、種々の潤滑油用添加剤が用いられており、そのような添加剤として、例えば、有機モリブデン系化合物等の摩擦低減剤や無灰系の摩擦調整剤、金属系またはリン系の耐摩耗剤等が挙げられる(例えば、特許文献1および2を参照)。
しかしながら、有機モリブデン系化合物等の摩擦低減剤は、新油時の摩擦低減効果は極めて優れるものの、易分解性のため持続性に劣る傾向があり、無灰系の摩擦調整剤は、高温での摩擦低減効果が十分なものではなかった。また、金属系またはリン系の耐摩耗剤は、例えば、排ガス浄化装置のフィルターの目詰まりや触媒被毒の原因となり得るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-109930号
【特許文献2】特開2020-090557号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況から、本発明者らは、潤滑油用の添加剤として新たな素材の探索を続けた結果、フッ素含有化合物が持つ様々な特性に着目し、これを潤滑油用添加剤として用いることを検討した。ところが、フッ素含有化合物は、潤滑油への溶解性が不良であることが本発明者らの検討により判明した。
上記の状況から、フッ素含有化合物が良好に溶解した潤滑油組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は下記態様[1]~[4]を提供する。
[1]
基油と、下記式(1)で表されるフッ素含有化合物とを含む、潤滑油組成物。
【化1】
(式中、
Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基またはオキシフルオロアルキレン基を表し、
Rは、複数有する場合には、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表し、少なくとも一つのRは、炭素数6~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基であり、
Xは、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子またはホウ素原子であり、
mは、1~100の整数であり、
nは、Xの価数である。)
[2]
式(1)で表されるフッ素含有化合物の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、0.01~5.0質量%である、[1]に記載の潤滑油組成物。
[3]
下記式(1a)で表される化合物と、下記式(1b)で表される化合物とを重合反応させる工程と、
前記重合反応により得られた化合物と、炭素数6~30の直鎖または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を含むアルコールとを反応させる工程とを含む、下記式(1)で表されるフッ素含有化合物の製造方法。
【化2】
(式中、Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基またはオキシフルオロアルキレン基を表す。)
【化3】
(式中、
Rは、複数有する場合には、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~30の直鎖または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を表し、
Xは、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子またはホウ素原子であり、
nは、Xの価数である。)
【化4】
(式中、
Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基またはオキシフルオロアルキレン基を表し、
Rは、複数有する場合には、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表し、少なくとも一つのRは、炭素数6~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基であり、
Xは、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子またはホウ素原子であり、
mは、1~100の整数であり、
nは、Xの価数である。)
[4]
下記式(1)で表されるフッ素含有化合物。
【化5】
(式中、
Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基またはオキシフルオロアルキレン基を表し、
Rは、複数有する場合には、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表し、少なくとも一つのRは、炭素数6~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基であり、
Xは、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子またはホウ素原子であり、
mは、1~100の整数であり、
nは、Xの価数である。)
【発明の効果】
【0006】
本発明の好適な一態様によれば、フッ素含有化合物が良好に溶解した潤滑油組成物を提供することができる。また、本発明の一態様によれば、優れた摩擦低減効果、耐摩耗性を有する潤滑油組成物を提供することができる。
また、本発明の一態様によれば、潤滑油用添加剤として好適に使用し得るフッ素含有化合物、および当該フッ素含有化合物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に記載された数値範囲については、上限値及び下限値を任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「好ましくは30~100、より好ましくは40~80」と記載されている場合、「30~80」との範囲や「40~100」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。また、例えば、数値範囲として「好ましくは30以上、より好ましくは40以上であり、また、好ましくは100以下、より好ましくは80以下である」と記載されている場合、「30~80」との範囲や「40~100」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。
加えて、本明細書に記載された数値範囲として、例えば「60~100」との記載は、「60以上、100以下」という範囲であることを意味する。
さらに、本明細書に記載された上限値及び下限値の規定において、それぞれの選択肢の中から適宜選択して、任意に組み合わせて、下限値~上限値の数値範囲を規定することができる。
加えて、本明細書に記載された好ましい態様として記載の各種要件は複数組み合わせることができる。
【0008】
〔潤滑油組成物の構成〕
本発明の一態様の潤滑油組成物は、基油と、上述の式(1)で表されるフッ素含有化合物(本明細書中、単に「フッ素含有化合物」ともいう)とを含有する。以下、潤滑油組成物の具体的な構成について説明する。
【0009】
<基油>
基油は、一般に潤滑油用の基油として用いられるものであればよく、100℃における動粘度が1~30mm/sであるものが好ましく、2~20mm/sであるものがより好ましく、4~15mm/sであるものが更に好ましい。 なお、基油の動粘度は、JIS K2283:2000に準じて測定したものである。
上記基油は、鉱油であってもよく、合成油であってもよく、鉱油と合成油との混合油を用いてもよい。
【0010】
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、ナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;これらの常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、及び水素化精製等の精製処理を1つ以上施して得られる精製油;等が挙げられる。
本発明の一態様の潤滑油組成物は、基油として、100℃動粘度が8.0mm/s以下の鉱油を含有してもよく、100℃動粘度が8.0mm/s超の鉱油を含有してもよい。
【0011】
合成油としては、例えば、α-オレフィンやその単独重合体、又はα-オレフィン共重合体(例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体等の炭素数8~14のα-オレフィン共重合体)等のポリα-オレフィン;イソパラフィン;ポリアルキレングリコール;ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステル等のエステル系油;ポリフェニルエーテル等のエーテル系油;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス(Gas To Liquids WAX))を異性化することで得られる合成油(GTL);石炭からフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(CTLワックス(Coal To Liquids WAX))を異性化することで得られる合成油(CTL);バイオマスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(BTLワックス(Biomass To Liquids WAX))を異性化することで得られる合成油(BTL)等が挙げられる。
【0012】
また、本発明の一態様で用いる基油は、API(米国石油協会)基油カテゴリーのグループ2及びグループ3に分類される鉱油、並びに、合成油から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。本発明の一態様において、これらの基油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、基油の含有量は、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、通常55質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、また、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。
【0014】
<フッ素含有化合物>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、下記式(1):
【化6】
(式中、
Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基またはオキシフルオロアルキレン基を表し、
Rは、複数のRを有する場合には、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表し、少なくとも一つのRは、炭素数6~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基であり、
Xは、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子またはホウ素原子であり、
mは、1~100の整数であり、
nは、Xの価数である。)で表されるフッ素含有化合物を含有する。
【0015】
一般的に、フッ素含有化合物は撥水性および撥油性を有することから、潤滑油組成物へ適用しても良好な溶解性が得られず、フッ素含有化合物の機能を十分に発揮することができなかった。しかし、上記式(1)で表されるフッ素含有化合物は、少なくとも一つのRが炭素数6~30のアルキル基又はアルケニル基であるため、極性がより低下し、油溶性が向上されたものである。このようなフッ素含有化合物は、基油との溶解性が良好であるため、得られる潤滑油組成物は、当該フッ素含有化合物が有する特性を十分に発揮することができる。つまり、フッ素含有化合物の金属表面への被膜形成により、摩擦低減効果、耐摩耗性が向上した潤滑油組成物となり得る。
【0016】
式(1)中のRfは、アルキル基の水素原子のすべてをフッ素原子に置き換えたパーフルオロアルキル基であってもよく、アルキル基の水素原子を部分的にフッ素原子に置き換えたポリフルオロアルキル基であってもよい。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等のプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。なお、上述の基には、構造異性体も含まれる。
【0017】
また、式(1)中のRfは、オキシアルキレン基の水素原子のすべてをフッ素原子に置き換えたパーフルオロオキシアルキレン基であってもよく、オキシアルキレン基の水素原子を部分的にフッ素原子に置き換えたポリフルオロオキシアルキレン基であってもよい。
オキシアルキレン基としては、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシペンチレン基、オキシへキシレン基、オキシヘプチレン基、オキシオクチレン基等が挙げられる。なお、上述の基には、構造異性体も含まれる。
【0018】
式(1)中のRは、水素原子または炭素数1~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表し、少なくとも一つのRは、炭素数6~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基である。
Rとして選択し得る、直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基の炭素数は1~30であるが、基油への溶解性をより向上させる観点から、当該アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上、より更に好ましくは5以上、特に好ましくは6以上である。また、当該アルキル基又はアルケニル基の炭素数の上限は特に限定されないが、フッ素含有化合物合成時の精製のしやすさの観点から、好ましくは28以下、より好ましくは26以下、更に好ましくは24以下である。
また、Rが複数存在する場合、複数のRは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよいが、少なくとも一つのRは、炭素数6~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基である。
【0019】
前記少なくとも一つのRは、炭素数6~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基であるが、基油として鉱油を用いる場合、基油への溶解性をより向上させる観点から、当該アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、また、フッ素含有化合物合成時の精製のしやすさの観点から、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下である。
また、基油として100℃動粘度が8.0mm/s以下の鉱油を用いる場合、基油への溶解性をより向上させる観点から、当該アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、また、フッ素含有化合物合成時の精製のしやすさの観点から、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下である。
また、基油として100℃動粘度が8.0mm/s超の鉱油を用いる場合、基油への溶解性をより向上させる観点から、当該アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、好ましくは7以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、また、フッ素含有化合物合成時の精製のしやすさの観点から、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下である。
また、基油として合成油(例えば、ポリα-オレフィン等)を用いる場合、基油への溶解性をより向上させる観点から、当該アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、好ましくは7以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、また、フッ素含有化合物合成時の精製のしやすさの観点から、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下である。
なお、上記のいずれの場合も、炭素数14~16の直鎖のアルキル基を含まない態様としてもよい。すなわち、本発明の一態様において、前記少なくとも一つのRは、炭素数6~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基(但し、炭素数14~16の直鎖のアルキル基は除く)である。
【0020】
式(1)中のRとして選択し得る、直鎖または分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等のプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等が挙げられる。なお、上述の基には、構造異性体も含まれる。
【0021】
式(1)中のRとして選択し得る、直鎖または分岐状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基(オレイル基)、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基等が挙げられる。なお、上述の基には、構造異性体も含まれる。
【0022】
式(1)中のXは、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子またはホウ素原子であるが、基油への溶解性をより向上させる観点から、炭素原子またはケイ素原子であることが好ましく、上記観点に加え、金属表面への吸着性をより高める観点から、ケイ素原子であることがより好ましい。
【0023】
式(1)中のmは、1~100の整数であるが、好ましくは1~50、より好ましくは1~10、更に好ましくは2~5の整数である。また、式(1)中のnは、Xの価数であるが、具体的には、Xが炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子またはホウ素原子である場合、nは3または4であり、Xが窒素原子、リン原子またはホウ素原子である場合、nは3であり、Xが炭素原子またはケイ素原子である場合、nは4である。
【0024】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、上述のフッ素含有化合物の含有量は、摩擦低減効果および耐摩耗性をより向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、より更に好ましくは0.08質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上であり、上限は特に限定されないが、潤滑油組成物の他の成分との配合バランスの観点から、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下、より更に好ましくは2.5質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以下である。
【0025】
<汎用添加剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、上述したフッ素含有化合物には該当せず、一般的な潤滑油組成物に配合される、汎用添加剤(以下、「汎用添加剤」ともいう)を配合されてなるものであってもよい。
このような汎用添加剤としては、例えば、酸化防止剤、無灰系分散剤、金属系清浄剤、粘度指数向上剤、流動性向上剤、極圧剤、防錆剤、消泡剤等が挙げられる。また、本発明のフッ素含有化合物には該当しない摩擦調整剤や耐摩耗剤を用いてもよい。これらの汎用添加剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物は、これらの汎用添加剤を複数配合してなるパッケージ添加剤を用いてもよい。
【0026】
これらの汎用添加剤のそれぞれの配合量は、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.001~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%である。
また、汎用添加剤の合計配合量は、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~40質量%、より好ましくは0.1~35質量%である。
【0027】
〔潤滑油組成物の製造方法〕
本発明の一態様の潤滑油組成物の製造方法としては、特に制限されず、潤滑油組成物に含まれる各成分(基油、フッ素含有化合物、その他の汎用添加剤)を混合して得ることができる。なお、各成分の配合の順序は適宜設定することができる。
【0028】
〔潤滑油組成物の性状〕
本発明の一態様の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、好ましくは1.0mm/s以上、より好ましくは2.0mm/s以上、更に好ましくは4.0mm/s以上であり、また、好ましくは30mm/s以下、より好ましくは20mm/s以下、更に好ましくは15mm/s以下である。
【0029】
本発明の一態様の潤滑油組成物の40℃における動粘度は、好ましくは150mm/s以下、より好ましくは130mm/s以下、更に好ましくは110mm/s以下である。
【0030】
本発明の一態様の潤滑油組成物の粘度指数としては、好ましくは70以上、より好ましくは80以上、更に好ましくは90以上、より更に好ましくは100以上である。
【0031】
〔潤滑油組成物の用途〕
本発明の一態様の潤滑油組成物は、優れた摩擦低減効果及び耐摩耗性を有している。そのため、本発明の一態様の潤滑油組成物は、各種機械装置の潤滑に好適に使用し得る。例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、その他内燃機関に用いられる内燃機油;ガソリン自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車等の自動車用ギヤ油;一般機械等の工業用ギヤ油等のギヤ油;更には、油圧機械、タービン、圧縮機、工作機械、切削機械、歯車(ギヤ)、流体軸受け、転がり軸受けを備える機械;等にも好適に用いられる。
そのため、本発明は、下記[I]の機械装置、及び、下記[II]の潤滑油組成物の使用方法も提供する。
[I]上述の本発明の一態様の潤滑油組成物を充填してなる、機械装置。
[II]上述の本発明の一態様の潤滑油組成物を機械装置の潤滑に適用する、潤滑油組成物の使用方法。
【0032】
〔フッ素含有化合物〕
本発明は、下記式(1)で表されるフッ素含有化合物も提供する。
式(1):
【化7】
(式中、
Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基またはオキシフルオロアルキレン基を表し、
Rは、複数のRを有する場合には、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表し、少なくとも一つのRは、炭素数6~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基であり、
Xは、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子またはホウ素原子であり、
mは、1~100の整数であり、
nは、Xの価数である。)
【0033】
式(1)で表されるフッ素含有化合物の具体的な態様は、上記〔潤滑油組成物の構成〕の<フッ素含有化合物>で述べたとおりである。
【0034】
〔フッ素含有化合物の製造方法〕
本発明は、上記式(1)で表されるフッ素含有化合物の製造方法も提供する。本発明の一態様の製造方法は、具体的には、以下のとおりである。
下記式(1a)で表される化合物と、下記式(1b)で表される化合物とを重合反応させる工程(1)と、
前記重合反応により得られた化合物と、炭素数6~30の直鎖または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を含むアルコールとを反応させる工程(2)とを含む、下記式(1)で表されるフッ素含有化合物の製造方法。
【化8】
(式中、Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基またはオキシフルオロアルキレン基を表す。)
【化9】
(式中、
Rは、複数のRを有する場合には、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表し、
Xは、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子またはホウ素原子であり、
nは、Xの価数である。)
【化10】
(式中、
Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基またはオキシフルオロアルキレン基を表し、
Rは、複数のRを有する場合には、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基を表し、少なくとも一つのRは、炭素数6~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基であり、
Xは、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子またはホウ素原子であり、
mは、1~100の整数であり、
nは、Xの価数である。)
【0035】
式(1a)中のRfは、上記〔潤滑油組成物の構成〕の<フッ素含有化合物>で述べたものと同じである。
また、式(1b)中のXおよびnも、上記〔潤滑油組成物の構成〕の<フッ素含有化合物>で述べたものと同じである。
式(1b)中のRは、水素原子または炭素数1~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基であるが、好ましくは炭素数1~30の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基であり、より好ましくは炭素数1~15の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基であり、更に好ましくは炭素数1~5の直鎖または分岐状のアルキル基又はアルケニル基であり、特に好ましくは炭素数1のアルキル基(メチル基)である。
また、Rが複数存在する場合、複数のRは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。本発明の好適な一態様は、複数のRのすべてが、炭素数1のアルキル基(メチル基)である。
なお、Rとして選択し得るアルキル基又はアルケニル基としては、上記〔潤滑油組成物の構成〕の<フッ素含有化合物>で述べたものと同様の基が挙げられる。
【0036】
式(1)で表されるフッ素含有化合物の具体的な態様は、上記〔潤滑油組成物の構成〕の<フッ素含有化合物>で述べたとおりである。
【0037】
<工程(1)>
本発明の一態様において、上記式(1a)で表される化合物と、上記式(1b)で表される化合物とを重合反応させる工程は特に制限されず、常法によりこれらの化合物の重合を行ってよい。なお、当該重合後の反応生成物には、フルオロアルキル基を含有する基(Rf)が片末端のみに導入されているオリゴマーが任意の割合で含まれていてもよい。
【0038】
<工程(2)>
本発明の一態様において、上記重合反応により得られた化合物と、炭素数6~30の直鎖または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を含むアルコールとを反応させる。本明細書中、上記重合反応により得られた化合物を「重合反応生成物」とも称する。
【0039】
上記アルコールの炭素数は、得られるフッ素含有化合物の基油への溶解性をより向上させる観点から、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、また、フッ素含有化合物合成時の精製のしやすさの観点から、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下である。
アルキル基としては、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等が挙げられる。なお、上述の基には、構造異性体も含まれる。
アルケニル基としては、例えば、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基(オレイル基)、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基等が挙げられる。なお、上述の基には、構造異性体も含まれる。
【0040】
反応温度は、室温(例えば、約15~約30℃)で行ってもよいが、反応を促進する観点から、好ましくは45~90℃、より好ましくは50~85℃、更に好ましくは60~80℃である。
反応時間は、通常1~24時間、好ましくは4~16時間、より好ましくは8~12時間である。
【0041】
また、上述のアルコールおよび重合反応生成物のモル比(アルコール/重合反応生成物)は、好ましくは1~30、より好ましくは5~25、更に好ましくは10~20である。
【0042】
本発明の一態様において、上述の工程(1)および工程(2)の後に、更に減圧蒸留を行うことで、式(1)で表されるフッ素含有化合物を得ることができる。
【実施例0043】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0044】
製造例1~15
ビス(パーフルオロ-2-n-プロポキシプロピオニル)パーオキシド 55.5g(117mmol) とトリメトキシビニルシラン 34.7g(234mmol) をフレオン113(トリクロロトリフルオロエタン)溶剤500mlに溶解し、窒素雰囲気下、30℃で10時間撹拌した。次いで、反応混合物から溶剤、未反応原料を減圧留去して、目的の重合反応生成物58.5gを得た。得られた重合反応生成物を、下記表1および2に示す条件で所定のアルキルアルコールと反応させ、異なる種類のアルキル基が導入されたフッ素含有化合物を製造した。
【0045】
【表1】
【表2】
【0046】
実施例A-1~A-10、比較例A-1~A-4
上記製造例1~15で製造したフッ素含有化合物および上記製造例に準じて製造したフッ素含有化合物を用いて、以下に示す各基油への溶解性を評価した。なお、実施例A-3は、上述の製造例7に係る化合物を用いた。
具体的には、各基油に、以下に示す異なる種類のアルキル基が導入されたフッ素含有化合物を基油の全量(100質量%)基準で1.0質量%添加し、評価用の試料を調製した。その後、室温(約25℃)で24時間静置し、以下に示す基準に基づき、油中均一分散性を目視により評価した。結果を下記表3および4に示す。
なお、溶解性の評価の指標として、上記フッ素含有化合物をヘキサンに溶解した試料も用意した。
【0047】
<基油>
・150ニュートラル留分の鉱油(150N鉱油) 100℃動粘度:5.368mm/s、粘度指数:105
・500ニュートラル留分の鉱油(500N鉱油) 100℃動粘度:11.01mm/s、粘度指数:105
・ポリα-オレフィン(PAO) 40℃動粘度:17.63mm/s、粘度指数:125
なお、各基油の動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準じて測定及び算出した。
【0048】
<フッ素含有化合物>
実施例A-1~A-10、比較例A-1~A-4のすべてにおいて、式(1)中のRf=パーフルオロ-2-n-プロポキシプロピオニル基、X=ケイ素原子、m=2と3の混合物、n=4であり、複数のRは、いずれも表3および4の「アルキル基の種類」に示す基であり、少なくとも一つ以上のRが表3および4の「アルキル基の種類」に示す基である、フッ素含有化合物を用いた。
【0049】
<評価基準>
A:濁りが全く見られず、透明である。
B:わずかに濁りが見られるものの、透明性が十分に確保されている。
C:濁りが見られ透明性が十分ではない、または、沈降物がみられる。
A*:濁りが全く見られず透明であるが、室温以下で結晶化する。
【0050】
【表3】
【表4】
【0051】
表3および4に示すとおり、比較例A-1~A-4に係るフッ素含有化合物は、150N鉱油、500N鉱油およびPAOのいずれの基油への溶解性も十分ではなかった。一方、実施例A-1~A-10に係るフッ素含有化合物は、いずれの基油にも十分な溶解性を示した。
【0052】
実施例B-1~B-20、比較例B-1~B-2
上記実施例A-1~A-10に準じて、下記表5~7に示すとおり、実施例B-1~B-20および比較例B-1~B-2の試料を用意した。実施例B-1~B-20において、基油は、上記実施例A-1~A-10と同様のポリα-オレフィン(PAO)を用いた。また、実施例B-1~B-20において、フッ素含有化合物は、式(1)中のRf=パーフルオロ-2-n-プロポキシプロピオニル基、X=ケイ素原子、m=2と3の混合物、n=4であり、複数のRは、いずれも表5および6の「アルキル基の種類」に示す基であり、少なくとも一つ以上のRが表5および6の「アルキル基の種類」に示す基である、フッ素含有化合物を用いた。
なお、比較例B-1は、基油(PAO)のみを含有し、式(1)で表されるフッ素含有化合物を含有しない試料であり、比較例B-2は、基油(PAO)に、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で1.0質量%のドデシルアルコールを添加した、式(1)で表されるフッ素含有化合物を含有しない試料である。また、表5~7において、フッ素含有化合物の含有量は、潤滑油組成物の全量(100質量%)を基準とした量である。
これらの実施例および比較例を用いて、以下の方法により、摩擦試験および耐摩耗試験を行った。
【0053】
<摩擦試験>
ボール・オン・ディスク型の往復動摩擦試験機(バウデン・レーベン式)を用い、荷重7.5N、温度80℃、すべり速度15mm/s、ストローク15mmの条件で試験を行い、摺動回数を1200往復として、摺動回数1200回目の摩擦係数と摺動痕幅を測定した。ボールは、SUJ2(φ=10mm、G20)を用い、ディスクは、SUJ2(Rz≦1.0μm)を用いた。摩擦係数、摺動痕幅が小さいほど、摩擦低減の特性に優れているといえる。評価としては、摺動痕幅140μm以下を合格とした。
【0054】
<耐摩耗試験>
シェル式四球試験機を用い、荷重400N、温度100℃、速度1200rpm、評価時間60分の条件で試験を行い、試験後の摩耗幅を測定した。ボールは、SUJ2(φ=0.5インチ、G20)を用いた。摩耗幅が小さいほど、耐摩耗性に優れているといえる。評価としては、摩耗幅1.0mm以下を合格とした。
【0055】
【表5】
【表6】
【表7】
【0056】
表5~7から、特定のアルキル基を有するフッ素含有化合物を配合することで、優れた摩擦低減効果および耐摩耗性を有する潤滑油組成物が得られることが分かった。