(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072618
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】極端紫外光生成用チャンバ装置及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240521BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G03F7/20 503
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183560
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】本田 能之
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197AA10
2H197CA10
2H197DA09
2H197DC02
2H197DC12
2H197FA02
2H197GA01
2H197GA05
2H197GA12
2H197GA20
2H197GA24
2H197HA03
4C092AA06
4C092AA15
4C092AB19
4C092BD18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】効率的なエッチングとブリスタリング抑制とを両立することで、極端紫外光生成装置から出射する極端紫外光のパワーが低下することを抑制し得る極端紫外光生成用チャンバ装置を提供する。
【解決手段】内部空間において、スズのドロップレットターゲットがレーザ光90の照射によりプラズマ化することで極端紫外光が生成されるチャンバ10と、内部空間にドロップレットターゲットを供給するターゲット供給部と、内部空間に配置され、極端紫外光を反射する反射面を含む極端紫外光集光ミラー15と、反射面における流速を可変として水素ガスを含むエッチングガスを反射面に供給する第1エッチングガス供給部16と、極端紫外光集光ミラーの反射率を反映するデータを生成するデータ生成部と、反射率の低下量が基準値以上であることをデータが示す場合に、流速を低下させるよう第1エッチングガス供給部を制御するプロセッサ120と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間において、スズのドロップレットターゲットがレーザ光の照射によりプラズマ化することで極端紫外光が生成されるチャンバと、
前記内部空間に前記ドロップレットターゲットを供給するターゲット供給部と、
前記内部空間に配置され、前記極端紫外光を反射する反射面を含む極端紫外光集光ミラーと、
前記反射面における流速を可変として水素ガスを含むエッチングガスを前記反射面に供給する第1エッチングガス供給部と、
前記極端紫外光集光ミラーの反射率を反映するデータを生成するデータ生成部と、
前記反射率の低下量が基準値以上であることを前記データが示す場合に、前記流速を低下させるよう前記第1エッチングガス供給部を制御するプロセッサと、
を備える
極端紫外光生成用チャンバ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
水素ガスを含むエッチングガスを前記内部空間に供給する第2エッチングガス供給部を備え、
前記プロセッサは、前記反射率の低下量が前記基準値以上であることを前記データが含む場合には、前記第1エッチングガス供給部及び前記第2エッチングガス供給部を制御し、前記第1エッチングガス供給部からの前記エッチングガスの前記流速を低下させると共に、前記第2エッチングガス供給部から前記エッチングガスを供給させる。
【請求項3】
請求項2に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記プロセッサは、前記第1エッチングガス供給部から供給される前記エッチングガスの前記流速が低下されない状態と、前記第1エッチングガス供給部からの前記エッチングガスの前記流速を低下させると共に、前記第2エッチングガス供給部から前記エッチングガスを供給させる状態とで、前記第1エッチングガス供給部及び前記第2エッチングガス供給部から前記ドロップレットターゲットがプラズマ化するプラズマ生成領域に流れるエッチングガスの流速が一定となるように、前記第1エッチングガス供給部及び前記第2エッチングガス供給部を制御する。
【請求項4】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記プロセッサは、前記流速を低下させるよう前記第1エッチングガス供給部を制御している状態で、前記反射率の低下量が前記基準値より小さいことを前記データが示す場合に、前記流速を増加させるよう前記第1エッチングガス供給部を制御する。
【請求項5】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記レーザ光のショット数をカウントするパルスカウンターを備え、
前記プロセッサは、前記流速を低下させるよう前記第1エッチングガス供給部を制御してからの前記レーザ光のショット数が所定のショット数に達する場合に、前記流速を増加させるよう前記第1エッチングガス供給部を制御する。
【請求項6】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記データ生成部は、前記極端紫外光集光ミラーで反射された前記極端紫外光のパワーを計測する極端紫外光計測器であり、
前記データは、前記極端紫外光計測器が計測する前記極端紫外光のパワーのデータであり、前記極端紫外光のパワーが所定値以上低下することを示す場合に、前記反射率の低下量が前記基準値以上であることを示す。
【請求項7】
請求項6に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記チャンバは、次工程装置に前記極端紫外光集光ミラーで反射された前記極端紫外光を出射する第1出射口と、前記極端紫外光計測器に前記極端紫外光集光ミラーで反射された前記極端紫外光を出射する第2出射口と、を含み、
前記内部空間内に、前記極端紫外光集光ミラーで反射された前記極端紫外光を前記第1出射口に反射する第1状態と前記第2出射口に反射する第2状態とを切り替え可能な光路切替ミラーが設けられる。
【請求項8】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記レーザ光のパワーを計測し当該パワーに係るデータを生成するレーザ光計測器と、
前記極端紫外光集光ミラーで反射された前記極端紫外光のパワーを計測し当該パワーに係るデータを生成する極端紫外光計測器と、
を備え、
前記データ生成部は、前記レーザ光計測器が計測する前記レーザ光の前記パワーと、前記極端紫外光計測器が計測する前記極端紫外光のパワーとの比を生成するパワー比生成部であり、
前記データは、前記比のデータであり、前記レーザ光計測器が計測する前記レーザ光のパワーに対する前記極端紫外光計測器が計測する前記極端紫外光のパワーが所定値以上低下することを示す場合に、前記反射率の低下量が前記基準値以上であることを示す。
【請求項9】
請求項8に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記チャンバは、次工程装置に前記極端紫外光集光ミラーで反射された前記極端紫外光を出射する第1出射口と、前記極端紫外光計測器に前記極端紫外光集光ミラーで反射された前記極端紫外光を出射する第2出射口と、を含み、
前記内部空間内に、前記極端紫外光集光ミラーで反射された前記極端紫外光を前記第1出射口に反射する第1状態と前記第2出射口に反射する第2状態とを切り替え可能な光路切替ミラーが設けられる。
【請求項10】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記データ生成部は、前記反射面を撮影するカメラであり、
前記データは、前記カメラが撮影する画像のデータであり、前記反射面における反射率が劣化した領域の面積の比率が所定の比率以上であることを示す場合に、前記反射率の低下量が前記基準値以上であることを示す。
【請求項11】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記極端紫外光集光ミラーに光を照射する光源を備え、
前記データ生成部は、前記極端紫外光集光ミラーで鏡面反射する前記光のパワーを計測する光計測器であり、
前記データは、前記光計測器が計測する前記光のパワーを示すデータであり、前記光のパワーが所定値以上低下する場合に、前記反射率の低下量が前記基準値以上であることを示す。
【請求項12】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記極端紫外光集光ミラーに光を照射する光源を備え、
前記データ生成部は、前記極端紫外光集光ミラーで散乱する前記光のパワーを計測する光計測器であり、
前記データは、前記光計測器が計測する前記光のパワーを示すデータであり、前記光のパワーが所定値以上増加する場合に、前記反射率の低下量が前記基準値以上であることを示す。
【請求項13】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記データ生成部は、前記レーザ光のショット数をカウントするパルスカウンターであり、
前記データは、前記パルスカウンターがカウントするショット数を示すデータであり、前記ショット数が所定値以上である場合に、前記反射率の低下量が前記基準値以上であることを示す。
【請求項14】
内部空間において、スズのドロップレットターゲットがレーザ光の照射によりプラズマ化することで極端紫外光が生成されるチャンバと、
前記内部空間に前記ドロップレットターゲットを供給するターゲット供給部と、
前記内部空間に配置され、前記極端紫外光を反射する反射面を含む極端紫外光集光ミラーと、
前記反射面における流速を可変として水素ガスを含むエッチングガスを前記反射面に供給する第1エッチングガス供給部と、
前記極端紫外光集光ミラーの反射率を反映するデータを生成するデータ生成部と、
前記反射率の低下量が基準値以上であることを前記データが示す場合に、前記流速を低下させるよう前記第1エッチングガス供給部を制御するプロセッサと、
を備える極端紫外光生成用チャンバ装置を含む極端紫外光生成装置によって生成される前記極端紫外光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記極端紫外光を露光する
ことを含む電子デバイスの製造方法。
【請求項15】
内部空間において、スズのドロップレットターゲットがレーザ光の照射によりプラズマ化することで極端紫外光が生成されるチャンバと、
前記内部空間に前記ドロップレットターゲットを供給するターゲット供給部と、
前記内部空間に配置され、前記極端紫外光を反射する反射面を含む極端紫外光集光ミラーと、
前記反射面における流速を可変として水素ガスを含むエッチングガスを前記反射面に供給する第1エッチングガス供給部と、
前記極端紫外光集光ミラーの反射率を反映するデータを生成するデータ生成部と、
前記反射率の低下量が基準値以上であることを前記データが示す場合に、前記流速を低下させるよう前記第1エッチングガス供給部を制御するプロセッサと、
を備える極端紫外光生成用チャンバ装置を含む極端紫外光生成装置によって生成される前記極端紫外光をマスクに照射して前記マスクの欠陥を検査し、
前記検査の結果を用いてマスクを選定し、
前記選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写する
ことを含む電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外光生成用チャンバ装置及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、10nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長約13nmの極端紫外(EUV:Extreme UltraViolet)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた半導体露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLaser Produced Plasma(LPP)式の装置の開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10034362号明細書
【特許文献2】米国特許第9776218号明細書
【特許文献3】特開2008-41391号公報
【概要】
【0005】
本開示の一態様による極端紫外光生成用チャンバ装置は、内部空間において、スズのドロップレットターゲットがレーザ光の照射によりプラズマ化することで極端紫外光が生成されるチャンバと、内部空間にドロップレットターゲットを供給するターゲット供給部と、内部空間に配置され、極端紫外光を反射する反射面を含む極端紫外光集光ミラーと、反射面における流速を可変として水素ガスを含むエッチングガスを反射面に供給する第1エッチングガス供給部と、極端紫外光集光ミラーの反射率を反映するデータを生成するデータ生成部と、反射率の低下量が基準値以上であることをデータが示す場合に、流速を低下させるよう第1エッチングガス供給部を制御するプロセッサと、を備えてもよい。
【0006】
また、本開示の一態様による電子デバイスの製造方法は、内部空間において、スズのドロップレットターゲットがレーザ光の照射によりプラズマ化することで極端紫外光が生成されるチャンバと、内部空間にドロップレットターゲットを供給するターゲット供給部と、内部空間に配置され、極端紫外光を反射する反射面を含む極端紫外光集光ミラーと、反射面における流速を可変として水素ガスを含むエッチングガスを反射面に供給する第1エッチングガス供給部と、極端紫外光集光ミラーの反射率を反映するデータを生成するデータ生成部と、反射率の低下量が基準値以上であることをデータが示す場合に、流速を低下させるよう第1エッチングガス供給部を制御するプロセッサと、を備える極端紫外光生成用チャンバ装置を含む極端紫外光生成装置によって生成される極端紫外光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上に極端紫外光を露光することを含んでもよい。
【0007】
また、本開示の他の一態様による電子デバイスの製造方法は、内部空間において、スズのドロップレットターゲットがレーザ光の照射によりプラズマ化することで極端紫外光が生成されるチャンバと、内部空間にドロップレットターゲットを供給するターゲット供給部と、内部空間に配置され、極端紫外光を反射する反射面を含む極端紫外光集光ミラーと、反射面における流速を可変として水素ガスを含むエッチングガスを反射面に供給する第1エッチングガス供給部と、極端紫外光集光ミラーの反射率を反映するデータを生成するデータ生成部と、反射率の低下量が基準値以上であることをデータが示す場合に、流速を低下させるよう第1エッチングガス供給部を制御するプロセッサと、を備える極端紫外光生成用チャンバ装置を含む極端紫外光生成装置によって生成される極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、検査の結果を用いてマスクを選定し、選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、電子デバイスの製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電子デバイスの製造装置とは別の電子デバイスの製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、比較例の極端紫外光生成装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、比較例におけるドロップレットターゲットの軌道に垂直な断面における極端紫外光生成用チャンバ装置を示す模式図である。
【
図5】
図5は、比較例におけるドロップレットターゲットの軌道に沿った断面における極端紫外光生成用チャンバ装置を示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態1における極端紫外光生成用チャンバ装置を
図4と同様に示す模式図である。
【
図7】
図7は、
図6の光路切替機構を含むチャンバの様子を示す模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態1におけるプロセッサの制御フローチャートの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、クリーニングモードでの極端紫外光生成用チャンバ装置を
図4と同様に示す模式図である。
【
図10】
図10は、実施形態1の変形例における極端紫外光生成用チャンバ装置を
図4と同様に示す模式図である。
【
図11】
図11は、実施形態1の変形例におけるプロセッサの制御フローチャートの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態2における極端紫外光生成用チャンバ装置を
図4と同様に示す模式図である。
【
図13】
図13は、実施形態2におけるプロセッサの制御フローチャートの一例を示す図である。
【
図14】
図14は、実施形態3における極端紫外光生成用チャンバ装置を
図4と同様に示す模式図である。
【
図15】
図15は、実施形態3におけるプロセッサの制御フローチャートの一例を示す図である。
【
図16】
図16は、実施形態3の変形例におけるプロセッサの制御フローチャートの一例を示す図である。
【
図17】
図17は、実施形態4における極端紫外光生成用チャンバ装置を
図4と同様に示す模式図である。
【
図18】
図18は、レーザ光のショット数と、極端紫外光集光ミラーの反射率の低下率との関係を示す図である。
【
図19】
図19は、実施形態4におけるプロセッサの制御フローチャートの一例を示す図である。
【
図20】
図20は、クリーニングモードでのレーザ光のショット数と、極端紫外光集光ミラーの反射率の低下率との関係を示す図である。
【実施形態】
【0009】
1.概要
2.電子デバイスの製造装置の説明
3.比較例の極端紫外光生成装置の説明
3.1 構成
3.2 動作
3.3 課題
4.実施形態1の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用・効果
4.4 変形例の説明
5.実施形態2の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用・効果
6.実施形態3の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
6.1 構成
6.2 動作
6.3 作用・効果
6.4 変形例の説明
7.実施形態4の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
7.1 構成
7.2 動作
7.3 作用・効果
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.概要
本開示の実施形態は、極端紫外(EUV)と呼ばれる波長の光を生成する極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造装置に関するものである。なお、以下では、極端紫外光をEUV光という場合がある。
【0012】
2.電子デバイスの製造装置の説明
図1は、電子デバイス製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
図1に示す電子デバイス製造装置は、EUV光生成装置100、及び露光装置200を含む。露光装置200は、反射光学系である複数のミラー211,212を含むマスク照射部210と、マスク照射部210の反射光学系とは別の反射光学系である複数のミラー221,222を含むワークピース照射部220とを含む。マスク照射部210は、EUV光生成装置100から入射したEUV光101によって、ミラー211,212を介してマスクテーブルMTのマスクパターンを照明する。ワークピース照射部220は、マスクテーブルMTによって反射されたEUV光101を、ミラー221,222を介してワークピーステーブルWT上に配置された不図示のワークピース上に結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置200は、マスクテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、マスクパターンを反映したEUV光101をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで半導体デバイスを製造することができる。
【0013】
図2は、
図1に示す電子デバイス製造装置とは別の電子デバイス製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
図2に示す電子デバイス製造装置は、EUV光生成装置100、及び検査装置300を含む。検査装置300は、反射光学系である複数のミラー311,313,315を含む照明光学系310と、照明光学系310の反射光学系とは別の反射光学系である複数のミラー321,323、及び検出器325を含む検出光学系320とを含む。照明光学系310は、EUV光生成装置100から入射したEUV光101をミラー311,313,315で反射して、マスクステージ331に配置されているマスク333を照射する。マスク333は、パターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系320は、マスク333からのパターンを反映したEUV光101をミラー321,323で反射して検出器325の受光面に結像させる。EUV光101を受光した検出器325は、マスク333の画像を取得する。検出器325は、例えばTDI(Time Delay Integration)カメラである。以上のような工程によって取得したマスク333の画像により、マスク333の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するマスクを選定する。そして、選定したマスクに形成されたパターンを、露光装置200を用いて感光基板上に露光転写することで電子デバイスを製造することができる。
【0014】
3.比較例の極端紫外光生成装置の説明
3.1 構成
比較例のEUV光生成装置100について説明する。なお、本開示の比較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。また、以下では、
図1に示すように次工程装置としての露光装置200に向けてEUV光101を出射するEUV光生成装置100を用いて説明する。なお、
図2に示すように次工程装置としての検査装置300にEUV光101を出射するEUV光生成装置100についても、同様の作用・効果を得ることができる。
【0015】
図3は、本例のEUV光生成装置100の全体の概略構成例を示す模式図である。
図3に示すように、EUV光生成装置100は、EUV光生成用チャンバ装置150、レーザ装置LD、及びレーザ光デリバリ光学系30を主な構成として含む。また、EUV光生成用チャンバ装置150は、チャンバ10、プロセッサ120を主な構成として含む。
【0016】
チャンバ10は、密閉可能な容器である。チャンバ10はサブチャンバ11を含み、サブチャンバ11には、サブチャンバ11の壁を貫通するようにターゲット供給部40が取り付けられている。ターゲット供給部40は、タンク41、ノズル42、及び圧力調節器43を含み、ドロップレットターゲットDLをチャンバ10の内部空間に供給する。ドロップレットターゲットDLは、ドロップレットやターゲットと省略して呼ばれる場合がある。
【0017】
タンク41は、その内部にドロップレットターゲットDLとなるターゲット物質を貯蔵する。ターゲット物質は、スズを含む。タンク41の内部は、タンク41内の圧力を調節する圧力調節器43と連通している。タンク41には、ヒータ44及び温度センサ45が取り付けられている。ヒータ44は、ヒータ電源46から供給される電流により、タンク41を加熱する。この加熱により、タンク41内のターゲット物質は溶融する。温度センサ45は、タンク41を介してタンク41内のターゲット物質の温度を測定する。圧力調節器43、温度センサ45、及びヒータ電源46は、プロセッサ120に電気的に接続されている。
【0018】
ノズル42は、タンク41に取り付けられ、ターゲット物質を吐出する。ノズル42には、ピエゾ素子47が取り付けられている。ピエゾ素子47は、ピエゾ電源48に電気的に接続されており、ピエゾ電源48から印加される電圧で駆動される。ピエゾ電源48は、プロセッサ120に電気的に接続されている。ピエゾ素子47の動作により、ノズル42から吐出するターゲット物質はドロップレットターゲットDLにされる。
【0019】
チャンバ10は、ターゲット回収部14を含む。ターゲット回収部14は、チャンバ10に取り付けられる箱体であり、チャンバ10に設けられる開口14aを介してチャンバ10の内部空間に連通している。開口14aはノズル42の直下に設けられ、ターゲット回収部14は、開口14aを通過してターゲット回収部14に到達する不要なドロップレットターゲットDLを回収するドレインタンクである。
【0020】
チャンバ10には、少なくとも1つの貫通孔が設けられている。この貫通孔は、ウィンドウ12によって塞がれ、ウィンドウ12をレーザ装置LDから出射されるパルス状のレーザ光90が透過する。
【0021】
また、チャンバ10の内部空間には、レーザ集光光学系13が配置されている。レーザ集光光学系13は、レーザ光集光ミラー13A及び高反射ミラー13Bを含む。レーザ光集光ミラー13Aは、ウィンドウ12を透過するレーザ光90を反射して集光する。高反射ミラー13Bは、レーザ光集光ミラー13Aが集光するレーザ光90を反射する。レーザ光集光ミラー13A及び高反射ミラー13Bの位置は、レーザ光マニュピレータ13Cにより、チャンバ10の内部空間でのレーザ光90の集光位置がプロセッサ120から指定された位置になるように調節される。当該集光位置はノズル42の直下に位置するように調節されており、レーザ光90が当該集光位置においてターゲット物質を照射すると、ターゲット物質からプラズマが生成されると共に、プラズマからEUV光101が放射される。プラズマが生成される領域をプラズマ生成領域ARと呼ぶことがある。プラズマ生成領域ARは、プラズマ点を中心に半径が例えば40mmの領域であり、チャンバ10の内部空間に位置する。
【0022】
チャンバ10の内部空間には、例えば、回転楕円面形状の反射面15aを含むEUV光集光ミラー15が配置される。EUV光集光ミラー15は、例えばシリコン層とモリブデン層とが交互に積層された多層膜を備え、当該多層膜によりEUV光101を反射する。EUV光集光ミラー15は、チャンバ10の内部空間におけるレーザ光90と重ならない位置に設けられている。反射面15aは、プラズマ生成領域ARにおいてプラズマから放射されるEUV光101を反射する。反射面15aは、第1焦点及び第2焦点を含む。反射面15aは、例えば、第1焦点がプラズマ生成領域ARに位置し、第2焦点が中間集光点IFに位置するように配置されてもよい。
【0023】
EUV光生成装置100は、チャンバ10の内部空間及び露光装置200の内部空間を連通させる接続部19を含む。接続部19には、アパーチャが形成された壁が配置されている。この壁は、アパーチャが第2焦点に位置するように配置されることが好ましい。接続部19はチャンバ10におけるEUV光101の出射口でもあり、EUV光101は接続部19から出射されて露光装置200に入射する。
【0024】
チャンバ10には、第1エッチングガス供給部16が接続されている。第1エッチングガス供給部16は、第1ガス供給口160を含む。後述のようにエッチングガスには水素ガスが含まれ、本例のエッチングガスは、水素濃度が100%と見做せる水素ガスである。このため、本例では、第1エッチングガス供給部16は、水素タンク161とガス配管162とを更に含む。第1エッチングガス供給部16は、ガス配管162を介して水素タンク161内の水素ガスを第1ガス供給口160からEUV光集光ミラー15の反射面15aに供給する。
【0025】
また、EUV光生成装置100は、圧力センサ26及びターゲットセンサとしての検出部27を含む。圧力センサ26及び検出部27は、チャンバ10に取り付けられ、プロセッサ120に電気的に接続されている。圧力センサ26は、チャンバ10の内部空間の圧力を計測し、この圧力を示す信号をプロセッサ120に出力する。
【0026】
検出部27は、例えば撮像機能を含み、プロセッサ120からの指示によってノズル42のノズル孔から吐出するドロップレットターゲットDLの存在、軌跡、位置、流速等を検出する。検出部27は、チャンバ10の内部に配置されてもよいし、チャンバ10の外部に配置されてチャンバ10の壁に設けられる不図示のウィンドウを介してドロップレットターゲットDLを検出してもよい。検出部27は、不図示の受光光学系と、例えばCCD(Charge-Coupled Device)又はフォトダイオード等の不図示の撮像部とを含む。受光光学系は、ドロップレットターゲットDLの検出精度を向上させるために、ドロップレットターゲットDLの軌跡及びその周囲における像を撮像部の受光面に結像する。検出部27の視野内のコントラストを向上させるために配置される不図示の光源による光の集光領域をドロップレットターゲットDLが通過するときに、撮像部はドロップレットターゲットDLの軌跡及びその周囲を通る光の変化を検出する。撮像部は、検出した光の変化を、ドロップレットターゲットDLのイメージデータに係る信号に変換する。撮像部は、この電気信号をプロセッサ120に出力する。
【0027】
レーザ装置LDは、バースト動作する光源であるマスターオシレータを含む。マスターオシレータは、バーストオンでパルス状のレーザ光90を出射する。マスターオシレータは、例えば、ニオブ(Nb)やイッテルビウム(Yb)を添加したYAG結晶を励起する固体レーザ装置や、ヘリウムや窒素等が炭酸ガス中に混合される気体を放電によって励起することで、レーザ光90を出射するレーザ装置である。或いは、マスターオシレータは、量子カスケードレーザ装置でもよい。また、マスターオシレータは、Qスイッチ方式により、パルス状のレーザ光90を出射してもよい。また、マスターオシレータは、光スイッチや偏光子等を含んでもよい。なお、バースト動作とは、バーストオン時に連続するパルス状のレーザ光90を所定の繰り返し周波数で出射し、バーストオフ時にレーザ光90の出射を抑制する動作である。レーザ装置LDは、マスターオシレータが出射したレーザ光を増幅する増幅器を含んでもよい。
【0028】
レーザ装置LDから出射するレーザ光90の進行方向は、レーザ光デリバリ光学系30によって調節される。レーザ光デリバリ光学系30は、レーザ光90の進行方向を調節する複数のミラー31,32を含む。ミラー31,32の少なくとも1つの位置は、不図示のアクチュエータで調節される。ミラー31,32の少なくとも1つの位置が調節されることで、レーザ光90がウィンドウ12から適切にチャンバ10の内部空間に伝搬し得る。
【0029】
ミラー32とウィンドウ12との間には、ビームスプリッタ33が設けられている。ビームスプリッタ33は、ミラー32で反射するレーザ光90の多くを透過させて、一部のレーザ光90を反射する。ビームスプリッタ33で反射されるレーザ光90が進行する先にはレーザ光計測器34が設けられている。レーザ光計測器34は、受光素子を含み、受光するレーザ光90のパワーを計測し、レーザ光90のパワーに係る信号を出力する。レーザ光計測器34は、プロセッサ120に電気的に接続され、レーザ光90のパワーに係る信号はプロセッサ120に入力する。
【0030】
本開示のプロセッサ120は、制御プログラムが記憶された記憶装置と、当該制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)とを含む処理装置である。プロセッサ120は、本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされ、EUV光生成装置100全体を制御する。プロセッサ120には、圧力センサ26で計測されたチャンバ10の内部空間の圧力に係る信号や、検出部27によって撮像されたドロップレットターゲットDLのイメージデータに係る信号や、露光装置200からバースト動作を指示するバースト信号等が入力される。プロセッサ120は、上記各種信号を処理し、例えば、ドロップレットターゲットDLが吐出されるタイミング、ドロップレットターゲットDLの吐出方向等を制御してもよい。また、プロセッサ120は、レーザ装置LDの出射タイミング、レーザ光90の進行方向や集光位置等を制御してもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて後述のように他の制御が追加されてもよい。
【0031】
図4は、比較例におけるドロップレットターゲットDLの軌道に垂直なチャンバ10の断面を含む模式図であり、
図5は、ドロップレットターゲットDLの軌道に沿ったチャンバ10の断面を含む模式図である。
図4では、図示の簡略化のために、レーザ光集光ミラー13A及び高反射ミラー13Bを省略し、ウィンドウ12からプラズマ生成領域ARへのレーザ光90の進行経路を簡単に図示している。
【0032】
EUV光生成装置100は、チャンバ10の内部空間に配置される筒状の隔壁18を含む。
図4及び
図5では、チャンバ10の内部空間のうちの隔壁18の外部の空間を第1空間10aとし、隔壁18の内部の空間を第2空間10bとして示している。なお、
図3では、隔壁18の図示を省略している。
【0033】
隔壁18は、例えば、ステンレス、金属モリブデン等で構成される。隔壁18は、プラズマ生成領域ARを囲っている。つまり、プラズマ生成領域ARは、第2空間10bに位置する。隔壁18は、チャンバ10の内部空間からチャンバ10の外部空間に直線状に延在している。隔壁18のうちのチャンバ10の内部空間に位置する一端には第1開口181が設けられ、隔壁18のうちのチャンバ10の外部に位置する他端にはガス排気口182が設けられている。
【0034】
プラズマ生成領域ARにおいてプラズマから生成されるEUV光101は、第2空間10bから第1開口181を介して第1空間10aに配置されるEUV光集光ミラー15に入射する。EUV光集光ミラー15は、EUV光101をEUV光101の入射方向と異なる方向に位置する中間集光点IFに向かって反射する。
【0035】
第1開口181はガス排気口182に向かい合い、第1開口181とガス排気口182との間にはプラズマ生成領域ARが位置する。ガス排気口182は、排気ポンプを含む排気装置180に接続されている。本例では、ガス排気口182の面積は第1開口181の面積より大きい。
【0036】
また、隔壁18は、隔壁18の側面に形成される第2開口183、ドロップレット供給開口184、及びドロップレット排出開口185を含む。第2開口183は、チャンバ10の内部空間におけるプラズマ生成領域ARへのレーザ光90の光路上に設けられ、レーザ光90は、第1空間10aから第2開口183を介してプラズマ生成領域ARに入射する。ドロップレット供給開口184及びドロップレット排出開口185は、ドロップレットターゲットDLの軌道上に設けられ、互いに向かい合う。ドロップレットターゲットDLは、ターゲット供給部40からドロップレット供給開口184を介してプラズマ生成領域ARに供給される。ドロップレット排出開口185は、ターゲット回収部14に繋がる開口14aに向かい合い、プラズマ生成領域ARを通過したドロップレットターゲットDLは、ドロップレット排出開口185を介してターゲット回収部14内に侵入する。なお、本例では、ドロップレット供給開口184及びドロップレット排出開口185のそれぞれの面積は、互いに概ね同じであり、第2開口183の面積よりも大きい。隔壁18は、チャンバ10の内部空間におけるドロップレットターゲットDLの軌道上及び当該内部空間におけるプラズマ生成領域ARへのレーザ光90の光路上以外においてプラズマ生成領域ARを囲う。
【0037】
上記のようにターゲット物質はスズであるため、ターゲット物質がプラズマ生成領域ARにおいてレーザ光90を照射されてプラズマ化すると、スズの微粒子及びスズの荷電粒子が生じる。また、第1エッチングガス供給部16からチャンバ10の内部空間に供給されるエッチングガスに含まれる水素は、EUV光101のエネルギーにより水素ラジカルとなる。微粒子及び荷電粒子を構成するスズは、水素ラジカルと反応する。スズが水素ラジカルと反応すると、常温で気体のスタンナン(SnH
4)を生成する。なお、エッチングガスは、水素ガスを含み、例えば水素ガス濃度が100%と見做せるガスであるが、例えば水素ガス濃度が3%程度のバランスガスでもよく、この場合、バランスガスには、例えば窒素(N
2)ガスやアルゴン(Ar)ガスが含まれる。
図4及び
図5において、第1エッチングガス供給部16からEUV光集光ミラー15の反射面15aに供給されるエッチングガスの流れが矢印で示されている。第1エッチングガス供給部16から第1空間10aに供給されるエッチングガスの流量は、例えば、10l/min以上100l/min以下である。なお、エッチングガスの流量は、1分あたりに流れるエッチングガスの0℃、1気圧に換算した体積であるnlmで示される場合がある。第1開口181の面積は第2開口183、ドロップレット供給開口184、及びドロップレット排出開口185のそれぞれの面積よりも大きい。このため、第1空間10aに供給され反射面15aに流入したエッチングガスは、主に第1開口181を通じて第2空間10bに流入する。ただし、エッチングガスは、第2開口183、ドロップレット供給開口184、及びドロップレット排出開口185からも第2空間10bに流入してもよい。
【0038】
ターゲット物質がプラズマ生成領域ARでプラズマ化する際、排ガスとしての残留ガスが第2空間10bに生成される。残留ガスは、ターゲット物質のプラズマ化により生じたスズの微粒子及び荷電粒子と、それらがエッチングガスと反応したスタンナンと、未反応のエッチングガスとを含む。なお、荷電粒子の一部は第2空間10bで中性化するが、この中性化した荷電粒子も残留ガスに含まれる。ガス排気口182は、第1空間10aから第2空間10bに流れたエッチングガスを残留ガスと共に、チャンバ10の外部に排気する。具体的には、ガス排気口182は、排気装置180の吸引によってエッチングガス及び残留ガスを排気装置180に排気する。
【0039】
以下では、ドロップレットターゲットDLの軌道に沿う方向をY方向、プラズマ生成領域ARから排気装置180に向かう方向でありY方向に直交する方向をX方向、Y方向及びX方向に直交する方向をZ方向として説明することがある。
【0040】
3.2 動作
次に、比較例のEUV光生成装置100の動作について説明する。
【0041】
EUV光生成装置100では、例えば、新規導入時やメンテナンス時等において、チャンバ10の内部空間の大気が排気される。その際、大気成分の排出のために、チャンバ10の内部空間のパージと排気とを繰り返してもよい。パージガスには、例えば、窒素やアルゴンなどの不活性ガスが用いられることが好ましい。その後、チャンバ10の内部空間の圧力が所定の圧力以下になると、プロセッサ120は、第1エッチングガス供給部16の第1ガス供給口160を通じて、チャンバ10の第1空間10aへのエッチングガスの導入を開始させる。このエッチングガスは、EUV光集光ミラー15の反射面15aに向けて供給される。このときプロセッサ120は、チャンバ10の内部空間の圧力が所定の圧力に維持されるように、不図示の供給ガス流量調節部や排気装置180を制御してもよい。その後、プロセッサ120は、エッチングガスの導入開始から所定時間が経過するまで待機する。
【0042】
また、プロセッサ120は、排気装置180によりチャンバ10の内部空間の気体をガス排気口182から排気させ、圧力センサ26で計測されたチャンバ10の内部空間の圧力を示す信号に基づいてチャンバ10の内部空間の圧力を略一定に保つ。
【0043】
また、プロセッサ120は、タンク41内のターゲット物質を融点以上の所定温度に加熱及び維持するために、ヒータ電源46からヒータ44に電流を供給させ、ヒータ44を昇温させる。このとき、プロセッサ120は、温度センサ45からの出力に基づいて、ヒータ電源46からヒータ44へ供給される電流の値を調節し、ターゲット物質の温度を所定温度に制御する。なお、所定温度は、ターゲット物質がスズである場合、スズの融点231.93℃以上の温度であり、例えば240℃以上290℃以下の温度である。こうしてドロップレットターゲットDLを吐出する準備が完了する。
【0044】
準備が完了すると、プロセッサ120は、ノズル42のノズル孔から溶融したターゲット物質が所定の流速で吐出するように、圧力調節器43によって、不図示のガス供給源から不活性ガスをタンク41内に供給し、タンク41内の圧力を調節する。この圧力下で、ターゲット物質は、ノズル42のノズル孔からチャンバ10の第1空間10aに吐出する。ノズル孔から吐出するターゲット物質は、ジェットの形態をとってもよい。このとき、プロセッサ120は、ドロップレットターゲットDLを生成するために、ピエゾ電源48からピエゾ素子47に所定波形の電圧を印加する。ピエゾ電源48は、電圧値の波形が例えば正弦波状、矩形波状、或いはのこぎり波状となるように、電圧を印加する。ピエゾ素子47の振動は、ノズル42を経由してノズル42のノズル孔から吐出するターゲット物質へと伝搬し得る。ターゲット物質は、この振動により所定周期で分断され、液滴のドロップレットターゲットDLとなる。ドロップレットターゲットDLの直径は、概ね10μm以上30μm以下である。
【0045】
ドロップレットターゲットDLは、吐出されると、ドロップレット供給開口184を通過してプラズマ生成領域ARに進行する。検出部27は、チャンバ10の第2空間10bの所定位置を通過するドロップレットターゲットDLの通過タイミングを検出する。プロセッサ120は、ドロップレットターゲットDLにレーザ光90が照射されるように、検出部27からの信号に基づいて、レーザ装置LDからレーザ光90が出射するタイミングを制御するトリガ信号を出力する。プロセッサ120から出力されたトリガ信号は、レーザ装置LDに入力する。レーザ装置LDは、トリガ信号が入力されると、パルス状のレーザ光90を出射する。
【0046】
出射されたレーザ光90は、レーザ光デリバリ光学系30とウィンドウ12とを経由して、レーザ集光光学系13に入射する。このとき、ビームスプリッタ33で反射されるレーザ光90は、レーザ光計測器34で受光されて、そのパワーが計測される。レーザ光計測器34は、計測されたレーザ光90のパワーに係る信号をプロセッサ120に出力する。プロセッサ120は、レーザ光計測器34から入力する信号に基づいて、レーザ装置LDを制御し、所望のパワーのレーザ光90をレーザ装置LDから出射させる。
【0047】
レーザ光90は、レーザ集光光学系13から第2開口183を通過してプラズマ生成領域ARに向かって進行する。そして、レーザ光90は、プラズマ生成領域ARでドロップレットターゲットDLに照射される。このとき、プロセッサ120は、レーザ光90がプラズマ生成領域ARに集光するように、レーザ集光光学系13のレーザ光マニュピレータ13Cを制御する。また、プロセッサ120は、レーザ光90がドロップレットターゲットDLに照射されるように、検出部27からの信号に基づいて、レーザ装置LDからレーザ光90を出射するタイミングを制御する。これにより、レーザ光集光ミラー13Aによって集光するレーザ光90は、プラズマ生成領域ARでドロップレットターゲットDLに照射される。当該照射によりプラズマが生成され、当該プラズマからEUV光101を含む光が放射される。
【0048】
プラズマ生成領域ARで発生したEUV光101を含む光のうち、EUV光101は、第1開口181を通過してEUV光集光ミラー15に進行し、EUV光集光ミラー15によって中間集光点IFで集光された後、接続部19から露光装置200に入射する。
【0049】
上記のように、第1エッチングガス供給部16は、第1ガス供給口160を通じてチャンバ10の第1空間10aにエッチングガスを供給する。エッチングガスは、EUV光集光ミラー15の反射面15aに供給される。このとき、EUV光101のエネルギーにより、エッチングガスに含まれる水素が水素ラジカルとされる。従って、スズが反射面15a上に堆積している場合、スズは水素ラジカルと反応してスタンナンとなり、反射面15a上から除去される。エッチングガスやスタンナンは、反射面15aに沿って流れた後、主に第1開口181から第2空間10bに流入する。排気装置180は、エッチングガスを第2空間10bにおける残留ガスと共に、ガス排気口182を通じて吸引する。これにより、第2空間10bにおけるガスは、チャンバ10の外部に排気される。排気装置180に吸引されたガスは、無害化等の所定の排気処理が施される。
【0050】
3.3 課題
スズが反射面15aに付着すると、EUV光101の反射率が低下し、EUV光生成装置100から出射するEUV光101のパワーが低下する懸念がある。反射面15aから効果的にスズを除去するには、反射面15aの水素ラジカル密度を高めればよい。水素ラジカル密度を高めるために、エッチングガスを反射面15aに滞留させEUV光を照射する時間を長くすることが考えられる。しかし長時間水素ラジカル密度が高い状態が続くと、反射面15aの多層膜内部に水素ラジカルが進入し水素ブリスタリングの発生リスクが高まる可能性がある。水素ブリスタリングは、多層膜構造を破壊し反射率の低下を招くため好ましくない。このように、反射面15aから効果的にスズを除去しようとすると、水素ブリスタリングの発生が懸念されるという課題があった。
【0051】
そこで、以下の実施形態では、効率的なエッチングとブリスタリング抑制とを両立することで、EUV光生成装置100から出射するEUV光101のパワーが低下することを抑制し得るEUV光生成用チャンバ装置150が例示される。
【0052】
4.実施形態1の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
実施形態1のEUV光生成用チャンバ装置150の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0053】
4.1 構成
図6は、本実施形態におけるEUV光生成用チャンバ装置150を
図4と同様に示す模式図である。本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150は、光路切替機構50、EUV光計測器60、及び第2エッチングガス供給部17を備える点において、比較例におけるEUV光生成用チャンバ装置150と主に異なる。
【0054】
また、本実施形態の第1エッチングガス供給部16は、第1バルブ163を備えている。従って、本実施形態では、第1エッチングガス供給部16は、第1バルブ163の開度が変更されることで、エッチングガスを流速を可変に供給することができる。従って、第1エッチングガス供給部16は、EUV光集光ミラー15の反射面15aにエッチングガスを流速を可変に供給することができる。流速を可変にすることには、流速をゼロにする、すなわちエッチングガスの供給を停止することが含まれる。第1バルブ163は、プロセッサ120に電気的に接続されている。従って、プロセッサ120は、第1バルブ163の開度を制御することができる。つまり、プロセッサ120は、供給されるエッチングガスの流速を変化させるよう第1エッチングガス供給部16を制御することができる。
【0055】
第2エッチングガス供給部17は、チャンバ10に接続されている。本実施形態では、第2エッチングガス供給部17は、第2ガス供給口170を含む。本例では、第2ガス供給口170は、EUV光集光ミラー15と隔壁18の第1開口181との間の領域を介して、第1ガス供給口160と概ね対向している。第2エッチングガス供給部17は、エッチングガスを第1空間10aに供給する。第2エッチングガス供給部17から供給されるエッチングガスは、第1エッチングガス供給部16から供給されるエッチングガスと比べて、反射面15aに流れずらい。第2エッチングガス供給部17は、第1エッチングガス供給部16が供給するエッチングガスと同じガスを含むエッチングガスを供給する。ただし、第2エッチングガス供給部17は、水素ガスを含むエッチングガスを供給する限りにおいて、第1エッチングガス供給部16が供給するエッチングガスと異なるエッチングガスを供給してもよい。本例では、第2エッチングガス供給部17は、水素タンク171と、ガス配管172と、第2バルブ173と、を備えている。従って、第2エッチングガス供給部17は、第2バルブ173の開度が変更されることで、エッチングガスを流速を可変に供給することができる。第2バルブ173は、プロセッサ120に電気的に接続されている。従って、プロセッサ120は、第2バルブ173の開度を制御することができる。つまり、プロセッサ120は、供給されるエッチングガスの流速を変化させるよう第2エッチングガス供給部17を制御することができる。第2エッチングガス供給部17から供給されるエッチングガスは、第1空間10aから、主に第1開口181を介して、第2空間10bに流れる。
【0056】
図7は、
図6の光路切替機構50を含むチャンバ10の様子を示す模式図である。
図7に示すように、本実施形態では、チャンバ10は、EUV光集光ミラー15で反射されたEUV光101を出射する第1出射口111及び第2出射口112を備える。第1出射口111及び第2出射口112は、EUV光101の中間集光点IFに設けられるアパーチャであることが好ましい。第1出射口111は、比較例と同様に接続部19に繋がり、接続部19には、露光装置200が接続される。なお、次工程装置が検査装置300であってもよい。第2出射口112は、EUV光計測器60に繋がる。
【0057】
光路切替機構50は、光路切替ミラー51、アクチュエータ52、及び回転軸53を備える。光路切替ミラー51は、例えばEUV光集光ミラー15と同様の多層膜を備え、EUV光集光ミラー15で反射されたEUV光101の光路上に配置され、EUV光101を反射する。本例では、光路切替ミラー51は、両面に上記多層膜が設けられ、両面が反射面である。回転軸53は、光路切替ミラー51とアクチュエータ52とに接続される。この際、不図示のギア構造を介して回転方向を変換するようにしてもよい。アクチュエータ52は、回転軸53を回転させる。従って、アクチュエータ52は、光路切替ミラー51を回転させることができる。アクチュエータ52は、プロセッサ120に電気的に接続されており、プロセッサ120はアクチュエータ52を制御する。従って、プロセッサ120は、アクチュエータ52を制御することで、光路切替ミラー51の角度を制御することができる。
【0058】
光路切替ミラー51は、プロセッサ120によって角度が制御されることで、EUV光集光ミラー15で反射されたEUV光101を第1出射口111に反射する第1状態と、第2出射口112に反射する第2状態とに切り替えられる。従って、EUV光101は、第1状態では、第1出射口111から露光装置200に出射し、第2状態では、第2出射口112からEUV光計測器60に出射する。光路切替ミラー51は、第1状態では、EUV光101を一方側の反射面で反射し、第2状態では、EUV光101を他方側の反射面で反射する。
図7では、第1状態における光路切替ミラー51を実線で示し、第2状態における光路切替ミラー51を破線で示している。
【0059】
EUV光計測器60は、EUV光101のパワーを計測する。EUV光計測器60は、EUV光101を受光するEUVセンサ61を含む。EUVセンサ61は、EUV光101を受光する受光素子を含み、受光素子が受光するEUV光101のパワーに係るデータを出力する。EUV光計測器60は、プロセッサ120に電気的に接続されており、EUV光計測器60から出力されるデータは、プロセッサ120に入力する。従って、プロセッサ120は、EUV光集光ミラー15で反射されるEUV光101のパワーを検知することができる。
【0060】
EUV光集光ミラー15の反射率が低下すると、EUV光計測器60が計測するEUV光101のパワーも低下する。従って、EUV光計測器60が計測するEUV光101のパワーに係るデータは、EUV光集光ミラー15の反射率を反映するデータである。従って、本実施形態では、EUV光計測器60は、EUV光集光ミラー15の反射率を反映するデータを生成するデータ生成部である。
【0061】
4.2 動作
図8は、本実施形態のプロセッサ120の制御フローチャートの一例を示す図である。この制御フローは、ステップSP11~ステップSP18を含む。
【0062】
図8に示す開始の状態において、プロセッサ120は、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後におけるEUV光計測器60が計測するEUV光101のパワーに係るデータを内部メモリに格納している。具体的には、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後において、プロセッサ120は、光路切替ミラー51を第2状態にして、EUV光101が生成されるよう、レーザ装置LD、ターゲット供給部40等を制御する。従って、生成されたEUV光101は、EUV光集光ミラー15及び光路切替ミラー51で反射され、第2出射口112からEUV光計測器60に出射する。EUV光計測器60に入射するEUV光101は、EUVセンサ61で受光される。EUVセンサ61は、EUV光101を受光すると受光したEUV光101のパワーに係るデータを出力する。このデータは、プロセッサ120に入力する。プロセッサ120は、このデータを内部メモリに格納する。こうして、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後におけるEUV光計測器60が計測するEUV光101のパワーに係るデータがプロセッサ120内のメモリに格納される。なお、このEUV光101のパワーに係るデータは、予め実験等で求められて、プロセッサ120内のメモリに格納されてもよい。
【0063】
また、
図8に示す開始の状態は、プロセッサ120は、光路切替ミラー51を第1状態にしている。また、プロセッサ120は、EUV光101が生成されるよう、レーザ装置LD、ターゲット供給部40等を制御している。
【0064】
(ステップSP11)
本ステップは、EUV光集光ミラー15の反射面15aに所定の流速でエッチングガスを供給するステップである。本ステップでは、プロセッサ120は、第1エッチングガス供給部16を制御し、第1バルブ163を開状態にする。このとき、第1エッチングガス供給部16から供給されるエッチングガスの流量を例えば25l/minとする。また、プロセッサ120は、第2エッチングガス供給部17を制御し、第2バルブ173を閉状態にする。従って、EUV光集光ミラー15の反射面15aには、第1エッチングガス供給部16から所定の流速でエッチングガスが供給される。このエッチングガスは、第1空間10aから第1開口181を介してプラズマ生成領域ARに流入し、排気装置180により排気される。なお、開始の状態において、第1バルブ163が開状態とされ、第2バルブ173が閉状態とされ、反射面15aに所定の流速でエッチングガスが供給されている場合、プロセッサ120は、その状態を維持する。
【0065】
(ステップSP12)
本ステップは、EUV光101を生成するステップである。本ステップでは、プロセッサ120は、レーザ装置LD、ターゲット供給部40等を制御し、EUV光101を生成させる。生成されたEUV光101は、EUV光集光ミラー15の反射面15aで反射される。本ステップ開始時に既にEUV光101が生成されている場合には、プロセッサ120は、EUV光101の生成を継続させる。
【0066】
(ステップSP13)
本ステップは、EUV光集光ミラー15の反射面15aにスズが付着しているかの計測を行うか否かを判定するステップである。計測を行うと判定するのは、例えば、EUV光生成装置100が立ち上がった直後や、EUV光生成装置100の立ち下げ前や、EUV光生成装置100の待機状態の場合である。EUV光を生成して出射中であれば計測は行わない。プロセッサ120は、計測を行う場合、ステップSP14に進み、計測を行わない場合、ステップSP12に戻り、EUV光101の生成を継続させる。
【0067】
(ステップSP14)
本ステップは、EUV光集光ミラー15で反射するEUV光101のパワーを計測するステップである。プロセッサ120は、光路切替ミラー51が第2状態となるように、アクチュエータ52を制御する。プロセッサ120は、本ステップの際に既に光路切替ミラー51が第2状態となっている場合には、その状態を維持させる。従って、本ステップでは、生成されたEUV光101は、EUV光集光ミラー15及び光路切替ミラー51で反射して、EUV光計測器60に出射する。EUV光計測器60に入射するEUV光101は、EUVセンサ61で受光される。EUVセンサ61は、EUV光101を受光すると受光したEUV光101のパワーに係るデータを出力する。出力するデータは、プロセッサ120に入力する。プロセッサ120は、データを受信すると光路切替ミラー51が第1状態となるように、アクチュエータ52を制御する。
【0068】
(ステップSP15)
本ステップは、EUV光計測器60が計測するEUV光101のパワーが所定値以上低下しているかを判定するステップである。本ステップでは、プロセッサ120は、内部のメモリに格納されているデータを用いて、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後においてEUV光計測器60が計測したEUV光101のパワーと、ステップSP14においてEUV光計測器60が計測するEUV光101のパワーとを比較する。そして、ステップSP14でプロセッサ120に入力するデータがEUV光101のパワーが所定値以上低下していることを示す場合、プロセッサ120はステップSP16に進む。一方、当該データがEUV光101のパワーが所定値以上低下していることを示さない場合、プロセッサ120はステップSP17に進む。ここで、所定値は、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後におけるEUV光101のパワーとステップSP14におけるEUV光101のパワーとの差分を、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後におけるパワーで除した値を百分率で表現した値である。所定値をX%とすると、X%は例えば0.1%以上10%以下におけるいずれかの値である。
【0069】
EUV光集光ミラー15の反射率が低下すると、EUV光計測器60に入射するEUV光101のパワーが低下する。従って、ステップSP14でプロセッサ120に入力するデータがEUV光101のパワーが所定値以上低下していることを示す場合、当該データはEUV光集光ミラー15の反射率の低下量が基準値以上であることを示す。この基準値は、スズが付着する反射面15aの面積が、反射面15a全体の面積の例えば0.1%以上10%以下におけるいずれかの値である。本実施形態の場合、上記のように所定値をX%とする場合、基準値もX%である。また、所定値として上記のようにパワー低下量を百分率とせず、例えばワット等の値を用いてもよい。このように所定値と基準値とで単位や表し方が異なる場合、所定値と基準値とが一致しなくてもよい。
【0070】
(ステップSP16)
本ステップは、第1エッチングガス供給部16から供給されるエッチングガスの反射面15aにおける流速を低下させるステップである。なお、本ステップに進むことは、反射面15aに付着しているスズを除去するクリーニングモードとなることを意味する。
図9は、本実施形態におけるクリーニングモードでのEUV光生成用チャンバ装置150を
図4と同様に示す模式図である。
図9に示すように、本ステップでは、プロセッサ120は、第1エッチングガス供給部16を制御して、第1バルブ163を閉める。本例では、プロセッサ120は、第1バルブ163を完全には閉めず、その開度を小さくする。従って、第1ガス供給口160からEUV光集光ミラー15の反射面15aに供給されるエッチングガスの流速は低下する。反射面15aにおけるエッチングガスの流速が低下すると、反射面15a上の水素ラジカルの密度が高くなる。このため、反射面15aに付着しているスズが水素ラジカルと反応し易くなり、スズのエッチングが進む。
【0071】
また、プロセッサ120は、
図9に示すように、第2エッチングガス供給部17を制御して、第2バルブ173を開く。従って、第2ガス供給口170からエッチングガスが第1空間10aに供給され、エッチングガスは、第1開口181から第2空間10b内のプラズマ生成領域ARに流入する。プロセッサ120は、本ステップの前の状態と、本ステップの状態とで、プラズマ生成領域ARに流れるエッチングガスの流速が一定となるように、第1エッチングガス供給部16及び第2エッチングガス供給部17を制御することが好ましい。なお、本ステップの前の状態は、第1エッチングガス供給部16から供給されるエッチングガスの流速が低下されない状態である。また、本ステップの状態は、第1エッチングガス供給部16からのエッチングガスの流速が低下されると共に、第2エッチングガス供給部17からエッチングガスが供給される状態である。プラズマ生成領域ARに流れるエッチングガスの流速が一定であることで、ドロップレットターゲットDLの軌道が変化することを抑制でき、EUV光101の生成効率が低下することを抑制できる。
【0072】
プロセッサ120は、ステップSP16の制御が完了した後、ステップSP12に戻り、EUV光101の生成を継続させる。このとき、第1エッチングガス供給部16及び第2エッチングガス供給部17は、ステップSP16で制御された状態を維持しており、第1エッチングガス供給部16から供給されるエッチングガスの流速は低下されたままである。つまり、クリーニングモードが継続されている。プロセッサ120は、再びステップSP13に進む。EUV光生成装置100が立ち上がった直後や、EUV光生成装置100の立ち下げ前や、EUV光生成装置100の待機状態のタイミングであれば、ステップSP14に進み、再びステップSP15に進む。従って、プロセッサ120は、ステップSP14でプロセッサ120に入力するデータがEUV光101のパワーが所定値以上低下することを示さなくなるまで、ステップSP12からステップSP16までのループを繰り返し、クリーニングモードを継続する。
【0073】
(ステップSP17)
本ステップは、第1エッチングガス供給部16から供給されるエッチングガスの流速を所定の流速にするステップである。本ステップの前にステップSP16が行われている場合には、第1エッチングガス供給部16から供給されるエッチングガスの流速は低下されている。そこで、プロセッサ120は、本ステップにおいて、第1エッチングガス供給部16を制御して、第1バルブ163を開いて、第1ガス供給口160から所定の流速でエッチングガスを供給させる。つまり、プロセッサ120は、第1エッチングガス供給部16から供給されるエッチングガスの反射面15aにおける流速を低下させるよう第1エッチングガス供給部16を制御している状態で、EUV光集光ミラー15の反射率の低下量が基準値より小さいことをデータが示す場合に、第1エッチングガス供給部16から供給されるエッチングガスの流速を増加させるよう第1エッチングガス供給部16を制御する。また、本ステップでは、プロセッサ120は、第2エッチングガス供給部17を制御して、第2バルブ173を閉める。従って、第2ガス供給口170からはエッチングガスが供給されなくなる。こうして、クリーニングモードが終了する。なお、本ステップの前にステップSP16が行われていない場合には、プロセッサ120は、第1ガス供給口160から所定の流速でエッチングガスが供給される状態を維持させる。
【0074】
次にプロセッサ120は、ステップSP18に進む。
【0075】
(ステップSP18)
本ステップは、EUV光101の出射を継続するか否かを判断するステップである。プロセッサ120は、EUV光101の出射を継続する場合には、ステップSP12に戻り、EUV光101の出射を継続しない場合には、終了のステップに進む。プロセッサ120は、終了のステップにおいて、レーザ装置LD、ターゲット供給部40等を制御して、EUV光101の生成を停止させる。このとき、プロセッサ120は、終了のステップにおいて、光路切替ミラー51が第2状態となるようにアクチュエータ52を制御し、第1出射口111からEUV光101が出射しないようにしてもよい。
【0076】
4.3 作用・効果
本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150は、EUV光集光ミラー15の反射率を反映するデータを生成するデータ生成部としてのEUV光計測器60を備える。プロセッサ120は、反射率の低下量が基準値以上であることをEUV光計測器60が出力するデータが示す場合に、反射面15aに供給されるエッチングガスの流速を低下させるよう第1エッチングガス供給部16を制御する。従って、EUV光集光ミラー15の反射率が低下する場合に、反射面15aでの水素ラジカルの密度を高くすることができ、反射面15aに付着したスズのエッチングを促進することができる。このため、本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150によれば、EUV光生成装置100から出射するEUV光101のパワーが低下することを抑制し得る。
【0077】
また、プロセッサ120は、EUV光集光ミラー15の反射率の低下量が基準値以上であることをデータが示さない場合に、第1エッチングガス供給部16から供給されるエッチングガスの流速を低下させるよう制御をしない。反射面15aにおけるエッチングガスの流速が不要に低下しないことで、反射面15aで水素ラジカル密度が高い状態が不要に生じることが抑制され水素ブリスタリングの発生を抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態では、EUV光計測器60が計測するEUV光101のパワーのデータが、EUV光集光ミラー15の反射率を反映するデータである。EUV光計測器60に入射するEUV光101のパワーは、EUV光集光ミラー15の反射率に依存する。従って、本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150によれば、正確にEUV光集光ミラー15の反射率の低下を計測することができる。
【0079】
また、本実施形態では、EUV光集光ミラー15で反射されたEUV光101を第1出射口111に反射する第1状態と第2出射口112に反射する第2状態とを切り替え可能な光路切替ミラー51が設けられる。光路切替ミラー51によりEUV光101がEUV光計測器60に入射するように制御されることで、EUV光集光ミラー15で反射されたEUV光101のうちの一部のEUV光101がEUV光計測器60に入射する場合と比べて、EUV光計測器60はEUV光101のパワーを正確に計測することができる。
【0080】
4.4 変形例の説明
次に、実施形態1のEUV光生成用チャンバ装置150の変形例について説明する。
図10は、実施形態1の変形例におけるチャンバ10の断面を含む模式図である。
図10に示すように、本変形例のEUV光生成用チャンバ装置150は、パワー比生成部35を備える点において、実施形態1のEUV光生成用チャンバ装置150と異なる。なお、
図6では、ビームスプリッタ33及びレーザ光計測器34の記載が省略されているが、
図10には示している。
【0081】
パワー比生成部35は、演算器かならなり、プロセッサ120と電気的に接続されている。従って、パワー比生成部35は、プロセッサ120の一部であってもよい。パワー比生成部35は、レーザ光計測器34と電気的に接続されており、パワー比生成部35には、レーザ光計測器34が計測するレーザ光90のパワーに係るデータが入力する。また、パワー比生成部35は、EUV光計測器60と電気的に接続されており、パワー比生成部35には、EUV光計測器60が計測するEUV光101のパワーに係るデータが入力する。本変形例では、パワー比生成部35は、入力するこれらのデータから、EUV光計測器60が計測するEUV光101のパワーとレーザ光計測器34が計測するレーザ光90のパワーとの比を求める。パワー比生成部35は生成した比に係るデータを出力し、当該データはプロセッサ120に入力する。
【0082】
EUV光集光ミラー15の反射率が低下すると、レーザ光90のパワーに対してEUV光集光ミラー15で反射されるEUV光101のパワーが低下する。従って、EUV光計測器60が計測するEUV光101のパワーが低下し、パワー比生成部35が生成する比が変化する。例えば、EUV光計測器60が計測するEUV光101のパワーをレーザ光計測器34が計測するレーザ光90のパワーで除した比であれば、当該比は低下する。逆に、レーザ光計測器34が計測するレーザ光90のパワーをEUV光計測器60が計測するEUV光101のパワーで除した比であれば、当該比は増加する。このように、本変形例では、パワー比生成部35が生成する比のデータは、EUV光集光ミラー15の反射率を反映するデータである。従って、本変形例では、パワー比生成部35は、EUV光集光ミラー15の反射率を反映するデータを生成するデータ生成部である。なお、以下、EUV光計測器60が計測するEUV光101のパワーをレーザ光計測器34が計測するレーザ光90のパワーで除した比を用いて説明する。
【0083】
次に、本変形例の動作について説明する。
図11は、本変形例におけるプロセッサ120の制御フローチャートの一例を示す図である。
図11に示すように、本変形例では、ステップSP14及びステップSP15が実施形態1のフローチャートと主に異なる。
【0084】
比較例で説明した様に、チャンバ10に入射するレーザ光90のパワーはレーザ光計測器34で測定される。従って、EUV光101が生成される間、レーザ光計測器34からパワー比生成部35にレーザ光90のパワーに係るデータが入力する。
【0085】
また、
図11に示す開始の状態において、プロセッサ120は、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後における、上記比に係るデータを内部メモリに格納している。具体的には、実施形態1と同様にして、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後において、EUV光計測器60からEUV光101のパワーに係るデータが出力される。このデータはパワー比生成部35に入力する。また、このときのレーザ光90のパワーがレーザ光計測器34で計測され、レーザ光90のパワーに係るデータが、レーザ光計測器34からパワー比生成部35に入力する。パワー比生成部35は、これらデータから上記比を生成し、当該比に係るデータを出力する。このデータは、プロセッサ120に入力する。プロセッサ120は、このデータを内部メモリに格納する。こうして、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後における上記比に係るデータがプロセッサ120内のメモリに格納される。なお、この比に係るデータは、予め実験等で求められて、プロセッサ120内のメモリに格納されてもよい。
【0086】
(ステップSP14)
本変形例では、ステップSP14において、実施形態1と同様にして、EUV光計測器60は、EUV光101のパワーを計測すると、当該パワーに係るデータをパワー比生成部35に出力する。EUV光101が生成される間、レーザ光90のパワーに係るデータがレーザ光計測器34からパワー比生成部35に入力しているため、パワー比生成部35は、上記比を生成する。
【0087】
(ステップSP15)
本変形例の本ステップは、ステップSP14でパワー比生成部35が生成する比が、所定値以上低下することを示すかを判定するステップである。本ステップでは、プロセッサ120は、内部のメモリに格納されているデータを用いて、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後における上記比と、ステップSP14においてパワー比生成部35が生成する比とを比較する。そして、ステップSP14でプロセッサ120に入力するデータが、上記比が所定値以上低下することを示す場合、プロセッサ120は、ステップSP16に進む。一方、ステップSP14でプロセッサ120に入力するデータが、上記比が所定値以上低下することを示さない場合、プロセッサ120はステップSP17に進む。所定値は、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後における上記比とステップSP14においてパワー比生成部35が生成する比との差分を、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後における上記比で除した値を百分率で表現した値である。所定値をX%とすると、X%は例えば0.1%以上10%以下におけるいずれかの値である。EUV光集光ミラー15の反射率が低下すると、EUV光計測器60に入射するEUV光101のパワーが低下するため、上記比も低下する。従って、ステップSP14でプロセッサ120に入力するデータが上記比が所定値以上低下することを示す場合、当該データはEUV光集光ミラー15の反射率の低下量が基準値以上であることを示す。
【0088】
なお、レーザ光計測器34が計測するレーザ光90のパワーをEUV光計測器60が計測するEUV光101のパワーで除した比が用いられてもよい。この場合、ステップSP14でプロセッサ120に入力するデータが、比が所定値以上増加することを示す場合、プロセッサ120は、ステップSP16に進む。
【0089】
本変形例によれば、レーザ光計測器34が計測するレーザ光90のパワーと、EUV光計測器60が計測するEUV光101のパワーとの比を用いるため、レーザ光90のパワーが変動する場合であっても、EUV光集光ミラー15の反射率の低下を適切に検知することができる。
【0090】
5.実施形態2の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
次に、実施形態2のEUV光生成用チャンバ装置150の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0091】
5.1 構成
図12は、本実施形態におけるEUV光生成用チャンバ装置150を
図4と同様に示す模式図である。本実施形態におけるEUV光生成用チャンバ装置150は、カメラ71、第2エッチングガス供給部17を備える点において、実施形態1におけるEUV光生成用チャンバ装置150と主に異なる。また、光路切替機構50、EUV光計測器60は備えなくてもよい。
【0092】
カメラ71は、EUV光集光ミラー15の反射面15aを撮影する。カメラ71としては、例えばCCDカメラを挙げることができる。カメラ71は、静止画を撮影しても動画を撮影してもよい。カメラ71は、チャンバ10内に配置されてもよいが、スズの付着を抑制するため、チャンバ10の外に配置され、不図示のウィンドウを介して第1空間10aの反射面15aを撮影してもよい。なお、カメラ71が撮影する範囲は、反射面15aの全体でもよく、反射面15aのうちスズが付着し易い領域であってもよい。カメラ71は、プロセッサ120に電気的に接続されており、カメラ71が撮影する画像のデータは、プロセッサ120に入力する。なお、カメラ71が反射面15aを撮影し易いように、反射面15aを明るくする不図示の照明が設けられてもよい。この場合も、スズの付着を抑制するため、照明は、チャンバ10の外に配置され、不図示のウィンドウを介して、反射面15aを光が照射することが好ましい。
【0093】
EUV光集光ミラー15の反射率が低下する状態は、反射面15aにスズが付着している状態である。スズが付着する領域はそれ以外の領域と異なって観測される。例えば、暗くなる傾向にある。この状態をカメラ71は撮影することができる。従って、カメラ71が撮影する画像のデータは、EUV光集光ミラー15の反射率を反映するデータである。また、本実施形態では、カメラ71は、EUV光集光ミラー15の反射率を反映するデータを生成するデータ生成部である。
【0094】
5.2 動作
次に、本実施形態の動作について説明する。
図13は、本実施形態におけるプロセッサ120の制御フローチャートの一例を示す図である。
図13に示すように、本実施形態では、ステップSP13を備えずに、ステップSP14及びステップSP15が実施形態1のフローチャートと主に異なる。
【0095】
(ステップSP14)
本実施形態の本ステップは、画像のデータを用いて、反射面15aにおけるスズが付着している領域の面積を算出するステップである。本ステップでは、カメラ71は、反射面15aを撮影し、画像に係るデータを出力する。従って、プロセッサ120には、画像のデータが入力する。プロセッサ120は、画像のデータを受け取ると、例えば、画像の各画素をスズが付着しているか否かで異なるよう2値化する。2値化は、例えば、各画素の輝度に基づいて行われる。次に、プロセッサ120は、スズが付着している面積を算出し、この面積の反射面15aに対する比率を算出する。その後、プロセッサ120は、ステップSP15に進む。なお、本実施形態では、EUV光101が生成されている間、カメラ71は、反射面15aを撮影してもよい。この場合、開始の状態からプロセッサ120には、画像に係るデータが入力する。
【0096】
(ステップSP15)
本実施形態の本ステップは、画像のデータが、反射面15aにおける反射率が劣化した領域の面積の比率が所定の比率以上であることを示すかを判定するステップである。本ステップでは、プロセッサ120は、ステップSP14で算出した比率と、予め内部のメモリに格納されている所定の比率とを比較する。この比較の結果、ステップSP14で算出した比率が、所定の比率以上である場合、プロセッサ120は、ステップSP16に進む。一方、ステップSP14で算出した比率が、所定の比率以上ではない場合、プロセッサ120は、ステップSP17に進む。所定の比率は、スズが付着している面積を反射面15aの面積で除した値を百分率で表現した値である。所定値をX%とすると、X%は、例えば0.1%以上10%以下におけるいずれかの値である。プロセッサ120に入力するデータが、ステップSP14で算出した比率が所定の比率X%以上であることを示す場合、当該データはEUV光集光ミラー15の反射率の低下量が基準値以上であることを示す。この基準値は、実施形態1の基準値と同様である。
【0097】
5.3 作用・効果
本実施形態によれば、カメラ71が撮影する反射面15aの画像のデータを用いるため、スズが付着した割合を直接的に算出することができ、正確にスズの付着状況を把握し得る。さらに、反射率の劣化を判定するためにEUV光101のパワーを計測する必要がなく、EUV光路を切り替える必要もない。なお、カメラ71で撮影された画像を映像としてモニタに映し出せば、人が感覚的にスズの付着状況を把握することができる。
【0098】
6.実施形態3の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
次に、実施形態3のEUV光生成用チャンバ装置150の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0099】
6.1 構成
図14は、本実施形態におけるEUV光生成用チャンバ装置150を
図4と同様に示す模式図である。本実施形態におけるEUV光生成用チャンバ装置150は、光源72と光計測器73と、第2エッチングガス供給部17と、を備える点において、第1実施形態におけるEUV光生成用チャンバ装置150と主に異なる。また、光路切替機構50、EUV光計測器60は備えなくてもよい。
【0100】
光源72は、光をEUV光集光ミラー15の反射面15aに照射する。光源72としては、レーザ光源、LED、白色光源を挙げることができる。光源72は、スズの付着を抑制するため、チャンバ10の外に配置され、不図示のウィンドウを介して、反射面15aに光を照射することが好ましい。光源72は、反射面15a全体に光を照射してもよいが、反射面15aのうちスズが付着し易い領域に光を照射してもよい。
【0101】
光計測器73は、光源72から反射面15aに照射される光が鏡面反射した光を受光する位置に設けられる。光計測器73は、鏡面反射する光のパワーを計測する。光計測器73としては、例えば市販の光パワーメータ等を挙げることができる。光計測器73は、スズの付着を抑制するため、チャンバ10の外に配置され、不図示のウィンドウを介して、反射面15aで鏡面反射する光を受光することが好ましい。光計測器73は、プロセッサ120に電気的に接続されており、光計測器73が計測する光のパワーに係るデータは、プロセッサ120に入力する。
【0102】
EUV光集光ミラー15の反射率が低下する状態は、反射面15aにスズが付着している状態である。従って、反射面15aにスズが付着する場合、光計測器73が計測する光のパワーは小さくなる。従って、光計測器73が計測する光のパワーに係るデータは、EUV光集光ミラー15の反射率を反映するデータである。また、本実施形態では、光計測器73は、EUV光集光ミラー15の反射率を反映するデータを生成するデータ生成部である。
【0103】
6.2 動作
次に、本実施形態の動作について説明する。
図15は、本実施形態におけるプロセッサ120の制御フローチャートの一例を示す図である。
図15に示すように、本実施形態では、ステップSP13を備えずに、ステップSP14及びステップSP15が実施形態1のフローチャートと主に異なる。
【0104】
本実施形態では、
図15に示す開始の状態において、プロセッサ120は、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後における、光計測器73が計測する反射面15aで鏡面反射する光源72からの光のパワーに係るデータを内部メモリに格納している。具体的には、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後において、光源72から反射面15aに光が照射され、光計測器73は、反射面15aで鏡面反射する光を受光して、受光した光のパワーのデータを出力する。このデータは、プロセッサ120に入力する。こうして、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後における光計測器73が計測する光のパワーに係るデータがプロセッサ120内のメモリに格納される。なお、この光のパワーに係るデータは、予め実験等で求められて、プロセッサ120内のメモリに格納されてもよい。
【0105】
(ステップSP14)
本実施形態の本ステップは、反射面15aで鏡面反射する光源72からの光のパワーを計測するステップである。本ステップにおいて、光源72は反射面15aに光を照射し、光計測器73は、反射面15aで鏡面反射する光を受光して、受光した光のパワーのデータを出力する。出力するデータは、プロセッサ120に入力する。その後、プロセッサ120は、ステップSP15に進む。なお、本実施形態では、EUV光101が生成されている間、光源72は反射面15aに光を照射してもよい。この場合、EUV光101が生成されている間、光計測器73は、計測する光のパワーのデータを出力してもよい。また、この場合、プロセッサ120には、開始の状態から光計測器73が計測する光のパワーのデータが入力する。
【0106】
(ステップSP15)
本実施形態の本ステップは、光計測器73が計測する光のパワーが所定値以上低下しているかを判定するステップである。本ステップでは、プロセッサ120は、内部のメモリに格納されているデータを用いて、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後における光計測器73が計測する光のパワーと、ステップSP14において光計測器73が計測する光のパワーとを比較する。そして、ステップSP14でプロセッサ120に入力するデータが光計測器73が計測する光のパワーが所定値以上低下することを示す場合、プロセッサ120はステップSP16に進む。一方、当該データが光計測器73が計測する光のパワーが所定値以上低下していることを示さない場合、プロセッサ120はステップSP17に進む。所定値は、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後における光のパワーとステップSP14における光のパワーとの差分を、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後における光のパワーで除した値を百分率で表現した値である。所定値をX%とすると、X%は、例えば0.1%以上10%以下におけるいずれかの値である。EUV光集光ミラー15の反射率が低下すると、光計測器73が計測する光のパワーが低下する。従って、ステップSP14でプロセッサ120に入力するデータが光計測器73が計測する光のパワーが所定値以上低下していることを示す場合、当該データはEUV光集光ミラー15の反射率の低下量が基準値以上であることを示す。この基準値は、実施形態1の基準値と同様である。
【0107】
6.3 作用・効果
本実施形態によれば、EUV光101のパワーを測定せずに反射面15aの反射率の低下を検知し得るため、EUV光101の出射を阻害することを抑制して、反射面15aにスズが付着していることを把握し得る。
【0108】
6.4 変形例の説明
次に、実施形態3のEUV光生成用チャンバ装置150の変形例について説明する。本変形例では、光源72から反射面15aに光が照射され、光計測器73が反射面15aで散乱する光のパワーを計測する点において、実施形態3と異なる。従って、光計測器73は、光源72からの光が反射面15aで鏡面反射する光の光路上に設けられず、例えば
図14において破線で示す位置に設けられる。従って、反射面15aにスズが付着していない状態では、光計測器73は、光源72からの光を殆ど受光しない。
【0109】
次に、本変形例の動作について説明する。
図16は、本変形例におけるプロセッサ120の制御フローチャートの一例を示す図である。EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後では、反射面15aにスズが付着していない。本変形例では、
図16に示す開始の状態において、プロセッサ120は、光計測器73が計測する光のパワーとEUV光集光ミラー15の反射率との関係を内部メモリに記憶している。この関係は実験等により予め求められているとよい。また、プロセッサ120は、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後における、EUV光集光ミラー15の反射率である初期反射率を内部メモリに格納している。具体的には、EUV光生成用チャンバ装置150が交換された直後において、光源72から反射面15aに光が照射され、光計測器73は、反射面15aで散乱反射する光を受光して、受光した光のパワーのデータを出力する。このデータに基づいて、EUV光集光ミラー15の反射率が算出され、当該反射率が内部メモリに格納される。
【0110】
(ステップSP14)
本変形例の本ステップは、反射面15aで散乱する光源72からの光のパワーを計測するステップである。本ステップにおいて、光源72は反射面15aに光を照射し、光計測器73は、反射面15aで散乱する光を受光して、受光した光のパワーのデータを出力する。出力するデータは、プロセッサ120に入力する。その後、プロセッサ120は、ステップSP15に進む。なお、本変形例においても、EUV光101が生成されている間、光源72は反射面15aに光を照射してもよい。この場合、EUV光101が生成されている間、光計測器73は、計測する光のパワーのデータを出力してもよい。また、この場合、プロセッサ120には、開始の状態から光計測器73が計測する光のパワーのデータが入力する。
【0111】
(ステップSP15)
本変形例の本ステップは、光計測器73が計測する光のパワーが所定値以上増加するかを判定するステップである。本ステップでは、ステップSP14において光計測器73が計測する光のパワーが所定値以上増加することを示す場合、プロセッサ120はステップSP16に進む。一方、当該データが光計測器73が計測する光のパワーが所定値以上増加することを示さない場合、プロセッサ120はステップSP17に進む。所定値は、EUV光集光ミラー15の初期反射率と計測された散乱光の光のパワーに対応したEUV光集光ミラー15の反射率との差分を、初期反射率で除した値を百分率で表現した値である。ここで、EUV光集光ミラー15の初期反射率とは、光計測器73が計測する光のパワーとEUV光集光ミラー15の反射率との関係における散乱光の光のパワーがゼロである場合のEUV光集光ミラー15の反射率であってよい。あるいは、予め設定あるいは計測された値としてもよい。例えば、EUV光集光ミラー15が装置に組み込まれた直後の反射率でもよいし、メンテナンス直後の反射率でもよい。所定値をX%とすると、X%は、例えば0.1%以上10%以下におけるいずれかの値である。
【0112】
7.実施形態4の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
次に、実施形態4のEUV光生成用チャンバ装置150の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0113】
7.1 構成
図17は、本実施形態における極端紫外光生成用チャンバ装置を
図4と同様に示す模式図である。本実施形態におけるEUV光生成用チャンバ装置150は、パルスカウンター36と、第2エッチングガス供給部17と、を備える点において、比較例におけるEUV光生成用チャンバ装置150と主に異なる。
【0114】
パルスカウンター36は、レーザ光計測器34に電気的に接続されており、レーザ光計測器34から出力されるレーザ光90のパワーが大きくなる回数を計測することで、レーザ光90のショット数を計測することができる。パルスカウンター36は、プロセッサ120と電気的に接続されており、パルスカウンター36が計測するレーザ光90のショット数に係るデータはプロセッサ120に入力する。
【0115】
図18は、レーザ光90のショット数と、EUV光集光ミラー15の反射率の低下率との関係を示す図である。
図18に示すように、通常の運転モードでは、レーザ光90がドロップレットターゲットDLに照射され、EUV光101が生成されるごとに、反射面15aにスズが付着して、EUV光集光ミラー15の反射率が低下する。従って、レーザ光90のショット数に係るデータは、EUV光集光ミラー15の反射率を反映するデータである。また、本実施形態では、パルスカウンター36は、EUV光集光ミラー15の反射率を反映するデータを生成するデータ生成部である。
【0116】
7.2 動作
次に、本実施形態の動作について説明する。
図19は、本実施形態におけるプロセッサ120の制御フローチャートの一例を示す図である。この制御フローは、ステップSP21~ステップSP25を含む。
【0117】
本実施形態では、パルスカウンター36は、開始の状態からレーザ光90のショット数をカウントしショット数に係るデータを出力し、当該データはプロセッサ120に入力している。
【0118】
(ステップSP21)
本ステップは、実施形態1のステップSP11と同様のステップである。
【0119】
(ステップSP22)
本ステップは、レーザ光90のショット数が所定値に達したことをプロセッサ120が検知するステップである。所定のショット数は、例えば、XBpls(ビリオンパルス)である。XBplsは、EUV光集光ミラー15の初期反射率に対するEUV光集光ミラー15の反射率の低下量が基準値R%以上となるパルス数である。初期反射率については実施形態3の変形例と同様でよい。R%は、例えば0.1%以上10%以下におけるいずれかの値である。本ステップでプロセッサ120に入力するデータがショット数が所定値に達することを示す場合、EUV光集光ミラー15の反射率の低下量が基準値以上であることを示す。
【0120】
(ステップSP23)
本ステップは、プロセッサ120が、実施形態1のステップSP16と同様にして、第1エッチングガス供給部16及び第2エッチングガス供給部17を制御するステップである。従って、反射面15aにおけるエッチングガスの流速が低下し、反射面15aに付着しているスズがエッチングされる。つまり、本ステップでは、クリーニングモードとなる。
図20は、クリーニングモードにおけるレーザ光90のショット数と、EUV光集光ミラー15の反射率の低下率との関係を示す図である。
図20に示すように、EUV光集光ミラー15の反射率の低下量が基準値R%である状態からレーザ光90のショット数がYBplsに達すると、反射面15aに付着しているスズが概ねエッチングされる。
【0121】
(ステップSP24)
本ステップは、ステップSP23の状態となってからレーザ光90のショット数がYBplsに達したことをプロセッサ120が検知するステップである。本ステップで、ショット数がYBplsに達したことが検知されると、プロセッサ120は、ステップSP25に進む。
【0122】
(ステップSP25)
本ステップは、実施形態1のステップSP18と同様である。ただし、本実施形態では、EUV光101の出射を継続する場合には、ステップSP21に戻る。
【0123】
7.3 作用・効果
本実施形態によれば、パルスカウンター36でのレーザ光90のショット数により反射面15aのスズの付着を検知するため、構成が簡易である。
【0124】
以上本発明について、実施形態を例に説明したが、上記実施形態を適宜変更することができる。例えば、実施形態1から実施形態3において、実施形態4と同様のパルスカウンター36が備えられ、ステップSP16の状態になってから、所定のショット数YBplsに達する場合に、ステップSP11に戻ってもよい。すなわち、プロセッサ120は、供給されるエッチングガスの流速を低下させるよう第1エッチングガス供給部16を制御してからのレーザ光90のショット数が所定のショット数YBplsに達する場合に、エッチングガスの流速を増加させるよう第1エッチングガス供給部16を制御してもよい。
【0125】
また、上記実施形態において、プロセッサ120は、EUV光集光ミラー15の反射率の低下量が基準値以上である場合に、第1エッチングガス供給部16からのエッチングガスの流速を低下させ、第2エッチングガス供給部17からのエッチングガスを供給させなくてもよい。また、プロセッサ120は、第1エッチングガス供給部16から供給されるエッチングガスの流速が低下されない状態と、第1エッチングガス供給部16からのエッチングガスの流速を低下させると共に第2エッチングガス供給部17からエッチングガスを供給させる状態とで、プラズマ生成領域ARに流れるエッチングガスの流速が一定となるように、第1エッチングガス供給部16及び第2エッチングガス供給部17を制御してもよい。
【0126】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」、「有する」、「備える」、「具備する」などの用語は、「記載されたもの以外の構成要素の存在を除外しない」と解釈されるべきである。また、修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきであり、さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。