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  • 特開-骨材及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072086
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】骨材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20240520BHJP
   C04B 16/02 20060101ALI20240520BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20240520BHJP
   C04B 18/16 20230101ALI20240520BHJP
   B01J 20/02 20060101ALI20240520BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20240520BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B16/02
C04B40/02
C04B18/16
B01J20/02 B
B01J20/30
B01D53/14 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182711
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(71)【出願人】
【識別番号】515331853
【氏名又は名称】株式会社グロースパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100203312
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 敬孝
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴文
(72)【発明者】
【氏名】白岩 誠史
(72)【発明者】
【氏名】土井 雅裕
【テーマコード(参考)】
4D020
4G066
4G112
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020BA30
4D020BB01
4D020CA01
4D020CC21
4D020DA03
4D020DB20
4G066AA73B
4G066AC02C
4G066BA09
4G066BA16
4G066BA20
4G066BA25
4G066BA26
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA03
4G066FA03
4G066FA26
4G066FA40
4G112PA22
4G112RA02
(57)【要約】
【課題】大気中の二酸化炭素を十分に吸収した骨材、及び、大気中の二酸化炭素を十分に吸収した骨材の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の骨材は、1.表面の一部又は全部に、造粒剤とセメントとを含む被覆層を有し、比表面積は2.0cm/g以上であり、又は、2.表面の一部又は全部に、セメントを含む被覆層を有し、比表面積は2.0cm/g以上であり、JIS Z 8801-1:2019に規定される公称目開き4.75mmのふるいを通過する画分の比表面積は2.5cm/g以上、該ふるいにとどまる画分の比表面積は0.5cm/g以上である。本発明の骨材の製造方法は、生コンクリート又は生コンクリートスラッジ水と造粒剤とを混合して、造粒物を得る造粒工程と、該造粒物を、二酸化炭素を含む雰囲気に曝露し、該造粒物に二酸化炭素を吸収させて、上記骨材を得る養生工程とを有し、該造粒物の比表面積は2.0cm/g以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の一部又は全部に、造粒剤とセメントとを含む被覆層を有する骨材であって、
比表面積は、2.0cm/g以上である骨材。
【請求項2】
表面の一部又は全部に、セメントを含む被覆層を有する骨材であって、
比表面積は、2.0cm/g以上であり、
JIS Z 8801-1:2019に規定される公称目開き4.75mmのふるいを通過する画分の比表面積は、2.5cm/g以上であり、
前記ふるいにとどまる画分の比表面積は、0.5cm/g以上である骨材。
【請求項3】
前記造粒剤は、繊維及び繊維構造体の少なくとも一方であり、前記繊維及び前記繊維構造体の少なくとも一方は、セルロース系繊維を含有する請求項1に記載の骨材。
【請求項4】
骨材の製造方法であって、
生コンクリート又は生コンクリートスラッジ水と造粒剤とを混合して、造粒物を得る造粒工程と、
前記造粒物を、二酸化炭素を含む雰囲気に曝露し、前記造粒物に二酸化炭素を吸収させて、請求項1又は2に記載の骨材を得る養生工程と、
を有し、
前記造粒物の比表面積は、2.0cm/g以上である
製造方法。
【請求項5】
前記造粒剤は、繊維及び繊維構造体の少なくとも一方であり、前記繊維及び前記繊維構造体の少なくとも一方は、セルロース系繊維を含有する請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記繊維構造体は、セルロース系繊維を含有する繊維が絡み合った構造を有する粒状物を含む、固液混合物の流動性低下剤であり、
前記粒状物は、平均粒子径が300μm以下であり、BET法による比表面積が0.25m/g以上100m/g以下である
請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記繊維構造体は、セルロース系繊維を含有する繊維が絡み合った構造を有する粒状物を含む、固液混合物の流動性低下剤であり、
前記粒状物は、(1-かさ密度/真密度)×100で計算される空隙率が50%以上であり、BET法による比表面積が0.25m/g以上100m/g以下である
請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記粒状物は、平均粒子径が300μm以下である請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中の二酸化炭素濃度の増加を原因とする気候変動に対する懸念が強まっている。そのため、大気中の二酸化炭素濃度の増加を抑制する技術に注目が集まっている。コンクリートは、大気中の二酸化炭素を吸収し、炭酸カルシウムとして固定化することから、このような技術への応用が試みられている。例えば、特許文献1には、水、セメント、混和材料、及び骨材を含有するコンクリート組成物を硬化して得られ、表層部に空隙を有し、該表層部において、大気中の二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定化成型体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-265030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術によれば、コンクリートによる二酸化炭素の吸収量は十分ではなく、コンクリートによる二酸化炭素吸収の性能は満足に活用されていない。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、大気中の二酸化炭素を十分に吸収した骨材、及び、大気中の二酸化炭素を十分に吸収した骨材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、表面の一部又は全部に、セメントを含む被覆層を有し、かつ、比表面積が2.0cm/g以上である特定の骨材を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0007】
(1)表面の一部又は全部に、造粒剤とセメントとを含む被覆層を有する骨材であって、
比表面積は、2.0cm/g以上である骨材。
【0008】
(2)表面の一部又は全部に、セメントを含む被覆層を有する骨材であって、
比表面積は、2.0cm/g以上であり、
JIS Z 8801-1:2019に規定される公称目開き4.75mmのふるいを通過する画分の比表面積は、2.5cm/g以上であり、
前記ふるいにとどまる画分の比表面積は、0.5cm/g以上である骨材。
【0009】
(3)前記造粒剤は、繊維及び繊維構造体の少なくとも一方であり、前記繊維及び前記繊維構造体の少なくとも一方は、セルロース系繊維を含有する(1)に記載の骨材。
【0010】
(4)骨材の製造方法であって、
生コンクリート又は生コンクリートスラッジ水と造粒剤とを混合して、造粒物を得る造粒工程と、
前記造粒物を、二酸化炭素を含む雰囲気に曝露し、前記造粒物に二酸化炭素を吸収させて、(1)又は(2)に記載の骨材を得る養生工程と、
を有し、
前記造粒物の比表面積は、2.0cm/g以上である
製造方法。
【0011】
(5)前記造粒剤は、繊維及び繊維構造体の少なくとも一方であり、前記繊維及び前記繊維構造体の少なくとも一方は、セルロース系繊維を含有する(4)に記載の製造方法。
【0012】
(6)前記繊維構造体は、セルロース系繊維を含有する繊維が絡み合った構造を有する粒状物を含む、固液混合物の流動性低下剤であり、
前記粒状物は、平均粒子径が300μm以下であり、BET法による比表面積が0.25m/g以上100m/g以下である
(5)に記載の製造方法。
【0013】
(7)前記繊維構造体は、セルロース系繊維を含有する繊維が絡み合った構造を有する粒状物を含む、固液混合物の流動性低下剤であり、
前記粒状物は、(1-かさ密度/真密度)×100で計算される空隙率が50%以上であり、BET法による比表面積が0.25m/g以上100m/g以下である
(5)に記載の製造方法。
【0014】
(8)前記粒状物は、平均粒子径が300μm以下である(7)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、大気中の二酸化炭素を十分に吸収した骨材、及び、大気中の二酸化炭素を十分に吸収した骨材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、二酸化炭素吸収試験における炭酸カルシウム量測定の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[骨材]
本発明の第一の実施形態に係る骨材は、表面の一部又は全部に、造粒剤とセメントとを含む被覆層を有し、比表面積は、2.0cm/g以上である。
【0018】
本発明の第二の実施形態に係る骨材は、表面の一部又は全部に、セメントを含む被覆層を有し、比表面積は、2.0cm/g以上であり、JIS Z 8801-1:2019に規定される公称目開き4.75mmのふるいを通過する画分の比表面積は、2.5cm/g以上であり、前記ふるいにとどまる画分の比表面積は、0.5cm/g以上である。
【0019】
いずれの実施形態においても、骨材の表面の一部又は全部に存在する、セメントを含む被覆層では、残存する水に、セメント中の水酸化カルシウムが溶出し、更に、大気中から二酸化炭素が溶け込む。これにより、上記被覆層では、炭酸カルシウムが生成される。いずれの実施形態に係る骨材も、比表面積が十分に大きいため、大気中の二酸化炭素を十分に吸収することができる。上記被覆層において炭酸カルシウムが生成し充填されることで、骨材は、緻密となり、強度が向上する。いずれの実施形態においても、骨材は、再生骨材として、好適に用いることができる。
【0020】
いずれの実施形態に係る骨材も、比表面積は、骨材への二酸化炭素吸収量が向上しやすい点から、好ましくは2.5cm/g以上、より好ましくは3cm/g以上、更により好ましくは5cm/g以上、一層更により好ましくは7cm/g以上、特に好ましくは10cm/g以上である。上記比表面積の上限は、特に限定されず、30cm/g以下でよく、20cm/g以下でも15cm/g以下でもよい。
【0021】
本明細書において、骨材の比表面積は、骨材をJIS Z 8801-1:2019に規定される公称目開き4.75mmのふるいにかけ、当該ふるいを通過する画分は、形状を球体で近似し、当該ふるいを通過しない画分は、形状を回転楕円体(長径:短径=5:3となるよう、形状を球体で近似した場合の直径をdとしたとき、長径=1.186d、短径=0.711dとした。)で近似し、各画分の粒度分布と骨材の密度とから、計算した値をいう。
【0022】
いずれの実施形態においても、セメントとしては、特に限定されず、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等が挙げられる。上記被覆層におけるセメントは、セメント水和物であっても、セメント硬化物であってもよい。
【0023】
第一の実施形態において、造粒剤としては、特に限定されず、例えば、繊維及び繊維構造体の少なくとも一方;ポリビニルアルコール、カルボキシメチルアルコール、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、デンプン、グアガム等の高分子化合物;ケイ酸ソーダ、ベントナイト等の無機物;コンニャク飛粉が挙げられる。造粒剤の市販品としては、例えば、セルドロン(株式会社グロースパートナーズ製)、RE-CON ZERO(マペイS.p.A.製)、コンバラス(株式会社中部シーアイアイ製)、Nプラス(株式会社フソーマテリアル製)が挙げられる。造粒剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0024】
中でも、造粒剤としては、吸水性の観点で、繊維及び繊維構造体の少なくとも一方が好ましい。本明細書において、繊維構造体とは、繊維を含む構造体をいい、例えば、繊維が絡み合った構造を有する構造体、繊維が織られた構造を有する構造体、繊維同士が配向した構造を有する構造体、繊維が樹脂等のマトリクス中に分散した構造を有する構造体等が挙げられる。前記繊維及び前記繊維構造体の各々は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記繊維及び前記繊維構造体の少なくとも一方は、吸水性の観点から、セルロース系繊維を含有することが好ましい。上記セルロース系繊維としては、特に限定されず、例えば、セルロース及びその誘導体が挙げられる。上記誘導体としては、例えば、アルキル基、カルボキシル基等の少なくとも1種の置換基を有するセルロースが挙げられ、具体的には、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース等が挙げられる。また、上記セルロース系繊維には、例えば、稲わら由来の繊維、米ぬか由来の繊維等も包含される。
【0026】
上記繊維構造体の具体例としては、ペーパースラッジ(例えば、新聞紙由来のペーパースラッジ、トイレットペーパー由来のペーパースラッジ);稲わら;米ぬか;固液混合物の流動性低下剤(以下、単に「流動性低下剤」ともいう。)等が挙げられ、骨材への二酸化炭素吸収量が向上しやすい点から、流動性低下剤が好ましい。
【0027】
流動性低下剤としては、例えば、特許第5931267号に記載の流動性低下剤が挙げられる。流動性低下剤の一態様は、セルロース系繊維を含有する繊維が絡み合った構造を有する粒状物を含み、前記粒状物は、平均粒子径が300μm以下であり、BET法による比表面積が0.25m/g以上100m/g以下である、固液混合物の流動性低下剤である。流動性低下剤の別の態様は、セルロース系繊維を含有する繊維が絡み合った構造を有する粒状物を含み、前記粒状物は、(1-かさ密度/真密度)×100で計算される空隙率が50%以上であり、BET法による比表面積が0.25m/g以上100m/g以下である、固液混合物の流動性低下剤である。この別の態様において、前記粒状物は、平均粒子径が300μm以下であってもよい。なお、本明細書において、平均粒子径とは、光学顕微鏡下で測定した粒状物の粒子径の平均値をいう。
【0028】
流動性低下剤は、本発明の目的を損ねない限り、任意成分として、炭酸カルシウム(CaCO)、カオリン(AlSi10(OH))、タルク(MgSi10(OH))等の無機充填剤を含んでもよい。
【0029】
固液混合物としては、特に限定されず、例えば、泥土、生コンクリート、生コンクリートスラッジ水が挙げられる。固液混合物における液相の含有量は、特に限定されず、典型的には20~90重量%、より典型的には30~75重量%、更により典型的には40~60重量%、特に典型的には45~55重量%である。なお、本明細書において、生コンクリートスラッジ水とは、生コンクリート工場等において、アジテーター車等の設備を洗浄した際に発生する排水をいう。生コンクリートスラッジ水は、セメント水和物、骨材等の固形分を含み、液相には水酸化カルシウムが溶解している。
【0030】
流動性低下剤の製造方法は、特に限定されず、例えば、材料片をミルによって粉砕することを含む方法が挙げられる。材料片としては、例えば、ミルによる粉砕により繊維を形成し得るものが挙げられ、より具体的には、シュレッダー屑、古紙等の紙片が挙げられる。このような方法により、繊維が絡み合った構造を有する粒状物が形成される。
【0031】
また、上記流動性低下剤を構成している粒状物は、一態様において、平均粒子径が300μm以下と極小である。このことは、上記流動性低下剤を固液混合物へ添加し、撹拌を行う際の上記流動性低下剤の分散性の高さに寄与している。上記分散性の観点から、上記平均粒子径は、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下である。なお、上記平均粒子径の下限は、特に限定されないが、典型的には3μm以上、より典型的には50μm以上である。
【0032】
上記流動性低下剤のBET法による比表面積は、上記流動性低下剤による吸水性能の観点から、好ましくは0.25m/g以上100m/g以下、より好ましくは0.5m/g以上10m/g以下、更により好ましくは0.75m/g以上5m/g以下、特により好ましくは1m/g以上2m/g以下である。
【0033】
第二の実施形態において、JIS Z 8801-1:2019に規定される公称目開き4.75mmのふるいを通過する画分の比表面積は、2.5cm/g以上であり、前記ふるいにとどまる画分の比表面積は、0.5cm/g以上である。前記ふるいを通過する画分の比表面積及び前記ふるいにとどまる画分の比表面積が上記範囲内にあると、骨材は、再生クラッシャランとして好適に用いることができる。
【0034】
前記ふるいを通過する画分の比表面積は、目的とする再生クラッシャランに応じて、適宜、調整することができ、好ましくは5cm/g以上、より好ましくは10cm/g以上、更により好ましくは15cm/g以上である。前記ふるいを通過する画分の比表面積の上限は、特に限定されず、30cm/g以下でよく、20cm/g以下でもよい。
【0035】
前記ふるいにとどまる画分の比表面積は、目的とする再生クラッシャランに応じて、適宜、調整することができ、好ましくは1.0cm/g以上、より好ましくは1.5cm/g以上、更により好ましくは2.0cm/g以上である。前記ふるいにとどまる画分の比表面積の上限は、特に限定されず、30cm/g以下でよく、20cm/g以下でも15cm/g以下でもよい。
【0036】
第二の実施形態において、JIS Z 8801-1:2019に規定される公称目開き2.36mmのふるいを通過する画分の割合は、5質量%以上35質量%以下でよい。上記割合がこの範囲内にあると、骨材は、再生クラッシャランとして更に好適に用いることができる。上記割合は、目的とする再生クラッシャランに応じて、適宜、調整することができ、例えば、5質量%以上25質量%以下でも、5質量%以上30質量%以下でも、10質量%以上35質量%以下でもよい。
【0037】
[骨材の製造方法]
本発明に係る骨材の製造方法は、
生コンクリート又は生コンクリートスラッジ水と造粒剤とを混合して、造粒物を得る造粒工程と、
前記造粒物を、二酸化炭素を含む雰囲気に曝露し、前記造粒物に二酸化炭素を吸収させて、上記第一又は第二の実施形態に係る骨材を得る養生工程と、
を有し、
前記造粒物の比表面積は、2.0cm/g以上である。この製造方法により、大気中の二酸化炭素を十分に吸収した骨材を製造することができる。以下、骨材の製造方法について説明するが、骨材の説明と重複する部分については、適宜、記載を省略する。
【0038】
骨材の製造方法において、造粒剤としては、吸水性の観点で、繊維及び繊維構造体の少なくとも一方が好ましく、前記繊維及び前記繊維構造体の少なくとも一方は、吸水性の観点から、セルロース系繊維を含有することが好ましい。
【0039】
骨材の製造方法において、骨材への二酸化炭素吸収量が向上しやすい点から、繊維構造体は、
(1)セルロース系繊維を含有する繊維が絡み合った構造を有する粒状物を含む、固液混合物の流動性低下剤であり、前記粒状物は、平均粒子径が300μm以下であり、BET法による比表面積が0.25m/g以上100m/g以下であり、又は
(2)セルロース系繊維を含有する繊維が絡み合った構造を有する粒状物を含む、固液混合物の流動性低下剤であり、前記粒状物は、(1-かさ密度/真密度)×100で計算される空隙率が50%以上であり、BET法による比表面積が0.25m/g以上100m/g以下である
ことが好ましい。上記(2)において、前記粒状物は、平均粒子径が300μm以下であってもよい。
【0040】
上記流動性低下剤を用いると、セルロース系繊維を含有する繊維の絡み合いにより形成した空隙に、生コンクリート又は生コンクリートスラッジ水の固相及び液相が侵入して捕捉される。より具体的には、骨材の被覆層において、セメントの粒子及び水は、流動性低下剤において繊維が絡み合った綿状構造中の空隙に捕捉されつつ、二酸化炭素を含む雰囲気に曝露されることで、より効率的に炭酸カルシウムを生成することで、骨材は、より緻密となり、更に強度が向上する。
【実施例0041】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
[調製例1:固液混合物の流動性低下剤の調製]
特許第5931267号公報の実施例1に従って、固液混合物の流動性低下剤(以下、単に「流動性低下剤」ともいう。)を調製した。具体的には、以下の通りである。シュレッダー屑(BET法による比表面積0.23m/g)をミルによって粉砕して、平均粒子径200μm、BET法による比表面積1.6m/gの粒状物からなる流動性低下剤を得た。この粒状物を光学顕微鏡で観察したところ、繊維が絡み合った構造を有し、この構造は綿状を呈していた。この粒状物の真密度を島津製作所製乾式密度計で測定したところ、1.9g/cmであった。また、この粒状物のかさ密度は0.25g/cmであった。よって、この粒状物の空隙率は(1-0.25/1.9)×100≒87%であった。以上の通り、この流動性低下剤は、セルロース繊維を含有する繊維構造体である。
【0043】
[実施例1:二酸化炭素吸収試験]
現場において、生コンクリート(水セメント比53.5%(質量比))1mに、実施例1で調製した流動性低下剤20kgを添加し、アジテーター車で撹拌して、造粒物を得た。得られた造粒物を、JIS Z 8801-1:2019に規定される公称目開き4.75mmのふるいにかけたところ、当該ふるいを通過する画分の割合は、全造粒物において、約50質量%であった。当該ふるいを通過する画分は、細骨材に該当するものとし、形状を球体で近似した。一方、当該ふるいを通過しない画分は、粗骨材に該当するものとし、形状を回転楕円体(長径:短径=5:3となるよう、形状を球体で近似した場合の直径をdとしたとき、長径=1.186d、短径=0.711dとした。)で近似した。その上で、各画分の粒度分布と造粒物の密度とから、上記造粒物の比表面積を計算したところ、13.93cm/gであった。
【0044】
造粒物を大気に曝露し、1日後、7日後、又は28日後に、造粒物の表面を光学顕微鏡で観察したところ、骨材の表面の一部又は全部に、流動性低下剤とセメントとを含む被覆層が存在することが確認された。被覆層において、セメントの粒子は、流動性低下剤において繊維が絡み合った綿状構造中の空隙に捕捉されていた。
【0045】
1日後、7日後、及び28日後のいずれにおいても、造粒物について、JIS Z 8801-1:2019に規定される公称目開き4.75mmのふるいを通過する画分の比表面積は、2.5cm/g以上、更にいえば、15cm/g以上であり、前記ふるいにとどまる画分の比表面積は、0.5cm/g以上、更にいえば、2.0cm/g以上であった。
【0046】
造粒物について、JIS Z 8801-1:2019に規定される公称目開き2.36mmのふるいを通過する画分の割合を測定したところ、1日後、7日後、及び28日後のいずれにおいても、5質量%以上35質量%以下であった。
【0047】
造粒物中の炭酸カルシウム量を以下の通りにして見積もった。生コンクリートは、水、セメント、細骨材、及び粗骨材を含み、このうち、水及びセメントのみが二酸化炭素を吸収する。また、造粒物中の炭酸カルシウム量を直接測定すると、細骨材及び粗骨材が共存していることで、測定値にばらつきが生じ、安定した結果を得ることができなかった。そこで、水及びセメントからなるセメントペーストを用いて、二酸化炭素吸収試験を行った。
【0048】
現場において、セメントペースト(水セメント比53.5%(質量比))に、実施例1で調製した流動性低下剤を、流動性低下剤:コンクリート=20kg:1mの割合で添加して混合し、直径50mm、高さ100mmの円柱形の供試体を作製した。上面を含む直径50mm、高さ15mmの円柱体、及び、底面を含む直径50mm、高さ15mmの円柱体を供試体から除いて残った直径50mm、高さ70mmの円柱体の表面から直径50mm、厚さ2mmの試験片を切り出した。試験片を大気に曝露し、1日後、7日後、及び28日後に、この試験片中の炭酸カルシウム量を熱重量分析で測定した。結果を図1に示す。
【0049】
[比較例1:二酸化炭素吸収試験]
流動性低下剤を添加しない以外は実施例1と同様にして、直径50mm、高さ100mmの円柱形の供試体を作製した。供試体を大気に曝露し、1日後、7日後、及び28日後に、供試体の表面から直径50mm、厚さ2mmの試験片を切り出し、この試験片中の炭酸カルシウム量を熱重量分析で測定した。結果を図1に示す。
【0050】
図1から、実施例1の試験片は、比較例1の試験片と比較して、1日後、7日後、及び28日後のいずれにおいても、炭酸カルシウム量が多く、より多くの二酸化炭素を吸収したことが分かる。以上から、実施例1によれば、大気中の二酸化炭素を十分に吸収した骨材を製造することができることが確認された。
図1