(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007266
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】ネットワークノード及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 21/647 20110101AFI20240111BHJP
H04N 21/61 20110101ALI20240111BHJP
【FI】
H04N21/647
H04N21/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108652
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】蛭間 信博
(72)【発明者】
【氏名】河村 侑輝
(72)【発明者】
【氏名】今村 浩一郎
【テーマコード(参考)】
5C164
【Fターム(参考)】
5C164GA03
5C164TA21P
5C164TB45P
(57)【要約】
【課題】3次元オブジェクトデータの伝送効率を向上させる。
【解決手段】ネットワークノード20は、静止オブジェクトのデータをキャッシュする静止物データキャッシュ部26と、受信装置30に送信する送信オブジェクトを指定する送信オブジェクト指示を生成し、受信装置30の視野内に提示させるオブジェクトに静止オブジェクトが含まれる場合には、該静止オブジェクトのデータを受信装置30に送信済みでないときにのみ送信オブジェクト指示に該静止オブジェクトのIDを追加するビューポート推定部27と、送信装置10から受信したオブジェクトデータのうち、静止オブジェクトのデータを静止物データキャッシュ部26に出力するとともに、送信オブジェクト指示により指定された送信オブジェクトのデータを出力するパケットフィルタ部31と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置から受信したオブジェクトデータをフィルタ処理して受信装置に送信するネットワークノードであって、
静止オブジェクトのデータをキャッシュする静止物データキャッシュ部と、
前記受信装置に送信する送信オブジェクトを指定する送信オブジェクト指示を生成し、前記受信装置の視野内に提示させるオブジェクトに静止オブジェクトが含まれる場合には、該静止オブジェクトのデータを前記受信装置に送信済みでないときにのみ前記送信オブジェクト指示に該静止オブジェクトのIDを追加するビューポート推定部と、
前記送信装置から受信したオブジェクトデータのうち、静止オブジェクトのデータを前記静止物データキャッシュ部に出力するとともに、前記送信オブジェクト指示により指定された送信オブジェクトのデータを出力するパケットフィルタ部と、
を備えるネットワークノード。
【請求項2】
前記ビューポート推定部は、前記受信装置の視野内に提示させるオブジェクトに、前記受信装置に送信済みでない複数の静止オブジェクトが含まれる場合には、前記送信オブジェクト指示に1つずつ異なるタイミングで前記静止オブジェクトのIDを追加する、請求項1に記載のネットワークノード。
【請求項3】
前記受信装置ごとに各静止物データを送信済みであるか否かを示すフラグを管理する静止物データ送信フラグ管理部を備え、
前記ビューポート推定部は、前記フラグにより、前記静止オブジェクトのデータを前記受信装置に送信済みであるか否かを判断する、請求項1又は2に記載のネットワークノード。
【請求項4】
コンピュータを、請求項1に記載のネットワークノードとして機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークノード及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、AR(Augmented Reality)/VR(Virtual Reality)技術の進歩により、AR/VR対応端末や、AR/VRコンテンツが普及し始めている。AR/VR対応端末とは、スマートフォン、タブレット型端末、VRゴーグル、ARグラスなどである。AR/VRは、コンテンツデータとして、3次元オブジェクトデータ(3次元モデルデータ)を取り扱う。
【0003】
特許文献1には、フレーム単位で3次元オブジェクトデータを受信装置(視聴端末)に伝送する技術が開示されている。この技術によれば、伝送するオブジェクトを識別可能なメタデータをパケットに有するため、静止オブジェクトと動的オブジェクトとを分離し、静止オブジェクトだけは低いフレームレートで伝送するような処理も可能であり、映像の品質を落とすこと無く受信装置に伝送するデータ量を削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、静止オブジェクトのデータを周期的に伝送するため、伝送効率を改善する余地があった。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、3次元オブジェクトデータの伝送効率を向上させることが可能なネットワークノード及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るネットワークノードは、送信装置から受信したオブジェクトデータをフィルタ処理して受信装置に送信するネットワークノードであって、静止オブジェクトのデータをキャッシュする静止物データキャッシュ部と、前記受信装置に送信する送信オブジェクトを指定する送信オブジェクト指示を生成し、前記受信装置の視野内に提示させるオブジェクトに静止オブジェクトが含まれる場合には、該静止オブジェクトのデータを前記受信装置に送信済みでないときにのみ前記送信オブジェクト指示に該静止オブジェクトのIDを追加するビューポート推定部と、前記送信装置から受信したオブジェクトデータのうち、静止オブジェクトのデータを前記静止物データキャッシュ部に出力するとともに、前記送信オブジェクト指示により指定された送信オブジェクトのデータを出力するパケットフィルタ部と、を備える。
【0008】
さらに、一実施形態において、前記ビューポート推定部は、前記受信装置の視野内に提示させるオブジェクトに、前記受信装置に送信済みでない複数の静止オブジェクトが含まれる場合には、前記送信オブジェクト指示に1つずつ異なるタイミングで前記静止オブジェクトのIDを追加してもよい。
【0009】
さらに、一実施形態において、前記受信装置ごとに各静止物データを送信済みであるか否かを示すフラグを管理する静止物データ送信フラグ管理部を備え、前記ビューポート推定部は、前記フラグにより、前記静止オブジェクトのデータを前記受信装置に送信済みであるか否かを判断してもよい。
【0010】
また、一実施形態係るプログラムは、コンピュータを、上記ネットワークノードとして機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、3次元オブジェクトデータの伝送において、受信装置に伝送するデータ量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る放送型の3次元空間コンテンツ伝送システムの構成例を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る送信データ記憶部及び送信装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係るネットワークノードの構成例を示すブロック図である。
【
図4】一実施形態に係るネットワークノードのパケットフィルタ部における静止物データキャッシュ部へのキャッシュ処理を示すフローチャートである。
【
図5】一実施形態に係るネットワークノードのパケットフィルタ部におけるパケット送信部へのオブジェクトデータ出力処理を示すフローチャートである。
【
図6】一実施形態に係るネットワークノードのビューポート推定部における処理を示すフローチャートである。
【
図7】一実施形態に係る受信装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、「3次元オブジェクト」を単に「オブジェクト」と称する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る放送型の3次元空間コンテンツ伝送システム1の構成例を示す図である。
図1に示す3次元空間コンテンツ伝送システム1は、撮影・制作システム50と、完成データ記憶部60と、データ変換装置70と、送出データ記憶部80と、送信装置10と、ネットワークノード20と、受信装置(視聴端末)30と、を備える。本実施形態では、データ変換装置70と送信装置10とを別個の装置としているが、データ変換装置70及び送信装置10は一つの装置として一体化されていてもよい。
【0015】
撮影・制作システム50は、3次元空間コンテンツを制作し、完成データとして完成データ記憶部60に出力する。完成データとは、例えば、非圧縮・可逆圧縮、又は劣化の少ない軽量圧縮で符号化された、1つ以上のオブジェクトデータを含むコンテンツデータである。
【0016】
データ変換装置70は、完成データ記憶部60から入力した完成データを送出データに変換し、送出データ記憶部80に出力する。データ変換装置70の処理は、非リアルタイム又はリアルタイムのオフライン処理でもよいし、リアルタイムのオンライン処理でもよい。送出データは、オブジェクトデータが、ユーザがコンテンツを視聴する際の品質劣化が許容できるレベルで、非可逆を含む圧縮方式により圧縮され、伝送路90上での配信に適したデータに変換される。このとき、1つのオブジェクトに対して複数の解像度パターンで圧縮されたオブジェクトデータが生成され得る。また、完成データ及び送出データともに、コンテンツデータには、そのコンテンツに含まれるオブジェクトの構成、コンテンツタイトルや各オブジェクトの名称などの情報が補助情報として含まれる。
【0017】
また、データ変換装置70は、完成データの補助情報を参照し、コンテンツ構成メタデータを生成する。そして、データ変換装置70は、生成したコンテンツ構成メタデータを送出データに含め、送出データ記憶部80に出力する。コンテンツ構成メタデータには、3次元空間コンテンツに含まれるオブジェクト・解像度パターンの一覧などのデータ構成情報や、コンテンツタイトル、各オブジェクトの名称などの情報が含まれ得る。コンテンツ構成メタデータは、シーン記述などと呼ばれる場合もある。
【0018】
送信装置10は、伝送路90を介して、放送型の3次元空間コンテンツの構成要素であるオブジェクトをオブジェクトデータとして、複数のネットワークノード20又は受信装置30に送信する。
【0019】
伝送路90は、グローバルなインターネットや回線事業者が運営するクローズドネットワークなどの通信伝送路や、地上放送・衛星放送などの放送伝送路を含む。
【0020】
ネットワークノード20は、回線事業者やコンテンツ提供事業者が設備として設置するエッジサーバや、ユーザが宅内に設置するホームゲートウェイである。ネットワークノード20と受信装置30との間は一般に双方向通信が可能であり、一つのネットワークノード20に複数の受信装置30が紐づく場合もある。伝送路90を介してコンテンツを受信する受信装置30は無数に存在し得るため、コンテンツの配信者(送信装置10)は必ずしも全てのユーザ(受信装置30)の存在を把握していない。
【0021】
(送信システム)
図2は、本発明の一実施形態に係る送信装置10の構成例を示す図である。送出データ記憶部80は、3次元コンテンツの各種補助情報を記述するコンテンツ構成メタデータを記憶する。また、送出データ記憶部80は、1つ以上のオブジェクトデータを記憶する。
【0022】
図2に示す送信装置10は、ID決定部11と、伝送フレーム構成部12と、メタデータ生成部13と、パケット構成部14と、パケット送信部15と、オブジェクト提示位置情報生成部16と、を備える。
【0023】
ID決定部11は、送出データ記憶部80から入力したコンテンツ構成メタデータを参照して、放送型の3次元空間コンテンツの構成要素であるオブジェクトについて、該オブジェクトを識別するオブジェクトID、及び該オブジェクトの解像度パターンごとのパケットを識別するパケットIDを決定する。そして、ID決定部11は、オブジェクトID及びパケットIDを示すID情報をメタデータ生成部13及びパケット構成部14に出力する。オブジェクトID及びパケットIDは、例えば、16ビットの符号なし整数である。
【0024】
コンテンツ構成メタデータにおいてオブジェクトを管理するオブジェクトIDが予め付与されている場合も考えられる。ID決定部11は、コンテンツ構成メタデータに記載のオブジェクトIDが、パケットのヘッダに付与する際の形式に適合する場合には、そのオブジェクトIDをそのまま用いてもよいし、予め定めた変換ルールを用いてパケットのヘッダに付与する際の形式に変換してもよい。パケットIDについても、コンテンツ構成メタデータに相当するID(解像度パターンIDなど)があれば、同様にそれを使用できる。また、ID決定部11は、オブジェクトID及びパケットIDを、コンテンツ構成メタデータによらずに自動的に発番してもよいし、別途与えられる設定等に従って割り当ててもよい。
【0025】
オブジェクト提示位置情報生成部16は、送出データ記憶部80から入力したオブジェクトデータの主にジオメトリを解析し、3次元空間のワールド座標において各オブジェクトの代表的な提示位置を示すオブジェクト提示位置情報を生成する。オブジェクト提示位置情報は、一般的に、コンテンツのフレームレートと同一又はフレームレート以下の周期で更新される、シーケンシャルなデータとなる。そして、オブジェクト提示位置情報生成部16は、生成したオブジェクト提示位置情報をメタデータ生成部13に出力する。
【0026】
オブジェクト提示位置情報は、例えば、オブジェクトの全ての頂点座標の平均座標や、頂点座標の最大値や、頂点座標の最大値を用いて得られるバウンディングボックスの情報である。オブジェクト提示位置情報は、オブジェクトが3次元空間内を動く場合には動的な情報となる。オブジェクト提示位置情報は、予めコンテンツ構成メタデータに含まれる場合も想定される。その場合には、オブジェクト提示位置情報生成部16は、オブジェクトデータを解析することなく、コンテンツ構成メタデータに含まれるオブジェクト提示位置情報を使用してもよい。
図2では、コンテンツ構成メタデータからオブジェクト提示位置情報を取得する例を示している。
【0027】
メタデータ生成部13は、送出データ記憶部80から入力したコンテンツ構成メタデータを、必要に応じて伝送用のメタデータの形式に適合するように変換する。また、メタデータ生成部13は、必要に応じて、ID決定部11から入力したID情報(オブジェクトID及びパケットID)と、オブジェクト提示位置情報生成部16から入力したオブジェクト提示位置情報とを対応付ける情報を含むメタデータを生成する。そして、メタデータ生成部13は、生成したメタデータをパケット構成部14に出力する。
【0028】
伝送フレーム構成部12は、オブジェクトデータごとに、伝送フレームを構成する。伝送フレームは、オブジェクトごとに独立したデータ構造とする。そして、伝送フレーム構成部12は、構成した伝送フレームをパケット構成部14に出力する。一つの伝送フレームには、例えば、オブジェクトのジオメトリデータとテクスチャデータを含む。なお、伝送時のオブジェクトの単位は、必ずしも一つのオブジェクトとして視認される単位と一致しなくてもよい。例えば、3次元空間コンテンツにおいて、コンテンツの主要なオブジェクトはそれぞれ独立したオブジェクトとして伝送フレーム化して伝送するが、その他の背景オブジェクトについては、まとめて単一オブジェクトとして扱って伝送フレームを構成して伝送してもよい。逆に、一つのオブジェクトとして視認されるものが、伝送時は複数のオブジェクトとして分割して伝送してもよい。例えば、人物等のオブジェクトを、特に注目されやすい顔を含む頭部とその他の部分に分割して伝送フレームを構成して伝送してもよい。
【0029】
メタデータ生成部13は、送出データ記憶部80から入力したコンテンツ構成メタデータを、必要に応じて伝送用のメタデータの形式に適合するように変換する。そして、メタデータ生成部13は、生成したメタデータをパケット構成部14に出力する。メタデータは一定周期で送信され、受信装置30又はネットワークノード20が、受信中の3次元空間コンテンツのオブジェクトの構成、及びそれらのデータを伝送するオブジェクトID及びパケットIDを知るための補助情報として用いられる。
【0030】
パケット構成部14は、伝送フレーム構成部12から入力した伝送フレーム、及びメタデータ生成部13から入力したメタデータを、伝送に用いるパケットに分割し、ID決定部11から入力したID情報に従い、パケットにオブジェクトID及びパケットIDを付与する。そして、パケット構成部14は、生成したパケットをパケット送信部15に出力する。すなわち、パケット構成部14は、オブジェクトID及びパケットIDをヘッダ情報として有する伝送フレームのパケットと、メタデータのパケットと、を生成する。なお、パケットIDは全てのパケットに付与される。一方、オブジェクトIDは、全てのパケットのヘッダに付与するようにしてもよいし、伝送フレームが複数のパケットに分割された際には、分割された伝送フレームの先頭部分を含むパケットのヘッダのみに付与するようにしてもよい。
【0031】
パケット送信部15は、パケット構成部14から入力した各パケットに宛先アドレス、宛先ポート番号などを付与して、伝送路90に送信する。
【0032】
(ネットワークノード)
次に、本発明の一実施形態に係るネットワークノードについて、
図3を参照して説明する。
図3は、一実施形態に係るネットワークノード20の構成例を示す図である。ネットワークノード20は、上述した送信装置10から3次元空間コンテンツ(オブジェクトデータ及びメタデータ)のパケットを受信し、フィルタ処理して受信装置30に送信する。
【0033】
図3に示すネットワークノード20は、パケットフィルタ部21と、メタデータ再構成部22と、メタデータ解析部23と、パケット構成部24と、パケット送信部25と、静止物データキャッシュ部26と、ビューポート推定部27と、静止物データ送信フラグ管理部28と、を備える。
【0034】
静止物データキャッシュ部26は、静止物データをキャッシュする。「静止物データ」とは、静止オブジェクトのデータのことをいう。
【0035】
パケットフィルタ部21は、送信装置10から受信したオブジェクトデータのうち、静止物データを静止物データキャッシュ部26に出力するとともに、ビューポート推定部27から入力した送信オブジェクト指示により指定された送信オブジェクトのデータのパケットをパケット送信部25に出力する。また、パケットフィルタ部21は、送信装置10から受信したメタデータのパケットをメタデータ再構成部22に出力する。
【0036】
「送信オブジェクト指示」とは、受信装置30に送信する送信オブジェクトを指定する情報である。送信オブジェクトは、オブジェクトIDにより特定してよい。パケットフィルタ部21は、送信オブジェクト指示により指定された送信オブジェクトに静止オブジェクトが含まれる場合、静止物データキャッシュ部26から該当する静止物データを取得し、パケット送信部25に送信する。
【0037】
パケットフィルタ部21における静止物データキャッシュ部26へのキャッシュ処理を、
図4を参照して説明する。パケットフィルタ部21は、送信装置10からオブジェクトデータを受信待機し(ステップS101)、オブジェクトデータを受信すると(ステップS102でYes)、オブジェクトデータが静止物データであるか否かを判定する(ステップS103)。オブジェクトデータが静止物データであり(ステップS103でYes)、且つ該静止物データが静止物データキャッシュ部26にキャッシュされていない場合には(ステップS104でYes)、パケットフィルタ部21は該静止物データを静止物データキャッシュ部26にキャッシュする。
【0038】
ステップS103において、オブジェクトデータが静止物データであるか否かを示す情報がメタデータに追記されている場合には、パケットフィルタ部21は、該情報に基づいて判定してよい。ネットワーク上流で静止物データは伝送レートを下げて周期的に伝送する場合には、パケットフィルタ部21は、ネットワーク上流から送られてくるオブジェクトデータのうち、一定の周期で送信されてくるオブジェクトデータを静止物データと判定してよい。
【0039】
パケットフィルタ部21におけるパケット送信部25へのオブジェクトデータ出力処理を、
図5を参照して説明する。パケットフィルタ部21は、ビューポート推定部27から送信オブジェクト指示を受信待機し(ステップS201)、送信オブジェクト指示を受信すると(ステップS202でYes)、パケット送信部25に送信する送信オブジェクトに静止オブジェクトが含まれるか否かを判定する(ステップS203)。送信オブジェクトに静止オブジェクトが含まれる場合には(ステップS203でYes)、静止物データキャッシュ部26から該静止オブジェクトに対応する静止物データを取得する(ステップS204)。そして、パケットフィルタ部21は、送信オブジェクト指示により指定された送信オブジェクトのデータをパケット送信部25に送信する(ステップS205)。
【0040】
再び
図3を参照する。メタデータ再構成部22は、パケットフィルタ部21から入力したメタデータのパケットからメタデータを再構成する。具体的には、メタデータ再構成部22は、パケットフィルタ部21が通過させたオブジェクトのID情報のみに記載内容を削減したり、受信装置30では使用されないオブジェクト提示位置情報を削減したりする。これにより、受信装置30が受信するメタデータの情報量が削減されて必要最低限の情報となることで、受信装置30のメタデータ解析部33の処理負荷を軽減させることができる。
【0041】
パケット構成部24は、メタデータ再構成部22から入力したメタデータを、伝送に用いるパケットに分割する。そして、パケット構成部24は、メタデータのパケットをパケット送信部25に出力する。
【0042】
パケット送信部25は、パケットフィルタ部21から入力したオブジェクトデータのパケット、及びパケット構成部24から入力したメタデータのパケットを、受信装置30に出力する。受信装置30は各オブジェクトについて、ネットワークノード20から受信した最新のデータをキャッシュする。
【0043】
メタデータ解析部23は、メタデータ再構成部22から入力したメタデータから、各オブジェクトに割り当てられたオブジェクトID及びパケットIDを特定する。そして、メタデータ解析部23は、特定したIDを示すID情報をパケットフィルタ部21及びビューポート推定部27に出力する。また、メタデータ解析部23は、メタデータ再構成部22から入力したメタデータから、オブジェクト提示位置情報を特定し、ビューポート推定部27に出力する。
【0044】
静止物データ送信フラグ管理部28は、受信装置30から位置・視線方向情報を受信し、受信装置30ごとに各静止物データを送信済みであるか否かを示すフラグ(以下、「送信済みフラグ」という。)を管理する。送信済みフラグがオン(1)である場合には静止物データを送信済みであることを意味し、送信済みフラグがオフ(0)である場合には静止物データを未送信であることを意味する。
【0045】
静止物データ送信フラグ管理部28は、受信装置30から位置・視線方向情報を初めて受信したタイミングで、IPアドレス等を受信装置30の識別情報としてフラグ管理を開始する。また、静止物データ送信フラグ管理部28は、受信装置30から一定時間、位置・視線方向情報を受信できなくなった場合に、受信装置30のユーザが視聴を終了したと判断し、該受信装置30のフラグ管理をリセットする。送信済みフラグのオン操作は、ビューポート推定部27が行う。
【0046】
ビューポート推定部27は、メタデータ解析部23から入力したオブジェクト提示位置情報と、受信装置30から受信した位置・視線方向情報とから、受信装置30の視野内に提示させるオブジェクトを判定し、受信装置30に送信する送信オブジェクトを指定する送信オブジェクト指示を生成し、パケットフィルタ部21に出力する。ビューポート推定部27は、受信装置30の視野内に提示させるオブジェクトに静止オブジェクトが含まれる場合には、該静止オブジェクトのデータを受信装置30に送信済みであるときは送信オブジェクト指示に該静止オブジェクトのIDを追加せず、該静止オブジェクトのデータを受信装置30に送信済みでないときにのみ送信オブジェクト指示に該静止オブジェクトのIDを追加する。
【0047】
具体的には、ビューポート推定部27は、受信装置30の視野内に提示させるオブジェクトに静止オブジェクトが含まれているか確認する。静止オブジェクトが含まれている場合ビューポート推定部27は、静止物データ送信フラグ管理部28から送信済みフラグを取得し、該静止オブジェクトのデータである静止物データを受信装置30に送信済みか否かを判断する。静止物データを受信装置30に送信済みでない場合には、静止オブジェクトIDキューに該静止オブジェクトのIDを格納し、これから受信装置30に送信するため、該受信装置30の静止物送信済みフラグをオンにする。
【0048】
また、ビューポート推定部27は、受信装置30の視野内に提示させるオブジェクトに、受信装置30に送信済みでない複数の静止オブジェクトが含まれる場合(すなわち、静止オブジェクトIDキューに複数の静止オブジェクトのIDが存在する場合)には、送信オブジェクト指示に1つずつ異なるタイミングで静止オブジェクトのIDを追加する。これにより、同一フレームのタイミングで複数の静止物データを受信装置30に送信することを回避し、フレームをずらして静止物データを受信装置30に送信することが可能となる。
【0049】
ビューポート推定部27における処理を、
図6を参照して説明する。ビューポート推定部27は、メタデータ解析部23から全オブジェクトの1フレーム分のID情報及びオブジェクト提示位置情報を受信待機し(ステップS301)、これらの情報を受信すると(ステップS302でYes)、直前に受信装置30から受信した位置・視線方向情報を用いて送信オブジェクト指示を作成する(ステップS303)。
【0050】
ビューポート推定部27は、受信装置30の視野内に提示させるオブジェクトに静止オブジェクトが1以上含まれ(ステップS304でYes)、且つ静止物データ送信フラグ管理部28の該静止オブジェクトの静止物送信済みフラグがオフである場合には(ステップS305でYes)、該静止オブジェクトのIDを静止オブジェクトIDキューに格納し、静止物送信済みフラグをオンにする(ステップS306)。
【0051】
ステップS306において、ビューポート推定部27は、静止オブジェクトのIDの小さい順から、1フレーム毎に1つのIDを静止オブジェクトIDキューに格納してよい。あるいは、ビューポート推定部27は、受信装置30との距離が短い順から、1フレーム毎に1つのIDを静止オブジェクトIDキューに格納してよい。
【0052】
ビューポート推定部27は、静止オブジェクトIDキューに静止オブジェクトのIDがある場合には(ステップS307でYes)、静止オブジェクトIDキューから一つ分の静止オブジェクトのIDを取り出して、送信オブジェクト指示に追加し(ステップS308)、送信オブジェクト指示をパケットフィルタ部21に送信し(ステップS309)、処理をステップS301に戻す。
【0053】
このように、ネットワークノード20は、静止物データをキャッシュし、静止オブジェクト毎に、受信装置30の視野内に入ったタイミングで静止物データを一度だけ伝送する。そのため、本発明によれば、3次元オブジェクトデータの伝送において、受信装置30に伝送するデータ量を削減することが可能となる。
【0054】
また、従来のネットワークノードでは、複数の静止オブジェクトをすべて同一フレームのタイミングで送信するため、特定のフレームにおいて伝送するデータ量が瞬間的に大きくなってしまうことがあった。一方、本発明に係るネットワークノード20は、複数の静止オブジェクトが同時に受信装置30の視野内に入った場合には、各静止物データを異なるフレームタイミングで送信する。そのため、本発明によれば、3次元オブジェクトデータの伝送において、ビットレートの最大値を低減することが可能となる。
【0055】
(受信装置)
次に、本発明の一実施形態に係る受信装置30について、
図7を参照して説明する。
図7は、一実施形態に係る受信装置30の構成例を示す図である。
【0056】
図7に示す受信装置30は、パケットフィルタ部31と、伝送フレーム・メタデータ再構成部32と、メタデータ解析部33と、端末情報送信部34と、センサ35と、カメラ36と、自己位置・視線方向推定部37と、オブジェクトレンダリング部38と、AR合成部39と、表示部40と、を備える。
【0057】
受信装置30は、ネットワークノード20を経由してコンテンツデータを受信し、3次元空間コンテンツをARで視聴する視聴端末である。
【0058】
パケットフィルタ部31は、既に必要なパケットだけがフィルタされた状態のパケットを受信する。このため、受信装置30は、パケットフィルタ部31でパケットを破棄する処理負荷を削減することができる。パケットフィルタ部31は、入力のパケットフローから複数オブジェクトの分離及びメタデータの分離を行う。
【0059】
伝送フレーム・メタデータ再構成部32は、パケットフィルタ部31から入力したパケットから、オブジェクトの伝送フレーム及びメタデータを再構成する。そして、伝送フレーム・メタデータ再構成部32は、伝送フレームをオブジェクトレンダリング部38に出力し、メタデータをメタデータ解析部33に出力する。
【0060】
メタデータ解析部33は、伝送フレーム・メタデータ再構成部32から入力したメタデータから、オブジェクト提示位置情報と、各オブジェクトに割り当てられたオブジェクトID及びパケットIDとを特定する。そして、メタデータ解析部33は、特定したIDを示すID情報を、パケットフィルタ部31に出力する。
【0061】
センサ35は、受信装置30に搭載された加速度センサ、ジャイロセンサなどの各種センサを含み、検出したセンサ情報を自己位置・視線方向推定部37に出力する。
【0062】
カメラ36は、撮影したカメラ画像を、自己位置・視線方向推定部37及びAR合成部39に出力する。
【0063】
自己位置・視線方向推定部37は、センサ35から入力したセンサ情報及びカメラ36から入力したカメラ画像を用いて、受信装置30の自己位置及びカメラ36の向いている方向を推定し、受信装置30の自己位置及びカメラ36の向いている方向を示す位置・視線方向情報を生成する。そして、自己位置・視線方向推定部37は、生成した位置・視線方向情報をオブジェクトレンダリング部38に出力する。
【0064】
オブジェクトレンダリング部38は、伝送フレーム・メタデータ再構成部32から入力した伝送フレームに対して、自己位置・視線方向推定部37から入力した位置・視線方向情報が示す自己位置及び視線方向に応じたレンダリングを行ってオブジェクトのレンダリング画像を生成する。そして、オブジェクトレンダリング部38は、生成したレンダリング画像をAR合成部39に出力する。
【0065】
AR合成部39は、オブジェクトレンダリング部38から入力したオブジェクトのレンダリング画像と、カメラ36から入力したカメラ画像とを合成して、合成画像を生成する。そして、AR合成部39は、生成した合成画像を表示部40に出力する。
【0066】
表示部40は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのディスプレイであり、AR合成部39から入力した合成画像を表示する。なお、背景を透過させるシースルー型のARグラスなど、表示部40として例えば網膜投影型ディスプレイや透明ディスプレイが用いられる受信端末では、AR合成部39でレンダリング画像とカメラ画像との合成を行わずに、表示部40はレンダリング画像だけを表示する場合もある。
【0067】
端末情報送信部34は、受信装置30の位置・視線方向情報をネットワークノード20に送信する。
【0068】
<プログラム>
上記の送信装置10、ネットワークノード20、又は受信装置30として機能させるために、それぞれプログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。コンピュータは、送信装置10、ネットワークノード20、又は受信装置30の機能を実現する処理内容を記述したプログラムを該コンピュータの記憶部に格納しておき、該コンピュータのプロセッサによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができ、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。ここで、プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。プロセッサは、CPU,GPU,DSP,ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などであってもよい。
【0069】
また、このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROMなどの記録媒体であってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介したダウンロードによって提供することもできる。
【0070】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態に記載の構成ブロックについて、複数を1つに組み合わせたり、1つを複数に分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 3次元空間コンテンツ伝送システム
10 送信装置
11 ID決定部
12 伝送フレーム構成部
13 メタデータ生成部
14 パケット構成部
15 パケット送信部
16 オブジェクト提示位置情報生成部
20 ネットワークノード
21 パケットフィルタ部
22 メタデータ再構成部
23 メタデータ解析部
24 パケット構成部
25 パケット送信部
26 静止物データキャッシュ部
27 ビューポート推定部
28 静止物データ送信フラグ管理部
30 受信装置
31 パケットフィルタ部
32 伝送フレーム・メタデータ再構成部
33 メタデータ解析部
34 端末情報送信部
35 センサ
36 カメラ
37 自己位置・視線方向推定部
38 オブジェクトレンダリング部
39 AR合成部
40 表示部
50 撮影・制作システム
60 完成データ記憶部
70 データ変換装置
80 送出データ記憶部
90 伝送路