(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072565
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】化合物
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20240521BHJP
C09B 57/00 20060101ALI20240521BHJP
C09K 3/00 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
C07F5/02 D CSP
C09B57/00 Z
C09K3/00 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183464
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】小松 英司
(72)【発明者】
【氏名】飯田 宏一朗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 百合香
【テーマコード(参考)】
4H048
【Fターム(参考)】
4H048AA01
4H048AB92
4H048VA11
4H048VA20
4H048VA22
4H048VA30
4H048VA32
4H048VA77
4H048VB10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特定波長域の光照射によって脱離する光分解性基を有し、生体物質への結合部位であるN-ヒドロキシスクシンイミドエステル基を有する色素化合物を提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物。
[Ar
1はC数3~20の(ヘテロ)アリール基;Ar
2はHまたはC数3~20の(ヘテロ)アリール基;Y
1は、4位にアミノメチル基が置換したフェニルオキシ基;Z
1は直接結合または2価の芳香族連結基;R
1は3つ以上の単結合を介してZ
1とN-ヒドロキシスクシンイミドエステル基をつなぐ基。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】
[式(1)中、Ar
1は、置換基を有していても良い炭素数3~20の(ヘテロ)アリール基を表す。
Ar
2は、水素原子または置換基を有していても良い炭素数3~20の(ヘテロ)アリール基を表す。
ただし、Ar
1またはAr
2はZ
1と結合しても良く、Ar
1またはAr
2が有する置換基がZ
1と結合しても良い。
Ar
1及びAr
2が有していても良い置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数3~20の(ヘテロ)アリールオキシ基、炭素数2~20のアルキルカルボニル基、炭素数7~20のアリールカルボニル基、炭素数2~20のアルキルアミノ基、炭素数6~20のアリールアミノ基、炭素数2~20のアルキルアミド基、炭素数3~20の(ヘテロ)アリール基、炭素数4~16のポリアルキルエーテル基のいずれか、或いはこれらの組み合わせである。
Y
1は、下記式(2)を表す。
【化2】
[式(2)中、*はホウ素原子との結合を表す。
R
2およびR
3は、それぞれ独立に、水素原子、または置換基を有していても良い、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルキルカルボニル基、炭素数7~20のアリールカルボニル基、炭素数3~20の(ヘテロ)アリール基のいずれかを表す。
R
2およびR
3が有していても良い置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数4~20のポリアルキルエーテル基、第4級アンモニウム基、スルホン酸基、またはスルホン酸の塩のいずれか、或いはこれらの組み合わせである。
ただし、R
2とR
3が同時に水素原子であることは無い。]
Z
1は、直接結合または2価の芳香族連結基を表す。
R
1は、3つ以上の単結合を介してZ
1とN-ヒドロキシスクシンイミドエステル基をつなぐ基を表す。]
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物が下記式(3)で表される化合物である請求項1に記載の化合物。
【化3】
[式(3)中、Ar
1、Ar
2、Y
1、Z
1、R
1は、前記式(1)におけるとAr
1、Ar
2、Y
1、Z
1、R
1は同義である。]
【請求項3】
前記式(3)で表される化合物において、Y
1が下記式(4)で表される化合物である請求項2に記載の化合物。
【化4】
[式(4)中、*はホウ素原子との結合を表す。
R
4は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数4~20のポリアルキルエーテル基、第4級アンモニウム基、スルホン酸基、またはスルホン酸の塩のいずれか、或いはこれらの組み合わせである。
nは、1以上5以下の整数を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸、タンパク質、多糖などの生体物質に容易に導入することができる新規近赤外光吸収色素化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外光を吸収または近赤外光を発光する色素は、新規なセンサーや、invitro及びinvivoイメージングなどへの応用に対して、大きな関心を集めている。例えば、近赤外蛍光は、多くの多様な分子を追跡または分析する非破壊的な方法として使用でき、このような分子は蛍光色素で標識されており、色素の蛍光を検出することができる。核酸、タンパク質、多糖などの生体物質への色素の標識は、色素分子にN-ヒドロキシスクシンイミドエステル基などを導入して生体物質への結合部位として利用することが一般的である。
【0003】
近赤外領域の光のなかでも、生体の窓と呼ばれる、生体内の物質や水に吸収されにくい650-1000nmの波長域(近赤外領域)の吸収及び発光を有する色素としては、シアニン色素などが挙げられる(例えば、特許文献1)。
シアニン色素のうち、インドシアニングリーン(ICG)は臨床使用が承認されているが、光安定性が低く、合成経路が長いなどの欠点がある。
【0004】
一方、光分解性保護基によって活性を一時的に抑制したケージド化合物のように、光照射によって光分解性基が脱離することで分子活性などの機能を発現させる色素化合物は、任意の時空間で機能を発現させることが可能であるため、時間と空間を観測軸に持つ複雑な生命現象の解明に重用されるとともに、ドラックデリバリー分野などへ応用することにも興味がもたれている。そのような光活性化合物の一例として、ジピロメテンとホウ素原子からなる骨格(BODIPY)のホウ素原子にアリールオキシ基が置換した化合物が挙げられる。この化合物においては、BODIPY骨格の吸収領域である500nmの可視光の照射に伴って、プロトン溶媒分子とアリールオキシ基との置換反応が生じ、アリールオキシ基がBODIPY骨格から脱離することが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Mater.Chem.B,2015,3,7427-7433
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の先行技術では、近赤外光領域に吸収がないため、生体の窓と呼ばれる波長域の光照射による光分解性基の脱離に伴う分子活性の発現は起こらず、また、抗体などの生体物質との結合部位を有していないため、invitro及びinvivoでの活用に際して、必ずしも有効な化合物ではなく、新規な色素の開発が求められていた。
【0008】
本発明は、生体の窓と呼ばれる波長域の光照射によって脱離する光分解性基を有し、かつ、生体物質への結合部位であるN-ヒドロキシスクシンイミドエステル基を有する色素化合物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル基がスペーサを介して、アザジピロメテンとホウ素原子からなる構造(アザBODIPY骨格)を有する骨格に接続し、かつ、該ホウ素原子に置換基を有するアリールオキシ基が結合した色素化合物が、生体物質に容易に導入可能であり、そのうえ、吸収波長を650nm以上に有し、生体の窓と呼ばれる波長域に対応し、その吸収波長域の光照射によって置換基を有するアリールオキシ基が脱離することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
【0011】
[1] 下記式(1)で表される化合物。
【0012】
【0013】
[式(1)中、Ar1は、置換基を有していても良い炭素数3~20の(ヘテロ)アリール基を表す。
Ar2は、水素原子または置換基を有していても良い炭素数3~20の(ヘテロ)アリール基を表す。
ただし、Ar1またはAr2はZ1と結合しても良く、Ar1またはAr2が有する置換基がZ1と結合しても良い。
Ar1及びAr2が有していても良い置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数3~20の(ヘテロ)アリールオキシ基、炭素数2~20のアルキルカルボニル基、炭素数7~20のアリールカルボニル基、炭素数2~20のアルキルアミノ基、炭素数6~20のアリールアミノ基、炭素数2~20のアルキルアミド基、炭素数3~20の(ヘテロ)アリール基、炭素数4~16のポリアルキルエーテル基のいずれか、或いはこれらの組み合わせである。
Y1は、下記式(2)を表す。
【0014】
【0015】
[式(2)中、*はホウ素原子との結合を表す。
R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、または置換基を有していても良い、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルキルカルボニル基、炭素数7~20のアリールカルボニル基、炭素数3~20の(ヘテロ)アリール基のいずれかを表す。
R2およびR3が有していても良い置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数4~20のポリアルキルエーテル基、第4級アンモニウム基、スルホン酸基、またはスルホン酸の塩のいずれか、或いはこれらの組み合わせである。
ただし、R2とR3が同時に水素原子であることは無い。]
Z1は、直接結合または2価の芳香族連結基を表す。
R1は、3つ以上の単結合を介してZ1とN-ヒドロキシスクシンイミドエステル基をつなぐ基を表す。]
【0016】
[2] 前記式(1)で表される化合物が下記式(3)で表される化合物である[1]に記載の化合物。
【0017】
【0018】
[式(3)中、Ar1、Ar2、Y1、Z1、R1は、前記式(1)におけるとAr1、Ar2、Y1、Z1、R1は同義である。]
【0019】
[3] 前記式(3)で表される化合物において、Y1が下記式(4)で表される化合物である[2]に記載の化合物。
【0020】
【0021】
[式(4)中、*はホウ素原子との結合を表す。
R4は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数4~20のポリアルキルエーテル基、第4級アンモニウム基、スルホン酸基、またはスルホン酸の塩のいずれか、或いはこれらの組み合わせである。
nは、1以上5以下の整数を表す。]
【発明の効果】
【0022】
本発明により、生体の窓と呼ばれる波長域の光照射によって脱離する光分解性基を有し、かつ、生体物質への結合部位であるN-ヒドロキシスクシンイミドエステル基を有する色素化合物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】化合物1の吸収スペクトル測定チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。
なお、本明細書において「(ヘテロ)アリールオキシ基」、「(ヘテロ)アリール基」とは、それぞれヘテロ原子を含んでいてもよいアリールオキシ基、ヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基、を表す。「ヘテロ原子を含んでいてもよい」とは、アリール基またはアリールオキシ基の主骨格を形成する炭素原子のうち1又は2以上の炭素原子がヘテロ原子に置換されていることを表し、ヘテロ原子としては窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子等が挙げられる。中でも耐久性の観点から窒素原子が好ましい。
【0025】
本発明の化合物は、下記式(1)で表される化合物(以下、「式(1)の色素」と称す場合がある。)である。
【0026】
【0027】
[式(1)中、Ar1は、置換基を有していても良い炭素数3~20の(ヘテロ)アリール基を表す。
Ar2は、水素原子または置換基を有していても良い炭素数3~20の(ヘテロ)アリール基を表す。
ただし、Ar1またはAr2はZ1と結合しても良く、Ar1またはAr2が有する置換基がZ1と結合しても良い。
Ar1及びAr2が有していても良い置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数3~20の(ヘテロ)アリールオキシ基、炭素数2~20のアルキルカルボニル基、炭素数7~20のアリールカルボニル基、炭素数2~20のアルキルアミノ基、炭素数6~20のアリールアミノ基、炭素数2~20のアルキルアミド基、炭素数3~20の(ヘテロ)アリール基、炭素数4~16のポリアルキルエーテル基のいずれか、或いはこれらの組み合わせである。
Y1は、下記式(2)を表す。
【0028】
【0029】
[式(2)中、*はホウ素原子との結合を表す。
R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、または置換基を有していても良い、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルキルカルボニル基、炭素数7~20のアリールカルボニル基、炭素数3~20の(ヘテロ)アリール基のいずれかを表す。
R2およびR3が有していても良い置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数4~20のポリアルキルエーテル基、第4級アンモニウム基、スルホン酸基、またはスルホン酸の塩のいずれか、或いはこれらの組み合わせである。
ただし、R2とR3が同時に水素原子であることは無い。]
Z1は、直接結合または2価の芳香族連結基を表す。
R1は、3つ以上の単結合を介してZ1とN-ヒドロキシスクシンイミドエステル基をつなぐ基を表す。]
【0030】
式(1)の色素は、アザジピロメテンとホウ素原子からなる構造(アザBODIPY骨格)を有するため、赤色から近赤外の可視光よりも長波長領域に吸収を示し、さらに、対応する波長の光照射により、式(2)で表される置換基を有するアリールオキシ基部位が脱離する特徴を有する。それに加え、式(1)の色素は、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル基を、色素骨格のπ共役系構造から離れた位置に1つ有するため、生体物質内の第一級アミンに対して1つの色素分子を、上記の優れた光物性を保ったまま、容易に導入することが可能である。
【0031】
また、式(1)の色素は、アザBODIPY骨格のホウ素原子に式(2)で表される置換基を有するアリールオキシ基部位が結合していることが特徴の一つである。吸収波長に対応する光を照射することで、アリールオキシ基部位がアザBODIPY骨格部位から外れる。これは、光照射によって、アリールオキシ基部位から励起状態のアザBODIPY骨格部位への光誘起電子移動が起こって電荷分離状態となり、それが加溶媒分解を受けることでホウ素-酸素結合の開裂が起こっているためと推測される。この現象を利用すると、例えば、水溶性基を置換したアリールオキシ基を持つ式(1)の色素である本発明の化合物を抗体と結合させれば、生体内のがん細胞へ式(1)の色素を効率的に届けることが可能となり、さらに、そこで吸収波長に対応する光照射を行うと、水溶性基を置換したアリールオキシ基部位が脱離する。その結果、色素の水溶性は著しく低下してがん細胞の細胞膜内で凝集し、物理的に細胞膜を破壊できる(フォトイムノセラピーと呼ばれる、がん治療への適用が可能である)と考えられる。
【0032】
<Ar1>
Ar1は、置換基を有していても良い炭素数3~20の(ヘテロ)アリール基を表す。
Ar1は、吸収波長の観点から、置換基を有していても良いフェニル基であることが好ましい。
【0033】
Ar1が有していても良い置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数3~20の(ヘテロ)アリールオキシ基、炭素数2~20のアルキルカルボニル基、炭素数7~20のアリールカルボニル基、炭素数2~20のアルキルアミノ基、炭素数6~20のアリールアミノ基、炭素数2~20のアルキルアミド基、炭素数3~20の(ヘテロ)アリール基、炭素数4~16のポリアルキルエーテル基のいずれか、或いはこれらの組み合わせである。これらの置換基のうち、溶解性の点から、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数3~20の(ヘテロ)アリールオキシ基、炭素数4~10のポリアルキルエーテル基、或いはこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0034】
Ar1は、Z1と結合しても良く、Ar1が有する置換基がZ1と結合しても良い。
式(1)中の2個のAr1は、互いに同一であっても良く、異なるものであっても良い。
【0035】
<Ar1及びAr2の置換基>
Ar1及び後述のAr2が有していても良い置換基の具体例は以下の通りである。
【0036】
具体的なアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、n-オクチル基、tert-オクチル基などが挙げられる。
【0037】
具体的なアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基などが挙げられる。
【0038】
具体的な(ヘテロ)アリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ビフェニルオキシ基、テルフェニルオキシ基、ピリジルオキシ基などが挙げられる。
【0039】
ポリアルキルエーテル基は、下記式(5)で表される基を用いることができる。
【0040】
【0041】
[式(5)中、Uは、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、mは2以上7以下の整数を表す。*は、Ar1またはAr2との結合位置を表す。]
【0042】
中でも、溶解性の観点から、Uはメチル基であることが好ましく、nは4以上であることが好ましい。
【0043】
<Ar2>
Ar2は、水素原子または置換基を有していても良い炭素数3~20の(ヘテロ)アリール基を表す。
【0044】
Ar2は、吸収波長の観点から、置換基を有していても良いフェニル基であることが好ましい。
【0045】
Ar2が有していても良い置換基は、前記Ar1が有していても良い置換基と同様である。溶解性の点から、Ar2が有していても良い置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数3~20の(ヘテロ)アリールオキシ基、炭素数4~10のポリアルキルエーテル基、或いはこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0046】
Ar2は、Z1と結合しても良く、Ar2が有する置換基がZ1と結合しても良い。
式(1)中の2個のAr2は、互いに同一であっても良く、異なるものであっても良い。
【0047】
<Y1>
Y1は、下記式(2)を表す。
【0048】
【0049】
式(2)中、*はホウ素原子との結合を表す。
【0050】
<R2、R3>
R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、または置換基を有していても良い、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルキルカルボニル基、炭素数7~20のアリールカルボニル基、炭素数3~20の(ヘテロ)アリール基のいずれかを表す。ただし、R2とR3が同時に水素原子であることは無い。
R2またはR3は、光照射による脱離性能の観点から、それぞれ独立に、置換基を有していても良い、炭素数7~20のアリールカルボニル基であることが好ましい。
【0051】
R2およびR3が有していても良い置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数4~20のポリアルキルエーテル基、第4級アンモニウム基、スルホン酸基、またはスルホン酸の塩のいずれか、或いはこれらの組み合わせである。その中でも、水への溶解性の観点から、炭素数4~20のポリアルキルエーテル基、第4級アンモニウム基、スルホン酸基、またはスルホン酸の塩のいずれか、或いはこれらの組み合わせが好ましい。
【0052】
<R2及びR3の置換基>
R2及びR3が有していても良い置換基の好適例は以下の通りである。
【0053】
ポリアルキルエーテル基は、下記式(5)で表される基を用いることができる。
【0054】
【0055】
[式(5)中、Uは、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、mは2以上7以下の整数を表す。*は、R2またはR3との結合位置を表す。]
【0056】
中でも、溶解性の観点から、Uはメチル基であることが好ましく、mは4以上であることが好ましい。
【0057】
第4級アンモニウム基としては、下記式(6)で表される基を用いることができる。
【0058】
【0059】
[式(6)中、R11~R13は、各々独立に炭素数1~4のアルキル基を表し、Tは対イオンを表す。*は、R2またはR3との結合位置を表す。]
【0060】
R11~R13は、溶解性の観点から、メチル基またはエチル基であることが好ましい。
具体的なTとしては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、テトラフルオロホウ酸(BF4)、ヘキサフルオロりん酸(PF6)などが挙げられ、中でも化合物の安定性の観点から、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0061】
スルホン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩が挙げられる。溶解し柄の観点から、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0062】
<Z1>
Z1は、直接結合または2価の芳香族連結基を表す。
Z1は、製造が容易な点で、直接結合であることが好ましい。Z1は、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル基を色素骨格から遠ざけることができる点で、2価の芳香族連結基であることが好ましく、吸収波長の短波長化を防ぐ点で、フェニレン基、ビフェニレン基、テルフェニレン基、フルオレンジイル基のいずれかが好ましい。
【0063】
<R1>
R1は、3つ以上の単結合を介してZ1とN-ヒドロキシスクシンイミドエステル基をつなぐ基を表す。R1は、下記式(7)で表されることが好ましい。
【0064】
【0065】
[式中、Qは、-CH2-、-O-、-CO-、-NH-、及び-S-からなる群より選ばれるいずれかの基を表し、pは2以上、30以下の整数を表す。p個のQは、同じでもよく、また異なっていてもよい。]
【0066】
Qとしては、中でも、化学的な耐久性に優れる点で、-CH2-、-O-を含むことが好ましい。
【0067】
<Z1の結合箇所>
Z1は、アザジピロメテン構造のいずれに結合しても良い。Z1は、Ar2、Ar1を介して結合しても良く、後述する式(3)のようにアザジピロメテン構造の4位(ピロール環のβ位)に結合しても良い。製造が容易な点で、式(3)の位置で結合することが好ましい。
【0068】
<好適色素>
式(1)の色素は、式(1)中のZ1の置換位置が、アザジピロメテン構造の4位(ピロール環のβ位)であることが好ましい。すなわち、下記式(3)で表される化合物であることが好ましく、特に、Y1が下記式(4)である下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0069】
【0070】
[式(3)中、Ar1、Ar2、Y1、Z1、R1は、前記式(1)におけるとAr1、Ar2、Y1、Z1、R1は同義である。]
【0071】
【0072】
[式(4)中、*はホウ素原子との結合を表す。
R4は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数4~20のポリアルキルエーテル基、第4級アンモニウム基、スルホン酸基、またはスルホン酸の塩のいずれか、或いはこれらの組み合わせである。
nは、1以上5以下の整数を表す。]
【0073】
<R4>
R4は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数4~20のポリアルキルエーテル基、第4級アンモニウム基、スルホン酸基、またはスルホン酸の塩のいずれか、或いはこれらの組み合わせである。その中でも、水への溶解性の観点から、炭素数4~20のポリアルキルエーテル基、第4級アンモニウム基、スルホン酸基、またはスルホン酸の塩のいずれか、或いはこれらの組み合わせが好ましい。
炭素数4~20のポリアルキルエーテル基、第4級アンモニウム基、スルホン酸基、スルホン酸の塩の好適例は、前述のR2およびR3が有していても良い置換基と同様である。
【0074】
<具体例>
以下に、本発明の化合物である式(1)の色素の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において、Meはメチル基を表す。
【0075】
【0076】
<合成方法>
本発明の化合物は、下記反応式に示されるように、アザジピロメテンとホウ素原子からなる構造にカルボン酸を置換した中間体を合成した後、ルイス酸を用いてアリールオキシ基をホウ素原子に結合させ、その後、カルボン酸基をN-ヒドロキシスクシンイミドエステル基へと変換することで合成することができる。
具体的な合成方法は、後述の実施例の項に記載の化合物1の合成例に示す通りである。
【0077】
【0078】
[上記反応式中、X1,Ar1,Ar2,Y1,Z1,R1は前記式(1)におけるX1,Ar1,Ar2,Y1,Z1,R1と同義である。]
【実施例0079】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明はその要旨を逸脱しない限り任意に変更して実施できる。
【0080】
【0081】
1Lナスフラスコに、中間体1(J.Am.Chem.Soc.2004,126,34,10619-10631記載の方法に準じて合成した。9.44g)とジクロロメタン(500mL)を入れ、室温で撹拌しながら、N-ブロモスクシンイミド(3.10g)を加え、室温で2.5時間撹拌した。水(200mL)を加えて分液洗浄した。さらに油相を水(200mL)で2回洗浄した。油相を回収し減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン=60/40→100/0)で精製したところ、金属光沢のある暗緑色固体として中間体2を10.49g得た。
【0082】
【0083】
100mLナスフラスコに、1-(トシルオキシ)-3,6,9,12-テトラオキサペンタデカン-15-酸tert-ブチル(4.99g)、4-ブロモフェノール(2.17g)、炭酸カリウム(2.17g)、及びN,N-ジメチルホルムアミド(20mL)を入れ、窒素雰囲気下、70℃で5時間撹拌した。室温まで冷却後、溶媒を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=5/5)で精製したところ、無色透明油状物として中間体3を4.32g得た。
【0084】
【0085】
200mLフラスコに、中間体3(4.32g)、ビス(ピナコラート)ジボロン(2.76g)、酢酸カリウム(4.44g)、ジクロロ(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム・ジクロロメタン付加物(0.37g)及び1,4-ジオキサン(70mL)を入れ、窒素雰囲気下、100℃で8時間撹拌した。室温まで冷却後、水(200mL)及びジクロロメタン(300mL)を加えて分液洗浄した。油相を回収し減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=5/5)で精製したところ、淡黄色油状物としての中間体4を4.57g得た。
【0086】
【0087】
窒素雰囲気下、300mLフラスコに、中間体2(3.12g)、中間体4(3.38g)、トルエン(167mL)、テトラヒドロフラン(50mL)及び2mol/Lりん酸三カリウム水溶液(15.6mL)を入れ、撹拌した。その溶液に、窒素雰囲気下、30mLシュレンク管で酢酸パラジウム(117mg)と2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル(428mg)とテトラヒドロフラン(16mL)を室温で10分間撹拌して調製した触媒溶液を加え、80℃で4時間撹拌した。室温まで冷却後、水層を抜き取り、残った有機層を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ジクロロメタン/酢酸エチル=10/0→9/1)で精製したところ、暗緑色固体として中間体5を4.04g得た。
【0088】
【0089】
窒素雰囲気下、300mLフラスコに、中間体5(2.43g)と酸性シリカゲル(13.2g)とトルエン(240mL)を入れ、110℃で4時間撹拌した。室温まで冷却後、吸引ろ過を行い、ろ取物(シリカゲル)をアセトン(400mL)で洗浄した。得られたろ液を減圧下、溶媒留去することで、暗緑色固体として中間体6を2.37g得た。
【0090】
【0091】
窒素雰囲気下、200mLフラスコに、没食子酸メチル(5.50g)とトリエチレングリコール2-ブロモエチルメチルエーテル(26.5g)と炭酸カリウム(16.5g)とN,N-ジメチルホルムアミド(50mL)を入れ、70℃で21時間撹拌した。室温まで冷却後、水(150mL)及び酢酸エチル(300mL)を加えて分液洗浄した。油相を回収し減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ジクロロメタン/アセトン=3/1→2/1)で精製したところ、無色透明の油状物として中間体7を16.3g得た。
【0092】
【0093】
1Lフラスコに、中間体7(16.3g)とエタノール(400mL)と蒸留水(100mL)と水酸化カリウム(9.81g)を入れ、100℃で7時間撹拌した。室温まで冷却後、希塩酸を加えて中和した(pH=6とした)。減圧濃縮した後、ジクロロメタン(300mL)および水(100mL)を加えて分液洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、ろ液を減圧留去することで、無色透明の油状物として中間体8を14.6g得た。
【0094】
【0095】
窒素雰囲気下、500mLフラスコに、中間体8(14.6g)とN-ヒドロキシスクシンイミド(2.52g)とジクロロメタン(300mL)を入れ、0℃で撹拌した。そこへN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(3.4mL)を加えた後、室温で2.5時間撹拌した。ろ過で白色沈殿を除去した後、ろ液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ジクロロメタン/アセトン=1/0→2/1→1/1→3/7)で精製したところ、無色透明の油状物として中間体9を15.4g得た。
【0096】
【0097】
窒素雰囲気下、500mLフラスコに、4-(アミノメチル)フェノール(3.35g)と中間体9(15.4g)とトリエチルアミン(3.9mL)とテトラヒドロフラン(250mL)を入れ、室温で2時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ジクロロメタン/アセトン=3/2→1/1→2/3)で精製したところ、無色透明の油状物として中間体10を8.29g得た。
【0098】
【0099】
窒素雰囲気下、200mLフラスコに、中間体6(610mg)、ジクロロメタン(100mL)を入れ、室温で攪拌した。そこへ塩化アルミニウム(182mg)を加え、室温で15分間攪拌した。そこへ中間体10(575mg)を加え、室温で5分間攪拌した。ろ過後、減圧濃縮した溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ジクロロメタン/アセトン=1/1→ジクロロメタン/メタノール=8/2)、および、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(アセトニトリルのみ)で精製した。上記の反応および精製を合計3回実施し、濃緑色固体として中間体11を191mg得た。
【0100】
【0101】
窒素雰囲気下、100mLフラスコに、中間体11(191mg)とN-ヒドロキシスクシンイミド(15.2mg)とジクロロメタン(18mL)を入れ、室温で撹拌した。そこへN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(17.1mg)を加えた後、室温で1時間撹拌した。溶液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、酢酸エチル→ジクロロメタン→アセトン)、次いで、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(アセトニトリルのみ)、最後にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ジクロロメタン/アセトン=1:1→1:2)で精製することで、濃緑色固体として化合物1を40.7mg得た。
【0102】
【0103】
200mLナスフラスコに、中間体12(Org.Lett.2009,11,23,5386-5389記載の方法に準じて合成した。1.69g)とN,N-ジメチルホルムアミド(75mL)を入れ、窒素雰囲気下、氷浴で冷却した。そこへ、イミダゾール(1.76g)とtert-ブチルジメチルシリルクロリド(1.93g)を加え、室温で3時間撹拌した。更に水(200mL)及び酢酸エチル(500mL)を加えて分液洗浄した。油相を回収し減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン=1/2)で精製したところ、黒緑色固体として中間体13を1.87g得た。
【0104】
【0105】
500mLナスフラスコに、中間体13(1.86g)とジクロロメタン(115mL)を入れ、室温で撹拌しながら、N-ブロモスクシンイミド(0.44g)を加え、室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン=35/65)で精製したところ、金属光沢のある暗緑色固体として中間体14を2.05g得た。
【0106】
【0107】
窒素雰囲気下、300mLフラスコに、中間体14(1.0g)、中間体4(0.88g)、トルエン(35mL)、テトラヒドロフラン(8mL)及び2mol/Lりん酸三カリウム水溶液(3.6mL)を入れ、撹拌した。その溶液に、30mLシュレンク管で酢酸パラジウム(27mg)と2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル(99mg)とテトラヒドロフラン(7mL)を室温で10分間撹拌して調製した触媒溶液を加え、80℃で1.5時間撹拌した。室温まで冷却後、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ジクロロメタン/酢酸エチル/メタノール=5/5/0→2/2/1)で精製した。得られた粗体を300mLフラスコに入れ、テトラヒドロフラン(50mL)と酢酸(32mg)と1Mフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム/テトラヒドロフラン溶液(0.54mL)を加えて室温で30分間撹拌した。減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、酢酸エチル/ジクロロメタン=4/6)で精製したところ、暗緑色固体として中間体15を1.02g得た。
【0108】
【0109】
300mLナスフラスコに、中間体15(1.00g)、ジクロロメタン(50mL)及びテトラヒドロフラン(30mL)を入れ、室温で撹拌しながら、N-ブロモスクシンイミド(0.19g)を加え、室温で40分間撹拌した。ここへ水(100mL)及び酢酸エチル(200mL)を加えて分液洗浄した。油相を回収し減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ジクロロメタン/酢酸エチル/メタノール=5/5/0→25/25/2)で精製したところ、暗緑色固体として中間体16を1.04g得た。
【0110】
【0111】
200mLフラスコに、中間体16(0.25g)、1,3-プロパンスルトン(0.15g)、炭酸セシウム(0.41g)及びテトラヒドロフラン(40mL)を入れ、窒素雰囲気下、80℃で2.5時間撹拌した。室温まで冷却後、減圧濃縮し、アセトン(20mL)とジエチルエーテル(120mL)を加え、吸引ろ過した。得られたろ取物を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(アセトニトリル/水=5/5)で精製したところ、黒青色固体としての中間体17を0.14g得た。
【0112】
【0113】
200mLフラスコに、中間体17(120mg)、4M塩化水素/1,4-ジオキサン溶液(40mL)を入れ、室温で2.5時間撹拌した後、溶媒を減圧留去した。そこへ、水(30mL)と炭酸ナトリウム(60mg)を入れ、室温で10分間撹拌した。減圧濃縮し、得られた残渣を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(アセトニトリル/水=5/5)で精製したところ、黒青色固体としての中間体18を109mg得た。
【0114】
【0115】
200mLフラスコに、中間体18(43mg)、炭酸N,N’-ジスクシンイミジル(28mg)、ピリジン(0.2mL)及びジメチルスルホキシド(7mL)を入れ、窒素雰囲気下、55℃で3時間撹拌した。室温まで冷却後、ジエチルエーテル(80mL)を加え、上澄み液を除去した。残渣にメタノールを加えて減圧濃縮し、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(アセトニトリル/水=5/5)で精製したところ、黒青色固体としての比較化合物1を45mg得た。
【0116】
<比較化合物2の合成>
【0117】
【0118】
窒素雰囲気下、200mLフラスコに、中間体19(0.70g、東京化成より購入)、フェニルボロン酸(0.20g)、トルエン(20mL)、エタノール(10mL)、及び2mol/Lりん酸三カリウム水溶液(2.0mL)を入れ、撹拌した。その溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(38mg)を加え、100℃で3時間撹拌した。室温まで冷却後、水相を除去し、減圧濃縮した。得られた残渣をジクロロメタン(40mL)に溶解させた後、活性白土(3.0g)を加えて室温で10分間攪拌した。吸引ろ過し、ろ取物(活性白土)をジクロロメタンで洗浄後、ろ液を減圧濃縮した。得られた残渣をジクロロメタン(10mL)に溶解させた後、メタノール(50mL)を少しずつ添加した。析出物を吸引ろ過で回収し、減圧乾燥することで、橙色固体として中間体20を0.40g得た。
【0119】
【0120】
窒素雰囲気下、30mLフラスコに、中間体20(100mg)とジクロロメタン(15mL)を入れ、室温で攪拌した。そこへ塩化アルミニウム(66.9mg)を加え、室温で15分間攪拌した。そこへ中間体10(206mg)を加え、室温で10分間攪拌した。ろ過後、減圧濃縮した溶液を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(アセトニトリルのみ)、次いで、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ジクロロメタン/アセトン=2/1→1/1)で精製したところ、橙色固体として比較化合物2を13.1mg得た。
【0121】
<吸収スペクトルの評価>
株式会社日立製作所製分光光度計「U-3900H」を用いて、化合物1の10
-5mol/Lのジクロロメタン溶液を調液して吸収スペクトルを測定した。測定波長域は300nm~900nmとした。
測定結果を
図1に示す。化合物1の極大吸収波長は688nmであった。
【0122】
<近赤外光照射によるアリールオキシ基脱離の評価>
以下に示す各化合物を25μM濃度で含む30質量%アセトニトリル水溶液を調製し、それぞれ暗所にてオプトコード社製ライト「LED-41VIS700」(極大波長700nm)にて光照射を40分間行った。
【0123】
【0124】
その結果、化合物1については、近赤外光照射後に黒緑色固体の沈殿が見られた。これは、アザBODIPY部位のホウ素原子に結合しているアリールオキシ基部位が近赤外光照射により以下の通り脱離し、水溶性が低下した色素部位が凝集したためである。
【0125】
【0126】
一方、比較化合物1及び比較化合物2については、近赤外光照射後に、沈殿の析出は見られなかった。