(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007229
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】制御装置、移動体、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20240111BHJP
B64G 1/16 20060101ALI20240111BHJP
G01N 1/00 20060101ALN20240111BHJP
【FI】
B60L3/00 N
B64G1/16
G01N1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108563
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】半澤 弘明
(72)【発明者】
【氏名】李 蕊白
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 真悟
(72)【発明者】
【氏名】中山 昂太郎
【テーマコード(参考)】
2G052
5H125
【Fターム(参考)】
2G052AC07
5H125AA20
5H125AC12
5H125BA04
5H125EE51
5H125EE61
5H125EE64
(57)【要約】
【課題】損失電力の増大を抑える制御装置を提供する。
【解決手段】ECU100は、移動体1に設けられた複数の配電経路のそれぞれの状況を取得する取得部101と、取得部101が取得した状況に基づいて、複数の配電経路の中から抵抗が低い配電経路を選択し、該配電経路により配電するよう制御する制御部103と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設けられた複数の配電経路のそれぞれの状況を取得する取得部と、
前記取得部が取得した状況に基づいて、前記複数の配電経路の中から抵抗が低い配電経路を選択し、該配電経路により配電するよう制御する制御部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記複数の配電経路のそれぞれの周囲の温度に係る情報を取得し、
前記制御部は、前記複数の配電経路の中から最も温度が低い配電経路を抵抗が低い配電経路として選択する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記複数の配電経路のそれぞれの周囲の温度に係る情報を間接的に取得する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記取得部は、太陽の位置に基づいて前記複数の配電経路のそれぞれの周囲の温度に係る情報を間接的に取得する、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記取得部は、撮像された画像を用いて求められた太陽の位置に基づいて前記複数の配電経路のそれぞれの周囲の温度に係る情報を間接的に取得する、請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記複数の配電経路のそれぞれの電圧降下量を取得し、
前記制御部は、前記複数の配電経路の中から最も電圧降下量が低い配電経路を抵抗が低い配電経路として選択する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記移動体が停止している状態で、前記複数の配電経路の中から抵抗が低い配電経路を選択する制御を行う、請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
複数の配電経路と、
請求項1~7のいずれか1項に記載の制御装置と、
を備える、移動体。
【請求項9】
プロセッサが、
移動体に設けられた複数の配電経路のそれぞれの状況を取得し、
取得した状況に基づいて、前記複数の配電経路の中から抵抗が低い配電経路を選択し、該配電経路により配電するよう制御する、
処理を行う、制御方法。
【請求項10】
コンピュータに、
移動体に設けられた複数の配電経路のそれぞれの状況を取得し、
取得した状況に基づいて、前記複数の配電経路の中から抵抗が低い配電経路を選択し、該配電経路により配電するよう制御する、
処理を実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、移動体、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
月、火星その他の惑星の探査活動に用いられる車両に関する技術が開示されている。特許文献1には、宇宙探査用の走行車に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
惑星の探査活動に用いられる車両はバッテリに蓄えられた電力で駆動する。特に宇宙環境においては、大気が存在しないか稀薄であるために、太陽の可視側において車両の温度上昇が顕著に発生する。車両の配電に用いられる材料は一般に、高温になることで抵抗が上昇する。すなわち。温度上昇は、車両に備えられた配電経路における配線抵抗等の損失の上昇に繋がる。宇宙環境においてはバッテリの充電は容易ではなく、損失が上昇すると損失電力が増大し、損失電力の増大によって車両の航続可能距離が低下することにも繋がる。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、損失電力の増大を抑える制御装置、移動体、制御方法及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る制御装置は、移動体に設けられた複数の配電経路のそれぞれの状況を取得する取得部と、前記取得部が取得した状況に基づいて、前記複数の配電経路の中から抵抗が低い配電経路を選択し、該配電経路により配電するよう制御する制御部と、を備える。
【0007】
本発明の第1態様によれば、状況に応じた配線抵抗の低い配電経路の選択により、配電経路で生じる損失電力の増大を抑えることができる。
【0008】
本発明の第2態様に係る制御装置は、第1態様に係る制御装置であって、前記取得部は、前記複数の配電経路のそれぞれの周囲の温度に係る情報を取得し、前記制御部は、前記複数の配電経路の中から最も温度が低い配電経路を抵抗が低い配電経路として選択する。
【0009】
本発明の第2態様によれば、温度が低い配電経路を抵抗が低い配電経路として選択することにより、配電経路で生じる損失電力の増大を抑えることができる。
【0010】
本発明の第3態様に係る制御装置は、第2態様に係る制御装置であって、前記取得部は、前記複数の配電経路のそれぞれの周囲の温度に係る情報を間接的に取得する。
【0011】
本発明の第3態様によれば、間接的に取得した温度に係る情報に基づいて、温度が低い配電経路を抵抗が低い配電経路として選択することにより、配電経路で生じる損失電力の増大を抑えることができる。
【0012】
本発明の第4態様に係る制御装置は、第3態様に係る制御装置であって、前記取得部は、太陽の位置に基づいて前記複数の配電経路のそれぞれの周囲の温度に係る情報を間接的に取得する。
【0013】
本発明の第4態様によれば、太陽の位置に基づいて取得した温度に係る情報に基づいて、温度が低い配電経路を抵抗が低い配電経路として選択することにより、配電経路で生じる損失電力の増大を抑えることができる。
【0014】
本発明の第5態様に係る制御装置は、第3態様に係る制御装置であって、前記取得部は、撮像された画像を用いて求められた太陽の位置に基づいて前記複数の配電経路のそれぞれの周囲の温度に係る情報を間接的に取得する。
【0015】
本発明の第5態様によれば、画像から得られる太陽の位置に基づいて取得した温度に係る情報に基づいて、温度が低い配電経路を抵抗が低い配電経路として選択することにより、配電経路で生じる損失電力の増大を抑えることができる。
【0016】
本発明の第6態様に係る制御装置は、第1態様に係る制御装置であって、前記取得部は、前記複数の配電経路のそれぞれの電圧降下量を取得し、前記制御部は、前記複数の配電経路の中から最も電圧降下量が低い配電経路を抵抗が低い配電経路として選択する。
【0017】
本発明の第6態様によれば、最も電圧降下量が低い配電経路を抵抗が低い配電経路として選択することにより、配電経路で生じる損失電力の増大を抑えることができる。
【0018】
本発明の第7態様に係る制御装置は、第1態様~第6態様のいずれかにに係る制御装置であって、前記制御部は、前記移動体が停止している状態で、前記複数の配電経路の中から抵抗が低い配電経路を選択する制御を行う。
【0019】
本発明の第7態様によれば、移動体が停止している状態で配電経路を抵抗が低い配電経路として選択することにより、移動体の移動中に配電経路で生じる損失電力の増大を抑えることができる。
【0020】
本発明の第8態様に係る移動体は、複数の配電経路と、第1態様~第7態様のいずれかの制御装置と、を備える。
【0021】
本発明の第8態様によれば、移動体が配電経路で生じる損失電力の増大を抑えて移動することができる。
【0022】
本発明の第9態様に係る制御方法は、プロセッサが、移動体に設けられた複数の配電経路のそれぞれの状況を取得し、取得した状況に基づいて、前記複数の配電経路の中から抵抗が低い配電経路を選択し、該配電経路により配電するよう制御する処理を行う。
【0023】
本発明の第9態様によれば、状況に応じた配線抵抗の低い配電経路の選択により、配電経路で生じる損失電力の増大を抑えることができる。
【0024】
本発明の第10態様に係る制御プログラムは、コンピュータに、移動体に設けられた複数の配電経路のそれぞれの状況を取得し、取得した状況に基づいて、前記複数の配電経路の中から抵抗が低い配電経路を選択し、該配電経路により配電するよう制御する処理を実行させる。
【0025】
本発明の第10態様によれば、状況に応じた配線抵抗の低い配電経路の選択により、配電経路で生じる損失電力の増大を抑えることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、状況に応じた配線抵抗の低い配電経路の選択により、損失電力の増大を抑える制御装置、移動体、制御方法及び制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態に係る移動体の概略構成を示す図である。
【
図2】ECUのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】ECUの機能構成の例を示すブロック図である。
【
図4】ECUによる制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態に係る移動体の概略構成を示す図である。
【
図6】ECUによる制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0029】
図1は、本実施形態に係る移動体の概略構成を示す図である。
【0030】
図1に示した移動体1は、例えば月、火星等の惑星を探索する移動体である。移動体1は、地球の地上局から、衛星通信等により受信した指令に基づいて、走行及び停止を行うよう構成された車両である。
【0031】
図1に示したように、移動体1は、ECU(Electronic Control Unit)100、アクチュエータ101A、101B、102A、102B、リレー103A、103B、104A、104B、バッテリ105A、105B、温度センサ106A、106B、周辺環境センサ107を備える。
図1に示した移動体1は、図の上方が進行方向であるとする。
【0032】
ECU100は、本発明の制御装置の一例であり、移動体1に備えられた各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ECU100は、移動体1の周囲の状況を、温度センサ106A、106B、周辺環境センサ107、又は地上局から取得した情報に基づいて確認する。そして、ECU100は、移動体1の周囲の状況に基づいて、移動体1に設けられたA系統108Aと、B系統108Bとの2本の配電経路の中から、抵抗が低い配電経路を選択する。
【0033】
本実施形態では、A系統108Aは移動体1の左側において車体10の外で配線されており、移動体1の右側において車体10の内に配線されている。一方、B系統108Bは移動体1の左側において車体10の内で配線されており、移動体1の右側において車体10の外に配線されている。
【0034】
より具体的には、ECU100は、移動体1が高温になっている側を把握する。そしてECU100は、高温になっている側の配電経路は選択せず、低温になっている側の配電経路を選択する制御を行う。換言すれば、ECU100は、配電経路の温度に係る情報に基づき、抵抗が低い配電経路を選択する。
【0035】
ECU100が高温の配電経路を選択した場合の必要電力をPHigh、高温の配電経路の抵抗をRHighとすると、PHighは、配電経路に流れる電流をI、配電経路に掛かる電圧をVとして、
PHigh=IV=I2RHigh
で表すことができる。
【0036】
一方、ECU100が低温の配電経路を選択した場合の必要電力をPLow、高温の配電経路の抵抗をRLowとすると、PLowは、同じく配電経路に流れる電流をI、配電経路に掛かる電圧をVとして、
PLow=IV=I2RLow
で表すことができる。
【0037】
配電経路に用いられる材料は一般に、高温になることで抵抗が上昇することから、RHigh>RLowとなることから、PHighとPLowとを比較すると、PHigh>PLowとなる。従って、ECU100が低温の配電経路を選択することで、以下のΔP分の消費電力の削減が可能となる。
ΔP=PHigh-PLow
【0038】
ECU100は、移動体1の周囲の状況に基づいて抵抗が低い配電経路を選択することで、そのような選択を行わない場合と比較して、移動体1の損失電力の増大を抑え、移動体1の航続可能距離の低下を抑えることができる。
【0039】
アクチュエータ101A、101B、102A、102Bは、移動体1の駆動に用いられる装置である。本実施形態では、アクチュエータ101A、101Bは、図示しない左輪の駆動に用いられ、アクチュエータ102A、102Bは、図示しない右輪の駆動に用いられる。
【0040】
リレー103A、103B、104A、104Bは、ECU100からの指示により電力の供給又は遮断を行う装置である。
図1に示した例では、リレー103A、104Bは車体10の内側に設けられ、リレー103B、104Aは車体10の外側に設けられている。
【0041】
バッテリ105A、105Bは、移動体1を駆動させるための電力が蓄えられるバッテリである。
図1に示した例では、バッテリ105AにはA系統108Aを通じてアクチュエータ101A、102Aを駆動させるための電力が蓄えられ、バッテリ105BにはB系統108Bを通じてアクチュエータ101B、102Bを駆動させるための電力が蓄えられている。
【0042】
なお、本実施形態では、障害発生時を考慮して2つのバッテリ105A、105Bが移動体1に備えられた例を示しているが、本発明は、バッテリの数は係る例に限定されない。
【0043】
温度センサ106A、106Bは、移動体1の周囲の温度を測定するセンサである。温度センサ106Aは、移動体1の進行方向右側の温度を測定するセンサである。温度センサ106Bは、移動体1の進行方向左側の温度を測定するセンサである。温度センサ106A、106Bによる温度の測定結果はECU100に送られる。温度センサ106A、106Bにより、A系統108A、B系統108Bのそれぞれの温度の状況を取得出来る。
【0044】
周辺環境センサ107は、移動体1の周辺の環境の情報を取得するセンサである。周辺環境センサ107としては、例えば移動体1の周囲を撮像するカメラが用いられ得る。当該カメラで移動体1の周囲を撮像し、画像をECU100に送ることで、ECU100は移動体1に対して相対的な太陽の位置を求めることが可能となる。移動体1に対して相対的な太陽の位置が分かれば、ECU100は、移動体1の高温側を推測することができる。すなわちECU100は、周辺環境センサ107が取得した情報から、移動体1の周囲の温度の状況を間接的に取得することができる。
【0045】
続いて、ECU100のハードウェア構成を説明する。
【0046】
図2は、ECU100のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0047】
図2に示すように、ECU100は、CPU(Central Processing Unit)111、ROM(Read Only Memory)112、RAM(Random Access Memory)113、入出力インタフェース(I/F)114、及び通信インタフェース(I/F)115を有する。各構成は、バス119を介して相互に通信可能に接続されている。
【0048】
CPU111は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU111は、ROM112からプログラムを読み出し、RAM113を作業領域としてプログラムを実行する。CPU111は、ROM112に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM112には、移動体1に設けられた配電経路の使用に関する制御を行う制御プログラムが格納されている。
【0049】
ROM112は、オペレーティングシステムを含む各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM113は、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。なお、ECU100には、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)またはフラッシュメモリ等の記憶装置により構成されるストレージが設けられてもよい。
【0050】
入出力インタフェース114は、移動体1に備えられたリレー103A、103B、104A、104B、温度センサ106A、106B、周辺環境センサ107等の機器との間で情報を入出力するためのインタフェースである。
【0051】
通信インタフェース115は、地上局等の他の機器と通信するためのインタフェースである。
【0052】
上記の制御プログラムを実行する際に、ECU100は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。ECU100が実現する機能構成について説明する。
【0053】
図3は、ECU100の機能構成の例を示すブロック図である。
【0054】
図3に示すように、ECU100は、機能構成として、取得部201、判定部202および制御部203を有する。各機能構成は、CPU111がROM112に記憶された制御プログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0055】
取得部201は、移動体1に設けられた複数の配電経路(
図1では、A系統108A及びB系統108Bの2系統の配電経路)のそれぞれの状況を取得する。具体的には、取得部101は、移動体1に設けられた複数の配電経路のそれぞれの温度の状況を直接的に又は間接的に取得する。
【0056】
例えば、取得部201は、温度センサ106A、106Bにより測定されたA系統108A、B系統108Bのそれぞれの温度の測定値を取得することで、配電経路のそれぞれの温度の状況を直接的に取得する。また例えば、取得部201は、周辺環境センサ107により取得された移動体1の周囲の状況を取得することで、周辺環境センサ107が取得した情報から、移動体1の周囲の温度の状況を間接的に取得する。
【0057】
判定部202は、取得部201が取得した、移動体1に設けられた複数の配電経路のそれぞれの状況を用いて、移動体1で高温になっている側を判定する。温度センサ106A、106Bにより直接的に温度を取得した場合、判定部202は、温度の測定値に基づき、移動体1で高温になっている側を判定する。
【0058】
制御部203は、判定部202での判定結果に基づき、移動体1に設けられた複数の配電経路の中から、抵抗が低い配電経路を選択し、選択した配電経路により配電するよう制御する。より詳細には、制御部203は、判定部202での高温になっている側の判定結果に基づき、移動体1に設けられた複数の配電経路の中から、低温側の配電経路を選択し、選択した配電経路により配電するよう制御する。
【0059】
具体的には、移動体1の左側が低温側であると判定部202が判定した場合、制御部203は、リレー103B、104Bをオンにし、リレー103A、104Aをオフにするよう制御する。従って、移動体1の左側が低温側であると判定部202が判定した場合、制御部203はB系統108Bを選択するよう制御する。
【0060】
一方、移動体1の右側が低温側であると判定部202が判定した場合、制御部203は、リレー103A、104Aをオンにし、リレー103B、104Bをオフにするよう制御する。従って、移動体1の左側が低温側であると判定部202が判定した場合、制御部203はA系統108Aを選択するよう制御する。
【0061】
判定部202による判定処理、及び制御部203による制御処理が行われるタイミングは特定のタイミングに限定されない。例えば、判定部202による判定処理、及び制御部203による制御処理は、移動体1の始動時に行われてもよく、所定の間隔で定期的に行われてもよい。また、判定部202による判定処理、及び制御部203による制御処理は、移動体1が停止しているタイミングで行われてもよい。
【0062】
ECU100は、係る構成を有することで、状況に応じた配線抵抗の低い配電経路を選択することができる。ECU100は、配線抵抗の低い配電経路を選択することで、配線抵抗の低い配電経路を選択しない場合と比較して、移動体1の損失電力の増大を抑えることができる。
【0063】
次に、ECU100の作用について説明する。
【0064】
図4は、ECU100による制御処理の流れを示すフローチャートである。CPU111がROM112から制御プログラムを読み出して、RAM113に展開して実行することにより、制御処理が行なわれる。
【0065】
CPU111は、まずステップS101において、移動体1の周辺状況を確認する。CPU111は、移動体1の周辺状況を、例えば温度センサ106A、106B、周辺環境センサ107、又は地上局から取得した情報に基づいて確認する。
【0066】
ステップS101に続いて、CPU111は、ステップS102において、A系統108A側の温度を取得する。CPU111は、A系統108A側の温度を、温度センサ106Aから直接的に取得してもよく、周辺環境センサ107から間接的に取得してもよい。
【0067】
ステップS102に続いて、CPU111は、ステップS103において、B系統108B側の温度を取得する。CPU111は、B系統108B側の温度を、温度センサ106Bから直接的に取得してもよく、周辺環境センサ107から間接的に取得してもよい。なお
図4に示したフローチャートでは、CPU111は、A系統108A、B系統108Bの順に温度を取得していたが、CPU111は、B系統108B、A系統108Aの順に温度を取得してもよい。
【0068】
ステップS103に続いて、CPU111は、ステップS104において、A系統108A側の温度とB系統108B側の温度との温度差を演算する。CPU111は、温度差そのものを演算してもよく、どちらの系統が大きいかを演算してもよい。
【0069】
ステップS104に続いて、CPU111は、ステップS105において、A系統108A側の温度がB系統108B側の温度より大きいかどうかを判断する。
【0070】
ステップS105の判断の結果、A系統108A側の温度がB系統108B側の温度より大きければ(ステップS105;Yes)、続いてCPU111は、ステップS106において、B系統108B側を配電に使用するよう決定する。すなわち、CPU111は、リレー103B、104Bをオンにし、リレー103A、104Aをオフにする。
【0071】
一方、ステップS106の判断の結果、A系統108A側の温度がB系統108B側の温度より大きくなければ(ステップS105;No)、続いてCPU111は、ステップS107において、A系統108A側を配電に使用するよう決定する。すなわち、CPU111は、リレー103A、104Aをオンにし、リレー103B、104Bをオフにする。
【0072】
ECU100は、一連の処理を実行することで、状況に応じた配線抵抗の低い配電経路を選択することができる。ECU100は、配線抵抗の低い配電経路を選択することで、配線抵抗の低い配電経路を選択しない場合と比較して、移動体1の損失電力の増大を抑えることができる。
【0073】
上述の例では、ECU100が温度に係る情報に基づいて配線抵抗の低い配電経路を選択する例を示したが、本発明は係る例に限定されない。ECU100は、配電経路の抵抗値を推測し、推測結果に基づいて配線抵抗の低い配電経路を選択してもよい。
【0074】
図5は、本実施形態に係る移動体の概略構成を示す図である。
【0075】
図5に示した移動体1は、入力電圧計121A、121B、122A、122Bが設けられている点で
図1に示した移動体1と相違している。入力電圧計121A、121B、122A、122Bは、それぞれアクチュエータ101A、101B、102A、102Bに入力される電圧を測定する電圧計である。
【0076】
ECU100は、A系統108AとB系統108Bの夫々で規定負荷(例えば10W)を消費した場合の、入力電圧計121A、121B、122A、122Bで計測された入力電圧から得られる電圧降下量から、A系統108AとB系統108Bの夫々の抵抗を演算する。そしてECU100は、抵抗の演算結果に基づき、A系統108AとB系統108Bのどちらかを選択して配電を行うよう制御する。
【0077】
次に、ECU100の作用について説明する。
【0078】
図6は、ECU100による制御処理の流れを示すフローチャートである。CPU111がROM112から制御プログラムを読み出して、RAM113に展開して実行することにより、制御処理が行なわれる。
【0079】
CPU111は、まずステップS111において、リレー103A、104Aをオンにし、リレー103B、104Bをオフにして、A系統108Aで規定の負荷を消費する。
【0080】
ステップS111に続いて、CPU111は、ステップS112において、入力電圧計121A、122Aで計測された入力電圧値を取得する。
【0081】
ステップS112に続いて、CPU111は、ステップS113において、リレー103A、104Aをオフにして、A系統108Aでの負荷の消費を停止する。
【0082】
ステップS113に続いて、CPU111は、ステップS114において、リレー103A、104Aをオフにし、リレー103B、104Bをオンにして、B系統108Bで規定の負荷を消費する。
【0083】
ステップS114に続いて、CPU111は、ステップS115において、入力電圧計121B、122Bで計測された入力電圧値を取得する。
【0084】
ステップS115に続いて、CPU111は、ステップS116において、リレー103B、104Bをオフにして、B系統108Bでの負荷の消費を停止する。なお
図6に示したフローチャートでは、CPU111は、A系統108A、B系統108Bの順に入力電圧を取得していたが、CPU111は、B系統108B、A系統108Aの順に入力電圧を取得してもよい。
【0085】
ステップS116に続いて、CPU111は、ステップS117において、A系統108Aでの電圧とB系統108Bでの電圧との差を演算する。A系統108Aでの電圧値をVA、B系統108Bでの電圧値をVBとし、電流値をI、A系統108Aでの抵抗値をRA、B系統108Bでの抵抗値をRBとすると、VA、VBは電源電圧を用いて以下のように表すことができる。
VA=電源電圧-I・RA
VB=電源電圧-I・RB
【0086】
従って、CPU111は、VAとVBの差から、RAとRBの大小関係を推測することができる。すなわち、VAの方が大きければRAの方が小さく、VBの方が大きければRBの方が小さいことになる。
【0087】
ステップS117に続いて、CPU111は、ステップS118において、A系統108Aでの電圧VAがB系統108Bでの電圧VBより大きいかどうかを判断する。換言すれば、CPU111は、どちらの系統の電圧降下量が小さいかを判断する。
【0088】
ステップS118の判断の結果、A系統108Aでの電圧がB系統108Bでの電圧より大きい場合は(ステップS118;Yes)、続いてCPU111は、ステップS119において、A系統108A側を配電に使用するよう決定する。すなわち、CPU111は、リレー103A、104Aをオンにし、リレー103B、104Bをオフにする。
【0089】
一方、ステップS118の判断の結果、A系統108Aでの電圧がB系統108Bでの電圧より大きくない場合は(ステップS118;No)、続いてCPU111は、ステップS120において、B系統108B側を配電に使用するよう決定する。すなわち、CPU111は、リレー103B、104Bをオンにし、リレー103A、104Aをオフにする。
【0090】
ECU100は、一連の処理を実行することで、状況に応じた配線抵抗の低い配電経路を選択することができる。ECU100は、配線抵抗の低い配電経路を選択することで、配線抵抗の低い配電経路を選択しない場合と比較して、移動体1の損失電力の増大を抑えることができる。
【0091】
上記実施形態では、2つの独立した系統からなる配電経路を有する移動体1の例を示したが、本発明は係る例に限定されない。例えば配電経路がリング状で形成されている場合、ECU100は、複数の区間ごとの抵抗値の大小を推測し、最も抵抗が低い区間を選択して配電に使用してもよい。
【0092】
なお、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した制御処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、制御処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0093】
また、上記各実施形態では、制御処理のプログラムがROMまたはストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 移動体
10 車体
100 ECU
101A、101B、102A、102B アクチュエータ
103A、103B、104A、104B リレー
105A、105B バッテリ
106A、106B 温度センサ
107 周辺環境センサ
108A A系統
108B B系統
121A、121B、122A、122B 入力電圧計