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特開2024-72775トナー、トナーセット、像転写シート、トナー収容ユニット、画像形成装置、及び画像形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072775
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】トナー、トナーセット、像転写シート、トナー収容ユニット、画像形成装置、及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20240521BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20240521BHJP
   G03G 7/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G03G9/08
G03G9/087 331
G03G7/00 Z
G03G9/087
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134691
(22)【出願日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2022183615
(32)【優先日】2022-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】澤田 豊志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一己
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 克宣
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 元司
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA13
2H500CA06
2H500CA14
2H500EA12A
2H500EA12B
2H500EA14A
2H500EA14B
2H500EA42B
2H500EA52A
2H500EA58B
2H500EA61A
2H500EA61B
(57)【要約】
【課題】従来のトナーでは定着できない布等の可撓性のある媒体に十分に定着し、かつ十分な可撓性を有するトナーを提供する。
【解決手段】軟化温度Tsが50℃未満であり、かつ、接線法ガラス転移温度Tg2ndが0℃未満であるトナー。
【選択図】なし


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟化温度Tsが50℃未満であり、かつ、接線法ガラス転移温度Tg2ndが0℃未満であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
断面のSEM像において海島構造を有し、前記海島構造において、アスペクト比が2以上、面積が0.1μm以上のドメインが、100μmあたり平均3個以上存在することを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記トナーの定着画像の垂直断面SEM像において、前記定着画像の垂直断面SEM像は海島構造を有し、
前記定着画像の垂直断面SEM像における海島構造が縞状の構造を有するか、または、前記定着画像の垂直断面SEM像の海島構造におけるドメインが糸状である、請求項2に記載のトナー。
【請求項4】
前記トナーは、結着樹脂として少なくともポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂を含有する、請求項1または2に記載のトナー。
【請求項5】
前記ドメインはポリウレタン樹脂を含有する、請求項2または3に記載のトナー。
【請求項6】
前記ポリウレタン樹脂の軟化温度Tsおよび接線法ガラス転移温度Tg2ndがともに45℃以下であり、
前記ポリエステル樹脂の軟化温度Tsおよび接線法ガラス転移温度Tg2ndがともに60℃以上であり、かつ
前記ポリウレタン樹脂の含有量は、前記結着樹脂および離型剤の合計質量に対して、5質量%以上40質量%以下である、請求項4に記載のトナー。
【請求項7】
前記トナーの体積平均粒径は10μm以上20μm以下である、請求項1または2に記載のトナー。
【請求項8】
結着樹脂及び着色剤を含むカラートナーと、請求項1または2に記載のトナーと、を有することを特徴とするトナーセット。
【請求項9】
剥離用支持体と、
前記剥離用支持体上に請求項1または2に記載のトナーによる像を有することを特徴とする像転写シート。
【請求項10】
請求項1または2に記載のトナーを収容することを特徴とするトナー収容ユニット。
【請求項11】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体に静電潜像を形成させる静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を請求項1または2に記載のトナーを含む現像剤で現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記静電潜像担持体に形成された前記トナー像を、剥離用支持体上または表面粗さが1μm以上の可撓性記録媒体上に転写する転写手段と、
前記剥離用支持体上または前記可撓性記録媒体上に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
静電潜像担持体に静電潜像を形成させる静電潜像形成工程と、
前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を請求項1または2に記載のトナーを含む現像剤で現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記静電潜像担持体に形成された前記トナー像を、剥離用支持体上または表面粗さが1μm以上の可撓性記録媒体上に転写する転写工程と、
前記剥離用支持体上または前記可撓性記録媒体上に転写された前記トナー像を定着する定着工程と、を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項13】
前記トナー像を前記剥離用支持体または前記可撓性記録媒体に最も近い側に形成する、請求項12に記載の画像形成方法。
【請求項14】
前記可撓性記録媒体を繊維からなる布とする、請求項12に記載の画像形成方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー、トナーセット、像転写シート、トナー収容ユニット、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電潜像を現像剤により現像して可視画像を形成する電子写真方式は、光導電性物質を含む静電潜像担持体上に静電潜像を形成し、該静電潜像をトナーを含む現像剤で現像してトナー画像とし、紙等の転写材にトナー画像を転写した後、加熱及び加圧により定着して定着画像を形成するものである。
【0003】
電子写真方式によりフルカラー画像を形成するには、3色プロセスカラーであるシアン、マゼンタ、イエロートナーに、ブラックトナーを組み合わせたトナーセットを用いることが一般的である。
【0004】
近年、電子写真方式のカラー画像形成装置が広く普及するに従い、その印刷物の用途も多種多様に広がってきている。特にオーダーメイドデザインの一般消費財分野などでは、紙媒体への印刷を目的とした従来の電子写真用トナーでは印刷できない(定着できない)材料への電子写真法による印刷へのニーズが高まっている。具体的にはスポーツチームのユニホーム、シューズ、及びバッグ等の布生地媒体への印刷ニーズが高まっている。
【0005】
特許文献1には、粘着剤を用いずに白地に画像を印刷対象物に熱溶融させて接着させることができるとともに、粉砕機にダメージを与えることがない熱転写プリントシート用粉砕トナーを用いて得た熱転写プリントシートが開示されている。
【0006】
特許文献2には、ニップ部における過昇温の発生を抑制し、ホットオフセット等の問題が生じず良好な画像を形成することができ、また、折り目定着性及び耐ブロッキング性を向上させ、低温定着化による更なる定着プロセスの省電力化を図ることのできる画像形成方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
布生地媒体への定着画像の形成に用いられるトナーには、凹凸の多い布繊維に十分に定着すること、定着したトナー層が適度な可撓性をもって、布の変形にトナー層の変形が追従できることなど、従来の紙媒体定着用トナーにない特性が求められるが、布生地のような可撓性のある繊維からなる媒体への定着性に優れ、かつ可撓性に優れたトナーはいまだ見出されていない。
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、本発明の一実施の形態は、従来のトナーでは定着が容易でない布等の可撓性のある繊維からなる媒体に十分に定着し、かつ十分な可撓性を有するトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一実施の形態のトナーは、軟化温度Tsが50℃未満であり、かつ、接線法ガラス転移温度Tg2ndが0℃未満のトナーを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来のトナーでは定着できない布等の可撓性のある繊維からなる媒体に十分に定着し、かつ十分な可撓性を有するトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例における要部構成を示す概略図である。
図3】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例における要部構成を示す概略図である。
図4】本発明の一実施形態に係るトナーであるトナー1のトナー成分溶融混錬物粗砕品の平均的な断面SEM像である。
図5】本発明の一実施形態に係るトナーの一例を高架式フローテスターを用いて測定するときのフローカーブの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般的に、布は可撓性を有し、繊維からなるものが多いが、そのような可撓性のある繊維媒体にトナーによって像を印刷する場合、凹凸の多い布繊維等に十分に定着すること、定着したトナー層が適度な可撓性を有し、布等の凹凸又は変形にトナー層の変形が追従できること等、従来の紙媒体用トナーにはない特性が求められる。
【0013】
そこで本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、所定の軟化温度Tsおよび接線法ガラス転移温度Tg2ndのトナーであれば、トナーの布媒体への定着性が顕著に高まるとともに、定着トナー層に適度な可撓性が付与されることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明は、
軟化温度Tsが50℃未満であり、かつ、接線法ガラス転移温度Tg2ndが0℃未満のトナーを提供する。
【0015】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0016】
(トナー)
本発明のトナーは、軟化温度Tsが50℃未満であり、かつ、接線法ガラス転移温度Tg2ndが0℃未満のトナーである。
前記トナーの軟化温度Tsが50℃以上だと、定着後のトナー画像が割れ易くなる。接線法ガラス転移温度Tg2ndが0℃以上だと、常温でのゴム弾性に劣り、可撓性媒体に形成された画像の伸縮性が劣り着用時、洗濯時の耐久性が劣る。
また、本発明のトナーは、トナー断面のSEM像において海島構造を有し、前記海島構造において、アスペクト比が2以上、面積が0.1μm以上のドメインが、100μmあたり平均3個以上存在するトナーであることが好ましい。
前記海島構造は、トナーに含まれる一の成分の連続相を「海(以下、マトリックスと称することがある)」と表現すると、「海」中にその他の成分が「島(以下、ドメインと称することがある)」状になる構造を意味する。
【0017】
本発明のトナーの断面における海島構造において、アスペクト比が2以上、面積が0.1μm以上のドメインは、トナー断面100μmあたり平均3個以上存在することが好ましく、平均5個以上存在することがより好ましい。前記トナー断面において、アスペクト比が2以上、面積が0.1μm以上のドメインが、トナー断面100μmあたり平均3個以上であると、定着後のトナー画像が割れにくくなる。
【0018】
また、前記トナーの定着画像の垂直断面SEM像は海島構造を有することが好ましく、前記定着画像の垂直断面SEM像における海島構造が縞状の構造を有するか、または、前記定着画像の垂直断面SEM像おける海島構造のドメインが糸状であることが好ましい。トナーが剥離用支持体上または記録媒体上に定着されることで、トナー粒子がつぶれてその形状がより扁平になるため、トナー粒子内部のドメインもつぶれ、そのトナー断面のドメインの形状もより扁平になり、糸状の形態になり得る。そのドメインがさらに扁平状の形態になると、そのトナー断面のドメインの形状もさらに扁平になり、海島構造におけるドメイン部とマトリックス部が重なっているようにみえる層状の構造を形成し得るため、その層状構造がある部分は縞状に見える。
【0019】
なお、本明細書等において「糸状」とは、真円形を除く等方的でない異方性の形状を示し、具体的には、細い針状または糸状の形態であることを意味する。
本明細書等において「ドメインが糸状」とは、トナーの定着画像の垂直断面において、該ドメインの最長辺の長さが0.1μm以上、最長辺と最短辺の長さのアスペクト比が2以上、面積が0.1μm以上の状態であるドメインの形状のことをいう。
また、本明細書等において「海島構造が縞状の構造を有する」とは、トナーの定着画像の垂直断面における海島構造が、そのドメイン部とマトリックス部が層状に重なった層状構造を形成して縞状の構造を含むことを意味する。
【0020】
本発明のトナーは結着樹脂(定着用樹脂)を含有してもよく、必要に応じて、離型剤、着色剤、帯電制御剤、外添剤、現像剤、及びその他の成分(流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料)を含んでもよい。
【0021】
トナーが、布生地のような可撓性のある媒体への定着性を有し、そのトナーの定着画像が可撓性を有するためには、トナー断面が上記のようなドメインを有する海島構造を有することが好ましい。また、本発明のトナーの軟化温度Tsは50℃未満であり、かつ、接線法ガラス転移温度Tg2ndが0℃未満である。上記のようなトナー構造は、本発明のトナーの軟化温度およびガラス転移温度に関係し得る。トナーのガラス転移温度が低く、トナー中の前記海島構造におけるドメインとマトリックスが上記のような状態で存在すると、トナーは耐熱保存性を有し、常温でゴム弾性を示し、可撓性媒体に形成された画像の引っ張りワレが抑制される。
【0022】
<結着樹脂>
本発明において、トナー材料として用いられる結着樹脂(定着用樹脂)は、従来公知の樹脂を使用することができる。例えば、スチレン、ポリ-α-スチルスチレン、スチレン-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-塩化ビニル共重合体、スチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、石油樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ケトン樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラート樹脂などが挙げられる。また、これら樹脂の製造方法も特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などを使用できる。
【0023】
本発明のトナーにおいては、結着樹脂として少なくともポリウレタン樹脂を含有することが好ましい。ポリウレタン樹脂は、一般的に抗張力(引張り強度)、耐摩耗性、弾性、及び耐油性に優れるため、本発明に適した結着樹脂である。ポリウレタン樹脂の組成面では、1,4-ブタンジオール(1,6-ヘキサンジオール)、アジピン酸、ジフェニルメタンジイソシアネートなどから構成されるポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。また、用いられるポリウレタン樹脂の具体的な商品名としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホットメルトパウダーECOFREEN POWDER(ECOFREEN社製)、T8175N(ディーアイシーコベストロポリマー社製)、P22MBRNAT(日本ミラクトラン社製)などが挙げられる。
【0024】
また、本発明においては結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有することが好ましい。ポリエステル樹脂は一般的に他の樹脂に比べ、耐熱保存性を維持したまま低温定着が可能であるため本発明には適した結着樹脂である。
【0025】
本発明で用いられるポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸との縮重合によって得られることが好ましい。使用されるアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコール、ジエングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、1、4-ビス(ヒドロキシメタ)シクロヘキサン、およびビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノール類、その他二価のアルコール単量体、三価以上の多価アルコール単量体などが挙げられる。
【0026】
また、カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、マロン酸等の二価の有機酸単量体、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸等の三価以上の多価カルボン酸単量体を挙げることができる。
【0027】
前記ポリウレタン樹脂の軟化温度Ts及び接線法ガラス転移温度Tg2ndはともに45℃以下であることが好ましい。前記ポリウレタン樹脂の軟化温度Ts及び接線法ガラス転移温度Tg2ndがともに45℃以下であれば、定着後のトナー層の可撓性を確保することができる。
【0028】
また、前記ポリエステル樹脂の軟化温度Ts及び接線法ガラス転移温度Tg2ndはともに60℃以上であることが好ましい。ポリエステル樹脂の軟化温度Tsおよび接線法ガラス転移温度Tg2ndがともに60℃以上であれば、トナー画像の耐熱保存性を確保することができる。
【0029】
ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂を組み合わせて用いると、海島構造を非相溶に形成することができ、海島構造を形成しやすくなることから、前記ポリウレタン樹脂は前記ポリエステル樹脂と組み合わせて用いることが好ましい。
【0030】
本発明のトナーがポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂を含有する場合、このトナー断面の海島構造のドメインにはポリウレタン樹脂、マトリックスにはポリエステル樹脂が含まれることが好ましく、トナー断面のドメインとマトリックスは非相溶であることが好ましい。
【0031】
前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、20,000~100,000であることが好ましく、20,000~80,000がより好ましく、20,000~60,000がさらに好ましい。重量平均分子量が20,000以上であれば、定着後の画像がアイロンをかけた際に溶け出すおそれがなく、重量平均分子量が100,000以下であれば、トナー化の際、他のトナー成分と接着剤の溶融混練がしやすい。
【0032】
前記ポリウレタン樹脂の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナーに離型剤が含まれる場合、結着樹脂及び離型剤の合計質量に対して、5~40質量%の範囲であることが好ましく、10~30質量%の範囲であることがより好ましい。前記ポリウレタン樹脂の含有量が結着樹脂及び離型剤の合計質量に対して5質量%以上であれば、トナーの布等の可撓性媒体への十分な定着性及び、定着後のトナー層の可撓性が得られ、40質量%以下であれば、トナーの熱保存性が悪化せず、トナー粒子の凝集が生じるおそれがない。
【0033】
また、ポリウレタン樹脂のすべてまたは一部として、上記ポリウレタン樹脂と同じ特性を有するポリエチレンテレフタート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタート、ポリブチレンイソフタート、スチレンブタジエンゴムのいずれかを代用することもできる。
【0034】
<<非相溶ドメイン観察>>
トナー中のドメインの大きさと形状については、走査型電子顕微鏡(SEM)による反射電子像を観察することで確認できる。トナーの海島構造における島部(ドメイン)と海部(マトリックス)の色の差により、海部と島部(非相溶ドメイン)の存在を確認できる。コントラストをつけて島部と海部の判別を容易にするために、必要に応じて四酸化ルテニウムによる染色を行ってもよい。
走査型電子顕微鏡による反射電子像観察として、以下の手順、及び条件が一例として挙げられる。
【0035】
本発明の海島構造は、トナー粒子でもトナー成分溶融混錬物の粗砕品でも同様の観察ができる。
トナー粒子またはトナー成分溶融混錬物の粗砕品の粒子をエポキシ樹脂に包埋し、断面出しを行ったのち、走査型電子顕微鏡(日立株式会社製、SU8230)を使用して、下記条件で観察を行うことができる。このとき、非染色部分は暗部として観察されるため、染色部分(明部)と区別が可能になる。
・加速電圧:5kv
・エミッション電流:10μA
・プローブ電流:Norm
・コンデンサレンズ1:5.0
・W.D.:8.0mm
・観察モード: SE
・倍率: ×2,000 又は ×5,000
【0036】
<<ドメインのアスペクト比と面積>>
走査型電子顕微によって本発明のトナー断面を観察したときのSEM像における海島構造の島部(ドメイン部)の最長辺の長さと最短辺の長さの比をドメインのアスペクト比とする。この値が大きい程、異方性が高いことを意味する。また、走査型電子顕微によって本発明のトナー断面を観察したときのSEM像における海島構造の島部(ドメイン部)の面積をドメインの面積とすることができる。
【0037】
<<トナー断面100μmあたりの特定ドメインの平均個数>>
トナー断面100μmあたりのアスペクト比が2以上、面積が0.1μm以上のドメインの平均個数を求める方法について、以下にその一例を示す。
【0038】
トナーXから粒径10~20μmのトナー粒子を少なくとも10以上作製し、1つのトナー粒子について、粒径の略半分の位置でトナー断面のSEM画像を撮影する。そのトナー断面のSEM画像に存在するドメインのうち、アスペクト比が2以上、面積が0.1μm以上のドメインの個数と、そのトナー断面面積を求めることで、アスペクト比が2以上、面積が0.1μm以上のドメインの100μmあたりの個数を求めることができる。トナーXの他のトナー粒子についても同様の操作を行う。各トナー粒子のアスペクト比が2以上、面積が0.1μm以上のドメインの100μmあたりの個数を合計し、使用したトナー断面の数で割ることで、トナーXについて、トナー断面のSEM画像100μmあたりの、アスペクト比が2以上、面積が0.1μm以上のドメインの平均個数を求めることができる。
【0039】
<<定着画像のSEM像の撮影>>
定着画像のSEM像の撮影については、定着画像を試料とする他は、上記の<<非相溶ドメイン観察>>の項目で説明した方法と同じ方法で撮影する。
【0040】
<<トナーの体積%基準の粒径と粒径分布の測定方法>>
トナーの体積%基準の粒径分布と粒径の測定方法としては、例えば、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定でき、解析ソフト(BeckmanCoulterMutlisizer 3 Version3.51)にて解析することができる。以下にその一例を示す。
ガラス製100mlビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩、ネオゲンSC-A、第一工業製薬株式会社製)を0.5ml添加し、各トナーを0.5g添加しミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mlを添加して分散液を得る。得られた分散液を超音波分散器(W-113MK-II、本多電子株式会社製)で10分間分散処理してトナーのサンプル分散液を得る。前記トナーのサンプル分散液を前記マルチサイザーIIIを用い、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター社製)を用いて測定を行う。測定再現性の点から、粒径に誤差が生じず、装置が示す濃度が8±2%になるように前記トナーのサンプル分散液を滴下し、トナーの体積平均粒径を測定する。
【0041】
<<トナーの粒径分布と体積平均粒径>>
本発明のトナーは、体積%基準の粒径分布において、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5~30μmの範囲にピークを有することが好ましく、10~20μmの範囲にピークを有することがより好ましい。ここで、粒径分布の「ピーク」とは、粒径分布のピークトップが上記粒径範囲にあることを意味する。
また、トナーの体積平均粒径についても特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5~30μmであることが好ましく、10~20μmがより好ましい。
上記のようなトナーであれば、トナー粒径を大きくすることでトナー層のパイルハイトを大きくし、布のような可撓性媒体表面の凹凸を埋めやすくすることができるため、隠蔽性に優れ、好適である。また、トレードオフとなる転写性との兼ね合いから、トナーとしては体積%基準の粒径分布において10~20μmの範囲にピークを有する粒径分布のものがより好ましい。同様の理由により、トナーの体積平均粒径が10~20μmのものがより好ましい。
【0042】
<<トナー中の樹脂の存在の確認、及び定量>>
本発明のトナーに含まれる樹脂について、存在の確認、及び定量は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)、又はNMR(Nuclear Magnetic Resonance)により好適に定量することができる。具体的には、以下の手順、装置、及び条件により行うことができる。
【0043】
<<GC-MSによる成分分析>>
-試料の調製-
トナーをクロロホルム中に分散させ、一昼夜攪拌して分散液を得る。続いて、この分散液を遠心分離し、上澄み液のみを回収する。回収した上澄み液を蒸発乾固したものを、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)により組成分析する。GC-MSによる測定条件の一例を以下に示す。なお、約1mg程度の試料に、メチル化剤(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド20%メタノール溶液:TMAH)を約1μL滴下した混合物を試料とする。
【0044】
-測定条件-
・熱分解-ガスクロマトグラフ質量分析(Py-GCMS)計分析装置:QP2010
(株式会社島津製作所製)
・加熱炉:Py2020D
(フロンティア・ラボ株式会社製)
・加熱温度:320℃
・カラム:Ultra ALLOY-5
(L=30m、I.D=0.25mm、Film=0.25μm、ジーエルサイエンス株式会社製)
・カラム温度:50℃(保持時間:1分)~昇温(10℃/分)~340℃(保持時間:7分)
・スプリット比:1:100
・カラム流量:1.0ml/min
・イオン化法:EI法(70eV)
・測定モード:スキャンモード
・検索用データ:NIST 20 MASS SPECTRAL LIB.
【0045】
<<NMRによる成分分析>>
-試料の調製-
トナーをクロロホルム中に分散させ一昼夜攪拌して分散液を得る。続いて、この分散液を遠心分離し、上澄み液のみを回収する。回収した上澄み液を蒸発乾固したものをH-NMR用、及び13C-NMR用の試料として、NMRにより組成分析する。H-NMR用の試料の調製方法、13C-NMR用の試料の調製方法、及び測定条件の一例を以下に示す。
【0046】
(1)H-NMR用の試料の調製方法
試料100mgに、1mLのd8-トルエン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加えて、ドライヤーで温めて溶解させ、H-NMR用の試料の調製する。
(2)13C-NMR用の試料の調製方法
試料100mgに、1mLの重水素化1,2-ジクロロトルエン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加えて、ドライヤーで温めて溶解させ、13C-NMR用の試料の調製する。
【0047】
-測定条件-
・NMR装置:ECX-500(日本電子株式会社製)
・測定核=H(500MHz)、測定パルスファイル=single pulse dec.jxp(1H)、45℃パルス、積算20,000回、Relaxation Delay-4秒、データポイント32K、Offset 100ppm、観測幅=250ppm、測定温度70℃
・測定核=13C(125MHz)、測定パルスファイル=single pulse dec.jxp(13C)、45℃パルス、積算64回、Relaxation Delay 5秒、データポイント32K、観測幅=15ppm、測定温度65℃
【0048】
<<重量平均分子量の測定>>
トナーに使用される樹脂の重量平均分子量は、THF(テトラヒドロフラン)溶解分の分子量分布をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定装置によって測定することで得ることができる。前記GPC測定装置として、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、商品名で、GPC-150C(ウォーターズ株式会社製)などを用いることができる。
【0049】
重量平均分子量の測定に用いるカラムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、商品名で、KF801(有機溶媒系SEC(GPC)用カラム)、KF802(有機溶媒系SEC(GPC)用カラム)、KF803(有機溶媒系SEC(GPC)用カラム)、KF804(有機溶媒系SEC(GPC)用カラム)、KF805(有機溶媒系SEC(GPC)用カラム)、KF806(有機溶媒系SEC(GPC)用カラム)、KF807(有機溶媒系SEC(GPC)用カラム)(いずれも、昭和電工株式会社製)などが挙げられる。
【0050】
トナーに使用される樹脂の重量平均分子量の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下の方法で行うことができる。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、溶媒としてTHFを毎分1mLの流速で流す。次いで、試料0.05gをTHF5gに十分に溶かした後、前処理用フィルター(例えば、商品名:クロマトディスク、孔径:0.45μm、倉敷紡績株式会社製)でろ過し、最終的に試料濃度を0.05質量%~0.6質量%に調製する。試料濃度を調製したTHF試料溶液を、カラムに50μL~200μL注入して、THF試料溶液に含まれるTHF溶解分を分離した後、検出器(例えば、示差屈折率(RI)検出器(装置名:GPC-150C、ウォーターズ社製))を用いて分子量に換算することで、THF試料溶液に含まれるTHF溶解分の重量平均分子量(Mw)を測定することができる。
【0051】
試料に含まれるTHF溶解分の重量平均分子量Mw、個数平均分子量Mnの測定は、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical社又は東洋ソーダ工業社製の、分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、5.1×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、及び4.48×10であるものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いることが好ましい。
また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いることが好ましい。
【0052】
<<軟化温度Tsの測定方法>>
本発明のトナーの軟化温度の測定にあたっては、例えば、フローテスター(株式会社島津製作所製、CFT-500D)を用いて測定することができる。その際、例えば、各トナーを錠剤成形可能な最低圧力で加圧錠剤成型してペレットとし、そのペレットを80℃恒温槽で30分保管したのち、常温まで自然放冷したものをトナー試料として、フローテスター軟化温度(Ts)と流出開始温度(Tfb)を測定することができる。 トナーのフローテスター軟化温度(Ts)、及び流出開始温度(Tfb)は、例えば、高架式フローテスターCFT500型(株式会社島津製作所製)を用いて測定したフローカーブから求めることができ、例えば、下記の測定条件で測定することができる。
試料量 1.00±0.05g
開始温度 40℃
到達温度 200℃
昇温速度 3.0℃/min
試験荷重 22.5kgf
ダイ穴径 0.5mm
ダイ長さ 1.0mm
図5は、本発明の一実施形態に係るトナーの一例を高架式フローテスターを用いて測定するときのフローカーブの概略図である。図5中、Tsは軟化温度を、Tfbは流出開始温度を、それぞれ表す。
なお、本発明のトナーのフローテスターによる測定において、Tsに相当するピストンストローク曲線のショルダーが現れない場合、フローテスタ付属のソフトウエアにおいてTsが自動検出されないため、この場合は、Tsは40℃未満とすることができる。
【0053】
<<接線法ガラス転移温度Tg2ndの測定方法>>
本発明のトナーの融点、ガラス転移温度(Tg)は、例えば、DSCシステム(示差走査熱量計)(「Q-200」、TAインスツルメント社製)を用いて測定することができる。
具体的には、対象試料の融点、ガラス転移温度は、例えば、下記手順により測定することができる。
まず、対象試料約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、-50℃から昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱する(昇温1回目)。その後、150℃から降温速度10℃/minにて-50℃まで冷却させ、更に昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱(昇温2回目)する。この昇温1回目、及び昇温2回目のそれぞれにおいて、示差走査熱量計(「Q-200」、TAインスツルメント社製)を用いてDSC曲線を計測する。
得られるDSC曲線から、Q-200システム中の解析プログラムを用いて、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温2回目における接線法ガラス転移温度Tg2ndを求めることができる。
【0054】
<離型剤>
本発明のトナーにおいて、使用できる離型剤の種類(ワックス種)には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
本発明に使用できる離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリオレフィンワックス、及びこれらの部分酸化物、あるいはフッ化物、塩化物などの脂肪族炭化水素、牛脂、魚油などの動物油、やし油、大豆油、菜種油、米ぬかワックス、カルナウバワックスなどの植物油、モンタンワックスなど高級脂肪族アルコール又は高級脂肪酸、脂肪酸アマイド、脂肪酸ビスアマイド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ベヘニン酸亜鉛などの金属石鹸、脂肪酸エステル、ポリフッ化ビニリデンなどが挙げられる。このうち脂肪酸エステルをはじめとするエステルワックスを少なくとも含有することが好ましい。
【0056】
主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンをトナーに含有させた場合、その含有量が多いと、定着時にトナーと定着ローラ(または定着ベルト)が分離できずに廃紙ジャムつまりが生じる不具合があるが、離型剤として、エステルワックスを加えることで、その不具合を抑制することができる。さらに、主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンは、エステルワックスを微分散させることができる。
【0057】
離型剤のトナー中での含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1~8.0質量%であることが好ましく、1.0~6.0質量%であることがより好ましい。含有量が0.1質量%以上であれば、定着時にトナーと定着ローラ(または定着ベルト)が分離して廃紙ジャムつまりを抑制できる。また、8.0質量%以下であれば、トナーがプラスチックフィルムへ十分に定着することができる。
【0058】
<着色剤>
本発明のトナーに用いられる着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される着色剤を適宜選択して使用することができ、例えば、ブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー、白色顔料、グリーントナー、ブルートナーなどが挙げられる。
【0059】
ブラックトナーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、カーボンブラック単独もしくはカーボンブラックを主成分として銅フタロシアニンなどを混合し、色相を及び明度を調整したものが好ましい。
【0060】
シアントナーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ピグメントブルー15:3である銅フタロシアニン、もしくは前記着色剤にアルミフタロシアニンを混合したものが好ましい。
【0061】
マゼンタトナーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ピグメントレッド53:1、ピグメントレッド81、ピグメントレッド122、ピグメントレッド269を単独、もしくは混合して用いることができる。
【0062】
イエロートナーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー155、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー185を単独もしくは混合して用いることができる。ピグメントイエロー185単独、もしくはピグメントイエロー185とピグメントイエロー74との混合で用いることが彩度、保存性の面から好ましい。
【0063】
白色顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、二酸化チタンにケイ素、ジルコニア、アルミ、ポリオールなどの表面処理を施したもの等を用いることができる。
【0064】
グリーントナーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピグメントグリーン7等を用いることができるが、安全面に留意する必要がある。
【0065】
ブルートナーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピグメントブルー15:1、及びピグメントバイオレット23等が挙げられる。
【0066】
尚、本発明のトナーを下地層(最も剥離支持体側または前記記録媒体側に画像形成する層)として用いる場合、その上層に従来のトナー層を形成することで、従来トナーも繊維の凹凸の多い布媒体上に良好に定着させることができるようになる。
また、本発明のトナーはゴム弾性を有することから、印刷後の画像が引っ張り時、おり曲げ時、洗濯時にもひび割れにくいという特徴がある。このような観点、および上に重ねるトナーの色味を損なわないという観点から、本発明のトナーを下地層として用いる場合、トナーに含まれる着色剤は白色および/または無色(着色剤含有せず)であることが好ましい。
【0067】
<帯電制御剤>
本発明のトナーは帯電制御剤を含有することができる。
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、ホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート類、有機金属錯体、キレート化合物、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体、第四級アンモニウム塩が挙げられる。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類が挙げられる。これらは単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
これらの帯電制御剤を電子写真現像用トナーに内部添加する場合、含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができるが、結着樹脂の総量に対して0.1~10質量%添加することが好ましい。また、帯電制御剤により着色される場合もあるため、ブラックトナーを除いて、できるだけ透明色のものを選定することが好ましい。
【0069】
<外添剤>
本発明のトナーは、外添剤として無機微粒子などを用いることができる。
【0070】
本発明に用いられる外添用の無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、けい砂、クレー、雲母、けい灰石、珪藻土、酸化クロム、酸化セリウム、べんがら、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化珪素、窒化珪素などが挙げられる。これらの中でも、シリカ、アルミナ、酸化チタンが好ましい。
【0071】
また、無機微粒子は疎水化処理剤により表面処理されたものを使用してもよい。疎水化処理剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤などが好ましい表面処理剤として挙げられる。また、シリコーンオイルを疎水化処理剤として用いても十分な効果が得られる。
【0072】
また、無機微粒子の一次粒子の平均径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5~500nmが好ましく、5~200nmがより好ましい。5nm以上であれば無機微粒子の凝集が抑えられ、トナー中での無機微粒子を均一に分散させることができる。500nm以下であれば、フィラー効果による耐熱保存性を向上させることができる。ここでの平均粒子径とは透過型電子顕微鏡により得られる写真より直接粒子径を求めた値であり、少なくとも100個以上の粒子を観察しその長径の平均値を用いることが好ましい。
【0073】
<現像剤>
本発明のトナーは、キャリア等と混合し、現像剤として用いることもできる。換言すると、前記現像剤は、本発明の一実施形態に係るトナーを含み、必要に応じて、キャリア等の適宜選択されるその他の成分を含んでいてもよい。当該現像剤を用いることによって、布の表面に定着性に優れた下地層を形成することができる。
【0074】
前記現像剤は、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上の点から、二成分現像剤であることが好ましい。
【0075】
本発明の一実施形態に係るトナーを一成分現像剤として用いる場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミング、及びトナーを薄層化するブレード等の部材へのトナーの融着が少なく、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0076】
本発明の一実施形態に係るトナーをキャリアと混合して二成分現像剤とし、二成分現像方式の電子写真画像形成方法に用いることができる。本発明の一実施形態に係るトナーを二成分現像剤として用いる場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0077】
<磁性材料>
二成分現像方式を用いる場合、磁性キャリアに用いる磁性体微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、ガンマ酸化鉄等のスピネルフェライト、鉄以外の金属(Mn、Ni、Zn、Mg、Cu等)を一種又は二種以上含有するスピネルフェライト、バリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライト、表面に酸化層を有する鉄又は合金の粒子などが挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
磁性体微粒子の形状は粒状、球状、針状のいずれであってもよい。
特に磁性キャリアに高磁化を要する場合は鉄等の強磁性微粒子を用いることが好ましい。
【0078】
また、化学的な安定性を考慮するとマグネタイト、ガンマ酸化鉄を含むスピネルフェライト、又はバリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライトを用いることが好ましい。具体的には、MFL-35S、MFL-35HS(パウダーテック社製)、DFC-400M、DFC-410M、SM-350NV(同和鉄粉工業社製)等が好ましい。
【0079】
強磁性微粒子(キャリア)の種類及び含有量を選択することにより所望の磁化を有する樹脂キャリアを使用することもできる。
例えば、上記樹脂キャリアの磁気特性は、1,000エルステッドにおける磁化の強さが30~150emu/gであることが好ましい。
このような樹脂キャリアは磁性体微粒子と絶縁性バインダー樹脂との溶融混練物をスプレードライヤーで噴霧して製造したり、磁性体微粒子の存在下に水性媒体中でモノマーないしプレポリマーを反応、硬化させることで、縮合型バインダー中に磁性体微粒子(キャリア)が分散された樹脂キャリアを製造できる。
【0080】
磁性キャリアの表面には正または負帯電性の微粒子または導電性微粒子を固着させたり、樹脂をコーティングしたりして帯電性を制御することができる。
表面のコート材(樹脂)としては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂等が用いられ、さらに正または負帯電性の微粒子または導電性微粒子を含んでコーティングすることができるが、これらの中でも、シリコーン樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
【0081】
本発明において、現像装置内に収容される現像剤中のキャリアの質量比率は、85質量%以上98質量%未満であることが好ましい。
現像剤中のキャリアの質量比率が85質量%以上であると現像装置からのトナーの飛散が発生しにくくなり、不良画像の発生を減らすことができる。
現像剤中のキャリアの質量比率が98質量%未満であると、電子写真現像用トナーの帯電量が過度に上昇したり、電子写真現像用トナーの供給量が不足したりすることを抑えることができるため、画像濃度が低下して、不良画像が発生することを低減することができる。
【0082】
<流動性向上剤>
本発明は、添加剤として流動性向上剤を含んでもよい。前記流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性又は帯電特性の悪化を防止可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
前記外添剤としてのシリカ及び酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理を行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが好ましい。
【0083】
<クリーニング性向上剤>
本発明は、添加剤としてクリーニング性向上剤を含んでもよい。前記クリーニング性向上剤は、静電潜像担持体又は一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために、本発明の一実施形態に係るトナーに添加できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子などが挙げられる。当該ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm以上1μm以下のものが好ましい。
【0084】
<<トナーの製造方法>>
本発明に用いられるトナーの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。以下、本発明のトナーの製造方法の一例を説明する。
トナーの製造方法としては溶融混錬粉砕法が好ましい。これは、糸状のドメインを形成するうえで、トナー成分の溶融混錬物を冷却圧延する工程が必要だからである。
これに対して、溶解懸濁法等の重合法は、糸状ドメインを形成できるトナー材料構成及び/又は工程を採用するのであれば本発明に用いることができる。
糸状ドメインの形状及び大きさは、ドメイン材料とマトリクス材料の相溶性(各材料の分子量、組成で決まる)と、溶融混錬物の冷却圧延時にかかる引き延ばし力により決まるため、最も容易なドメイン径及び形状制御方法は、非相溶な材料同士を採用するとともに、ドメインの大きさ形状と圧延厚みの関係をあらかじめ求めておいて、適切な厚みまでトナー材料の溶融混錬物の厚みを薄くする(好ましくは1mm以下に調整する)ことで大きくかつ糸状のドメインを得ることができる。
本発明のトナーの製造方法は、一実施形態として、結着樹脂の混合物を得る工程(混合工程)と、混合物の混練物を得る工程(溶融混練工程)と、混練物の固形物を得る工程(固化工程)と、固形物の粉砕物を得る工程(微粉砕工程)と、粉砕物を分級して回収する工程(分級工程)とを含むことができる。
【0085】
-結着樹脂の混合物を得る工程(混合工程)-
まず、結着樹脂、着色剤、及び離型剤、必要に応じて、帯電制御剤等を混合機により混合して、混合物を得る(混合工程)。
前記混合機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘンシェルミキサー(商品名:FM20B、日本コークス工業株式会社製)、スーパーミキサー(SMV-20Ba、株式会社カワタ製)などが挙げられる。
【0086】
-混合物の混練物を得る工程(溶融混練工程)-
次いで、得られた混合物を熱溶融混練機を用いて溶融混練し、混練物を得る(溶融混練工程)。
前記熱溶融混練機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、商品名で、二軸押出機 PCMシリーズ(株式会社池貝製)、TEM型押出機(芝浦機械株式会社製)、二軸押出機PCMコニーダー(ブス社製)、オープンロール型連続式混練機 ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
【0087】
-混練物の固形物を得る工程(固化工程)-
次いで、得られた混練物を冷却して固化することで、固形物を得る(固化工程)。冷却方法及び固化方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、適宜任意の方法を用いることができる。
【0088】
-固形物の粉砕物を得る工程(微粉砕工程)-
次いで、得られた固形物を微粉砕して粉砕物を得る(微粉砕工程)。固形物は、公知の粉砕方法を用いて粉砕することができ、例えば、高速気流中にトナーを包含させ、衝突板にトナーを衝突させた時のエネルギーで固形物を粉砕するジェットミル方式、トナー粒子同士を気流中で衝突させる粒子間衝突方式、高速に回転したローターと狭いギャップ間にトナーを供給して粉砕する機械式粉砕法等を使用することができる。
【0089】
-粉砕物を分級して回収する工程(分級工程)-
次いで、粉砕物を分級して、所定の体積平均粒径を有する粉砕物を回収する。これにより、トナーを得ることができる(分級工程)。分級方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、適宜任意の方法を用いることができる。
【0090】
また、本発明の一実施形態に係るトナーは、溶解懸濁法を用いて製造することができる。溶解懸濁法を用いてトナーを製造する際、結着樹脂、着色剤、離径剤、必要に応じて、帯電制御剤等のトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散させた油相を、水系媒体(水相)中に分散させて、結着樹脂を反応させる。これにより、トナー材料を乳化乃至分散させたプレポリマーを含む分散体(油滴)を含む分散液を得る。その後、分散液から有機溶媒を除去し、ろ過、洗浄及び乾燥を行い、さらに必要に応じて分級等を行うことにより、トナーの母体粒子を製造する。溶解懸濁法を用いて得られた母体粒子を造粒することで、本発明の一実施形態に係るトナーを得ることができる。
【0091】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易である点で、沸点が150℃未満の有機溶媒が好ましい。
【0092】
沸点が150℃未満の有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0093】
前記水系媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶媒、これらの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水が好ましい。
【0094】
水と混和可能な溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール、低級ケトン類、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セロソルブ類などが挙げられる。
アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどが挙げられる。
低級ケトン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
【0095】
分散液から有機溶媒を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶媒を蒸発させる方法、分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の有機溶媒を除去する方法などが挙げられる。
【0096】
前記溶解懸濁法における分級は、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行ってもよいし、乾燥後に分級操作を行ってもよい。
【0097】
(トナーセット)
本発明のトナーセットとは、結着樹脂及び着色剤を含むカラートナーと、本発明のトナーと、を有するものをいう。
【0098】
上記カラートナーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知のカラートナーを選択することができる。カラートナーに含まれる結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の一実施形態に係るトナーに含まれる結着樹脂と同様のものとすることができる。前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の着色剤を選択することができる。
【0099】
上記トナーセットを、後述する画像形成装置に装着して画像形成することで、本発明の一実施形態に係るトナーを用いて画像形成が行われるため、布に対して優れた定着性を有するトナーの特徴を活かした画像形成を行うことができる。
【0100】
(像転写シート)
本発明の像転写シートとは、本発明のトナーによって形成された像を有するシートをいう。像の転写媒体となるシートは、シート状で画像形成可能な物質であれば、どのようなものを用いてもよい。具体的には、トナーの剥離が可能な厚紙、ハガキ、ロール紙、封筒、普通紙、薄紙、塗工紙(コート紙、又はアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、OHPフィルム、樹脂フィルム等を用いる剥離用支持体が挙げられる。また、像の転写媒体となるシートは、布等の可撓性記録媒体であってもよい。
【0101】
(トナー収容ユニット)
本発明におけるトナー収容ユニットとは、トナーを収容する機能を有するユニットに、本発明のトナーを収容したものをいう。ここで、トナー収容ユニットの態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トナー収容容器、現像器、プロセスカートリッジなどが挙げられる。
【0102】
前記トナー収容容器とは、トナーを収容した容器をいう。
なお、前記トナーを現像剤として用いる場合、前記トナー収容容器を現像剤収容容器と称することがある。
前記現像剤収容容器としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、容器本体とキャップを有するものなどが挙げられる。
【0103】
前記トナー収容容器、及び前記現像剤収容容器の容器本体の大きさ、構造、及び材質等は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記現像剤収容容器の容器本体の形状は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、円筒等の筒状であり、内周面にスパイラル状に形成された凹凸部を有していることが好ましい。容器本体を回転させることで、内容物である現像剤を排出口側に移行させ易くなる。また、凹凸部の一部又は全ては、蛇腹状に形成されていることがより好ましい。これにより、現像剤は排出口側により移行し易くなる。
前記トナー収容容器、及び前記現像剤収容容器の材質は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、寸法精度がよいものであることが好ましく、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂等の樹脂材料などが挙げられる。
【0104】
前記トナー収容容器、及び前記現像剤収容容器は、保存、搬送等が容易であり、取扱性に優れるため、後述する画像形成装置、プロセスカートリッジ等に着脱可能に取り付け、トナー及び現像剤の補給に使用することができる。
【0105】
前記現像器は、トナーを収容し現像する手段を有するものをいう。
プロセスカートリッジとは、少なくとも静電潜像担持体と現像する手段とを一体とし、トナーを収容し、画像形成装置に対して着脱可能であるものをいう。前記プロセスカートリッジは、更に帯電手段、露光手段、クリーニング手段等から選ばれる少なくとも一つを備えてもよい。
【0106】
本発明の一実施形態に係るトナー収容ユニットを、本発明の画像形成装置に装着して画像形成することで、本発明の一実施形態に係るトナーを用いて画像形成が行われるため、布に対して優れた定着性を有するトナーによる画像形成を行うことができる。
【0107】
(画像形成方法及び画像形成装置)
本発明に関する画像形成装置は、静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体に静電潜像を形成させる静電潜像形成手段と、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を本発明のトナーを含む現像剤で現像してトナー像を形成する現像手段と、前記静電潜像担持体に形成された前記トナー像を、剥離用支持体上または表面粗さが1μm以上の可撓性記録媒体上に転写する転写手段と、前記剥離用支持体上または前記可撓性記録媒体上に転写された前記トナー像を定着する定着手段とを有し、更に必要に応じて、その他の手段を有していてもよい。
【0108】
本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体に静電潜像を形成させる静電潜像形成工程と、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を本発明のトナーを含む現像剤で現像してトナー像を形成する現像工程と、前記静電潜像担持体に形成された前記トナー像を、剥離用支持体上または表面粗さが1μm以上の可撓性記録媒体上に転写する転写工程と、前記剥離用支持体上または前記可撓性記録媒体上に転写された前記トナー像を定着する定着工程とを有し、前記トナー像が、本発明のトナーによって形成され、必要に応じて、その他の工程を有していてもよい。
【0109】
前記画像形成方法は、前記画像形成装置により好適に行うことができ、前記静電潜像形成工程は、前記静電潜像形成手段により好適に行うことができ、前記現像工程は、前記現像手段により好適に行うことができ、前記転写工程は、前記転写手段によって好適に行うことができ、前記定着工程は、前記定着手段によって好適に行うことができ、前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に行うことができる。
【0110】
<<静電潜像担持体>>
前記静電潜像担持体の構造、及び大きさ等としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。
前記静電潜像担持体の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体(OPC)などが挙げられる。
【0111】
前記静電潜像担持体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、円筒状が好ましい。円筒状の静電潜像担持体の外径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3mm以上100mm以下が好ましく、5mm以上50mm以下がより好ましく、10mm以上30mm以下がさらに好ましい。
【0112】
<静電潜像形成手段及び静電潜像形成工程>
本発明に関する画像形成装置における静電潜像形成手段としては、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。当該静電潜像形成手段は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電装置と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光装置とを備えてもよい。
本発明の画像形成方法における静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程であり、静電潜像担持体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程とを含むことができる。
帯電は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、帯電装置を用いて静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
露光は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、露光装置を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
静電潜像の形成は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、静電潜像形成手段により行うことができる。
【0113】
-帯電装置-
前記帯電装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えた接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器などが挙げられる。
【0114】
前記帯電装置の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等のどのような形態をとってもよく、画像形成装置の仕様又は形態にあわせて選択することができる。
【0115】
前記帯電装置としては、静電潜像担持体に接触乃至非接触状態で配置され、直流及び交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。また、帯電装置が、静電潜像担持体にギャップテープを介して非接触に近接配置された帯電ローラであり、帯電ローラに直流および交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。
【0116】
前記帯電装置としては、接触式の帯電装置に限定されるものではないが、帯電装置から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られる点から、接触式の帯電装置を用いることが好ましい。
【0117】
-露光装置-
前記露光装置としては、前記帯電装置により帯電された静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系等の各種露光装置などが挙げられる。
【0118】
前記露光装置に用いられる光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般などが挙げられる。
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
【0119】
なお、静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0120】
<現像手段及び現像工程>
本発明に関する画像形成装置における現像手段は、静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成できれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。当該現像手段は、例えば、トナーを収容し、静電潜像にトナーを接触又は非接触的に付与可能な現像器を備えるものを好適に用いることができ、トナー入り容器を備えた現像器などが好ましい。
本発明の画像形成方法における現像工程は、静電潜像を複数色のトナーにより順次現像してトナー像を形成する工程である。当該トナー像の形成は、例えば、静電潜像を前記トナーを用いて現像することにより行うことができ、現像器により行うことができる。
【0121】
前記現像手段、及び現像工程において、本発明の一実施形態に係るトナーが使用される。好ましくは、本発明の一実施形態に係るトナーを含有し、更に必要に応じて、キャリア等のその他の成分が含有された現像剤を用いることにより、トナー像を形成してもよい。
【0122】
前記現像器は、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよい。当該現像器として、例えば、トナーを摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、内部に固定された磁界発生部とを有し、表面にトナーを含む現像剤を担持して回転可能な現像剤担持体を有する現像装置が好ましい。
【0123】
前記現像器内では、例えば、トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、静電潜像担持体近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって静電潜像担持体の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて静電潜像担持体の表面に、トナーによるトナー像が形成される。
【0124】
本発明に関する画像形成装置は、カラートナー用(ブラック用、シアン用、マゼンタ用、及びイエロー用)の現像手段と、本発明のトナー用の現像手段の計5つの現像手段を備えることができる。本発明のトナーは何色でもよいが、無色又は白色であることが好ましい。当該現像手段に用いるトナーは、ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローのカラートナーの一部又は全部を本発明の一実施形態に係るトナーとしてもよい。
【0125】
<転写手段及び転写工程>
本発明に関する画像形成装置における転写手段としては、トナー像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写部と、複合転写像を前記剥離用支持体上または前記可撓性記録媒体上に転写する第二次転写部とを有する態様が好ましい。なお、中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルトなどが好適に挙げられる。
本発明の画像形成装置における転写工程は、トナー像を前記剥離用支持体上または前記可撓性記録媒体上に転写する工程である。当該転写工程は、中間転写体を用い、中間転写体上にトナー像を一次転写した後、トナー像を前記剥離用支持体上または前記可撓性記録媒体上に二次転写する態様が好ましい。
前記転写工程は、二色以上のトナー、好ましくはフルカラートナーを用い、トナー像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、複合転写像を前記剥離用支持体上または前記可撓性記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
転写は、例えば、トナー像を転写帯電装置を用いて静電潜像担持体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。
【0126】
前記転写手段(第一次転写部及び第二次転写部)は、静電潜像担持体上に形成されたトナー像を前記剥離用支持体側または前記可撓性記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有することが好ましい。前記転写手段は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
【0127】
前記転写手段としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器などが挙げられる。
【0128】
前記剥離用支持体としては、代表的には剥離紙であるが、現像後の未定着画像を転写可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、普通紙、又はOHP用のPETベース等も用いることができる。
【0129】
前記表面粗さが1μm以上の可撓性記録媒体としては、代表的には布であるが、現像後の未定着画像を転写可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、繊維からなる織布、又は不織布などが挙げられる。
【0130】
<定着手段及び定着工程>
本発明に関する画像形成装置における定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧部が好ましい。当該加熱加圧部としては、例えば、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せなどが挙げられる。
本発明の画像形成装置における定着工程は、前記剥離用支持体上または前記可撓性記録媒体上に転写されたトナー像を定着装置を用いて定着させる工程であり、各色の現像剤に対し前記剥離用支持体上または前記可撓性記録媒体上に転写する毎に行ってもよいし、各色の現像剤に対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
【0131】
前記定着手段は、発熱体を具備する加熱体と、加熱体と接触する紙または剥離紙と、紙又は剥離紙を介して加熱体と圧接する加圧部材とを有し、フィルムと加圧部材との間に未定着画像を形成させた前記剥離用支持体または前記可撓性記録媒体を通過させて加熱定着できる加熱加圧部であることが好ましい。
当該加熱加圧部における加熱温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、80℃~200℃が好ましい。
当該加熱加圧部における面圧としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10N/cm以上80N/cm以下であることが好ましい。
【0132】
なお、本実施形態においては、目的に応じて、定着手段と共に又はこれに代えて、例えば、公知の光定着器などの定着手段を用いてもよい。
【0133】
<その他の手段及びその他の工程>
本発明に関する画像形成装置は、上記構成の他に、必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段などを備えることができる。
本発明の画像形成方法は、上記構成の他に、必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程などを有することができる。
【0134】
<除電手段及び除電工程>
前記除電手段としては、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができれば特に制限はなく、公知の除電手段の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除電ランプなどが好適に挙げられる。
前記除電工程は、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、前記除電手段により好適に行うことができる。
【0135】
<クリーニング手段及びクリーニング工程>
前記クリーニング手段は、静電潜像担持体上に残留するトナーを除去することができれば特に制限はなく、公知のクリーナの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナなどが挙げられる。
前記クリーニング工程は、静電潜像担持体上に残留する前記トナーを除去する工程であり、前記クリーニング手段により好適に行うことができる。
【0136】
本発明に関する画像形成装置は、前記クリーニング手段を有することにより、クリーニング性を向上させることができる。即ち、トナー間付着力を制御することにより、トナーの流動性が制御され、クリーニング性を向上させることができる。また、劣化後のトナーの特性を制御することにより、高寿命化、又は高温多湿等の過酷な条件下においても、優れたクリーニング品質を維持することができる。さらに、静電潜像担持体上におけるトナーから外添剤を十分に遊離させることができるため、クリーニングブレードニップ部における外添剤の堆積層(ダム層)を形成することにより、高いクリーニング性を達成することができる。
【0137】
<リサイクル手段及びリサイクル工程>
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の搬送手段などが挙げられる。
前記リサイクル工程は、クリーニング工程により除去したトナーを現像手段にリサイクルさせる工程であり、前記リサイクル手段により好適に行うことができる。
【0138】
<制御手段>
制御手段は、上記の各部の動きを制御することができる。制御手段としては、上記の各手段の動きを制御できれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の制御機器などが挙げられる。
【0139】
本発明の画像形成装置は、本発明の一実施形態に係るトナーを用いて画像形成を行うことができるため、布等の可撓性のある媒体に対して優れた定着性を有する画像を提供でき、また、消費電力を抑えることができると共に、高画質な画像を安定して提供することができる。
【0140】
本発明の画像形成方法は、本発明の一実施形態に係るトナーを用いて画像形成を行うことができるため、布等の可撓性のある媒体に対して優れた定着性を有する画像を提供でき、また、高画質な画像を安定して提供することができる。
【0141】
ここで本発明の画像形成装置の一の態様について、図1を参照して説明する。ただし、本発明は、これらの実施形態に何ら限定されるものではない。
なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、下記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状等にすることができる。
【0142】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
図1では本発明のトナーの現像手段は省略されているが、本発明のトナーの現像手段も、他の色のトナーの現像手段と同様に設けられている(図3参照)。便宜上、図1に本発明のトナー像形成部20A、静電潜像担持体である感光体ドラム4A、一次転写ローラ61Aがあるものとして、図1の説明をする。
図1に示す画像形成装置は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック、白のトナーの5つのトナー像形成部20Y、20C、20M、20K、20Aが並列配置され、各トナー像形成部により形成されたイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びブラック(K)、白(A)の各色トナー像を重ね合わせてフルカラー画像を形成する、いわゆるタンデム型画像形成装置である。なお、各色のトナー像形成部の並びに、特に制限はない。
【0143】
各トナー像形成部20Y、20C、20M、20K、20Aは、それぞれ静電潜像担持体として回転駆動される感光体ドラム4Y、4C、4M、4K、4Aを備えている。また、各感光体ドラム4Y、4C、4M、4K、4Aに各色の画像情報に基づいてレーザ光又はLED光により露光して潜像を形成する露光装置45が設けられている。
【0144】
また、各トナー像形成部20Y、20C、20M、20K、20Aに対向するように、中間転写体としての中間転写ベルト60が表面移動可能に配設されている。中間転写ベルト60を介して感光体ドラム4Y、4C、4M、4K、4Aと相対する位置には、感光体ドラム4Y、4C、4M、4K、4A上に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト60に転写する一次転写ローラ61Y、61C、61M、61K、61Aが配置されている。
【0145】
一次転写ローラ61Y、61C、61M、61K、61Aは、後述する各トナー像形成部20Y、20C、20M、20K、20Aにより形成された各色トナー像を、中間転写ベルト60上に順次転写し、重ね合わせることによりフルカラー画像を形成する。
また、中間転写ベルト60の表面移動方向に関して1次転写ローラ61Y、61C、61M、61K、61Aの下流には、中間転写ベルト60上のトナー像を転写媒体に一括転写する2次転写装置65が配置されている。さらに、2次転写装置65よりも下流には、中間転写ベルト60表面に残留するトナーを取り除くためのベルトクリーニング装置66が設けられている。
【0146】
画像形成装置の下部には、給紙カセット71、給紙ローラ72等からなる給紙部70が設けられており、レジストローラ73に向かって転写媒体を送り出す。レジストローラ73は上記トナー像形成のタイミングに合わせて、中間転写ベルト60と2次転写装置65との対向部に向かって転写媒体を送り出す。中間転写ベルト60上のフルカラートナー像は、2次転写装置65により転写媒体上に転写され、定着装置90により定着された後に、機外に排出される。
【0147】
次に、各トナー像形成部20Y、20C、20M、20K、20Aについて説明する。各トナー像形成部20Y、20C、20M、20K、20Aは、収容されるトナーの色が異なる以外は、構成及び動作がほぼ同一であるので、以下の説明では色分け用の添え字Y、C、M、K、Aを省略して、トナー像形成部20’の構成及び動作について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例における要部構成を示す概略図である。
【0148】
トナー像形成部20’の感光体ドラム4’の周囲には、帯電装置40’、現像装置50、クリーニング装置30’等の電子写真プロセスを実行する各手段が配置されており、公知の動作で、静電潜像担持体である感光体ドラム4’上に各色トナー像を形成する。このようなトナー像形成部20’は、一体的に形成され、画像形成装置本体に対して脱着可能なプロセスカートリッジであってもよい。
【0149】
図3は本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例における要部構成を示す概略図である。なお、上記画像形成装置と同様の点についての説明は省略する。
【0150】
本発明の一実施形態である画像形成装置は、静電潜像担持体である感光体(感光体5、感光体11、感光体17、感光体23、感光体29)を備え、前記感光体の周りには、帯電装置である帯電器(帯電器6、帯電器12、帯電器18、帯電器24、帯電器30)と、現像手段(現像手段8、現像手段14、現像手段20、現像手段26、現像手段32)と、転写手段である転写器(転写器10、転写器16、転写器22、転写器28、転写器34)と、クリーニング装置(クリーニング装置9、クリーニング装置15、クリーニング装置21、クリーニング装置27、クリーニング装置33)とを備えており、前記感光体には露光光(露光光7、露光光13、露光光19、露光光25、露光光31)が照射される。
【0151】
各色の現像ユニットは、前記感光体、前記帯電器、前記現像手段、前記クリーニング装置等を備えている。現像ユニット35は本発明のトナー、現像ユニット36はブラックトナー、現像ユニット37はシアントナー、現像ユニット38はマゼンタトナー、現像ユニット39はイエロートナーにより、それぞれ作像を行い、中間転写ベルト40に転写し、作像を行う。中間転写ベルト40に作像された画像は、転写装置41により転写媒体に転写され、定着装置43により定着される。現像ユニットの下部には、給紙カセット1、給紙ローラ2が設けられており、レジストローラ3及び4に向かって転写媒体を送り出す。レジストローラ3及び4は上記トナー像形成のタイミングに合わせて、中間転写ベルト40と転写装置41との対向部に向かって転写媒体を送り出す。
また、本発明のトナー像が、最も前記転写媒体側に形成されていることが好ましい。
前記転写媒体は、剥離用支持体が好ましく、可撓性記録媒体であってもよい。
【実施例0152】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0153】
(トナーの作製)
[トナー1の製造例]
-トナー1の原材料-
・ポリウレタン樹脂 ECOFREEN POWDER(ECOFREEN製、軟化温度Ts 40℃、接線法ガラス転移温度Tg2nd 42℃) 5質量部
・ポリエステル樹脂RN-306(花王社製、軟化温度Ts 60℃、接線法ガラス転移温度Tg2nd 61℃) 90質量部
・エステルワックスWEP-5(日本油脂社製)5質量部
・酸化チタン白顔料PF-739(石原産業社製)65質量部
【0154】
上記のトナー1の原材料を、へンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製、FM20B)を用いて予備混合した後、一軸混練機(Buss製、コニーダ混練機、BUSSコニーダー「MDK46-11D」)で100~130℃の温度で溶融、混練した。得られた混錬物を圧延ロールにて冷却しながら厚み1mm以下となるよう冷却圧延した。事前の検討で1mm以下の厚みに冷却圧延することで糸状のドメインが形成されることが分かったためである。ただし、比較例1では溶融混錬物が固いため薄くすることができず圧延厚みが3mmであった。ロートプレックス(東亜機械工業株式会社製)にて200~300μmに粗粉砕した。この粗粉砕の工程で得られたものがトナー成分溶融混錬物粗砕品である。
次いで、カウンタジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製、100AFG)を用いて体積平均粒径が10~15μmとなるように粉砕エアー圧を適宜調整しながら微粉砕した後、気流分級機(株式会社マツボー製、EJ-LABO)で、体積平均粒径が11.0±0.5μmの範囲となるようにルーバー開度を適宜調整しながら分級し、トナー母体粒子を得た。
次いで、得られたトナー母体粒子100質量部に対し、添加剤1(HDK-2000、クラリアント株式会社製、物質名:シリカ)1.0質量部及び添加剤2(H05TD、クラリアント株式会社製、物質名:シリカ)1.0質量部をヘンシェルミキサーで撹拌混合しトナー1を作製した。
また、トナー製造過程において、トナーをカウンタジェットミルで粉砕したときの粉砕のされやすさ(粉砕性)と、その機内壁へのトナーの付着量(付着性)を目視で観察した。この観察結果は表1に示すとおりであった。
【0155】
[トナー2の製造例]
-トナー2の原材料-
・ポリウレタン樹脂ECOFREEN POWDER(ECOFREEN製) 10質量部
・ポリエステル樹脂RN-306(花王社製) 85質量部
・エステルワックスWEP-5(日本油脂社製) 5質量部
・酸化チタン白顔料PF-739(石原産業社製) 65質量部
上記のトナー2の原材料を使う以外はトナー1と同様にしてトナー2を製造し、トナー製造過程の粉砕性と付着性も観察した。観察結果を表1に示す。
【0156】
[トナー3の製造例]
-トナー3の原材料-
・ポリウレタン樹脂ECOFREEN POWDER(ECOFREEN製) 30質量部
・ポリエステル樹脂RN-306(花王社製) 65質量部
・エステルワックスWEP-5(日本油脂社製) 5質量部
・酸化チタン白顔料PF-739(石原産業社製) 65質量部
上記のトナー3の原材料を使う以外はトナー1と同様にしてトナー3を製造し、トナー製造過程の粉砕性と付着性も観察した。観察結果を表1に示す。
【0157】
[トナー4の製造例]
-トナー4の原材料-
・ポリウレタン樹脂ECOFREEN POWDER(ECOFREEN製) 40質量部
・ポリエステル樹脂RN-306(花王社製) 55質量部
・エステルワックスWEP-5(日本油脂社製) 5質量部
・酸化チタン白顔料PF-739(石原産業社製) 65質量部
上記のトナー4の原材料を使う以外はトナー1と同様にしてトナー4を製造し、トナー製造過程の粉砕性と付着性も観察した。観察結果を表1に示す。
【0158】
[トナー5の製造例]
-トナー5の原材料-
・ポリウレタン樹脂ECOFREEN POWDER(ECOFREEN製) 50質量部
・ポリエステル樹脂RN-306(花王社製) 45質量部
・エステルワックスWEP-5(日本油脂社製) 5質量部
・酸化チタン白顔料PF-739(石原産業社製) 65質量部
上記のトナー5の原材料を使う以外はトナー1と同様にしてトナー5を製造し、トナー製造過程の粉砕性と付着性も観察した。観察結果を表1に示す。
【0159】
[トナー6の製造例]
-トナー6の原材料-
・ポリウレタン樹脂ECOFREEN POWDER(ECOFREEN製) 3質量部
・ポリエステル樹脂RN-306(花王社製) 92質量部
・エステルワックスWEP-5(日本油脂社製) 5質量部
・酸化チタン白顔料PF-739(石原産業社製) 65質量部
上記のトナー6の原材料を使う以外はトナー1と同様にしてトナー6を製造し、トナー製造過程の粉砕性と付着性も観察した。観察結果を表1に示す。ただし、トナー6の製造例における冷却圧延では、溶融混錬物が固いため薄くすることができず圧延厚みは3mmであった。
【0160】
<トナーの軟化温度Tsの測定>
トナー1の軟化温度の測定にあたっては、フローテスター(株式会社島津製作所製、CFT-500D)を用いた。
トナー1を錠剤成形可能な最低圧力で加圧錠剤成型してペレットとし、そのペレットを80℃恒温槽で30分保管したのち、常温まで自然放冷したものをトナー試料として、フローテスター軟化温度(Ts)と流出開始温度(Tfb)を測定した。
トナー1のフローテスター軟化温度(Ts)、及び流出開始温度(Tfb)は、高架式フローテスターCFT500型(株式会社島津製作所製)を用いて測定したフローカーブから求めた。 測定条件は、下記のとおりである。
試料量 1.00±0.05g
開始温度 40℃
到達温度 200℃
昇温速度 3.0℃/min
試験荷重 22.5kgf
ダイ穴径 0.5mm
ダイ長さ 1.0mm
なお、上記のフローテスターによる測定において、Tsに相当するピストンストローク曲線のショルダーが現れない場合、フローテスタ付属のソフトウエアにおいてTsが自動検出されないため、この場合、Tsは40℃未満とした。
トナー2~6についても同様にして軟化温度Tsを求めた。結果を表1に示す。
【0161】
<トナーの接線法ガラス転移温度Tg2ndの測定>
トナー1の融点、ガラス転移温度(Tg)は、DSCシステム(示差走査熱量計)(「Q-200」、TAインスツルメント社製)を用いて測定した。
まず、対象試料約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダー
ユニットに載せ、電気炉中にセットした。次いで、窒素雰囲気下、-50℃から昇温速度
10℃/minにて150℃まで加熱した(昇温1回目)。その後、150℃から降温速
度10℃/minにて-50℃まで冷却させ、更に昇温速度10℃/minにて150℃
まで加熱(昇温2回目)した。この昇温1回目、及び昇温2回目のそれぞれにおいて、示
差走査熱量計(「Q-200」、TAインスツルメント社製)を用いてDSC曲線を計測
した。
得られたDSC曲線から、Q-200システム中の解析プログラムを用いて、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温2回目における接線法ガラス転移温度Tg2ndを求めた。
トナー2~6についても同様にして接線法ガラス転移温度Tg2ndを求めた。
結果を表1に示す。
【0162】
<トナーの体積平均粒径の測定>
トナー1の体積平均粒径の測定は、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(BeckmanCoulterMutlisizer 3 Version3.51)にて解析を行った。
具体的には、ガラス製100mlビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩、ネオゲンSC-A、第一工業製薬株式会社製)を0.5ml添加し、各トナーを0.5g添加しミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mlを添加し分散液を得た。得られた分散液を超音波分散器(W-113MK-II、本多電子株式会社製)で10分間分散処理してトナー1のサンプル分散液を得た。このトナー1のサンプル分散液を上記マルチサイザーIIIを用い、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター社製)を用いて粒径の測定を行った。測定は、粒径に誤差が生じず、測定再現性を有するように、装置が示す濃度が8±2%になるように前記トナー1のサンプル分散液を滴下して行った。得られた粒径の測定値から、トナー1の体積平均粒径を求めた。
トナー2~6についても同様にして各トナーの体積平均粒径を求めた。トナー1~6の体積平均粒径は、11.0±0.5μmの範囲であった。
【0163】
<トナー断面(トナー成分溶融混錬物粗砕品)の観察>
トナー1~6の海島構造の有無については、各トナーのトナー成分溶融混錬物粗砕品の粒子断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)による反射電子像を観察することで確認した。ポリエステルとウレタンの色の差により、海部と島部(非相溶ドメイン)の存在を確認できる。コントラストをつけ島部と海部の判別を容易にするために、必要に応じて四酸化ルテニウムによる染色(物質名:四酸化ルテニウム、TAAB社製)を行った。ルテニウム染色した各トナー成分溶融混錬物粗砕品について、以下の条件で各粒子径の略半分の位置のトナー成分溶融混錬物粗砕品の粒子断面のSEM画像を以下の条件により撮影し、海島構造の有無を確認した。
手順は次のとおりである。
【0164】
トナー1~6のトナー成分溶融混錬物粗砕品の各粒子をエポキシ樹脂に包埋し、走査型電子顕微鏡(日立株式会社製、SU8230)を使用して、下記条件で観察を行った。このとき、非染色部分は暗部として観察されるため、染色部分(明部)と区別が可能になる。
・加速電圧:5kv
・エミッション電流:10μA
・プローブ電流:Norm
・コンデンサレンズ1:5.0
・W.D.:8.0mm
・観察モード: SE
・倍率: ×2,000 又は ×5,000
【0165】
トナー1~5のトナー成分溶融混錬物粗砕品の断面には海島構造が存在するのが確認されたが、トナー6のトナー成分溶融混錬物粗砕品の断面には海島構造は確認されなかった。
図4は、本発明の一実施形態に係るトナーであるトナー1のトナー成分溶融混錬物粗砕品の平均的な断面SEM像である。
図4の「100」で示される楕円中の、細長くて色の濃い部分がドメイン(島部)である。
【0166】
<マトリックスとドメインの組成>
海島構造が確認できたトナー1~5のトナー成分溶融混錬物粗砕品の断面および定着画像断面について、マトリックス(海部分)とドメイン(島部分)に含まれる物質を以下の方法で確認した。
【0167】
<<GC-MSによる成分分析>>
-試料の調製-
各トナーのトナー成分溶融混錬物粗砕品、又は定着画像をクロロホルム中に分散させ、一昼夜攪拌して分散液を得た。続いて、この分散液を遠心分離し、上澄み液のみを回収した。回収した上澄み液を蒸発乾固したものを、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)により組成分析した。GC-MSによる測定条件を以下に示す。なお、約1mg程度の試料に、メチル化剤(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド20%メタノール溶液:TMAH)を約1μL滴下した混合物を試料とした。
-測定条件-
・熱分解-ガスクロマトグラフ質量分析(Py-GCMS)計分析装置:QP2010
(株式会社島津製作所製)
・加熱炉:Py2020D
(フロンティア・ラボ株式会社製)
・加熱温度:320℃
・カラム:Ultra ALLOY-5
(L=30m、I.D=0.25mm、Film=0.25μm、ジーエルサイエンス株式会社製)
・カラム温度:50℃(保持時間:1分)~昇温(10℃/分)~340℃(保持時間:7分)
・スプリット比:1:100
・カラム流量:1.0ml/min
・イオン化法:EI法(70eV)
・測定モード:スキャンモード
・検索用データ:NIST 20 MASS SPECTRAL LIB.
【0168】
<<NMRによる成分分析>>
-試料の調製-
各トナーのトナー成分溶融混錬物粗砕品、又は定着画像をクロロホルム中に分散させ一昼夜攪拌して分散液を得た。続いて、この分散液を遠心分離し、上澄み液のみを回収した。回収した上澄み液を蒸発乾固したものをH-NMR用、及び13C-NMR用の試料として、NMRにより組成分析した。H-NMR用の試料の調製方法、13C-NMR用の試料の調製方法、及び測定条件は以下に示す通りである。
【0169】
(1)H-NMR用の試料の調製方法
試料100mgに、1mLのd8-トルエン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加えて、ドライヤーで温めて溶解させ、H-NMR用の試料の調製した。
(2)13C-NMR用の試料の調製方法
試料100mgに、1mLの重水素化1,2-ジクロロトルエン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加えて、ドライヤーで温めて溶解させ、13C-NMR用の試料の調製した。
【0170】
-測定条件-
・NMR装置:ECX-500(日本電子株式会社製)
・測定核=H(500MHz)、測定パルスファイル=single pulse dec.jxp(1H)、45℃パルス、積算20,000回、Relaxation Delay-4秒、データポイント32K、Offset 100ppm、観測幅=250ppm、測定温度70℃
・測定核=13C(125MHz)、測定パルスファイル=single pulse dec.jxp(13C)、45℃パルス、積算64回、Relaxation Delay 5秒、データポイント32K、観測幅=15ppm、測定温度65℃
【0171】
上記測定において、含有量の多い方の成分をマトリックス(海部分)とした。結果を表1に示す。
【0172】
<トナー成分溶融混錬物粗砕品の断面におけるドメイン>
上記で撮影したトナー1~6の各トナー成分溶融混錬物粗砕品の粒子断面のSEM像から、トナー成分溶融混錬物粗砕品の断面100μmあたりのアスペクト比が2以上、面積が0.1μm以上のドメインの平均個数を計算した。
【0173】
-ドメインの面積とアスペクト比の測定方法-
上記で撮影したトナー1のトナー成分溶融混錬物粗砕品の1粒子について、断面のSEM画像を画像処理ソフトImage-Pro Plus5.1J(Medi aCybernetics社製)によって2値化処理した。2値化されたこれらの画像から、画像解析ソフトA像くん(旭化成エンジニアリング株式会社製)を用いて、そのトナー成分溶融混錬物粗砕品の粒子の断面面積と、画像上で目視できる各ドメインの面積を求めた。
【0174】
ドメインの面積が0.1μm以上のものについて、最長辺と最短辺の長さを求め、それらのアスペクト比を求めた。これらのうち、アスペクト比が2以上のドメインの個数を求め、トナー成分溶融混錬物粗砕品の断面100μmあたりの、アスペクト比が2以上、面積が0.1μm以上のドメインの個数を算出した。
各トナー成分溶融混錬物粗砕品粒子のアスペクト比が2以上、面積が0.1μm以上のドメインの100μmあたりの個数を合計し、使用したトナー成分溶融混錬物粗砕品粒子の数(トナー成分溶融混錬物粗砕品粒子の断面の数)で割ることで、トナー1のトナー成分溶融混錬物粗砕品粒子の断面のSEM像100μmあたりの、アスペクト比が2以上、面積が0.1μm以上のドメインの平均個数を求めた。
トナー2~6についても同様の操作を行った。結果を表1に示す。
トナー成分溶融混錬物粗砕品の粒子断面における海島構造において、アスペクト比が2以上、面積が0.1μm以上のドメインが、トナー成分溶融混錬物粗砕品粒子断面100μmあたり平均3個以上存在するものについては、表1のトナー成分溶融混錬物粗砕品断面ドメインが「あり」とし、平均3個未満のもの、または海島構造を確認できないためドメインを計測できなかったものについては「なし」とした。
【0175】
(二成分現像剤の製造)
[キャリアの作製]
シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコ-ン) 100質量部
トルエン 100質量部
γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン 5質量部
カーボンブラック 10質量部
上記の混合物をホモミキサーで20分間分散し、コート層形成液を調製した。
このコート層形成液を、芯材として重量平均粒径が35μmのMnフェライト粒子を用いて、芯材表面において平均膜厚が0.20μmになるように、流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布し、乾燥した。
得られたキャリアを電気炉中にて、180℃/2時間焼成し、キャリアAを得た。
【0176】
[二成分現像剤の作製]
作製した各トナーと、キャリアAを、ターブラーミキサー(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製)を用いて48rpmで5分間均一混合し帯電させ、それぞれ二成分現像剤を作製した。なお、トナーとキャリアの混合比率は、評価機の初期現像剤のトナー濃度:7質量%に合わせて混合した。
【0177】
得られた二成分現像剤を用いて下記の通りトナー画像を布生地に熱転写させ、各画像の評価を行った。評価方法、条件は下記の通りである。
【0178】
(評価画像の作製)
[実施例1]
(1)トナー1を使用した二成分現像剤をRICOH Pro C7200S(リコー社製)の5ステーション目にセットし、トナー付着量1.0mg/cmになるようプロセスコントローラーで現像及び転写条件を調整し、剥離紙(商品名:WoWライト8.0、パイオテック社製)上の画像層形成領域にトナー1のベタ画像を出力した。
(2)次いで、剥離紙に転写したトナー画像を定着させた。
(3)その剥離紙上のトナー画像にポリエステル100%の布生地をかさね、160℃のアイロンを荷重:600g/cmで10秒間当ててトナー画像を布生地に熱転写させて評価画像を作製した。
【0179】
[実施例2]
実施例1におけるトナー1をトナー2に変更した以外は、実施例1と同様にして二成分現像剤を作製し、未定着ベタ画像を出力して剥離紙にトナー画像を定着させ、剥離紙上のトナー画像を布生地に熱転写させて評価画像を作製した。
【0180】
[実施例3]
実施例1におけるトナー1をトナー3に変更した以外は、実施例1と同様にして二成分現像剤を作製し、未定着ベタ画像を出力して剥離紙にトナー画像を定着させ、剥離紙上のトナー画像を布生地に熱転写させて評価画像を作製した。
【0181】
[実施例4]
実施例1におけるトナー1をトナー4に変更した以外は、実施例1と同様にして二成分現像剤を作製し、未定着ベタ画像を出力して剥離紙にトナー画像を定着させ、剥離紙上のトナー画像を布生地に熱転写させて評価画像を作製した。
【0182】
[実施例5]
実施例1におけるトナー1をトナー5に変更した以外は、実施例1と同様にして二成分現像剤を作製し、未定着ベタ画像を出力して剥離紙にトナー画像を定着させ、剥離紙上のトナー画像を布生地に熱転写させて評価画像を作製した。
【0183】
[比較例1]
実施例1におけるトナー1をトナー6に変更した以外は、実施例1と同様にして二成分現像剤を作製し、未定着ベタ画像を出力して剥離紙にトナー画像を定着させ、剥離紙上のトナー画像を布生地に熱転写させて評価画像を作製した。
【0184】
<定着画像の垂直断面の観察>
トナー1~6について、各トナー像が布生地への熱転写により定着された定着画像の垂直断面SEM像の撮影を行って、ドメインの形状を確認した。試料をトナー1~6の定着画像とする以外は、上記で説明したトナー成分溶融混錬物粗砕品の断面SEM画像撮影と同様の方法で撮影した。結果を表1に示す。
布生地への熱転写により定着された定着画像の垂直断面における海島構造において、糸状のドメインが存在するものについては定着画像断面ドメインが「あり」とし、そうでないものについては「なし」とした。
【0185】
<画像堅牢性評価方法>
実施例1~5、比較例1の定着画像についてJIS0844:2011の試験方法で洗濯堅牢性試験を行い、画像堅牢性を下記基準で評価した。
下記評価結果のうち、A~Cを、本発明のトナーとして実施可能と判断した。結果を表1に示す。
〔評価基準〕
A:JIS0844変退色用グレースケールランク5、かつ10回洗濯を繰り返しても画像の劣化なし
B:JIS0844変退色用グレースケールランク5、かつ10回洗濯を繰り返した際に画像の一部にひびが入る
C:JIS0844変退色用グレースケールランク4~3
D:JIS0844変退色用グレースケールランク2~1
【0186】
<耐ブロッキング性評価方法>
トナー1~6を温度55℃、湿度50%の高温高湿槽で24時間放置した。放置後、トナーブロッキングの程度を目視で判断し、下記の基準で耐ブロッキング性を評価した。
下記評価結果のうち、A~Cを、本発明のトナーとして実施可能と判断した。結果を表1に示す。
[評価基準]
A:トナーの塊が全く見られない
B:軽くつつくと崩れるトナーの小さな塊がわずかにある
C:軽くつつくと崩れるトナーの塊がある
D:軽くつついても崩れない硬さのトナーの塊がある
【0187】
<可撓性媒体への定着性評価方法>
実施例1~5、比較例1の布生地に熱転写させたトナー画像表面に所定の粘着力を有する粘着テープを貼った後、その粘着テープを引き剥がし、トナー画像の残存状態を評価した。
下記評価結果のうち、A~Cを、本発明のトナーとして実施可能と判断した。結果を表1に示す。
[評価基準]
A:目視において、テープにトナーが残っておらず、テープを剥がした箇所の画像の濃さは変わらない
B:目視において、テープにトナーがほとんど残っておらず、テープを剥がした箇所の画像の濃さはほとんど変わらない
C:目視において、テープにトナーがわずかに残っているが、テープを剥がした箇所の画像の濃さはほとんど変わらない。
D:目視において、テープにトナーがはっきり残っており、テープを剥がした箇所の画像が薄くなっている
【0188】
【表1】
【0189】
実施例1~5のトナーは、定着性、画像堅牢性の評価がA又はBであり、本発明のトナーとして実施可能なものであることが示された。
一方、比較例1のトナーは、軟化温度Tsが50℃以上であったため、定着後のトナー画像が割れ易く、また、接線法ガラス転移温度Tg2ndが0℃以上であったため、ゴム弾性に劣り、画像の引っ張りワレができやすくなり、定着性の評価がC、画像堅牢性の評価がDとなった。
以上の結果から、本発明のトナーであれば、従来のトナーでは定着できない布等の可撓性のある媒体に十分に定着し、かつ十分な可撓性を有することが示された。
【0190】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用及び効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態、又はその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0191】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1>軟化温度Tsが50℃未満であり、かつ、接線法ガラス転移温度Tg2ndが0℃未満であるトナーである。
<2>断面のSEM像において海島構造を有し、前記海島構造において、アスペクト比が2以上、面積が0.1μm以上のドメインが、100μmあたり平均3個以上存在する、前記<1>に記載のトナーである。
<3>前記トナーの定着画像の垂直断面SEM像において、前記定着画像の垂直断面SEM像は海島構造を有し、前記定着画像の垂直断面SEM像における海島構造が縞状の構造を有するか、または、前記定着画像の垂直断面SEM像の海島構造におけるドメインが糸状である、前記<1>または<2>に記載のトナーである。
<4>前記トナーは、結着樹脂として少なくともポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂を含有する、前記<1>、<2>または<3>に記載のトナーである。
<5>前記ドメインはポリウレタン樹脂を含有する、前記<2>、<3>または<4>に記載のトナーである。
<6>前記ポリウレタン樹脂の軟化温度Tsおよび接線法ガラス転移温度Tg2ndがともに45℃以下であり、前記ポリエステル樹脂の軟化温度Tsおよび接線法ガラス転移温度Tg2ndがともに60℃以上であり、かつ前記ポリウレタン樹脂の含有量は、前記結着樹脂および離型剤の合計質量に対して、5質量%以上40質量%以下である、前記<4>または<5>に記載のトナーである。
<7>前記トナーの体積平均粒径は10μm以上20μm以下である、前記<1>、<2>、<3>、<4>、<5>または<6>に記載のトナーである。
<8>結着樹脂及び着色剤を含むカラートナーと、前記<1>、<2>、<3>、<4>、<5>、<6>または<7>に記載のトナーと、を有するトナーセットである。
<9>剥離用支持体と、
前記剥離用支持体上に前記<1>、<2>、<3>、<4>、<5>、<6>または<7>に記載のトナーによる像を有する像転写シートである。
<10>前記<1>、<2>、<3>、<4>、<5>、<6>または<7>に記載のトナーを収容するトナー収容ユニットである。
<11>静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体に静電潜像を形成させる静電潜像形成手段と、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を前記<1>、<2>、<3>、<4>、<5>、<6>または<7>に記載のトナーを含む現像剤で現像してトナー像を形成する現像手段と、前記静電潜像担持体に形成された前記トナー像を、剥離用支持体上または表面粗さが1μm以上の可撓性記録媒体上に転写する転写手段と、前記剥離用支持体上または前記可撓性記録媒体上に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、を有する画像形成装置である。
<12>静電潜像担持体に静電潜像を形成させる静電潜像形成工程と、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を前記<1>、<2>、<3>、<4>、<5>、<6>または<7>に記載のトナーを含む現像剤で現像してトナー像を形成する現像工程と、前記静電潜像担持体に形成された前記トナー像を、剥離用支持体上または表面粗さが1μm以上の可撓性記録媒体上に転写する転写工程と、前記剥離用支持体上または前記可撓性記録媒体上に転写された前記トナー像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法である。
<13>前記トナー像を前記剥離用支持体または前記可撓性記録媒体に最も近い側に形成する、前記<12>に記載の画像形成方法である。
<14>前記可撓性記録媒体を繊維からなる布とする、前記<12>または<13>に記載の画像形成方法である。
【0192】
上記<1>から<7>のいずれかのトナー、上記<8>のトナーセット、上記<9>の像転写シート、上記<10>のトナー収容ユニット、上記<11>の画像形成装置、上記<12>から<14>のいずれかの画像形成方法によれば、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0193】
1 給紙部
2 給紙ローラ
3、4 レジストローラ
4Y、4C、4M、4K、4A 感光体ドラム
4’ 感光体ドラム
5、11、17、23、29 感光体
6、12、18、24、30 帯電器
8、14、20、26、32 現像手段
10、16、22、28、34 転写器
9、15、21、27、33 クリーニング装置
7、13、19、25、31 露光光
20Y、20C、20M、20K、20A トナー像形成部
20’ トナー像形成部
30’ クリーニング装置
40’ 帯電装置
35 本発明のトナー現像ユニット
36 ブラックトナー現像ユニット
37 シアントナー現像ユニット
38 マゼンタトナー現像ユニット
39 イエロートナー現像ユニット
30 帯電器
40 中間転写ベルト
41 転写装置
43 定着装置
50 現像装置
60 中間転写ベルト
61Y、61C、61M、61K、61A 一次転写ローラ
65 二次転写装置
70 給紙部
71 給紙カセット
72 給紙ローラ
73 レジストローラ
90 定着装置
100 ドメイン(島部)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0194】
【特許文献1】特許第5510517号公報
【特許文献2】特開2012-008172号公報
図1
図2
図3
図4
図5