(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071950
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び液体吐出ユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
B41J2/01 307
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182490
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】及川 敬之
(72)【発明者】
【氏名】吉川 浩史
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056FA04
2C056FA13
2C056HA07
2C056HA08
2C056HA11
(57)【要約】
【課題】高い平行度を確保しつつ、ヘッド保持部材に対する面方向位置合わせを高い精度で行うことが可能な液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】ヘッド保持部材21に保持される液体吐出ヘッド23であって、前記ヘッド保持部材21の被当接面(上面)と対向する対向面(ツバ部60の下面)から突出していて該被当接面に当接する突出座面部を有し、前記突出座面部は座面の周縁部が面取りされている。これにより、ヘッド保持部材21と液体吐出ヘッド23との高い平行度が確保され、ヘッド保持部材に対する液体吐出ヘッドの面方向位置合わせの精度が高まる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド保持部材に保持される液体吐出ヘッドであって、
前記ヘッド保持部材の被当接面と対向する対向面から突出していて該被当接面に当接する突出座面部を有し、
前記突出座面部は座面の周縁部が面取りされていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記座面の形状が所定方向に長尺な形状であることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記座面の形状は、長尺方向端部が湾曲形状又は鋭角形状であることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記ヘッド保持部材の前記被当接面に前記対向面を締結する締結部材を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
1又は2以上の液体吐出ヘッドがヘッド保持部材に保持された液体吐出ユニットであって、
前記液体吐出ヘッドとして、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを用いることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項6】
液体を吐出する装置であって、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項7】
1又は2以上の液体吐出ヘッドがヘッド保持部材に保持された液体吐出ユニットの製造方法であって、
前記ヘッド保持部材の被当接面と対向する前記液体吐出ヘッドの対向面から突出した突出座面部の座面を該被当接面に当接させた状態で、前記ヘッド保持部材に対する前記液体吐出ヘッドの位置合わせを行う位置合わせ工程と、
前記位置合わせ工程の後に、前記ヘッド保持部材に対して前記液体吐出ヘッドを固定する固定工程とを有することを特徴とする液体吐出ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び液体吐出ユニットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッド保持部材に保持される液体吐出ヘッドが知られている。例えば、特許文献1には、金属ベース(ヘッド保持部材)に設けられる組付穴に組み付けられる液滴吐出ヘッド(液体吐出ヘッド)が開示されている。この液滴吐出ヘッドは、当該液滴吐出ヘッドから吐出されるインク滴(液体)が狙いの着弾位置に着弾するように、金属ベースの所定位置に精度良く位置合わせして固定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の液体吐出ヘッドは、ヘッド保持部材に対する位置合わせを精度よく行うことができない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明は、ヘッド保持部材に保持される液体吐出ヘッドであって、前記ヘッド保持部材の被当接面と対向する対向面から突出していて該被当接面に当接する突出座面部を有し、前記突出座面部は座面の周縁部が面取りされていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、高い平行度を確保しつつ、ヘッド保持部材に対する面方向位置合わせを高い精度で行うことが可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る液体吐出ヘッドのチャンネル間方向の要部拡大断面図。
【
図2】同液体吐出ヘッドが金属ベースに保持された液体吐出ユニットの外観を示す斜視図。
【
図3】同液体吐出ユニットを、金属ベース、液体吐出ヘッド、外側部品に分解した状態を示す分解斜視図。
【
図5】同液体吐出ユニットを画像形成装置本体へ取り付けた例を示す説明図。
【
図6】(a)は、金属ベースに保持された液体吐出ヘッドの面方向位置合わせを説明するための説明図。(b)金属ベースに保持された液体吐出ヘッドの平行度を説明するための説明図。
【
図7】同液体吐出ユニットの組立装置の主要部を示す斜視図。
【
図8】同液体吐出ユニットの組立装置の全体構成を示す斜視図。
【
図9】金属ベースに保持された液体吐出ヘッドのツバ部の下面の平面度、平行度が低い場合の説明図。
【
図10】(a)は、液体吐出ヘッドのツバ部の下面に突出座面部を設けた比較例を示す平面図。(b)は、同比較例を示す側面図。
【
図11】(a)は、実施形態における突出座面部の一例を示す平面図。(b)は、同突出座面部を示す側面図。
【
図12】(a)は、実施形態における突出座面部の他の例を示す平面図。(b)は、同突出座面部を示す側面図。
【
図13】(a)は、実施形態における突出座面部の更に他の例を示す平面図。(b)は、同突出座面部を示す側面図。
【
図14】実施形態における印刷装置の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの一例として、液体吐出記録方式の画像形成装置である液体を吐出する装置としてのインクジェット記録装置に用いられる例について説明する。
なお、液体吐出ヘッドで吐出する液体は、いわゆるインクに限るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えばDNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。
【0008】
図1は、本実施形態に係る液体吐出ヘッドのチャンネル間方向の要部拡大断面図である。
図1において、液体吐出ヘッド23の吐出部は、フレーム部材1、振動板2、流路板3、ノズルプレート4、積層圧電素子5及びPZTベース6を備えている。フレーム部材1は、インク供給口16及び共通液室8となる彫り込みを形成した部材である。振動板2は、凸部13、ダイヤフラム部14及びインク流入口15を有する。流路板3には、加圧液室9及び流体抵抗部10となる彫り込みと、ノズル孔11に連通する連通孔12とが形成されている。ノズルプレート4には、ノズル孔11が形成されている。積層圧電素子5は、振動板2に接着層を介して接合されている。PZTベース6は、積層圧電素子5を固定している。
【0009】
積層圧電素子5はハーフカットのダイシング加工により櫛歯上に分割され、一つ毎に駆動部と支持部(非駆動部)として使用する。外部電極の外側はハーフカットのダイシング加工で分割されるように、切り欠き等の加工により長さを制限しており、これらは複数の個別電極となる。他方はダイシングでは分割されずに導通しており、共通電極となる。駆動部の個別電極にはFPC7が半田接合されている。また、共通電極は積層圧電素子5の端部に電極層を設けて回し込んでFPC7のグランド電極5-1に接合している。FPC7にはドライバICが実装されており、これにより駆動部への駆動電圧印加を制御している。
【0010】
振動板2は、薄膜のダイヤフラム部14と、島状凸部(アイランド部)13と、支持部に接合する梁を含む厚膜部と、インク流入口15となる開口を電鋳工法によるNiメッキ膜を2層重ねて形成している。島状凸部13は、ダイヤフラム部14の中央部に形成した駆動部となる積層圧電素子5と接合している。振動板2の島状凸部13と積層圧電素子5の可動部5-2、振動板2とフレーム部材1の結合は、ギャップ材を含んだ接着層をパターニングして接着している。
【0011】
流路板3は、シリコン単結晶基板を用いて、加圧液室9及び流体抵抗部10となる彫り込み、並びに、ノズル孔11に対する位置に連通孔12となる貫通口を、エッチング工法でパターニングしてある。具体的には、水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで形成することができる。エッチングで残された部分が加圧液室9の隔壁となる。また、このヘッドではエッチング幅を狭くする部分を設けて、これを流体抵抗部10とした。
【0012】
ノズルプレート4は、金属材料、例えば電鋳工法によるNiメッキ膜等で形成したもので、インク滴(液体)を飛翔させるための微細な吐出口であるノズル孔11を多数形成している。このノズル孔11の内部形状(内側形状)は、ホーン形状に形成しているが、略円柱形状又は略円錘台形状でもよい。また、このノズル孔11の径は、例えば、インク滴出口側の直径で約15~30[μm]である。また、各列のノズルピッチは、例えば、150または300[dpi]である。
【0013】
ノズルプレート4のインク吐出面(ノズル表面側)は、撥液性の表面処理を施した撥液処理層を設けている。PTFE-Ni共析メッキやフッ素樹脂の電着塗装、蒸発性のあるフッ素樹脂(例えばフッ化ピッチなど)を蒸着コートしたもの、シリコン系樹脂・フッ素系樹脂の溶剤塗布後の焼き付け等、インク物性に応じて選定した撥水処理膜を設けている。
【0014】
インク供給口16及び共通液室8となる彫り込みを形成するフレーム部材1は、樹脂成形で作製している。振動板2のインク流入口15の周囲は隙間無く、フレーム部材1に塗布された接着剤によって封止されて接合される。このフレーム部材1には、各加圧液室9にインクを供給する共通液室8を形成し、共通液室8から振動板2に形成したインク流入口15、流体抵抗部10の上流側に形成した流路、および流体抵抗部10を介して加圧液室9にインク液が供給される。なお、フレーム部材1には、共通液室8に外部からインク液を供給するためのインク供給口16も形成される。また、共通液室8は、加圧液室9の並び方向(ノズル並び方向)に平面形状で長方形状に形成している。
【0015】
このように構成した液体吐出ヘッド23においては、記録信号に応じて駆動部に駆動波形(10~50[V]のパルス電圧)を印加する。駆動部に積層方向の変位が生起し、振動板2を介して加圧液室9が加圧されて圧力が上昇し、ノズル孔11からインク滴が吐出される。その後、インク滴吐出の終了に伴い、加圧液室9内のインク圧力が低減し、インクの流れの慣性と駆動パルスの放電過程によって加圧液室9内に負圧が発生してインク充填行程へ移行する。このとき、インクタンクから供給されたインクは、共通液室8に流入し、共通液室8からインク流入口15を経て流体抵抗部10を通り、加圧液室9内に充填される。流体抵抗部10は、吐出後の残留圧力振動の減衰に効果が有る反面、表面張力による再充填(リフィル)に対して抵抗になる。流体抵抗部10を適宜に選択することで、残留圧力の減衰とリフィル時間のバランスが取れ、次のインク滴吐出動作に移行するまでの時間(駆動周期)を短くできる。
【0016】
本実施形態においては、液体吐出ヘッド23のインク吐出部の液室部、流体抵抗部、振動板、及びノズル部材の少なくとも一部がシリコン及びニッケルの少なくともいずれかを含む材料から形成されることが好ましい。また、本実施形態においては、駆動アクチュエータに積層圧電素子とした場合について述べたが、薄膜ピエゾなどをアクチュエータとして用いたものでも良い。
【0017】
図2は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド23がヘッド保持部材としての金属ベース21に保持された液体吐出ユニット20の外観を示す斜視図である。
図3は、本実施形態の液体吐出ユニット20を、金属ベース21、液体吐出ヘッド23、外側部品22に分解した状態を示す分解斜視図である。
外側部品22の内部には、電装系部品などが配置されている。
【0018】
インクジェット記録装置では、高速化、高精細化などの要求から、記録領域の長尺化、ノズルの高密度化が望まれている。しかしながら、1つの液体吐出ヘッドだけで記録領域の長尺化、ノズルの高密度化を実現しようとすると、製作が困難であり、コストが大幅にアップしてしまう。これに対し、比較的小型で製作が容易な液体吐出ヘッド23を複数繋いで、いわゆる集積型の液体吐出ユニット20を構成することで、コストを抑えることができる。このような液体吐出ユニット20の代表例としては、液体吐出ヘッド23を千鳥配置したり、ノズル列方向に繋いだりするものが知られている。本実施形態の液体吐出ユニット20は、複数の液体吐出ヘッド23を、ヘッド保持部材としての金属ベース21に千鳥状に組み付けた構成である。
【0019】
図4は、本実施形態に係る金属ベース21の平面図である。
金属ベース21には、複数の液体吐出ヘッド23を組み付けるための複数の組付穴21aが設けられている。この金属ベース21に、後述する組立装置を用いて、液体吐出ヘッド23の位置決め(アライメント)、固定(接合)を順次行い、組み付ける。
【0020】
組立装置に金属ベース21がセットされる段階で、金属ベース21のそれぞれの組付穴21aに対して液体吐出ヘッド23がフレーム部材1を介してわずかに位置を調整できる状態で挿入され、仮装着されている。具体的には、
図3に示すように、フレーム部材1には長尺方向両側に張り出した部分(以下「ツバ部60」という。)が形成されており、金属ベース21の上面(被当接面)にフレーム部材1のツバ部60の下面(対向面)が対向した状態で、フレーム部材1が組付穴21aに挿入される。そして、後で詳細に説明する方法で位置合わせ(アライメント)された後に、フレーム部材1のツバ部60に形成された貫通穴60aを介して締結部材としてのネジ61が金属ベース21に固定されることで、位置合わせされた液体吐出ヘッド23が金属ベース21に締結される。
【0021】
なお、液体吐出ヘッド23と金属ベース21との締結方法は、ねじ固定式のほか、接着剤方式や、スポット溶接のような方式でも構わない。
【0022】
図5は、画像形成装置本体へ液体吐出ユニット20を取り付けた例を示す説明図である。
複数の液体吐出ヘッド23を金属ベース21に組み付けた液体吐出ユニット20は、インクジェット記録装置等の画像形成装置本体へ取り付けられる。
図5に示すように、画像形成装置本体に設けられる本体ベース24にある3本の基準ピン24A,24B,24Cに金属ベース21を突き当てたのち、金属ベース21を固定ボルトにて本体ベース24に固定する。
【0023】
図5では、1つの金属ベース21に対して12個の液体吐出ヘッド23を本体ベース24の長手方向(主走査方向)に2列で千鳥に配列した例を示している。そして、
図5の上下方向(副走査方向)に記録材を移動させながら、液体吐出ユニット20の各液体吐出ヘッド23からインク滴を吐出することで、画像を形成することができる。また、1つのインクジェット記録装置において、金属ベース21の数を適宜増やすことで、多色もしくは、1インチ当たりのドット数(dpi)を増やすことができる。
【0024】
液体吐出ユニット20において、各液体吐出ヘッド23から吐出されるインク滴が記録材上の狙いの着弾位置に着弾させるためには、複数の液体吐出ヘッド23を金属ベース21の所定位置に精度良く位置決め(アライメント)して固定(接合)する必要がある。特に、金属ベース21に対する各液体吐出ヘッド23の面方向(金属ベース21の上面の面方向)の位置合わせ(以下「面方向位置合わせ」という。)の精度と、金属ベース21に対する各液体吐出ヘッド23の平行度(金属ベース21の上面に対する各液体吐出ヘッド23の吐出面の平行度)とが重要である。
【0025】
面方向位置合わせの精度は、
図6(a)に示すように、金属ベース21の面上のX方向及びY方向の位置精度と、金属ベース21の面の法線軸(Z方向軸)回りの回転角度θの精度とで決まる。また、平行度は、
図6(b)に示すように、Y方向軸回りの回転角度δの精度で決まる。
【0026】
次に、本実施形態の液体吐出ユニット20の組立装置について説明する。
図7は、本実施形態に係る液体吐出ユニット20の組立装置の主要部を示す斜視図である。
金属ベース21に液体吐出ヘッド23を組み付けるとき、まず、金属ベース21を、
図5に示した画像形成装置の本体ベース24と同様の構成となっている組立装置のユニットベース固定台25上に固定する。すなわち、ユニットベース固定台25上には3本の基準ピン25A,25B,25Cが設けられており、金属ベース21は、X方向については基準ピン25Aに突き当てられ、Y方向については基準ピン25B,25Cに突き当てられ、その突き当て状態でユニットベース固定台25にねじ固定する。なお、X方向は金属ベース21の長尺方向、Y方向は金属ベース21の短尺方向にそれぞれ対応している。
【0027】
ユニットベース固定台25は、撮像手段としてのCCDカメラ50の光軸方向であるY方向に対して空洞となっている台であり、移動手段としてのXYステージ30上に固定されている。XYステージ30は、公知の一般的なXYステージと同様の構成であり、例えば、リニア駆動手段によりX方向に沿って移動可能なX方向移動部と、このX方向移動部上に固定された別のリニア駆動手段によりY方向に沿って移動可能なY方向移動部とから構成されている。ユニットベース固定台25は、XYステージ30のY方向移動部上に固定され、XYステージ30によりX方向及びY方向の目標位置へユニットベース固定台25を移動させることができる。
【0028】
CCDカメラ50は、CCDからなる撮像素子を備えている。撮像素子は、C-MOSなどの他の撮像素子であってもよい。CCDカメラ50の撮像レンズなどの光学系を備えたカメラ先端部は、ユニットベース固定台25内部の空洞部25aに位置するように配置され、XYステージ30のX方向可動範囲内で、カメラ先端部がユニットベース固定台25と干渉しないように、空洞部25aが開口している。
【0029】
金属ベース21はXYステージ30によって、所定のピッチ間隔で移動し、目標位置に正確に位置決めされる。このとき、ピッチ間隔は、XYステージ30の位置決め精度で決まり、X方向はリニアスケール26x及びこのリニアスケール26xを読み取る読取センサなどで構成される位置検出手段の情報に基づき、XYステージ30が目標位置へ正確に位置決めされるように位置フィードバック制御される。同様に、Y方向はリニアスケール26y及びこのリニアスケール26yを読み取る読取センサなどで構成される位置検出手段基づき、XYステージ30が目標位置へ正確に位置決めされるように位置フィードバック制御される。
【0030】
XYステージ30は調整手段としてのθステージ37上に配置されている。θステージ37は、公知の一般的なθステージと同様の構成であり、例えば、X方向及びY方向のいずれにも直交するZ方向に延びるZ軸の周り(θ方向)に移動可能なθ方向移動部から構成されている。XYステージ30は、θステージ37のθ方向移動部上に固定され、θステージ37によりθ方向の目標回転角度へXYステージ30を移動させることができる。
【0031】
このようにθステージ37上にXYステージ30を配置することで、θステージ37を用いたアライメント動作(θ方向の目標回転角度へXYステージ30を移動させる動作)は、金属ベース21のXYステージ30によるピッチ送り動作(所定のピッチ間隔で金属ベース21をX方向及びY方向へ移動させる動作)に対して影響を及ぼすことがない。また、金属ベース21に対する液体吐出ヘッド23の組み付けは、液体吐出ヘッド23が加圧ステージにより上下動するクランプ手段により固定把持された状態で金属ベース21がθステージ37によりアライメントされる。XYステージ30の位置決め精度とθステージ37によるアライメント精度により、面方向(XY面方向)における高い組付け精度を確保することができる。
【0032】
図8は、本実施形態に係る液体吐出ユニット20の組立装置の全体構成を示す斜視図である。
加圧ステージ36は、液体吐出ヘッド23を把持した状態のクランプ手段34を上下動させることができる。加圧ステージ36は、筐体ベース45上に固定されている。加圧ステージ36は荷重制御できる加圧アクチュエータ39とガイド機構40と加圧テーブル41とから構成されている。加圧アクチュエータ39は、電空アクチュエータを用いることで位置と荷重の制御を行うことができる。
【0033】
この加圧ステージ36を用い、金属ベース21の上面と液体吐出ヘッド23のツバ部60の下面とが弱い圧力で当接した状態にし、この弱圧当接状態のままXYステージ30及びθステージ37により、液体吐出ヘッド23に対して金属ベース21を所定位置にアライメント(位置合わせ)させる。アライメントが終了したら、加圧ステージ36を用いて、金属ベース21に液体吐出ヘッド23を押し付ける圧力を増加させ、ネジ61により各液体吐出ヘッド23を金属ベース21に締結させる。
【0034】
加圧テーブル41下面には接合面倣い機構38が配置されており、接合面倣い機構38の下面にはクランプ手段34が取付けられており、このクランプ手段34に液体吐出ヘッド23が固定保持される。
【0035】
次に、本実施形態における液体吐出ヘッド23と金属ベース21との位置合わせについて説明する。
金属ベース21の面方向における位置合わせ(面方向位置合わせ)では、従来、液体吐出ヘッド23のツバ部60の下面(対向面)を金属ベース21の上面(被当接面)に当接させた弱圧当接状態で行う。このとき、液体吐出ヘッド23と金属ベース21との平行度(金属ベース21の上面に対する液体吐出ヘッド23の吐出面の平行度)を出すことも併せて行われる。
【0036】
従来の液体吐出ヘッドで高い平行度を得るためには、金属ベース21の上面とこれに当接する液体吐出ヘッド23のツバ部60の下面の各面について、それぞれ十分な平面度、平行度を確保する必要がある。しかしながら、この場合、互いに当接する各面の当接面積が広いため、当接面積全域にわたって十分な平面度、平行度を得ることは、部品成形精度あるいは部品加工精度の関係で困難である。そのため、
図9に示すように当接面積全域にわたっての十分な平面度、平行度が得られていない場合、液体吐出ヘッド23と金属ベース21との平行度を高い精度で得ることが難しい。
【0037】
一方、高い平行度を得る方法としては、
図10(a)及び(b)に示すように、液体吐出ヘッド23のツバ部60の下面に突出座面部62を設け、金属ベース21の上面に突出座面部62'の座面62a'を当てる構成とする方法が考えられる。この構成によれば、座面62a'の面積がツバ部60の下面全域の面積よりも狭いため、平面度、平行度が要求される各面の当接面積が狭くなる。その結果、当接面積全域にわたって十分な平面度、平行度を得やすく、液体吐出ヘッド23と金属ベース21との平行度を高い精度で得ることが容易になる。
【0038】
ところが、このような突出座面部62'を設ける場合、高い平行度が得やすくなる反面、面方向位置合わせの位置合わせ精度が低下する場合があることが確認された。その原因について発明者が研究した結果、面方向位置合わせ時に、突出座面部62'における座面62a'の周縁部のエッジが金属ベース21の上面に引っ掛かって、金属ベース21と液体吐出ヘッド23との面方向へのスムーズな相対移動を阻害し、面方向の位置合わせ精度が低下することが、主な原因であると判明した。
【0039】
すなわち、面方向位置合わせを実施する際、加圧ステージ36を用いて金属ベース21の上面と液体吐出ヘッド23のツバ部60の下面に設けた突出座面部62'の座面62a'とが弱い圧力で当接した弱圧当接状態にする。この弱圧当接状態のままXYステージ30及びθステージ37により、液体吐出ヘッド23に対して金属ベース21を所定位置にアライメント(位置合わせ)させる。このXYステージ30及びθステージ37による金属ベース21と液体吐出ヘッド23との相対移動時に、突出座面部62'の座面62a'の周縁部のエッジが金属ベース21の上面に引っ掛かり、高精度なアライメント(位置合わせ)が阻害される。
【0040】
図11(a)は、本実施形態における突出座面部の一例を示す平面図である。
図11(b)は、本実施形態における突出座面部の一例を示す側面図である。
本実施形態においては、
図11(a)及び(b)に示すように、突出座面部62の座面62aの周縁部を面取りして面取り部62bを設けた構成を採用している。この面取りにより、突出座面部62の座面62aの周縁部のエッジの長さが短くなる。また、この面取りにより、突出座面部62の座面62aの周縁部が鈍角になる。また、突出座面部62の座面62aの周縁部にバリが発生していた場合には、この面取りによりバリ取りがされる。これらのうちの少なくとも1つの結果から、突出座面部62における座面62aの周縁部が金属ベース21の上面に引っ掛かりにくくなり、面方向位置合わせ時に金属ベース21と液体吐出ヘッドとの面方向への相対移動をスムーズに行うことが可能となる。
【0041】
なお、本実施形態において、突出座面部62を2つのツバ部60の下面にそれぞれ4個ずつ配置し、合計8個の突出座面部62が設けられているが、突出座面部62の数や配置については、高い平行度が得やすい数、配置であれば、本実施形態のものに限定されることはない。
【0042】
図12(a)は、本実施形態における突出座面部の他の例を示す平面図である。
図12(b)は、本実施形態における突出座面部の他の例を示す側面図である。
本実施形態においては、
図12(a)に示すように、突出座面部63における座面63aの形状が所定方向に長尺な形状であってもよい。なお、本例の突出座面部63も、
図12(a)及び(b)に示すように、突出座面部63の座面63aの周縁部を面取りして面取り部63bが形成されている。したがって、突出座面部62における座面62aの周縁部が金属ベース21の上面に引っ掛かりにくくなり、面方向位置合わせ時に金属ベース21と液体吐出ヘッドとの面方向への相対移動をスムーズに行うことが可能となる。
【0043】
本例において、座面63aの形状は、
図12(a)に示すように、Y方向に長尺な形状となっている。これは次の理由による。
【0044】
すなわち、本実施形態において、面方向位置合わせを行う際、液体吐出ヘッド23は組立装置のクランプ手段34によりX方向両側から把持された状態になる。この場合、面方向位置合わせの際に金属ベース21の上面から液体吐出ヘッド23が受ける外力(特に、座面周縁部の引っ掛かりによる外力)のうちのX方向の外力については、クランプ手段34により受け止められる。そのため、X方向への相対移動時については、座面周縁部の影響を受けにくく、座面周縁部が多少引っ掛かるようなことがあっても、X方向への相対移動は阻害されにくい。
【0045】
これに対し、Y方向やθ方向の外力については、クランプ手段34により受け止められないので、Y方向やθ方向への相対移動時に座面周縁部の影響を受けやすい。そのため、座面周縁部が若干引っ掛かるようなことがあると、Y方向やθ方向への相対移動が阻害され、面方向位置合わせの精度を落としやすい。
【0046】
図12(a)及び(b)に示す例のように、突出座面部63における座面63aの形状がX方向(面方向位置合わせ時にクランプ手段34により把持される方向)に長尺な形状とすることで、Y方向やθ方向への相対移動時にその相対移動方向に横切る座面周縁部(座面63aにおける
図12(a)中の上側端部と下側端部)が短尺部分となる。これにより、Y方向やθ方向への相対移動時に座面周縁部の引っ掛かりが発生することが極力抑えられ、Y方向やθ方向への相対移動が阻害されることを抑制し、面方向位置合わせの精度低下が抑制される。
【0047】
一方、X方向についての相対移動時には、その相対移動方向に横切る座面周縁部(座面63aにおける
図12(a)中の左右の端部)が長尺部分となるため、座面周縁部の引っ掛かりが発生しやすい。しかしながら、上述のとおり、X方向の外力については、クランプ手段34により受け止められるので、X方向への相対移動時には座面周縁部の影響を受けにくい。したがって、X方向への相対移動は阻害されず、面方向位置合わせの精度が低下することはない。
【0048】
したがって、
図12(a)及び(b)に示す例のように、座面63aの形状がX方向に長尺であることで、面方向位置合わせの精度を更に向上させることができる。
【0049】
なお、X方向に長尺な面の形状は、
図12(a)及び(b)に示す例のように、長尺方向端部が湾曲形状である長円形あるいは楕円形のものに限られない。例えば、
図13(a)及び(b)に示す例のように、長尺方向端部が鋭角形状、先細った形状(いわゆる船形)のものであってもよい。
【0050】
次に、上述した液体吐出ヘッド23を備えた液体吐出ユニット20を有する画像形成装置(液体を吐出する装置)の一例について説明する。
図14に示すように、画像形成装置である印刷装置500は、記録材である連続体510を搬入する搬入手段501、搬入手段501によって搬入された連続体510を印刷手段505に向けて案内搬送する案内搬送手段503を備えている。また、印刷装置500は、連続体510に対して液体を吐出して画像を形成する印刷動作を行う印刷手段505、液体が付着した連続体510を乾燥させる乾燥手段507、連続体510を搬出する搬出手段509等を備えている。
【0051】
連続体510は、搬入手段501の元巻きローラ511から送り出され、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、搬出手段509がそれぞれ有するローラによって案内及び搬送され、搬出手段509の巻き取りローラ591に巻き取られる。連続体510は、印刷手段505において搬送ガイド部材559上を液体吐出ユニット20を備えたヘッドユニット550に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液体によって画像が印刷される。
【0052】
以上、本実施形態においては、液体吐出記録方式の画像形成装置であるインクジェット記録装置に用いられる、複数の液体吐出ヘッド23を2列の千鳥配置で、金属ベース21に組み付けた集積型の液体吐出ユニットの例で説明した。しかし、これに限られるものではない。これ以外でも、ラインヘッド、シリアルヘッドを問わず、多色化、長尺化、高密度化などのために、複数の液体吐出ヘッド23を金属ベース21の所定位置に取付けるものでは、本発明は適用可能であり、同様の効果が得られる。さらに、液体吐出ヘッドに限らず、有機LEDヘッドなどの書込ヘッドを金属ベース21の所定位置に組み付ける書込ユニットであれば、本発明は適用可能であり、同様の効果が得られる。
【0053】
本発明において、使用される液体はヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく特に限定されないが、常温・常圧下において、または加熱・冷却により粘度が30[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やタンパク質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、これ等を含む溶液や懸濁液やエマルション等である。これ等は、例えばインクジェット用インク、表面処理液、三次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0054】
液体を吐出するエネルギ発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極とからなる静電アクチュエータ等を使用するものが含まれる。
【0055】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたもの等が含まれる。
ここで一体化とは、例えば液体吐出ヘッドと機能部品や機構が、締結、接着、係合等によって互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと機能部品や機構が互いに着脱可能であってもよい。
【0056】
液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクとが一体化されているもの、両者がチューブ等で互いに接続されて一体化されているものがある。ここで、これ等の液体吐出ユニットの液体吐出ヘッドとヘッドタンクとの間に、フィルタを含むユニットを追加することも可能である。
【0057】
また液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジとが一体化されているもの、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構とが一体化されているものがある。また液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させ、液体吐出ヘッドと走査移動機構とが一体化されているものがある。
【0058】
液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構とが一体化されているものがある。また液体吐出ユニットとして、ヘッドタンクまたは流路部品が取り付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続され、液体吐出ヘッドと供給機構とが一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0059】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。供給機構は、チューブ単体及び装填部単体も含むものとする。
【0060】
本発明では、液体吐出ユニットについて液体吐出ヘッドとの組み合わせで説明しているが、液体吐出ユニットには上述した液体吐出ヘッドを含むヘッドモジュールやヘッドユニットと上述したような機能部品や機構が一体化されたものも含まれる。
【0061】
液体を吐出する装置には、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、ヘッドモジュール、ヘッドユニット等を備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけではなく、液体を気体中や液体中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0062】
液体を吐出する装置は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に関わる手段、その他の前処理装置や後処理装置等にも含むことができる。例えば液体を吐出する装置としては、インクを吐出させて被記録媒体に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出する立体造形装置(三次元造形装置)が挙げられる。
【0063】
また液体を吐出する装置は、吐出された液体によって文字や図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体では意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0064】
上述した液体が付着可能なものとは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するものや付着して浸透するもの等を意味する。具体例としては、用紙、フィルム、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子等の電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セル等の媒体が挙げられ、特に限定しない限り液体が付着する全てのものが含まれる。液体が付着可能なものの材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等、液体が一時的でも付着可能であれば、どのような材質のものであってもよい。
【0065】
液体を吐出する装置には、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する構成を含むが、異動する対象は何れか一方には限定されない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置が共に含まれる。
【0066】
また、液体を吐出する装置としては他にも、用紙の表面を改質する等の目的で用紙の表面に処理液を塗布するために用紙表面に対して処理液を吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置等が挙げられる。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0068】
以上に説明したものは一例であり、次の態様ごとに特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、ヘッド保持部材(例えば金属ベース21)に保持される液体吐出ヘッド23であって、前記ヘッド保持部材の被当接面(例えば上面)と対向する対向面(例えばツバ部60の下面)から突出していて該被当接面に当接する突出座面部62,63を有し、前記突出座面部は座面62a,63aの周縁部が面取りされていることを特徴とするものである。
液体吐出ヘッドをヘッド保持部材に位置合わせする場合、従来の液体吐出ヘッドでは、ヘッド保持部材の被当接面に対向する対向面を被当接面に当接させた状態で、当該被当接面の面方向における位置合わせ(面方向位置合わせ)を行う。また、このとき、液体吐出ヘッドとヘッド保持部材との平行度(ヘッド保持部材の被当接面に対する液体吐出ヘッドの吐出面の平行度)を出すことが求められる。
従来の液体吐出ヘッドで高い平行度を得るためには、ヘッド保持部材の被当接面とこれに当接する液体吐出ヘッドの対向面の各面について、それぞれ十分な平面度、平行度を確保する必要がある。しかしながら、従来の液体吐出ヘッドでは互いに当接する各面の当接面積が広いため、当接面積全域にわたって十分な平面度、平行度を得ることは、部品成形精度あるいは部品加工精度の関係で困難であり、液体吐出ヘッドとヘッド保持部材との平行度を高い精度で得ることが難しい。
一方、高い平行度を得る方法としては、液体吐出ヘッドの対向面上に突出座面部を設け、ヘッド保持部材の被当接面に突出座面部の座面を当てる構成とする方法が考えられる。この構成によれば、座面の面積が前記対向面よりも狭いため、平面度、平行度が要求される各面の当接面積が狭くなり、当接面積全域にわたって十分な平面度、平行度を得やすく、液体吐出ヘッドとヘッド保持部材との平行度を高い精度で得ることが容易になる。
ところが、このような突出座面部を設ける場合、高い平行度が得やすくなる反面、面方向位置合わせの位置合わせ精度が低下する場合があることが確認された。そして、その原因について発明者が研究した結果、面方向位置合わせ時に、突出座面部における座面の周縁部のエッジがヘッド保持部材の被当接面に引っ掛かって、ヘッド保持部材と液体吐出ヘッドとの面方向への相対移動がスムーズに行えず、面方向の位置合わせ精度が低下することが、主な原因であると判明した。
そこで、本態様においては、突出座面部の座面の周縁部を面取りした構成を採用している。これにより、突出座面部における座面の周縁部がヘッド保持部材の被当接面に引っ掛かりにくくなり、面方向位置合わせ時にヘッド保持部材と液体吐出ヘッドとの面方向への相対移動をスムーズに行うことが可能となる。よって、本態様によれば、突出座面部を設けて高い平行度を確保しつつ、その突出座面部における座面の周縁部がヘッド保持部材の被当接面に引っ掛かることを抑制して、面方向位置合わせ時の高い位置合わせ精度も確保することができる。したがって、高い平行度を確保しつつ、ヘッド保持部材に対する面方向位置合わせを高い精度で行うことが可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0069】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記座面の形状が所定方向に長尺な形状であることを特徴とするものである。
これによれば、面方向位置合わせ時に液体吐出ヘッドを把持する方向が前記所定方向に一致されることで、面方向位置合わせの精度を向上させることができる。
【0070】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、前記座面の形状は、長尺方向端部が湾曲形状又は鋭角形状であることを特徴とするものである。
これによれば、面方向位置合わせの精度を更に向上させることができる。
【0071】
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記ヘッド保持部材の前記被当接面に前記対向面を締結する締結部材(例えばネジ61)を有することを特徴とするものである。
これによれば、締結によりヘッド保持部材の被当接面と対向面上の突出座面部の座面とを密着させることができ、ヘッド保持部材と液体吐出ヘッドとで高い平行度を得ることができる。
【0072】
[第5態様]
第5態様は、1又は2以上の液体吐出ヘッド23がヘッド保持部材(例えば金属ベース21)に保持された液体吐出ユニット20であって、前記液体吐出ヘッドとして、第1乃至第4態様のいずれかの液体吐出ヘッドを用いることを特徴とするものである。
ヘッド保持部材と液体吐出ヘッドとの間の平行度が確保され、かつ高い面方向位置合わせ精度が得られた液体吐出ユニットを提供することができる。
【0073】
[第6態様]
第6態様は、液体を吐出する装置であって、第1乃至第4態様のいずれかの液体吐出ヘッド又は第5態様の液体吐出ユニットを備えることを特徴とするものである。
ヘッド保持部材と液体吐出ヘッドとの間の平行度が確保され、かつ高い面方向位置合わせ精度が得られた液体を吐出する装置を提供することができる。
【0074】
[第7態様]
第7態様は、1又は2以上の液体吐出ヘッド23がヘッド保持部材(例えば金属ベース21)に保持された液体吐出ユニット20の製造方法であって、前記ヘッド保持部材の被当接面(例えば上面)と対向する前記液体吐出ヘッドの対向面(例えばツバ部60の下面)から突出した突出座面部62,63の座面62a,63aを該被当接面に当接させた状態で、前記ヘッド保持部材に対する前記液体吐出ヘッドの位置合わせを行う位置合わせ工程と、前記位置合わせ工程の後に、前記ヘッド保持部材に対して前記液体吐出ヘッドを固定する固定工程とを有することを特徴とする液体吐出ユニットのものである。
これによれば、ヘッド保持部材と液体吐出ヘッドとの間の平行度が確保され、かつ高い面方向位置合わせ精度が得られた液体吐出ユニットを製造することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 :フレーム部材
2 :振動板
3 :流路板
4 :ノズルプレート
5 :積層圧電素子
6 :PZTベース
7 :FPC
8 :共通液室
9 :加圧液室
10 :流体抵抗部
11 :ノズル孔
12 :連通孔
13 :凸部
14 :ダイヤフラム部
15 :インク流入口
16 :インク供給口
20 :液体吐出ユニット
21 :金属ベース
21a :組付穴
22 :外側部品
23 :液体吐出ヘッド
24 :本体ベース
24A~24C:基準ピン
25 :ユニットベース固定台
25A~25C:基準ピン
25a :空洞部
26x,26y:リニアスケール
30 :XYステージ
34 :クランプ手段
36 :加圧ステージ
37 :θステージ
39 :加圧アクチュエータ
40 :ガイド機構
41 :加圧テーブル
45 :筐体ベース
50 :CCDカメラ
60 :ツバ部
60a :貫通穴
61 :ネジ
62',62,63:突出座面部
62a',62a,63a:座面
62b,63b:面取り部
500 :印刷装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】