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特開2024-72726患者情報の分析方法、患者情報分析装置、患者情報分析用プログラム及び記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072726
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】患者情報の分析方法、患者情報分析装置、患者情報分析用プログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/60 20180101AFI20240521BHJP
   G16H 50/50 20180101ALI20240521BHJP
【FI】
G16H10/60
G16H50/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183743
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100130845
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 伸一
(72)【発明者】
【氏名】菱 美里
(72)【発明者】
【氏名】大谷 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】川▲瀬▼ 陽平
(72)【発明者】
【氏名】槌本 裕一
(72)【発明者】
【氏名】安藝 理彦
(72)【発明者】
【氏名】土原 一哉
(72)【発明者】
【氏名】原野 謙一
(72)【発明者】
【氏名】向原 徹
(72)【発明者】
【氏名】仲尾 岳大
(72)【発明者】
【氏名】板垣 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】鍵谷 英明
(72)【発明者】
【氏名】日原 真弘
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA03
5L099AA23
(57)【要約】
【課題】視覚化したデータより研究観点を模索し、適切な分析対象データの選択・分析を容易に行うことが可能となる技術方法を提供すること。
【解決手段】複数の患者の電子カルテデータに基づき、第1の軸に治療の順序を、第2の軸の、第1の軸における治療の順序の起点側に治療方法の別、終点側に治療の結果または途中の状態をダイアグラム表示することと、前記ダイアグラム表示において、治療が共通する複数の患者からなる患者群を1以上選択可能にすることと、前記患者群が選択されたとき、その患者群に係る電子カルテデータを分析することとを含むことを特徴とする。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者情報を分析するためにコンピュータに実装される方法であって、
複数の患者の電子カルテデータに基づき、第1の軸に治療の順序を、第2の軸の、第1の軸における治療の順序の起点側に治療方法の別、終点側に治療の結果または途中の状態をダイアグラム表示することと、
前記ダイアグラム表示において、治療が共通する複数の患者からなる患者群を1以上選択可能にすることと、
前記患者群が選択されたとき、その患者群に係る電子カルテデータを分析することと
を含む患者情報の分析方法。
【請求項2】
前記ダイアグラム表示において、治療が共通する複数の患者からなる患者群のうちの2つが選択されたとき、選択された患者群の電子カルテデータを用いて当該選択された2つの患者群の分類を予測する機械学習モデルを作成することをさらに含む請求項1記載の患者情報の分析方法。
【請求項3】
前記作成された機械学習モデルにより予測された患者群の分類について、その切り分けに寄与する要因を特定することをさらに含む請求項2記載の患者情報の分析方法。
【請求項4】
前記ダイアグラム表示において、治療が共通する複数の患者からなる患者群のうちの2つが選択されたとき、選択された患者群の電子カルテデータの少なくとも1のデータ項目について当該選択された2つの患者群間における有意差を判定することをさらに含む請求項1記載の患者情報の分析方法。
【請求項5】
治療が、薬物療法、外科手術、放射線療法、緩和ケア、および経過観察から成る群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の患者情報の分析方法。
【請求項6】
経過良好患者群と経過不良患者群の2つの患者群が選択される、請求項2に記載の患者情報の分析方法。
【請求項7】
治療の完遂率に影響する要因を同定するための、請求項3に記載の患者情報の分析方法。
【請求項8】
患者情報を分析する患者情報分析装置であって、
複数の患者の電子カルテデータに基づき、第1の軸に治療の順序を、第2の軸の、第1の軸における治療の順序の起点側に治療方法の別、終点側に治療の結果または途中の状態をダイアグラム表示するダイアグラム表示手段と、
前記ダイアグラム表示手段により表示されたダイアグラム表示において、治療が共通する複数の患者からなる患者群を1以上選択可能にする患者選択手段と、
前記患者選択手段により前記患者群が選択されたとき、その患者群に係る電子カルテデータを分析する患者情報分析手段とを有することを特徴とする患者情報分析装置。
【請求項9】
前記ダイアグラム表示手段により表示されたダイアグラム表示において、治療が共通する複数の患者からなる患者群のうちの2つが選択されたとき、選択された患者群の電子カルテデータを用いて当該選択された2つの患者群の分類を予測する機械学習モデルを作成する機械学習モデル作成手段をさらに有することを特徴とする請求項8記載の患者情報分析装置。
【請求項10】
前記機械学習モデル作成手段により作成された機械学習モデルを用いて、前記選択された2つの患者群の切り分けに寄与する要因を分析する寄与要因分析手段をさらに有することを特徴とする請求項9記載の患者情報分析装置。
【請求項11】
前記ダイアグラム表示手段により表示されたダイアグラム表示において、治療が共通する複数の患者からなる患者群のうちの2つが選択されたとき、選択された患者群の電子カルテデータの少なくとも1のデータ項目について当該選択された2つの患者群間における有意差を判定する有意差判定手段をさらに有することを特徴とする請求項8記載の患者情報分析装置。
【請求項12】
請求項8に記載の患者情報分析装置における各手段としてコンピュータを機能させるプログラム。
【請求項13】
請求項9に記載の患者情報分析装置における各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者情報の分析方法、患者情報分析装置、患者情報分析用プログラム及び記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のデジタル技術の進展に伴い、多様なReal World Data(臨床現場で得られる電子カルテなどのデータ、以下「RWD」と称する)が蓄積され、その利活用に対する期待が高まっている。特に、医薬品開発の分野で、RWDの活用が模索されており、海外では希少疾患の承認申請データとして活用された事例も報告されている。
医薬品・療法開発の分野におけるRWDは、電子カルテデータや医療費データ等の日々の医療提供で生成・収集されるデータである。また、より広義には、セルフモニタリングデバイス等から収集されるデータや患者レジストリーデータも含まれ得る。
電子カルテデータは、過去の患者治療のアウトカムを詳細に追跡できるという特徴を持つ。電子カルテデータを利活用する一例として、患者のペイシェントジャーニーを分析することで、医療従事者向けの診療の支援、薬剤や機器の研究開発の支援に繋がることが期待できる。
【0003】
ここでペイシェントジャーニー(Patient Journey)とは、患者が疾患や症状を認識してから、受診や服薬等治療を進めていくプロセスでの行動・思考・感情等を表したものであり、急性期の診療から回復期、慢性期の地域での生活を含み、「病気を抱えた人」として医療機関や地域社会で生きるプロセスを表す言葉として用いられる。
ペイシェントジャーニーによって、患者の受療行動をベースに、医療的、心理的、経済行動学的に納得できる医療サービスを提供することが、製薬企業や医療機関においてコンセンサスとなりつつある。すなわち、患者がたどるプロセスを、発症の前段階から治療まで可視化することで、例えば、どんなときに、どんな理由で最適治療に至っていないかが把握可能になる。具体的には、受診時、治療開始時、退院時といった分岐点で、医師や医療スタッフがどのようなアドバイスや方針を提案するかが検討できるとともに、そこにある意図を細かく分析し、定量データを加えることで、企業として貢献しながら介入すべき機会を探れるようになる。
【0004】
こうしたペイシェントジャーニーの利活用を行う方法・技術として、特許文献1は、類似の患者のための治療経路についての結果をサンキーダイアグラムとして示すことにより、治療経路分析および管理プラットフォームを提供する技術を開示している。
また特許文献2は、バイタルサイン情報等の診療データを入力してパターン分類を行い、それをサンキーダイアグラムに表示して、ユーザ操作によりプロットが選択されたとき、当該プロットに対応する性能指標の算出に用いられた分類処理の結果を表示する技術を開示している。
また非特許文献1では、食道がん患者の臨床的および生存特性の簡便な分析のためのインタラクティブなWebツールとして、バープロット、サンキープロット、ラインプロット、マップ等のグラフが提供される。
また非特許文献2では、縦断的な臨床およびがんゲノミクスおよび分子生物学のデータを視覚化するためのツールとしてヒートマップやサンキーダイアグラムが用いられ、臨床的および分子的特徴のインタラクティブな探索やランキングをサポートしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-042761号公報
【特許文献2】特開2021-039491号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ECCDIA: an interactive web tool for the comprehensive analysis of clinical and survival data of esophageal cancer patients Jingcheng Yang, Jun Shang, Qian Song, Zuyi Yang, Jianing Chen, Ying Yu & Leming Shi
【非特許文献2】OncoThreads: visualization of large-scale longitudinal cancer molecular data Theresa A Harbig, Sabrina Nusrat, Tali Mazor, Qianwen Wang, Alexander Thomson, Hans Bitter, Ethan Cerami, Nils Gehlenborg
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1、2に開示された技術はいずれもネガティブデータ(有害事象、入院等)をもとにペイシェントジャーニーを分析するものであり、カルテ全体の情報を表示・分析するものにはなっていない。
また、非特許文献1、2において提供されるツールも、電子カルテデータのような詳細な診察データを取り扱っておらず、また、視覚化機能と分析機能とを連携して使用するものにはなっていない。
【0008】
すなわち、上記文献を含む従来技術において、ユーザは視覚化したデータより研究観点を模索し、適切な分析対象データの選択・分析を行うことができないという課題があった。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、視覚化したデータより研究観点を模索し、適切な分析対象データの選択・分析を容易に行うことが可能となる技術方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の方法は、患者情報を分析するためにコンピュータに実装される方法であって、複数の患者の電子カルテデータに基づき、第1の軸に治療の順序を、第2の軸の、第1の軸における治療の順序の起点側に初期治療方法の別、終点側に最終治療の状態または途中治療の状態をダイアグラム表示することと、前記ダイアグラム表示において、治療が共通する複数の患者からなる患者群を1以上選択可能にすることと、前記患者群が選択されたとき、その患者群に係る電子カルテデータを分析することとを含む。
【0010】
より具体的には、本開示は、以下の態様を包含する。
[態様1] 患者情報を分析するためにコンピュータに実装される方法であって、
複数の患者の電子カルテデータに基づき、第1の軸に治療の順序を、第2の軸の、第1の軸における治療の順序の起点側に治療方法の別、終点側に治療の結果または途中の状態をダイアグラム表示することと、
前記ダイアグラム表示において、治療が共通する複数の患者からなる患者群を1以上選択可能にすることと、
前記患者群が選択されたとき、その患者群に係る電子カルテデータを分析することと
を含む患者情報の分析方法。
[態様2] 前記ダイアグラム表示において、治療が共通する複数の患者からなる患者群のうちの2つが選択されたとき、選択された患者群の電子カルテデータを用いて当該選択された2つの患者群の分類を予測する機械学習モデルを作成することをさらに含む態様1記載の患者情報の分析方法。
[態様3] 前記作成された機械学習モデルにより予測された患者群の分類について、その切り分けに寄与する要因を特定することをさらに含む態様2記載の患者情報の分析方法。
[態様4] 前記ダイアグラム表示において、治療が共通する複数の患者からなる患者群のうちの2つが選択されたとき、選択された患者群の電子カルテデータの少なくとも1のデータ項目について当該選択された2つの患者群間における有意差を判定することをさらに含む態様1記載の患者情報の分析方法。
[態様5] 患者が、卵巣がんの患者である、態様1乃至4のいずれか1項に記載の患者情報の分析方法。
[態様6] 治療が、薬物療法、外科手術、放射線療法、緩和ケア(best supportive care)、および経過観察から成る群から選択される少なくとも1つを含む、態様1乃至5のいずれか1項に記載の患者情報の分析方法。
[態様7] 経過良好患者群と経過不良患者群の2つの患者群が選択される、態様2乃至4のいずれか1項に記載の患者情報の分析方法。
[態様8] 治療の完遂率に影響する要因を同定するための、態様3に記載の患者情報の分析方法。
[態様9] 患者情報を分析する患者情報分析装置であって、
複数の患者の電子カルテデータに基づき、第1の軸に治療の順序を、第2の軸の、第1の軸における治療の順序の起点側に治療方法の別、終点側に治療の結果または途中の状態をダイアグラム表示するダイアグラム表示手段と、
前記ダイアグラム表示手段により表示されたダイアグラム表示において、治療が共通する複数の患者からなる患者群を1以上選択可能にする患者選択手段と、
前記患者選択手段により前記患者群が選択されたとき、その患者群に係る電子カルテデータを分析する患者情報分析手段とを有することを特徴とする患者情報分析装置。
[態様10] 前記ダイアグラム表示手段により表示されたダイアグラム表示において、治療が共通する複数の患者からなる患者群のうちの2つが選択されたとき、選択された患者群の電子カルテデータを用いて当該選択された2つの患者群の分類を予測する機械学習モデルを作成する機械学習モデル作成手段をさらに有することを特徴とする態様9記載の患者情報分析装置。
[態様11] 前記機械学習モデル作成手段により作成された機械学習モデルを用いて、前記選択された2つの患者群の切り分けに寄与する要因を分析する寄与要因分析手段をさらに有することを特徴とする態様10記載の患者情報分析装置。
[態様12] 前記ダイアグラム表示手段により表示されたダイアグラム表示において、治療が共通する複数の患者からなる患者群のうちの2つが選択されたとき、選択された患者群の電子カルテデータの少なくとも1のデータ項目について当該選択された2つの患者群間における有意差を判定する有意差判定手段をさらに有することを特徴とする態様9記載の患者情報分析装置。
[態様13] 態様9乃至12のいずれか1項に記載の患者情報分析装置における各手段としてコンピュータを機能させるプログラム。
[態様14] 態様9乃至12のいずれか1項の記載の患者情報分析装置における各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザは、視覚化機能及び分析機能を連携して、視覚化したデータより模索された研究観点より、適切な分析対象データの選択・分析を容易に行うことが可能になる。
より具体的には、治療推移のペイシェントジャーニーを可視化し、患者群を探索的に比較検証・統計分析できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の方法に係るダイアグラム表示の一例である。
図2】2つの治療パスがユーザにより指示され、他に対して識別可能に表されている状態の例を示す図である。
図3】選択された患者群を分析した結果を表示する画面例を表した図である。
図4】患者絞り込みの工程を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る患者情報分析装置の概略機能構成を示す機能ブロック図である。
図6】本発明の実施形態に係る患者情報分析装置における判断・処理の流れを示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態に係る患者情報分析装置を実現し得るコンピュータの概略構成を示す図である。
図8】要因分析結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施に係る患者情報の分析方法について説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る患者情報の分析方法は、複数の患者の電子カルテデータに基づき、第1の軸に治療の順序を、第2の軸の、第1の軸における治療の順序の起点側に治療方法の別、終点側に治療の結果または途中の状態をダイアグラム表示し、前記ダイアグラム表示において、治療が共通する複数の患者からなる患者群を1以上選択可能にし、前記患者群が選択されたとき、その患者群に係る電子カルテデータを分析するものである。
【0014】
図1に上記ダイアグラム表示の一例を示すがこれに限定はされず、工程の流れの順番と時間の流れを表現できる、平行座標プロット(Prallel coordinate plot)、鶏頭図(Polar Area)、積上げ棒グラフ(Stacked bar chart)などのダイアグラム表示を採用してもよい。
図1の例によるダイアグラム表示は、工程の流れの順番とその流量を表現できる、いわゆるサンキーダイアグラム(Sankey diagram)と称されるものである。図1は、例示として、卵巣がんにおける薬物療法情報を対象としたものであって、横軸101方向に、その疾患(卵巣がん)における薬物療法の順序または回数を表すサイクル数103、縦軸102方向に薬物療法のレジメン名称の別104を表示している。なお、サンキーダイアグラムの使用は、あくまで例示であって、状況に応じて、フローチャート等の任意の表示形式が採用されうる。
【0015】
また、ノード105は療法の各サイクルを示し、ノードを横断するリンク106は患者の時系列による臨床データの移り変わり(「治療歴」乃至は「治療パス」)を示す。また、それぞれのリンクの太さの変化は患者数の変化を表している。
なお、疾患「卵巣がん」、治療方法「薬物療法」、データ遷移「治療歴」はあくまで例であり、これ以外のがん「大腸がん」、「肺がん」、「胃がん」など、これ以外の疾患「糖尿病」、「高血圧性疾患」、「心筋梗塞」など、治療方法「外科手術」、「放射線療法」、「免疫療法」、「食事療法」、「緩和ケア」など、データ遷移「臨床検査値」、「腫瘍径」、「がんのステージ分類」、「パフォーマンスステータス 」、「バイタルデータ」なども対象とすることができる。
【0016】
本発明の方法において、ユーザにより1以上のリンクがマウスクリック等のポインタ操作により指示されると、そのリンクに対応した治療歴を共通に有する患者群がデータ選択される。そして、その患者群に対応するリンク(ポイント指示されたリンク)が、他のリンクと、例えば色を異ならせる等、異なる表示がされ、ダイアグラム表示の中で他の部分に対して特に識別可能に表される。
【0017】
図2は2つの治療パス(に対応するリンク)がユーザにより指示され、他に対して識別可能に表されている状態の例を示す図である。すなわち、図2の例では、経過良好の患者群をA群、経過不良のB群として、それぞれが他と識別可能に表示されている。
【0018】
また、図3は、図2においてリンクが選択された状態で、メニュー項目選択等のユーザ操作により遷移した状態の画面表示例を表した図である。
図3の例において、図表301は選択された患者群のサイクル1直前の臨床データにおける各項目の最大値、最小値、平均値といった統計量を表示しているものである。また、ヒストグラム302は、図表301のセルの1がユーザのマウスクリック等のポイント操作により指示選択された際に、その選択された臨床データのヒストグラムを表示するものであり、図の例では、患者群の検査項目ごとの患者数が表示されている。
【0019】
このように、本発明の第1の実施形態において、ユーザは、視覚化したデータ(本事例におけるサンキーダイアグラム)より、模索された観点(本事例における経過状況の良否)より、適切な分析対象データを選択し、選択された対象データの分析(本事例における検査項目ごとの患者数)を容易に行うことが可能になる。
【0020】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る患者情報の分析方法は、前記ダイアグラム表示において、治療が共通する複数の患者からなる患者群のうちの2つが選択されたとき、選択された患者群の電子カルテデータを用いて当該選択された2つの患者群の分類を予測する機械学習モデルを作成するものである。
【0021】
電子カルテでは、白血球やアルブミン等の血液検査データや心拍数等の日々のバイタルデータ、身長や体重等のプロフィールデータといった様々な臨床データが管理されている。本方法では、これらの臨床データを用いて2つの患者群の分類を予測する機械学習モデルを作成する。
ここで「機械学習(machine learning)」とは、経験からの学習により自動で改善するアルゴリズムを言い、「訓練データ」乃至「学習データ」と呼ばれるデータを使って学習し、その学習結果を用いて何らかのルールなどの分類を行うものである。
例えば、ロジスティック回帰分析と呼ばれる機械学習によれば、いくつかの臨床データを、ある結果が起こる確率にもとづき分類することができる。
本方法によれば、患者群を、電子カルテデータにより分類することが可能となる。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る患者情報の分析方法は、前記作成された機械学習モデルにより予測された患者群の分類について、その切り分けに寄与する要因を特定するものである。
本方法では、電子カルテで管理されている、白血球やアルブミン等の血液検査データや心拍数等の日々のバイタルデータ、身長や体重等のプロフィールデータ等の臨床データを用いて作成された機械学習モデルにより分類された2つの患者群を切り分ける要因を探索的に分析する。
具体的には、機械学習の2値分類モデルであるロジスティック回帰を用いて要因分析を行うことができるが、これに限定はされず、決定木、ニューラルネットワーク、アンサンブル学習などのアルゴリズムによる分類、訓練データを必要としないニューラルネットワーク、k-meansクラスタリングなどのクラスタリング、および他の機械学習手法を採用してもよい。
【0022】
また、「2値分類モデル」とは、治療結果が良好か不良か、のように、1または0、ポジティブまたはネガティブ等、2つの値だけを取るような分類モデルである。
また、「ロジスティック回帰」とは、ある事象(例えば、製品故障の発生率や病状が改善する確率等)の発生確率を予測する統計学的手法である。
【0023】
「予測」とは、どういう原因があればどのような結果になるかという因果関係を明確化するものであり、原因側のデータを「説明変数」または「独立変数」といい、結果側の変数を「目的変数」または「従属変数」という。
本方法における目的変数はユーザが選択した2患者群であり、電子カルテデータを説明変数の候補とする。様々な説明変数の組合せで分類モデルを作成し、最良モデルを探索する。そして最良モデルに入力された説明変数の組合せを、影響があった要因とする。
【0024】
探索方法として変数増加法を採用する。すなわち、変数0個から1つずつ変数を増やし、各ステップで最良のモデルとなった変数を選んでいく。モデルの評価には、情報量規準AIC(Akaike information criterion:赤池情報量規準)と、交差検証(K-hold Cross-Validation)による分類モデルの予測精度を用いる。ここでAICは、モデルの当てはまり度合いを評価する指標であり、評価値が小さいほど良いモデルとされる。AICの評価値が前ステップよりも大きくなった場合、それ以上よい変数が見つからないと判断し、探索を終える。さらに、各ステップでAICによって、選択された変数の組合せで交差検証を実施し、モデルの予測精度(Accuracy)で選択された変数を評価する。AICは単一のモデルで評価するのに対し、交差検証(K-hold Cross-Validation)は、K個のモデルで汎化性能を評価する。モデルの予測精度が前ステップよりも悪化した場合は、過学習が起きたと判断し、探索を打ち切る。
【0025】
AICによる探索で選択された変数と相関のある変数は、後のステップで選ばれにくくなるという性質がある。そのため、相関の高い変数であるにもかかわらず、AIC評価上の性質上、選ばれなくなる、ということを防ぐため、要因として選択された変数と相関の高い上位3つの変数も加えることとしている。
【0026】
本方法の有効性を、国立がん研究センターの倫理審査委員会の承認を受けた2013年5月1日~2020年11月1日までの国立がん研究センター東病院の卵巣がん患者の診療データを、患者個人を特定できないように仮名加工後に用いて検証した。
ただし、上記のデータには、病名が卵巣がん疑いという診察記録や、セカンドオピニオンの目的で来院したため治療を受けなかった(治療記録がない)患者のデータも含まれていた。そこで図4の工程に沿って、患者の絞り込みを実施した。
【0027】
すなわち、401で、卵巣がんに罹患した患者に絞り込むため、病名のICDコード:C56、C57、C570、C578、C579、C482が格納された患者に限定した。ここで、ICDコードとは、傷害・死因の統計を国際比較するためWHO(世界保健機関)が勧告する国際疾病分類コードである。
402で、卵巣がんの疑いを持つ患者を除外するため、罹患確定フラグに「確定あり」が格納された患者に限定した。
403で、通常の診療ではない治験患者を除外した。
404で、治療歴の可視化を実施するために、治療記録を持つ患者に限定した。具体的には、手術記録または、レジメン(薬剤の用量や用法・治療期間を明記した時系列的な治療計画、乃至は、薬物療法の種別)に記録されたパス名に「卵巣」または、「腹膜」という単語を含む患者を抽出した。
【0028】
これらの4工程で、本検証に利用する患者数を112名に絞り込んだ。
そして、上記で絞り込んだ患者の卵巣がん治療履歴を視覚化した。
【0029】
卵巣がんの薬物療法にはパクリタキセルとカルボプラチンを用いるdose-dense carboplatin + paclitaxel(以下、「dd-TC療法」と称する)等複数のレジメンがあり、また治療経過で別のレジメンに切り替えることも見られた。各レジメンの投与日、休薬日を組み合わせた周期を1サイクルとし、このサイクルごとに治療推移のPatient Journeyを本発明の方法に係るダイアグラムにより層別化した。
【0030】
今回、卵巣がんdd-Weekly-TC療法は、6サイクルまでの連続治療を標準治療とみなしており、この患者群は経過良好と推定される。一方、5サイクル以下で中断した患者は、治療中に卵巣がんが増悪したか、副作用等によって治療を中断した経過不良の患者群と推定される。この経過良好/経過不良の患者群について臨床データを統計的に比較分析することで、経過不良もしくは経過良好となる何かしらの臨床的な要因を特定できると考えられる。
そこで、dd-TC療法において経過良好患者(経過良好で終えた患者)群と経過不良患者(経過不良で終えた患者)群という2つの患者群をそれぞれ選択し、機械学習の分類モデルを用いた要因分析のためのデータとした。
【0031】
本検証での対象集団は、dd-TC療法を1回以上受けた患者49名である。その中で、経過良好の定義は、dd-TC療法を開始後6サイクル連続で実施し、それ以外の治療を実施していない者とした。また経過不良の定義は、dd-TC療法を開始後5サイクル以下で中断、または7サイクル以上連続で実施した者とした。この定義により、経過良好群は25名、経過不良群は24名と、目的変数を設定する。なお、dd-TC療法適用前の治療歴は、目的変数の設定において考慮しないこととした。
説明変数の候補としては、目的変数の患者群の電子カルテ内に記録された検査値・バイタル値・プロフィールのデータのうち1回でも記録された341種を対象とした。データは、dd-TC治療開始直前の値を使用し、治療開始前の検査値・バイタル値・プロフィールから治療後の経過を予測させる問題とした。
【0032】
まず、dd-TC治療の患者が受けた検査値の中で、欠損値が0%であり、分析対象の49名全員が検査を受けた変数39種類を説明変数の候補として要因分析を実施した。その結果、血清カリウム(K)、血清尿素窒素(UN)の変数が、経過良好/経過不良との相関が高い変数として導かれた。
要因分析によって選択された変数(K、UN)と、その変数と相関の高い変数及び相関係数を図8に示す。
【0033】
次に、検査値の中で欠損が25%未満の65種類を用いたデータドリブンな要因分析を実施した。上位2つの変数は、KとUNとなり、母集団49名全員が検査を受けた変数と一致していた。
すなわち、治療開始直前の腎不全や副腎不全の指標に関連するKとUNとが、治療の経過良好/不良を左右する要因であることの推定が得られた。
【0034】
このように本発明の方法によれば、医師等のユーザは、何回目にどの治療方法に切り替えた患者がどのくらい存在するかというようなことが視覚的に把握でき、どのような治療歴をもつ患者群についてどのような視点で探索できるかを容易に調査することが可能となる。また、要因分析より特定された変数について、その2患者群間における分布や統計的な違いを容易に確認できる。
さらに、インタラクティブな分析対象患者群の選択機能と統計量の算出やヒストグラム表示といった統計分析機能とを連携して利用することにより、データ分析の煩雑さが解消する。
また、医療関係者側のみならず患者側からの視点としては、カルテデータに基づきペイシェントジャーニーを可視化することができれば、患者(がん疑いの場合を含む)自身が、自分がどのような治療によりどのような経過を辿るかについて容易に理解でき、自らの希望をより考慮した治療を選択することが可能となる。
【0035】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る患者情報の分析方法は、前記ダイアグラム表示において、治療が共通する複数の患者からなる患者群のうちの2つが選択されたとき、選択された患者群の電子カルテデータの少なくとも1のデータ項目について当該選択された2つの患者群間における有意差を判定するものである。
ここで「有意」とは「仮説」と「実際に観察された結果」との差が誤差に留まらないことを意味する。すなわち、1のデータ項目(例えば、K:血清カリウム)が、例えば経過良好の患者群と経過不良の患者群との間で有意に差があると判定された場合、そのデータ項目が、治療の経過良好/不良を左右する要因であることの推定が得られる。
【0036】
本発明の方法によれば、医師等のユーザは、2つの分析対象患者群と1以上のデータ項目とをインタラクティブに選択し、選択されたデータ項目についてその2患者群間における統計的な違いを容易に確認することが可能となる。
【0037】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る患者情報の分析方法は、特に卵巣がんの患者に適用されることを特徴とするものである。
卵巣がんは卵巣に発生する悪性腫瘍である。卵巣に発生する腫瘍(卵巣腫瘍)には、「悪性腫瘍」であるがんのほかに、「良性腫瘍」や、悪性と良性の中間的な性質をもつ「境界悪性腫瘍」がある。
【0038】
治療法は、がんの進行の程度を示す病期(ステージ)やがんの性質、患者の体の状態等に基づいて検討される。卵巣は骨盤内の深いところにあるため、手術により切除した卵巣を調べないと正確ながんの広がりを評価することが難しく、卵巣がんの病期(ステージ)は、一般に手術の後に決まる。しかし、卵巣を切除すると妊よう性の温存(妊娠するための力を保つこと)が困難となるため、手術がためらわれる場合も多い。
【0039】
そこで、ペイシェントジャーニーを可視化することにより、治療前または治療中のカルテデータから将来の経過を統計的に推定できれば、最適な治療を選択することができ、特に将来子供を持つことを希望している患者(がん疑いの場合を含む)にとって大きな福音となる。
すなわち、本発明の方法は、卵巣がんの患者に対し格別に有利な効果を奏する。
【0040】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態に係る患者情報の分析方法は、治療が、薬物療法、外科手術、放射線療法、緩和ケア、および経過観察から成る群から選択される少なくとも1つを含むことを特徴とするものである。
例えば、がんの治療には薬物療法(化学療法)、外科手術、放射線療法(放射線治療)があり、それぞれの治療法の特徴を生かしながら、単独あるいは組み合わせた治療が行なわれる。また、本明細書においては、緩和ケア(best supportive care)および経過観察も治療の1項目として扱う。なお、がんは単なる例示に過ぎず、本発明の対象となる疾患は、がんに限定されるものではない。
【0041】
例えば、がんの治療の場合、どの治療を選択するかについてはがんの病期(ステージ)により決定されうる。したがって、病期(ステージ)については随時推定が行われることが望ましい。
すなわち、本発明の方法は、薬物療法、外科手術、放射線療法、緩和ケア(best supportive care)、および経過観察を単独あるいは組み合わせた治療を行う場合に、格別な効果を奏する。
【0042】
(第7の実施形態)
本発明の第7の実施形態に係る患者情報の分析方法は、経過良好患者群と経過不良患者群の2つの患者群が選択されることを特徴とするものである。
上述したように治療の経過良好/不良を左右する要因を推定するためには、経過良好患者群と経過不良患者群の2つの患者群について、特定のデータ項目の有意差を判定することが必要である。
すなわち、本発明の方法は、経過良好患者群と経過不良患者群の2つの患者群が選択される場合に、格別な効果を奏する。
【0043】
(第8の実施形態)
本発明の第8の実施形態に係る患者情報の分析方法は、治療の完遂率に影響する要因を同定するために適用されることを特徴とするものである。
医学の現場では治療の完遂率を向上するための努力が不断になされており、完遂率に影響する要因を同定することがきわめて重要である。
すなわち、本発明の方法は、治療の完遂率に影響する要因を同定するために適用される場合に、格別な効果を奏する。
【0044】
(第9の実施形態)
本発明の第9の実施形態として、複数の患者の電子カルテデータに基づき、第1の軸に治療の順序を、第2の軸の、第1の軸における治療の順序の起点側に治療方法の別、終点側に治療の結果または途中の状態をダイアグラム表示するダイアグラム表示手段と、前記ダイアグラム表示手段により表示されたダイアグラム表示において、治療が共通する複数の患者からなる患者群を1以上選択可能にする患者選択手段と、前記患者選択手段により前記患者群が選択されたとき、その患者群に係る電子カルテデータを分析する患者情報分析手段とを有することを特徴とする患者情報分析装置について説明する。
【0045】
図5は本発明の第9実施形態に係る患者情報分析装置の概略機能構成を示す機能ブロック図である。
患者情報分析装置500は、各種データの入力及び分析結果の出力を行う入出力手段501、各種データを格納するデータベース502、ダイアグラム等の表示を行う表示手段503、ダイアグラム等の表示に対して指示・選択の操作を行うGUI手段504、各種分析・演算・情報処理を行う情報処理手段505と、これらを相互に連絡する通信手段506より構成される。
【0046】
入出力手段501、表示手段503、GUI手段504は、例えばタッチディスプレイを備えたタブレットPCである。
すなわち、タブレットPC上で、カルテデータの入力、ダイアログ表示、表示されたダイアログへの操作・指示・選択等を一体的に行うことができる。
なお、上記の手段は、必ずしもタブレットPCである必要はなく、カルテデータ等の入力や参照、分析結果の提示、表示に対する操作・指示ができる構成を備えていれば、パソコン(PC)やスマートフォン等でもよい。
【0047】
データベース502は、例えばHDD(ハードディスクドライブ)等の記憶装置により実現されるものであり、カルテデータや実施日時、個人ID等の各種データを、相互に関連付けた形式で格納する。なお、個人が特定可能なデータは、分析処理や分析結果の提示の際には、個人が特定できない形式に置き換えられることがあり得る。
【0048】
情報処理手段505は、本発明の第1から第7実施形態の患者情報分析方法に対応する情報処理を、コンピュータの中央演算処理ユニット(以下、「CPU」と称する)がプログラムコードを実行することにより実現する演算機能モジュールである。
通信手段506は例えばコンピュータの内部バスやインターネット等の外部ネットワーク、あるいは、内部バスと外部ネットワークの両方によるものであり、本発明の患者情報分析装置の各機能モジュールを連絡してデータ送受信を行う。
【0049】
図6は本発明の第9実施形態に係る患者情報分析装置において、複数の患者のカルテデータに基づき、第1の軸に治療の順序を、第2の軸の、第1の軸における治療の順序の起点側に治療方法の別、終点側に治療の結果または途中の状態をダイアグラム表示し、表示されたダイアグラム表示においてユーザによる患者群の選択を受け付け、選択された患者群に係る電子カルテデータを分析し、その分析結果を表示するまでの、患者情報分析装置のCPUが行う判断・処理の流れを示すフローチャートである。
【0050】
本発明の実施に係る患者情報分析装置は、まず、入出力手段501(の表示部)のユーザーインターフェース(以下、「UI」という)を表示する(S601)。ユーザによりUIに対して操作がされ、データベースを指定すると(S602でYES)、本発明の患者情報分析装置はそのデータベースよりダイアグラムを作成し(S603)、入出力手段601(の表示部)に表示する(S604)。ユーザにより、選択状態でないリンクがポインタ操作により指示されると(S605でYES)、そのリンクに対応した患者群をデータ選択し(S606)。その患者群に対応するリンク(ポイント指示されたリンク)を、それまでと異なる色で着色して表示する(S607)。また、ユーザにより、選択状態であったリンクがポインタ操作により指示されると(S608でYES)、そのリンクに対応した患者群をデータ選択を解除し(S609)、その患者群に対応するリンク(ポイント指示されたリンク)を、表示当初と同様の色に戻す(S610)。
【0051】
1以上のリンクが選択された状態で、ユーザによりメニューの項目「分析」が指示されると(S611でYES)、選択されている患者群のデータ分析を実施し(S612)、分析結果を表示する(S613)。ユーザによりメニューの項目「終了」が指示されると(S614でYES)、ダイアグラム及び分析結果を非表示にし(S615)、本フローの処理を終了する。
【0052】
図7は、本発明の第2実施形態に係る認知機能変化予測装置を実現し得るコンピュータの概略構成を示す図である。
図7において、700はコンピュータであり、制御部701、記憶部702、周辺機器I/F部703、入力部704、表示部705、通信部706を備え、これらがバス710により接続される。なお、この構成は一例であり、適宜、様々な構成を採ることができる。
【0053】
制御部701は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。CPUは、記憶部702、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス710を介して接続された各装置を駆動制御し、コンピュータが行う処理を実現する。ROMは、不揮発性メモリであり、コンピュータ700のブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を保持している。RAMは、揮発性メモリであり、記憶部702、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部701が各種処理を行う際に使用するワークエリアを備える。
記憶部702は、例えばHDD(ハードディスクドライブ)であり、制御部701が実行するプログラム、その他各種データを格納する。
【0054】
周辺機器I/F(インターフェース)部703は、コンピュータ700と周辺機器とを接続させるためのポートである。周辺機器I/F部703は、USBやIEEE1394やRS-232C等で構成される。なお、周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。
入力部704は、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有し、コンピュータ700に対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行う。
表示部705は、液晶パネル等のディスプレイ装置に映像・画像等の表示を行うための論理回路乃至デバイスドライバーである。
【0055】
通信部706は、通信制御装置、通信ポート等を有し、ネットワークとの通信を媒介する有線または無線の通信インターフェースである。
バス710は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する通信経路である。
【0056】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した実施形態の機能を実現するソフトウエア(プログラム)を、ネットワークまたは各種記憶媒体を介してシステムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理によっても実現され得る。
したがって、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、前記コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明の実施を構成するものである。つまり、本発明には、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタープリターにより実行されるプログラム、WEBブラウザー等のアプリケーションプログラムにより実行されるスクリプトやマクロ、API(Application Programming Interface)等の形態であってもよい。また、「マッシュアップ(Mashup)」のようなWEBプログラミングの技術等により、他のWEBサービス(例えばSNS(Social Networking Service))の一部として組み込まれて実施されるものであってもよい。
【0057】
また、本発明は、かならずしも単一に統合されたハードウエア乃至ソフトウエアより構成されている必要はなく、情報端末やサーバー等の複数のハードウエアにそれぞれソフトウエアモジュールが組み込まれ、これらが協働して実現するようなものであってもよい。
また、本発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。すなわち、例示による説明や添付の図面により本発明が限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の患者情報分析装置、患者情報分析用プログラムは、医療従者向けとして電子カルテ装置に、患者向けにはタブレット端末装置に利用できる。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8