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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071935
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】積層ウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240520BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/205
H01L27/12 B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182456
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 雄登
(72)【発明者】
【氏名】中村 元宜
【テーマコード(参考)】
5F045
【Fターム(参考)】
5F045AA03
5F045AB03
5F045AC03
5F045HA16
(57)【要約】
【課題】積層ウェーハの反りを低減することができる積層ウェーハの製造方法を提供すること。
【解決手段】積層ウェーハの製造方法は、単結晶シリコンウェーハに多結晶シリコン膜が形成された積層ウェーハの製造方法であって、水素ガスおよび原料ソースガスの混合雰囲気下で、前記単結晶シリコンウェーハの表面に形成された酸化膜上に多結晶シリコン膜を形成し、水素ガス雰囲気下で、前記多結晶シリコン膜が形成された前記単結晶シリコンウェーハに対して、1000℃以上1300℃以下かつ10秒以上180秒以下の熱処理を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコンウェーハに多結晶シリコン膜が形成された積層ウェーハの製造方法であって、
水素ガスおよび原料ソースガスの混合雰囲気下で、前記単結晶シリコンウェーハの表面に形成された酸化膜上に多結晶シリコン膜を形成し、
水素ガス雰囲気下で、前記多結晶シリコン膜が形成された前記単結晶シリコンウェーハに対して、1000℃以上1300℃以下かつ10秒以上180秒以下の熱処理を行う、積層ウェーハの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の積層ウェーハの製造方法において、
同一の気相成長装置内で、前記多結晶シリコン膜を形成した後、前記熱処理を行う、積層ウェーハの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の積層ウェーハの製造方法において、
前記原料ソースガスは、トリクロロシランガスであり、
前記混合雰囲気における前記水素ガスに対する前記トリクロロシランガスの含有率は、3%以上20%以下である、積層ウェーハの製造方法。
【請求項4】
単結晶シリコンウェーハの表面に多結晶シリコン膜が形成された積層ウェーハの製造方法であって、
水素ガスに対するトリクロロシランガスの含有率が3%以上20%以下の混合雰囲気下で、前記単結晶シリコンウェーハの表面に形成された酸化膜上に多結晶シリコン膜を形成する、積層ウェーハの製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の積層ウェーハの製造方法において、
前記多結晶シリコン膜を形成するに際し、
890℃以上900℃以下の温度で前記酸化膜上に第1多結晶シリコン膜を成長させた後、1000℃以上1075℃以下の温度で前記第1多結晶シリコン膜上に第2多結晶シリコン膜を成長させる、積層ウェーハの製造方法。
【請求項6】
直径300mmの単結晶シリコンウェーハに厚さが0.3μm以上3.0μm以下の多結晶シリコン膜が形成された積層ウェーハであって、
Warp-bf値が40μm以下である、積層ウェーハ。
【請求項7】
請求項6に記載の積層ウェーハにおいて、
前記多結晶シリコン膜の表面粗さRMSが0.1nm以上0.15nm以下である、積層ウェーハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ウェーハの製造方法および積層ウェーハに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単結晶シリコンウェーハの表面に、高周波数での動作中に発生したキャリアをトラップして消滅させるための多結晶シリコン膜を、キャリアトラップ層として形成することが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-211061号公報
【特許文献2】特開2021-190660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2には、多結晶シリコン膜の成膜時の成膜温度を2段階にすることにより、単結晶シリコンウェーハの反りを低減できることが開示されている。
しかしながら、特許文献1,2の技術は反り低減技術として有効ではあるものの、さらなる反り低減が求められている状況下にあり、例えば直径300mmの単結晶シリコンウェーハでは反り量も著しく増大するため、さらなる反り改善技術が求められている。
【0005】
本発明は、積層ウェーハの反りを低減することができる積層ウェーハの製造方法、および反りが低減された積層ウェーハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層ウェーハの製造方法は、単結晶シリコンウェーハに多結晶シリコン膜が形成された積層ウェーハの製造方法であって、水素ガスおよび原料ソースガスの混合雰囲気下で、前記単結晶シリコンウェーハの表面に形成された酸化膜上に多結晶シリコン膜を形成し、水素ガス雰囲気下で、前記多結晶シリコン膜が形成された前記単結晶シリコンウェーハに対して、1000℃以上1300℃以下かつ10秒以上180秒以下の熱処理を行う。
【0007】
本発明の積層ウェーハの製造方法において、同一の気相成長装置内で、前記多結晶シリコン膜を形成した後、前記熱処理を行う、ことが好ましい。
【0008】
本発明の記載の積層ウェーハの製造方法において、前記原料ソースガスは、トリクロロシランガスであり、前記混合雰囲気における前記水素ガスに対する前記トリクロロシランガスの含有率は、3%以上20%以下である、ことが好ましい。
【0009】
本発明の積層ウェーハの製造方法は、単結晶シリコンウェーハの表面に多結晶シリコン膜が形成された積層ウェーハの製造方法であって、水素ガスに対するトリクロロシランガスの含有率が3%以上20%以下の混合雰囲気下で、前記単結晶シリコンウェーハの表面に形成された酸化膜上に多結晶シリコン膜を形成する。
【0010】
本発明の積層ウェーハの製造方法において、前記多結晶シリコン膜を形成するに際し、890℃以上900℃以下の温度で前記酸化膜上に第1多結晶シリコン膜を成長させた後、1000℃以上1075℃以下の温度で前記第1多結晶シリコン膜上に第2多結晶シリコン膜を成長させる、ことが好ましい。
【0011】
本発明の積層ウェーハは、直径300mmの単結晶シリコンウェーハに厚さが0.3μm以上3.0μm以下の多結晶シリコン膜が形成された積層ウェーハであって、Warp-bf値が40μm以下である。
【0012】
本発明の積層ウェーハにおいて、前記多結晶シリコン膜の表面粗さRMSが0.1nm以上0.15nm以下である、ことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る貼り合わせウェーハの製造方法を示すフローチャートである。
図2】第1実施形態に係る貼り合わせウェーハの製造方法を示す工程図である。
図3】第2実施形態に係る貼り合わせウェーハの製造方法を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係る貼り合わせウェーハの製造方法を示す工程図である。
図5】実施例に係る第1,2TCS含有率と熱処理時間とWarp-bf値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、本発明の積層ウェーハを備える貼り合わせ用ウェーハの製造方法について説明する。
【0015】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る貼り合わせウェーハの製造方法を示すフローチャートである。図2は、第1実施形態に係る貼り合わせウェーハの製造方法を示す工程図である。
【0016】
図1および図2に示すように、第1実施形態に係る貼り合わせウェーハ30の製造方法は、活性層用基板10を製造する工程S11~S14と、積層ウェーハ20を製造する工程S21~S26と、活性層用基板10と積層ウェーハ20とを貼り合わせて貼り合わせウェーハ30を製造する工程S31~S33と、を備える。
【0017】
活性層用基板を製造する工程は、活性層用基板本体準備工程S11と、絶縁膜形成工程S12と、イオン注入層形成工程S13と、貼り合わせ前洗浄工程S14と、を備える。
【0018】
活性層用基板本体準備工程S11では、単結晶シリコンウェーハである活性層用基板本体11を準備する。
絶縁膜形成工程S12では、例えば熱酸化又はCVDにより、活性層用基板本体11全体を覆うように、絶縁膜12(酸化膜)形成する。
イオン注入層形成工程S13では、絶縁膜12の上からイオン注入機により、水素イオンまたは希ガスイオンを注入して、活性層用基板本体11内にイオン注入層13を形成する。
貼り合わせ前洗浄工程S14では、活性層用基板本体11の貼り合わせ面のパーティクルを除去するために、貼り合わせ前洗浄を行う。
以上の工程により、貼り合わせウェーハ用の活性層用基板10が製造される。
【0019】
積層ウェーハ20を製造する工程は、単結晶シリコンウェーハ準備工程S21と、酸化膜形成工程S22と、多結晶シリコン膜形成工程S23と、熱処理工程S24と、研磨工程S25と、貼り合わせ前洗浄工程S26と、を備える。
【0020】
単結晶シリコンウェーハ準備工程S21では、単結晶シリコンウェーハ21を準備する。単結晶シリコンウェーハ21の直径は、特に限定されないが、例えば200mm、300mmまたは450mmを例示することができる。単結晶シリコンウェーハ21の抵抗率は、100Ω・cm以上50000Ω・cm以下であることが好ましい。単結晶シリコンウェーハ21としては、例えばチョクラルスキー法(CZ法)または浮遊帯域溶融法(FZ法)により育成された単結晶シリコンインゴットを、ワイヤーソーなどでスライスしたものを使用することができる。
【0021】
酸化膜形成工程S22では、単結晶シリコンウェーハ21の表面に、酸化膜22(ベース酸化膜)を形成する。酸化膜22の厚さは、例えば0.3nm以上10nm以下であることが好ましい。酸化膜22を薄くすることにより、単結晶シリコンウェーハ21と後述する多結晶シリコン膜23との間に酸化膜22が介在することによる、RFデバイスの特性への影響を少なくすることができる。
酸化膜22は、アルカリ洗浄(SC1洗浄)または酸洗浄(SC洗浄)などのウェット洗浄により形成することができる。酸化膜22の形成方法としては、ウェット洗浄に限定されず、酸化性雰囲気下での熱酸化または急速加熱・急速冷却装置を用いた酸化熱処理などを適用することができる。
【0022】
多結晶シリコン膜形成工程S23では、水素ガス(キャリアガス)および原料ソースガスの混合雰囲気の気相成長装置1内で、単結晶シリコンウェーハ21の表面に形成された酸化膜22上に多結晶シリコン膜23を形成する。多結晶シリコン膜23の厚さは、0.3μm超3.0μm以下であることが好ましい。
多結晶シリコン膜形成工程S23は、酸化膜22上に第1多結晶シリコン膜231を成長させる第1成長工程S231と、第1多結晶シリコン膜231上に第2多結晶シリコン膜232を成長させる第2成長工程S232と、を備える。
【0023】
第1成長工程S231では、水素ガスおよび原料ソースガスの混合雰囲気かつ第1成長温度の気相成長装置1内で、酸化膜22上に第1多結晶シリコン膜231を成長させる。
第1成長温度は、890℃以上900℃以下であることが好ましい。
第1成長工程S231および第2成長工程S232で用いられる原料ソースガスとしては、トリクロロシランガス(SiHCl)またはジクロロシラン(SiHCl)ガスなどを用いることができるが、特にトリクロロシランガスであることが好ましい。
原料ソースガスとしてトリクロロシランガスを用いる場合、混合雰囲気における水素ガスに対するトリクロロシランガスの含有率(以下、「第1TCS含有率」という場合がある)は、3%以上20%以下であることが好ましく、5%以上15%以下であることがより好ましい。
【0024】
第1成長工程S231後に行われる第2成長工程S232では、水素ガスおよび原料ソースガスの混合雰囲気かつ第2成長温度の気相成長装置1内で、第1多結晶シリコン膜231上に第2多結晶シリコン膜232を成長させる。
第2多結晶シリコン膜232は、第1多結晶シリコン膜231よりも厚いことが好ましい。第2成長温度は、1000℃以上1075℃以下であることが好ましく、1050℃以上1075℃以下であることがより好ましい。
原料ソースガスは、トリクロロシランガスであることが好ましい。
原料ソースガスとしてトリクロロシランガスを用いる場合、混合雰囲気における水素ガスに対するトリクロロシランガスの含有率(以下、「第2TCS含有率」という場合がある)は、3%以上20%以下であることが好ましく、5%以上15%以下であることがより好ましい。第2TCS含有率は、第1TCS含有率と同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0025】
単結晶シリコンウェーハ21の表面と多結晶シリコン膜23との間に、予め酸化膜22を形成しておき、その後に行われる第1成長工程S231の第1成長温度を890℃以上900℃以下にすることにより、酸化膜22の一部が消失することによる多結晶シリコン膜23の単結晶化を防止することができる。また、研磨工程S25後の反りも低減することができる。
第2成長工程S232において、第2成長温度を1000℃以上1075℃以下とし、第1多結晶シリコン膜231よりも厚い第2多結晶シリコン膜232を成長させることにより、多結晶シリコン膜23を高速で効率良く、充分な厚さに形成しつつ、積層ウェーハ20の反りを低減することができる。また、第2成長温度を1050℃以上にすることにより、積層ウェーハ20の反りをさらに低減することができる。
【0026】
上述のように第1成長温度および第2成長温度を設定することにより、積層ウェーハ20の反りを低減することができるが、第1成長工程S231における第1TCS含有率および第2成長工程S232における第2TCS含有率を、それぞれ20%以下にすることにより、積層ウェーハ20の反りをさらに低減することができる。
本発明者は、その理由を以下のように推定した。単結晶シリコンウェーハ21に多結晶シリコン膜23を形成すると、単結晶シリコンウェーハ21と多結晶シリコン膜23の熱膨張率の違いから、積層ウェーハ20の反りの原因となる内部応力が生じる。熱膨張により発生した内部応力は、その後、高温の成長温度に保持される時間が長くなるほど低下する。このため、成長速度が速くなるほど、所定厚みの多結晶シリコン膜を得るための成長時間は短くなってしまうため、高温の成長温度に保持される時間が低下し、内部応力の減少量が低下すると考えられる。
第1TCS含有率または第2TCS含有率が20%を超える場合、第1多結晶シリコン膜231または第2多結晶シリコン膜232の成長速度が速すぎて、内部応力の減少量が低下してしまい、積層ウェーハ20の反り低減効果が小さくなる。一方、第1TCS含有率または第2TCS含有率が20%以下の場合、第1多結晶シリコン膜231または第2多結晶シリコン膜232の成長速度に対応する内部応力の減少量が低下することを抑制でき、積層ウェーハ20の反りをさらに低減できると推定した。
【0027】
また、第1TCS含有率および第2TCS含有率を、それぞれ3%以上にすることにより、第1多結晶シリコン膜231または第2多結晶シリコン膜232の成長速度が遅くなりすぎることを抑制でき、積層ウェーハ20の生産性が低下することを抑制することかできる。
【0028】
熱処理工程S24では、水素ガス雰囲気下で、多結晶シリコン膜23が形成された単結晶シリコンウェーハ21に対して、1000℃以上1300℃以下かつ10秒以上180秒以下の熱処理を行う。第1実施形態では、熱処理工程S24は、多結晶シリコン膜形成工程S23が行われた気相成長装置1内で、多結晶シリコン膜形成工程S23に引き続き行われる。
【0029】
多結晶シリコン膜形成工程S23において、第1成長温度および第2成長温度を上述のように設定することにより、または第1TCS含有率および第2TCS含有率を上述のように設定することにより、積層ウェーハ20の反りを低減することができるが、多結晶シリコン膜形成工程S23に引き続き熱処理工程S24を行うことにより、積層ウェーハ20の反りをさらに低減することができる。
本発明者は、その理由を以下のように推定した。熱処理工程S24が行われると、多結晶シリコン膜23における単結晶シリコンウェーハ21側の部位が単結晶化し、当該単結晶化により内部応力が緩和される。この内部応力の緩和により、積層ウェーハ20の反りが低減すると推定した。
【0030】
また、熱処理温度を1000℃未満にする場合、または、熱処理時間を10秒未満にする場合、多結晶シリコン膜23における単結晶シリコンウェーハ21側の部位の単結晶化が十分に進まず、内部応力の緩和が十分に行われないため、積層ウェーハ20の反り低減効果が小さくなるおそれがある。
また、熱処理温度を1000℃を超える温度にする場合、気相成長装置1の熱負荷が大きくなり、気相成長装置1の故障などの不具合が発生するおそれがある。
また、熱処理時間を180秒を超える時間にする場合、多結晶シリコン膜23が過度に単結晶化してしまい、多結晶シリコン膜23のキャリアトラップ効果が低下するおそれがある。
第1実施形態では、上述のような熱処理温度および熱処理時間で熱処理工程S24を行うことにより、気相成長装置1の故障などの不具合を発生させることなく、かつ、多結晶シリコン膜23のキャリアトラップ効果を低下させることなく、積層ウェーハ20の反りを低減することができる。
【0031】
特に、第1実施形態では、同一の気相成長装置1内で多結晶シリコン膜形成工程S23に引き続き、熱処理工程S24を行う。このため、多結晶シリコン膜形成工程S23後に、単結晶シリコンウェーハ21の温度を低下させることなく熱処理工程S24を行うことができるため、積層ウェーハ20の反りを低減させるための熱処理時間が長くなることを抑制することができ、積層ウェーハ20の生産性低下を抑制することができる。また、熱処理工程S24を行うために、気相成長装置1とは別の装置を設置する必要がなくなる。
【0032】
研磨工程S25では、単結晶シリコンウェーハ21に形成された多結晶シリコン膜23(第2多結晶シリコン膜232)の表面を研磨して平坦化する。研磨工程S25では、多結晶シリコン膜23の表面粗さRMS(Root Mean Square)が0.1nm以上0.15nm以下となるように研磨を行うことが好ましい。多結晶シリコン膜23の表面粗さRMSを0.15nm以下にすることにより、貼り合わせウェーハ30におけるブリスター欠陥の発生を抑制することができる。
なお、表面粗さRMSは、例えば原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により、測定範囲10μm×10μm角の領域で測定した値に基づき算出される。
研磨工程S25における研磨取り代は、特に限定されるものではないが、多結晶シリコン膜23の表面に検出される表面粗さRMSの低減の観点から、0.2μm以上とすることが好ましい。
【0033】
直径300mmの単結晶シリコンウェーハ21に対して上述の工程S21~S25を行うことにより、直径300mmの単結晶シリコンウェーハ21に、厚さが0.3μm以上3.0μm以下の多結晶シリコン膜23が形成された積層ウェーハ20であって、Warp-bf値が40μm以下という反りが低減された積層ウェーハ20を製造することができる。このように製造された積層ウェーハ20は、厚さが0.3μm以上の多結晶シリコン膜23を有するため、十分なキャリアトラップ効果を発揮することができる。また、積層ウェーハ20は、厚さが3.0μm以下の多結晶シリコン膜23を有するため、反りが大きくなることを抑制することができる。
なお、Warp-bf値は、光学干渉式平坦度測定装置(KLA社製:Wafer Sight 2)を用いて測定することができる。
【0034】
貼り合わせ前洗浄工程S26では、研磨された多結晶シリコン膜23の表面のパーティクルを除去する。
以上の工程S21~S26により、貼り合わせウェーハ用の積層ウェーハ20が製造される。なお、工程S11~S14と、工程S21~S26とは並行して進めることができる。
【0035】
次に、活性層用基板10と積層ウェーハ20とを貼り合わせて貼り合わせウェーハ30を製造する工程について説明する。
貼り合わせウェーハ30を製造する工程は、貼り合わせ工程S31と、剥離熱処理工程S32と、結合熱処理工程S33と、を備える。
【0036】
貼り合わせ工程S31では、絶縁膜12を介して、積層ウェーハ20の多結晶シリコン膜23の研磨面と活性層用基板10とを貼り合わせる。この際、活性層用基板10の注入面が多結晶シリコン膜23に向くように貼り合わせる。
剥離熱処理工程S32では、イオン注入層13に微小気泡層を発生させる熱処理(剥離熱処理)を施し、発生した微小気泡層にて剥離させる。これにより、活性層用基板10上に、絶縁膜12と活性層31が形成された貼り合わせウェーハ30が製造される。なお、この際、剥離面41を有する剥離ウェーハ40が形成される。
結合熱処理工程S33では、貼り合わせウェーハ30に結合熱処理を施して、貼り合わせ界面の結合強度を増加させる。
以上の工程S31~S33により、貼り合わせウェーハ30が完成する。
【0037】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態における第1実施形態と同じ構成または同じ工程については、同一符号を付し、説明を簡略にするか、省略する。
図3は、第2実施形態に係る貼り合わせウェーハの製造方法を示すフローチャートである。図4は、第2実施形態に係る貼り合わせウェーハの製造方法を示す工程図である。
【0038】
図3および図4に示すように、第2実施形態に係る貼り合わせウェーハ30の製造方法は、積層ウェーハ20を製造する工程が熱処理工程S24を備えないこと以外は、第1実施形態と同じ工程を備える。
【0039】
第1実施形態で説明したように、第1成長工程S231の第1成長温度および第2成長工程S232の第2成長温度を、上述のように設定することにより、積層ウェーハ20の反りを低減することができるが、熱処理工程S24を行わなくても、第1TCS含有率および第2TCS含有率を、それぞれ20%以下にすることにより、積層ウェーハ20の反りをさらに低減することができる。
特に、直径300mmの単結晶シリコンウェーハ21に対して、第1TCS含有率および第2TCS含有率を、それぞれ15%以下にすることにより、直径300mmの単結晶シリコンウェーハ21に、厚さが0.3μm以上3.0μm以下の多結晶シリコン膜23が形成された積層ウェーハ20であって、Warp-bf値が60μm以下という反りが低減された積層ウェーハ20を製造することができる。
【0040】
また、第1実施形態で説明したように、第1TCS含有率および第2TCS含有率を、それぞれ3%以上にすることにより、積層ウェーハ20の生産性が低下することを抑制することかできる。
【0041】
さらに、第1実施形態で説明したように、研磨工程S25おいて、多結晶シリコン膜23の表面粗さRMSを0.15nm以下にすることにより、貼り合わせウェーハ30におけるブリスター欠陥の発生を抑制することができる。
【0042】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の種々の改良並びに設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0043】
第1実施形態において、熱処理工程S24を気相成長装置1以外の装置で行っても良い。
【0044】
第1実施形態において、第1成長工程S231における第1TCS含有率および第2成長工程S232における第2TCS含有率のうち少なくとも一方のTCS含有率を、3%未満にしても良いし、20%を超えるようにしても良い。前記少なくとも一方のTCS含有率を20%を超えるようにした場合でも、熱処理工程S24を行うことにより、積層ウェーハ20の反りを低減させることができる。
【0045】
第1,第2実施形態において、2段階の成長温度(第1成長温度および第2成長温度)で多結晶シリコン膜23を形成したが、1段階または3段階以上の成長温度で多結晶シリコン膜23を形成しても良い。
【実施例0046】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0047】
[評価サンプルの構成]
<実施例1>
直径が300mm、抵抗率が3000Ω・cm、結晶方位が<100>の単結晶シリコンウェーハを準備し、当該単結晶シリコンウェーハに対して、第1実施形態の工程S22~S25を行うことにより、実施例1の積層ウェーハを製造した。各工程における条件は以下の通りである。なお、研磨工程S25では、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical polishing)法で研磨を行った。
・酸化膜形成工程S22
酸化膜の厚さ:5Å(5×10-10m)
・多結晶シリコン膜形成工程S23
キャリアガス:水素ガス
原料ソースガス:トリクロロシランガス
・第1成長工程S231
第1TCS含有率:5%
第1成長温度:890℃
第1多結晶シリコン膜の厚さ:0.3μm
・第2成長工程S232
第2TCS含有率:5%
第2成長温度:1050℃
第2多結晶シリコン膜の厚さ:2.7μm
・熱処理工程S24
キャリアガス:水素ガス
熱処理温度:1070℃
熱処理時間:180秒
・研磨工程S25
研磨後の多結晶シリコン膜の厚さ:2.15μm
研磨後の表面粗さRMS:0.15nm
【0048】
<実施例2,3>
以下の表1に示すように、第1,第2成長工程S231,S232における第1,第2TCS含有率をそれぞれ10%,15%にしたこと以外は、実施例1と同じ条件で、実施例2,3の積層ウェーハを製造した。
【0049】
【表1】
【0050】
<実施例4,5,6>
それぞれ熱処理工程S24における熱処理時間を10秒にしたこと以外は、実施例1,2,3と同じ条件で、実施例4,5,6の積層ウェーハを製造した。
【0051】
<実施例7,8,9>
それぞれ熱処理工程S24を行わなかったこと以外は、実施例1,2,3と同じ条件で、実施例7,8,9の積層ウェーハを製造した。つまり、第2実施形態の工程S22,S23,S25を行うことにより、実施例7,8,9の積層ウェーハを製造した。
【0052】
[評価]
<第1,2TCS含有率と熱処理時間と反りとの関係>
光学干渉式平坦度測定装置(KLA社製:Wafer Sight 2)を用いて、実施例1~9の積層ウェーハのWarp-bf値を測定した。そして、第1,2TCS含有率を、5%、10%、15%にした場合における熱処理時間とWarp-bf値との関係を評価した。その結果を、図5に示す。
【0053】
図5に示すように、第1,2TCS含有率が低いほど、または、熱処理時間が長くなるほどWarp-bf値が低くなる、つまり積層ウェーハの反りが小さくなることが確認できた。
また、第1,2TCS含有率が15%以下であれば、180秒以下の熱処理を行うか否かに関係なく、Warp-bf値が60μm以下という反りが低減された積層ウェーハを製造できることが確認できた。
特に、第1,2TCS含有率が5%の場合、180秒以下の熱処理を行うか否かに関係なく、Warp-bf値が40μm以下という反りが低減された積層ウェーハを製造できることが確認できた。
また、熱処理時間が180秒であれば、第1,2TCS含有率に関係なく、Warp-bf値が約25μmになる、積層ウェーハの反り量がほぼ同じになることが確認できた。
また、第1,2TCS含有率が10%の場合、約80秒以上の熱処理を行い、第1,2TCS含有率が15%の場合、約110秒以上の熱処理を行うことにより、Warp-bf値が40μm以下という反りが低減された積層ウェーハを製造できると推定することができる。
【0054】
なお、本実施例では、2段階の成長温度(第1成長温度および第2成長温度)で多結晶シリコン膜を形成した場合を例示したが、上述したように、第1,2TCS含有率が低いほど、または、熱処理時間が長くなるほど積層ウェーハの反りが小さくなることから、1段階の成長温度で多結晶シリコン膜を形成した場合にも、第1,2TCS含有率が低いほど、または、熱処理時間が長くなるほど積層ウェーハの反りが小さくなると推定することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…気相成長装置、20…積層ウェーハ、21…単結晶シリコンウェーハ、22…酸化膜、23…多結晶シリコン膜、231…第1多結晶シリコン膜、232…第2多結晶シリコン膜。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-03-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径300mmの単結晶シリコンウェーハに多結晶シリコン膜が形成された積層ウェーハの製造方法であって、
水素ガスに対するトリクロロシランガスの含有率が3%以上20%以下の混合雰囲気下で、前記単結晶シリコンウェーハの表面に形成された酸化膜上に厚さが0.3μm以上3.0μm以下の多結晶シリコン膜を形成し、
水素ガス雰囲気下で、前記多結晶シリコン膜が形成された前記単結晶シリコンウェーハに対して、1000℃以上1300℃以下かつ10秒以上180秒以下の熱処理を行うことによりWarp-bf値が40μm以下の積層ウェーハを得る、積層ウェーハの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の積層ウェーハの製造方法において、
前記多結晶シリコン膜を形成するに際し、
890℃以上900℃以下の温度で前記酸化膜上に第1多結晶シリコン膜を成長させた後、1000℃以上1075℃以下の温度で前記第1多結晶シリコン膜上に第2多結晶シリコン膜を成長させる、積層ウェーハの製造方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、積層ウェーハの製造方法に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明は、積層ウェーハの反りを低減することができる積層ウェーハの製造方法を提供することを目的とする。