(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073024
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】超音波シール用シーラントフィルム、ラミネートフィルム及び包装材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240522BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B32B27/32
B32B27/32 102
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184000
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】アウリア アウェルロース
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康史
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA33
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB51
3E086BB62
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK07
4F100AK07B
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4F100JN02
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、モノマテリアル化に対応でき、超音波溶接が可能であり、シール幅が狭く均一かつ安定な超音波シール強度を有することができる超音波シール用シーラントフィルムを提供することである。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂層と、
プロピレン系樹脂及びブテン系αオレフィン樹脂を含有するシール層と、を少なくとも有し、
超音波によりシール可能であることを特徴とする超音波シール用シーラントフィルム及びそれを用いたラミネートフィルムにより、これを達成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂層と、
プロピレン系樹脂及びブテン系αオレフィン樹脂を含有するシール層と、を少なくとも有し、
超音波によりシール可能であることを特徴とする超音波シール用シーラントフィルム。
【請求項2】
前記シール層における前記プロピレン系樹脂の含有量が、50質量%以上94質量%以下である請求項1に記載の超音波シール用シーラントフィルム。
【請求項3】
前記シール層における前記ブテン系αオレフィン樹脂の含有量が、6質量%以上46質量%以下である請求項1に記載の超音波シール用シーラントフィルム。
【請求項4】
前記シール層の厚みが、3μm~12μmである請求項1に記載の超音波シール用シーラントフィルム。
【請求項5】
総厚みが18μm以上50μm未満である請求項1に記載の超音波シール用シーラントフィルム。
【請求項6】
示差走査熱量測定によって測定される90℃未満の融解熱量と全融解熱量の比が6%以上である請求項1に記載の超音波シール用シーラントフィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の超音波シール用シーラントフィルムを含むラミネートフィルム。
【請求項8】
請求項7に記載のラミネートフィルムを含み、超音波によりシールした包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波シール用シーラントフィルム、ラミネートフィルム及び包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
洋菓子、スナック等の食品用包装フィルムにおいて、リサイクルを促進して環境負荷を低減するため、モノマテリアル(単一素材)化が進んでいる。従来の異素材の多層ラミネート構成(例えば、延伸ポリエチレンテレフタレートOPET/無延伸ポリプロピレンCPPの多層フィルム)に対し、モノマテリアル化に対応するためには、延伸ポリプロピレンOPP/無延伸ポリプロピレンCPPのような多層フィルムが求められている。
【0003】
しかしながら、従来のモノマテリアル化に対応したOPP/CPPからなる多層フィルムでは、素材間の耐熱性が異なるため、多層フィルムの表面の耐熱性が低下し、包装適性の低下が懸念されるという問題点がある。
【0004】
一方、シール面のみ加熱可能な超音波を用い、超音波シール可能な多層フィルムが検討されている。これまでに、超音波溶接によっても強固に溶接することができる積層フィルムとして、エチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン-極性単量体共重合体を中心層とし、その両面にランダムポリプロピレンとαオレフィン系エラストマーの混合樹脂からなる表面層を形成させ、中心層と表面層の間に非晶質ポリオレフィン層を介在させた積層フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ポリプロピレンを用いてモノマテリアル化に対応した多層フィルムでは、素材間の耐熱性が異なるため、超音波シールした場合に均一かつ安定なシール強度を得ることが困難であった。また、超音波シールに適した上記提案の積層フィルムでは、エチレン-極性単量体共重合体を含み、モノマテリアル化に対応できていない。したがって、モノマテリアル化に対応でき、かつ超音波シールに適した多層フィルムの樹脂構成が求められている。
【0007】
本発明は、上記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、本発明の課題は、モノマテリアル化に対応でき、超音波溶接が可能であり、シール幅が狭く均一かつ安定な超音波シール強度を有することができる超音波シール用シーラントフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、本発明者らによる上記知見に基づくものであり、上記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。すなわち、
<1>熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂層と、
プロピレン系樹脂及びブテン系αオレフィン樹脂を含有するシール層と、を少なくとも有し、
超音波によりシール可能であることを特徴とする超音波シール用シーラントフィルム。
<2>前記シール層における前記プロピレン系樹脂の含有量が、50質量%以上94質量%以下である<1>に記載の超音波シール用シーラントフィルム。
<3>前記シール層における前記ブテン系αオレフィン樹脂の含有量が、6質量%以上46質量%以下である<1>に記載の超音波シール用シーラントフィルム。
<4>前記シール層の厚みが、3μm~12μmである<1>に記載の超音波シール用シーラントフィルム。
<5>総厚みが18μm以上50μm未満である<1>に記載の超音波シール用シーラントフィルム。
<6>示差走査熱量測定によって測定される90℃未満の融解熱量と全融解熱量の比が6%以上である<1>に記載の超音波シール用シーラントフィルム。
<7>上記<1>~<6>のいずれかに記載の超音波シール用シーラントフィルムを含むラミネートフィルム。
<8>上記<7>に記載のラミネートフィルムを含み、超音波によりシールした包装材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における上記諸問題を解決し、上記目的を達成することができ、モノマテリアル化に対応でき、超音波溶接が可能であり、シール幅が狭く均一かつ安定な超音波シール強度を有することができる超音波シール用シーラントフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の超音波シール用シーラントフィルムの一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の超音波シール用シーラントフィルムの他の一例を示す概略断面図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の超音波シール用シーラントフィルムを用いたラミネートフィルムの一例を示す概略断面図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の超音波シール用シーラントフィルムを用いたラミネートフィルムの他の一例を示す概略断面図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の超音波シール用シーラントフィルムを用いたラミネートフィルムの超音波溶接に用いる超音波シール装置の一例を示す概略断面図(その1)である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の超音波シール用シーラントフィルムを用いたラミネートフィルムの超音波溶接に用いる超音波シール装置の一例を示す概略断面図(その2)である。
【
図4C】
図4Cは、本発明の超音波シール用シーラントフィルムを用いたラミネートフィルムの超音波溶接に用いる超音波シール装置の一例を示す概略断面図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(超音波シール用シーラントフィルム)
本発明の超音波シール用シーラントフィルムは、熱可塑性樹脂層と、シール層とを少なくとも有し、超音波によりシール可能である超音波シール用シーラントフィルムである。
【0012】
<熱可塑性樹脂層>
上記熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂を主たる樹脂成分として含有する。
当該熱可塑性樹脂層は、単層であってもよく、複数の層であってもよい。また、当該熱可塑性樹脂層が複数の層で構成されている場合、当該複数層は同じ組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
当該熱可塑性樹脂層は、包装用フィルムの印刷を設けることができる表面層であってもよい。
【0013】
-熱可塑性樹脂-
上記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく目的に応じて公知の熱可塑性樹脂を適宜選択することができ、例えば、αオレフィン樹脂、スチレン樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、モノマテリアル化できる点から、αオレフィン樹脂が好ましい。
当該αオレフィン樹脂としては、例えば、αオレフィン単量体の単重合体(ポリエチレン単重合体、ポリプロピレン単重合体等);αオレフィン単量体を主成分とした共重合体(プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体等)等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエチレン、及びポリプロピレンの少なくともいずれかを含有する、エチレン単重合体、プロピレン単重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体が好ましく、モノマテリアル化の観点から、ポリプロピレンを70質量%以上含有するプロピレン系樹脂が特に好ましい。
上記αオレフィン樹脂中のαオレフィン単量体の含有量としては、50モル%~100モル%が好ましく、70モル%~100モル%がより好ましい。
【0014】
上記熱可塑性樹脂層としては、上記ポリプロピレンを70質量%以上含有するプロピレン系樹脂を使用することが好ましく、その含有量は熱可塑性樹脂層中の80質量%以上であることが好ましく、90質量&以上であることがより好ましい。
【0015】
上記熱可塑性樹脂としては、環状オレフィン系樹脂を使用することもできる。
当該環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。
これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。
また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(COP)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(COC)等が挙げられる。
また、COP及びCOCの水素添加物も、特に好ましい。
また、環状オレフィン系樹脂の重量平均分子量は、5,000~500,000が好ましく、より好ましくは7,000~300,000である。
【0016】
前記ノルボルネン系重合体と原料となるノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体である。
このようなノルボルネン系単量体としては、例えば、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、エチリデテトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、ジメタノテトラヒドロフルオレン、フェニルノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、メトキシカルボニルテトラシクロドデセン等が挙げられる。
これらのノルボルネン系単量体は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0017】
前記ノルボルネン系共重合体は、前記ノルボルネン系単量体と共重合可能なオレフィンとを共重合したものであり、このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1 ブテン等の炭素原子数2~20個を有するオレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン;1,4 ヘキサジエン等の非共役ジエン等が挙げられる。
【0018】
熱可塑性樹脂層中に含まれる環状オレフィン系樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂層に含まれる樹脂成分中の15~35質量%、好ましくは20~30質量%とすることで、耐衝撃性を損なうことなく、好適な易引き裂き性や直進カット性を実現できる。
【0019】
また、熱可塑性樹脂層中に使用する環状オレフィン系樹脂は、そのガラス転移温度が100℃以下であり、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。
また、下限は特に制限されないが、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましい。
環状オレフィン系樹脂として当該ガラス転移温度のものを使用することで、良好な耐熱性や剛性を得やすく、また、落下等に対する耐破袋性を向上させやすくなる。
また、良好な相溶性を得やすくなり、外観ムラを抑制しやすくなる。
当該ガラス転移温度は、DSCにより測定して得られる値である。
【0020】
上記環状オレフィン系樹脂として使用できる市販品として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(COP)としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等が挙げられ、ノルボルネン系共重合体(COC)としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、ポリプラスチックス社製「トパス(TOPAS)」等が挙げられる。
【0021】
上記熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、温度190℃、及び荷重2.16kgの測定条件において、1.0g/10分間~50.0g/10分間が好ましく、3.0g/10分間~45.0g/10分間がより好ましく、3.0g/10分間~12.0g/10分間が更に好ましい。
ここで、メルトフローレート(MFR)は、JISK7210に準拠して、190℃、荷重2.16kg(21.18N)で測定した値である。
【0022】
上記環状オレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)としては、0.2~30g/10分(230℃、21.18N)が好ましく、3~17g/10分(230℃、21.18N)がより好ましく、5~15g/10分(230℃、21.18N)がさらに好ましい。MFRがこの範囲であると、各種の多層成膜法において良好な成膜性が得られる点で好ましい。
【0023】
上記熱可塑性樹脂の密度としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.89g/cm3~0.96g/cm3が好ましく、0.89g/cm3~0.93g/cm3がより好ましい。
【0024】
上記熱可塑性樹脂の融点としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、90℃~170℃が好ましく、110℃~168℃がより好ましく、120℃~165℃がさらに好ましい。融点は、示差走査熱量計(DSC)(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製、DSC7020)を用いて測定することができる。
【0025】
<シール層>
上記シール層は、プロピレン系樹脂及びブテン系αオレフィン樹脂を含有する。
【0026】
-プロピレン系樹脂-
上記プロピレン系樹脂とは、プロピレン単独重合体又はプロピレン系共重合体を指す。当該プロピレン系共重合体とは、プロピレン70質量%~99質量%とエチレン及び/又は炭素原子数4以上のα-オレフィン30質量%~1質量%との共重合体であり、プロピレン75質量%~99質量%とエチレン及び/又は炭素原子数4以上のα-オレフィン25質量%~1質量%との共重合体であることが好ましく、プロピレン80質量%~99質量%とエチレン及び/又は炭素原子数4以上のα-オレフィン20質量%~1質量%との共重合体であることがより好ましい。当該炭素原子数4以上のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン等が挙げられる。特に、当該プロピレン系樹脂として、プロピレン系共重合体を使用すると、シール強度が得やすいため好ましい。
また、当該プロピレン系共重合体は、ランダム共重合体でもよいし、ブロック共重合体でもよい。特に、透明性を要求される用途には、ランダム共重合体を使用し、梨地やマット調のシーラントフィルムとする場合は、ブロック共重合体を使用することが好ましい。
当該プロピレン系樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
上記プロピレン系樹脂の含有量としては、上記シール層に含まれる樹脂成分の総量に対して、50質量%以上94質量%以下が好ましく、50質量%以上85質量%以下がより好ましく、50質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。当該範囲であると、超音波シール強度と剛性を両立しやすい。
【0028】
上記プロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、温度190℃、及び荷重2.16kgの測定条件において、1.0g/10分間~50.0g/10分間が好ましく、3.0g/10分間~45.0g/10分間がより好ましく、3.0g/10分間~12.0g/10分間が更に好ましい。
【0029】
上記プロピレン系樹脂の密度としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.89g/cm3~0.93g/cm3が好ましく、0.90g/cm3~0.92g/cm3がより好ましい。
【0030】
上記プロピレン系樹脂の融点としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、110℃~170℃が好ましく、121℃~166℃がより好ましく、121℃~140℃がさらに好ましい。
【0031】
-ブテン系αオレフィン樹脂-
ブテン系αオレフィン樹脂は、ブテン-1単量体を50モル%以上含む共重合体又はブテン-1単量体の単重合体を指す。当該ブテン系αオレフィン樹脂としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブテン-1単量体の単重合体、ブテン-1単量体を50モル%以上含むエチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体等が挙げられる。これらの中でも、プロピレン-1-ブテン共重合体が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
なお、プロピレンを70質量%~99質量%、ブテン-1を1質量%~30質量%の樹脂は、ブテン-1単量体を50モル%以上含まないため、ブテン系αオレフィン樹脂ではなく、プロピレン系共重合体に該当する。
当該ブテン系αオレフィン樹脂が共重合体である場合、当該ブテン系αオレフィン樹脂中のブテン-1単量体の含有量としては、50モル%以上100モル%未満が好ましく、70モル%以上100モル%未満がより好ましい。
【0032】
上記ブテン系αオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、温度190℃、及び荷重2.16kgの測定条件において、1.0g/10分間~50.0g/10分間が好ましく、3.0g/10分間~45.0g/10分間がより好ましく、3.0g/10分間~12.0g/10分間が更に好ましい。
【0033】
上記ブテン系αオレフィン樹脂の密度としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.89g/cm3~0.96g/cm3が好ましく、0.89g/cm3~0.92g/cm3がより好ましい。
【0034】
上記ブテン系αオレフィン樹脂の融点としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、50℃~120℃が好ましく、50℃~110℃がより好ましく、50℃~100℃が更に好ましい。
【0035】
上記ブテン系αオレフィン樹脂の含有量としては、上記シール層に含まれる樹脂成分の総量に対して、6質量%以上46質量%以下が好ましく、10質量%以上46質量%以下がより好ましく、15質量%以上40質量%以下が更に好ましく、15質量%以上36質量%以下が特に好ましい。
当該含有量が6質量%以上46質量%以下であると、超音波シール性が発現する点で有利である。また、当該含有量が15質量%以上40質量%以下であると、シール長の全長で均一かつ安定な超音波シール性が担保される点で特に有利である。
【0036】
上記シール層における上記プロピレン系樹脂(b1)に対する上記ブテン系αオレフィン樹脂(b2)の質量比(b2/b1)としては、5/95~50/50が好ましく、8/92~50/50がより好ましく、15/85~50/50が更に好ましく、15/85~45/55が特に好ましい。
【0037】
-その他のαオレフィン樹脂-
本発明のシール層には、更に必要に応じて、ブテン系αオレフィン樹脂以外のαオレフィン樹脂を含有してもよい。
当該その他のαオレフィン樹脂としては、αオレフィンを含み、1-ブテン単量体の含有量が50モル%未満であれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレン、プロピレン等のαオレフィン単量体の単重合体、αオレフィン単量体を主成分としたエチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体又はプロピレン-ブテン-1共重合体等が挙げられる。これらのうち、ブテン-1単量体を50モル%以上含む共重合体は、ブテン系αオレフィン樹脂に該当し、プロピレンを70質量%~99質量%、ブテン-1を1質量%~30質量%の樹脂は、プロピレン共重合体に該当し、ブテン-1単量体を50モル%未満含む共重合体は、その他のαオレフィン樹脂に該当する。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
当該αオレフィン樹脂中のαオレフィン単量体の含有量としては、50モル%~100モル%が好ましく、70モル%~100モル%がより好ましい。
【0038】
本発明のシール層には、ブテン系αオレフィン樹脂以外のαオレフィン樹脂として、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂を添加すると、成形性が向上するため好ましい。その場合の添加量は、シール層に含まれる樹脂成分中の10質量%以内であることが好ましく、7質量%以内であることがより好ましい。
【0039】
上記ブテン系αオレフィン樹脂以外のαオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、温度190℃、及び荷重2.16kgの測定条件において、1.0g/10分間~50.0g/10分間が好ましく、2.0g/10分間~45.0g/10分間がより好ましく、2.0g/10分間~10.0g/10分間が更に好ましい。
【0040】
上記ブテン系αオレフィン樹脂以外のαオレフィン樹脂の密度としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.85g/cm3~0.96g/cm3が好ましく、0.87g/cm3~0.90g/cm3がより好ましい。
【0041】
上記ブテン系αオレフィン樹脂以外のαオレフィン樹脂の融点としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、40℃~120℃が好ましく、50℃~100℃がより好ましい。
【0042】
本発明のシール層には、さらに環状オレフィン系樹脂を使用してもよい。当該環状オレフィン系樹脂としては、熱可塑性樹脂層にて使用できる環状オレフィン系樹脂と同様のものを使用できる。
【0043】
<その他の成分>
上記熱可塑性樹脂層、及び上記シール層の樹脂には、その他の成分として、ポリオレフィンに汎用される、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、顔料、生分解性促進添加剤等の添加剤を適宜配合してもよい。
【0044】
[超音波シール用シーラントフィルムの層構成]
本発明の超音波シール用シーラントフィルムにおける上記熱可塑性樹脂層は、単層であってもよく、複数の層であってもよい。複数の当該熱可塑性樹脂層は、互いに同じ組成であってもよく、異なる組成であってもよい。
当該熱可塑性樹脂層が単層である場合、当該超音波シール用シーラントフィルムは、熱可塑性樹脂層/シール層の順で積層される多層フィルムである。
当該熱可塑性樹脂層が複数の層である場合、当該熱可塑性樹脂層は、当該超音波シール用シーラントフィルムの表面層と、(1層~複数層の)中間層とを有し、当該超音波シール用シーラントフィルムは、表面層(熱可塑性樹脂層)/中間層(熱可塑性樹脂層)/シール層や、表面層(熱可塑性樹脂層)/中間層(熱可塑性樹脂層)/中間層(熱可塑性樹脂層)/シール層等の順で積層される多層フィルムである。
【0045】
上記熱可塑性樹脂層が複数の層であり、中間層がある場合、中間層は環状オレフィン系樹脂層であることも好ましい。当該環状オレフィン系樹脂層とは、環状オレフィン系樹脂を当該層の樹脂成分のうち70質量%以上含む層を指す。
このような層を中間層に使用することで、接着剤成分の内部への移行を妨げることができ、さらに超音波の伝搬性が良好であるため超音波シール強度も向上する。本発明の超音波シール用シーラントフィルムに中間層が複数ある場合は、そのうちの一つが環状オレフィン系樹脂層であってもよいし、すべての中間層が環状オレフィン系樹脂層であってもよい。
【0046】
[シーラントフィルムの製造方法]
本発明の超音波シール用シーラントフィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、表面層、中間層、シール層に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で例えば表面層/中間層/シール層の順で積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出法が挙げられる。
この共押出法は、各層の厚みの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れたシーラントフィルムが得られるので好ましい。
【0047】
前記超音波シール用シーラントフィルムは、無延伸のフィルムであることが好ましい。当該超音波シール用シーラントフィルムは、上記の共押出による製造方法によって、実質的に無延伸の多層フィルムとして得られるため、真空成形による深絞り成形等の二次成形も可能となる。また、当該超音波シール用シーラントフィルムが一部の層を接着して積層されるラミネートフィルムである場合は、当該一部の層が延伸された樹脂フィルムであってもよいが、無延伸の樹脂フィルムを用いることが好ましい。
【0048】
さらに、印刷インキとの接着性や、ラミネート適性を向上させるため、上記表面層に表面処理を施すことが好ましい。
このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。
【0049】
上記超音波シール用シーラントフィルムは、各層が共に押し出されて積層される共押出多層フィルムであってもよいが、一部の層を接着して積層されるラミネートフィルムであってもよい。
当該一部の層をラミネートする際の接着方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーション等が挙げられる。
【0050】
本発明の超音波シール用シーラントフィルムは、基本的には透明で、表面平滑である。また、当該超音波シール用シーラントフィルムの両面又は片面にエンボス処理して梨地等の絞模様を付与してもよい。
【0051】
本発明の超音波シール用シーラントフィルムの総厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、均一かつ安定な超音波シール強度が担保される点で、18μm以上が好ましく、18μm以上70μm未満がより好ましく、18μm以上50μm未満がさらに好ましく、20μm以上50μm未満が特に好ましい。当該総厚みが18μm以上であると、製造時に厚みがばらつきにくく、安定なシール強度を担保しやすい。当該総厚みが50μm未満であると、適度な剛性を得ることができ、当該シーラントフィルムを用いたラミネートフィルムの厚みを薄くすることができるため、使用後に廃棄物となったときの減量化につながる。
【0052】
上記熱可塑性樹脂層の単層又は各層の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、2μm~50μmが好ましく、3μm~35μmがより好ましく、4μm~30μmがさらに好ましい。
当該熱可塑性樹脂層が複数の層である場合の各層の平均厚みの合計としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、15μm~60μmが好ましく、18μm~40μmがより好ましい。
当該熱可塑性樹脂層の層みは、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、当該熱可塑性樹脂層、及び上記シール層の合計厚みに対する当該熱可塑性樹脂層の平均厚みの比率(%)として、92%以下が好ましく、10%~92%がより好ましく、45%~80%が更に好ましい。
【0053】
上記シール層の厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、1μm~20μmが好ましく、2μm~16μmがより好ましく、3μm~12μmが更に好ましい。当該シール層の厚みが当該範囲であると、超音波シール用シーラントフィルムの適度な剛性と超音波シール強度を両立でき、押出成形時に押し出し機に掛かる圧力が上がりにくく、製造時のフィッシュアイ等の異物を低減できるため好ましい。
また、当該シール層の層みは、総厚みに対する当該シール層の厚みの比率(%)として、8%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、12%以上が更に好ましい。また、8%以上53%以下が好ましく、10%以上40%以下がより好ましく、12%以上40%以下が更に好ましい。
当該厚みが8%以上であると、超音波シール性が発現する点で有利である。また、当該厚みが12%以上であると、シール長の50%から全長で均一かつ安定な超音波シール性が担保される点で特に有利である。
【0054】
また、上記熱可塑性樹脂層の一部又は全部が上記環状オレフィン系樹脂層である場合、その厚み比率は上記超音波シール用シーラントフィルムの総厚みに対して5%以上30%以下が好ましく、5%以上20%以下がより好ましく、8%以上18%以下がさらに好ましい。当該環状オレフィン系樹脂層の厚み比率が当該範囲であると、剛性とシール強度を向上することができ、かつ当該シーラントフィルムをラミネートフィルムとした場合にモノマテリアルフィルムとしやすいため好ましい。当該環状オレフィン系樹脂層が複数存在する場合は、その合計の厚み比率が当該範囲であると好ましい。
【0055】
[融解熱量]
本発明の超音波シール用シーラントフィルムの示差走査熱量測定によって測定される90℃未満の融解熱量と全融解熱量の比は、6.0%以上であることが好ましく、6.3%以上であることがより好ましい。当該比がこの範囲であると超音波シール性が良好となる理由は定かではないが、発明者らは次のように推測している。
一定の超音波振動エネルギーをシーラントフィルムやラミネートフィルムに掛けると、シーラントフィルムと被着体の界面すなわちシール層の温度が摩擦熱により上昇し、その熱によりシーラントフィルムが融解することで、シーラントフィルムやラミネートフィルムと被着体とを接着することができる。このとき、シール層の最表面から温度が上がっていくため、シーラントフィルムの樹脂すべてが同時に融解しているのではなく、一部のみが先に融解しているものと推定される。当該90℃未満の融解熱量と全融解熱量の比は、超音波により融解するシーラントフィルムの一部樹脂と、シーラントフィルムの全樹脂との比を表しているものと考えられ、この比が高いほど、シーラントフィルム中の超音波で融解する樹脂量が多く、超音波シール性が良好になると推測する。
【0056】
上記超音波シール用シーラントフィルムにおける示差走査熱量測定(DSC)によって測定される全融解熱量としては、超音波シールによる均一な溶着性の点で、75mJ/mg以下が好ましく、70mJ/mgであることがより好ましく、65mJ/mgであることがさらに好ましい。
【0057】
示差走査熱量測定(DSC)によって測定される融解熱量は、昇温1回目の融解熱量であり、例えば、示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、DSC7020)を用いて以下の手順で測定することができる。
まず、対象試料である超音波シール用シーラントフィルムの約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、30℃から昇温速度10℃/分にて200℃まで加熱(昇温1回目)し、示差走査熱量計を用いてDSC曲線を計測する。
得られたDSC曲線から、示差走査熱量計の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温1回目における融解熱量[mJ/mg]を求めることができる。
90℃未満の融解熱量は、DSC曲線から温度領域が90℃未満に存在する吸熱ピークから得られた融解熱量を示す。全融解熱量は全ての温度領域に存在する吸熱ピークから得られた合計融解熱量を示す。なお、DSCによって測定される融解熱量は、サンプルの樹脂構成比率により確定するものであるため、フィルムの総厚みが異なっていても、同じ樹脂構成比率で同じ層厚比率であれば、同じ結果が得られる。
【0058】
[曇り度]
本発明の超音波シール用シーラントフィルムの曇り度は、用途に応じて適宜調整することができ、透明性や視認性が求められる用途の場合は、熱可塑性樹脂層やシール層にプロピレン系ランダム共重合体や、プロピレン単独重合体を用いることが好ましい。一方、曇り感やマット感のあるフィルムを得たい場合は、熱可塑性樹脂層やシール層にプロピレン系ブロック共重合体を用いることが好ましい。
曇り度は、JIS K7105に基づき、フィルム1枚についてヘ-ズメ-タ-(日本電飾工業株式会社製)を用いて曇り度(単位:%)測定した値を指す。
【0059】
[剛性]
本発明の超音波シール用シーラントフィルムの剛性は、450MPa以上であることが好ましく、500MPa以上であることがより好ましく、550MPa以上であることがさらに好ましいが、この範囲に限定されるものではない。また、剛性の上限も特に限定されないが、1200MPa未満であることが好ましく、1000MPa未満であることがより好ましい。
剛性は、ASTM D-882に基づき、23℃における1%接線モジュラス(単位:MPa)を、フィルム製造時の押出方向(以下、「MD」という。)について、テンシロン引張試験機〔株式会社エ-・アンド・デ-製〕を用いて測定した値を指す。
【0060】
[超音波シール用ラミネートフィルム]
本発明の超音波シール用シーラントフィルムは、他の基材と貼りあわせ、超音波シール用ラミネートフィルムとすることができる。
この時使用することができる当該他の基材としては、特に限定されるものではないが、包装材として通常使用されている紙若しくはプラスチック基材、食品包装分野で使用される軟包装基材を使用すればよい。本発明の効果を容易に発現させる観点から、高剛性、高光沢を有するプラスチック基材、特には延伸された樹脂フィルムを用いることが好ましい。また、環境対応の観点から、紙を用いることも好ましい。
【0061】
本発明の超音波シール用ラミネートフィルムの構成としては、
(1)基材/接着層/超音波シール用シーラントフィルム
(2)基材/接着層/印刷層/超音波シール用シーラントフィルム
(3)基材/接着層/第二の基材/印刷層/接着層/超音波シール用シーラントフィルム
(4)基材/接着層/第一の印刷層/第二の印刷層/超音波シール用シーラントフィルム
(5)基材/接着層/バリア層/接着層/超音波シール用シーラントフィルム
(6)基材/接着層/バリア層/印刷層/接着層/超音波シール用シーラントフィルム
(7)基材/印刷層/接着層/超音波シール用シーラントフィルム
(8)基材/第一の印刷層/第二の印刷層/接着層/超音波シール用シーラントフィルム
(9)基材/印刷層/接着層/バリア層/接着層/超音波シール用シーラントフィルム
等が挙げられるがこれに限定されず、さらに追加の基材を含んでいてもよい。
なお、第二及び追加の基材は未延伸の樹脂フィルムでもよいし、延伸された樹脂フィルムでもよいし、金属蒸着未延伸フィルムや金属蒸着延伸フィルムといった金属蒸着フィルムでもよいし、透明蒸着フィルムでもよい。また、複数の接着層は同じ組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。さらに、接着層の接着強度を向上するため、アンカーコート層を間に挟んでもよい。
【0062】
本発明の超音波シール用シーラントフィルムと基材フィルムをラミネート方法としては特に限定されず、ドライラミネート、押出ラミネート、熱ラミネート等の複合化技術を用いればよい。
【0063】
上記延伸された樹脂フィルムとしては、例えば、二軸延伸ポリエステル(PET)、易裂け性二軸延伸ポリエステル(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリアミド(PA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を中心層とした共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)をコートした共押出二軸延伸ポリプロピレン等が挙げられる。中でも、モノマテリアル化の観点から、αオレフィン樹脂からなるフィルムが好ましく使用でき、特に二軸延伸ポリプロピレン(OPP)等のポリプロピレン系樹脂フィルムを用いることが好ましい。また、プラスチックフィルムとしてガスバリア性や、後述する印刷層を設ける際のインキ受容性の向上等を目的としたコーティングが施されたものを用いてもよい。コーティングが施されたプラスチックフィルムの市販品としては、K-OPPフィルムやK-PETフィルム等が挙げられる。
これらは、単独あるいは複合化して使用しても良い。
【0064】
上記延伸された樹脂フィルムの厚みとしては、20~60μmであることが好ましく、20~40μmであることがより好ましく、20~30μmであることが更に好ましい。当該延伸された樹脂フィルムの厚みがこの範囲であると、ラミネートフィルムの製造が容易となる。
【0065】
また、上記プラスチック基材としては、CPPフィルム、ナイロンフィルム、PETフィルム、PVCフィルム等が挙げられる。二種以上の基材の組み合わせも使用できる。
【0066】
また、上記基材は、バイオマスポリオレフィンにより形成されていてもよい。当該バイオマスポリオレフィンとは、原料であるモノマーとして植物由来のオレフィンを用いたポリオレフィン樹脂を指す。当該原料モノマーは、石油由来のモノマーを含んでいてもよく、植物由来のモノマーを100%含むものでなくてもよい。当該バイオマスポリオレフィンとしては、市販品を使用することもできる。市販品としては、ブラスケム社製、SGM9450F、SLL118、SLL118/21、SLL218、SLL318、SLH118、SLH218、SLH0820等が例示できる。
【0067】
また、本発明の超音波シール用シーラントフィルムに積層する基材は、上記した樹脂フィルム上に、無機物及び/又は無機酸化物からなる蒸着層を設けた基材を用いてもよい。当該蒸着層を設けた基材を用いることにより、本発明の超音波シール用ラミネートフィルムに、バリア性を付与することができる。
蒸着層は、公知の無機物又は無機酸化物を用いて、公知の方法により形成することができ、その組成及び形成方法は特に限定されない。また、当該超音波シール用シーラントフィルムからなるラミネートフィルムは蒸着膜を2層以上有していてもよく、それらは同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0068】
上記蒸着層としては例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の無機物又は無機酸化物の蒸着膜を使用することができる。また、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物等の無機酸化物の蒸着膜は、透明性を有する。
【0069】
上記無機酸化物は、例えば、SiOx、AlOx等のようにMOx(ただし、式中、Mは、無機元素を表す。)と表記される。xの値は、ケイ素(Si)は、0~2、アルミニウム(Al)は、0~1.5、マグネシウム(Mg)は、0~1、カルシウム(Ca)は、0~1、カリウム(K)は、0~0.5、スズ(Sn)は、0~2、ナトリウム(Na)は、0~0.5、ホウ素(B)は、0~1、5、チタン(Ti)は、0~2、鉛(Pb)は、0~1、ジルコニウム(Zr)は0~2、イットリウム(Y)は、0~1.5の範囲の値をとることができる。
上記において、x=0の場合、完全な無機単体(純物質)であり、透明ではなく、また、xの値が範囲の上限である場合、完全に酸化していることを示す。
蒸着層としては、ケイ素(Si)やアルミニウム(Al)が好適に使用され、ケイ素(Si)は、xの値が1.0~2.0、アルミニウム(Al)は、xの値が0.5~1.5の範囲の値のものを使用することができる。
【0070】
上記蒸着層は、上記基材等の表面に真空蒸着法、スパッタリング法、及びイオンプレ-ティング法等の物理気相成長法(PhysicalVaporDeposition法、PVD法)、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、及び光化学気相成長法等の化学気相成長法(ChemicalVaporDeposition法、CVD法)等の方法により形成することができる。
【0071】
上記蒸着層の蒸着層の厚みは蒸着層単独でも一定のガスバリア機能が発現できれば特に制限はない。厚みの好ましい範囲は蒸着する金属や金属酸化物の種類により異なるが、0.05~70nmが好ましく、0.1~70nmがより好ましく、3~70nmがより好ましく、5~60nmであることがさらに好ましい。
【0072】
上記金属蒸着フィルムとしては、CPPフィルムにアルミニウム等の金属蒸着を施したVM-CPPフィルム、OPPフィルムにアルミニウム等の金属蒸着を施したVM-OPPフィルムを用いることができる。また、上記透明蒸着フィルムとしては、OPPフィルム、PETフィルム、ナイロンフィルム等にシリカやアルミナ蒸着を施したフィルムが挙げられる。シリカやアルミナの無機蒸着層の保護等を目的として、蒸着層上にコーティングが施されたフィルムを用いてもよい。
【0073】
上記基材として、紙を用いることもできる。例えば、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等の包材・パッケージ等の印刷に用いられる上質紙、クラフト紙、純白ロール紙、グラシンペーパー、パーチメント紙、マニラボール、白ボール、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙、ポリエチレンコート紙等の紙、各種合成紙、耐酸紙等を用いることができる。
【0074】
本発明のシーラントフィルムに上記基材又は印刷や蒸着を施した基材等を積層し、ラミネートフィルムとする場合の積層方法としては、例えば、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーション等の方法が挙げられる。この時、シーラントフィルムと基材の間に位置する層は、接着層と呼称する。
【0075】
上記ドライラミネーションで用いる接着剤としては、例えば、溶剤型の2液硬化型接着剤等が挙げられる。「溶剤型」の接着剤とは、接着剤を基材に塗工した後に、オーブン等で加熱して塗膜中の有機溶剤を揮発させた後に他の基材と貼り合せる方法、いわゆるドライラミネート法に用いられる形態をいい、ポリイソシアネート組成物、ポリオール組成物と、それらを溶解(希釈)することが可能な有機溶剤を含む。
【0076】
上記2液硬化型接着剤において、持続的に発展すべき循環型社会の構築(サステナビリティ)を考慮し、上記ポリイソシアネート組成物あるいはポリオール組成物の原料として、植物由来原料(バイオマス原料)を使用することが好ましい。
バイオマス原料を適宜使用することで、環境負荷を低減することができる。バイオマス原料としては、ひまし油、脱水ひまし油、ひまし油の水素添加物であるヒマシ硬化油、ひまし油のアルキレンオキサイド5~50モル付加体等のひまし油系ポリオールや、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イタコン酸等の脂肪族多塩基酸や当該酸のアルキルエステル化物、ダイマー酸等が挙げられる。
【0077】
バイオマス原料を使用した上記接着剤としては市販品を利用することもできる。市販品としては、一般社団法人日本有機資源協会に記載の接着剤等が使用でき、例えば、ディックドライBM(DIC株式会社製)、タケネートBM(三井化学株式会社)等が挙げられる。
【0078】
上記接着層の乾燥後の重量は、0.1~10g/m2であることが好ましく、1~6g/m2であることがより好ましく、2~5g/m2であることがさらに好ましい。また、当該接着層の厚みは、0.1~10μmが好ましく、1~7μmがより好ましく、2~5μmであることがより好ましい。
【0079】
また、上記接着層として各種の粘着剤を使用することもできるが、感圧性粘着剤を用いることが好ましい。
当該感圧性粘着剤としては、例えば、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、これらの混合物をベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサンのような有機溶剤に溶解したゴム系粘着剤、或いは、これらゴム系粘着剤にアビエチレン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・インデン共重合体等の粘着付与剤を配合したもの、或いは、2 エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n ブチル共重合体、2 エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体等のガラス転移点が 20℃以下のアクリル系共重合体を有機溶剤で溶解したアクリル系粘着剤等を挙げることができる。
【0080】
上記接着剤や後述するアンカーコート剤としてガスバリア性を有する材料を使用すると、特にバリア性に優れるラミネートフィルムを得ることができる。
ガスバリア性に優れる接着剤として特に好ましくは、3g/m2(固形分)で塗布した接着剤の硬化塗膜の酸素バリア性が300cc/m2/day/atm以下、又は水蒸気バリア性が120g/m2/day以下の、少なくとも一方の条件を満足するものをいう。市販品としてはDIC株式会社製のPASLIM VM001やPASLIM J350X等の「PASLIM」シリーズや、三菱ガス化学社製の「マクシーブ」が挙げられる。
【0081】
また、上記接着層は、熱可塑性樹脂により形成することもでき、その形成方法は、従来公知の方法、例えば溶融押出しラミネート法やサンドラミネート法により形成することができる。
当該接着層に使用できる当該熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン系樹脂、プロピレンの単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ノルボルネン系単量体の開環重合体(COP)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(COC)等のノルボルネン系重合体及びその水素添加物、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等の環状ポリオレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体等のポリエチレン系エラストマー、ポリプロピレン系エラストマー、ブテン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;エチレン メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン エチルアクリレート 無水マレイン酸共重合体(E EA MAH)、エチレン アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン メタクリル酸共重合体のアイオノマー等が挙げられる。また、層間の密着性を向上させるために、上記したポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂等も使用することができる。
また、ポリオレフィン樹脂に、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、又は、共重合した樹脂等も用いることができる。
モノマテリアル化の観点から、当該接着層に使用する熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
これらの樹脂は、単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、当該ポリエチレン系樹脂としては、上記バイオマス由来のエチレンをモノマー単位として用いたものを使用することも好ましい。
【0082】
押出ラミネート法により接着層を積層する場合には、積層される側の層の表面に、アンカーコート剤を塗布して乾燥させることにより形成されるアンカーコート層を設けてもよい。
アンカーコート剤としては、耐熱温度が135℃以上である任意の樹脂、例えばポリブタジエン系樹脂、ウレタン樹脂、ポリイソシアネート・ポリエーテルポリオール、ポリエチレンイミン、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキルチタネート等からなるアンカーコート剤や、上記接着剤を有機溶剤で希釈したアンカーコート剤が挙げられる。なかでも、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、上記接着剤を有機溶剤で希釈したアンカーコート剤を、好ましく使用することができる。また、これに添加剤としてシランカップリング剤を併用してもよく、硝化綿を、耐熱性を高めるために併用してもよい。
【0083】
本発明の超音波シール用ラミネートフィルムは、本発明の超音波シール用シーラントフィルムの表面層と上記基材の間に、さらに印刷層を設けてもよい。当該印刷層とは、被印刷体に美粧性、内容物に関する様々な情報、及び機能性を付与するために、リキッド印刷インキにより所望の図柄を形成する層である。当該印刷層は、バインダー樹脂と着色剤とを含有グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキ(以後リキッド印刷インキと称する)や、インクジェットインキを印刷してなる。当該印刷層は、単層であってもよいし、複数の印刷層があってもよい。印刷層が複数ある場合は、各印刷層に使用するリキッド印刷インキは同一のものであっても良いし、同一の組成で着色剤のみが違うものであっても良いし、異なる組成であっても良い。また、リキッド印刷インキとインクジェットインキを併用した印刷であってもよい。
当該印刷層が複数ある場合としては、例えば着色剤を含有する印刷インキより形成された第一の印刷層と、着色剤として白色顔料を含有するリキッドインキにより形成された第二の白印刷層、及び第三の白印刷層とをこの順に有する印刷物とすることができる。第一の印刷層は着色剤による絵柄を形成させることができ、白色顔料を含有するリキッドインキにより形成された第二の白印刷層、及び第三の印刷層は、絵柄の背景として使用することができる。第二又は第三の印刷層をオーバープリントニスとする場合は、着色剤を含まなくてもよい。
【0084】
上記リキッド印刷インキは、グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキとして使用され、有機溶剤を主溶媒とする有機溶剤型リキッド印刷インキと、水を主溶媒とする水性リキッド印刷インキとに大別される。当該印刷層としては、汎用の有機溶剤型リキッド印刷インキであることが好ましい。
【0085】
上記有機溶剤型リキッド印刷インキは、顔料、バインダー樹脂、有機溶剤媒体、分散剤、消泡剤等を添加した混合物を分散機で分散し、顔料分散体を得る。得られた顔料分散体に樹脂、水性媒体、必要に応じてレベリング剤等の添加剤を加え、撹拌混合することで得られる。分散機としてはグラビア、フレキソ印刷インキの製造に一般的に使用されているビーズミル、アイガーミル、サンドミル、ガンマミル、アトライター等を用いて製造される。
【0086】
上記バインダー樹脂としては、硝化綿、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)やセルロースアセテートブチロネート(CAB)等セルロース系樹脂等の繊維素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニルアクリル共重合樹脂等の塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂等を挙げることができる。中でも、ポリウレタン樹脂を好ましく利用できる。
【0087】
上記ポリウレタン樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートとを重合したポリウレタン樹脂が好ましい。また、当該ポリオールはポリエステルポリオールであることが好ましい。
また、必要に応じて、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオール以外の汎用のポリオール、鎖伸長剤、及び末端封鎖剤等を併用してポリウレタン樹脂を合成してもよい。
さらに、当該ポリオールとポリイソシアネートを反応させ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとし、ポリアミン化合物とを反応させて、ポリウレタン樹脂を合成してもよい。
当該ポリウレタン樹脂はリキッドインキ中に単独で使用してもよいし、複数を併用してもよい。
【0088】
上記顔料としては、一般のインキ、塗料、及び記録剤等に使用されている無機顔料、有機顔料を挙げることができる。当該有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系等の顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。また未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。
【0089】
当該無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏等の白色無機顔料が挙げられる。無機顔料の中では酸化チタンの使用が特に好ましい。酸化チタンは白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンはシリカ及び/又はアルミナ処理を施されているものが好ましい。
当該白色以外の無機顔料としては、例えば、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、ジルコンが挙げられ、アルミニウムは粉末又はペースト状であるが、取扱い性及び安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィング又はノンリーフィングを使用するかは輝度感及び濃度の点から適宜選択される。
【0090】
上記有機溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系有機溶剤、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらを単独又は2種以上を混合しても用いることができる。
【0091】
尚、印刷時の作業衛生性及び包装材料の有害性の観点から、酢酸エチル、酢酸プロピル、イソプロパノール、ノルマルプロパノール等を使用し、トルエン等の芳香族溶剤やメチルエチルケトン等のケトン系溶剤を使用しないことがより好ましい。
中でも、ポリウレタン樹脂の溶解性の観点から、イソプロピルアルコール/酢酸エチル/メトキシプロパノールの混合液がより好ましい。また、乾燥調整のためにインキ全量の10質量%未満であればグリコールエーテル類を添加することも出来る。
【0092】
上記有機溶剤型リキッド印刷インキは、各種の基材と密着性に優れ、紙、合成紙、熱可塑性樹脂フィルム、プラスチック製品、鋼板等への印刷に使用することができるものであり、電子彫刻凹版等によるグラビア印刷版を用いたグラビア印刷用、又は樹脂版等によるフレキソ印刷版を用いたフレキソ印刷用のインキとして有用である。
上記有機溶剤型リキッド印刷インキを用いてグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式から形成されるリキッド印刷インキの膜厚は、0.1~10μmであることが好ましく、1~5μmであることがより好ましく、1~3μmであることがさらに好ましい。また、印刷層の乾燥後の重量は、0.1~10g/m2であることが好ましく、1~5g/m2であることがより好ましく、1~3g/m2であることがさらに好ましい。
【0093】
上記リキッド印刷インキにおいて、持続的に発展すべき循環型社会の構築(サステナビリティ)を考慮し、植物由来原料(バイオマス原料)を使用したリキッド印刷インキを使用することが好ましい。
植物由来原料としては例えば、セルロースアセテートプロピオネート樹脂や硝化綿等の繊維素系樹脂や、大豆油由来、パーム油由来、米糠油由来等天然油に由来するダイマー酸あるいは重合脂肪酸を使用したポリアミド樹脂や、ポリカルボン酸として、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、グルタル酸、リンゴ酸等、ポリオールとして、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンチレングリコール、1,10-ドデカンジオール、ダイマージオール、イソソルビド等、ポリイソシアネートとして、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、ダイマージイソシアネート等の植物由来原料から合成したバイオマスポリウレタンや、ロジン樹脂、ダンマル樹脂、ポリ乳酸等が挙げられる。
【0094】
上記植物由来原料を使用したリキッド印刷インキは、市販品を使用することもできる。市販品としては、一般社団法人日本有機資源協会に記載のインキ等が使用でき、例えば、フィナートBM(DIC株式会社製)、LP バイオシリーズ(東洋インキ株式会社製)、ベルフローラ(サカタインクス株式会社製)、NB300 BPシリーズ(大日精化工業株式会社製)等が挙げられる。
【0095】
上記印刷層は、所謂裏刷りにて、別の基材に印刷したうえで基材と本発明の超音波シール用シーラントフィルムとをドライラミネート・サンドラミネート・押出ラミネート等の方法で積層してもよい。また、アンカーコートワニスやオーバーコートワニス等を用いてもよい。
【0096】
[超音波シール]
超音波によりシールする方法としては、特に制限はなく目的に応じて、公知の超音波シール方法や、公知の超音波シール装置を用いた方法等を適宜選択することができる。
ここで、「超音波シール」とは、電気エネルギーを機械的エネルギーに変換した超音波振動振幅を利用して、超音波によって振動エネルギーを送り出す「超音波ホーン」と固定治具「アンビル」との間に接合対象となるフィルムを挟み、フィルム材料の界面に均一に摩擦エネルギーを発生させ、瞬時に溶融溶着する技術である。用語「超音波シール」、「超音波溶接」、「超音波溶融溶着」、及び「超音波融着接合」は、互いに同義であり得る。
【0097】
超音波ホーンは、接合対象及びアンビルの上方に垂直に配置されてもよく、接合対象及びアンビルに対して水平方向に配置されてもよい。超音波ホーンは、通常20kHz~40kHzの超音波で振動して、圧力下、通常摩擦熱の形態でエネルギーを、接合対象の接合部に伝達する。摩擦熱及び圧力のために、接合対象のうちの少なくとも1つの一部が軟化するか又は融解し、それにより接合対象が互いに接合される。
【0098】
ここで、上記「接合対象」としては、本発明においては、本発明の超音波シール用シーラントフィルムを少なくとも含む限り、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、上記超音波シール用シーラントフィルム2枚を各々の上記シール層が互いに接するように配置したものであってもよく、一続き(1枚)の当該超音波シール用シーラントフィルムを当該シール層が互いに接するように折畳んで配置したものであってもよく、或いは、上記超音波シール用シーラントフィルムと熱可塑性樹脂フィルムとを、当該超音波シール用シーラントフィルムの当該シール層が当該熱可塑性樹脂フィルムに接するように配置したものであってもよい。
シール層が互いに接した部分やシール層が熱可塑性樹脂フィルムに接した部分を超音波シールして接合部を形成することにより、後述する包装材が得られる。
【0099】
上記超音波シールにおける超音波としては、特に制限はなく目的に応じて、人間の耳には聞こえない高い振動数をもつ弾性振動波(音波)を適宜選択することができる。上記超音波の周波数としては、16kHz以上が好ましく、20kHz以上がより好ましく、20kHz以上40kHz以下が特に好ましい。
【0100】
上記超音波シールにおける圧力、振幅、溶着時間、ホールド時間等の条件としては、用いる接合対象の種類、及び周波数や条件の組合せに応じて変化し、一義的に規定できるものではないが、特に制限はなく目的に応じて、適宜選択することができる。
上記圧力は、超音波シール装置において、接合対象に対する超音波ホーンによる押しつけ圧力を意味し、単位[Pa](パスカル)、[MPa](メガパスカル)等で表される。上記圧力としては、0.15[MPa]~0.3[MPa]が好ましく、0.20[MPa]~0.3[MPa]がより好ましい。
上記振幅は、超音波振動の大きさを意味する。当該振幅としては、20μm以上50μm以下が好ましく、均一かつ安定なシール強度を有することにより、35μm以上50μm以下がより好ましい。
上記溶着時間は、超音波の発振時間を示し、超音波ホーンが接合対象に接触して溶着する時間を意味する。当該溶着時間としては、0.2秒間以上1秒間以下が好ましく、0.5秒間以上1秒間以下がより好ましい。
上記ホールド時間は、超音波発振機の保持時間かつ溶着部の硬化時間を意味する。当該ホールド時間としては、0.2秒間以上1.0秒間以下が好ましく、0.5秒間以上1.0秒間以下がより好ましい。
【0101】
上記超音波シール装置としては、例えば、連続超音波シールタイプの装置、回転式超音波ホーンを有する装置等が好適に挙げられる。
当該連続超音波シールタイプの装置は、一般に「連続超音波融着接合」として知られている。連続超音波融着接合は、通常、略連続的に超音波シール装置内に供給することができ、略連続的に接合対象を封止するために使用される。連続超音波融着接合では、超音波ホーンは通常固定されており、接合対象がその真下を移動する。一種の連続超音波融着接合は、固定されたホーンと回転アンビル面とを使用する。連続超音波融着接合中、接合対象は、超音波ホーンと回転アンビルとの間に引っ張られる。超音波ホーンは、通常、接合対象に向かって長手方向に延在し、振動は超音波ホーンに沿って軸方向に材料まで伝達する。
【0102】
上記回転式超音波ホーンを有する装置では、超音波ホーンは回転タイプであり、円柱状であって長手方向軸を中心に回転する。入力振動は、超音波ホーンの軸方向にあり、出力振動は超音波ホーンの放射方向にある。超音波ホーンはアンビルに近接して配置され、通常アンビルもまた、接合対象が円柱状面の間を、円柱状面の接線速度に実質的に等しい線速度で通過するように回転することができる。
【0103】
超音波シールとしては、例えば、特開2008-526552号公報、特開2010-195044号公報、特開2013-231249号公報、特開2015-16294号公報、米国特許第5976316号明細書等に記載されており、その開示内容は参照により本明細書に援用される。
【0104】
(包装材)
本発明の包装材は、本発明の超音波シール用シーラントフィルムを少なくとも含む超音波シール用ラミネートフィルム2枚を、各々のシール層が互いに接するように配置して超音波シールした包装材であってもよく、一続き(1枚)の当該超音波シール用ラミネートフィルムを上記シール層が互いに接するように折畳んで配置して超音波シールした包装材であってもよく、或いは、当該超音波シール用ラミネートフィルムと、熱可塑性樹脂フィルムとを、当該超音波シール用ラミネートフィルムのシール層が当該熱可塑性樹脂フィルムに接するように配置して超音波によりシールした包装材であってもよい。
当該包装材は、包装体として好適に利用できる。当該包装体としては、例えば、洋菓子、スナック、パン、和菓子、調味料等の食品用包装体や薬剤、包帯、注射器等の医療用包装体や雑巾、マスク、ブラシ等の衛生品用包装体等が挙げられる。
当該包装材は、モノマテリアル化に対応でき、シール面のみ加熱可能な超音波シールによりシールできるためシール幅を狭くでき、材料の省量化を図ることができる。
【0105】
<熱可塑性樹脂フィルム>
上記熱可塑性樹脂フィルムの材料としては、特に制限はなく目的に応じて、公知の熱可塑性樹脂を適宜選択することができるが、モノマテリアル化の観点から、αオレフィン樹脂が好ましい。当該αオレフィン樹脂としては、当該熱可塑性樹脂層において説明したαオレフィン樹脂を適宜採用することができ、特にポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0106】
本発明の超音波シール用シーラントフィルム10は、例えば、
図1に示すように、熱可塑性樹脂層1、及びシール層2からなり、2層が積層された多層フィルムであってもよい。
また、
図2に示すように、本発明の超音波シール用シーラントフィルム10は、複数の熱可塑性樹脂層を有してもよく、熱可塑性樹脂層(表面層)1a、熱可塑性樹脂層(中間層)1b、及びシール層2からなり、表面層/中間層/シール層の順で積層される多層フィルムであってもよい。
【0107】
図3Aは、本発明の超音波シール用シーラントフィルムを用いたラミネートフィルムの一例であり、基材フィルム上に接着層を介して超音波シール用シーラントフィルムが積層される。
図3Bはさらなる本発明の超音波シール用シーラントフィルムを用いたラミネートフィルムの一例であり、基材フィルム上に印刷層を設け、接着層を介して超音波シール用シーラントフィルムが積層される。
当該ラミネートフィルムの構成はこれらに限定されるものではない。
【0108】
図4A~Cは、本発明の超音波シール用シーラントフィルムの超音波溶接に用いる超音波シール装置の一例を示す概略断面図である。超音波シール装置100は、アンビル110と、このアンビル110の外周面と対向する超音波ホーン120とを有する。アンビル110の外周面に所定のシールパターンでシール突起が形成されており、超音波ホーン120は、
図3A中の矢印方向に可動して、超音波ホーン120とアンビル110のシール突起との間に接合対象をホールドすることができる。
アンビル110と超音波ホーン120との間に通される接合対象は、例えば、2枚重ねの超音波シール用シーラントフィルムを用いたラミネートフィルム20であってもよく(
図4A)、超音波シール用シーラントフィルムを用いたラミネートフィルム20と熱可塑性樹脂フィルムとを2枚重ねにしたものであってもよく(不図示)、金属棒130に引っ掛けて2枚重ねになるように折り畳んだ1枚の超音波シール用シーラントフィルムを用いたラミネートフィルム20であってもよい(
図4B)。接合対象のうち、アンビル110の外周面のシール突起と超音波ホーン120との間に挟まれる部分を、超音波ホーン120から伝達される超音波振動による摩擦熱で溶融シールして、超音波シール用シーラントフィルム10を少なくとも含む包装材50を製造する(
図4C参照)。超音波シール装置は、接合対象に接する超音波ホーンの先端から接合対象に振動エネルギーを伝えて、接合対象を摩擦熱で溶着するものであり、溶着形状は、アンビル110の外周面のシール突起と超音波ホーン先端との接触面の形状とほぼ同じとなる。
図4Aの超音波シール装置では、アンビル110の外周面のシール突起は、200mm×2mmの形状を有し、これにより、シール長200mm×シール幅2mmで溶着した包装材50を製造することができる。
【実施例0109】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。なお、特に明記しない限り、「部」は「質量部」を指し、「%」は「質量%」を指す。
【0110】
(実施例A-1~A-14)
<超音波シール用シーラントフィルムの作製>
表面層(A)、中間層(C)及びシール層(B)の各層について表1・表3に記載の樹脂比率で樹脂を混合した。各層を形成する樹脂混合物を3台の押出機に各々供給し、表面層(A)/中間層(C)/シール層(B)にて形成される積層フィルムの各層の平均厚みの比率が表1~4に示す各層厚比率となるように、押出温度250℃でTダイから共押出して、40℃の水冷金属冷却ロールで冷却し、総厚みが20μmの積層フィルムである実施例A-1~A-14の超音波シール用シーラントフィルムを成形した。
【0111】
(実施例B-1~B-5、B-7~B-14)
表2・表4に示す通り総厚みを30μmに変更したこと以外は実施例A-1~A-14と同様にして実施例B-1~B-5、B-7~B-14の超音波シール用シーラントフィルムを作製した。
【0112】
(比較例HA-10、HB-10、H1~H3)
樹脂比率や各層厚比率を表5の通りにした以外は実施例と同様にして、比較例HA-10、HB-10及び比較例H1~H3の超音波シール用シーラントフィルムを成形した。
【0113】
<<剛性の測定>>
得られた超音波シール用シーラントフィルムを用い、ASTM D-882に基づき、23℃における1%接線モジュラス(単位:MPa)を、フィルム製造時の押出方向(以下、「MD」という。)について、テンシロン引張試験機〔株式会社エ-・アンド・デ-製〕を用いて測定した。結果を表1~5に示す。
【0114】
<<曇り度の測定>>
得られた超音波シール用シーラントフィルムを用い、JIS K7105に基づき、フィルム1枚についてヘ-ズメ-タ-(日本電飾工業株式会社製)を用いて曇り度(単位:%)測定した。結果を表1~5に示す。
【0115】
<<融解熱量の測定>>
得られた超音波シール用シーラントフィルムについて、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される昇温1回目の融解熱量を、以下の手順で測定した。結果を表3に示す。
示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目の融解熱量は、示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、DSC7020)を用いて測定した。
まず、対象試料である超音波シール用シーラントフィルムの約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、30℃から昇温速度10℃/分にて200℃まで加熱(昇温1回目)し、示差走査熱量計を用いてDSC曲線を計測する。
得られたDSC曲線から、示差走査熱量計の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温1回目における融解熱量[mJ/mg]を求めた。
90℃未満の融解熱量は、DSC曲線から温度領域が90℃未満に存在する吸熱ピークから得られた融解熱量を求めた。全融解熱量は全ての温度領域に存在する吸熱ピークから得られた合計融解熱量を求めた。
なお、DSCによって測定される融解熱量は、サンプルの樹脂構成比率により確定するものであるため、フィルムの総厚みが異なっていても、同じ樹脂構成比率で同じ層厚比率であれば、同じ結果が得られる。よって、実施例A-1~実施例A-14及びHA-10、HB-10、H1~H3のみを測定し、実施例A-1~実施例A-14に対応する実施例B-1~実施例B-14には、実施例A-1~実施例A-14の結果を転記した。測定結果を表1~5に示す。
【0116】
<ラミネートフィルムの作製>
A4サイズにカットした実施例及び比較例の超音波シール用シーラントフィルムに対し、同サイズにカットしたOPPフィルム(U1、三井化学東セロ株式会社製)を基材とした。接着剤としてディックドライLX-500/KR-90Sを用いて、不揮発分濃度を25%になるように酢酸エチル溶剤で希釈した。小型卓上ラミネーター(テスター産業株式会社製)を用いて、圧力0.3Mpa、温度60℃の条件にてラミネートし、40℃、12時間以上かけて定温送風乾燥機(東京理科器械株式会社製)でエージングし、ラミネートフィルムを得た。
【0117】
<<包装材の作製>>
得られた超音波シール用ラミネートフィルムを210mm×600mmにカットし、同じサイズにカットした熱可塑性樹脂フィルム(P2161、東洋紡株式会社製)に対しシール層が接するように2枚重ねにし、「超音波シール性」の評価と同様の装置及び条件により、長辺2辺と短辺1辺の計3辺を超音波シールして、包装材を作製した。包装材が作製可能であったものを〇とした。結果を表1~5に示す。
【0118】
<<超音波シール性>>
得られた実施例及び比較例のラミネートフィルムを210mm×600mmにカットし、シール層を金属棒に引っ掛けて2枚重ねになるように折り畳んで2枚重ねにし、
図4Bに示す超音波シール装置のアンビル上に張るよう設置した。超音波シール装置として、超音波プラスチックウェルダーW3080(日本アビオニックス製、周波数:20kHz)を用いた。パラメータ(圧力=0.22MPa、振幅=50μm、溶着時間=1秒、ホールド時間=1秒)を設定し、スイッチを入れ、超音波シール用ラミネートフィルムの210mm長の一辺をシール長200mm×シール幅2mmで超音波シールした。
シール長210mmを目視で観察した後、剥離を行い、下記の評価基準で超音波シール性を評価した。結果を表1~5に示す。
[評価基準]
〇:シール全長に対し、80%以上が溶着した。
△〇:シール全長に対し、50%以上80%未満が溶着した。
△:シール全長に対し、一部(50%未満)が溶着した。
×:シール全長で溶着しないか0.5N/210mm以下で軽く剥離できた。
【0119】
<<シール強度の測定>>
得られた超音波シール用ラミネートフィルムを幅210mmにカットし、シール層が互いに接するように2枚重ねにし、超音波プラスチックウェルダーW3080(日本アビオニックス製、周波数:20kHz)を用いて、圧力=0.25MPa、振幅=50μm、溶着時間=0.5秒、ホールド時間=1秒の条件で超音波シールした。超音波シールした包装材を幅15mmにカットし、23℃、50%RHの恒温室において引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/分間の速度で90度剥離することによりシール強度を測定した。測定はN=3で実施し、平均値と最小値(ばらつき確認)を表に示した。結果を表1~5に示す。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
実施例により、熱可塑性樹脂層と、プロピレン系樹脂及びブテン系αオレフィン樹脂を含有するシール層を含む本発明の超音波シール用シーラントフィルムは、超音波により良好なシール性を発揮し、衝撃強度や剛性も良好であることがわかった。
シーラントの90℃未満融解熱量/全融解熱量が6.0以上の超音波シール用シーラントフィルムは、超音波シール性に優れていた。
シール層の厚みが厚くなるほど超音波シール強度が高くなる傾向がみられたが、シール層の厚みが3~12μmであっても、良好な超音波シール強度が得られ、超音波シール強度のばらつきも小さく抑えることができた。
実施例A-10及び実施例B-10と比較例HA-10及び比較例HB-10の比較から、ブテン系αオレフィン樹脂を含むことで、超音波シール強度が大きく向上し、シール長の全長で超音波シール性が担保されることがわかった。また超音波シール強度のばらつきも小さくなり、包装材の生産時に不良が出にくくなることが示唆された。
【0126】
以下に、実施例において用いた各樹脂のMFR、密度、及び融点を示す。
COPP(1):プロピレン-エチレンランダム共重合体(MFR7.5g/10分間(230℃、荷重2.16kg)、密度0.90g/cm3、融点136℃)
COPP(2):プロピレン-エチレンランダム共重合体(MFR7.0g/10分間(230℃、荷重2.16kg)、密度0.90g/cm3、融点125℃)
COPP(3):プロピレン-エチレンランダム共重合体(MFR5.0g/10分間(230℃、荷重2.16kg)、密度0.90g/cm3、融点129℃)
HOPP:ポリプロピレン(MFR7.0g/10分間(230℃、荷重2.16kg)、密度0.90g/cm3、融点165℃)
B-COPP:プロピレン-エチレンブロック共重合体(MFR7.0g/10分間(230℃、荷重2.16kg)、密度0.91g/cm3、融点166℃)
LLDPE:エチレン-1-ブテン共重合体(MFR4.0g/10分間(190℃、荷重2.16kg)、密度0.89g/cm3、融点70℃)
BPR1:プロピレン-1-ブテン共重合体(MFR4.0g/10分間(190℃、荷重2.16kg)、密度0.90g/cm3、融点58℃)
BPR2:プロピレン-1-ブテン共重合体(MFR4.0g/10分間(190℃、荷重2.16kg)、密度0.90g/cm3、融点98℃)