(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073034
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】研磨方法及び半導体部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20240522BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20240522BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
B24B37/00 H
H01L21/304 621D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184014
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】片桐 淳生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 知夫
(72)【発明者】
【氏名】中島 秀喜
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB01
3C158DA12
3C158DA17
3C158EB01
3C158ED10
3C158ED11
3C158ED22
3C158ED26
5F057AA03
5F057AA09
5F057AA28
5F057BA15
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5F057CA12
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA09
5F057EA29
5F057EA33
(57)【要約】
【課題】絶縁膜を含む研磨面の研磨性能の安定性に優れた研磨方法、及び当該研磨方法を用いた半導体部品の製造方法を提供する。
【解決手段】研磨剤を供給しながら、被研磨面と研磨パッドとを接触させ、両者の相対運動により研磨を行う研磨方法であって、前記被研磨面は、絶縁膜を含み、前記研磨剤は、砥粒と、水と、硫酸の電解によって生成された過硫酸イオンと、を含み、前記研磨剤は、7以上のpHを有する、研磨方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨剤を供給しながら、被研磨面と研磨パッドとを接触させ、両者の相対運動により研磨を行う研磨方法であって、
前記被研磨面は、絶縁膜を含み、
前記研磨剤は、砥粒と、水と、硫酸の電解によって生成された過硫酸イオンと、を含み、
前記研磨剤は、7以上のpHを有する、
研磨方法。
【請求項2】
前記過硫酸イオンは、循環型電解反応装置で生成され、被研磨面に供給される、請求項1に記載の研磨方法。
【請求項3】
研磨時における研磨剤の温度は、20℃~60℃である、請求項1に記載の研磨方法。
【請求項4】
砥粒を含む砥粒分散液と、
過硫酸イオンを含む過硫酸イオン溶液とを各々準備し、
前記砥粒分散液と前記過硫酸イオン溶液とを混合して、または各々独立に、被研磨面へ供給する、請求項1に記載の研磨方法。
【請求項5】
前記砥粒分散液中の前記砥粒は、負のゼータ電位を有する、請求項4に記載の研磨方法。
【請求項6】
前記被研磨面は、更に金属層を含む、請求項1に記載の研磨方法。
【請求項7】
前記砥粒は、セリウム化合物粒子およびシリカ粒子から選択される一種を含む、請求項1に記載の研磨方法。
【請求項8】
前記砥粒は、セリウム化合物粒子を含む、請求項1に記載の研磨方法。
【請求項9】
前記砥粒は、セリア粒子を含む、請求項1に記載の研磨方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の研磨方法により研磨された被研磨面を有する半導体基板を個片化することにより半導体部品を得る、半導体部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨方法及び半導体部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の高集積化や高機能化に伴い、半導体素子の微細化および高密度化のための微細加工技術の開発が進められている。従来から、半導体集積回路装置(以下、半導体デバイスともいう。)の製造においては、層表面の凹凸(段差)がリソグラフィの焦点深度を越えて十分な解像度が得られなくなるなどの問題を防ぐため、化学的機械的平坦化法(Chemical Mechanical Polishing:以下、CMPという。)を用いて、層間絶縁膜や埋め込み配線等を平坦化することが行われている。
【0003】
近年、半導体集積回路の更なる高集積化などの点から、2個以上のチップを積層するパッケージングが実用化されている。当該パッケージングにおいて、チップは例えば再配線層(RDL)を含んで積層されることがある。これに伴い、上記再配線層などのような金属と絶縁層とを含む層の研磨へCMPを適用することが求められている。
例えば特許文献1には、銅と樹脂とを研磨する研磨組成物として、アルミナ砥粒と、グリシンと、過酸化水素水と、アニオン界面活性剤と、水を含有する特定の研磨組成物が開示されている。
【0004】
これとは別に、特許文献2には有機残渣の発生を低減できるCMP用研磨液として、酸化剤と砥粒とを含有する特定のCMP用研磨液が開示されており、酸化剤として、過硫酸塩が挙げられている。
【0005】
また、特許文献3には、酸化シリコンのエッチングを抑制しつつ、窒化シリコンをエッチングする基板洗浄液として、リン酸と、硫酸の電解によって生成された過硫酸を含む電解硫酸と、水を含む、特定の基板洗浄液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-116529号公報
【特許文献2】特開2015-029001号公報
【特許文献3】国際公開第2014/091817号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1などのように、銅などの金属研磨には、酸化剤として過酸化水素水が用いられている。しかしながら、砥粒と過酸化水素を組み合わせた際に、砥粒と過酸化水素とが化学反応を引き起こすことがあり、その結果、研磨剤の研磨性能(例えば研磨速度、ディッシング抑制、平坦性など)が安定しない場合があった。
本発明者らは、このような問題が生じにくい酸化剤として過硫酸を用いることを検討した。過硫酸の溶液として、過硫酸塩を水に溶解させた溶液の他、濃硫酸と過酸化水素との混合溶液(SPM)などが知られている。しかしながら、過硫酸は自己分解するため、過硫酸塩を水に溶解させた溶液やSPMの場合、経時的に過硫酸濃度が低下し、研磨剤の組成を一定に維持することが難しい課題があった。
【0008】
本開示は、上記の課題を鑑み、研磨性能の安定性に優れた研磨方法、及び当該研磨方法を用いた半導体部品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、下記[1]~[10]の構成を有する研磨方法及び半導体部品の製造方法を提供する。
[1] 研磨剤を供給しながら、被研磨面と研磨パッドとを接触させ、両者の相対運動により研磨を行う研磨方法であって、
前記被研磨面は、絶縁膜を含み、
前記研磨剤は、砥粒と、水と、硫酸の電解によって生成された過硫酸イオンと、を含み、
前記研磨剤は、7以上のpHを有する、
研磨方法。
[2] 前記過硫酸イオンは、循環型電解反応装置で生成され、被研磨面に供給される、[1]の研磨方法。
[3] 研磨時における研磨剤の温度は、20℃~60℃である、[1]又は[2]の研磨方法。
[4] 砥粒を含む砥粒分散液と、
過硫酸イオンを含む過硫酸イオン溶液とを各々準備し、
前記砥粒分散液と前記過硫酸イオン溶液とを混合して、または各々独立に、被研磨面へ供給する、[1]~[3]のいずれかの研磨方法。
[5] 前記砥粒分散液中の前記砥粒は、負のゼータ電位を有する、[1]~[4]のいずれかの研磨方法。
[6] 前記被研磨面は、更に金属層を含む、[1]~[5]のいずれかの研磨方法。
[7] 前記砥粒は、セリウム化合物粒子およびシリカ粒子から選択される一種を含む、[1]~[6]のいずれかの研磨方法。
[8] 前記砥粒は、セリウム化合物粒子を含む、[1]~[7]のいずれかの研磨方法。
[9] 前記砥粒は、セリア粒子を含む、[1]~[8]のいずれかの研磨方法。
[10] [1]~[9]のいずれかの研磨方法により研磨された被研磨面を有する半導体基板を個片化することにより半導体部品を得る、半導体部品の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、研磨性能の安定性に優れた研磨方法、及び当該研磨方法を用いた半導体部品の製造方法の提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】研磨方法及び半導体部品の製造方法の一例を示す、模式的な断面図である。
【
図4】研磨剤供給部の別の一例を示す模式図である。
【
図5】研磨剤供給部の別の一例を示す模式図である。
【
図7】循環型電解反応装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
各実施形態において同一の構成については同一の符号を付して、その説明を省略または簡略化する。
説明を明確にするため、以下の記載および図面は、適宜、簡略化され、各部材は縮尺が大きく異なることがある。
また、本実施形態において「被研磨面」とは、研磨対象物の研磨される面であり、例えば表面を意味する。本明細書においては、研磨工程で現れる中間段階の表面も、「被研磨面」に含まれる。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含む。
【0013】
[研磨方法]
図1は、研磨方法及び半導体部品の製造方法の一例を示す模式的な断面図である。
図1の例では、研磨対象物3aとして絶縁膜1と金属層2とを含み、研磨後に再配線層3となる膜を用いている。当該研磨対象物3aは公知の方法により形成されるものである。絶縁膜1は酸化ケイ素、窒化ケイ素、ポリシリコン等の無機絶縁膜であってもよく、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステル樹脂等)、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリアリルエーテル樹脂、複素環含有樹脂(前記で例示した樹脂を除く)等の樹脂膜であってもよい。
金属層2としては、例えば、銅、タングステン、ルテニウム、モリブデン、コバルトなどを含む配線金属などが挙げられる。
図1の研磨対象物3aは後述する研磨方法により研磨5を行って金属層2を表面に露出させ、再配線層3とし、更にチップ4を実装6して、必要に応じてモールド樹脂などで被覆した後、個片化することにより半導体部品10とする。
【0014】
図2は本実施形態の研磨方法に適した研磨システム100の一例を示す模式図である。
図2の研磨システム100は、研磨装置20と、研磨剤供給部30と、過硫酸イオンを供給する電解反応装置76とを備える。
図2中の研磨装置20は、研磨対象物21を保持する研磨ヘッド22と、研磨定盤23と、研磨定盤23の表面に貼り付けられた研磨パッド24と、研磨パッド24に研磨剤25を供給する研磨剤供給管26とを備えている。研磨剤供給管26から研磨剤25を供給しながら、研磨ヘッド22に保持された研磨対象物21の被研磨面を研磨パッド24に接触させる。前記研磨剤25は被研磨面-研磨パッド間に満たされて、被研磨面に供給される。研磨ヘッド22と研磨定盤23とを回転運動させることで、研磨剤が供給された被研磨面と研磨パットとの相対運動が生じて研磨が行われる。
【0015】
研磨ヘッド22は、回転運動だけでなく直線運動をしてもよい。また、研磨定盤23および研磨パッド24は、研磨対象物21と同程度またはそれ以下の大きさであってもよい。その場合は、研磨ヘッド22と研磨定盤23とを相対的に移動させることにより、研磨対象物21の被研磨面の全面を研磨できるようにすることが好ましい。さらに、研磨定盤23および研磨パッド24は回転運動を行うものでなくてもよく、例えばベルト式で一方向に移動するものであってもよい。
【0016】
このような研磨装置20の研磨条件には特に制限はないが、研磨ヘッド22に荷重をかけて研磨パッド24に押し付けることでより研磨圧力を高め、研磨速度を向上させることができる。研磨圧力は0.5~50kPa程度が好ましく、研磨速度における研磨対象物21の被研磨面内の均一性、平坦性、スクラッチなどの研磨欠陥防止の観点から、3~40kPa程度がより好ましい。研磨定盤23および研磨ヘッド22の回転数は、50~500rpm程度が好ましい。また研磨時における研磨剤の温度は20℃~60℃が好ましい。研磨時の温度を20℃以上、好ましくは23℃以上、より好ましくは25℃以上、さらに好ましくは30℃以上とすることで金属層の研磨速度が向上する。一方、研磨時の温度を60℃以下、好ましくは55℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは45℃以下、特に好ましくは40℃以下とすることで、研磨対象物、研磨パッド等の研磨用部材、及び研磨装置等への熱によるダメージが抑制される。研磨剤25の供給量については、研磨剤の組成や上記各研磨条件等により適宜調整される。
【0017】
研磨パッド24としては、不織布、発泡ポリウレタン、多孔質樹脂、非多孔質樹脂などからなるものを使用することができる。研磨パッド24への研磨剤25の供給を促進し、あるいは研磨パッド24に研磨剤25が一定量溜まるようにするために、研磨パッド24の表面に格子状、同心円状、らせん状などの溝加工を施してもよい。また、必要に応じて、パッドコンディショナーを研磨パッド24の表面に接触させて、研磨パッド24表面のコンディショニングを行いながら研磨してもよい。
【0018】
<研磨剤>
本実施形態において、研磨剤は、砥粒と、水と、硫酸の電解によって生成された過硫酸イオンとを含み、7以上のpHを有するものを用いる。当該研磨剤を用いることで絶縁膜を含む被研磨面の研磨速度が向上する。
またpHを7以上とすることで、砥粒の凝集を抑制し、かつ、過硫酸イオンの安定性が向上する。研磨剤のpHは、pHの安定性及び研磨剤の取り扱い性の点からら、中でも、7.5~12.0が好ましく、8.0~11がより好ましく、8.5~10がより好ましい。研磨剤のpHは後述する有機酸や塩基性化合物などで調整できる。
以下、研磨剤に含まれ得る各成分について説明する。
【0019】
(砥粒)
砥粒としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、セリウム化合物粒子(例えば、セリア粒子、水酸化セリウム粒子)、チタニア粒子、ゲルマニア粒子およびこれらの複合粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。シリカ粒子としては、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ等が挙げられる。アルミナ粒子としては、コロイダルアルミナを用いることもできる。なお、複合粒子とは、粒子の表面に、該粒子よりも粒径の小さな粒子(該粒子とは異なる種類の粒子であってもよい)を付着させたものである。
砥粒としては、上述の中でも、絶縁膜の研磨速度に優れる点から、シリカ粒子、アルミナ粒子またはセリウム化合物粒子が好ましく、セリウム化合物粒子がより好ましく、被研磨面が絶縁膜(特に、酸化ケイ膜)を含む場合に、高い研磨速度が得られる点から、セリア粒子が更に好ましい。なお、セリウム化合物粒子(特にセリア粒子)は、過酸化水素と併用されると、酸化還元反応等の化学反応を引き起こし研磨剤の性能を悪化させる傾向にあると考えられるので、過酸化水素の代わりに過硫酸イオンを用いる本発明には特に好適である。
また、砥粒は1種類を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
砥粒の全質量に対するセリアの含有量は、70%質量以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。砥粒の全質量に対するセリアの含有量が70質量%以上であれば、特に絶縁膜の研磨速度を向上させやすい。
【0021】
セリア粒子は、公知のものから適宜選択して用いることができ、例えば、特開平11-12561号公報、特開2001-35818号公報、特表2010-505735号に記載された方法で製造されたセリア粒子が挙げられる。具体的には、硝酸セリウム(IV)アンモニウム水溶液にアルカリを加えて水酸化セリウムゲルを作製し、これをろ過、洗浄、焼成して得られたセリア粒子;高純度の炭酸セリウムを粉砕後焼成し、さらに粉砕、分級して得られたセリア粒子;液中でセリウム(III)塩を化学的に酸化して得られたセリア粒子などが挙げられる。
セリア粒子はセリア以外の不純物を含んでもよいが、1つのセリア粒子中におけるセリアの含有量は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95%以上が更に好ましく、100質量%(不純物を含まない)が最も好ましい。セリア粒子中におけるセリアの含有量が80質量%以上であれば、絶縁膜の研磨速度を向上させやすい。
【0022】
砥粒の平均粒子径は、0.01μm~0.5μmが好ましく、0.03μm~0.3μmがより好ましい。平均粒子径が0.5μm以下であれば、被研磨面に与える機械的作用が小さくなるため、被研磨面に生じるスクラッチ等の研磨傷の発生が抑制される。また、平均粒子径が0.01μm以上であれば、砥粒の凝集が抑制され研磨剤の保存安定性に優れるとともに、研磨速度にも優れている。
なお、砥粒は、液中において一次粒子が凝集した凝集粒子(二次粒子)として存在しているので、上記平均粒子径は、平均二次粒子径である。平均二次粒子径は、純水などの分散媒中に分散した分散液を用いて、レーザー回折・散乱式などの粒度分布計を使用して測定される。
【0023】
前記砥粒の含有量は、研磨剤の全質量に対して0.01質量%~10.0質量%が好ましく、0.05質量%~2.0質量%がより好ましく、0.1質量%~1.5質量%が更に好ましく、0.15質量%~1.0質量%が特に好ましい。砥粒の含有割合が上記下限値以上であれば、被研磨面に対する優れた研磨速度が得られる。一方、砥粒の含有割合が上記上限値以下であれば、砥粒の凝集を抑制できると共に、本研磨剤の粘度の上昇が抑制され、取扱い性に優れている。
【0024】
(水)
本研磨剤は、砥粒を分散させる媒体として水を含有する。水の種類については特に限定されないが、他の成分への影響、不純物の混入の防止、pH等への影響を考慮して、純水、超純水、イオン交換水等を用いることが好ましい。
【0025】
(硫酸の電解によって生成された過硫酸イオン)
本研磨剤は、過硫酸イオンを含むことで研磨速度がさらに向上する。本実施形態では、当該過硫酸イオンとして、硫酸の電解によって生成された過硫酸イオンを用いることで過硫酸イオン濃度を安定化することができ、その結果、研磨速度の安定性に優れた研磨方法とすることができる。なお、過硫酸イオンの生成方法は後述する。
【0026】
前記過硫酸イオンの含有量の下限値は、研磨剤の全質量に対して0.01質量%が好ましく、0.05質量%がより好ましく、0.1質量%が更に好ましく、0.3質量%が特に好ましく、0.5質量%が極めて好ましい。一方で、前記過硫酸イオンの含有量の上限値は、研磨剤の全質量に対して10.0質量%が好ましく、5.0質量%がより好ましく、3.0質量%が更に好ましく、2.0質量%が特に好ましい。過硫酸イオンの含有量が上記下限値以上であれば、被研磨面に対する優れた研磨速度が得られる。一方、過硫酸イオンの含有量が上記上限値以下であれば、砥粒の凝集を抑制できると共に、本研磨剤の粘度の上昇が抑制され、取扱い性に優れている。
【0027】
本実施形態の研磨剤は、本発明の効果を奏する範囲で、更に各種添加剤を含有してもよい。当該添加剤としては、有機酸(アミノ酸を含む)、塩基性化合物、複素芳香環化合物、界面活性剤、潤滑剤などが挙げられ、2種以上の添加剤を含有してもよい。
以下に記載する添加剤の合計の含有量は、十分な研磨速度を維持しつつ金属配線のディッシングやエロージョンを抑制することができる観点から、0.0001質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.01質量%が更に好ましく、0.1質量%以上が特に好ましい。また、同様の観点から、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましく、2質量%以下が特に好ましい。
【0028】
(有機酸)
研磨剤は、酸化の促進、pH調整、緩衝作用等を目的として有機酸を含有していてもよい。有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、アセドアミドイミノ二酢酸、ニトリロ三プロパン酸、ニトリロ三メチルホスホン酸、ジヒドロキシエチルグリシン、トリシン、及びこれらの塩(例えばアンモニウム塩、アルカリ金属塩等)が挙げられる。
また、有機酸としては、アミノ酸も好ましい。アミノ酸としては、グリシン、L-アラニン、β-アラニン、L-2-アミノ酪酸、L-ノルバリン、L-バリン、L-ロイシン、L-ノルロイシン、L-イソロイシン、L-アロイソロイシン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、サルコシン、L-オルニチン、L-リシン、タウリン、L-セリン、L-トレオニン、L-アロトレオニン、L-ホモセリン、L-チロシン、3,5-ジヨード-L-チロシン、β-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-L-アラニン、L-チロキシン、4-ヒドロキシ-L-プロリン、L-システィン、L-メチオニン、L-エチオニン、L-ランチオニン、L-シスタチオニン、L-シスチン、L-システィン酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、S-(カルボキシメチル)-L-システィン、4-アミノ酪酸、L-アスパラギン、L-グルタミン、アザセリン、L-アルギニン、L-カナバニン、L-シトルリン、δ-ヒドロキシ-L-リシン、クレアチン、L-キヌレニン、L-ヒスチジン、1-メチル-L-ヒスチジン、3-メチル-L-ヒスチジン、エルゴチオネイン、L-トリプトファン、アクチノマイシンC1、アパミン、アンギオテンシンI、アンギオテンシンII及びアンチパイン等が挙げられる。
【0029】
(塩基性化合物)
研磨剤は、pH調整等を目的として、塩基性化合物を含有してもよい。塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミノアルコールなどが挙げられる。
【0030】
(複素芳香環化合物)
研磨剤は、金属層2の表面を保護して、被研磨物の研磨速度を調整する目的で、複素芳香環化合物を含有していてもよい。複素芳香環化合物としては、1,2,3,4-テトラゾール、5-アミノ-1,2,3,4-テトラゾール、5-メチル-1,2,3,4-テトラゾール、1H-テトラゾール-5-酢酸、1H-テトラゾール-5-コハク酸、1,2,3-トリアゾール、4-アミノ-1,2,3-トリアゾール、4,5-ジアミノ-1,2,3-トリアゾール、4-カルボキシ-1H-1,2,3-トリアゾール、4,5-ジカルボキシ-1H-1,2,3-トリアゾール、1H-1,2,3-トリアゾール-4-酢酸、4-カルボキシ-5-カルボキシメチル-1H-1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、3-カルボキシ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジカルボキシ-1,2,4-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール-3-酢酸、1Hベンゾトリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール-5-カルボン酸等が挙げられる。
【0031】
(界面活性剤)
研磨剤は、砥粒の分散性の向上等を目的として、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩(例えば、スルホコハク酸ジオクチルエステル塩)、アルキルベンゼンスルホン酸(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸1/2カルシウム塩、キシレンスルホン酸ナトリウム塩)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩(例えば、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム)、アルキルジフェニルエーテルモノスルホン酸塩(例えば、アルキルジフェニルエーテルモノスルホン酸ナトリウム)、アルキルナフタレンスルホン酸塩(例えば、モノイソプロピルナフタレンスルホン酸、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸アンモニウム、セスキブチルナフタリンスルホン酸ナトリウム塩)、アルキルスルホコハク酸塩(例えば、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸二ナトリウム、スルホコハク酸ジ-2-エチルヘキシルエステルナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジアミルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジトリデシルスルホコハク酸ナトリウム塩、オクタデシルスルホコハク酸アミドジナトリウム塩、スルホコハク酸ラウリルジナトリウム塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸半エステルジナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸半エステルジナトリウム塩、ラウロイルエタノールスルホコハク酸アミドジナトリウム塩)、α-オレフィンスルホン酸塩、イゲポンT(商品名、I.G.FARBENINDUSTRIE社製)、イゲポンA(商品名、I.G.FARBENINDUSTRIE社製)、ネカール(商品名、BASF社製)、タモール(商品名、BASF社製)、N-アシルスルホン酸塩(例えば、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪族モノエタノールアミド硫酸ナトリウム、ラウリルメチルタウリン酸ナトリウム塩、ミリスチルメチルタウリン酸ナトリウム塩、パルミチルメチルタウリン酸ナトリウム塩、ステアリルメチルタウリン酸ナトリウム塩、牛脂油脂肪酸メチルタウリン酸ナトリウム塩)、ナフタレン及びその他芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物(例えば、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、特殊芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)、アルカンスルホン酸ナトリウム塩、イセチオン酸塩としてヤシ油脂肪酸(ヤシ油残基として一般にはラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基)エチルエステルスルホン酸ナトリウム塩、カルボキシ基またはカルボン酸アンモニウム塩等を有するポリマー(例えば、ポリアクリル酸またはポリアクリル酸塩)などが挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドマレイン酸共重合体、マレイン酸・ジアリルジメチルアンモニウムエチルサルフェイト・二酸化硫黄共重合体などが挙げられる。
上記界面活性剤の重量平均分子量は、被研磨面をより高速で研磨する観点から10,000~100,000が好ましい。
【0032】
(潤滑剤)
また本研磨剤は、潤滑剤を含有してもよい。潤滑剤は、研磨剤の潤滑性を向上し、研磨速度の面内均一性を向上させるために必要に応じて用いられるものであり、例えば、ポリエチレングリコール、ポリグリセリンなどの水溶性高分子が挙げられる。
【0033】
<研磨剤の供給(調製)方法>
研磨剤は、被研磨面に、砥粒と、水と、過硫酸イオンとを含む状態で供給すればよい。
例えば、砥粒分散液と過硫酸イオン溶液とを別々に準備し、これを研磨直前に混合して、または各々独立に、被研磨面へ供給することで研磨剤を調製してもよい。この方法によれば、上記分散液、過硫酸イオン溶液、及び過硫酸イオン溶液の原料となる硫酸の保存安定性や輸送の利便性に優れている。
以下、図面を参照して、研磨剤の供給方法の実施形態を説明する。
【0034】
(実施形態1-1)
図3Aは、研磨剤供給部30の一例を示す模式図である。
図3Aの研磨剤供給部30は、過硫酸イオン溶液を収容する槽50と、砥粒分散液を収容する槽31とを備える。槽50は過硫酸イオン溶液を送液する管36と接続し、当該管36は弁32と送液ポンプ34を備える。また槽50は電解反応装置76から過硫酸イオンが供給される管55と接続している。
槽31は、砥粒分散液を送液する管37と接続し、当該管37は弁33と送液ポンプ35を備える。前記管36と管37はミキサー38に接続し、ミキサー38内で、過硫酸イオン溶液と砥粒分散液とを混合して研磨剤を調製し、研磨剤供給管26から当該研磨剤25を被研磨面へ供給する。
また、研磨剤供給部30は一部又は全体がヒーター及び/又はクーラーにより温度調整してもよい(不図示)。
【0035】
砥粒分散液と過硫酸イオン溶液の配合量は、弁32,33及び/又は送液ポンプ34,35の調整により適宜調整できる。
またミキサー38は、砥粒分散液と過硫酸イオン溶液とが合流する部位であり、当該溶液と分散液とが十分に混合し得る程度の容積を有する空間があればよい。ミキサー38は、滞留時間を制御できる機能を備えた大きな空間を有する槽となっていてもよく、その一部又は全体がヒーター及び/又はクーラーにより温度調整されていてもよい(不図示)。後述する他のミキサーも同様である。
【0036】
本実施形態において、槽31中の砥粒分散液は、pH調整剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。過硫酸イオンとpH調整剤との混合時には中和熱が発生するが、研磨性能の安定性の観点から、研磨剤供給管26に送液される際には温度が安定していることが好ましい。従って、槽31中の砥粒分散液がpH調整剤を含む場合は、ミキサー38は滞留時間を制御する機能を備えていることが好ましい。
なお、本明細書中において、「pH調整剤」とは、pHを調整する機能を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば上述の有機酸や塩基性化合物である。
【0037】
また、槽31中の砥粒分散液においては、砥粒が負のゼータ電位を有することが好ましい。砥粒のゼータ電位は、例えば、界面活性剤の選択により調整することができる。
【0038】
また、過硫酸イオン溶液、及び/又は、砥粒分散液は、槽50及び槽31中において高濃度で保管し、使用時に適宜希釈する機能を備えていてもよい。
図3B、
図3C及び
図3Dは、
図3Aの研磨剤供給部30の変形例を示す模式図である。
図3Bの研磨剤供給部30は、過硫酸イオン溶液を希釈する機能を備える。
図3Bの研磨剤供給部30は、
図3Aの構成に加えて、水を収容する槽80を備え、槽80は水を送液する管83と接続し、当該管83は弁81と送液ポンプ82を備えている。管36と管83はミキサー84に接続し、ミキサー84内で、過硫酸イオン溶液を希釈する。
【0039】
図3Cの研磨剤供給部30は、砥粒分散液を希釈する機能を備える。
図3Cの研磨剤供給部30は、
図3Aの構成に加えて、水を収容する槽90を備え、槽90は水を送液する管93と接続し、当該管93は弁91と送液ポンプ92を備えている。管37と管93はミキサー94に接続し、ミキサー94内で、砥粒分散液を希釈する。
不図示であるが、研磨剤供給部30は、過硫酸イオン溶液を希釈する機能と砥粒分散液を希釈する機能の両方を備えていてもよい。この場合、
図3Bの槽80と
図3Cの槽90は同一の槽であってもよく、各々異なる槽であってもよい。
【0040】
また、
図3Dの研磨剤供給部30は、過硫酸イオン溶液と砥粒分散液とを同倍率で希釈する機能を備える。
図3Dの研磨剤供給部30は、
図3Aの構成に加えて、水を収容する槽85を備え、槽85は水を送液する管88と接続し、当該管88は弁861と送液ポンプ87を備えている。管88は前記ミキサー38に接続し、ミキサー38内で、砥粒分散液と過硫酸イオン溶液の混合と希釈を行う。
【0041】
(実施形態1-2)
図4は研磨剤供給部30の別の一例を示す模式図である。
図4の研磨剤供給部30は、更にpH調整剤槽40を備える。槽40は、pH調整剤を送液する管43と接続し、当該管43は弁41と送液ポンプ42を備える。
本実施形態では、過硫酸イオン溶液を供給する管36と、pH調整剤を供給する管43とがミキサー44に接続し、当該ミキサー44中の混合液を供給する管39と、砥粒分散液を供給する管37がミキサー38に接続している。
本実施形態の研磨剤供給部30においては、ミキサー44内で、過硫酸イオン溶液とpH調整剤とを混合し、ミキサー38内で、当該混合液と砥粒分散液を混合して研磨剤を調製し、被研磨面へ供給される。
過硫酸イオン溶液とpH調整剤との混合時に中和熱が発生することから、ミキサー44は、滞留時間を制御する機能を備えていることが好ましい。
本実施形態の研磨剤供給部30は、更に、過硫酸イオン溶液、及び/又は、砥粒分散液を希釈する機能を有していてもよい。具体的な構成は前記実施形態1-1における変形例と同様である。
【0042】
(実施形態1-3)
図5は研磨剤供給部30の別の一例を示す模式図である。
図5の研磨剤供給部30は、ミキサー38を有さず、砥粒分散液と、過硫酸イオン溶液は各々独立に、被研磨面へ供給される。本実施形態においては、研磨剤供給部30を比較的簡素な構成とすることができる。
また、本実施形態の研磨剤供給部30は、更に、過硫酸イオン溶液、及び/又は、砥粒分散液を希釈する機能を有していてもよい。具体的な構成は前記実施形態1-1における変形例と同様である。
【0043】
<過硫酸イオンの生成方法>
本実施形態において過硫酸イオンは、硫酸の電解によって生成されたものを用いる。硫酸の電解によって生成された過硫酸イオンを用いることで、過硫酸イオンの濃度を常に一定に保つことができ、自己分解の問題を抑制することができる。その結果、研磨性能の安定性に優れた研磨方法とすることができる。
以下、図面を参照して、過硫酸イオンの生成方法の実施形態を説明する。
【0044】
(実施形態2-1)
図6は電解反応装置76の一例を示す模式図である。
図6の電解反応装置76は、硫酸の電解を行う電解反応槽60と、硫酸を収容する硫酸槽71とを備える。硫酸槽71は硫酸を電解反応槽60へ送液する管74と接続し、当該管74は弁72と送液ポンプ73とを備える。また電解反応槽60は電解反応装置76から過硫酸イオンが供給される管55と接続している。
電解反応装置76は一部又は全体がヒーター及び/又はクーラーにより温度調整されていてもよい(不図示)。
【0045】
上記電解反応槽60には、陽極61および陰極62を配置し、さらに陽極61と、陰極62との間に所定の間隔をおいてバイポーラ電極63が配置する。なお、電解反応槽60はバイポーラ式ではなく、陽極と陰極のみを電極として備えるものであってもよい。上記陽極61および陰極62には、直流電源64を接続し、電解反応槽60での直流電解が可能になっている。
【0046】
上記硫酸槽71内に、硫酸濃度が10~18Mの硫酸を収容し、これに超純水を体積比で5:1となるように混合して硫酸溶液とする。これを送液ポンプ73によって順次、電解反応槽60に送液する。電解反応槽60では、陽極61および陰極62に直流電源64によって通電すると、それぞれのバイポーラ電極63が分極し、所定の間隔で陽極、陰極が出現する。電解反応槽60に送液される溶液は、これら電極間に通水される。この際に通液線速度が1~10,000m/hrとなるように送液ポンプ73の出力を設定するのが望ましい。なお、上記通電では、電極表面での電流密度が10~100,000A/m2となるように通電制御するのが望ましい。
電解反応槽60で溶液に対し通電されると、溶液中の硫酸イオンが酸化反応して過硫酸イオンが生成され過硫酸イオン溶液が生成される。この過硫酸イオン溶液は、送り管55から過硫酸イオン溶液槽50へと送液され、当該槽50内において高濃度の過硫酸イオン溶液が得られる。当該過硫酸イオン溶液を研磨装置20に供給することで、過硫酸イオン濃度が安定した溶液を供給することができる。
【0047】
(実施形態2-2)
図7は、電解反応装置が循環型電解反応装置70の場合の一例を示す模式図である。
図7の循環型電解反応装置70は、前記実施形態2-1の構成に加えて、過硫酸イオン溶液を収容する槽50から、電解反応槽60へ送液する管54を備え、当該管54が弁65と送液ポンプ56を備えている。なお、
図7では管54は、管74と接続しているが、電解反応槽60に直接接続していてもよい。
本実施形態の循環型電解反応装置70によれば、過硫酸イオン溶液槽50と電解反応槽60との間で過硫酸イオン溶液を循環することができる。そのため、例えば槽50に残存する過硫酸イオン溶液が自己分解して過硫酸イオン濃度が低下した際に、再度電解反応を行って過硫酸イオン溶液のイオン濃度を上昇することができる。これにより、過硫酸イオンの濃度を常に一定に保つことができ、自己分解の問題を抑制することがより容易に達成できる。
本実施形態において、過硫酸イオン溶液は、過硫酸イオン溶液槽50と電解反応槽60との間で常時循環していてもよい。弁65、72、32(
図3など)を電磁弁などとし、過硫酸イオン溶液の使用量に応じて流量を制御することで、過硫酸イオン溶液の濃度を一定に保つことができる。
【0048】
なお上記実施形態1-1~実施形態1-3と、上記実施形態2-1~実施形態2-2は任意の組み合わせとすることができる。中でも実施形態1-2と実施形態2-2の組み合わせが好ましく、
図4におけるミキサー44を滞留機能付のミキサーとすることで、過硫酸イオン濃度が一定で、中和熱が制御されて一定温度の研磨剤を供給することができ、研磨性能の安定性に優れた研磨方法を提供できる。即ち、研磨剤の調製は、硫酸の電解によって生成された過硫酸イオンを含む過硫酸イオン溶液に、有機酸及び塩基性化合物より選択される1種以上を含むpH調整剤を混合し、次いで、砥粒分散液を混合する工程を含むことが好ましい。
【0049】
上記実施形態は、本発明の技術内容を説明することを目的とする例示として記載されたものであり、本願に係る発明の技術的範囲をこの記載の内容に限定する趣旨ではない。本願に係る発明の技術的範囲は、明細書、図面、及び特許請求の範囲又はこれに均等の範囲において当業者が想到可能な限り、変更、置き換え、付加、省略されたものも含む。
【0050】
[半導体部品の製造方法]
本実施形態に係る半導体部品の製造方法は、前記本発明に係る研磨方法により研磨された被研磨面を有する半導体基板を個片化することにより半導体部品を得るものである。
【0051】
本開示の半導体部品の製造方法は、少なくとも前記研磨方法により研磨された被研磨面を有する半導体基板を個片化する個片化工程を有する。個片化工程は、例えば、ブレードダイシング、レーザダイシング、プラズマダイシング等の公知の方法により、前記半導体基板(例えば半導体ウエハ)をダイシングして半導体チップである半導体部品を得る工程などが挙げられる。
本半導体部品の製造方法は、更に、前記半導体チップの被研磨面上に他の部材を接合する接合工程を有してもよい。当該工程により、接合体である半導体部品が得られる。
他の部材としては、第2の半導体チップ、再配線層などが挙げられる。なお第2の半導体チップは本開示の製造方法により得られた半導体チップであってもよく、別の方法で得られた半導体チップであってもよい。前記接合工程としては、例えば、前記被研磨面に直接他の部材を配置して、フュージョン接合、表面活性化接合などにより直接接合する工程でもよく、前記被研磨面と他の部材とを接着層を介して接合する工程でもよい。接着層としては、はんだ、銅などの金属層、ガラス層や、ポリイミド、エポキシなどの樹脂層などが挙げられる。
本開示は、更に、本開示の研磨方法により研磨された被研磨面を有する半導体部品を少なくとも1つ含む電子デバイスを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、例えば、絶縁膜を含む被研磨面のCMPにおいて、研磨性能の安定性に優れる。したがって、本発明の研磨方法は、半導体デバイス製造における金属と絶縁層とを含む層の研磨に適している。
【符号の説明】
【0053】
1…絶縁膜、 2…金属層、 3…再配線層、 3a…研磨対象物、 4…チップ、 5…研磨、 6…チップ実装、 10…半導体部品、 20…研磨装置、 21…研磨対象物、 22…研磨ヘッド、 23…研磨定盤、 24…研磨パッド、 25…研磨剤、 26…研磨剤供給管、 30…研磨剤供給部、 31…砥粒分散液槽、 32,33…弁、 34,35…ポンプ、 36,37…管、 38…ミキサー、 39…管、 40…pH調整剤槽、 41…弁、 42…ポンプ、 43…管、 44…ミキサー、 50…過硫酸イオン溶液槽、 54,55…管、 56…ポンプ、 60…電解反応槽、 61…陽極、 62…陰極、 63…バイポーラ電極、 64…電源、 65…弁、 70…循環型電解反応装置、 71…硫酸槽、 72…弁、 73…ポンプ、 76…電解反応装置、 80,85,90…水槽、 81,86,91…弁、 82,87,92…ポンプ、 83,88,93…管、 84,94…ミキサー、 100…研磨システム。