(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072584
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240521BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240521BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20240521BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20240521BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 Q
H01L21/304 631
H01L21/52 C
B23K26/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183501
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】板垣 圭
(72)【発明者】
【氏名】中村 奏美
【テーマコード(参考)】
4E168
5F047
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168JA17
5F047BA34
5F047BB03
5F057AA21
5F057BA11
5F057BB03
5F057BB07
5F057BB11
5F057CA14
5F057CA32
5F057CA36
5F057DA11
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5F063AA15
5F063AA18
5F063AA33
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5F063BA48
5F063CB02
5F063CB05
5F063CB24
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5F063DD25
5F063DD64
5F063DD86
5F063DG04
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5F063EE04
5F063EE07
5F063EE08
5F063EE13
5F063EE14
5F063EE16
5F063EE17
5F063EE42
5F063EE43
5F063EE44
(57)【要約】 (修正有)
【課題】紫外線硬化型粘着剤を含む粘着剤層と、接着剤層とを有する一体型フィルムを用いたときに、接着剤層片付き半導体チップをピックアップする際の不具合を抑制する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、基材層1、紫外線硬化型粘着剤を含む粘着剤層3及び接着剤層5を有する一体型フィルム9と、接着剤層上に設けられた複数の半導体チップSCと、を備える積層体10を準備する工程と、粘着剤層に対して紫外線を照射し、粘着剤硬化物層11を形成する工程と、複数の半導体チップ同士の間の間隙を通して、接着剤層に対してレーザーを照射し、接着剤層を個片化することによって接着剤層片付き半導体チップを作製する工程と、をこの順序で備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、紫外線硬化型粘着剤を含む粘着剤層、及び接着剤層をこの順序で有するダイシング・ダイボンディング一体型フィルムと、前記ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの前記接着剤層上に設けられた、半導体ウェハを個片化してなる複数の半導体チップとを備える積層体を準備する工程と、
前記積層体の前記粘着剤層に対して紫外線を照射し、前記紫外線硬化型粘着剤の硬化物を含む粘着剤硬化物層を形成する工程と、
前記複数の半導体チップ同士の間の間隙を通して、前記接着剤層に対してレーザーを照射し、前記接着剤層を個片化することによって接着剤層片付き半導体チップを作製する工程と、
をこの順序で備える、
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記積層体が、
前記半導体ウェハの回路形成面上に、ダイシングラインに沿って溝を形成する工程と、
前記溝が形成された前記半導体ウェハの前記回路形成面とは反対側の裏面を、少なくとも前記溝に達する深さまで研削して、前記複数の半導体チップを作製する工程と、
前記複数の半導体チップの裏面に、前記ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの前記接着剤層を貼り付ける工程と、
を含む方法によって作製される積層体である、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムにおいて、温度25±3℃、湿度55±5%においてT字剥離で剥離速度300mm/分の条件で測定される、前記接着剤層に対する前記粘着剤層の粘着力が0.50N/25mm以上である、
請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムにおいて、前記粘着剤層に対して照度80mW/cm2及び照射量130mJ/cm2の紫外線を照射して、前記粘着剤層を硬化させた後に、温度25±3℃、湿度55±5%においてT字剥離で剥離速度300mm/分の条件で測定される、前記接着剤層に対する前記粘着剤硬化物層の粘着力が0.30N/25mm以下である、
請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、一般に以下の工程を経て製造される。まず、半導体ウェハをバックグラインド(裏面研削)工程を実施し、続いて、ダイシング用粘着フィルムを貼り付けた状態でダイシング工程を実施する。次いで、紫外線照射工程、ピックアップ工程、ダイボンディング工程等が実施される。
【0003】
半導体装置の製造プロセスにおいて、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムと称されるフィルムが使用されている。このフィルムは、基材層と粘着剤層と接着剤層とがこの順序で積層された構造を有し、例えば、次のように使用される。まず、半導体ウェハに対して接着剤層側の面を貼り付けるとともにダイシングリングで半導体ウェハを固定した状態で半導体ウェハをダイシングする(ダイシング工程)。これにより、半導体ウェハ及び接着剤層が同時に複数の半導体チップ及び複数の接着剤層片に個片化される。続いて、粘着剤層が紫外線硬化型粘着剤を含む場合は、粘着剤層に対して紫外線を照射することによって接着剤層に対する粘着剤層の粘着力を低下させ(紫外線照射工程)、接着剤層片とともに半導体チップを粘着剤層からピックアップする(ピックアップ工程)。その後、接着剤層片を介して半導体チップを基板等に圧着する工程(ダイボンディング工程)等を経て半導体装置が製造される。なお、ダイシング工程を経て得られる半導体チップと、これに付着した接着剤層片とからなる積層体は、接着剤層片付き半導体チップと称される。
【0004】
近年、半導体パッケージの小型/薄型化、高容量/多機能化等に伴い、半導体チップにも薄型化が進められている。半導体チップの薄型化においては、加工時の半導体ウェハの破損等の加工時の不具合が発生し易くなる傾向があることから、半導体装置の製造プロセスも従来のものから変化しつつある。半導体チップの薄型化における不具合を抑制するプロセスとしては、例えば、先ダイシング(DBG(Dicing Before Grinding))プロセスが知られている。DBGプロセスは、バックグラインド工程を実施した後に、ダイシング工程を実施する従来のプロセスと異なり、ダイシング工程を実施した後に、バックグラインド工程を実施するプロセスである。より具体的には、半導体ウェハの回路形成面上に、ダイシングラインに沿ってハーフカットダイシングによる溝を形成し、続いて、半導体ウェハの回路形成面とは反対側の裏面を少なくとも溝に達する深さまで研削して(バックグラインドして)、半導体ウェハの薄化及び個片化を同時に行うプロセスである(例えば、特許文献1、2参照)。このようなプロセスによれば、加工時の不具合を抑制しつつ、薄型化の半導体チップを作製することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/189986号
【特許文献2】特開2011-181951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本発明者らが、DBGプロセスによって得られた複数の半導体チップに、紫外線硬化型粘着剤を含む粘着剤層と、接着剤層とを有するダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを適用して半導体装置の製造を検討したところ、接着剤層片付き半導体チップのピックアップ性が低下する場合があることが見出された。
【0007】
そこで、本開示は、紫外線硬化型粘着剤を含む粘着剤層を有する紫外線硬化型粘着剤を含む粘着剤層と、接着剤層とを有するダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを用いて、接着剤層片付き半導体チップを作製する工程を備える半導体装置の製造方法において、接着剤層片付き半導体チップをピックアップする際の不具合を抑制することが可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のとおり、半導体装置の製造においては、通常、半導体ウェハ及び接着剤層を同時に複数の半導体チップ及び複数の接着剤層片に個片化し、接着剤層片付き半導体チップを作製する。続いて、粘着剤層に対して紫外線を照射することによって接着剤層に対する粘着剤層の粘着力を低下させ、接着剤層片付き半導体チップを粘着剤層からピックアップする。
【0009】
一方、DBGプロセスによって得られた複数の半導体チップを用いて、半導体装置を製造する場合は、接着剤層を個片化するプロセスが別途必要となる。接着剤層の個片化においては、レーザーを用いて個片化を実施することが多い。しかし、本発明者らの検討によると、接着剤層を個片化する際にレーザーを用いることにより、粘着剤層にもレーザーが照射されてしまい、粘着剤層にレーザーカットラインに沿って切込みが深さ方向に発生し、粘着剤層の構成成分が飛散することが見出された。粘着剤層の構成成分が飛散すると、粘着剤層の構成成分が接着剤層の側面に付着し、粘着剤層に紫外線を照射しても、充分に粘着力が低下せず、接着剤層片付き半導体チップの接着剤層片と粘着剤層とのエッジ部における剥離強度(以下、「エッジ剥離強度」という場合がある。)が高いまま維持され、結果として、接着剤層片付き半導体チップのピックアップ性が不充分となる場合がある。本発明者らがこのような現象の発生を抑制すべくさらなる検討を進めたところ、レーザー照射によって接着剤層を個片化する際に、紫外線硬化型粘着剤を含む粘着剤層がすでに硬化状態にあると、粘着剤層の構成成分が飛散することを抑制することができることを見出し、本開示の発明を完成するに至った。
【0010】
本開示は、[1]~[4]の半導体装置の製造方法を提供する。
[1]基材層、紫外線硬化型粘着剤を含む粘着剤層、及び接着剤層をこの順序で有するダイシング・ダイボンディング一体型フィルムと、前記ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの前記接着剤層上に設けられた、半導体ウェハを個片化してなる複数の半導体チップとを備える積層体を準備する工程と、前記積層体の前記粘着剤層に対して紫外線を照射し、前記紫外線硬化型粘着剤の硬化物を含む粘着剤硬化物層を形成する工程と、前記複数の半導体チップ同士の間の間隙を通して、前記接着剤層に対してレーザーを照射し、前記接着剤層を個片化することによって接着剤層片付き半導体チップを作製する工程とをこの順序で備える、半導体装置の製造方法。
[2]前記積層体が、前記半導体ウェハの回路形成面上に、ダイシングラインに沿って溝を形成する工程と、前記溝が形成された前記半導体ウェハの前記回路形成面とは反対側の裏面を、少なくとも前記溝に達する深さまで研削して、前記複数の半導体チップを作製する工程と、前記複数の半導体チップの裏面に、前記ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの前記接着剤層を貼り付ける工程とを含む方法によって作製される積層体である、[1]に記載の半導体装置の製造方法。
[3]前記ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムにおいて、温度25±3℃、湿度55±5%においてT字剥離で剥離速度300mm/分の条件で測定される、前記接着剤層に対する前記粘着剤層の粘着力が0.50N/25mm以上である、[1]又は[2]に記載の半導体装置の製造方法。
[4]前記ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムにおいて、前記粘着剤層に対して照度80mW/cm2及び照射量130mJ/cm2の紫外線を照射して、前記粘着剤層を硬化させた後に、温度25±3℃、湿度55±5%においてT字剥離で剥離速度300mm/分の条件で測定される、前記接着剤層に対する前記粘着剤硬化物層の粘着力が0.30N/25mm以下である、[3]に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、紫外線硬化型粘着剤を含む粘着剤層と、接着剤層とを有するダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを用いて、接着剤層片付き半導体チップを作製する工程を備える半導体装置の製造方法において、接着剤層片付き半導体チップをピックアップする際の不具合を抑制することが可能な半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、
図1(a)、
図1(b)、及び
図1(c)は、各工程を示す図である。
【
図2】
図2は、半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、
図2(a)、
図2(b)、
図2(c)、及び
図2(d)は、各工程を示す図である。
【
図3】
図3は、積層体の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)、
図3(d)、
図3(e)、及び
図3(f)は、各工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。
【0014】
本開示における数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0015】
本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0016】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」等の他の類似の表現においても同様である。また、「(ポリ)」とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合の双方を意味する。
【0017】
「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0018】
[半導体装置の製造方法]
一実施形態の半導体装置の製造方法は、基材層、紫外線硬化型粘着剤を含む粘着剤層、及び接着剤層をこの順序で有するダイシング・ダイボンディング一体型フィルム(以下、「一体型フィルム」という場合がある。)と、一体型フィルムの接着剤層上に設けられた、半導体ウェハを個片化してなる複数の半導体チップとを備える積層体を準備する工程(工程(A))と、積層体の粘着剤層に対して紫外線を照射し、紫外線硬化型粘着剤の硬化物を含む粘着剤硬化物層を形成する工程(工程(B))と、複数の半導体チップ同士の間の間隙を通して、接着剤層に対してレーザーを照射し、接着剤層を個片化することによって接着剤層片付き半導体チップを作製する工程(工程(C))とをこの順序で備える。
図1及び
図2は、半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
【0019】
<工程(A)>
本工程では、基材層1、紫外線硬化型粘着剤を含む粘着剤層3、及び接着剤層5をこの順序で有する一体型フィルム9と、一体型フィルム9の接着剤層5上に設けられた、半導体ウェハを個片化してなる複数の半導体チップSCとを備える積層体10を準備する(
図1(a)参照)。積層体10においては、粘着剤層3の基材層1とは反対側の面上に、半導体チップSCを固定するためのダイシングリングDRが貼り付けられていてもよい。基材層と、基材層上に設けられた粘着剤層とを有する積層フィルムは、ダイシングフィルムと称される。
【0020】
(基材層)
基材層1は、既知のポリマーシート又はフィルムを用いることができる。基材層1の具体例としては、結晶性ポリプロピレン、非晶性ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、低密度直鎖ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、又は、これらに可塑剤を混合した混合物、あるいは、電子線照射により架橋を施した硬化物が挙げられる。
【0021】
基材層1は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン-ポリプロピレンランダム共重合体、及びポリエチレン-ポリプロピレンブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を主成分とする表面を有し、この表面と粘着剤層3とが接しているものであってよい。これらの樹脂は、ヤング率、応力緩和性、融点等の特性、価格面、使用後の廃材リサイクルなどの観点からも良好な基材となり得る。基材層1は、単層であってよく、必要に応じて、異なる材質からなる層が積層された多層構造を有していてもよい。粘着剤層3との密着性を制御する観点から、基材層1は、その表面に対して、マット処理、コロナ処理等の表面粗化処理を施してもよい。
【0022】
基材層1の厚さは、例えば、10~200μm又は20~170μmであってよい。
【0023】
(粘着剤層)
粘着剤層3は、紫外線硬化型粘着剤を含む。紫外線硬化型粘着剤は、一実施形態において、連鎖重合可能な官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(以下、「(メタ)アクリル系樹脂(A)」という場合がある。)と、光重合開始剤とを含んでいてもよい。(メタ)アクリル系樹脂(A)は、その少なくとも一部が架橋剤により架橋されていてもよい。
【0024】
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、連鎖重合可能な官能基(以下、「官能基(A)」という場合がある。)を有する。官能基(A)は、アクリロイル基及びメタクリロイル基から選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0025】
(メタ)アクリル系樹脂(A)における官能基(A)の含有量は、例えば、0.1~1.2mmol/gであってよく、0.3~1.0mmol/g又は0.5~0.8mmol/gであってもよい。
【0026】
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、水酸基、グリシジル基(エポキシ基)、アミノ基等から選ばれる少なくとも1種の官能基(以下、「官能基(B)」という場合がある。)を有する(メタ)アクリル系樹脂(以下、「(メタ)アクリル系樹脂(B)」という場合がある。)と、後述の官能基(A)を導入するための化合物(以下、「官能基導入化合物」という場合がある。)とを反応させることによって得ることができる。(メタ)アクリル系樹脂(A)は、(メタ)アクリル系樹脂(B)と官能基導入化合物との反応物ということもできる。
【0027】
(メタ)アクリル系樹脂(B)は、既知の方法で合成することで得ることができる。合成方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法、析出重合法、気相重合法、プラズマ重合法、超臨界重合法が挙げられる。また、重合反応の種類としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、リビングアニオン重合、配位重合、イモータル重合等の他、ATRP(原子移動ラジカル重合)及びRAFT(可逆的付加開裂連鎖移動重合)といった手法も挙げられる。この中でも、溶液重合法を用いてラジカル重合により合成することは、経済性の良さ、反応率の高さ、重合制御の容易さなどの他、重合で得られた樹脂溶液をそのまま用いて配合できる等の利点を有する。
【0028】
ここで、溶液重合法を用いてラジカル重合によって(メタ)アクリル系樹脂(B)を得る方法を例に、(メタ)アクリル系樹脂(B)の合成法について詳細に説明する。
【0029】
(メタ)アクリル系樹脂(B)を合成する際に用いられるモノマーとしては、一分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有するものであれば特に制限されない。その具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)スクシネート等の脂肪族(メタ)アクリレート;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)テトラヒドロフタレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)ヘキサヒドロフタレート等の脂環式(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o-ビフェニル(メタ)アクリレート、1-ナフチル(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、1-ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(o-フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(1-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(2-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2-テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-N-カルバゾール等の複素環式(メタ)アクリレート、これらのカプロラクトン変性体、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、α-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、α-ブチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、α-エチル-6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエチレン性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物;(2-エチル-2-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、2-(2-エチル-2-オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-メチル-2-オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、3-(2-エチル-2-オキセタニル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(2-メチル-2-オキセタニル)プロピル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とオキセタニル基とを有する化合物;2-(メタ)アクリロキシエチルイソシアネート等のエチレン性不飽和基とイソシアネート基とを有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とヒドロキシル基とを有する化合物が挙げられる。これらを適宜組み合わせて目的とする(メタ)アクリル系樹脂(B)を合成することができる。
【0030】
(メタ)アクリル系樹脂(B)は、後述の官能基導入化合物又は架橋剤との反応点として、水酸基、グリシジル基(エポキシ基)、アミノ基等から選ばれる少なくとも1種の官能基(B)を有している。
【0031】
水酸基を有する(メタ)アクリル系樹脂(B)を合成するためのモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とヒドロキシル基とを有する化合物などが挙げられる。
【0032】
グリシジル基を有する(メタ)アクリル系樹脂(B)を合成するためのモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、α-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、α-ブチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、α-エチル-6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエチレン性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物が挙げられる。
【0033】
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、アクリロイル基、メタクリロイル基等の官能基(A)を有する。官能基(A)は、例えば、水酸基、グリシジル基(エポキシ基)、アミノ基等から選ばれる少なくとも1種の官能基(B)を有する(メタ)アクリル系樹脂(B)に、官能基導入化合物を反応させることにより、当該(メタ)アクリル系樹脂(B)中に導入することができる。官能基導入化合物の具体例としては、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、α,α-ジメチル-4-イソプロペニルベンジルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は4-ヒドロキシブチルエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。これらの中でも、官能基導入化合物は、2-メタクリロキシエチルイソシアネートであってよい。
【0034】
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、主に、(メタ)アクリル系樹脂(B)に由来する、水酸基、グリシジル基(エポキシ基)、アミノ基等から選ばれる少なくとも1種の官能基(B)を反応点として、その反応点の一部が架橋剤により架橋されていてもよい。すなわち、(メタ)アクリル系樹脂(A)の少なくとも一部は、架橋剤により架橋されていてもよい。紫外線硬化型粘着剤は、架橋剤によって架橋されていてもよい(メタ)アクリル系樹脂(A)を含んでいてもよい。
【0035】
架橋剤は、例えば、粘着剤層の貯蔵弾性率及び/又は粘着性の制御を目的に用いられる。架橋剤は、(メタ)アクリル系樹脂(A)に残存し得る(メタ)アクリル系樹脂(B)に由来する、水酸基、グリシジル基(エポキシ基)、アミノ基等から選ばれる少なくとも1種の官能基(B)と反応し得る官能基(以下、「官能基(C)」という場合がある。)を一分子中に2個以上有する化合物であればよい。(メタ)アクリル系樹脂(A)と架橋剤との反応によって形成される結合としては、例えば、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、ウレア結合等が挙げられる。
【0036】
架橋剤における官能基(C)は、イソシアネート基であってよい。すなわち、架橋剤は、例えば、一分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートであってよい。このような多官能イソシアネートを用いると、(メタ)アクリル系樹脂(A)に残存し得る(メタ)アクリル系樹脂(B)に由来する官能基(B)と容易に反応し、強固な架橋構造を形成することができる。
【0037】
一分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、リジンイソシアネート等のイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0038】
架橋剤は、多官能イソシアネートと、一分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールとの反応物(イソシアネート基含有オリゴマー)であってもよい。一分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0039】
これらの中でも、架橋剤は、一分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートと、一分子中に3個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールとの反応物(イソシアネート基含有オリゴマー)であってもよい。このようなイソシアネート基含有オリゴマーを架橋剤として用いることで、粘着剤層3が緻密な架橋構造を形成し、これにより、ピックアップ工程において接着剤層5に粘着剤が付着することを抑制することができる傾向がある。
【0040】
(メタ)アクリル系樹脂(A)を架橋剤と反応させる際の架橋剤の含有量は、粘着剤層3に対して求められる凝集力、破断伸び率、接着剤層との密着性等に応じて適宜設定することができる。架橋剤の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(A)の総量100質量部に対して、例えば、0.1~10質量部、0.2~7質量部、又は0.3~5質量部であってよい。
【0041】
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、紫外線硬化型粘着剤(又は粘着剤層3)の主成分であり得る。(メタ)アクリル系樹脂(A)の含有量は、紫外線硬化型粘着剤(又は粘着剤層3)の全量を基準として、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は98質量%以上であってよい。
【0042】
光重合開始剤は、紫外線を照射することで連鎖重合可能な活性種を発生するものであれば、特に制限されない。光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。ここで連鎖重合可能な活性種とは、連鎖重合可能な官能基と反応することで重合反応が開始されるものを意味する。
【0043】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のベンゾインケタール;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシケトン;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、1,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等のα-アミノケトン;1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタジオン-2-(ベンゾイル)オキシム等のオキシムエステル;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノン等のキノン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル化合物;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9、9’-アクリジニルヘプタン)等のアクリジン化合物;N-フェニルグリシン、クマリンなどが挙げられる。
【0044】
紫外線硬化型粘着剤における光重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(A)の総量100質量部に対して、例えば、0.1~30質量部、0.3~10質量部、又は0.5~5質量部であってよい。
【0045】
粘着剤層3は、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、連鎖重合可能な官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂(アクリルモノマー又はオリゴマー、ウレタンモノマー又はオリゴマー等)、粘着性付与剤(タッキファイヤ等)、帯電防止性付与剤、充填剤(有機フィラー、無機フィラー等)などが挙げられる。
【0046】
粘着剤層3の厚さは、例えば、1μm以上、2μm以上、3μm以上、又は5μm以上であってよく、100μm以下、50μm以下、20μm以下、又は15μm以下であってよい。
【0047】
ダイシングフィルム7において、粘着剤層3は、基材層1上に形成されている。粘着剤層3の形成方法としては、既知の手法を採用できる。例えば、基材層1と粘着剤層3との積層体を二層押し出し法で形成してもよいし、紫外線硬化型粘着剤のワニス(粘着剤層形成用のワニス)を調製し、これを基材層1の表面に塗工する、あるいは、離型処理されたフィルム上に粘着剤層3を形成し、これを基材層1に転写してもよい。
【0048】
紫外線硬化型粘着剤のワニス(粘着剤層形成用のワニス)は、紫外線硬化型粘着剤((メタ)アクリル系樹脂(A)、光重合開始剤、架橋剤等)を溶解し得る有機溶剤であって加熱により揮発するものであってよい。有機溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、p-シメン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコールアルキルエーテルアセテート;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミドなどが挙げられる。
【0049】
これらの中で、有機溶剤は、溶解性及び沸点の観点から、例えば、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びN,N-ジメチルアセトアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。ワニスの固形分濃度は、通常、10~60質量%である。
【0050】
(接着剤層)
接着剤層5は、既知のダイボンディングフィルム(半導体チップと支持部材との接着又は半導体チップ同士の接着に使用されるフィルム)又はそれを構成する接着剤組成物を用いて形成することができる。接着剤層5を構成する接着剤組成物は、例えば、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、反応性基含有(メタ)アクリル共重合体とを含んでいてもよい。接着剤層5を構成する接着剤組成物は、カップリング剤、硬化促進剤、フィラー等をさらに含んでいてもよい。
【0051】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジリエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジリエーテル化物、フェノール類のジグリシジリエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物等の二官能エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、多官能エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂等の一般に知られているその他のエポキシ樹脂を適用してもよい。なお、特性を損なわない範囲でエポキシ樹脂以外の成分が不純物として含まれていてもよい。
【0052】
エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、フェノール化合物と2価の連結基であるキシリレン化合物とを、無触媒又は酸触媒の存在下に反応させて得ることができるフェノール樹脂等が挙げられる。フェノール樹脂の製造に用いられるフェノール化合物としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-n-プロピルフェノール、m-n-プロピルフェノール、p-n-プロピルフェノール、o-イソプロピルフェノール、m-イソプロピルフェノール、p-イソプロピルフェノール、o-n-ブチルフェノール、m-n-ブチルフェノール、p-n-ブチルフェノール、o-イソブチルフェノール、m-イソブチルフェノール、p-イソブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、2,4-キシレノール、2,6-キシレノール、3,5-キシレノール、2,4,6-トリメチルフェノール、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、4-メトキシフェノール、o-フェニルフェノール、m-フェニルフェノール、p-フェニルフェノール、p-シクロヘキシルフェノール、o-アリルフェノール、p-アリルフェノール、o-ベンジルフェノール、p-ベンジルフェノール、o-クロロフェノール、p-クロロフェノール、o-ブロモフェノール、p-ブロモフェノール、o-ヨードフェノール、p-ヨードフェノール、o-フルオロフェノール、m-フルオロフェノール、p-フルオロフェノール等が挙げられる。フェノール樹脂の製造に用いられる2価の連結基であるキシリレン化合物としては、次に示すキシリレンジハライド、キシリレンジグリコール及びその誘導体が用いることができる。すなわち、キシリレン化合物の具体例としては、α,α’-ジクロロ-p-キシレン、α,α’-ジクロロ-m-キシレン、α,α’-ジクロロ-o-キシレン、α,α’-ジブロモ-p-キシレン、α,α’-ジブロモ-m-キシレン、α,α’-ジブロモ-o-キシレン、α,α’-ジヨード-p-キシレン、α,α’-ジヨード-m-キシレン、α,α’-ジヨード-o-キシレン、α,α’-ジヒドロキシ-p-キシレン、α,α’-ジヒドロキシ-m-キシレン、α,α’-ジヒドロキシ-o-キシレン、α,α’-ジメトキシ-p-キシレン、α,α’-ジメトキシ-m-キシレン、α,α’-ジメトキシ-o-キシレン、α,α’-ジエトキシ-p-キシレン、α,α’-ジエトキシ-m-キシレン、α,α’-ジエトキシ-o-キシレン、α,α’-ジ-n-プロポキシ-p-キシレン、α,α’-ジ-n-プロポキシ-m-キシレン、α,α’-ジ-n-プロポキシ-o-キシレン、α,α’-ジイソプロポキシ-p-キシレン、α,α’-ジイソプロポキシ-m-キシレン、α,α’-ジイソプロポキシ-o-キシレン、α,α’-ジ-n-ブトキシ-p-キシレン、α,α’-ジ-n-ブトキシ-m-キシレン、α,α’-ジ-n-ブトキシ-o-キシレン、α,α’-ジイソブトキシ-p-キシレン、α,α’-ジイソブトキシ-m-キシレン、α,α’-ジイソブトキシ-o-キシレン、α,α’-ジ-tert-ブトキシ-p-キシレン、α,α’-ジ-tert-ブトキシ-m-キシレン、α,α’-ジ-tert-ブトキシ-o-キシレン等が挙げられる。
【0053】
フェノール化合物とキシリレン化合物とを反応させる際には、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸等の鉱酸類;ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機カルボン酸類;トリフロロメタンスルホン酸等の超強酸類;アルカンスルホン酸型イオン交換樹脂等の強酸性イオン交換樹脂類;パーフルオロアルカンスルホン酸型イオン交換樹脂等の超強酸性イオン交換樹脂類(商品名:ナフィオン、Nafion、Du Pont社製、「ナフィオン」は登録商標);天然及び合成ゼオライト類;活性白土(酸性白土)類等の酸性触媒を用い、50~250℃において実質的に原料であるキシリレン化合物が消失し、かつ反応組成が一定になるまで反応させることによってフェノール樹脂をえることができる。反応時間は、原料及び反応温度によって適宜設定することができ、例えば、1~15時間程度とすることでき、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)等により反応組成を追跡しながら決定することができる。
【0054】
反応性基含有(メタ)アクリル共重合体は、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体であってよい。エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体は、原料としてグリシジル(メタ)アクリレートを、得られる共重合体に対し0.5~6質量%となる量用いて得られる共重合体であってよい。グリシジル(メタ)アクリレートの含有量が0.5質量%以上であると、高い接着力を得易くなり、他方、6質量%以下であることでゲル化を抑制できる傾向がある。反応性基含有(メタ)アクリル共重合体の残部を構成するモノマーは、例えば、メチル(メタ)アクリレート等の炭素数1~8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、アクリロニトリル等であってよい。これらの中でも、反応性基含有(メタ)アクリル共重合体の残部を構成するモノマーは、エチル(メタ)アクリレート及び/又はブチル(メタ)アクリレートであってよい。混合比率は、反応性基含有(メタ)アクリル共重合体のTgを考慮して調整することができる。Tgが-10℃以上であるとBステージ状態での接着剤層5のタック性が大きくなり過ぎることを抑制できる傾向にあり、取り扱い性に優れる傾向がある。なお、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体のガラス転移点(Tg)は、例えば、30℃以下であってよい。重合方法は、特に制限されないが、例えば、パール重合、溶液重合等が挙げられる。市販のエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、HTR-860P-3(商品名、ナガセケムテックス株式会社製)が挙げられる。
【0055】
エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は、接着性及び耐熱性の観点から、10万以上であってよく、30万~300万又は50万~200万であってもよい。重量平均分子量が300万以下であると、チップと、これを支持する基板との間の充填性が低下することを抑制できる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0056】
カップリング剤は、シランカップリング剤であってよい。シランカップリング剤の具体例としては、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0057】
硬化促進剤としては、例えば、第三級アミン、イミダゾール類、第四級アンモニウム塩類等が挙げられる。硬化促進剤の具体例としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテートが挙げられる。
【0058】
フィラーは、無機フィラーであってよい。無機フィラーの具体例としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミウイスカ、窒化ホウ素、結晶質シリカ、非晶質シリカが挙げられる。
【0059】
接着剤層5の厚さは、例えば、0.1μm以上、1μm以上、2μm以上、又は3μm以上であってよく、100μm以下、50μm以下、20μm以下、又は10μm以下であってよい。
【0060】
なお、接着剤層5は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含まない態様であってもよい。例えば、接着剤層5が反応性基含有(メタ)アクリル共重合体を含む場合、接着剤層5は、反応性基含有(メタ)アクリル共重合体と、硬化促進剤と、フィラーとを含むものであってもよい。
【0061】
接着剤層5は、接着剤組成物のワニス(接着剤層形成用のワニス)を調製し、これを粘着剤層3の表面に塗工する、あるいは、離型処理されたフィルム上に接着剤層5を形成し、これを粘着剤層3に貼り付けてもよい。接着剤組成物のワニス(接着剤層形成用のワニス)は、フィラー以外の各成分を溶解し得る有機溶剤であって加熱により揮発するものであってよい。有機溶剤の具体例は、紫外線硬化型粘着剤のワニスにおける有機溶剤と同様のものを例示できる。
【0062】
(一体型フィルム)
一体型フィルム9は、例えば、基材層1と、基材層1上に設けられた、紫外線硬化型粘着剤を含む粘着剤層3とを有するダイシングフィルム7を準備する工程と、ダイシングフィルム7の粘着剤層3上に、接着剤層5を設ける工程とを含む方法によって製造することができる。
【0063】
一体型フィルム9において、接着剤層5に対する粘着剤層3の粘着力は、0.50N/25mm以上、1.00N/25mm以上、又は1.50N/25mm以上あってよい。この粘着力は、温度25±3℃、湿度55±5%においてT字剥離で剥離速度300mm/分の条件で測定されるT字ピール強度である。T字ピール強度は、粘着層側に支持テープを貼り合せ、幅25mm、長さ100mmのサイズに切り出した状態で測定される。接着剤層5に対する粘着剤層3の粘着力(T字ピール強度)がこのような範囲にあると、粘着剤層3の硬化前に、接着剤層片付き半導体チップの端部と粘着剤層との間での剥離の発生を抑制することができる傾向がある。接着剤層5に対する粘着剤層3の粘着力は、例えば、5.00N/25mm以下、3.00N/25mm以下、又は2.00N/25mm以下であってよい。
【0064】
一体型フィルム9において、粘着剤層3に対して照度80mW/cm2及び照射量130mJ/cm2の紫外線(主波長:365nm)を照射して粘着剤層3を硬化させた後の接着剤層5に対する粘着剤硬化物層11の粘着力は、0.30N/25mm以下、0.20N/25mm以下、又は0.10N/25mm以下であってよい。この粘着力は、温度25±3℃、湿度55±5%においてT字剥離で剥離速度300mm/分の条件で測定されるT字ピール強度である。T字ピール強度は、粘着層側に支持テープを貼り合せ、幅25mm、長さ100mmのサイズに切り出した状態で測定される。接着剤層5に対する粘着剤硬化物層11の粘着力が0.30N/25mm以下であると、優れたピックアップ性を達成することが可能となる。接着剤層5に対する粘着剤硬化物層11の粘着力は、0.03N/25mm以上又は0.05N/25mm以上であってよい。
【0065】
(半導体チップ)
半導体チップSCは、半導体ウェハを個片化してなるものであり、例えば、DBGプロセスによって得ることができる。平面視における半導体チップSCの形状は、例えば、正方形又は長方形であってよい。半導体チップSCの面積は、10~250mm2であってよく、20~200mm2又は30~150mm2であってもよい。半導体チップSC一辺の長さは、例えば、1mm以上であり、2~18mm又3~15mmであってもよい。
【0066】
半導体チップSCの厚さ(後述の厚さDsc)は、例えば、10~200μmであってよく、20~100μmであってもよい。なお、半導体チップSCの厚さは同じであっても、互いに異なっていてもよい。また、半導体チップSCの厚さは、例えば、50μm以下、40μm以下、30μm以下、又は20μm以下であってもよく、10μm以上又は15μm以上であってもよい。
【0067】
図3は、積層体の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。積層体10は、例えば、半導体ウェハの回路形成面上に、ダイシングラインに沿って溝を形成する工程(工程(a))と、溝が形成された半導体ウェハの回路形成面とは反対側の裏面を、少なくとも溝に達する深さまで研削して、複数の半導体チップを作製する工程(工程(b))と、複数の半導体チップの裏面に、一体型フィルムの接着剤層を貼り付ける工程(工程(c))とを含む方法によって作製される積層体であってよい。
【0068】
工程(a)では、半導体ウェハSWの回路形成面s1上に、ダイシングラインに沿って溝w1を形成する(
図3(a)、
図3(b)参照)。
【0069】
半導体ウェハSWとしては、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、各種セラミック、ガリウムヒ素等の化合物半導体などが挙げられる。半導体ウェハSWは、通常、回路形成面s1と、回路形成面s1とは反対側の裏面s2とを有している。
【0070】
半導体ウェハSWの厚さDswは、半導体チップSCの厚さDscよりも大きい。半導体ウェハSWの厚さDswは、例えば、50~3000μm、100~2000μm、又は200~1500μmであってよい。
【0071】
溝w1は、半導体ウェハSWのダイシングラインに沿って、ダイシングブレード23を用いてハーフカットダイシングを実施することによって形成される(
図3(b)参照)。ハーフカットダイシングとは、半導体ウェハSWを完全に切断しないように、深さd1(深さd1は、半導体ウェハSWの厚さDsw未満であり得る。)まで切断することを意味する。ダイシングブレード23によるハーフカットダイシングは、市販のダイシングソーを用いて行うことができる。溝w1は、例えば、平面視において格子状をなすように、半導体ウェハSWの回路形成面s1上に形成される。
【0072】
工程(b)では、溝w1が形成された半導体ウェハSW(溝が形成された半導体ウェハSWa)の回路形成面s1とは反対側の裏面s2を、少なくとも溝w1に達する深さ(
図3(d)の深さd2)まで研削して、複数の半導体チップSCを作製する(
図3(c)、
図3(d)、
図3(e)参照)。半導体ウェハSWの深さd1と深さd2との和は、半導体ウェハSWの厚さDswであり得る。
【0073】
工程(b)においては、まず、溝w1が形成された半導体ウェハSWの回路形成面s1上に、バックグラインドテープ25を貼り付ける。バックグラインドテープ25は、当該分野で使用されるバックグラインドテープを使用でき、例えば、紫外線硬化型粘着剤を含む粘着剤層を備えるバックグラインドテープであってよい。
【0074】
続いて、溝w1が形成された半導体ウェハSWの裏面s2を研削する。溝w1が形成された半導体ウェハSWの裏面研削は、一般的なグラインダーを用いて行うことができる。このように裏面s2を研削することによって、
図3(e)に示すとおり、厚さDscの複数の半導体チップSCを作製することができる。厚さDscは、深さd1以下であり得る。半導体チップSCは、通常、回路形成面s1と、回路形成面s1とは反対側の裏面s3とを有している。
【0075】
工程(c)では、上記で得られた複数の半導体チップSCの裏面s3に、上記の一体型フィルム9の接着剤層5を貼り付ける(
図3(f)参照)。このようにして、基材層1と、粘着剤層3と、接着剤層5と、複数の半導体チップSCと、バックグラインドテープ25とをこの順序で有する積層体50を得ることができる。
【0076】
続いて、バックグラインドテープ25を積層体50から剥離することによって、積層体10を得ることができる。バックグラインドテープ25が紫外線硬化型粘着剤を含む粘着剤層を備える場合、バックグラインドテープ25の粘着剤層に紫外線を照射し、粘着剤層を硬化させて粘着力を低下させることによって、バックグラインドテープ25を積層体50から効率よく剥離することができる。
【0077】
<工程(B)>
本工程では、積層体10の粘着剤層3に対して紫外線を照射し、紫外線硬化型粘着剤の硬化物を含む粘着剤硬化物層11を形成する(
図1(b)、
図1(c)参照)。
【0078】
紫外線の照射は、例えば、
図1(b)に示すとおり、基材層1側から基材層1を介して実施される。紫外線の照射源は、特に制限されないが、例えば、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ、UV-LEDランプ等を使用することができる。粘着剤層3に対する紫外線の照度は、例えば、1~1000mW/cm
2、10~900mW/cm
2、又は30~800mW/cm
2であってよい。粘着剤層3に対する紫外線の照射量は、例えば、10~3000mJ/cm
2、50~2500mJ/cm
2、又は100~2000mJ/cm
2であってよい。
【0079】
このようにして、基材層1と、粘着剤硬化物層11と、接着剤層5と、複数の半導体チップSCとをこの順序で有する積層体20を得ることができる。
【0080】
<工程(C)>
本工程では、複数の半導体チップSC同士の間の間隙g1を通して、接着剤層5に対してレーザー15を照射し、接着剤層5を個片化することによって、半導体チップSCと接着剤層片5aとを含む接着剤層片付き半導体チップ13を作製する(
図2(a)、
図2(b)参照)。
【0081】
半導体ウェハを個片化してなる複数の半導体チップSCは、通常、複数の半導体チップSC同士の間に間隙g1を有している。間隙g1を通して、接着剤層5に対してレーザー15を照射することによって、半導体チップSCの平面視の形状と同様の形状を有する接着剤層片5aを得ることができる。
【0082】
レーザー15の照射は、例えば、
図2(a)に示すとおり、半導体チップSC側から複数の半導体チップSC同士の間の間隙g1を通して実施される。レーザー15の照射は、市販のレーザーソーを用いて実施することができる。レーザー15の周波数は、例えば、30~250kHz、50~200kHz、又は80~120kHzであってよい。レーザー15の出力は、例えば、0.05~2.0W、0.1~1.0W、又は0.2~0.5Wであってよい。レーザー15の照射における送り速度は、例えば、20~500mm/s、50~400mm/s、又は100~300mm/sであってよい。
【0083】
このようにして、半導体チップSCと接着剤層片5aとを含む接着剤層片付き半導体チップ13を作製することができ、基材層1と、粘着剤硬化物層11と、複数の接着剤層片付き半導体チップ13とをこの順序で有する積層体30を得ることができる。
【0084】
本実施形態の半導体装置の製造方法は、接着剤層片付き半導体チップ13をピックアップする工程(工程(D))、ピックアップされた接着剤層片付き半導体チップ13と支持部材21とを接着剤層片5aを介して熱圧着して接着する工程(工程(E))、接着剤層片5aを熱硬化させる工程(工程(F))等をさらに備えていてもよい。
【0085】
<工程(D)>
本工程では、必要に応じて、個片化された接着剤層片付き半導体チップ13を互いに離間させつつ、基材層1側からニードル17で突き上げられた接着剤層片付き半導体チップ13を吸引コレット19で吸引して粘着剤硬化物層11からピックアップする。
【0086】
<工程(E)>
本工程では、ピックアップされた接着剤層片付き半導体チップ13と支持部材21とを接着剤層片5aを介して熱圧着して接着する。支持部材21には、接着剤層片付き半導体チップ13(半導体チップSC)が1個接着されていてもよく、複数接着されていてもよい。
【0087】
接着剤層片付き半導体チップ13の熱圧着条件は、接着剤層片5aの構成成分によって適宜調整することができる。熱圧着における加熱温度は、例えば、80~160℃であってよい。熱圧着における荷重は、例えば、5~15Nであってよい。熱圧着における加熱時間は、例えば、0.5~20秒であってよい。
【0088】
<工程(F)>
本工程では、接着剤層片5aを熱硬化させる。接着剤層片5aの熱硬化条件は、接着剤層片5aの構成成分によって適宜調整することができる。熱硬化における加熱温度は、例えば、60~200℃、90~190℃、又は120~180℃であってよい。熱硬化における加熱時間は、30分~5時間、1~3時間、又は2~3時間であってよい。なお、温度又は圧力は、段階的に変更しながら行ってもよい。
【0089】
このようにして、(複数の)半導体チップSCと、半導体チップSCを搭載する支持部材21と、半導体チップSC及び支持部材21を接着する接着剤層片5aの硬化物(接着剤層片の硬化物5ac)とを備える半導体装置40(
図2(d)参照)を製造することができる。
【0090】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、レーザー照射によって接着剤層を個片化する際に、紫外線硬化型粘着剤を含む粘着剤層がすでに硬化状態にあることから、粘着剤層の構成成分の飛び散りの発生を抑制することができ(さらにはエッジ剥離強度を充分に低減でき)、接着剤層片付き半導体チップをピックアップする際の不具合を抑制することが可能となる。
【実施例0091】
以下、本開示について、実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に記述がない限り、薬品は全て試薬(市販品)を使用した。
【0092】
[(メタ)アクリル系樹脂の合成]
(製造例1-1:(メタ)アクリル系樹脂1aの合成)
スリーワンモーター、撹拌翼、及び窒素導入管が備え付けられた容量2000mLのフラスコに以下の成分を入れた。
・酢酸エチル(溶剤):635質量部
・2-エチルヘキシルアクリレート:395質量部
・2-ヒドロキシエチルアクリレート:100質量部
・メタクリル酸:5質量部
・アゾビスイソブチロニトリル:0.08質量部
【0093】
充分に均一になるまで内容物を撹拌した後、流量500mL/分にて60分バブリングを実施し、系中の溶存酸素を脱気した。1時間かけて78℃まで昇温し、昇温後6時間重合させた。次に、スリーワンモーター、撹拌翼、及び窒素導入管が備え付けられた容量2000mLの加圧釜に反応溶液を移し、120℃、0.28MPaの条件にて4.5時間加温後、室温(25±3℃、以下同様)に冷却した。
【0094】
次に酢酸エチルを490質量部加えて撹拌し、内容物を希釈した。これに、ウレタン化触媒として、ジオクチルスズジラウレートを0.10質量部添加した後、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、カレンズMOI(商品名))を105.3質量部加え、70℃で6時間反応させた後、室温に冷却した。次いで、酢酸エチルをさらに加え、(メタ)アクリル系樹脂溶液中の不揮発分含有量が35質量%となるよう調整し、製造例1-1の(メタ)アクリル系樹脂1aを含む溶液を得た。
【0095】
(製造例1-2:(メタ)アクリル系樹脂1bの合成)
表1の製造例1-1に示す原料モノマー組成を、表1の製造例1-2に示す原料モノマー組成に変更した以外は、製造例1-1と同様の方法で製造例1-2の(メタ)アクリル系樹脂1bを含む溶液を得た。
【0096】
(製造例1-3:(メタ)アクリル系樹脂1cの合成)
表1の製造例1-1に示す原料モノマー組成を、表1の製造例1-3に示す原料モノマー組成に変更した以外は、製造例1-1と同様の方法で製造例1-3の(メタ)アクリル系樹脂1cを含む溶液を得た。
【0097】
【0098】
(製造例2-1:ダイシングフィルム2aの作製)
以下の成分を混合することで、紫外線硬化型粘着剤のワニス(粘着剤層形成用のワニス)を調製した(表2参照)。酢酸エチル(溶剤)の量は、ワニスの総固形分含有量が25質量%となるように調整した。
・(メタ)アクリル系樹脂(A):製造例1-1の(メタ)アクリル系樹脂1aを含む溶液:100質量部(固形分)
・光重合開始剤:Omnirad 184(商品名(「Omnirad」は登録商標)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、IGM RESINS B.V.社製):1.0質量部
・光重合開始剤:Omnirad 819(商品名(「Omnirad」は登録商標)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、IGM RESINS B.V.社製):0.2質量部
・架橋剤:コロネートL(商品名、多官能イソシアネート(トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応物)、日本ポリウレタン工業株式会社製、固形分75質量%):2.0質量部(固形分)
・酢酸エチル(溶剤)
【0099】
一方の面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(幅450mm、長さ500mm、厚さ38μm)を準備した。離型処理が施された面に、アプリケータを用いて紫外線硬化型粘着剤のワニスを塗布した後、80℃で3分乾燥した。これによって、基材層としてのポリエチレンテレフタレートフィルムと、その上に形成された厚さ10μmの粘着剤層とを含むダイシングフィルム2aを得た。
【0100】
一方の面にコロナ処理が施されたポリオレフィンフィルム(幅450mm、長さ500mm、厚さ90μm)を準備した。コロナ処理が施された面と、上記積層体の粘着剤層とを室温にて貼り合わせた。次いで、ゴムロールで押圧することで粘着剤層をポリオレフィンフィルム(カバーフィルム)に転写した。その後、室温で3日間放置することで、製造例2-1のカバーフィルム付きのダイシングフィルム2aを得た。
【0101】
(製造例2-2:ダイシングフィルム2bの作製)
製造例1-1の(メタ)アクリル系樹脂1aを含む溶液100質量部(固形分)を、製造例1-2の(メタ)アクリル系樹脂1bを含む溶液100質量部(固形分)に変更し、さらに架橋剤2.0質量部(固形分)を7.0質量部(固形分)に変更した以外は、製造例2-1と同様の方法で製造例2-2のカバーフィルム付きのダイシングフィルム2bを得た。
【0102】
(製造例2-3:ダイシングフィルム2cの作製)
製造例1-1の(メタ)アクリル系樹脂1aを含む溶液100質量部(固形分)を、製造例1-3の(メタ)アクリル系樹脂1cを含む溶液100質量部(固形分)に変更した以外は、製造例2-1と同様の方法で製造例2-3のカバーフィルム付きのダイシングフィルム2cを得た。
【0103】
(製造例3-1:ダイボンディングフィルム3aの作製)
以下の成分を混合することで、接着剤層形成用のワニスを調製した。まず、以下の成分を含む混合物に対して、シクロヘキサノン(溶剤)を加えて撹拌混合した後、さらにビーズミルを用いて90分混練した。
・エポキシ樹脂:N-500P-10(商品名、DIC株式会社製、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂エポキシ当量:204g/eq、軟化点:75~85℃):18質量部
・エポキシ樹脂:EXA-830CRP(商品名、DIC株式会社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量:160、分子量:1800、軟化点:85℃):10質量部
・エポキシ樹脂硬化剤:MEH-7800M(商品名、明和化学株式会社製、フェニルアラルキル型フェノール樹脂、水酸基当量:174g/eq、軟化点:80℃):22質量部
・カップリング剤:NUC A-189(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、シランカップリング剤、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン):0.1質量部
・カップリング剤:NUC A-1160(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、シランカップリング剤、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン):0.2質量部
・フィラー:R972(商品名、日本アエロジル株式会社製、シリカフィラー、平均粒径0.016μm、最大粒径1.0μm以下:5質量部
【0104】
上記のようにして得られた混合物に以下の成分をさらに加えた後、撹拌混合及び真空脱気の工程を経て接着剤層形成用のワニスを得た。
・反応性基含有(メタ)アクリル共重合体:HTR-860P-3(商品名、ナガセケムテックス株式会社製、エポキシ基含有アクリル共重合体、重量平均分子量80万):45質量部
・硬化促進剤:キュアゾール2PZ-CN(商品名(「キュアゾール」は登録商標)、四国化成工業株式会社製、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール):0.1質量部
【0105】
一方の面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ35μm)を準備した。離型処理が施された面に、アプリケータを用いて接着剤層形成用のワニスを塗布した後、140℃で5分加熱乾燥した。これにより、ポリエチレンテレフタレートフィルム(キャリアフィルム)と、その上に形成された厚さ3μmの接着剤層(Bステージ状態)とを含むダイボンディングフィルム3aを得た。
【0106】
(製造例3-2:ダイボンディングフィルム3bの作製)
以下の成分を混合することで、接着剤層形成用のワニスを調製した。まず、以下の成分を含む混合物に対して、シクロヘキサノン(溶剤)を加えて撹拌混合した後、さらにビーズミルを用いて90分混練した。
・エポキシ樹脂:N-500P-10(商品名、DIC株式会社製、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂エポキシ当量:204g/eq、軟化点:75~85℃):13質量部
・エポキシ樹脂:YDF-8170C(商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量:159g/eq、30℃で液状):0.5質量部
・エポキシ樹脂硬化剤:PSM-4326(商品名、群栄化学工業株式会社製、フェノールノボラック型フェノール樹脂、水酸基当量:105g/eq、軟化点:120℃):7質量部
・フィラー:SC2050-HLG(商品名、アドマテックス株式会社製、シリカフィラー分散液、平均粒径:0.50μm):30質量部
【0107】
上記のようにして得られた混合物に以下の成分をさらに加えた後、撹拌混合及び真空脱気の工程を経て接着剤層形成用のワニスを得た。
・反応性基含有(メタ)アクリル共重合体:HTR-860P-3(商品名、ナガセケムテックス株式会社製、エポキシ基含有アクリル共重合体、重量平均分子量80万):50質量部
・硬化促進剤:キュアゾール2PZ-CN(商品名(「キュアゾール」は登録商標)、四国化成工業株式会社製、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール):0.1質量部
【0108】
一方の面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ35μm)を準備した。離型処理が施された面に、アプリケータを用いて接着剤層形成用のワニスを塗布した後、140℃で5分間加熱乾燥した。これにより、ポリエチレンテレフタレートフィルム(キャリアフィルム)と、その上に形成された厚さ5μmの接着剤層(Bステージ状態)とを含むダイボンディングフィルム3bを得た。
【0109】
(製造例4-1:一体型フィルム4aの作製)
ダイボンディングフィルム3aを、キャリアフィルムごと直径312mmの円形にカットした。カットしたダイボンディングフィルム3aに、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離したダイシングフィルム2aを室温で貼り付けた後、室温で1日放置した。その後、直径370mmの円形にダイシングフィルム2aをカットした。このようにして、製造例4-1の一体型フィルム4aを得た。
【0110】
(製造例4-2:一体型フィルム4bの作製)
ダイボンディングフィルム3aをダイボンディングフィルム3bに変更した以外は、製造例4-1と同様の方法で製造例4-2の一体型フィルム4bを得た。
【0111】
(製造例4-3:一体型フィルム4cの作製)
ダイシングフィルム2aをダイシングフィルム2bに変更した以外は、製造例4-1と同様の方法で製造例4-3の一体型フィルム4cを得た。
【0112】
(製造例4-4:一体型フィルム4dの作製)
ダイシングフィルム2aをダイシングフィルム2cに変更した以外は、製造例4-1と同様の方法で製造例4-4の一体型フィルム4dを得た。
【0113】
[一体型フィルムの粘着力に関する評価]
<接着剤層に対する粘着剤層の粘着力(30°ピール強度)の測定>
接着剤層に対する、紫外線照射前の粘着剤層の粘着力及び紫外線照射後の粘着剤層の粘着力を、T字ピール強度を測定することによって評価した。T字ピール強度測定用のサンプルは、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムのうち粘着層側に支持テープを貼り合せ、幅25mm、長さ100mmのサイズに切り出すことによって得た。紫外線照射前のサンプルは、30分以上室温で保管したものを使用した。紫外線照射後のサンプルは、紫外線照射前のサンプルを測定前に、紫外線照射装置(コンベアUV照射装置CS60、株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション)を用いて、照度80mW/cm2及び照射量130mJ/cm2の紫外線(主波長:365nm)を照射することによって得た。T字ピール強度測定には、オートグラフ(株式会社島津製作所製)を用い、温度25±3℃、湿度55±5%の中で300mm/分の速度で引っ張り、得られたチャートより安定した点の値の平均値を取り、その平均値をT字ピール強度とした。同様の測定を5回行い、その平均値を最終的なT字ピール強度の値とした。なお、T字剥離では粘着層側を固定し、接着層側を一定の剥離測定で剥離できるように固定した。結果を表2に示す。
【0114】
【0115】
(実施例1)
[接着剤層片付き半導体チップの作製]
<積層体(1)の準備(工程(A))>
厚さ775μmの半導体ウェハを準備し、フルオートダイサー(DFD6361、株式会社ディスコ製)を用いて、半導体ウェハの回路形成面(表面)に対してハーフカットを行い、深さ60μmの溝を形成した。続いて、同様のフルオートダイサーを用いて、775μm厚さのウェハに対してハーフカットを行い、60μmの溝を形成した。ダイシングブレードは、株式会社ディスコ製のZH05-SD4000-N1-70-DDを使用し、回転数、カット速度は、それぞれ40000回転/分、30mm/sとした。半導体チップのサイズは、4mm×12mmとした。
【0116】
次に、バックグラインド用テープラミネーター(RAD-3520F/12、リンテック株式会社製)を用いて、半導体ウェハの回路形成面(表面)にバックグラインドテープを貼り付け、その後、グラインダー(DGP8761、株式会社ディスコ製)を用いて、半導体ウェハを裏面側から、最終的に得られる半導体チップの厚さが25μmとなるように、半導体ウェハを研削し、半導体ウェハを複数の半導体チップに個片化した。
【0117】
続いて、バックグラインドテープと半導体チップとの粘着力を低下させるために、ウェハマウンタ(DFM2800、株式会社ディスコ製)を用いて、バックグラインドテープに対して紫外線を照射した。その後、同じくウェハマウンタ(DFM2800、株式会社ディスコ製)を用いて、個片化された半導体ウェハの裏面(半導体チップの裏面)に、製造例4-1の一体型フィルム4aを温度70℃、テンションレベル5、及び貼り付け速度10mm/秒の条件で貼り付けた。この際、ダイシングテープの外周領域にはリングフレームを貼付した。その後、バックグラインドテープを剥離することによって、基材層、粘着剤層、及び接着剤層をこの順序で有する一体型フィルムと、一体型フィルムの接着剤層上に設けられた、半導体ウェハを個片化してなる複数の半導体チップとを備える積層体(1)を得た。
【0118】
<粘着剤硬化物層の形成(工程(B))>
次に、ダイセパレータ(DDS2300、株式会社ディスコ製)にて、積層体(1)の粘着剤層と接着剤層との間の粘着力を低下させるために基材層側から粘着剤層に対して、照度80mW/cm2及び照射量130mJ/cm2の紫外線を照射し、粘着剤硬化物層を形成した。
【0119】
<積層体(2)の作製(工程(C))>
続いて、レーザーソー(DFL7160、株式会社ディスコ製)を用いて、半導体チップ同士の間の間隙を通して、レーザーを照射し、接着剤層の切断を行った。レーザーの照射条件は、周波数100kHz、出力0.3W、及び送り速度200mm/sとした。このようにして、基材層と、粘着剤硬化物層と、複数の接着剤層片付き半導体チップとをこの順序で有する積層体(2)を得た。
【0120】
[ピックアップ性に関する評価]
<エッジ剥離強度の測定>
得られた複数の接着剤層片付き半導体チップを有する積層体(2)に対して、接着剤層片付き半導体チップが1列おきになるように接着テープ等を用いて余分な半導体チップを除去した。残存する半導体チップの表面に両面テープを貼付け、その上から支持基板を貼り合わせた。その後、裏面側から支持基板サイズに沿って、ダイシングフィルムをカットし、支持基板を有する積層体をダイシングリングから切り離した。1列おきになっている半導体チップが存在しない箇所のダイシングフィルムを短冊状にカットして取り除き、支持基板、両面テープ、半導体チップ、接着剤層片、粘着剤硬化物層、及び基材層をこの順序で有するエッジ剥離強度測定用サンプルを作製した。
【0121】
卓上ピール試験機(EZ-Test、株式会社島津製作所製)を用いて、エッジ剥離強度を測定した。粘着剤硬化物層と接着剤層片との剥離角度が90°となるように短冊状になったダイシングフィルムのみを治具に挟み、試験機にセットした。送り速度は、60mm/分とし、剥離させる際は、粘着剤硬化物層と接着剤層片との剥離角度が常に90°となるよう支持基板を手動で送りながら剥離させた。得られた半導体チップのエッジ部に相当する剥離力を20mm幅に換算し、エッジ剥離強度を算出した。4mm×12mmの接着剤層片付き半導体チップにおいて、4mmの辺に対して垂直方向の剥離強度をCh1、4mmの辺に対して平行方向(12mmの辺に対して垂直方向)の剥離強度をCh2とし、それぞれN=5のピークからその平均を算出した。それをCh1、Ch2それぞれ3本分測定し、Ch1の平均値及びCh2の平均値を算出し、さらにCh1の平均値及びCh2の平均値の和を求め、その和を2で割ることにより、得られた数値を各サンプルのエッジ剥離強度の値とした。結果を表3に示す。
【0122】
<粘着剤硬化物層の切込み深さの測定>
3D測定レーザー顕微鏡(OLS4100、オリンパス株式会社製)を用いて、積層体(2)から接着剤層片付き半導体チップを接着テープ等で剥がし、基材層及び粘着剤硬化物層の状態で、レーザーカットラインにおける粘着剤硬化物層に生じた切込み深さを観察した。倍率は50倍とし、得られた画像から深さを測定し、N=5の平均を切込み深さとした。結果を表3に示す。
【0123】
(実施例2)
製造例4-1の一体型フィルム4aを製造例4-2の一体型フィルム4bに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の積層体(2)を作製した。続いて、実施例1と同様にして、実施例2の積層体(2)のピックアップ性に関する評価を行った。結果を表3に示す。
【0124】
(実施例3)
製造例4-1の一体型フィルム4aを製造例4-3の一体型フィルム4cに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の積層体(2)を作製した。続いて、実施例1と同様にして、実施例3の積層体(2)のピックアップ性に関する評価を行った。結果を表3に示す。
【0125】
(実施例4)
製造例4-1の一体型フィルム4aを製造例4-4の一体型フィルム4dに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の積層体(2)を作製した。続いて、実施例1と同様にして、実施例4の積層体(2)のピックアップ性に関する評価を行った。結果を表3に示す。
【0126】
(比較例1)
工程(A)で積層体を得た後、工程(B)と工程(C)との順序を入れ替え、工程(C)と同様の条件でレーザーを照射して接着剤層を切断し、続いて、工程(B)と同様の条件で、粘着剤層に対して紫外線を照射し、粘着剤硬化物層を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の積層体(2)を作製した。続いて、実施例1と同様にして、比較例1の積層体(2)のピックアップ性に関する評価を行った。結果を表3に示す。
【0127】
(比較例2)
製造例4-1の一体型フィルム4aを製造例4-2の一体型フィルム4bに変更した以外は、比較例1と同様にして、比較例2の積層体(2)を作製した。続いて、比較例1と同様にして、比較例2の積層体(2)のピックアップ性に関する評価を行った。結果を表3に示す。
【0128】
(比較例3)
製造例4-1の一体型フィルム4aを製造例4-3の一体型フィルム4cに変更した以外は、比較例1と同様にして、比較例3の積層体(2)を作製した。続いて、比較例1と同様にして、比較例3の積層体(2)のピックアップ性に関する評価を行った。結果を表3に示す。
【0129】
(比較例4)
製造例4-1の一体型フィルム4aを製造例4-4の一体型フィルム4dに変更した以外は、比較例1と同様にして、比較例4の積層体(2)を作製した。続いて、比較例1と同様にして、比較例4の積層体(2)のピックアップ性に関する評価を行った。結果を表3に示す。
【0130】
【0131】
表3に示すとおり、実施例1~4の積層体(2)は、比較例1~4の積層体(2)に比べて、エッジ剥離強度が小さく、粘着剤硬化物層の切込み深さも小さかった。本開示の半導体装置の製造方法によれば、紫外線硬化型粘着剤を含む粘着剤層と、接着剤層とを有する一体型フィルムを用いたときに、接着剤層片付き半導体チップをピックアップする際の不具合を抑制することが可能であることが示唆された。
1…基材層、3…粘着剤層、5…接着剤層、5a…接着剤層片、5ac…接着剤層片の硬化物、7…ダイシングフィルム、9…一体型フィルム、10,20,30…積層体、11…粘着剤硬化物層、13…接着剤層片付き半導体チップ、15…レーザー、17…ニードル、19…吸引コレット、21…支持部材、23…ダイシングブレード、25…バックグラインドテープ、40…半導体装置、SC…半導体チップ、SW…半導体ウェハ、SWa…溝が形成された半導体ウェハ、DR…ダイシングリング、g1…間隙、s1…回路形成面、s2,s3…裏面、d1,d2…深さ、Dsw,Dsc…厚さ。