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特開2024-72245発光粒子、硬化性樹脂組成物および光変換層
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  • 特開-発光粒子、硬化性樹脂組成物および光変換層 図1
  • 特開-発光粒子、硬化性樹脂組成物および光変換層 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072245
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】発光粒子、硬化性樹脂組成物および光変換層
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/66 20060101AFI20240520BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20240520BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240520BHJP
   C08F 292/00 20060101ALI20240520BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C09K11/66
C09K11/08 G
C08F2/44 A
C08F292/00
G02B5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138805
(22)【出願日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2022182419
(32)【優先日】2022-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】山本 祥子
(72)【発明者】
【氏名】野中 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】乙木 栄志
(72)【発明者】
【氏名】延藤 浩一
【テーマコード(参考)】
2H148
4H001
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
2H148AA07
4H001CC13
4H001XA35
4H001XA55
4H001XA82
4J011AA05
4J011AC04
4J011CA02
4J011CC10
4J011PA06
4J011PB16
4J011PB25
4J011PB40
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA03
4J011QA23
4J011QA24
4J011SA84
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA10
4J026AC00
4J026BA27
4J026BA28
4J026DB06
4J026DB36
4J026FA05
4J026FA09
4J026GA07
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、分散安定性に優れ、光に対する優れた安定性を備えた組成物を実現できる発光粒子および前記発光粒子を含有する硬化性樹脂組成物を提供することにある。さらに、前記硬化性樹脂組成物を用いた光変換層を提供することにある。
【解決手段】 本発明の発光粒子は、メタルハライドからなる半導体ナノ結晶と、前記前記半導体ナノ結晶の表面を被覆する被覆層とを備え、前記被覆層が、pKa<3の有機化合物と、カルボキシル基含有化合物と、シロキサン結合を有する構造とを含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタルハライドからなる半導体ナノ結晶と、
前記半導体ナノ結晶の表面を被覆する被覆層とを備え、
前記被覆層が、pKa<3の有機化合物と、カルボキシル基含有化合物と、シロキサン結合を有する構造とを含有することを特徴とする発光粒子。
【請求項2】
pKa<3の化合物がスルホン酸(塩)基含有化合物およびホスホン酸(塩)基含有化合物の群から選択される1種以上の化合物である請求項1に記載の発光粒子
【請求項3】
前記被覆層の表面に高分子分散剤が配位している請求項1又は請求項2に記載の発光粒子。
【請求項4】
前記半導体ナノ結晶が、一般式ABX(AがCs又はホルムアミジウムイオンを表し、BがPbを表し、XがBrまたはIを表す。)で表される請求項1又は2に記載の発光粒子。
【請求項5】
請求項2に記載の発光粒子と、光硬化性樹脂と、光重合開始剤とを含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物を含む光変換層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光粒子、前記発光粒子を含有する硬化性樹脂組成物および前記硬化性樹脂組成物の硬化物を含む光変換層に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メタルハライドからなる半導体ナノ粒子の一種である、ペロブスカイト構造を有する量子ドットが見出された。ペロブスカイト量子ドットは、例えばCsPbX(X=Cl、Br、I)のような化学式で表され、粒子径とハロゲン化物イオンの種類によって発光波長を調整することが可能である。ペロブスカイト量子ドットは、フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)が高く、発光波長幅(FWHM)が狭いことから、CdSe系材料に代わる量子ドットとして、液晶ディスプレイのバックライト用波長変換フィルムやカラーフィルタなどの光変換層への利用が検討されている。
【0003】
ペロブスカイト量子ドットは優れた光学特性を有するが、水分、光、熱に対する安定性の向上が求められている。これまでに、ペロブスカイト量子ドット粒子の外側に3-アミノプロピルトリエトキシシラン等を用いてシリカ層を形成させ、安定性を高める検討が報告されている(非特許文献1参照。)。しかしながら、この方法によると、シリカ層形成時にペロブスカイト量子ドット粒子が凝集してしまう為、分散安定性が不足する問題があった。また、粒子の凝集はリガンドが脱離しながら進行する為、半値幅や量子収率などの光学特性が悪化し、発光粒子を含む光変換層に光を照射した際には、発光強度が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Journal of Materials Chemistry C, 2019, 7, 9813
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、分散安定性に優れ、光に対する優れた安定性を備えた組成物を実現できる発光粒子および当該発光粒子を含有した硬化性樹脂組成物を提供することにある。さらに、前記硬化性樹脂組成物を用いた光変換層を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、メタルハライドからなり発光性を有する半導体ナノ結晶を含む発光粒子において半導体ナノ結晶の表面を被覆する被覆層中に特定の化合物が含まれる場合に、当該発光粒子を含有した硬化性樹脂組成物を用いて耐光性に優れた硬化膜を形成可能であることを見出し、本発明に想到した。
【0007】
すなわち、本発明の発光粒子は、メタルハライドからなる半導体ナノ結晶と、前記半導体ナノ結晶の表面を被覆する被覆層とを備え、前記被覆層が、pKa<3の有機化合物と、カルボキシル基含有化合物と、シラン化合物とを含有することを特徴とする。
【0008】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記発光粒子と、光硬化性樹脂と、光重合開始剤とを含有することを特徴とする。
【0009】
本発明の光変換層は、上記硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分散安定性に優れ、光に対する優れた安定性を備えた組成物を実現できる発光粒子、当該発光粒子を含有した硬化性樹脂組成物および当該硬化性樹脂組成物を用いた光変換層を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る半導体ナノ結晶を含む発光粒子の一実施形態を示す模式図である。
図2】本発明に係る光変換層の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の発光粒子、該発光粒子を含有する硬化性樹脂組成物および光変換層について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0013】
1.発光粒子
本実施形態の発光粒子は、メタルハライドからなる半導体ナノ結晶と、前記半導体ナノ結晶の表面を被覆する配位子層とを備え、前記配位子層が、pKa<3の有機化合物と、カルボキシル基含有化合物と、シロキサン結合を有する構造とを含有する。
【0014】
本実施形態の発光粒子は、例えば、波長変換フィルム等が有する光変換層を形成する為の硬化性樹脂組成物に好適に用いることができる。かかる硬化性樹脂組成物は、発光粒子の分散安定性に優れる上に、優れた光学物性を備える。
【0015】
上記効果が得られる理由は、明らかではないが、本発明者らは、以下のように推察して
いる。
【0016】
メタルハライドからなる半導体ナノ結晶の表面を被覆層が被覆した発光粒子において、前記被覆層が、オレイン酸等のカルボキシル基含有化合物およびシロキサン結合を有する構造を含有するが、pKa<3の有機化合物を含まない場合には、配位子としてのカルボキシル基含有化合物が経時に伴って半導体ナノ結晶の表面から脱離することがある。その結果、発光粒子間でシロキサン結合が形成されて、発光粒子の凝集が生じやすくなる。
【0017】
これに対し、被覆層が、カルボキシル基含有化合物およびシロキサン結合を有する構造に加えて、pKa<3の有機化合物(但し、カルボキシル基含有化合物を除く。)を含む場合には、pKa<3の有機化合物は酸性度が強く半導体ナノ結晶の表面への吸着能が大きいことから、配位子としてのpKa<3の有機化合物が半導体ナノ結晶の表面に強く吸着し、経時後においても当該有機化合物の半導体ナノ結晶の表面からの脱離を抑制することができる。そのため、本実施形態の発光粒子は、その凝集を抑制でき、優れた分散性を得ることができ、加えて、凝集に伴う粒子サイズ変化が抑制されるため、半値幅や発光ピーク波長等の光学特性の経時変化も抑制することができる。
【0018】
上述のとおり、本発明によれば、発光粒子の分散性に優れ、光に対する優れた安定性を備えた硬化性樹脂組成物を得ることができる。かかる効果は、発光粒子合成後の反応液保管時、反応液精製時、硬化性樹脂組成物の保管時等において好適に発揮される。
【0019】
また、本発明の発光粒子は、光照射による配位子の脱離が抑制される為、配位子脱離により露出した活性表面への酸素、水分、ラジカル等の吸着ダメージを生じづらく、発光強度が低下しづらい。その結果、硬化性樹脂組成物からは、光に対して優れた安定性を有する光変換層を得ることができる。かかる効果は、硬化の際のUV照射時、バックライトの長期間点灯時に好適に発揮される。
【0020】
本発明の発光粒子の実施形態を図1に示すが、実施形態はこれに限定されない。
【0021】
図1に示す発光粒子10は、メタルハライドからなる半導体ナノ結晶11と、前記半導体ナノ結晶10の表面を被覆する被覆層12とを備え、被覆層12が、pKa<3の有機化合物と、カルボキシル基含有化合物と、シロキサン結合を有する構造とを含む。
【0022】
1-1.半導体ナノ結晶
本実施形態における半導体ナノ結晶は、メタルハライドからなり、励起光を吸収して蛍光または燐光を発光するナノサイズの結晶体(ナノ結晶粒子)である。かかるナノ結晶は、例えば、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡によって測定される最大粒子径が100nm以下である結晶体である。ナノ結晶は、例えば、所定の波長の光エネルギーや電気エネルギーにより励起され、蛍光または燐光を発することができる。
【0023】
メタルハライドからなるナノ結晶は、A、M及びXを含む化合物半導体であり、一般式:Aで表される化合物である。
式中、Aは1価の陽イオンを表し、有機カチオンおよび金属カチオンのうちの少なくとも1種である。有機カチオンとしては、アンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、プロトン化チオウレア等が挙げられ、金属カチオンとしては、Cs、Rb、K、Na、Li等のカチオンが挙げられる。
Mは金属イオンを表し、少なくとも1種の金属カチオンである。金属カチオンとしては、1族、2族、3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族から選ばれる金属カチオンが挙げられる。より好ましくは、Ag、Au、Bi、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Eu、Fe、Ga、Ge、Hf、In、Ir、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Re、Rh、Ru、Sb、Sc、Sm、Sn、Sr、Ta、Te、Ti、V、W、Zn、Zr等のカチオンが挙げられる。
Xは、少なくとも1種のアニオンである。アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン等のハロゲン化物イオンが挙げられる。
aは、1~7であり、bは、1~4であり、cは、3~16である。
かかる半導体ナノ結晶は、その粒子サイズ、Xサイトを構成するアニオンの種類および存在割合を調整することにより、発光波長(発光色)を制御することができる。
【0024】
一般式Aで表される化合物は、具体的には、AMX、AMX、AMX、AMX、AMX、AM、AMX、AMX、AMX、A、AMX、AMX、AM、AMX、A、AMX、A、A、A10、A16で表される化合物が好ましい。
式中、Aは、有機カチオンおよび金属カチオンのうちの少なくとも1種である。有機カチオンとしては、アンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、プロトン化チオウレア等が挙げられ、金属カチオンとしては、Cs、Rb、K、Na、Li等のカチオンが挙げられる。
式中、Mは、少なくとも1種の金属カチオンである。具体的には、1種の金属カチオン(M)、2種の金属カチオン(M α β)、3種の金属カチオン(M α β γ)、4種の金属カチオン(M α β γ δ)などが挙げられる。ただし、α、β、γ、δは、それぞれ0~1の実数を表し、かつα+β+γ+δ=1を表す。金属カチオンとしては、1族、2族、3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族から選ばれる金属カチオンが挙げられる。より好ましくは、Ag、Au、Bi、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Eu、Fe、Ga、Ge、Hf、In、Ir、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Re、Rh、Ru、Sb、Sc、Sm、Sn、Sr、Ta、Te、Ti、V、W、Zn、Zr等のカチオンが挙げられる。
式中、Xは、少なくとも1種のハロゲンを含むアニオンである。具体的には、1種のハロゲンアニオン(X)、2種のハロゲンアニオン(X α β)などが挙げられる。アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン等が挙げられ、少なくとも1種のハロゲン化物イオンを含む。
【0025】
上記一般式Aで表されるメタルハライドからなる化合物は、発光特性をよくするために、Bi、Mn、Ca、Eu、Sb、Ybなどの金属イオンが添加(ドープ)されたものであってもよい。
【0026】
上記一般式Aで表されるメタルハライドからなる化合物の中で、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、その粒子サイズ、Mサイトを構成する金属カチオンの種類および存在割合を調整し、さらにXサイトを構成するアニオンの種類および存在割合を調整することにより、発光波長(発光色)を制御することができる点で、半導体ナノ結晶として利用する上で特に好ましい。具体的には、AMX、AMX、AMX、AMX、AMXで表される化合物が好ましい。式中のA、M及びXは上記のとおりである。また、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、上述のように、Bi、Mn、Ca、Eu、Sb、Ybなどの金属イオンが添加(ドープ)されたものであってもよい。
【0027】
ペロブスカイト型結晶構造を示す化合物の中でも、さらに良好な発光特性を示すために、AはCs、Rb、K、Na、Liであり、Mは1種の金属カチオン(M)、または2種の金属カチオン(M α β)であり、Xは塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンであることが好ましい。但し、αとβはそれぞれ0~1の実数を表し、α+β=1を表す。具体的には、Mは、Ag、Au、Bi、Cu、Eu、Fe、Ge、K、In、Na、Mn、Pb、Pd、Sb、Si、Sn、Yb、Zn、Zrから選ばれることが好ましい。
【0028】
メタルハライドからなり、ペロブスカイト型結晶構造を有するナノ結晶の具体的な組成として、CsPbBr、CHNHPbBr、CHNPbBr等のMとしてPbを用いたナノ結晶は、光強度に優れると共に量子効率に優れることから、好ましい。また、CsSnBr、CsSnCl、CsSnBr1.5Cl1.5、CsSbBr、(CHNHBiBr、(CNHAgBiBr、等のMとしてPb以外の金属カチオンを用いたナノ結晶は、低毒性であって環境への影響が少ないことから、好ましい。
【0029】
ナノ結晶として、605~665nmの波長範囲に発光ピークを有する光(赤色光)を発する赤色発光性の結晶、500~560nmの波長範囲に発光ピークを有する光(緑色光)を発する緑色発光性の結晶、及び、420~480nmの波長範囲に発光ピークを有する光(青色光)を発する青色発光性の結晶を選択して用いることができる。また、一実施形態において、これらのナノ結晶を複数組み合わせて用いてもよい。
【0030】
なお、ナノ結晶の発光ピークの波長は、例えば、絶対PL量子収率測定装置を用いて測定される蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルにおいて確認することができる。
【0031】
赤色発光性のナノ結晶は、665nm以下、663nm以下、660nm以下、658nm以下、655nm以下、653nm以下、651nm以下、650nm以下、647nm以下、645nm以下、643nm以下、640nm以下、637nm以下、635nm以下、632nm以下または630nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましく、628nm以上、625nm以上、623nm以上、620nm以上、615nm以上、610nm以上、607nm以上または605nm以上の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい。
これらの上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。なお、以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値および下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0032】
緑色発光性のナノ結晶は、560nm以下、557nm以下、555nm以下、550nm以下、547nm以下、545nm以下、543nm以下、540nm以下、537nm以下、535nm以下、532nm以下または530nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましく、528nm以上、525nm以上、523nm以上、520nm以上、515nm以上、510nm以上、507nm以上、505nm以上、503nm以上または500nm以上の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい。
【0033】
青色発光性のナノ結晶は、480nm以下、477nm以下、475nm以下、470nm以下、467nm以下、465nm以下、463nm以下、460nm以下、457nm以下、455nm以下、452nm以下または450nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましく、450nm以上、445nm以上、440nm以上、435nm以上、430nm以上、428nm以上、425nm以上、422nm以上または420nm以上の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい。
【0034】
ナノ結晶の形状は、特に限定されず、任意の幾何学的形状であってもよく、任意の不規則な形状であってもよい。ナノ結晶の形状としては、例えば、直方体状、立方体状、球状、正四面体状、楕円体状、角錐形状、ディスク状、枝状、網状、ロッド状等が挙げられる。なお、ナノ結晶の形状としては、直方体状、立方体状または球状が好ましい。
【0035】
ナノ結晶の平均粒子径(体積平均径)は、40nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。また、ナノ結晶の平均粒子径は、1nm以上であることが好ましく、1.5nm以上であることがより好ましく、2nm以上であることがさらに好ましい。かかる平均粒子径を有するナノ結晶は、所望の波長の光を発し易いことから好ましい。なお、ナノ結晶の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
【0036】
1-2.被覆層
配位子層12は、pKa<3の有機化合物と、カルボキシル基含有化合物と、シロキサン結合を有する構造とを含有する。これらは、半導体ナノ結晶11の表面に配位した配位子に起因するものである。
【0037】
かかる配位子は、ナノ結晶に含まれるカチオンあるいはアニオンに結合する結合性基を有する化合物であり、具体的には、pKa<3の有機化合物と、カルボキシル基含有化合物と、シロキサン結合を形成可能な化合物の少なくとも3種を必須とする。配位子として、アミノ基含有化合物をさらに用いてもよい。
【0038】
カルボキシル基含有化合物としては、例えば、炭素原子数1~30の直鎖状または分岐状の脂肪族カルボン酸が挙げられる。かかるカルボキシル基含有化合物の具体例としては、例えば、アラキドン酸、クロトン酸、trans-2-デセン酸、エルカ酸、3-デセン酸、cis-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸、4-デセン酸、all cis-5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸、all cis-8,11,14-エイコサトリエン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、trans-3-ヘキセン酸、trans-2-ヘキセン酸、2-ヘプテン酸、3-ヘプテン酸、2-ヘキサデセン酸、リノレン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、3-ノネン酸、2-ノネン酸、trans-2-オクテン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、オレイン酸、3-オクテン酸、trans-2-ペンテン酸、trans-3-ペンテン酸、リシノール酸、ソルビン酸、2-トリデセン酸、cis-15-テトラコセン酸、10-ウンデセン酸、2-ウンデセン酸、酢酸、酪酸、ベヘン酸、セロチン酸、デカン酸、アラキジン酸、ヘンエイコサン酸、ヘプタデカン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヘプタコサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、メリシン酸、オクタコサン酸、ノナデカン酸、ノナコサン酸、n-オクタン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、プロピオン酸、ペンタコサン酸、ノナン酸、ステアリン酸、リグノセリン酸、トリコサン酸、トリデカン酸、ウンデカン酸、吉草酸等が挙げられる。
【0039】
アミノ基含有化合物としては、例えば、炭素原子数1~30の直鎖状または分岐状の脂肪族アミンが挙げられる。かかるアミノ基含有化合物の具体例としては、例えば、1-アミノヘプタデカン、1-アミノノナデカン、ヘプタデカン-9-アミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、2-n-オクチル-1-ドデシルアミン、アリルアミン、アミルアミン、2-エトキシエチルアミン、3-エトキシプロピルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、3-メトキシプロピルアミン、2-メトキシエチルアミン、2-メチルブチルアミン、ネオペンチルアミン、プロピルアミン、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、1-アミノデカン、ノニルアミン、1-アミノウンデカン、ドデシルアミン、1-アミノペンタデカン、1-アミノトリデカン、ヘキサデシルアミン、テトラデシルアミン等が挙げられる。
【0040】
pKa<3の有機化合物は、ナノ結晶に含まれるカチオンに強固に結合する結合性基を有する化合物であり、当該結合性基を介して発光粒子に強固に吸着することが可能である。但し、本願明細書においては、pKa<3の有機化合物として、カルボキシル基含有化合物は除く。pKa値は、25℃、水中での値を表し、多価の酸の場合、第一解離定数を示す。pKa値は、pH滴定法等により算出することができる。また、例えば、CAS(Chemical Abstract Service)の提供するSciFinder(登録商標)等のデータベースを用いて推算することもできる。
【0041】
pKa<3の化合物としては、発光粒子の分散安定性の観点から、スルホン酸(塩)基含有化合物またはホスホン酸(塩)基含有化合物を用いることが好ましく、発光粒子の光安定性の観点から、より好ましくは、スルホン酸(塩)基含有化合物である。そして、ナノ結晶に含まれるカチオンに結合する結合性基の水素原子が金属イオンに置換されていない場合、金属イオンに置換されている場合と比較して半導体ナノ結晶により強固に吸着できるという観点から、特に好ましくは、スルホン酸基含有化合物である。
【0042】
本願明細書において、スルホン酸(塩)基含有化合物とは、スルホン酸基含有化合物およびスルホン酸塩基含有化合物を意味する。スルホン酸塩基とは、-SONa、-SOLi、-SOK等を意味する。ホスホン酸(塩)基含有化合物とは、ホスホン酸基含有化合物およびホスホン酸塩基含有化合物を意味する。ホスホン酸塩基とは、-PO(ONa)、-PO(OLi)、-PO(OK)等を意味する。
【0043】
配位子としてスルホン酸(塩)基またはホスホン酸(塩)基含有化合物を用いた場合、経時でのリガンド脱離および粒子の凝集を抑制できる為、コロイド溶液の分散安定性および光学特性の悪化を防ぐことができる。
【0044】
スルホン酸(塩)基含有化合物としては、例えば、炭素原子数1~30の直鎖状または分岐状の脂肪族、芳香族スルホン酸が挙げられる。かかるスルホン酸(塩)基含有化合物の具体例としては、例えば、α―オレフィンスルホン酸(塩)、ナフタレンスルホン酸(塩)、ナフタレンスルホン酸の縮合物(塩)、フェノールスルホン酸(塩)、アルキルナフタレンスルホン酸(塩)、アルケニルスルホン酸(塩)、アルキルスルホン酸(塩)、アルキルアリールスルホン酸(塩)、ポリスチレンスルホン酸(塩)、等が挙げられる。
【0045】
ホスホン酸(塩)基含有化合物としては、例えば、炭素原子数1~30の直鎖状または分岐状の脂肪族ホスホン酸が挙げられる。かかるホスホン酸(塩)基含有化合物の具体例としては、例えば、α―オレフィンホスホン酸(塩)、アルケニルホスホン酸(塩)、アルキルホスホン酸(塩)等が挙げられる。
【0046】
被覆層を構成するシロキサン結合を有する構造は、被覆層を形成する際に用いた、シロキサン結合を形成可能な反応性基と、半導体ナノ結晶のカチオンに結合可能な結合性基とを有するシラン化合物に起因する。シラン化合物に含まれる反応性基としてのシリル基が加水分解反応によってシラノールが生じ、縮合反応によって隣接する分子同士でシロキサン結合が形成される。加水分解反応を促進させるために、反応溶液中に水を添加してもよく、添加しなくてもよい。水を添加しない場合には、加水分解反応は反応液中に含まれ微量の水分によって進行する。
【0047】
反応性基としては、シロキサン結合が容易に形成されることから、シラノール基、炭素原子数が1~6のアルコキシシリル基のような加水分解性シリル基が好ましい。
【0048】
結合性基としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基、ボロン酸基等が挙げられる。中でも、結合性基としては、カルボキシル基、メルカプト基およびアミノ基のうちの少なくとも1種であることが好ましい。これらの結合性基は、上述の反応性基よりもナノ結晶に含まれるカチオンに対する親和性が高い。このため、配位子は、結合性基をナノ結晶側にして配位し、より容易かつ確実に配位子層を形成することができる。
【0049】
シロキサン結合を形成可能な反応性基を有するシラン化合物としては、結合性基を含有するケイ素化合物を1種以上含有し、または2種以上を併用することができる。
好ましくは、カルボキシル基含有ケイ素化合物、アミノ基含有ケイ素化合物、メルカプト基含有ケイ素化合物の何れか1種を含有し、または2種以上を併用することができる。
【0050】
カルボキシル基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3-(トリメトキシシリル)プロピオン酸、3-(トリエトキシシリル)プロピオン酸、2-、カルボキシエチルフェニルビス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-N’-カルボキシメチルエチレンジアミン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]フタルアミド、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸等が挙げられる。
【0051】
一方、アミノ基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジイソプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルジメチルメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリイソプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリイソプロポキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリイソプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリイソプロポキシシラン、N-[2-[3-(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリエトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリプロポキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリイソプロポキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン等が挙げられる。
【0052】
メルカプト基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジエトキシシラン、3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール等が挙げられる。
【0053】
本実施形態の発光粒子は、半導体ナノ結晶の表面に、pKa<3の有機化合物と、カルボキシル基含有化合物と、シロキサン結合を有する構造とを含有する被覆層を備えたものであってもよいが、上述の被覆層のさらに外側、すなわち、半導体ナノ結晶の側とは反対側の表面に、他のシロキサン結合を有する構造を備えたものであってもよい。前記被覆層に含まれるシロキサン結合を有する構造を第1シリカ層とすれば、被覆層の外側に設けられた他のシロキサン結合を有する構造は第2シリカ層を言うことができる。以下、第2シリカ層を含めて被覆層と言う。
【0054】
被覆層として第1シリカ層と第2シリカ層の両方を有する発光粒子は、第1シリカ層のみを有する発光粒子と比較して、水分、光及び熱に対する安定性を向上することができる。これは、シリカ層の厚みが増すことによって、発光粒子外部からの水分子や酸素分子等の侵入を抑制する効果と、半導体ナノ結晶表面に配位している配位子の脱離を抑制する効果が高まるためと考えられる。
【0055】
このような第2シリカ層を形成可能な化合物としては、入手の容易さ、合成の容易さ、発光粒子の水分、光、熱に対する安定性及び量子収率の観点から、シラザン、ポリシラザン及び下記の一般式(S1)
【化1】
(式中、R、R、R及びR10は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基及び炭素原子数1から10の直鎖状又は分岐状アルコキシ基からなる群から選ばれる基を表し(ただし、R、R、R及びR10のうち少なくとも1つはハロゲン原子、ヒドロキシル基及びアルコキシ基からなる群から選ばれる基を表す。)、
は-O-又は-NH-を表す(ただし、Zのうち少なくとも1つは-O-を表す。)が、Zが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m3は1から1,000,000の整数を表す。)で表される化合物から選ばれる1つ以上の化合物から形成された構造であることが好ましく、前記第2シリカ層はシラザン、ポリシラザン及び下記の一般式(S11)
【化2】
(式中、R71、R81、R91及びR101は各々独立して炭素原子数1から10の直鎖状アルコキシ基からなる群から選ばれる基を表し、
31は-O-又は-NH-を表す(ただし、Z31のうち少なくとも1つは-O-を表す。)が、Z31が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m31は1から10,000の整数を表す。)で表される化合物が挙げられる。中でも、下記の一般式(S111)
【化3】
(式中、R711、R811、R911及びR1011は各々独立してメトキシ基又はエトキシ基を表し、
m311は1から1,000の整数を表す。)で表される化合物であることが好ましく、さらには、下記の一般式(S1111)
【化4】
(式中、R7111、R8111、R9111及びR10111はメトキシ基又はエトキシ基を表し、
m3111は1から100の整数を表す。)で表される化合物であることがより好ましい。
【0056】
前記第2シリカ層を形成するための化合物として、シラザンとして具体的には、オクタメチルシクロテトラシラザン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシラザンが挙げられる。ポリシラザンとして具体的には、「NN120-10」、「NN120-20」(以上、AZエレクトロニックマテリアルズ社製)、「Durazane(登録商標)1500 Slow Cure」、「Durazane1500 Rapid Cure」(以上、メルクパフォーマンスマテリアルズ社製)が挙げられる。一般式(S1)で表される化合物として具体的には、オルトケイ酸テトラエチル、オルトケイ酸テトラメチル、オルトケイ酸テトライソプロピル、オルトケイ酸テトラプロピル、「メチルシリケート51」(コルコート社製)、「MKC(登録商標)シリケートMS51」(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。第2シリカ層を形成するための化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0057】
シリカ層の厚さは、第1シリカ層のみを有する場合、第1シリカ層、第2シリカ層の両方を有する場合に関係なく、その合計が0.5~50nmであることが好ましく、1.0~30nmであることがより好ましい。被覆層におけるシリカ層の厚さがこの範囲である発光粒子は、水分、光、熱に対する安定性を十分に高めることができる。なお、シリカ層の厚さは、例えば高分解能電子顕微鏡により測定することができる。
【0058】
本実施形態の発光粒子は、発光粒子の分散性の観点から、被覆層の表面に高分子分散剤が配位していることが好ましい。高分子分散剤としては、発光粒子に対して配位可能な官能基を有すると共に、発光粒子が分散される溶媒に対する親和性を有する親和性基を有する化合物を使用でき、750以上の重量平均分子量を有することが好ましい。高分子分散剤が配位した発光粒子は、高分子分散剤同士の静電反発および/または立体反発により、溶媒に対する分散性をより向上することができる。高分子分散剤は、発光粒子の表面に吸着していることが好ましいが、コロイド溶液中に遊離していてもよい。
【0059】
発光粒子に対して配位可能な官能基としては、酸性官能基、塩基性官能基および非イオン性官能基が挙げられる。酸性官能基は、解離性のプロトンを有しており、アミン、水酸化物イオンのような塩基により中和されていてもよく、塩基性官能基は、有機酸、無機酸のような酸により中和されていてもよい。
【0060】
酸性官能基としては、カルボキシ基(-COOH)、スルホ基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)、ホスホン酸基(-PO(OH))、リン酸基(-OPO(OH))、ホスフィン酸基(-PO(OH)-)、メルカプト基(-SH)等が挙げられる。
【0061】
塩基性官能基としては、一級、二級および三級アミノ基、アンモニウム基、イミノ基、並びに、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、トリアゾール等の含窒素ヘテロ環基等が挙げられる。
【0062】
非イオン性官能基としては、ヒドロキシ基、エーテル基、チオエーテル基、スルフィニル基(-SO-)、スルホニル基(-SO-)、カルボニル基、ホルミル基、エステル基、炭酸エステル基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、チオアミド基、チオウレイド基、スルファモイル基、シアノ基、アルケニル基、アルキニル基、ホスフィンオキサイド基、ホスフィンスルフィド基等が挙げられる。
【0063】
発光粒子が分散される溶媒として、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等を用いる場合には、親和性基としては、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、環状エステル基、ポリエステル基、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル基、アリール基、複素環基等が挙げられる。
【0064】
高分子分散剤は、単一のモノマーの重合体(ホモポリマー)であってよく、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、高分子分散剤は、ランダム共重合体、ブロック共重合体またはグラフト共重合体のいずれであってもよい。高分子分散剤がグラフト共重合体である場合、くし形のグラフト共重合体であってよく、星形のグラフト共重合体であってもよい。
【0065】
高分子分散剤としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレア樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンのようなポリアミン、ポリイミド等が挙げられる。
【0066】
高分子分散剤には、市販品を使用することもできる。高分子分散剤の市販品としては、例えば味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーPBシリーズ、BYK社製のDISPER BYKシリーズ、BASF社製のEfkaシリーズ等が挙げられる。
【0067】
本実施形態の発光粒子の平均粒子径(体積平均径)は、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましく、50nm以下であることが特に好ましい。また、発光粒子の平均粒子径は、1nm以上であることが好ましく、1.5nm以上であることがより好ましく、2nm以上であることがさらに好ましく、5nm以上であることが特に好ましい。かかる平均粒子径を有する発光粒子は、所望の波長の光を発し易いことから好ましい。なお、発光粒子の平均粒子径(体積平均径)は、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡より各粒子の粒子径を測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
【0068】
本実施形態の発光粒子は、例えば、以下のようにして製造することができる。半導体ナノ結晶粒子の原料化合物と、pKa<3の有機化合物と、カルボキシル基含有化合物と、シロキサン結合を形成可能な化合物と、溶媒とを混合し、半導体ナノ結晶粒子及びその表面にポリシロキサン結合を形成させることにより、半導体ナノ結晶粒子の表面に被覆層を備えた発光粒子が得られる。被覆層のさらに外側に、第2シリカ層を備える場合、発光粒子と、高分子分散剤と、溶媒とを混合して混合物を得た後、第2シリカ層を形成可能な化合物を混合物に添加し、ポリシロキサン結合を形成させることにより、発光粒子の表面に高分子分散剤及びシリカを含む層を備えた発光性粒子を得ることができる。
【0069】
本実施形態の発光粒子は、バッチリアクターを使用して製造することもできる。粒子サイズのバラつき低減、不純物の混入防止、製造効率、温度制御等の観点から、連続層流、液滴ベース又は強制薄膜式等のフローリアクターを使用して製造することがより好ましい。配位子層におけるシロキサン結合の形成を促進するために、反応時に水を添加しても良い。また、水を添加せずに反応溶媒又は反応雰囲気に含まれる微量の水分によって、シロキサン結合を形成しても良い。また、加熱によってシロキサン結合の形成を促進しても良い。その場合、加熱温度は20℃以上、120℃以下が好ましく、30℃以上、100℃以下がより好ましく、40℃以上、80℃以下が特に好ましい。
【0070】
本実施形態の発光粒子は、溶媒に分散したコロイド溶液として得ることができる。得られた発光粒子を含有するコロイド溶液は、精製によって、過剰の製造原料又は前駆体、配位子、不純物、望ましくない粒子サイズを有する粒子等を除去することが好ましい。精製方法としては、濾過、再沈殿、抽出、遠心分離、吸着、再結晶、カラムクロマトグラフ等が挙げられる。作業の容易さ、コストの観点から、得られた発光粒子を含有するコロイド溶液を、遠心分離により精製することが好ましい。精製した発光粒子は、有機溶媒に再分散させても良く、乾燥させて固体として取り出しても良い。次工程にすぐに使用しない場合は、光学特性の安定性及び分散安定性の観点から、精製した発光粒子はコロイド溶液とすることが好ましい。精製後の発光粒子を分散させる有機溶媒としては、低極性の溶媒が好ましい。有機溶媒として具体的には、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンが挙げられる。得られた発光粒子を含有するコロイド溶液は、光学物性の安定性の観点から、水、アルコール等の不純物をなるべく含有しないことが好ましい。得られた発光粒子を含有するコロイド溶液において、水又はアルコールは1.0%以下であることが好ましく、水又はアルコールは0.1%以下であることがより好ましく、水又はアルコールは100ppm以下であることが特に好ましい。また、得られた発光粒子を含有するコロイド溶液は、コロイド溶液の分散安定性の観点から、遮光下、低温で保管することが好ましい。その場合、保管温度は-70℃以上、40℃以下が好ましく、-50℃以上、30℃以下がより好ましく、-30℃以上、20℃以下がさらに好ましく、-20℃以上、10℃以下が特に好ましい。
【0071】
2.硬化性樹脂組成物
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、上述した発光粒子に加えて、さらに、硬化性樹脂と光重合開始剤とを含有する。この硬化性樹脂組成物は、LED、バックライト、ダウンライト、もしくは他のディスプレイ、もしくは照明ユニット、もしくは光学フィルム等における光変換層を形成する用途に好適に用いることができる。該組成物は、比較的高額である半導体ナノ結晶を含む発光粒子、硬化性樹脂等の材料を無駄に消費せずに、必要な箇所に必要な量を用いるだけで画素部(光変換層)を形成できる点で、フォトリソグラフィ方式よりも、インクジェット方式に適合するよう、適切に調製して用いることが好ましい。また、該組成物は、バリアフィルム間に担持させ、波長変換フィルムとして用いることが好ましい。
【0072】
硬化性樹脂組成物は、発光粒子として、赤色発光粒子、緑色発光粒子及び青色発光粒子のうちのいずれか1種を含んでもよく、2種以上を含んでいてもよい。硬化性樹脂組成物が2種以上の発光粒子を含む場合、本実施形態の発光粒子に加えて、他の発光粒子を含んでいても良い。他の発光粒子としては、例えばCdSe、InP等の半導体ナノ粒子、無機蛍光体、有機発光材料、有機金属錯体が挙げられる。
【0073】
2-1.硬化性樹脂
本実施形態の硬化性樹脂組成物中に含まれる硬化性樹脂は、硬化物中においてバインダーとして機能し、且つ、光(活性エネルギー線)の照射によって重合する光重合性化合物であり、光重合性のモノマー又はオリゴマーを用いてもよい。
【0074】
光重合性化合物は、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物等を用いることができるが、速硬化性の観点から、ラジカル重合性化合物を用いる事が好ましい。
【0075】
ラジカル重合性化合物は、例えば、エチレン性不飽和基を有する化合物である。本明細書において、エチレン性不飽和基とは、エチレン性不飽和結合(重合性炭素-炭素二重結合)を有する基を意味する。エチレン性不飽和基を有する化合物におけるエチレン性不飽和結合の数(例えばエチレン性不飽和基の数)は、例えば、1~4である。
【0076】
エチレン性不飽和基を有する化合物としては、例えば、ビニル基、ビニレン基、ビニリデン基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられる。外部量子効率をより向上させることができる観点では、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、単官能又は多官能の(メタ)アクリレートがより好ましく、単官能又は二官能の(メタ)アクリレートが更に好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及びそれに対応する「メタクリロイル基」を意味する。「(メタ)アクリレート」との表現についても同様である。また、単官能の(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイル基を1つ有する(メタ)アクリレートを意味し、多官能の(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する(メタ)アクリレートを意味する。
【0077】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]フタルイミド、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]テトラヒドロフタルイミド等が挙げられる。
【0078】
多官能(メタ)アクリレートは、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能(メタ)アクリレート、5官能(メタ)アクリレート、6官能(メタ)アクリレート等である。例えば、ジオール化合物の2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、トリオール化合物の2つまたは3つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジまたはトリ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0079】
2官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのネオペンチルグリコールに4モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールAに2モルのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのトリメチロールプロパンに3モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールAに4モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0080】
3官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1モルのトリメチロールプロパンに3モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの3つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0081】
4官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0082】
5官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0083】
6官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0084】
多官能(メタ)アクリレートは、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトールの複数の水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたポリ(メタ)アクリレート、一分子中にエチレン性二重結合を2つ以上有する芳香族ウレタンオリゴマー、脂肪族ウレタンオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー及びその他特殊オリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種の化合物であってもよい。
【0085】
(メタ)アクリレート化合物は、リン酸基を有する、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキルリン酸(メタ)アクリレート等であってもよい。
【0086】
本実施形態の硬化性樹脂組成物において、硬化可能成分を、光重合性化合物のみ又はそれを主成分として構成する場合には、光重合性化合物としては、重合性官能基を1分子中に2以上有する2官能以上の光重合性化合物を必須成分として用いることが、硬化物の耐久性(強度、耐熱性等)をより高めることができることからより好ましい。
【0087】
該組成物を調製した際の粘度安定性に優れる観点、吐出安定性により優れる観点および発光粒子塗膜の製造時における硬化収縮に起因する塗膜の平滑性の低下を抑制し得る観点から、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを組み合わせて用いることが好ましい。
【0088】
光重合性化合物の分子量は、例えば、50以上であり、100以上又は150以上であってもよい。光重合性化合物の分子量は、例えば、500以下であり、400以下又は300以下であってもよい。該組成物をインクジェット方式の印刷方式を用いて塗布する場合、粘度と、吐出後のインクの耐揮発性を両立しやすい観点から、好ましくは50~500であり、より好ましくは100~400である。該組成物をロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、ダイコーター等の印刷方式を用いてフィルム等の基材に塗布する場合には、粘度とレベリング性を両立しやすい観点から、好ましくは100~500であり、より好ましくは150~400である。
【0089】
該組成物の硬化物の表面のべたつき(タック)を低減する観点では、光重合性化合物として、環状構造を有するラジカル重合性化合物を用いることが好ましい。環状構造は、芳香環構造であっても非芳香環構造であってもよい。環状構造の数(芳香環及び非芳香環の数の合計)は、1又は2以上であるが、3以下であることが好ましい。環状構造を構成する炭素原子の数は、例えば、4以上であり、5以上又は6以上であることが好ましい。炭素原子の数は、例えば20以下であり、18以下であることが好ましい。
【0090】
芳香環構造は、炭素数6~18の芳香環を有する構造であることが好ましい。炭素数6~18の芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環等が挙げられる。芳香環構造は、芳香族複素環を有する構造であってもよい。芳香族複素環としては、例えば、フラン環、ピロール環、ピラン環、ピリジン環等が挙げられる。芳香環の数は、1であっても、2以上であってもよいが3以下であることが好ましい。有機基は、2以上の芳香環が単結合により結合した構造(例えば、ビフェニル構造)を有していてもよい。
【0091】
非芳香環構造は、例えば、炭素数5~20の脂環を有する構造であることが好ましい。炭素数5~20の脂環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等のシクロアルカン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環等のシクロアルケン環などが挙げられる。脂環は、ビシクロウンデカン環、デカヒドロナフタレン環、ノルボルネン環、ノルボルナジエン環、イソボルニル環等の縮合環であってもよい。非芳香環構造は、非芳香族複素環を有する構造であってもよい。非芳香族複素環としては、例えば、テトラヒドロフラン環、ピロリジン環、テトラヒドロピラン環、ピぺリジン環等が挙げられる。
【0092】
環状構造を有するラジカル重合性化合物は、好ましくは、環状構造を有する単官能又は多官能(メタ)アクリレートである。環状構造を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル( メタ) アクリレート等が挙げられる。環状構造を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、PO変性ビスフェノールAジアクリレート等が挙げられる。
【0093】
環状構造を有するラジカル重合性化合物の含有量は、該硬化性樹脂組成物の表面のべたつき(タック)を抑制しやすい観点から、該硬化性樹脂組成物中における光重合性化合物の全質量を基準として、3~85質量%であることが好ましく、5~65質量%であることがより好ましく、10~45質量%であることがさらに好ましく、15~35質量%であることが特に好ましい。
【0094】
光重合性化合物としては、画素部の表面の均一性に優れる観点、該硬化性樹脂組成物の硬化性が良好となる観点、画素部(該硬化性樹脂組成物の硬化物)の耐溶剤性及び耐磨耗性が向上する観点、及び、より優れた光学特性(例えば外部量子効率)が得られる観点から、2種以上のラジカル重合性化合物を用いることが好ましく、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを組み合わせて用いることが好ましい。発光粒子含有組成物中に含まれる光重合性化合物の量は、40質量%以上、95質量%以下であることが好ましく、45質量%以上、94質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上、93質量%以下であることが特に好ましい。
【0095】
光重合性化合物は、信頼性に優れる画素部(該硬化性樹脂組成物の硬化物)が得られやすい観点から、アルカリ不溶性であることが好ましい。本明細書中、光重合性化合物がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃における光重合性化合物の溶解量が、光重合性化合物の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。光重合性化合物の上記溶解量は、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。
【0096】
2-2.光重合開始剤
本実施形態の硬化性樹脂組成物中に用いられる光重合開始剤は、例えば光ラジカル重合開始剤が挙げられる。光ラジカル重合開始剤としては、分子開裂型又は水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤が好適である。
【0097】
分子開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド等が好適に用いられる。これら以外の分子開裂型の光ラジカル重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン及び2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンを併用してもよい。
【0098】
水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルスルフィド等が挙げられる。分子開裂型の光ラジカル重合開始剤と水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤とを併用してもよい。
【0099】
本実施形態の硬化性樹脂組成物中に用いられる光重合開始剤は、フォトブリーチング性を有する開始剤を含有することが好ましい。この場合、硬化物の光透過性が高まりやすい。フォトブリーチング性を有する開始剤は、例えば、フォトブリーチング性を有するオキシムエステル系化合物とアシルホスフィンオキサイド系化合物とのうち少なくとも一方を含有する。
【0100】
フォトブリーチング性を有するオキシムエステル系化合物としては、例えば、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0101】
フォトブリーチング性を有するアシルホスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0102】
本実施形態の硬化性樹脂組成物中に用いられる光重合開始剤は、少なくとも1種以上のアシルホスフィンオキサイド系化合物を含有することが好ましい。これにより、塗膜の内部硬化性に優れ、かつ硬化膜の初期着色度が小さい塗膜を形成することができる。特に、少なくとも1種以上のアシルホスフィンオキサイド系化合物を含有する場合には、365ナノメートル、385ナノメートル、395ナノメートル又は405ナノメートル等、特定波長を中心とする±15ナノメートル域の狭スペクトル出力を有する紫外発光ダイオード(UV-LED)に適しており、好ましい。
【0103】
光重合開始剤の含有量は、光重合性化合物への溶解性の観点、硬化性樹脂組成物の硬化性の観点、画素部(該組成物の硬化物)の経時安定性(外部量子効率の維持安定性)の観点から、光重合性化合物100質量%に対して、0.1~20質量%であることが好ましく、0.5~15質量%であることがより好ましく、1~15質量%であることがさらに好ましく、3~7質量%であることが特に好ましい。
【0104】
光重合開始剤におけるアシルホスフィンオキサイド系化合物の含有比率は、該硬化性樹脂組成物の硬化性の観点から、50~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましく、70~100質量%であることが特に好ましい。
【0105】
2-3.その他の成分
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、その効果を阻害しない範囲で、上述した成分以外の成分を更に含有していてもよい。具体的には、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、界面活性剤、光散乱粒子、連鎖移動剤、溶剤等が挙げられる。
【0106】
重合禁止剤として具体的には、p-メトキシフェノール、クレゾール、tert-ブチルカテコール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン等のキノン系化合物、p-フェニレンジアミン、4-アミノジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン等のアミン系化合物、フェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネート等のチオエーテル系化合物、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカル、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカル等のN-オキシル化合物、N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルナフチルアミン、N-ニトロソジナフチルアミン等のニトロソ系化合物が挙げられる。重合禁止剤の添加量は、硬化性樹脂組成物に含まれる光重合性化合物の総量に対して、0.01質量%以上、1.0質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
【0107】
酸化防止剤として、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の従来公知の酸化防止剤として用いられる化合物が挙げられる。具体的には、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(「IRGANOX1010」(IRGANOXは登録商標である。))、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(「IRGANOX1035」)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(「IRGANOX1076」)が挙げられる。酸化防止剤の添加量は、硬化性樹脂組成物に含まれる光重合性化合物の総量に対して、0.01質量%以上、2.0質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上、1.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0108】
分散剤として具体的には、TOP(トリオクチルホスフィン)、TOPO(トリオクチルホスフィンオキサイド)、ヘキシルホスホン酸(HPA)等のリン原子含有化合物、オレイルアミン、オクチルアミン、トリオクチルアミン等の窒素原子含有化合物、1-デカンチオール、オクタンチオール、ドデカンチオール等の硫黄原子含有化合物、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の高分子分散剤、DISPERBYK(ビックケミー社製、登録商標)、TEGO Dispers(エボニック社製、TEGOは登録商標である。)、EFKA(BASF社製、登録商標)、SOLSPERSE(日本ルーブリゾール社製、登録商標)、アジスパー(味の素ファインテクノ社製、登録商標)、DISPARLON(楠本化成社製、登録商標)、フローレン(共栄社化学社製)が挙げられる。分散剤の添加量は、硬化性樹脂組成物に含まれる光重合性化合物の総量に対して、0.05質量%以上、10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上、5質量%以下であることが特に好ましい。
【0109】
界面活性剤は、発光粒子を含有する薄膜を形成する場合に、膜厚ムラを低減させ得る化合物が好ましい。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類および脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類およびポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、及び第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、並びにシリコーン系やフッ素系の界面活性剤が挙げられる。具体的には、例えば、「メガファックF-114」、「メガファックF-251」、「メガファックF-281」(以上、DIC社製、メガファックは登録商標である。)、「フタージェント100」、「フタージェント100C」、「フタージェント110」(以上、ネオス社製、フタージェントは登録商標である。)、「BYK-300」、「BYK-302」、「BYK-306」(以上、BYK社製、BYKは登録商標である。)、「TEGO Rad2100」、「TEGO Rad2011」、「TEGO Rad2200N」(以上、エボニック社製、TEGOは登録商標である。)、「DISPARLON OX-880EF」、「DISPARLON OX-881」、「DISPARLON OX-883」(以上、楠本化成社製、DISPARLONは登録商標である。)、「ポリフローNo.7」、「フローレンAC-300」、「フローレンAC-303」(以上、共栄社化学社製)が挙げられる。界面活性剤の添加量は、硬化性樹脂組成物に含まれる光重合性化合物の総量に対して、0.005質量%以上、2質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
【0110】
光散乱粒子は光学的に不活性な無機微粒子であることが好ましい。光散乱粒子は、発光層(光変換層)に照射された光源部からの光を散乱させることができる。光散乱粒子を構成する材料としては、例えば、タングステン、ジルコニウム、チタン、白金、ビスマス、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、プラチナ、金のような単体金属;シリカ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナホワイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛のような金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウムのような金属炭酸塩;水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の複合酸化物、次硝酸ビスマスのような金属塩等が挙げられる。
【0111】
中でも、光散乱粒子を構成する材料としては、漏れ光の低減効果により優れる観点から、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウムおよびシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化チタン、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、酸化チタンであることが特に好ましい。
【0112】
連鎖移動剤は、該組成物の基材との密着性をより向上させること等を目的として使用される成分である。連鎖移動剤としては、例えば、芳香族炭化水素類;クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、ブロモトリクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素類;オクチルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、n-ペンチルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン、n-テトラデシルメル、n-ドデシルメルカプタン、t-テトラデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタンのようなメルカプタン化合物;ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4-ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4-ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-(N,N-ジブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンのようなチオール化合物;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドのようなスルフィド化合物;N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジビニルアニリン、ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー、アクロレイン、アリルアルコール、ターピノーレン、α-テルピネン、γ-テルビネン、ジペンテン等が挙げられるが、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、チオール化合物が好ましい。
【0113】
連鎖移動剤の添加量は、硬化性樹脂組成物に含まれる光重合性化合物の総量に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、1.0~5質量%であることがより好ましい。
【0114】
溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、クロロホルム、トルエン、オクタン、クロロベンゼン、テトラリン、ジフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、又はそれらの混合物などが挙げられる。溶剤の沸点は、画素部の形成時に、該組成物の硬化前に該組成物から溶剤を除去する必要があるため、溶剤を除去しやすい観点から、溶剤の沸点は300℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。硬化性樹脂組成物が溶剤を含む場合、溶剤の含有量は、該組成物の全質量(溶剤を含む)を基準として、0~5質量%以下であることが好ましい。
【0115】
2-4.硬化性樹脂組成物の調製方法
本実施形態の硬化性樹脂組成物、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、上記した各成分を配合することにより調製することができる。該組成物を調製する具体的な方法は、前記発光粒子を有機溶剤中で合成、遠心分離により分取した沈殿物から有機溶剤を除去し、次いで光重合性化合物に分散させる。発光粒子の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、3本ロールミル、ペイントコンディショナー、アトライター、分散攪拌機、超音波等の分散機を使用することにより行うことができる。さらに、この分散液に光重合開始剤、必要に応じて、発光粒子および光重合開始剤以外の成分を添加、攪拌混合することにより調製することができる。また、光散乱粒子を使用する場合は、該光散乱粒子と高分子分散剤を混合、ビーズミルにより前記光重合性化合物へ分散させたミルベースを別途作成し、前記発光粒子と共に光重合性化合物、光重合開始剤とを混合することにより調製することができる。
【0116】
次に、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物の調製方法について具体的に説明する。該組成物は、例えば、上述した該組成物の構成成分を混合し、分散処理を行うことによって得ることができる。また、構成成分を個別に混合し、必要に応じて分散処理した分散液を準備し、各分散液を混合することによって得ることができる。以下では、硬化性樹脂組成物の製造方法の一例として、光散乱粒子及び高分子分散剤を更に含有する該組成物の製造方法を説明する。
【0117】
光散乱粒子の分散液を用意する工程では、光散乱粒子、高分子分散剤及び光重合性化合物とを混合し、分散処理を行うことにより光散乱粒子の分散液を調製することができる。混合及び分散処理は、ビーズミル、ペイントコンディショナー、遊星撹拌機等の分散装置を用いて行うことができる。上述の方法によると、光散乱粒子の分散性が良好となり、光散乱粒子の平均粒子径を所望の範囲に調整しやすい観点から、ビーズミル又はペイントコンディショナーを用いることが好ましい。
【0118】
3.硬化性樹脂組成物の使用例
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、光変換層用途に好適である。硬化性樹脂組成物を基板上に担持させる際の方法としては、スピンコーティング、ダイコーティング、エクストルージョンコーティング、ロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ディッピング、インクジェット法、プリント法等を挙げることができる。またコーティングの際、発光粒子含有組成物に有機溶媒を添加しても良い。有機溶媒としては、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、非プロトン性溶媒が挙げられるが、発光粒子の安定性の観点から、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エステル系溶媒が好ましい。有機溶媒として具体的には、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンが挙げられる。これらは単独でも、組み合わせて用いても良く、その蒸気圧と発光粒子含有組成物の溶解性を考慮し、適宜選択すれば良い。添加した有機溶媒を揮発させる方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥を用いることができる。フィルムの膜厚は、用途に応じて適宜調整して良いが、例えば0.1μm以上、10mm以下であることが好ましく、1μm以上、1mm以下であることが特に好ましい。
【0119】
本実施形態の硬化性樹脂組成物を基板上に担持させる際の基板の形状としては、平板の他に、曲面を構成部分として有していても良い。基板を構成する材料は、有機材料、無機材料を問わずに用いることができる。基板の材料となる有機材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリアリレート、ポリスルホン、トリアセチルセルロース、セルロース、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられ、また、無機材料としては、例えば、シリコン、ガラス、方解石等が挙げられる。
【0120】
本実施形態の硬化性樹脂組成物を基板上に担持させ重合させる際、迅速に重合が進行することが望ましいため、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射することにより重合させる方法が好ましい。照射時の温度は、本実施形態の発光粒子の粒子形状が保持される温度範囲内であることが好ましい。光重合によってフィルムを製造しようとする場合には、意図しない熱重合の誘起を避ける意味からも可能な限り室温に近い温度、即ち、典型的には25℃での温度で重合させることが好ましい。活性エネルギー線の強度は、0.1mW/cm以上、2.0W/cm以下であることが好ましい。強度が0.1mW/cm未満の場合、光重合を完了させるのに多大な時間が必要になり生産性が悪化してしまい、2.0W/cmよりも高い場合、発光粒子又は発光粒子含有組成物が劣化してしまう危険がある。
【0121】
重合によって得られた硬化性樹脂組成物の硬化物からなる光変換層は、初期の特性変化を軽減し、安定的な特性発現を図ることを目的として熱処理を施すこともできる。熱処理の温度は50~250℃の範囲であることが好ましく、熱処理時間は30秒~12時間の範囲であることが好ましい。
【0122】
光変換層は、基板から剥離して単体で用いても良く、剥離せずに用いても良い。また、得られた光変換層を積層しても良く、他の基板に貼り合わせて用いても良い。
【0123】
本実施形態の硬化性樹脂組成物の硬化物からなる光変換層を積層構造体に用いる場合、積層構造体は、例えば基板、バリア層、光散乱層等の任意の層を有していても良い。基板を構成する材料としては例えば前記のものが挙げられる。積層構造体の構成例としては、例えば、2枚の基板間に上記硬化性樹脂組成物を形成材料とする光変換層を挟持した構造が挙げられる。その場合、空気中の水分や酸素から発光粒子含有組成物を形成材料とする光変換層を保護するために、基板間の外周部を封止材によって封止しても良い。また、バリア層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ガラスが挙げられる。光を均一に散乱させるために、光散乱層を有しても良い。光散乱層としては、例えば、前記光散乱粒子を含有する層及び光散乱フィルムが挙げられる。図3は、本実施形態の積層構造体の構成を模式的に示す断面図である。図3では、図面が煩雑になることを避けるため、断面を示すハッチングの記載を省略している。積層構造体40は、第1の基板41及び第2の基板42の間に、本実施形態の光変換層44が挟持されている。光変換層44は、光散乱粒子441と発光粒子442とを含有する発光粒子含有組成物を形成材料として形成され、光散乱粒子441及び発光粒子442は、光変換層中に均一に分散している。発光粒子442としては、本実施形態の発光粒子の他、CdSe、InP等の半導体ナノ粒子、無機蛍光体、有機発光材料、有機金属錯体を1種類以上含んでいても良い。光変換層44は、封止材によって形成された封止層43によって封止されている。
【0124】
本実施形態の発光粒子を含む積層構造体は、発光デバイス用途に好適である。発光デバイスの構成例としては、例えば、プリズムシート、導光板、本実施形態の発光粒子を含む積層構造体及び光源を有する構造が挙げられる。光源としては、例えば、発光ダイオード、レーザー、電界発光デバイスが挙げられる。
【0125】
本実施形態の発光粒子を含む積層構造体は、ディスプレイ用の波長変換部材として使用されることが好ましい。波長変換部材として使用する場合の構成例としては、例えば、2枚のバリア層の間に本実施形態の発光粒子含有組成物を形成材料とする光変換層を封止した積層構造体を、導光板上に設置する構造が挙げられる。この場合、導光板の側面に設置された発光ダイオードからの青色光を、前記積層構造体を通すことによって、緑色光や赤色光へと変換し、青色光、緑色光及び赤色光が混色されて白色光を得ることができることから、ディスプレイ用のバックライトとして使用することができる。
【0126】
本実施形態の発光粒子は、前記以外のディスプレイ用の波長変換部材として使用することも可能である。波長変換部材として使用する場合の構成例としては、例えば、本実施形態の発光粒子を樹脂に分散させたものをガラスチューブの中に入れて封止し、これを青色発光ダイオードと導光板の間に配置する構造(オンエッジ方式バックライト)、本実施形態の発光粒子を樹脂に分散させシート化し、これを2枚のバリアフィルムで挟んで封止した積層構造体を、導光板の上に設置する構造(表面実装方式バックライト)、本実施形態の発光粒子を樹脂に分散させたものを発光ダイオードの表面に設置する構造(オンチップ方式バックライト)が挙げられる。
【0127】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、例えば、インクジェットプリンター、フォトリソグラフィ、スピンコーター等、種々の方法によって基板上に被膜を形成し、この被膜を加熱して硬化させることにより硬化物を得ることができる。
【実施例0128】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0129】
<ポリマーの調製>
(合成例1)
反応容器に、12ヒドロキシステアリン酸15部、ε-カプロラクトン285部、及び触媒としてモノブチルスズオキシド0.05部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で4時間加熱撹拌し、ポリエステル中間体を得た。次に反応容器に、ポリアリルアミン10%水溶液(日東紡績(株)製「PAA-1LV」、数平均分子量約3,000)100部を160℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、これにポリエステル中間体200部を160℃まで昇温したものを加え、2時間160℃で反応を行い、グラフトコポリマーを得た。得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)を、後述する条件のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により求めたところ、ポリスチレン標準で、44,000であり、常温で淡黄色固体であった。
【0130】
<発光粒子分散液の調製>
(実施例1)
(発光粒子分散液1の調製)
まず、温度計、攪拌機、セプタムおよびガス導入管を備えた三つ口フラスコに、0.12gの炭酸セシウムと、0.5mLのオレイン酸と、5mLの1-オクタデセンとを供給し、圧力15±3kPaを維持するように真空ポンプで減圧しながら、120℃で30分間加熱撹拌した。減圧を解除し、アルゴン雰囲気下で150℃に昇温し、オレイン酸セシウム溶液を得た。
【0131】
次に、温度計、攪拌機、セプタムおよびガス導入管を備えた三つ口フラスコに、0.20gの臭化鉛(II)と、1.5mLのオレイン酸と、15mLの1-オクタデセンとを供給し、真空ポンプで減圧しながら(15±3kPa)、90℃で10分間加熱撹拌した。一度減圧を解除し、アルゴン雰囲気下で3-アミノプロピルトリエトキシシラン1.5mLを加えた。再度真空ポンプで減圧しながら(15±3kPa)、90℃で20分間加熱撹拌した。減圧を解除し、アルゴン雰囲気で140℃に昇温した。シリンジでオレイン酸セシウム溶液を1.5mL採取し、三つ口フラスコに素早く注入した。140℃で5秒間加熱攪拌した後、三つ口フラスコを氷水で急冷することにより、中間体粒子を含有するコロイド溶液1を得た。コロイド溶液10mLと酢酸メチル30mLを混合し、、高速冷却遠心機Avanti J-E(Beckman Coulter社製、Avantiは登録商標)を用いて、25℃、10,000rpm(12,096×g)で1分間遠心分離した。上澄み液を除去することにより、中間体粒子を含む固形物を得た。
【0132】
攪拌子を備えたガラス製バイアルに、0.1gの固形物とドデシルベンゼンスルホン酸0.05g、トルエン5m を加え、室温で1時間攪拌した。ドデシルベンゼンスルホン酸のpKaは-0.45である。その後、撹拌子を備えたガラス製バイアルに酢酸メチル10mLを加え、得られた懸濁液を遠心機IKA G-L(IKA社製)を用いて、10,000rpmで1分間遠心分離した。上澄み液を除去し、得られた固形物にトルエン5mLを加え振り混ぜ溶解させることによって、発光粒子分散液1を得た。発光粒子分散液1に含まれる発光粒子は、ペロブスカイト型結晶構造のCsPbBrからなる半導体ナノ結晶の表面に、ドデシルベンゼンスルホン酸と、オレイン酸と、3-アミノプロピルトリエトキシシラン由来のシロキサン結合を有する構造とを含む被覆層を備えている。
【0133】
(実施例2)
(発光粒子分散液2の調製)
ドデシルベンゼンスルホン酸に代えてラウリル硫酸ナトリウムを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、発光粒子分散液2を得た。ラウリル硫酸のpKaは1.84である。発光粒子分散液1に含まれる発光粒子は、前記半導体ナノ結晶の表面に、ラウリル硫酸ナトリウムと、オレイン酸と、3-アミノプロピルトリエトキシシラン由来のシロキサン結合を有する構造とを含む被覆層を備えている。
【0134】
(実施例3)
(発光粒子分散液3の調製)
ドデシルベンゼンスルホン酸に代えてドデシルホスホン酸を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、発光粒子分散液3を得た。ドデシルホスホン酸のpKaは2.65である。発光粒子分散液3に含まれる発光粒子は、前記半導体ナノ結晶の表面に、ドデシルホスホン酸と、オレイン酸と、3-アミノプロピルトリエトキシシラン由来のシロキサン結合を有する構造とを含む被覆層を備えている。
【0135】
(実施例4)
(発光粒子分散液4の調製)
ドデシルベンゼンスルホン酸に代えてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、発光粒子分散液4を得た。発光粒子分散液4に含まれる発光粒子は、前記半導体ナノ結晶の表面に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムと、オレイン酸と、3-アミノプロピルトリエトキシシラン由来のシロキサン結合を有する構造とを含む被覆層を備えている。
【0136】
(実施例5)
(発光粒子分散液5の調製)
撹拌子を備えたガラス製バイアルに、合成例1で合成したポリマー75mgとトルエン5mLを混合し撹拌溶解させた。次に実施例1で得られた発光粒子分散液1を5mL添加し、均一化した。その後MS51(メチルシリケート51)0.5mLと水0.025mLを加え、室温で2時間撹拌した。得られた反応液を遠心機IKA G-L(IKA社製)を用いて、9,000rpmで5分間遠心分離した。沈殿を除去することにより、発光粒子分散液5を得た。発光粒子分散液5に含まれる発光粒子は、前記半導体ナノ結晶の表面に、ドデシルベンゼンスルホン酸と、オレイン酸と、3-アミノプロピルトリエトキシシラン由来のシロキサン結合を有する構造と、MS51由来のシロキサン結合を有する構造とを含む被覆層を備えた発光粒子を含む被覆層を備えている。3-アミノプロピルトリエトキシシラン由来のシロキサン結合を有する構造およびMS51由来のシロキサン結合を有する構造がシリカ層を形成しており、シリカ層の厚さは5nmであった。
【0137】
(実施例6)
(発光粒子分散液6の調製)
発光粒子分散液1に代えて発光粒子分散液2を用いた以外は、実施例5と同様の操作を行い、発光粒子分散液6を得た。発光粒子分散液6に含まれる発光粒子は、前記半導体ナノ結晶の表面に、ラウリル硫酸ナトリウムと、オレイン酸と、3-アミノプロピルトリエトキシシラン由来のシロキサン結合を有する構造と、MS51由来のシロキサン結合を有する構造とを含む被覆層を備えた発光粒子を含む被覆層を備えている。3-アミノプロピルトリエトキシシラン由来のシロキサン結合を有する構造およびMS51由来のシロキサン結合を有する構造がシリカ層を形成しており、シリカ層の厚さは4nmであった。
【0138】
(実施例7)
(発光粒子分散液7の調製)
まず、温度計、攪拌機、セプタムおよびガス導入管を備えた三つ口フラスコに、0.16gの酢酸ホルムアミジニウムと、5mLのオレイン酸を供給し、圧力15±3kPaを維持するように真空ポンプで減圧しながら、50℃で30分間、続いて120℃で30分間加熱撹拌した。減圧を解除し、アルゴン雰囲気下で150℃に昇温し、オレイン酸ホルムアミジニウム溶液を得た。
【0139】
次に、温度計、攪拌機、セプタムおよびガス導入管を備えた三つ口フラスコに、0.06gの臭化鉛(II)と、0.45mLのオレイン酸と、0.15mLのドデシルベンゼンスルホン酸と、8mLの1-オクタデセンとを供給し、真空ポンプで減圧しながら(15±3kPa)、90℃で10分間加熱撹拌した。一度減圧を解除し、アルゴン雰囲気下で3-アミノプロピルトリエトキシシラン0.45mLを加えた。再度、圧力15±3kPaを維持するように真空ポンプで減圧しながら、90℃で20分間加熱撹拌した。減圧を解除し、アルゴン雰囲気下で140℃に昇温した。シリンジでオレイン酸ホルムアミジニウム溶液を1.1mL採取し、三つ口フラスコに素早く注入した。140℃で5秒間加熱攪拌した後、三つ口フラスコを氷水で急冷することにより、中間体粒子を含有するコロイド溶液を得た。コロイド溶液10mLと酢酸メチル30mLを混合し、高速冷却遠心機Avanti J-E(Beckman Coulter社製、Avantiは登録商標)を用いて、25℃、10,000rpm(12,096×g)で1分間遠心分離し、上澄み液を除去した。得られた沈殿とトルエン10mLを加え振り混ぜ溶解させ、高速冷却遠心機を用いて、25℃、10,000rpm(12,096×g)で3分間遠心分離した。沈殿を除去することにより、発光粒子分散液7を得た。発光粒子分散液7に含まれる発光粒子は、ペロブスカイト型結晶構造のFAPbBr(FAはホルムアミジウムを表す)からなる半導体ナノ結晶の表面に、ドデシルベンゼンスルホン酸と、オレイン酸と、3-アミノプロピルトリエトキシシラン由来のシロキサン結合を有する構造とを含む被覆層を備えている。
【0140】
(実施例8)
(発光粒子分散液8の調製)
発光粒子分散液1に代えて発光粒子分散液7を用いた以外は、実施例5と同様の操作を行うことにより、発光粒子分散液8を得た。発光粒子分散液8は、発光粒子として、ペロブスカイト型結晶構造のCsPbBrからなる半導体ナノ結晶の表面に、ドデシルベンゼンスルホン酸と、オレイン酸と、3-アミノプロピルトリエトキシシラン由来のシロキサン結合を有する構造と、MS51由来のシロキサン結合を有する構造とを含む被覆層を備えている。3-アミノプロピルトリエトキシシラン由来のシロキサン結合を有する構造およびMS51由来のシロキサン結合を有する構造がシリカ層を形成しており、シリカ層の厚さは5nmであった。
【0141】
(比較例1)
(発光粒子分散液1Cの調製)
実施例1の操作の途中で得られた中間体粒子を含有するコロイド溶液1を、を発光粒子分散液1Cとした。発光粒子分散液1Cは、発光粒子として、ペロブスカイト型結晶構造のCsPbBrからなる半導体ナノ結晶の表面に、オレイン酸と、3-アミノプロピルトリエトキシシラン由来のシロキサン結合を有する構造とを含む被覆層を備えている。
【0142】
(比較例2)
(発光粒子分散液2Cの調製)
実施例6の操作の途中でドデシルベンゼンスルホン酸を使用しないこと以外は、実施例6と同様の操作を行い、発光粒子分散液2Cを得た。発光粒子分散液2Cに含まれる発光粒子は、ペロブスカイト型結晶構造のFAPbBr(FAはホルムアミジウムを表す)からなる半導体ナノ結晶の表面に、オレイン酸と、3-アミノプロピルトリエトキシシラン由来のシロキサン結合を有する構造とを含む被覆層を備えている。
【0143】
<評価1> 光学特性評価
前記発光粒子分散液1~8および1C~2Cについて、絶対量子収率(PLQY)、発光スペクトルピーク値(λem)及び発光スペクトル半値幅(FWHM)を測定した。測定結果を下記の表1に示す。絶対量子収率(PLQY)、発光スペクトルピーク値(λem)及び発光スペクトル半値幅(FWHM)は、絶対PL量子収率測定装置Quantaurus-QY(浜松ホトニクス社製、登録商標)を使用し励起波長400nmにより求めた。
【0144】
<評価2> 分散安定性評価
(硬化性樹脂組成物の調製)
撹拌子を備えたガラス製バイアルにヘキサン4mLを加えた。上述の発光粒子分散液1を2mLピペットで採取し、撹拌しながら加えた。得られた懸濁液を遠心機IKA G-L(IKA社製)を用いて、4,000rpmで1分間遠心分離した。上澄み液を除去することにより、発光粒子を含有する固形物X-1を得た。
【0145】
波長500nm以下の光をカットしたクリーンルーム内で、撹拌子を備えたガラス製バイアルに、ライトアクリレートIB-XA(共栄社化学社製)26.7質量部、ライトアクリレートDCP-A(共栄社化学社製)50質量部、MIRAMER M-3130(MIWON Specialty Chemical社製)20質量部及びOmnirad TPO(IGM Resin社製)3質量部を加え、室温で撹拌し溶解させた。上述の固形物X-1を0.3質量部加え、室温で撹拌し溶解させ、メンブレンフィルター(孔径0.50μm)により濾過することによって、発光粒子を含有した硬化性樹脂組成物1を調製した。さらに、発光粒子分散液2~8および1C~2Cについても、硬化性樹脂組成物1と同様にして、硬化性樹脂組成物2~8および1C~2Cを調製した。
【0146】
(分散安定性)
得られた硬化性樹脂組成物1~8および1C~2Cを遮光下、温度35℃にて3か月間保管した後、目視で観察し、以下の評価基準に基づいて分散性を評価した。結果を表2に示す。
評価基準:
S:保存後の発光粒子含有組成物に、沈殿物の凝集物が全く生じていない。
A:沈殿物の凝集物がごくわずかに生じている。
B:沈殿物の凝集物がやや多く生じている。
C:沈殿物の凝集物が非常に多く生じている。
【0147】
<評価3> 耐光性評価
(光散乱粒子分散液の調製)
窒素ガスで満たした容器内で、酸化チタン(石原産業株式会社製「CR60-2」、平均粒子径210nm)10.0質量部と、高分子分散剤「Efka PX4701」(アミン価:40.0mgKOH/g、BASFジャパン株式会社製)1.0質量部と、フェノキシエチルメタクリレート(ライトエステルPO;共栄社化学株式会社製)14.0質量部とを混合した。さらに、得られた配合物にジルコニアビーズ(直径:1.25mm)を加え、前記容器を密栓しペイントコンディショナーを用いて2時間振とうさせて配合物の分散処理を行うことにより、光散乱粒子分散体を得た。分散処理後の光散乱粒子の平均粒子径は、NANOTRAC WAVE IIを用いて測定したところ、0.245μmであった。
【0148】
(発光粒子を含有する光変換層1の製造)
光散乱粒子分散液1質量部と、硬化性樹脂組成物1~8、1Cまたは2C99質量部とを混合した後、得られた混合溶液を50μmスペーサー付きガラス基板EagleXG(コーニング社製)に滴下し、もう一枚のガラス基板EagleXGを重ね置き、窒素雰囲気下、主波長が395nmのUV光を、積算光量が10J/cmになるように照射することによって、発光粒子を含有したフィルム状の光変換層を製造した。前記光変換層の厚さは50μmであった。
【0149】
(評価)
得られた光変換層について、耐光性試験機(シーシーエス社製)を用いて、空気中、ピーク発光波長450nmの青色光を、ステージ温度30℃で100mW/cm、100時間照射した。光照射前後における光変換層の絶対量子収率(PLQY)を測定し、光照射後のPLQY保持率(%)を求めた。結果を表1に示す。なお、光照射後のPLQY保持率(%)は、下記の式(2)によって算出した。
光照射後PLQY保持率(%)=(光照射後の光変換層のPLQY)/(光照射前の光変換層のPLQY)×100 (2)
【0150】
【表1】

【表2】

【0151】
表1から、pKa<3の有機化合物を含有する実施例1~8の硬化性樹脂組成物は、pKa<3の有機化合物(但し、カルボキシル基含有化合物は除く。)を含有しない比較例1~2の硬化性樹脂組成物と比較して、光学特性および長期保存後の分散安定性がいずれも高いことがわかる。また、光照射後のPLQY保持率(%)がいずれも高いことから、光に対する安定性が高いことがわかる。これは、pKa<3の有機化合物が半導体ナノ結晶と強固に結合し、光により塗膜中で発生したラジカルによる半導体ナノ結晶の分解や酸化劣化を抑制していることが要因と推定される。
【0152】
以上のことから、実施例1~8の硬化性樹脂組成物を硬化してなる光変換層は、発光特性に優れ、かつ耐光性に優れることが明らかである。よって、これらの光変換層を用いて、光学フィルムや波長変換フィルムを構成した場合には、優れた発光特性を得ることができるものと期待できる。
【符号の説明】
【0153】
10 発光粒子
11 半導体ナノ結晶
12 被覆層
40 積層構造体
41 第1の基板
42 第2の基板
43 封止層
44 光変換層
441 光散乱粒子
442 発光粒子
図1
図2