IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本放送協会の特許一覧 ▶ 一般財団法人NHKエンジニアリングシステムの特許一覧

<>
  • 特開-伸縮性を有する半導体装置 図1
  • 特開-伸縮性を有する半導体装置 図2
  • 特開-伸縮性を有する半導体装置 図3
  • 特開-伸縮性を有する半導体装置 図4
  • 特開-伸縮性を有する半導体装置 図5
  • 特開-伸縮性を有する半導体装置 図6
  • 特開-伸縮性を有する半導体装置 図7
  • 特開-伸縮性を有する半導体装置 図8
  • 特開-伸縮性を有する半導体装置 図9
  • 特開-伸縮性を有する半導体装置 図10
  • 特開-伸縮性を有する半導体装置 図11
  • 特開-伸縮性を有する半導体装置 図12
  • 特開-伸縮性を有する半導体装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073180
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】伸縮性を有する半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240522BHJP
   H01L 25/10 20060101ALI20240522BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20240522BHJP
   H01L 23/52 20060101ALI20240522BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H01L29/78 627D
H01L25/10 Z
H01L21/90 B
H01L27/12 C
G09F9/30 310
G09F9/30 308Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184255
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(71)【出願人】
【識別番号】591053926
【氏名又は名称】一般財団法人NHKエンジニアリングシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100171446
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 尚幸
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100171930
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 郁一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 敏裕
(72)【発明者】
【氏名】宮川 幹司
(72)【発明者】
【氏名】中田 充
(72)【発明者】
【氏名】辻 博史
【テーマコード(参考)】
5C094
5F033
5F110
【Fターム(参考)】
5C094AA36
5C094BA27
5C094CA19
5C094DA06
5C094EB10
5C094FB01
5F033GG03
5F033HH08
5F033HH11
5F033HH13
5F033HH14
5F033HH17
5F033HH18
5F033HH20
5F033JJ08
5F033JJ11
5F033JJ13
5F033JJ14
5F033JJ17
5F033JJ18
5F033JJ20
5F033KK08
5F033KK11
5F033KK13
5F033KK14
5F033KK17
5F033KK18
5F033KK20
5F033QQ09
5F033QQ11
5F033QQ37
5F033RR04
5F033RR06
5F033RR21
5F033RR22
5F033SS21
5F033XX12
5F033XX19
5F110AA26
5F110BB01
5F110CC01
5F110CC07
5F110DD01
5F110DD02
5F110DD12
5F110DD13
5F110DD14
5F110DD17
5F110DD21
5F110DD24
5F110EE02
5F110EE03
5F110EE04
5F110EE06
5F110EE14
5F110EE36
5F110EE38
5F110FF02
5F110FF03
5F110FF09
5F110GG01
5F110HK02
5F110HK03
5F110HK04
5F110HK06
5F110HL02
5F110HL03
5F110HL04
5F110HL06
5F110HL14
5F110NN03
5F110NN04
5F110NN23
5F110NN24
5F110NN27
5F110NN36
5F110QQ16
(57)【要約】
【課題】伸縮による半導体素子への影響を軽減し、半導体素子の動作の安定化を図ることを可能とした伸縮性を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】伸縮自在な伸縮性樹脂基板2と、伸縮性樹脂基板2の上に配置された非伸縮性樹脂基板3と、非伸縮性樹脂基板3の上に配置された半導体素子4と、伸縮性樹脂基板2の非伸縮性樹脂基板3と対向する面側に設けられた第1の接点部S1と、非伸縮性樹脂基板3の伸縮性樹脂基板2と対向する面側に設けられて、第1の接点部S1と電気的に接続された第2の接点部S2とを備え、非伸縮性樹脂基板3は、第1の接点部S1と第2の接点部S2との接続位置を含む貼着部14を介して伸縮性樹脂基板2に部分的に貼着されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮自在な伸縮性樹脂基板と、
前記伸縮性樹脂基板の上に配置された非伸縮性樹脂基板と、
前記非伸縮性樹脂基板の上に配置された半導体素子と、
前記伸縮性樹脂基板の前記非伸縮性樹脂基板と対向する面側に設けられた第1の接点部と、
前記非伸縮性樹脂基板の前記伸縮性樹脂基板と対向する面側に設けられて、前記第1の接点部と電気的に接続された第2の接点部とを備え、
前記非伸縮性樹脂基板は、前記第1の接点部と前記第2の接点部との接続位置を含む貼着部を介して前記伸縮性樹脂基板に部分的に貼着されていることを特徴とする伸縮性を有する半導体装置。
【請求項2】
前記伸縮性樹脂基板は、粘着性を有し、
前記非伸縮性樹脂基板は、前記貼着部における前記伸縮性樹脂基板の粘着力により前記伸縮性樹脂基板に部分的に貼着されていることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性を有する半導体装置。
【請求項3】
前記伸縮性樹脂基板の前記非伸縮性樹脂基板と対向する面側に設けられた密着層を備え、
前記非伸縮性樹脂基板は、前記貼着部に設けられた前記密着層の粘着力により前記伸縮性樹脂基板に部分的に貼着されていることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性を有する半導体装置。
【請求項4】
前記伸縮性樹脂基板の少なくとも前記貼着部を除く前記非伸縮性樹脂基板と対向する面側に設けられた非貼着層を備えることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性を有する半導体装置。
【請求項5】
前記伸縮性樹脂基板の前記非伸縮性樹脂基板と対向する面側に伸縮自在に設けられた配線層を備え、
前記第1の接点部は、前記配線層により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性を有する半導体装置。
【請求項6】
前記非伸縮性樹脂基板を貫通した状態で設けられた貫通電極を備え、
前記第2の接点部は、前記貫通電極により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性を有する半導体装置。
【請求項7】
前記非伸縮性樹脂基板を貫通した状態で設けられた貫通電極と、
前記貫通電極と電気的に接続されるように前記非伸縮性樹脂基板の前記伸縮性樹脂基板と対向する面側に設けられた電極層とを備え、
前記第2の接点部は、前記電極層により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性を有する半導体装置。
【請求項8】
前記非伸縮性樹脂基板は、前記伸縮性樹脂基板の面内に複数並んで配置され、
前記半導体素子は、前記複数の非伸縮性樹脂基板の各々の面上に配置され、
前記伸縮性樹脂基板は、前記複数の非伸縮性樹脂基板の隣り合うもの同士の間で伸縮自在とされていることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性を有する半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、伸縮性を有する半導体装置がある(例えば、下記特許文献1,2を参照。)。このような伸縮性を有する半導体装置は、球面や自由曲面などの3次元形状に変形可能な有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイや、感圧センサなどの電子デバイスの駆動に必要である。
【0003】
具体的に、下記特許文献1には、支持表面を有するフレキシブル基板と、曲面状内表面を有する半導体構造とを備え、曲面状内表面の少なくとも一部がフレキシブル基板の支持表面に結合されている伸縮性半導体素子が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、樹脂基板上に1つ又は複数の半導体素子を形成し、半導体素子を内側封止層で覆って構成した半導体搭載基材が、エラストマーからなる伸縮性樹脂フィルムに1つ又は複数埋設され、伸縮性樹脂フィルムに半導体素子に接続される導電回路が形成され、半導体搭載基材の周囲が外側封止層で覆われた伸縮性デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-281406号公報
【特許文献2】特開2015-149364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した伸縮性を有する半導体装置では、伸縮性を有する基板の上に薄膜トランジスタ(TFT)などの半導体素子を形成している。しかしながら、従来の半導体装置では、基板を伸縮させた際に、伸縮部となる基板と、非伸縮部となる半導体素子との間で剥離が生じ易く、半導体素子の特性が不安定となることがあった。
【0007】
また、基板を伸縮させた際に、伸縮する基板側の配線と、半導体素子側の電極との間で電気的な接続を維持することが困難となり、断線してしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、伸縮による半導体素子への影響を軽減し、半導体素子の動作の安定化を図ることを可能とした伸縮性を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 伸縮自在な伸縮性樹脂基板と、
前記伸縮性樹脂基板の上に配置された非伸縮性樹脂基板と、
前記非伸縮性樹脂基板の上に配置された半導体素子と、
前記伸縮性樹脂基板の前記非伸縮性樹脂基板と対向する面側に設けられた第1の接点部と、
前記非伸縮性樹脂基板の前記伸縮性樹脂基板と対向する面側に設けられて、前記第1の接点部と電気的に接続された第2の接点部とを備え、
前記非伸縮性樹脂基板は、前記第1の接点部と前記第2の接点部との接続位置を含む貼着部を介して前記伸縮性樹脂基板に部分的に貼着されていることを特徴とする伸縮性を有する半導体装置。
〔2〕 前記伸縮性樹脂基板は、粘着性を有し、
前記非伸縮性樹脂基板は、前記貼着部における前記伸縮性樹脂基板の粘着力により前記伸縮性樹脂基板に部分的に貼着されていることを特徴とする前記〔1〕に記載の伸縮性を有する半導体装置。
〔3〕 前記伸縮性樹脂基板の前記非伸縮性樹脂基板と対向する面側に設けられた密着層を備え、
前記非伸縮性樹脂基板は、前記貼着部に設けられた前記密着層の粘着力により前記伸縮性樹脂基板に部分的に貼着されていることを特徴とする前記〔1〕に記載の伸縮性を有する半導体装置。
〔4〕 前記伸縮性樹脂基板の少なくとも前記貼着部を除く前記非伸縮性樹脂基板と対向する面側に設けられた非貼着層を備えることを特徴とする前記〔1〕に記載の伸縮性を有する半導体装置。
〔5〕 前記伸縮性樹脂基板の前記非伸縮性樹脂基板と対向する面側に伸縮自在に設けられた配線層を備え、
前記第1の接点部は、前記配線層により構成されていることを特徴とする前記〔1〕に記載の伸縮性を有する半導体装置。
〔6〕 前記非伸縮性樹脂基板を貫通した状態で設けられた貫通電極を備え、
前記第2の接点部は、前記貫通電極により構成されていることを特徴とする前記〔1〕に記載の伸縮性を有する半導体装置。
〔7〕 前記非伸縮性樹脂基板を貫通した状態で設けられた貫通電極と、
前記貫通電極と電気的に接続されるように前記非伸縮性樹脂基板の前記伸縮性樹脂基板と対向する面側に設けられた電極層とを備え、
前記第2の接点部は、前記電極層により構成されていることを特徴とする前記〔1〕に記載の伸縮性を有する半導体装置。
〔8〕 前記非伸縮性樹脂基板は、前記伸縮性樹脂基板の面内に複数並んで配置され、
前記半導体素子は、前記複数の非伸縮性樹脂基板の各々の面上に配置され、
前記伸縮性樹脂基板は、前記複数の非伸縮性樹脂基板の隣り合うもの同士の間で伸縮自在とされていることを特徴とする前記〔1〕に記載の伸縮性を有する半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、伸縮による半導体素子への影響を軽減し、半導体素子の動作の安定化を図ることを目的とした伸縮性を有する半導体装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を模式的に示す斜視図である。
図2図1中に示す半導体装置の要部を模式的に示す断面図である。
図3図2に示す半導体装置の伸張時の状態を示す断面図である。
図4図1に示す半導体装置の製造工程を順に説明するための断面図である。
図5図1に示す半導体装置の製造工程を順に説明するための断面図である。
図6図1に示す半導体装置の製造工程を順に説明するための断面図である。
図7図1に示す半導体装置の製造工程を順に説明するための断面図である。
図8図1に示す半導体装置の製造工程を順に説明するための断面図である。
図9図1に示す半導体装置の製造工程を順に説明するための断面図である。
図10図1に示す半導体装置の製造工程を順に説明するための断面図である。
図11図1に示す半導体装置の製造工程を順に説明するための断面図である。
図12】半導体装置の別の構成例を示す断面図である。
図13】非伸縮性樹脂基板の別の構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
また、以下に示す図面では、XYZ直交座標系を設定し、X軸方向を半導体装置の面内における第1の方向Xとし、Y軸方向を半導体装置の面内における第1の方向Xとは直交する第2の方向Yとし、Z軸方向を半導体装置の面内に対して直交する第3の方向Zとして示すものとする。
【0014】
(半導体装置)
先ず、本発明の一実施形態として、例えば図1図3に示す伸縮性を有する半導体装置1ついて説明する。
なお、図1は、半導体装置1の構成を模式的に示す斜視図である。図2は、半導体装置1の要部を模式的に示す断面図である。図3は、半導体装置1の伸張時の状態を示す断面図である。
【0015】
本実施形態の半導体装置1は、図1及び図2に示すように、伸縮性樹脂基板2と、伸縮性樹脂基板2の面内に並んで配置された複数の非伸縮性樹脂基板3と、非伸縮性樹脂基板3の各々の面上に配置された複数の半導体素子4とを備えている。
【0016】
本実施形態の半導体装置1では、半導体素子4として、薄膜トランジスタ(以下、「TFT4」という。)を伸縮性樹脂基板2の面内において互いに交差(本実施形態では直交)する第1の方向Xと第2の方向Yとにマトリックス状に並べて配置した構成を例示している。
【0017】
本実施形態の半導体装置1は、例えば液晶表示パネルや有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示パネルなどのディスプレイの駆動用TFTに好適に用いられる。これにより、伸縮自在なストレッチャブルディスプレイを実現し、球面や自由曲面などの3次元形状に変形可能なディスプレイを形成することが可能である。
【0018】
伸縮性樹脂基板2は、粘着性を有するアクリル系粘着組成物を含むフィルム基板であり、その中でも、透明性や耐候性、耐熱性に優れ、凹凸面に対する追従性や曲面接着力及び保持力に優れたアクリル系樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
伸縮性樹脂基板2には、例えば、粘着性を有するアクリル系粘着組成物として、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有するモノマーを50質量%以上の割合で含む粘着性を有するアクリル系ポリマーを用いることができる。また、伸縮性樹脂基板2は、粘着付与樹脂として、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂などを含む構成としてもよい。また、伸縮性樹脂基板2は、フィルム基板を構成する樹脂材料として、引張伸び率が100%以上の樹脂であり、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、スチレンブタジエン樹脂などを用いることができる。また、伸縮性樹脂基板2の厚さは、0.005~1.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.05~1mmである。
【0020】
伸縮性樹脂基板2の粘着力は、「JIS Z 0237」に基づいて測定される180°引き剥がし粘着力において、例えば、7N/20mm以上であることが好ましく、より好ましくは5N/2mm以上である。伸縮性樹脂基板2の粘着力の高さは、非伸縮性樹脂基板3との剥離を抑制し、一体化するために必要な要素であり、粘着力の上限については特に制限されるものではない。
【0021】
伸縮性樹脂基板2は、長寿命化及び耐久性の向上を図るため、伸縮させた後に元の形状への復元性があることが好ましい。具体的には、100%伸張させた後の復元率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上である。復元率が低いと耐久性が得られにくくなる。復元率の調整は、アクリル系ポリマーの架橋度や平均分子量により調整することが知られており、この手法により調整が可能である。
【0022】
複数の非伸縮性樹脂基板3は、可撓性を有する樹脂(プラスチック)製のフィルム基板であり、伸縮性樹脂基板2の面内において互いに交差(本実施形態では直交)する第1の方向Xと第2の方向Yとにマトリックス状に並んで配置されている。また、各非伸縮性樹脂基板3は、上述した伸縮性樹脂基板2が有する粘着力によって、伸縮性樹脂基板2の一方の面(表面)側に貼着可能されている。
【0023】
非伸縮性樹脂基板3には、例えば、ポリイミド(PI)やポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ナノセルロースなどを用いることができる。その中でも、TFT4の形成時に必要や熱焼成や薬液処理などに対する耐熱性や耐薬品性に優れたPIを用いることが好ましい。また、非伸縮性樹脂基板3の厚さは、0.1~100μmであることが好ましく、より好ましくは1~10μmである。
【0024】
TFT4は、非伸縮性樹脂基板3の上に、半導体層5と、半導体層5の下部を通るように配置されたゲート電極6と、半導体層5とゲート電極6との間に配置された絶縁層7と、半導体層5のゲート電極6を挟んだ両側に配置されたソース電極8及びドレイン電極9とを有している。
【0025】
また、本実施形態のTFT4は、ゲート電極6を覆う絶縁層7の上に半導体層5が設けられたボトムゲート構造を有している。一方、TFT4については、半導体層5を覆う絶縁層7の上にゲート電極6が設けられたトップゲート構造を有していてもよい。
【0026】
半導体層5は、ゲート電極6と平面視で重なる絶縁層7の上に配置されて、チャネルが形成される活性層を形成している。半導体層5には、例えば、少なくとも主成分にインジウム、スズ、亜鉛及び酸素(In-Sn-Zn-O)を含む酸化物半導体や、少なくともインジウム、ガリウム、亜鉛及び酸素(In-Ga-Zn-O)を含む酸化物半導体などを用いることができる。
【0027】
ゲート電極6は、非伸縮性樹脂基板3の上に第2の方向に延在して設けられている。ゲート電極6には、例えば、チタン(Ti)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)などの金属又はそれらの合金、若しくはそれらの金属を2種類以上積層した導電膜を用いることができる。
【0028】
絶縁層7は、半導体層5とゲート電極6との間を絶縁し、半導体層5にゲート電極6を介して電界を印加するために設けられている。絶縁層7には、例えば、窒化シリコン(SiN)膜や酸化シリコン(SiO)などの無機酸化膜、又はこれらの積層膜を用いることができる。
【0029】
ソース電極8及びドレイン電極9は、それぞれの一端側が半導体層5と電気的に接続されると共に、第1の方向に延在しながら、半導体層5、絶縁層7及び非伸縮性樹脂基板3の上に連続して設けられている。
【0030】
ソース電極8及びドレイン電極9には、例えば、チタン(Ti)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)などの金属又はそれらの合金、若しくはそれらの金属を2種類以上積層した導電膜を用いることができる。
【0031】
また、TFT4は、非伸縮性樹脂基板3との密着性の改善や、非伸縮性樹脂基板3のバリア性を高めるために、非伸縮性樹脂基板3の上に下地層(図示せず。)を介して配置された構成であってもよい。下地層には、上述した絶縁層7で例示したものと同じものを用いることができる。
【0032】
非伸縮性樹脂基板3の上には、TFT4の少なくとも一部を覆う保護層10が設けられている。保護層10は、非伸縮性樹脂基板3の上に形成されるTFT4の歪みを抑制し、TFT4の特性を安定化させる効果を有している。
【0033】
保護層10には、例えばエポキシ系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂などの有機膜を用いることができる。その中でも、1μm以上の厚膜化が可能であり、光によるパターン形成が可能な光反応性のエポキシ系樹脂を用いることが好ましい。具体的には、ネガ型のフォトレジスト材料であるSU-8などを用いることができる。また、保護層10の厚みは、0.1~5μmであることが好ましく、より好ましくは1~2μmである。
【0034】
ゲート電極6、ソース電極8及びドレイン電極9の他端側は、非伸縮性樹脂基板3を貫通して設けられた複数の貫通電極11と電気的接続されている。複数の貫通電極11は、ゲート電極6、ソース電極8及びドレイン電極9の各々に対応して設けられて、非伸縮性樹脂基板3を貫通する複数の孔部12に埋め込まれた状態で設けられている。
【0035】
具体的に、各貫通電極11は、各孔部12に、例えば、チタン(Ti)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)などの金属又はそれらの合金などを含んだ導電材料を埋め込むことによって形成されている。
【0036】
伸縮性樹脂基板2の面上には、伸縮性を有する複数の配線層13が設けられている。複数の配線層13は、複数の貫通電極11の各々に対応して設けられて、これら複数の貫通電極11を介してTFT4を構成するゲート電極6、ソース電極8及びドレイン電極9と電気的に接続されている。
【0037】
すなわち、各配線層13の各貫通電極11と対向する面は、各貫通電極11と電気的に接続される第1の接点部S1を構成している。
【0038】
一方、各貫通電極11の各配線層13と対向する面は、各配線層13と電気的に接続される第2の接点部S2を構成している。
【0039】
また、複数の配線層13は、複数の非伸縮性樹脂基板3の隣り合うもの同士の間を電気的に接続するように、第1の方向X又は第2の方向に延在して設けられている。
【0040】
各配線層13には、例えば、弾性のあるエラストマーに導電性フィラーを分散させて導電性を持たせたものや、金などの金属配線を蛇腹状に湾曲形状をさせたものなどの伸縮性を有する導電層を用いることができる。
【0041】
エラストマーとしては、柔軟性を付与することから、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム、エチレン-プロピレン共重合体、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴムなどを用いることができる。
【0042】
導電性フィラーとしては、例えば、カーボンナノチューブ、金属ナノワイヤー、金属ナノ粒子、金属ナノフレークなどを用いることができる。また、伸縮時に導電性を損なわないためには、ワイヤー状やフレーク状のものを用いることが好ましく、伸張時にネットワーク状の構造を形成することが可能であり、導電性パスを維持することが可能である。
【0043】
各非伸縮性樹脂基板3は、各配線層13の第1の接点部S1と各貫通電極11の第2の接点部S2との接続位置を含む貼着部14を介して伸縮性樹脂基板2に部分的に貼着されている。
【0044】
具体的に、各非伸縮性樹脂基板3は、貼着部14に設けられた密着層15を介して伸縮性樹脂基板2に貼着されている。密着層15には、例えば、酸化シリコン(SiO)膜や窒化シリコン(SiN)膜などの無機酸化膜、又はこれらの積層膜を用いることができる。また、密着層15の厚さは、5~200nmであることが好ましく、より好ましくは10~20nmである。複数の貫通電極11は、この密着層15を貫通する複数の孔部12に埋め込まれた状態で設けられている。
【0045】
一方、伸縮性樹脂基板2の少なくとも貼着部14を除く各非伸縮性樹脂基板3と対向する面側には、非貼着層16が設けられている。非貼着層16には、例えば、シリコーン系やフッ素系などの離型剤、有機高分子膜などを用いることができる。
【0046】
貼着部14は、平面視において伸縮性樹脂基板2と非伸縮性樹脂基板3とが重なる重畳領域Eの一部に設けられている。貼着部14の位置については、重畳領域Eの内側であればよく、特に限定されないものではない。本実施形態では、重畳領域Eの中央部からずれた位置に貼着部14が配置された構成となっているが、重畳領域Eの中央部に貼着部14を配置することも可能である。
【0047】
密着層15は、重畳領域Eの貼着部14に対応した領域(以下、「貼着領域」という。)E1に設けられている。一方、非貼着層16は、重畳領域Eの貼着部14を除く領域(以下、「非貼着領域」という。)E2に設けられている。
【0048】
複数の貫通電極11は、貼着領域E1の内側に設けられている。このため、ゲート電極6、ソース電極8及びドレイン電極9の他端側は、複数の貫通電極11の一端(上端)側と電気的に接続されるように、非伸縮性樹脂基板3の面上において引き回されている。一方、複数の配線層13は、複数の貫通電極11の他端(下端)側と電気的に接続されるように、伸縮性樹脂基板2の面上において引き回されている。
【0049】
なお、図2では、半導体装置1のうちTFT4を含む要部の断面を模式的に示している。すなわち、TFT4を構成するゲート電極6、ソース電極8及びドレイン電極9と、複数の貫通電極11と、複数の配線層13との接続位置は、それぞれ異なるものの、図2では、各接続位置における断面の図示を省略し、便宜上、これら各部の断面を同時に図示している。
【0050】
以上のような構成を有する本実施形態の半導体装置1では、上述した貼着部14を介して各非伸縮性樹脂基板3が伸縮性樹脂基板2に部分的に貼着されている。また、本実施形態の半導体装置1では、上述した貼着部14に設けられた密着層15を介して各非伸縮性樹脂基板3が伸縮性樹脂基板2と強固に貼着されている。
【0051】
これにより、伸縮性樹脂基板2を伸縮させた際に、各非伸縮性樹脂基板3が伸縮性樹脂基板2から剥離することなく、各配線層13の第1の接点部S1と各貫通電極11の第2の接点部S2との間の電気的な接続を維持することが可能である。また、TFT4は、非伸縮部となる非伸縮性樹脂基板3の上に設けられているため、伸縮性樹脂基板2による伸縮の影響を軽減することが可能である。
【0052】
また、本実施形態の半導体装置1では、複数の非伸縮性樹脂基板3の隣り合うもの同士の間で伸縮性樹脂基板2が伸縮自在とされている。さらに、伸縮性樹脂基板2は、上述した重畳領域Eのうち、貼着領域E1が非伸縮部となり、非貼着領域E2が伸縮部となっている。
【0053】
この場合、上述した重畳領域Eのうち、非貼着領域E2にある各配線層13を伸縮させることができるため、重畳領域Eの全域が非伸縮部となる場合に比べて、各配線層13の伸縮自在な領域を広げることが可能である。
【0054】
これにより、複数の非伸縮性樹脂基板3の隣り合うもの同士の間隔を狭めて、TFT4の実装密度を高めた場合でも、各配線層13の伸張率を十分に確保することが可能である。
【0055】
したがって、本実施形態の半導体装置1では、伸縮性樹脂基板2の伸縮によるTFT4への影響を軽減し、TFT4の動作の安定化を図ると共に、各TFT4の実装密度を高めることが可能である。
【0056】
(半導体装置の製造方法)
次に、上記半導体装置1の製造方法について、図4図11を参照しながら説明する。
なお、図4図11は、半導体装置1の製造工程を順に説明するための断面図である。
【0057】
上記半導体装置1を製造する際は、先ず、図4に示すように、第1の支持基板21の上に、複数の非伸縮性樹脂基板3となる非伸縮性樹脂基材30を形成する。具体的には、第1の支持基板21にガラス基板を用い、この第1の支持基板21の上に、上述した非伸縮性樹脂基板3となるPIを含む塗液をスピンコートにより塗布して塗膜を形成した後に、この塗膜を乾燥させることによって、PIフィルムからなる非伸縮性樹脂基材30を形成する。
【0058】
次に、図5に示すように、非伸縮性樹脂基材30の各非伸縮性樹脂基板3となる部分の周囲と、各非伸縮性樹脂基板3の複数の孔部12となる部分を、フォトリソグラフィー技術を用いたドライエッチングにより除去することによって、複数の非伸縮性樹脂基板3と、各非伸縮性樹脂基板3を貫通する複数の孔部12とを形成する。
【0059】
次に、図6に示すように、各非伸縮性樹脂基板3の複数の孔部12に複数の貫通電極11を埋め込み形成した後に、各非伸縮性樹脂基板3の上に、TFT4を形成する。具体的には、各非伸縮性樹脂基板3の上に、通常の半導体製造プロセスを用いて、ゲート電極6と、絶縁層7と、半導体層5と、ソース電極8及びドレイン電極9とを順に形成する。
【0060】
また、必要に応じて保護層10を形成する。具体的では、ネガ型のフォトレジスト材料であるSU-8を用いて、このTFT4の上にスピンコートにより塗布した後に、フォトマスクを通して露光、現像を行うことによって、保護層10を形成する。この保護層10は、1μm以上の厚膜化が可能であり、化学的安定性に優れ、ヤング率が2GPa以上であるため、TFT4の歪み抑制に効果的である。
【0061】
次に、図7に示すように、複数のTFT4の上に接着層22を介して第2の支持基板23を貼着する。具体的には、第2の支持基板23にガラス基板を用い、接着層22にフィックスフィルムを用いて、複数のTFT4の上に接着層22を介して第2の支持基板23を貼り付ける。
【0062】
次に、図8に示すように、第1の支持基板21を剥離する。具体的には、レーザーリフトオフを用いて、第1の支持基板21側からレーザー光を照射し、非伸縮性樹脂基材30と第1の支持基板21との界面をアブレーションすることによって、非伸縮性樹脂基材30から剥離した第1の支持基板21を除去する。
【0063】
次に、図9に示すように、各非伸縮性樹脂基板3の上に、密着層15及び非貼着層16を形成する。また、密着層15を貫通する複数の孔部12に複数の貫通電極11を埋め込み形成する。なお、複数の貫通電極11は、上述した各非伸縮性樹脂基板3及び密着層15を貫通する複数の孔部12を形成した後に、これら複数の孔部12に埋め込み形成することも可能である。
【0064】
次に、図10に示すように、伸縮性樹脂基板2の上に、エラストマーに導電性フィラーを分散させた導電性弾性材料を用いて、複数の配線層13を形成する。そして、この伸縮性樹脂基板2と、第2の支持基板23により支持された複数の非伸縮性樹脂基板3とを密着層15を介して貼着する。
【0065】
このとき、各非伸縮性樹脂基板3は、各配線層13の第1の接点部S1と各貫通電極11の第2の接点部S2との接続位置を含む貼着部14を介して伸縮性樹脂基板2に部分的に貼着された状態となる。
【0066】
次に、図11に示すように、第2の支持基板23を剥離する。具体的には、複数のTFT4の上から接着層22と共に剥離した第2の支持基板23を除去する。
以上の工程を経ることによって、上記半導体装置1を作製することが可能である。
【0067】
本実施形態の半導体装置1の製造方法では、上述した伸縮性樹脂基板2の伸縮によるTFT4への影響を軽減し、TFT4の動作の安定化を図ると共に、各TFT4の実装密度を高めることを可能した半導体装置1を歩留まり良く製造することが可能である。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記伸縮性樹脂基板2は、上述した粘着性を有するものに必ずしも限定されるものではなく、粘着性を持たないものであってよい。この場合、非伸縮性樹脂基板3は、伸縮性樹脂基板2に密着層15を介して貼着すればよい。一方、非貼着層16を省略することが可能である。
【0069】
また、上記半導体装置1は、上述した第1の接点部S1を構成する各配線層13と、第2の接点部S2を構成する各貫通電極11とが電気的に接続された構成となっているが、各非伸縮性樹脂基板3の伸縮性樹脂基板2と対向する面側に、各貫通電極11と電気的に接続された複数の電極層を設けた構成としてもよい。この場合、第1の接点部S1を構成する各配線層13と、第2の接点部S2を構成する各電極層とを電気的に接続し、各配線層13の第1の接点部S1と各電極層の第2の接点部S2との接続位置を含む貼着部14を介して各非伸縮性樹脂基板3が伸縮性樹脂基板2に部分的に貼着された構成とすることが可能である。
【0070】
また、上記半導体装置1は、上述した半導体素子としてTFT4を備えた構成となっているが、例えば図12に示すように、各非伸縮性樹脂基板3の上に、TFT4と電気的に接続された発光素子17を配置し、各非伸縮性樹脂基板3が1つの画素デバイスを構成していてもよい。
【0071】
これにより、伸縮自在なストレッチャブルディスプレイを実現すると共に、球面や自由曲面などの3次元形状に変形可能なディスプレイを形成することが可能である。なお、画素デバイスを構成する場合、発光素子として、例えば発光ダイオード(LED)素子や有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子などを用いることが可能である。また、各非伸縮性樹脂基板3の上に、赤色光(R)と緑色光(G)と青色光(B)との各色に対応した発光素子とTFTとを含む複数の半導体素子を形成することで、カラー表示を行うことも可能である。
【0072】
また、上記半導体装置1は、上述した複数の非伸縮性樹脂基板3の隣り合うもの同士の間に間隔が設けられた構成となっているが、例えば図13に示すように、複数の非伸縮性樹脂基板3の隣り合うもの同士の間に間隔を設けない構成とすることも可能である。この場合、上記非伸縮性樹脂基材30の各非伸縮性樹脂基板3となる部分の間を切断することによって、複数の非伸縮性樹脂基板3を形成することが可能である。
【0073】
また、本発明が適用される半導体装置については、上述した発光素子を備えた構成に必ずしも限定されるものではなく、例えば、受光素子、歪みセンサ、圧力センサなどの半導体素子を備えた電子デバイスとすることも可能である。
【符号の説明】
【0074】
1…半導体装置 2…伸縮性樹脂基板 3…非伸縮性樹脂基板 4…TFT(半導体素子) 5…半導体層 6…ゲート電極 7…絶縁層 8…ソース電極 9…ドレイン電極 10…保護層 11…貫通電極 12…孔部 13…配線層 14…貼着部 15…密着層 16…非貼着層 17…発光素子(半導体素子) 21…第1の支持基板 22…接着層 23…第2の支持基板 30…非伸縮性樹脂基材 E…重畳領域 E1…貼着領域(非伸縮部) E2…非貼着領域(伸縮部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13