(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072950
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 31/08 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
H01R31/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183857
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】早川 和範
(57)【要約】
【課題】ワイヤーハーネスを構成する電線の電気的な接続パターンを変更できるコネクタを提供する。
【解決手段】ジョイントコネクタ1は、絶縁材料で形成されたハウジング30と、導電材料で形成され、それぞれに端子金具40を介して電線10wがつながる八つの端子金具50と、導電材料で形成され、端子金具50に向かって移動自在に収容された接続金具60と、接続金具60が四つの端子金具50に当接して電気的に接続状態となる接続位置と電気的に非接続状態となる非接続位置とで接続金具60の移動を操作する操作ボタン70とが設けられたことを特徴としている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料で形成された筐体部と、
導電材料で形成され、それぞれに電線がつながる複数の端子部と、
導電材料で形成され、前記端子部に向かって移動自在に収容された接続部と、
前記接続部が二以上の前記端子部に当接して電気的に接続状態となる接続位置と電気的に非接続状態となる非接続位置とで前記接続部の移動を操作する操作部とが設けられた
コネクタ。
【請求項2】
前記端子部は、前記接続部の移動方向の一方側に露出する一方側当接面を有するとともに、前記接続部は、当該接続部の移動方向の他方側に露出する他方側当接面を有し、
前記接続位置において、前記一方側当接面と前記他方側当接面とが面当接をする
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記接続位置と前記非接続位置とが、前記端子部に向かう前記接続部の移動方向に沿って配置された
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記接続位置と前記非接続位置の一方と他方とが、前記接続部の移動方向に沿って一方、他方及び一方の順で配置された
請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記操作部は、操作具の当接によって操作方向に操作可能に突出している
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項6】
前記筐体部を第一筐体部とし、
前記第一筐体部に嵌合する第二筐体部が備えられ、
前記第二筐体部が前記操作具として機能している
請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記筐体部に対して前記操作部の相対位置を固定する固定部が設けられた
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項8】
前記固定部は、前記筐体部に形成された凹部と、前記操作部に形成された凹部と、これら凹部を連通する連通体とを有している
請求項7に記載のコネクタ。
【請求項9】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のコネクタを備えた
ワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤーハーネスを構成する電線の電気的な接続パターンを変更できるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワイヤーハーネスを構成する電線を所定の接続パターンで接続するコネクタが知られている。特許文献1に開示されたコネクタは、筐体部と、それぞれに電線がつながる複数の端子部と、所定の端子部同士を電気的に接続する接続部とが設けられている。
【0003】
ところで、電気的な接続パターンを変更したい場合においては、所望の接続パターンとなるように接続部の配置等を変更した別途のコネクタを用いる必要がある。しかし、接続パターンごとにコネクタを用意することは、部品点数の増加につながり、かつ管理が複雑になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、ワイヤーハーネスを構成する電線の電気的な接続パターンを変更できるコネクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、絶縁材料で形成された筐体部と、導電材料で形成され、それぞれに電線がつながる複数の端子部と、導電材料で形成され、前記端子部に向かって移動自在に収容された接続部と、前記接続部が二以上の前記端子部に当接して電気的に接続状態となる接続位置と電気的に非接続状態となる非接続位置とで前記接続部の移動を操作する操作部とが設けられたコネクタであることを特徴としている。
また、本発明は、前述のコネクタを備えたワイヤーハーネスであることを特徴としている。
【0007】
この発明によれば、ワイヤーハーネスを構成する電線の電気的な接続パターンを変更できる。
詳述すると、本願発明に係るコネクタは、操作部を操作することにより、接続部を非接続位置から接続位置へ、あるいは接続位置から非接続位置へ移動させることができる。そして、接続部を接続位置に移動させた場合においては、かかる接続部が二以上の端子部に当接するため、端子部同士が電気的に接続されることとなる。反対に、接続部を非接続位置に移動させた場合においては、かかる接続部が二以上の端子部から離間するため、端子部同士が電気的に切断されることとなる。このように、本願発明に係るコネクタは、操作部を操作することにより、端子部同士が電気的に接続された状態(接続状態)から切断された状態(非接続状態)に、あるいは電気的に切断された状態(非接続状態)から接続された状態(接続状態)に切り替わる。したがって、ワイヤーハーネスを構成する電線の接続パターンを変更することが可能となる。
【0008】
この発明の態様として、前記端子部は、前記接続部の移動方向の一方側に露出する一方側当接面を有するとともに、前記接続部は、当該接続部の移動方向の他方側に露出する他方側当接面を有し、前記接続位置において、前記一方側当接面と前記他方側当接面とが面当接をしてもよい。
なお、本発明における面当接とは、対向する二つの面が略平行に当接することを意味する。
【0009】
この発明により、操作部を操作して接続部を接続位置に移動させた場合において、一方側当接面と他方側当接面の当接面積を広く確保できるため、端子部と接続部で安定した導電性が確保される。したがって、端子部同士が電気的に確実に接続されることとなる。また、一方側当接面と他方側当接面とが面当接をすることにより、接続部の移動を規制でき、ひいては操作部の操作量を制限できる。したがって、操作部の操作に対して節度感が得られることとなる。
【0010】
またこの発明の態様として、前記接続位置と前記非接続位置とが、前記端子部に向かう前記接続部の移動方向に沿って配置されてもよい。
この発明により、操作部を操作して端子部に向かう一方側に接続部を移動させるだけで、端子部と接続部とを当接した状態から離間した状態に、あるいは離間した状態から当接した状態に切り替えることができる。したがって、接続部が端子部に向かう方向に対して交差する一方側に移動すれば接続状態となり、他方側に移動すれば非接続状態となる構造に比べ、素早く切り替えることが可能となる。
【0011】
またこの発明の態様として、前記接続位置と前記非接続位置のうちの一方と他方とが、前記接続部の移動方向に沿って一方、他方及び一方の順で配置されてもよい。
この発明により、端子部と接続部とを当接した状態から離間した状態とした後に、さらに操作部を操作して接続部を移動させるだけで再び当接した状態に、あるいは離間した状態から当接した状態とした後に、さらに操作部を操作して接続部を移動させるだけで再び離間した状態に切り替えることができる。したがって、接続パターンの設定を間違った場合等に、容易に変更することが可能となる。
【0012】
またこの発明の態様として、前記操作部は、操作具の当接によって操作方向に操作可能に突出してもよい。
この発明により、操作具の当接によって操作部が操作される。そのため、操作具の形状に応じて操作部が操作されることとなる。したがって、間違いなく所望の接続パターンに設定することが可能となる。特に、多数の操作部が設けられたコネクタにおいては、操作の間違いを防ぐ大きな効果が発揮される。
【0013】
またこの発明の態様として、前記筐体部を第一筐体部とし、前記第一筐体部に嵌合する第二筐体部が備えられ、前記第二筐体部が前記操作具として機能してもよい。
この発明により、第一筐体部と第二筐体部が嵌合すれば、第二筐体部の形状に応じて操作部が操作されることとなる。したがって、間違いなく所望の接続パターンに設定することが可能となる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記筐体部に対して前記操作部の相対位置を固定する固定部が設けられてもよい。
この発明により、意図せずに操作部が操作されて接続パターンが変わってしまうことを防止できる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記固定部は、前記筐体部に形成された凹部と、前記操作部に形成された凹部と、これら凹部を連通する連通体とを有してもよい。
この発明により、簡素な構成でありながら信頼性の高い固定部を実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本願発明によれば、ワイヤーハーネスを構成する電線電気的な接続パターンを変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】ジョイントコネクタの嵌合前の状態を示した斜視図。
【
図5】
図4におけるB-B断面図及びC-C断面図。
【
図7】操作ボタンを操作する前と後の状態を示した説明図。
【
図8】
図7における一部領域Eの拡大図及び一部領域Fの拡大図。
【
図9】操作ボタンの相対位置を固定する前と後の状態を示した説明図。
【
図10】ジグを用いて操作ボタンを操作する前と後の状態を示した説明図。
【
図11】他の実施形態に係るジョイントコネクタの断面図。
【
図12】他の実施形態に係るジョイントコネクタの断面図。
【
図13】
図12における操作ボタンを操作する前と後の拡大図。
【
図14】他の実施形態に係るジョイントコネクタの断面図。
【
図15】
図14における操作ボタンを操作する前と後の拡大図。
【
図16】他の実施形態に係るターミナルコネクタの断面図。
【
図17】他の実施形態に係るターミナルコネクタの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1はジョイントコネクタ1の斜視図である。
図2はジョイントコネクタ1の嵌合前の状態を示した斜視図であり、
図3は
図2における矢印Aの方向から視た斜視図である。
図4はソケットコネクタ本体3の平面図及び正面図であり、
図5は
図4におけるB-B断面図及びC-C断面図であり、
図6は
図4におけるD-D断面図である。
【0019】
また、
図7は操作ボタン70を操作する前と後の状態を示した説明図であり、
図8は
図7における一部領域Eの拡大図及び一部領域Fの拡大図である。
図9は操作ボタン70の相対位置を固定する前と後の状態を示した説明図であり、
図10はジグ200を用いて操作ボタン70を操作する前と後の状態を示した説明図である。そして、
図11から
図15は他の実施形態に係るジョイントコネクタ1の断面図及び拡大図であり、
図16及び
図17は他の実施形態に係るターミナルコネクタ10の断面図である。
【0020】
なお、本願においては、全ての図面において、ジョイントコネクタ1の方向を示している。詳しくは、矢印Fが前方側を示し、矢印Bが後方側を示し、矢印Lが左方側を示し、矢印Rが右方側を示している。そして、矢印Uが上方側を示し、矢印Dが下方側を示している。加えて、本願においては、前後方向をX、左右方向をY、上下方向をZとして説明する。
【0021】
図1から
図3に示すように、ジョイントコネクタ1は、ワイヤーハーネス100を構成する電線10wを電気的に接続するものである。ジョイントコネクタ1は、主にインサートコネクタ本体2とソケットコネクタ本体3とで構成されている。
【0022】
図1から
図3に示すように、インサートコネクタ本体2は、いわゆるメス型コネクタである。インサートコネクタ本体2は、絶縁材料であるポリプロピレン等の樹脂材で形成されたハウジング20と、ハウジング20に保持された八つの端子金具40とを備えている。
【0023】
ハウジング20は、略箱形状の本体部21を有している。かかる本体部21は、上板210及び下板211のほか、上板210と下板211とをつなぐ各側板212~215で形成されている。また、前側板212の上端部分から下方側Dに向かって係止片216が延設されており、かかる係止片216の外側面に係止爪21fが形成されている。係止爪21fは、インサートコネクタ本体2とソケットコネクタ本体3とが嵌合した際に、後述する係止爪31fに引っ掛かることとなる。
【0024】
また、本体部21の上板210には、八つの空洞孔21hが前後方向X及び左右方向Yに規則正しく形成されている。そして、それぞれの空洞孔21hには、端子金具40が挿入され、その全体が収容されている。端子金具40は、後述する端子金具50と接続可能に構成された、いわゆるメス型端子である。端子金具40は、導電材料である銅合金等で形成されており、端子本体部41と電線圧着部42(
図7参照)を有している。
【0025】
端子本体部41は、略角筒形に形成されている。また、端子本体部41は、前端縁における延出部分を内側に折り込んだ弾性接触片41cを有している。弾性接触片41cは、後述する端子本体部51に接触することで、電気的な接続を確実なものとしている。
【0026】
電線圧着部42は、電線10wの芯線11aに圧着されるコアバレル部42a(
図7参照)と、電線10wの被覆11bに圧着されるシースバレル部42b(
図7参照)とを有している。これらのバレル部42a,42bは、両側の板片を曲げ込むことで、内側に配置された芯線11a、あるいは被覆11bを加締めることができる。
【0027】
図1から
図6に示すように、ソケットコネクタ本体3は、いわゆるオス型コネクタである。ソケットコネクタ本体3は、絶縁材料であるポリプロピレン等の樹脂材で形成されたハウジング30と、ハウジング30に保持された八つの端子金具50とを備えている。また、三つの接続金具60と、三つの操作ボタン70と、ハウジング30に対して各操作ボタン70の相対位置を固定する固定部80とを備えている。
【0028】
ハウジング30は、略箱形状の本体部31を有している。かかる本体部31は、上板310及び下板311のほか、上板310と下板311とをつなぐ各側板312~315で形成されている。また、下板311の四方の外周端縁から下方側Dに向かって各案内板部316~319が延設されており、前側案内板部316の内側面に係止爪31fが形成されている。係止爪31fは、インサートコネクタ本体2とソケットコネクタ本体3とが嵌合した際に、前述した係止爪21fに引っ掛かることとなる。
【0029】
また、本体部31の下板311には、八つの空洞孔31hが前後方向X及び左右方向Yに規則正しく形成されている。そして、それぞれの空洞孔31hには、端子金具50が挿通され、後述する端子基端部52が頭部を露出した状態で収容されている。端子金具50は、前述した端子金具40と接続可能に構成された、いわゆるオス型端子である。端子金具50は、導電材料である銅合金等で形成されており、端子本体部51と端子基端部52を有している。
【0030】
端子本体部51は、略円柱状に形成されている。端子本体部51は、本体部31を構成する下板311を介して下方側Dに向かって突出している。そのため、端子本体部51は、インサートコネクタ本体2とソケットコネクタ本体3とが嵌合した際に、端子金具40の端子本体部41に挿入されることとなる。
【0031】
端子基端部52は、端子本体部51の上端部分に形成された太径部分を指す。端子基端部52は、その上端面が本体部31の内部空間において、上方側Uに露出している。端子基端部52は、上端面における左右方向Yの一方側にて電気接点を構成するため、かかる部分を一方側コンタクト面52aということができる(
図8参照)。また、端子基端部52は、上端面における左右方向Yの他方側にも電気接点を構成するため、かかる部分を他方側コンタクト面52bということができる(
図8参照)。
【0032】
接続金具60は、前後方向X及び左右方向Yに隣接する端子金具50の端子基端部52を架け渡すように配置されている。但し、初期状態においては、端子基端部52の上端面よりも上方側Uに離間した状態で配置されている。接続金具60は、導電材料である銅合金等で形成されており、導電本体部61と導電先端部62を有している。
【0033】
導電本体部61は、略矩形状に形成されている。導電本体部61は、前後方向X及び左右方向Yに対して平行とされており、その四つの角部分のそれぞれが端子基端部52の上方側Uに位置している。そして、導電本体部61は、前後方向X及び左右方向Yに対して平行である姿勢を保った状態で上下方向Zに移動可能とされている。
【0034】
導電先端部62は、導電本体部61の四つの角部分に形成された延設部分を指す。それぞれの導電先端部62は、その下端面が本体部31の内部空間において、下方側Dに露出している。導電本体部61の左右方向Yの一方側に設けられた導電先端部62は、その下端面が電気接点を構成するため、かかる部分を一方側コンタクト面62aということができる(
図8参照)。また、導電本体部61の左右方向Yの他方側に設けられた導電先端部62は、その下端面が電気接点を構成するため、かかる部分を他方側コンタクト面62bということができる(
図8参照)。
【0035】
なお、接続金具60は、導電本体部61の一部を折り曲げて板バネを形成することにより、下板311から上方側Uに向かって付勢される構成としてもよい。あるいは導電本体部61と下板311との間にコイルバネ等の弾性部材を配置することにより、下板311から上方側Uに向かって付勢される構成としてもよい。
【0036】
操作ボタン70は、導電本体部61における上側面の中央部分に連結されて一体となった状態で配置されている。また、操作ボタン70は、その上下方向Zの中央部分よりも上方側Uが上板310を介して外部に突出した状態とされている。操作ボタン70は、ポリプロピレン等の絶縁材料で形成されており、操作軸部71を有している。
【0037】
操作軸部71は、略角柱状に形成されている。操作軸部71は、その前側面に左右方向Yに対して平行となる二つのスリット71a,71bが形成されている。下方側Dのスリット71aは、操作軸部71が本体部31に押し込まれていない初期状態で上板310の上側面に沿うように形成されており、上方側Uのスリット71bは、操作軸部71が本体部31に押し込まれた操作状態で上板310の上側面に沿うように形成されている。
【0038】
なお、操作ボタン70は、それぞれが同じ形状とされており、上板310から突出した露出部分(頭部)が左右方向Yに沿って互いに所定の間隔を隔てて配置されている。この点、それぞれの露出部分(頭部)を異なる形状としたり、露出部分(頭部)を少なくとも点対称にならない位置に配置したりしてもよい。このようにすれば、後述するジグ200を用いて操作ボタン70を操作する際に、ジグ200の取付方向を間違うことを防止できる。
【0039】
加えて、固定部80は、ハウジング30に対して操作ボタン70の相対位置を固定するものである(
図9参照)。固定部80は、上板310に形成された一対の保持片81と、かかる一対の保持片81に保持されて操作ボタン70の相対位置を固定する固定プレート82とで構成されている。
【0040】
保持片81は、三つの操作ボタン70を挟むように上板310の上側面における左方側L及び右方側Rに配置されている。それぞれの保持片81は、互いに対向する内側面に前後方向Xに対して平行となるレール81aが形成されている。かかるレール81aは、上板310の上側面に沿うように形成されている。
【0041】
固定プレート82は、保持片81に左右方向Yの両端部分が保持された状態で、上板310の上側面に沿うようにして配置されている。固定プレート82は、その後方側Bの端縁から前方側Fに向かって三つの切欠部82aが形成されている。それぞれの切欠部82aは、前述した操作ボタン70の操作軸部71よりも左右方向Yの幅が僅かに広く形成されている。
【0042】
なお、固定部80は、一対の保持片81に沿うように前方側Fから固定プレート82を嵌め込むことにより、操作ボタン70の操作を不能とするものである。つまり、固定部80は、一対の保持片81に沿うように固定プレート82を嵌め込むことにより、操作軸部71が本体部31に押し込まれていない初期状態、あるいは操作軸部71が本体部31に押し込まれた操作状態に固定するものである。この点については後に詳しく説明する。
【0043】
次に、
図7及び
図8を用いて、所望の接続パターンに設定する操作方法について説明する。ここでは、左右方向Yに並べて配置された三つの操作ボタン70のうち、中央の操作ボタン70を下方側Dに押した場合について説明する(
図7(b)における矢印Pb参照)。
【0044】
図7(a)及び
図8(a)に示すように、操作ボタン70を操作しておらず、操作軸部71が本体部31に押し込まれていない初期状態においては、互いに隣接する端子金具50に対して接続金具60が離間した位置、すなわち非接続位置にある。このとき、それぞれの端子金具50を構成する端子基端部52の各コンタクト面52a,52bに対して接続金具60を構成する導電先端部62の各コンタクト面62a,62bが離間しているため、これら端子金具50と接続金具60とが電気的に切断された状態(非接続状態)に保たれる。この場合、端子金具50同士は、電気的に切断された状態となる。
【0045】
このような状態から、
図7(b)及び
図8(b)に示すように、操作ボタン70を操作して、操作軸部71が本体部31に押し込まれた操作状態にすれば、互いに隣接する端子金具50に対して接続金具60が当接する位置、すなわち接続位置に移動することとなる。このとき、それぞれの端子金具50を構成する端子基端部52の各コンタクト面52a,52bに対して接続金具60を構成する導電先端部62の各コンタクト面62a,62bが当接するため、これら端子金具50と接続金具60が電気的に接続された状態(接続状態)に移行することとなる。この場合、端子金具50同士は、電気的に接続された状態となる(
図8(b)における矢印Ec参照)。
【0046】
加えて、このような状態から、
図7(a)及び
図8(a)に示すように、操作ボタン70を操作して、操作軸部71を本体部31から引き出し、再び初期状態に戻すことも可能である。このようにすれば、互いに隣接する端子金具50に対して接続金具60が離間する位置、すなわち非接続位置に移動することとなる。このとき、それぞれの端子金具50を構成する端子基端部52の各コンタクト面52a,52bに対して接続金具60を構成する導電先端部62の各コンタクト面62a,62bが離間するため、これら端子金具50と接続金具60とが電気的に切断された状態(非接続状態)に移行することとなる。この場合、端子金具50同士は、電気的に切断された状態となる。
【0047】
このような構成により、本実施形態に係るジョイントコネクタ1は、所望の接続パターンに設定できる。つまりは、三つの操作ボタン70を適宜に操作することにより、所望の接続パターンに設定できる。換言すると、ワイヤーハーネス100を構成する電線10wの接続パターンを変更できるのである。
【0048】
その後、本実施形態に係るジョイントコネクタ1は、ハウジング30に対して操作ボタン70の相対位置を固定することができる。すなわち、
図9(a)に示すように、一対の保持片81の各レール81aに固定プレート82を嵌め合わせ、これを後方側Bに向かってスライドさせることにより、かかる固定プレート82の切欠部82aに操作ボタン70が収まることとなる。そして、
図9(b)に示すように、最後まで固定プレート82をスライドさせると、切欠部82aの端縁がそれぞれの操作ボタン70のいずれかのスリット71a,71bに嵌り込んで嵌合することとなる。こうして、ハウジング30に対して操作ボタン70の相対位置を固定することができるのである。
【0049】
ところで、本実施形態に係るジョイントコネクタ1は、三つの操作ボタン70がハウジング30の上板310から上方側Uに向かって突出している。そのため、
図10(a)に示すように、それぞれの操作ボタン70にジグ200を重ね合わせ、これを下方側Dに向かって押え付けることにより、ジグ200の形状に応じて全ての操作ボタン70を同時に操作することが可能である。そのため、操作ボタン70の操作の間違いを防ぐ大きな効果が発揮される。また、
図10(b)に示すように、ジグ200をハウジング30に固定することができるよう構成すれば、前述した固定部80も不要となる。
【0050】
なお、本実施形態に係るジョイントコネクタ1は、三つの操作ボタン70がハウジング30の上板310から上方側Uに向かって突出している。この点、
図11に示すように、三つの操作ボタン70がハウジング30のいずれかの側板312~315からいずれかの方向(前方側F、左方側L、右方側R、後方側B)に向かって突出していてもよい。
【0051】
例えば、
図11に示すように、操作ボタン70を構成する操作軸部71が前方側軸部72と下方側軸部73とに分かれており、前方側軸部72の45度に傾斜した傾斜面72sと下方側軸部73の45度に傾斜した傾斜面73sとを当接させて配置することで、操作ボタン70がハウジング30の前側板312から前方側Fに向かって突出していてもよい。
【0052】
以上のように、本実施形態に係るジョイントコネクタ1は、絶縁材料で形成されたハウジング30と、導電材料で形成され、それぞれに端子金具40を介して電線10wがつながる八つの端子金具50と、導電材料で形成され、端子金具50に向かって移動自在に収容された接続金具60と、接続金具60が四つの端子金具50に当接して電気的に接続状態となる接続位置と電気的に非接続状態となる非接続位置とで接続金具60の移動を操作する操作ボタン70とが設けられたことを特徴としている。
【0053】
このようなジョイントコネクタ1によれば、ワイヤーハーネス100を構成する電線10wの電気的な接続パターンを変更できる。
詳述すると、本願発明に係るジョイントコネクタ1は、操作ボタン70を操作することにより、接続金具60を非接続位置から接続位置へ、あるいは接続位置から非接続位置へ移動させることができる。そして、接続金具60を接続位置に移動させた場合においては、かかる接続金具60が四つの端子金具50に当接するため、端子金具50同士が電気的に接続されることとなる。反対に、接続金具60を非接続位置に移動させた場合においては、かかる接続金具60が四つの端子金具50から離間するため、端子金具50同士が電気的に切断されることとなる。このように、本願発明に係るジョイントコネクタ1は、操作ボタン70を操作することにより、端子金具50同士が電気的に接続された状態(接続状態)から切断された状態(非接続状態)に、あるいは電気的に切断された状態(非接続状態)から接続された状態(接続状態)に切り替わる。したがって、ワイヤーハーネス100を構成する電線10wの接続パターンを変更することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態に係るジョイントコネクタ1において、端子金具50は、接続金具60の移動方向(上下方向Z)の上方側Uに露出する各コンタクト面52a,52bを有するとともに、接続金具60は、接続金具60の移動方向の下方側Dに露出する各コンタクト面62a,62bを有し、接続位置において、各コンタクト面52a,52bと各コンタクト面62a,62bとが面当接をする。
【0055】
このようなジョイントコネクタ1によれば、操作ボタン70を操作して接続金具60を接続位置に移動させた場合において、各コンタクト面52a,52bと各コンタクト面62a,62bの当接面積を広く確保できるため、端子金具50と接続金具60で安定した導電性が確保される。したがって、端子金具50同士が電気的に確実に接続されることとなる。また、各コンタクト面52a,52bと各コンタクト面62a,62bとが面当接をすることにより、接続金具60の移動を規制でき、ひいては操作ボタン70の操作量を制限できる。したがって、操作ボタン70の操作に対して節度感が得られることとなる。
【0056】
また、本実施形態に係るジョイントコネクタ1において、接続位置と非接続位置とが、端子金具50に向かう接続金具60の移動方向に沿って配置されている。
このようなジョイントコネクタ1によれば、操作ボタン70を操作して端子金具50に向かう下方側Dに接続金具60を移動させるだけで、端子金具50と接続金具60とを離間した状態から当接した状態に切り替えることができる。したがって、接続金具60が端子金具50に向かう方向(下方側D)に対して交差する一方側(例えば左方側L)に移動すれば接続状態となり、他方側(例えば右方側R)に移動すれば非接続状態となる構造に比べ、素早く切り替えることが可能となる。
【0057】
また、本実施形態に係るジョイントコネクタ1において、操作ボタン70は、ジグ200の当接によって操作方向(下方側D)に操作可能に突出している。
このようなジョイントコネクタ1によれば、ジグ200の当接によって操作ボタン70が操作される。そのため、ジグ200の形状に応じて操作ボタン70が操作されることとなる。したがって、間違いなく所望の接続パターンに設定することが可能となる。特に、多数の操作ボタン70が設けられたジョイントコネクタ1において、操作の間違いを防ぐ大きな効果が発揮される。
【0058】
また、本実施形態に係るジョイントコネクタ1において、ハウジング30に対して操作ボタン70の相対位置を固定する固定部80が設けられている。
このようなジョイントコネクタ1によれば、意図せずに操作ボタン70が操作されて接続パターンが変わってしまうことを防止できる。
【0059】
また、本実施形態に係るジョイントコネクタ1において、固定部80は、ハウジング30に形成された保持片81のレール81aと、操作ボタン70に形成されたスリット71a,71bと、これらレール81a及びスリット71a,71bを連通する固定プレート82とを有している。
このようなジョイントコネクタ1によれば、簡素な構成でありながら信頼性の高い固定部80を実現できる。
【0060】
この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
コネクタはジョイントコネクタ1に対応し、
筐体部はハウジング30に対応し、
端子部は端子金具50に対応し、
一方側当接面は各コンタクト面52a,52bに対応し、
接続部は接続金具60に対応し、
他方側当接面は各コンタクト面62a,62bに対応し、
操作部は操作ボタン70に対応し、
固定部は固定部80に対応し、
ワイヤーハーネスはワイヤーハーネス100に対応し、
電線は電線10wに対応するも、
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0061】
例えば、前述した実施形態に係るジョイントコネクタ1は、操作ボタン70を下方側Dに押すことで、端子金具50の上方側Uに露出する各コンタクト面52a,52bと接続金具60の下方側Dに露出する各コンタクト面62a,62bが面当接をするよう構成されているが、端子金具50の側面と接続金具60の側面が面当接をするようにしてもよい。
【0062】
つまりは、
図12に示すように、端子金具50を構成する端子基端部52ならびに接続金具60を構成する導電先端部62を角柱状に形成し、かつ操作ボタン70を下方側Dに押すことによって隣接する端子基端部52の間に導電先端部62が挿入されるよう構成することで、端子金具50の側面(各コンタクト面52a,52b)と接続金具60の側面(各コンタクト面62a,62b)が面当接をするようにしてもよい。
【0063】
このようなジョイントコネクタ1によれば、
図13(a)に示すように、操作ボタン70を操作しておらず、操作軸部71が本体部31に押し込まれていない初期状態においては、端子基端部52の各コンタクト面52a,52bに対して導電先端部62の各コンタクト面62a,62bが離間しているため、これら端子金具50と接続金具60とが電気的に切断された状態(非接続状態)に保たれる。この場合、端子金具50同士は、電気的に切断された状態となる。
【0064】
このような状態から、
図13(b)に示すように、操作ボタン70を操作して、操作軸部71が本体部31に押し込まれた操作状態にすれば、端子基端部52の各コンタクト面52a,52bに対して導電先端部62の各コンタクト面62a,62bが当接するため、これら端子金具50と接続金具60が電気的に接続された状態(接続状態)に移行することとなる。この場合、端子金具50同士は、電気的に接続された状態となる(
図13(b)における矢印Ec参照)。
【0065】
加えて、本実施形態に係るジョイントコネクタ1は、下板311に凹部31cを設けることにより、さらに下方側Dに向かって導電先端部62を移動可能としている。このような構成とすることで、さらに操作ボタン70を操作して、操作軸部71を本体部31に押し込み、第二の操作状態にすることも可能である。このようにすれば、端子基端部52の各コンタクト面52a,52bに対して導電先端部62の各コンタクト面62a,62bが離間するため、これら端子金具50と接続金具60とが電気的に切断された状態(非接続状態)に移行することとなる。この場合、端子金具50同士は、電気的に切断された状態となる。
【0066】
以上のように、本実施形態に係るジョイントコネクタ1は、接続位置と非接続位置の一方と他方とが、接続金具60の移動方向(上下方向Z)に沿って一方、他方及び一方の順で配置されている。
このようなジョイントコネクタ1によれば、端子金具50と接続金具60とを離間した状態から当接した状態とした後に、さらに操作ボタン70を操作して接続金具60を移動させるだけで再び離間した状態に切り替えることができる。したがって、接続パターンの設定を間違った場合等に、容易に変更することが可能となる。
【0067】
また、前述した実施形態に係るジョイントコネクタ1は、操作ボタン70が上板310から上方側Uに向かって突出しており、かかる操作ボタン70をジグ200等を用いて操作自在とした構成であるが、操作ボタン70が下板311から下方側Dに向かって突出しており、かかる操作ボタン70をハウジング20等を用いて操作自在としてもよい。
【0068】
つまりは、
図14に示すように、端子金具50を構成する端子基端部52と接続金具60を構成する導電先端部62とを当接した状態で配置し、かつ導電本体部61における下側面の中央部分に連結されて一体となった操作ボタン70の上下方向Zの中央部分よりも下方側Dが下板311から下方側Dに向かって突出するように構成することで、かかる操作ボタン70をハウジング20等を用いて操作自在としてもよい。
【0069】
このようなジョイントコネクタ1によれば、
図15(a)に示すように、ハウジング20を挿入しておらず、ハウジング20によって操作軸部71が本体部31に押し込まれていない初期状態においては、端子基端部52の各コンタクト面52a,52bに対して導電先端部62の各コンタクト面62a,62bが当接しているため、これら端子金具50と接続金具60とが電気的に接続された状態(接続状態)に保たれる。この場合、端子金具50同士は、電気的に接続された状態となる(
図15(a)における矢印Ec参照)。
【0070】
このような状態から、
図15(b)に示すように、ハウジング20を挿入して、ハウジング20によって操作軸部71が本体部31に押し込まれた操作状態にすれば、端子基端部52の各コンタクト面52a,52bに対して導電先端部62の各コンタクト面62a,62bが離間するため、これら端子金具50と接続金具60が電気的に切断された状態(非接続状態)に移行することとなる。この場合、端子金具50同士は、電気的に切断された状態となる。この点、ハウジング20の先端部分に凹部20cが設けられていることにより、操作ボタン70が操作されず、操作軸部71が本体部31に押し込まれなければ、依然として電気的に接続された状態(接続状態)に保たれる。
【0071】
以上のように、本実施形態に係るジョイントコネクタ1は、ハウジング30に嵌合するハウジング20が備えられ、ハウジング20がジグ200として機能している。
このようなジョイントコネクタ1によれば、ハウジング30とハウジング20が嵌合すれば、ハウジング20の形状に応じて操作ボタン70が操作されることとなる。したがって、間違いなく所望の接続パターンに設定することが可能となる。
【0072】
加えて、前述した実施形態に係るジョイントコネクタ1は、インサートコネクタ本体2のハウジング20とソケットコネクタ本体3のハウジング30が嵌合する構成であるが、このような構成に限定するものではない。すなわち、
図16に示すように、一つのハウジング90にそれぞれに端子金具40を介して電線10wにつながる端子金具50が収容されるとともに、端子金具50に向かって移動自在に収容された接続金具60が設けられ、接続金具60が二以上の端子金具50に当接して電気的に接続状態となる接続位置と電気的に非接続状態となる非接続位置とで、接続金具60の移動を操作する操作ボタン70が設けられてもよい。あるいは
図17に示すように、電線10wに端子金具50が直接つながっており、かかる端子金具50に向かって移動自在に収容された接続金具60が設けられ、接続金具60が二以上の端子金具50に当接して電気的に接続状態となる接続位置と電気的に非接続状態となる非接続位置とで、接続金具60の移動を操作する操作ボタン70が設けられてもよい。これらにおいても、各操作ボタン70の相対位置を固定する固定部80を備えることができる。
【符号の説明】
【0073】
1…ジョイントコネクタ
2…インサートコネクタ本体
3…ソケットコネクタ本体
30…ハウジング
50…端子金具
51…端子本体部
52…端子基端部
52a…一方側コンタクト面
52b…他方側コンタクト面
60…接続金具
61…導電本体部
62…導電先端部
62a…一方側コンタクト面
62b…他方側コンタクト面
70…操作ボタン
80…固定部
100…ワイヤーハーネス
10w…電線