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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072811
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】IgE抑制剤及び医薬製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/00 20060101AFI20240521BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
A61K33/00
A61P37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194193
(22)【出願日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2022183614
(32)【優先日】2022-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100125450
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 広明
(72)【発明者】
【氏名】中川 晋作
(72)【発明者】
【氏名】石本 憲司
(72)【発明者】
【氏名】南 佑斉
(72)【発明者】
【氏名】樋野 展正
(72)【発明者】
【氏名】小林 光
(72)【発明者】
【氏名】小林 悠輝
(72)【発明者】
【氏名】竹内 ほのか
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA06
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シリコン粒子を含有するIgE抑制剤を提供する。
【解決手段】本発明の1つのIgE抑制剤は、pH値が6以上の水又は水含有液に接したときに水素が発生する、シリコン粒子を含有し、I型アレルギー疾患の抑制及び/又は予防するために使用され、且つ該シリコン粒子が毎日投与されたときに、最初の該シリコン粒子の投与日から14日後の血液中の総IgEの産生量の増加を抑制する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH値が6以上の水又は水含有液に接したときに水素が発生する、シリコン粒子を含有し、
I型アレルギー疾患の抑制及び/又は予防するために使用され、且つ
前記シリコン粒子が毎日投与されたときに、最初の前記シリコン粒子の投与日から14日後の血液中の総IgEの産生量の増加を抑制する、
IgE抑制剤。
【請求項2】
前記血液中の前記I型アレルギー疾患に対するIgG1の抗体価を抑制する、
請求項1に記載のIgE抑制剤。
【請求項3】
前記I型アレルギー疾患が、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、アナフィラキシー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性気管支喘息の群から選択される少なくとも1種の疾患である、
請求項1に記載のIgE抑制剤。
【請求項4】
前記I型アレルギー疾患がアレルギー性鼻炎であって、
前記シリコン粒子が毎日投与されたときに、最初の前記シリコン粒子の投与日から14日後の前記アレルギー性鼻炎の症状を緩和する、
請求項1に記載のIgE抑制剤。
【請求項5】
前記I型アレルギー疾患が食物アレルギーであって、
前記シリコン粒子が毎日投与されたときに、最初の前記シリコン粒子の投与日から19日後の前記食物アレルギーの症状を緩和する、
請求項1に記載のIgE抑制剤。
【請求項6】
前記I型アレルギー疾患が食物アレルギーであって、
前記シリコン粒子が毎日投与されたときに、最初の前記シリコン粒子の投与日から22日後のアナフィラキシーを抑制する、
請求項1に記載のIgE抑制剤。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のIgE抑制剤を含有する、
I型アレルギー疾患を治療又は予防するための医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IgE抑制剤、及びIgE抑制剤を含有する医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会において、人類は数多くのアレルギー疾患と向き合っている。例えば、アレルギー疾患の代表例である食物アレルギー及びアレルギー性鼻炎等が含まれるI型アレルギー疾患は、日常生活に与える影響が大きい疾患の一つであるといえる。I型アレルギー疾患に苦しむ患者数の増加は、我が国を含む多くの国において社会問題化していることから、その症状の改善・緩和に対するニーズは極めて高いといえる。
【0003】
一方、シリコン微細粒子が動物に経口摂取され、体内のある環境下において水と反応することによって生成される水素が、ヒドロキシルラジカルに代表される活性酸素を消滅し得るため、シリコン微細粒子が幾つかの疾患に対する予防又は治療剤となり得ることが開示されている(特許文献1~12)。また、従来から知られているシリコン微細粒子の水素発生能では説明することが難しい新たな作用についても、知見が得られ始めている(特許文献13)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2019/021769号公報
【特許文献2】特開2019-214556号公報
【特許文献3】特開2020-7300号公報
【特許文献4】特開2020-79240号公報
【特許文献5】特開2020-79228号公報
【特許文献6】特開2020-117480号公報
【特許文献7】特開2020-117481号公報
【特許文献8】特開2020-117482号公報
【特許文献9】特開2020-117483号公報
【特許文献10】特開2020-117484号公報
【特許文献11】特開2020-117485号公報
【特許文献12】特開2020-117486号公報
【特許文献13】国際公開WO2022/201775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、I型アレルギー疾患に対してIgE抗体(以下、本願においては「IgE」という。)の産生量の増加を抑制し得る、シリコン粒子を含有するIgE抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、人間の日常生活への影響が大きいI型アレルギー疾患の要因となる、IgEの産生量の増加の抑制に対して大きく貢献し得るものである。本発明者らは、動物(マウス)を用いてI型アレルギー疾患に対する所定のシリコン粒子の有効性を調べていたところ、大変興味深い下記の(1)乃至(3)の知見が得られた。
(1)該シリコン粒子の摂取により、血液中におけるある特定のアレルゲンに対するIgG2aの抗体価に比してIgG1の抗体価が抑制され得るとの知見。
(2)該シリコン粒子の摂取により、血液中における総IgEの産生量が増加すること自体が抑制され得るとの知見。
(3)OVA(オボアルブミン)の投与開始の前後に、該シリコン粒子の摂取を開始する比較実験を行った結果、該シリコン粒子の摂取開始の時期に依らず総IgEの産生量の増加が抑制され得ることから、治療薬としての役割に加えて予防薬としての役割も担い得るとの知見。
【0007】
そして、本発明者らが更に研究と分析を重ねたところ、例えば、ヘルパーT細胞であるTh1細胞とTh2細胞との免疫バランスが崩れ、Th2細胞の働きが優位になることによってI型アレルギー疾患のアレルゲンに対するIgG1の抗体価が増加し得る状況であっても、該シリコン粒子をある条件の下で摂取することにより、IgG1の抗体価が抑制され得ることが確認された。本発明者らが更に研究及び分析を重ねた結果、該シリコン粒子をある条件の下で摂取することにより、少なくともI型アレルギー疾患の例である食物アレルギー及びアレルギー性鼻炎による各症状が改善又は緩和し得ることが確認された。本発明は、上述の視点に基づいて創出された。
【0008】
本発明の1つのIgE抑制剤は、pH値が6以上の水又は水含有液に接したときに水素が発生する、シリコン粒子を含有し、I型アレルギー疾患の抑制及び/又は予防するために使用され、且つ該シリコン粒子が毎日投与されたときに、最初の該シリコン粒子の投与日から14日後の血液中の総IgEの産生量の増加を抑制する。
【0009】
このIgE抑制剤によれば、本願出願人において詳細な機序まで掴めていないが、上述のシリコン粒子が上記条件下において投与されることにより、総IgEの産生量の増加を阻害する何らかの因子が該シリコン粒子によって生じ又は形成され得る。その結果、血液中における総IgEの産生量の増加自体が抑制され得ることから、該IgE抑制剤は、I型アレルギー疾患の抑制及び/又は予防に寄与し得る。
【0010】
なお、上述の発明において、該I型アレルギー疾患が、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、アナフィラキシー、アレルギー性結膜炎、及びアレルギー性気管支喘息の群から選択される少なくとも1種の疾患であることは、該IgE抑制剤の好適な適用例となる。
【0011】
ところで、上述のIgE抑制剤の形態は制限されない。例えば、既存の生理学的許容可能な物質に該IgE抑制剤を混合した混合物の形態、又は製剤化した形態は採用し得る一態様である。なお、製剤化した該形態の代表的な例は、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、又はゼリー等である。
【0012】
また、本願における「シリコン粒子」は、平均の粒子径が1μm以上100μm未満の粒子を主たる粒子とする。
【0013】
なお、「シリコン粒子」の上述の数値範囲は代表例であり、その数値範囲はより限定的に変動し得る。また、「シリコン粒子」の用途、使用方法、必要とする機能等に応じて、適宜、粒子径が選定される。
【0014】
また、本願における「pH調整剤」は、pH値を6以上(より狭義には6超、さらに狭義には7以上、最も狭義には7.4超)の、弱酸性~アルカリ性に調整できる薬剤(以下、「弱酸性剤又はアルカリ性剤」という。)であれば、特に材料は限定されない。また、弱酸性剤又はアルカリ性剤の例は、炭酸水、水道水、純水、硬水、軟水炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、その他の生理学的に許容可能なpH調整剤である。その中でも最も汎用品である炭酸水素ナトリウムは、pH値調整機能とともに、安全性及び汎用性に優れるという複数の長所を兼ね揃える。なお、何れのpH調整剤においても、酸によって分解されない形態とすることは好適な一態様である。また、本願のIgE抑制剤を経口摂取する場合、胃酸で分解しない、又は分解され難い形態にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の1つのIgE抑制剤によれば、上述のシリコン粒子が上記条件下において投与されることにより、血液中における総IgEの産生量の増加自体が抑制され得る。その結果、該IgE抑制剤は、I型アレルギー疾患の抑制及び/又は予防に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】マウスモデルを用いた、食物アレルギーに対する第1の実施形態のIgE抑制剤(飼料)の効能又は効果を評価するための第1実施計画(プロトコール)である。
図2】食物アレルギーモデル動物(マウス)が飼料1を摂取した場合(実施例1)の、OVAの経口投与を開始する前日(Day-1)及び該飼料を摂取してから25日後(Day10)の、食物アレルゲンに対するIgG1の抗体価と、通常飼料を摂取した場合(比較例)の、該飼料を摂取してから25日後の食物アレルゲンに対するIgG2aの抗体価とを比較した棒グラフである。
図3】食物アレルギーモデル動物(マウス)が飼料1を摂取した場合(実施例1)の、OVAの経口投与を開始する前日(Day-1)及び該飼料を摂取してから25日後(Day10)の総IgEの産生量と、通常飼料を摂取した場合(比較例)の、OVAの経口投与を開始する前日及び該飼料を摂取してから25日後の総IgEの産生量とを比較した棒グラフである。
図4】食物アレルギーモデル動物(マウス)が第1の実施形態の飼料を摂取した場合(実施例1)の経過日数による下痢症状の発生のスコアリングと、通常飼料を摂取した場合(比較例)の経過日数による下痢症状の発生のスコアリングとを比較した折れ線グラフである。
図5】実施例1及び比較例の食物アレルギーモデル動物(マウス)の、Day14の代表的な肛門の写真である。
図6】マウスモデルを用いた、アレルギー性鼻炎に対する第1の実施形態のIgE抑制剤(飼料)の効能又は効果を評価するための第2実施計画(プロトコール)である。
図7】アレルギー性鼻炎モデル動物(マウス)が第1の実施形態の飼料を摂取した場合(実施例2)の経過日数によるくしゃみの発生回数と、通常飼料を摂取した場合(比較例)の経過日数によるくしゃみの発生回数とを比較した折れ線グラフである。
図8】マウスモデルを用いた、食物アレルギーに対する第1の実施形態のIgE抑制剤(飼料)の効能又は効果を確認するための第3実施計画(プロトコール)である。
図9】食物アレルギーモデル動物(マウス)が、飼料2を摂取した場合(実施例3)と、通常飼料を摂取した場合(比較例)の、OVA特異的IgE抗体濃度を比較したグラフである。
図10】食物アレルギーモデル動物(マウス)が、飼料2を摂取した場合(実施例3)と、通常飼料を摂取した場合(比較例)の、OVAの経口投与後の時間(分)の経過に伴う直腸の温度変化を比較したグラフである。
図11】食物アレルギーモデル動物(マウス)が、飼料2を摂取した場合(実施例3)と、通常飼料を摂取した場合(比較例)の、(a)リンパ球中のTh1細胞の割合の変化を示すグラフ、及び(b)リンパ球中のTh2細胞の割合の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。
【0018】
<第1の実施形態>
本実施形態のIgE抑制剤、及び該IgE抑制剤の製造方法は次のとおりである。
【0019】
[1]IgE抑制剤
本実施形態のIgE抑制剤の一例は、次の(x)及び(y)を公知の撹拌機を用いて混ぜ合わすことによって製造される。
(x)母材としての粉末状の通常飼料(オリエンタル酵母工業株式会社製、商品名MF)
(y)水と接することにより特に弱酸性~アルカリ性において水素を発生し得るシリコン粒子、すなわち水素発生能を有するシリコン粒子
【0020】
[2]IgE抑制剤の製造方法
次に、本実施形態のIgE抑制剤の製造方法を説明する。
【0021】
本実施形態においては、例えば、シリコン粉末(例えば、粒径300μm以下,純度が4N(すなわち、99.99%)以上、より好適には5N以上(すなわち、99.999%)以上,i型シリコン)を、該IgE抑制剤の原料の一部として用いる。なお、本実施形態の他の一態様においては、前述の純度よりも高純度、又は低純度のシリコン粉末を採用することができる。なお、本実施形態のシリコン粉末は結晶シリコンの粉末であるが、該シリコン粉末がアモルファスシリコン又はポーラスシリコンであっても、本実施形態の少なくとも一部の効果が奏され得る。
【0022】
<粉砕及び分級工程>
本実施形態の一例は、所定の高い圧力(例えば、数気圧)のガス(例えば、空気)を噴射ノズルから噴出させて形成する高速ジェット気流によって加速された上述のシリコン粉末を、相互衝突させ、及び/又は摩砕させることにより粉砕する、ジェットミル法を採用する。本実施形態の一例においては、該ジェットミル法を用いて上述のシリコン粉末を、例えば、少なくとも5分間連続して粉砕処理を行うとともに、所定の粒子径のシリコン粒子を分級する粉砕及び分級工程が行われる。より具体的には、該粉砕及び分級工程においては、45μm以上の該シリコン粒子の、全てのシリコン粒子に対する割合が、5質量%以下(より好適には3質量%以下、さらに好適には1質量%以下、さらに好適には0.5質量%以下、さらに好適には0.2質量%以下)となるように分級される。
【0023】
なお、特に弱酸性~アルカリ性において水素発生能を有する限り、本実施形態のシリコン粒子の粒子径の上限又は下限は限定されない。従って、本実施形態のIgE抑制剤の製造方法においては、必ずしも上述の分級処理を要しない。
【0024】
ここで、シリコン粒子が直接的に吸収され血管に浸入することを確度高く防止し得る上述の観点に着目すれば、2μm未満の粒子径の該シリコン粒子の、全てのシリコン粒子に対する割合が、0.5質量%以下(より好適には0.3質量%以下、さらに好適には0.1質量%以下、さらに好適には0.05質量%以下、さらに好適には0.01質量%未満)であることが、本実施形態の好適な一態様である。
【0025】
なお、本実施形態においては、ジェットミル法を採用していることにより、シリコン粒子の表面が不均質及び/又は不完全な酸化シリコンを備えることになるため、シリコン粒子の水素発生能を維持しつつ、該表面を全体として親水性化させ得る。なお、該シリコン粒子が水素発生能を有する限り、該酸化シリコンの膜厚は限定されない。
【0026】
上述の工程を行うことにより、本実施形態のシリコン粒子、あるいはIgE抑制剤を製造することができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、該通常飼料とシリコン粒子とを単に混ぜ合わせるだけでIgE抑制剤を製造しているが、本実施形態のIgE抑制剤は、そのような態様に限定されない。例えば、本実施形態のシリコン粒子を単独で、又は該通常飼料とともに公知の打錠機等を用いて成形したものも、該IgE抑制剤の一例である。また、本実施形態のシリコン粒子を、又は該シリコン粒子と該通常飼料を、水又は水含有液を酸性状態にする(すなわち、pH値を酸性側の値にする)ため調整作用を有するクエン酸、あるいは生理学的に許容可能な粘着剤又は増粘剤等とともに公知の打錠機等を用いて成形したものも、該IgE抑制剤の一例である。加えて、上述の通常飼料の種類は、生理学的に許容可能な材料である限り、限定されない。さらに、該シリコン粒子の形は限定されない。例えば、不定形、多角形、球、楕円形、円盤、又は円柱状等は、該シリコン粒子の一態様である。
【0028】
本実施形態のシリコン粒子の水素発生能の一例は、次のとおりである。
【0029】
上述の粉砕及び分級工程を経た、代表的な粒子径が1μm以上100μm未満となるシリコン粒子は、ヒトの体温相当の温度(37℃)の炭酸水素ナトリウムを溶質とする水溶液(pH値は8.2)に浸漬させることにより、その浸漬開始から24時間経過するまでの水素発生量が、約400mL(ミリリットル)/g(グラム)であった。
【0030】
ところで、該通常飼料に対する該シリコン粒子の割合(質量比)の一例は、該通常飼料を100としたときに、該シリコン粒子が1以上3以下(より狭義には、1以上2.5以下)である。なお、該通常飼料に対する該シリコン粒子の割合(質量比)は、限定されない。該通常飼料を100としたときに、代表的な該シリコン粒子の割合は、0.02~70である。
【0031】
また、本実施形態のIgE抑制剤は、上述の通常飼料及びシリコン粒子とともにクエン酸以外のpH調整剤、すなわち弱酸性剤又はアルカリ性剤を用いることも採用し得る他の一態様である。但し、ヒトの又は非ヒトの動物の体内(特に、pH値が6以上の器官内)において本実施形態のシリコン粒子の少なくとも水素発生能を確度高く発現させる観点から言えば、該pH調整剤と該シリコン粒子とが公知の生理学的に許容可能な胃難溶性の膜に被覆又は胃難溶性のカプセル内に充填又は収容された状態で摂取されることは、好適な一態様である。
【0032】
[3]IgE抑制剤の効能又は効果に関する評価
以下に、各種のI型アレルギー疾患に対する本実施形態のIgE抑制剤の各種の効能又は効果を評価した結果を示す。
【0033】
(実施例1)
図1は、日本エスエルシー株式会社から入手したBALB/cマウス(以下、「マウス」という。)を用いた、食物アレルギーに対する第1の実施形態のIgE抑制剤(飼料)の効能又は効果を評価するための第1実施計画(プロトコール)である。
【0034】
本実施例においては、7週齢の正常なBALB/cマウス(10個体)が採用された。また、第1の実施形態の製造方法に基づいて製造された、該通常飼料を質量比において99としたときに該シリコン粒子が質量比において1である該IgE抑制剤を、該マウスの飼料(以下、「飼料1」という。)とした。
【0035】
ここで、図1における右向きの矢印が示す「Day」は、惹起相の段階の初日、すなわちOVA(50mg/mouse)の経口投与を1週間に3回(毎週、月曜日、水曜日、及び金曜日)行うことを開始した日(以下、本実施例においては「開始日」という。)を基準(Day0)とした、日数を意味する。そして、図1に示すように、前述の週3回の投与は、2週間に亘って継続された。また、白抜きの矢印が示す期間(T)は、その「T」が示す期間中において毎日、飼料1を及び水を自由摂取させた期間を示している。
【0036】
本実施例においては、図1の「A」に示す、開始日の14日前及び7日前のそれぞれにおいて、食物アレルギーモデル動物(マウス)となるための感作相の段階で、該OVAとアジュバント(Adjuvant)としての水酸化アルミニウムゲルとの混合物(1mg/mouse)を腹腔内に投与した。なお、本実施例のOVAは、ニワトリ卵白アルブミンである。
【0037】
また、図1の「P」に示す、開始日の1日前(Day-1)、及び開始日から10日後(Day10)のそれぞれにおいて、総IgEの産生量を測定するために、該マウスの血液(より具体的には、血漿)を採取した。
【0038】
一方、コントロール群(比較例,9個体)には、該シリコン粒子を含有しない上述の粉末状の通常飼料(オリエンタル酵母工業株式会社製、商品名MF)及び水を自由摂取させたうえで、図1における「A」及び「P」の各処理を行った。
【0039】
次に、実施例1において確認されたIgE抑制剤の効能又は効果について説明する。
【0040】
図2は、食物アレルギーモデル動物(マウス)が飼料1を摂取した場合(実施例1)の、OVAの経口投与を開始する前日(Day-1)及び該飼料を摂取してから25日後(Day10)の、食物アレルゲンに対するIgG1の抗体価と、該通常飼料を摂取した場合(比較例)の、該飼料を摂取してから25日後の食物アレルゲンに対するIgG2aの抗体価とを比較した棒グラフである。
【0041】
図2に示すように、OVAの経口投与を開始する前日(Day-1)において、実施例1のIgG1の抗体価は、該シリコン粒子をある条件の下で摂取することにより、比較例のIgG1の抗体価に比べて抑制され得ることが確認された。この現象は、比較例においてTh1細胞とTh2細胞との免疫バランスが崩れ、Th2細胞の働きが優位になっていたのが、実施例1においては、そのバランスが改善されていることを示唆するものである。従って、この結果によれば、IgE抑制剤としての役割を担う飼料1(より狭義には、シリコン粒子)が、将来的な食物アレルギーの発症を抑制又は緩和し得る、予防するための医薬製剤としての役割を担い得ることを示している。
【0042】
さらに、開始日から10日後(Day10)における該IgG1の抗体価を調べた結果、実施例1の該IgG1の抗体価は、比較例の該IgG1の抗体価よりも低く抑えられていることが明らかとなった。従って、この結果によれば、IgE抑制剤としての役割を担う飼料1(より狭義には、シリコン粒子)が、食物アレルギーの症状が現れた後であっても、その症状を抑制又は緩和し得る、治療するための医薬製剤としての役割を担い得ることを示している。
【0043】
一方、大変興味深いことに、IgG2aについては、IgG1の結果とは異なる結果が得られた。具体的には、OVAの経口投与を開始する1日前(Day-1)及び開始日から10日後(Day10)のいずれにおいても、実施例1の該IgG2aの抗体価と比較例の該IgG2aの抗体価、及び該IgG2aの抗体価と比較例の該IgG2aの抗体価の間には、有意な差が認められなかった。
【0044】
従って、詳細な機序まで掴めていないが、I型アレルギーの患者について、Th1細胞とTh2細胞との免疫バランスが崩れ、Th2細胞の働きが優位になっている状況におけるアレルゲンに対するIgG1の抗体価に対して、飼料1(より狭義には、シリコン粒子)が摂取されることによってIgG1の抗体価が抑制され得るという現象は、Th2細胞の働きが優位になっている状況を改善していることを示唆するものであり、特筆に値する。
【0045】
上述の各知見に基づけば、本実施形態の飼料1は、pH値が6以上の水又は水含有液に接したときに水素が発生する、シリコン粒子を含有し、I型アレルギー疾患の抑制及び/又は予防するために使用され、且つ該シリコン粒子が毎日投与されたときに、最初の飼料1(より狭義には、該シリコン粒子)の投与日から14日後の血液中のIgG1の抗体価を抑制する、医療薬剤としての役割を担い得る。
【0046】
また、本発明者らは、血漿中のIgE濃度の変化についても調べた。
【0047】
図3は、食物アレルギーモデル動物(マウス)が飼料1を摂取した場合(実施例1)の、OVAの経口投与を開始する前日(Day-1)及び該飼料を摂取してから25日後(Day10)の総IgEの産生量と、該通常飼料を摂取した場合(比較例)の、OVAの経口投与を開始する前日及び該飼料を摂取してから25日後の総IgEの産生量とを比較した棒グラフである。なお、総IgEの産生量の評価指標として、血漿中のIgE濃度(IgE Concentration:ng/mL)を用いた。
【0048】
図3に示すように、OVAの経口投与を開始する前日(Day-1)においては、飼料1を摂取した場合(実施例1)の総IgEの産生量と、比較例の該総IgEの産生量とは、いずれも検出されなかった。しかしながら、飼料1を摂取した場合(実施例1)の、該飼料を摂取してから遅くとも25日後(Day10)の総IgEの産生量は、比較例の該総IgEの産生量よりも有意に低く抑えられることが確認された。換言すれば、IgE抑制剤としての役割を担う飼料1(より狭義には、シリコン粒子)が毎日投与されたときに、飼料1は、最初の飼料1の投与日から25日後の血液中の総IgEの産生量の増加を有意に抑制し得る飼料であることが確認された。
【0049】
従って、詳細な機序まで掴めていないが、飼料1を摂取することにより、血液中における総IgEの産生量の増加を阻害する、上述のIgG1の抗体価に関する実験結果とも関連すると考えられる何らかの因子が該シリコン粒子によって生じ又は形成され得ることにより、本実施例は、比較例に対して、総IgEの産生量の増加が抑制されることが明らかとなった。
【0050】
図4は、食物アレルギーモデル動物(マウス)が飼料1を摂取した場合(実施例1)の経過日数による下痢症状の発生のスコアリングと、該通常飼料を摂取した場合(比較例)の経過日数による下痢症状の発生のスコアリングとを比較した折れ線グラフである。また、図5は、実施例1及び比較例の食物アレルギーモデル動物(マウス)の、Day14の代表的な肛門の写真である。
【0051】
なお、図4に示す下痢症状の発生のスコアリングは、次に示す分類基準に基づいて行われた。具体的には、本発明者らは、開始日以降において、1週間に3回のOVAが経口投与される各投与の後、30分以上1時間以内の該マウスの便を観察することにより、正常(スコア0)、軽度の下痢(スコア1)、中程度の下痢(スコア2)、及び重度の下痢(スコア3)に分類された4段階のスコアリングを採用した。
【0052】
その結果、図4及び図5に示すように、開始日から遅くとも4日が経過した後(すなわち、図4に示すDay4、Day7、Day9、及びDay11)は、継続して、本実施例の下痢症状が有意に緩和又は抑制されることが確認された。換言すれば、IgE抑制剤としての役割を担う飼料1(より狭義には、シリコン粒子)が毎日投与されたときに、飼料1は、最初の飼料1の投与日から19日後に、下痢症状が有意に緩和又は抑制される飼料であることが分かった。なお、本発明らの別の研究により、下痢症状の緩和又は抑制に加えて、下痢症状の誘発率も、比較例に対して抑制され得ることが分かった。
【0053】
なお、既にIgG1の産生量に関する実験結果においても述べたとおり、実施例1においては、食物アレルギーモデル動物(マウス)となるように該OVAが投与される前からマウスは該IgE抑制剤を摂取していることから、該IgE抑制剤が食物アレルギーに対する予防の役割を担い得ることが確認されたことは特筆に値する。
【0054】
(実施例2)
図6は、マウスを用いた、アレルギー性鼻炎に対する第1の実施形態のIgE抑制剤(飼料)の効能又は効果を評価するための第2実施計画(プロトコール)である。
【0055】
本実施例においては、5週齢の正常なBALB/Cマウス(10個体)が採用された。また、実施例1と同様に、第1の実施形態の製造方法に基づいて製造された飼料1が採用された。
【0056】
ここで、図6における右向きの矢印が示す「Day」は、惹起相の段階の初日、すなわちOVA(500μg/mouse)の経鼻投与を毎日(換言すれば、1日に1回)行うことを開始した日(以下、本実施例においては「開始日」という。)を基準(Day0)とした、日数を意味する。そして、図6に示すように、前述の1日に1回の投与は、2週間に亘って継続された。また、白抜きの矢印が示す期間(T)は、その「T」が示す期間中において毎日、飼料1を及び水を自由摂取させた期間を示している。
【0057】
本実施例においては、図6の「A」に示す、開始日の21日前、14日前及び7日前のそれぞれにおいて、アレルギー性鼻炎モデル動物(マウス)となるための感作相の段階で、該OVAとアジュバント(Adjuvant)としての水酸化アルミニウムゲルとの混合物(25μg/mouse)を腹腔内に投与した。なお、本実施例のOVAも、実施例1と同様に、ニワトリ卵白アルブミンである。
【0058】
また、図6の「P」に示す、開始日の1日前(Day-1)、及び開始日から13日後(Day13)のそれぞれにおいて、総IgEの産生量を測定するために、該マウスの血液(より具体的には、血漿)を採取した。
【0059】
一方、コントロール群(比較例,10個体)には、該シリコン粒子を含有しない上述の通常飼料(オリエンタル酵母工業株式会社製、商品名MF)及び水を自由摂取させたうえで、図1における「A」の処理、及び開始日から13日後のマウスの血液(より具体的には、血漿)の採取を行った。
【0060】
次に、実施例2において確認されたIgE抑制剤の効能又は効果について説明する。
【0061】
本実施例における上述の総IgEの産生量を測定が行われた結果、比較例のDay13における総IgEの産生量は、Day-1の時に比べて約3.4倍にまで上昇していた。一方、本実施例(実施例2)のDay13における総IgEの産生量は、Day-1の時に比べて約2.9倍の上昇に抑えられていることが確認された。従って、最初の飼料1(より狭義には、シリコン粒子)の投与日から遅くとも14日後には、飼料1は、血液中の総IgEの産生量の増加を抑制する役割を担い得ることが分かる。
【0062】
図7は、アレルギー性鼻炎モデル動物(マウス)が第1の実施形態の飼料を摂取した場合(実施例2)の経過日数によるくしゃみの発生回数と、該通常飼料を摂取した場合(比較例)の経過日数によるくしゃみの発生回数とを比較した折れ線グラフである。
【0063】
図7に示すように、飼料1を摂取した場合(実施例2)の、開始日から遅くとも12日が経過したときに、換言すれば、IgE抑制剤としての役割を担う飼料1(より狭義には、シリコン粒子)が毎日投与されたときの最初の飼料1の投与日から遅くとも13日後に、比較例に対して、本実施例のくしゃみ(Sneezing)が有意に緩和又は抑制されることが確認された。なお、本発明者らの別の研究により、くしゃみの緩和又は抑制に加えて、「鼻かき(Rubbing)」の回数も、比較例に対して抑制され得ることが分かった。
【0064】
上述のとおり、少なくともI型アレルギー疾患の例である食物アレルギーによる症状の代表例である下痢、及びアレルギー性鼻炎による症状の代表例であるくしゃみに対する改善又は緩和効果が見られた。
【0065】
従って、これまでに説明した各知見に基づけば、第1の実施形態のIgE抑制剤を含有する医薬製剤は、I型アレルギー疾患を治療又は予防するための医薬製剤としての役割を担い得ることが分かる。より具体的には、本実施形態の飼料1は、pH値が6以上の水又は水含有液に接したときに水素が発生する、シリコン粒子を含有し、I型アレルギー疾患の抑制及び/又は予防するために使用され、且つ該シリコン粒子が毎日投与されたときに、最初の飼料1(より狭義には、該シリコン粒子)の投与日から14日後の血液中の総IgEの産生量の増加を抑制するIgE抑制剤としての役割を担い得る。
【0066】
(実施例3)
図8は、マウスモデルを用いた、食物アレルギーに対する第1の実施形態のIgE抑制剤(飼料)の効能又は効果を確認するための第3実施計画(プロトコール)である。
【0067】
本実施例においては、8週齢の正常なBALB/cマウス(12個体。但し、図9に示す結果のみ6個体)が採用された。また、第1の実施形態の製造方法に基づいて製造された、該通常飼料を質量比において97.5としたときに該シリコン粒子が質量比において2.5である該IgE抑制剤を、該マウスの飼料(以下、「飼料2」という。)とした。
【0068】
ここで、図8における右向きの矢印が示す「Day」は、飼料2及び水を自由摂取させた初日を基準(Day0)とした、日数を意味する。従って、白抜きの矢印が示す期間(T)は、その「T」が示す期間中において毎日、飼料2及び水を自由摂取させた期間を示している。
【0069】
また、図8の「Q」に示す3つの期間、すなわちDay1~3、Day8~10及びDay15~17は、いずれも、食物アレルギーモデル動物(マウス)となるための感作相の段階において、経皮感作を行ったことを示す。具体的には、本実施例の実験者は、該マウスの除毛した背部皮膚に対してテープストリッピングを行った後、該マウスの背部皮膚にOVA(オボアルブミン)を0.4mg染み込ませた直径1cmの円状のガーゼパッチを継続的に3日間貼付し続けた後、該ガーゼパッチを剥がした。
【0070】
本実施例においては、図8の「B」、すなわちDay14において、該マウスから採血を行った後、OVA特異的IgE抗体濃度を、ELISA(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay)法を用いて測定した。
【0071】
一方、コントロール群(比較例,12個体。但し、図9に示す結果のみ6個体)には、該シリコン粒子を含有しない実施例1と同様の通常飼料及び水を自由摂取させたうえで、図8における「Q」の処理を行った。
【0072】
次に、実施例3において確認されたIgE抑制剤の効能又は効果について説明する。
【0073】
図9は、食物アレルギーモデル動物(マウス)が、飼料2を摂取した場合(実施例3)と、通常飼料を摂取した場合(比較例)の、OVA特異的IgE濃度を比較したグラフである。
【0074】
図9に示すように、本実施例のマウスの該IgE濃度は、比較例のマウスの該IgE濃度に比べて低下していることが分かった。
【0075】
本実施例においては、Day22において、該マウスに経口投与によりOVA(50mg/mouse)を与えた後、該マウスの直腸温度の経時変化を、Physitemp Instruments,LLC製の「BAT-12 Microprobe Thermometer」を用いて測定した。
【0076】
図10は、食物アレルギーモデル動物(マウス)が、飼料2を摂取した場合(実施例3)と、通常飼料を摂取した場合(比較例)の、OVAの経口投与後の時間(分)の経過に伴う直腸の温度変化を比較したグラフである。なお、図10中のアスタリスクは、統計学的に有意差が生じていることを意味する。すなわち、OVAの経口投与から5分後には、比較例のマウスの直腸温度の低下に比べて、実施例3のマウスの直腸温度の低下が有意に抑制されていることを示している。
【0077】
図10に示すように、本実施例のマウスの直腸の温度低下の度合いが、比較例のマウスの該温度低下の度合いに比べて抑えられていることが分かった。従って、飼料2(より狭義には、上述のシリコン粒子)は、本実施例のマウスの体温低下を起こし難くする効果を有していることが分かる。換言すれば、飼料2(より狭義には、上述のシリコン粒子)は、アナフィラキシーの予防用薬剤としての可能性を示すものである。
【0078】
上述の各知見に基づくと、本実施例の飼料2(より狭義には、上述のシリコン粒子)は、飼料1と同様に、I型アレルギー疾患の抑制及び/又は予防するために使用され、且つ感作の手法を問わず、該シリコン粒子が毎日投与されたときに、最初の該シリコン粒子の投与日から少なくとも14日後の血液中の総IgEの産生量の増加を抑制する、医療薬剤としての役割を担う蓋然性があるといえる。
【0079】
さらに、本願発明者らは、本実施例の分析に加えて別の観点での分析も同時に行った。具体的には、本願発明者らは、本実施例の第3実施計画に沿って、図8の「C」において経皮感作部位の所属リンパ節に存在するリンパ球を分析した。
【0080】
その結果、図11に示すように、通常飼料を摂取した該マウス(比較例)と飼料2を摂取した該マウス(実施例3)の両者において、リンパ球中のTh1細胞の割合に変化が殆どなかった一方で、実施例3のマウスのTh2細胞の割合は、比較例のTh2細胞の割合に比べて有意に減少していた。この分析結果からも、飼料2(より狭義には、上述のシリコン粒子)は、血液中の総IgEの産生量の増加を抑制する医療薬剤としての役割を担う蓋然性があるといえる。
【0081】
以上述べたとおり、上述の実施形態及び各実施例の開示は、該実施形態及び該実施例の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、該実施形態及び該実施例の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する他の変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、I型アレルギー疾患の諸症状の改善又は緩和し得るIgE抑制剤、又は該IgE抑制剤を含有する医薬製剤として、広く利用され得る。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11