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特開2024-73220眼球装着型の表示装置およびコンタクトレンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073220
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】眼球装着型の表示装置およびコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20240522BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20240522BHJP
   G02C 11/00 20060101ALI20240522BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240522BHJP
   G03H 1/22 20060101ALI20240522BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240522BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
G02C7/04
G02B27/02 Z
G02C11/00
G02B5/30
G03H1/22
G02B5/18
G02B5/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184318
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 康博
【テーマコード(参考)】
2H006
2H149
2H199
2H249
2K008
【Fターム(参考)】
2H006BC00
2H006CA00
2H149AA01
2H149DA04
2H149DA05
2H149EA06
2H149EA19
2H149FC09
2H149FC10
2H199CA06
2H199CA12
2H199CA23
2H199CA29
2H199CA30
2H199CA50
2H199CA63
2H199CA65
2H199CA66
2H199CA68
2H199CA75
2H199CA86
2H249AA16
2H249AA25
2H249AA60
2H249AA62
2H249AA64
2H249CA04
2H249CA06
2H249CA09
2H249CA22
2K008AA14
2K008CC03
2K008HH01
2K008HH14
2K008HH19
2K008HH26
(57)【要約】
【解決手段】眼球装着型の表示装置であって、コヒーレントな光を出射するバックライトと、ホログラムパターンを形成し、バックライトから入射する光の位相を変調することにより、ホログラムパターンに対応する再生像を生成する空間光変調器とを備え、外界から空間光変調器の少なくとも一部の領域へ進行する外光における、空間光変調器の変調方向の偏光を透過させる表示装置を提供する。表示装置は、バックライトよりも外界側に設けられる四分の一波長板を更に備えてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼球装着型の表示装置であって、
コヒーレントな光を出射するバックライトと、
ホログラムパターンを形成し、前記バックライトから入射する前記光の位相を変調することにより、前記ホログラムパターンに対応する再生像を生成する空間光変調器と
を備え、
外界から前記空間光変調器の少なくとも一部の領域へ進行する外光における、前記空間光変調器の変調方向の偏光を透過させる表示装置。
【請求項2】
前記バックライトよりも外界側に設けられる四分の一波長板を更に備える、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記四分の一波長板は、前記四分の一波長板の光学軸が水平方向に対して45度を成すように構成される、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記四分の一波長板は、透明な前記バックライトを介して前記空間光変調器の前記外界側の全体を覆う、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記バックライトよりも外界側に設けられる二分の一波長板を更に備える、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記二分の一波長板は、前記二分の一波長板の光学軸が水平方向に対して45度を成すように構成される、
請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記バックライトは透明であり、
前記外界から前記空間光変調器の前記少なくとも一部の領域以外の領域へ進行する外光における、前記変調方向の直線偏光を遮断し、前記変調方向に直交する方向の直線偏光を透過させる偏光子を更に備える、
請求項1から6の何れか一項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記空間光変調器の前記少なくとも一部の領域は、前記空間光変調器の中心を含まず、且つ、前記空間光変調器の周辺を含む領域である、
請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記空間光変調器の前記少なくとも一部の領域は、前記空間光変調器の中心を含み、且つ、前記空間光変調器の周辺を含まない領域である、
請求項7に記載の表示装置。
【請求項10】
前記バックライトは透明であり、
前記外光は全体的に、偏光方向を変換されずに前記空間光変調器へ進入する、
請求項1から6の何れか一項に記載の表示装置。
【請求項11】
前記バックライトおよび前記空間光変調器は、平坦な形状を有する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項12】
前記バックライトおよび前記空間光変調器は、前記表示装置がユーザの眼球に装着された場合に前記ユーザの角膜の一部のみを覆う、
請求項11に記載の表示装置。
【請求項13】
前記バックライトは、導波路と、前記導波路に設けられる薄膜回折格子と、前記導波路内に前記光を照射する光源とを有する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項14】
前記薄膜回折格子は、前記光源から前記導波路内に照射される前記光を回折させ、前記空間光変調器側へ出射させる、
請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
前記薄膜回折格子は、ナノ構造の回折格子およびホログラム光学素子の少なくとも何れかを含む、
請求項13に記載の表示装置。
【請求項16】
前記薄膜回折格子の光結合効率は、前記光源からの前記光が前記導波路内に入射する位置に近いほど小さい、
請求項13に記載の表示装置。
【請求項17】
前記バックライトは、複数の前記光源を有し、前記複数の光源は、前記導波路の周囲において互いに異なる位置から前記導波路内に前記光を照射する、
請求項13に記載の表示装置。
【請求項18】
前記光源は、レーザまたはLEDである、
請求項13に記載の表示装置。
【請求項19】
請求項1に記載の表示装置と、
前記表示装置を内包するレンズ基板と
を備えるコンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼球装着型の表示装置およびコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、「The polarizer transmits the vertically polarized light from the outer scene, which is not modulated by the SLM. Because of the wavelength selectivity of the HOE, the HOE backlight has high transmittance for light from the outer scene. The phase-only SLM also has high transmittance for light from the outer scene.」(2. Theory)と記載されている。
[先行技術文献]
[非特許文献]
[非特許文献1] JUNPEI SANO and YASUHIRO TAKAKI, "Holographic contact lens display that provides focusable images for eyes," Optics Express Vol. 29, Issue 7, pp. 10568-10579 (2021)
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、眼球装着型の表示装置を提供する。表示装置は、コヒーレントな光を出射するバックライトと、ホログラムパターンを形成し、前記バックライトから入射する前記光の位相を変調することにより、前記ホログラムパターンに対応する再生像を生成する空間光変調器とを備え、外界から前記空間光変調器の少なくとも一部の領域へ進行する外光における、前記空間光変調器の変調方向の偏光を透過させる。
【0004】
上記の表示装置は、前記バックライトよりも外界側に設けられる四分の一波長板を更に備えてもよい。
【0005】
上記の何れかの表示装置において、前記四分の一波長板は、前記四分の一波長板の光学軸が水平方向に対して45度を成すように構成されてもよい。
【0006】
上記の何れかの表示装置において、前記四分の一波長板は、透明な前記バックライトを介して前記空間光変調器の前記外界側の全体を覆ってもよい。
【0007】
上記の何れかの表示装置は、前記バックライトよりも外界側に設けられる二分の一波長板を更に備えてもよい。
【0008】
上記の何れかの表示装置において、前記二分の一波長板は、前記二分の一波長板の光学軸が水平方向に対して45度を成すように構成されてもよい。
【0009】
上記の何れかの表示装置において、前記バックライトは透明であってもよい。上記の何れかの表示装置は、前記外界から前記空間光変調器の前記少なくとも一部の領域以外の領域へ進行する外光における、前記変調方向の直線偏光を遮断し、前記変調方向に直交する方向の直線偏光を透過させる偏光子を更に備えてもよい。
【0010】
上記の何れかの表示装置において、前記空間光変調器の前記少なくとも一部の領域は、前記空間光変調器の中心を含まず、且つ、前記空間光変調器の周辺を含む領域であってもよい。
【0011】
上記の何れかの表示装置において、前記空間光変調器の前記少なくとも一部の領域は、前記空間光変調器の中心を含み、且つ、前記空間光変調器の周辺を含まない領域であってもよい。
【0012】
上記の何れかの表示装置において、前記バックライトは透明であってもよい。上記の何れかの表示装置において、前記外光は全体的に、偏光方向を変換されずに前記空間光変調器へ進入してもよい。
【0013】
上記の何れかの表示装置において、前記バックライトおよび前記空間光変調器は、平坦な形状を有してもよい。
【0014】
上記の何れかの表示装置において、前記バックライトおよび前記空間光変調器は、前記表示装置がユーザの眼球に装着された場合に前記ユーザの角膜の一部のみを覆ってもよい。
【0015】
上記の何れかの表示装置において、前記バックライトは、導波路と、前記導波路に設けられる薄膜回折格子と、前記導波路内に前記光を照射する光源とを有してもよい。
【0016】
上記の何れかの表示装置において、前記薄膜回折格子は、前記光源から前記導波路内に照射される前記光を回折させ、前記空間光変調器側へ出射させてもよい。
【0017】
上記の何れかの表示装置において、前記薄膜回折格子は、ナノ構造の回折格子およびホログラム光学素子の少なくとも何れかを含んでもよい。
【0018】
上記の何れかの表示装置において、前記薄膜回折格子の光結合効率は、前記光源からの前記光が前記導波路内に入射する位置に近いほど小さくてもよい。
【0019】
上記の何れかの表示装置において、前記バックライトは、複数の前記光源を有し、前記複数の光源は、前記導波路の周囲において互いに異なる位置から前記導波路内に前記光を照射してもよい。
【0020】
上記の何れかの表示装置において、前記光源は、レーザまたはLEDであってもよい。
【0021】
本発明の第2の態様においては、上記の何れかの表示装置と、前記表示装置を内包するレンズ基板とを備えるコンタクトレンズを提供する。
【0022】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態によるコンタクトレンズ10がユーザの眼球30に装着された状態を模式的に示す側面図である。
図2図1のコンタクトレンズ10を含む領域を部分的に拡大した図である。
図3】第1実施形態の表示装置100によってもたらされる効果の一例を説明するための図である。
図4】第1実施形態の表示装置100によってもたらされる効果の一例を説明するための図である。
図5】第1実施形態の表示装置100によってもたらされる効果の一例を説明するための図である。
図6】第2実施形態による表示装置102を模式的に示す平面図である。
図7】第2実施形態による表示装置102がユーザの眼球30に装着された状態を模式的に示す側面図である。
図8】第3実施形態による表示装置103がユーザの眼球30に装着された状態を模式的に示す側面図である。
図9】第4実施形態による表示装置104がユーザの眼球30に装着された状態を模式的に示す側面図である。
図10】第5実施形態による表示装置105がユーザの眼球30に装着された状態を模式的に示す側面図である。
図11】第6実施形態による表示装置106がユーザの眼球30に装着された状態を模式的に示す側面図である。
図12】第7実施形態による表示装置107がユーザの眼球30に装着された状態を模式的に示す側面図である。
図13】第8実施形態による表示装置108がユーザの眼球30に装着された状態を模式的に示す側面図である。
図14】第8実施形態の表示装置108によってもたらされる効果の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0025】
図1は、一実施形態によるコンタクトレンズ10がユーザの眼球30に装着された状態を模式的に示す側面図である。図1の紙面に向かって左方向をZ軸正方向、上方向をY軸正方向、手前方向をX軸正方向と定義する。
【0026】
眼球30は、ユーザの右目であってもよく、左目であってもよい。コンタクトレンズ10は、ユーザの左右の眼球30のそれぞれに装着されてもよく、片方の眼球30のみに装着されてもよい。なお、図1は、コンタクトレンズ10を実線で示し、ユーザの眼球30の角膜31、虹彩33、水晶体35および網膜37を破線で示す。また、説明のための例示的な光線を直線の矢印で示す。以降の図においても同様とする。
【0027】
本実施形態によるコンタクトレンズ10は、眼球装着型の表示装置100と、レンズ基板12とを備える。コンタクトレンズ10の外形は、通常のコンタクトレンズと同様である。コンタクトレンズ10は、ユーザの眼球30に装着された場合に、ユーザの角膜31に沿って、ユーザの角膜31全体を覆ってもよい。
【0028】
表示装置100は、ホログラフィー技術を用いたディスプレイであり、ホログラムパターンを形成して、これに対応する再生像を表示装置100から離れた位置に虚像として生成する。当該位置は、コンタクトレンズ10を装着しているユーザの眼球30がピント合わせできるほど十分に、例えば数センチから無限遠まで、表示装置100から外界側に離れている。ユーザの眼球30が当該虚像にピント合わせすると、眼球30の網膜37上に当該虚像の画像50が結像される。表示装置100はまた、外界からの光の少なくとも一部の成分を透過させる。これにより、コンタクトレンズ10を装着しているユーザは、表示装置100によって生成される再生像と外界とを同時に観察することができる。
【0029】
レンズ基板12は、透明で円形の板状体であり、コンタクトレンズ10の輪郭を形成する。本出願において透明と称する場合、特に断らない限り、特定の波長に対して不可避な吸収分を除き、少なくとも可視広域について透明であることを指す。レンズ基板12は、表示装置100を内包する。そのため、表示装置100は、外部に露出せず、コンタクトレンズ10を装着したユーザの眼球30に接触しない。レンズ基板12はまた、レンズパワーを有してもよく、レンズパワーを有さなくてもよい。なお、以降の説明で表示装置100と称する場合、表示装置100単体を指してもよく、レンズ基板12に内包された状態の表示装置100、すなわちコンタクトレンズ10を指してもよい。
【0030】
図2は、図1のコンタクトレンズ10を含む領域を部分的に拡大した図である。図2において、眼球30の一部を波線で省略している。また、直線で示す一部の光線上には、紙面と垂直な奥行き方向、すなわちX軸方向に電場が振動する直線偏光の偏光方向を、黒塗りの丸で表す。他の一部の光線上には、紙面と平行な上下方向、すなわちY軸方向に電場が振動する直線偏光の偏光方向を、線分で表す。残りの光線上には、光線周りを回転する楕円偏光の偏光方向を、黒塗りの矢印付きの部分円で表す。コンタクトレンズ10に進入する前の外光を示す光線上には、両方の偏光が含まれているとして当該黒塗りの丸と当該線分の両方を示す。
【0031】
表示装置100は、バックライト110と、空間光変調器120とを備える。表示装置100は、ユーザの眼球30に装着された場合に、外界から空間光変調器120の少なくとも一部の領域へ進行する外光における、空間光変調器120の変調方向の偏光を透過させる。これにより、表示装置100は、外界から空間光変調器120へ進行する外光における空間光変調器120の変調方向の偏光を、例えば偏光子を用いて全て遮断する場合に比べて、外光の光量を増大させる。
【0032】
本実施形態による表示装置100は一例として、四分の一波長板130と、駆動部140とを更に備える。本実施形態の表示装置100は、ユーザの眼球30に装着された場合に、四分の一波長板130がバックライト110よりも外界側に設けられ、よって、外界側から四分の一波長板130、バックライト110、空間光変調器120の順で並ぶように構成されている。
【0033】
バックライト110は、再生像を生成するための照明光として、コヒーレントな光を出射する。当該光は、平面波であってもよく、球面波であってもよい。
【0034】
本実施形態によるバックライト110は、一例として、平坦な形状を有する。平坦な形状を有するバックライト110は、表示装置100がユーザの眼球30に装着された場合に、ユーザの角膜31の一部のみを覆う。具体的には、バックライト110は、ユーザの角膜31の中心のみを覆ってもよい。この場合、空間光変調器120は、ユーザの視野の一部に対して再生像を生成してもよい。なお、バックライト110は、例えばコンタクトレンズ10と同心円の環状領域のみを覆ってもよい。
【0035】
本実施形態によるバックライト110はまた、一例として、透明である。例えば、バックライト110は、外光のうち、一部の波長成分に対して回折効果をもち、当該一部の波長成分以外の殆どの波長成分に対しては回折効果を生じさせずに透過させるので、ほぼ透明とできる。
【0036】
本実施形態によるバックライト110はまた、一例として、導波路111と、導波路111に設けられる薄膜回折格子113と、導波路111内にコヒーレントな光を照射する光源115とを有する。導波路111の厚さは、例えば0.1mm程度である。導波路111は、バックライト110の輪郭を形成してもよく、すなわち平坦な形状を有してもよい。導波路111の内部では、光源115によって照射された光が全反射しながら伝搬する。
【0037】
薄膜回折格子113は、光源115から導波路111内に照射される光を回折させ、空間光変調器120側へ出射させる。薄膜回折格子113は、ナノ構造の回折格子およびホログラム光学素子の少なくとも何れかを含んでもよい。
【0038】
薄膜回折格子113は、一例として、表示装置100がユーザの眼球30に装着された場合に導波路111の外界側あるいはその反対側に位置するように、導波路111に設けられる。薄膜回折格子113は、導波路111と一体的に形成されていてもよく、フィルム状に形成されて導波路111の表面に貼り付けられていてもよい。
【0039】
導波路111内には、光源115により、特定方向に偏光する直線偏光であって、特定の波長を有するコヒーレントな光が照射される。当該特定の波長は、表示装置100が形成するホログラムパターンを計算するときに設定する光の波長と同じであり、例えば可視光領域の波長であってもよい。薄膜回折格子113は、当該特定の波長を有する光を回折させる。なお、薄膜回折格子113は、当該特定の波長以外の波長を有する光に対しては、回折効果を生じさせることなく透過させる。
【0040】
薄膜回折格子113の光結合効率は、光源115からの光が導波路111内に入射する位置に近いほど小さくてもよい。薄膜回折格子113の光結合効率、すなわち、入射した光を回折光に変換する効率を表す回折効率を、光源115からの距離が短いほど小さくなるように薄膜回折格子113を形成することにより、バックライト110から出射される光の光強度をバックライト110全体で均一化できる。同様の目的で、バックライト110は、複数の光源115を有し、複数の光源115は、導波路111の周囲において互いに異なる位置から導波路111内に光を照射してもよい。
【0041】
光源115は、少なくともコヒーレントな光を放射する。光源115は、例えば半導体レーザであって、コヒーレントなレーザ光を放射してもよい。光源115は、例えばLEDであって、コヒーレンスが低い光を放射してもよい。
【0042】
空間光変調器120は、ホログラムパターンを形成する。空間光変調器120は、例えば、透過型の液晶素子であり、液晶層に接続されたマトリックス電極に印加される電圧値に応じて、2次元的なホログラムパターンを形成する。このような構成を有する空間光変調器120の厚さは、例えば10μm程度である。なお、コンタクトレンズ10のレンズ基板12は酸素を透過させる必要があるため、液晶素子である空間光変調器120においては、封止剤などを使い、液晶そのものの中に酸素の影響が出ないようにすることが好ましい。
【0043】
空間光変調器120は、バックライト110から入射するコヒーレントな光の位相を空間的に変調することにより、当該ホログラムパターンに対応する再生像を生成する。上述の通り、バックライト110から入射するコヒーレントな光は、特定方向に偏光する直線偏光である。
【0044】
空間光変調器120は、変調方向に偏光する光についてのみ、光の位相を2次元的に変調し、光の波面を制御するデバイスである。空間光変調器120は、当該変調方向に直交する方向に偏光する光については、光の位相を変調せずに透過させる。空間光変調器120は、光の振幅を変調しない。より具体的には、空間光変調器120を光が透過する際に、ある程度の光吸収は起こるが、空間的にはほぼ均一なので、光の振幅は殆ど空間的に変調されない。
【0045】
空間光変調器120は、バックライト110から入射するコヒーレントな光の偏光方向が、自己の変調方向と一致するように、バックライト110に対して位置決めされている。換言すると、空間光変調器120は、バックライト110から入射するコヒーレントな光の位相を空間的に変調するように、変調方向等が設計される。
【0046】
空間光変調器120は、表示装置100がユーザの眼球30に装着され、眼球30が空間光変調器120による再生像にピント合わせした場合に、バックライト110から入射するコヒーレントな光の位相を変調し、ユーザの眼球30の水晶体35を透過させて網膜37上に投影する。これにより、空間光変調器120は、上述の再生像の画像50を、眼球30の網膜37上に結像させる。
【0047】
空間光変調器120の少なくとも一部の領域には、外界からの外光が進入する。本実施形態では、空間光変調器120の全体に、外界からの外光が進入する。空間光変調器120は、空間光変調器120に進入した外光のうち、変調方向の偏光成分の位相を変調し、変調方向に直交する非変調方向の偏光成分の位相を変調しない。
【0048】
本実施形態による空間光変調器120はまた、一例として、平坦な形状を有する。平坦な形状を有する空間光変調器120は、表示装置100がユーザの眼球30に装着された場合に、ユーザの角膜31の一部のみを覆う。具体的には、空間光変調器120は、ユーザの角膜31の中心のみを覆ってもよい。この場合、空間光変調器120は、ユーザの視野の一部に対して再生像を生成する。なお、空間光変調器120は、例えばコンタクトレンズ10と同心円の環状領域のみを覆ってもよい。
【0049】
四分の一波長板130は、光の偏光を制御する。四分の一波長板130は、例えば、四分の一波長板130の光学軸に対して45度を成す偏光方向の直線偏光を円偏光に変換する。四分の一波長板130は、表示装置100がユーザの眼球30に装着された場合に、透明なバックライト110よりも外界側に設けられ、バックライト110を介して空間光変調器120の外界側の少なくとも一部を覆う。本実施形態による四分の一波長板130は、バックライト110を介して空間光変調器120の外界側の全体を覆う。すなわち、本実施形態において空間光変調器120に進入する外光は全て、四分の一波長板130を通過する。
【0050】
コンタクトレンズ10に進入する前、すなわち四分の一波長板130に進入する前の外光には、特定方向に偏光した直線偏光が相対的に多く含まれる場合がある。例えば、自然光が物体の表面で反射された反射光には水平方向の直線偏光が多く含まれる。偏光サングラスは、表面反射光をカットするように、水平方向の直線偏光を遮光し垂直方向の直線偏光を透過する。液晶ディスプレイからの出力光は水平方向の直線偏光または垂直方向の直線偏光の何れか一方であり得る。上記の偏光サングラスを着用して観察することを考えて、液晶ディスプレイの出力光を垂直偏光にする場合がある。
【0051】
上述の通り、外光は、空間光変調器120の少なくとも一部の領域に進入する。よって、空間光変調器120に進入した外光のうち、空間光変調器120の変調方向の偏光成分は位相を変調され、空間光変調器120の非変調方向の偏光成分は位相を変調されない。
【0052】
空間光変調器120に進入する前の外光に空間光変調器120の変調方向の直線偏光が相対的に多く含まれる場合、外光の多くの偏光成分が空間光変調器120によって位相を変調されることとなる。そのため、外光が空間光変調器120によって位相を変調されない場合や、外光の一部の偏光成分のみが空間光変調器120によって位相を変調される場合に比べて、ユーザによって視認される外界の鮮明度が低いものとなる。
【0053】
一方で、空間光変調器120に進入する前の外光に空間光変調器120の非変調方向の直線偏光が相対的に多く含まれる場合、外光の多くの偏光成分が空間光変調器120によって位相を変調されないことになる。そのため、外光が空間光変調器120によって位相を変調される場合や、外光の一部の偏光成分のみが空間光変調器120によって位相を変調されない場合に比べて、ユーザによって視認される外界の鮮明度が高いものとなるが、背景よりも物体が強調された状態になる。
【0054】
そこで、本実施形態による四分の一波長板130は、四分の一波長板130の光学軸が水平方向に対して45度を成すように構成される。これにより、四分の一波長板130は、水平方向に偏光する直線偏光を円偏光に変換する。この場合、四分の一波長板130は、水平方向に直交する垂直方向に偏光する直線偏光も円偏光に変換することとなる。
【0055】
円偏光は、直交する2つの直線偏光の合成で、両直線偏光が概ね均等に含まれていると見做すことができる。従って、四分の一波長板130は、四分の一波長板130に進入する前の外光に水平方向の直線偏光が相対的に多く含まれる場合であっても、垂直方向の直線偏光が相対的に多く含まれる場合であっても、当該外光を、水平方向の直線偏光と垂直方向の直線偏光とが概ね均等に含まれる状態に変換することができる。これにより、四分の一波長板130は、ユーザによって視認される外界の鮮明度が低くなることや、ユーザによって視認される外界において背景よりも物体が強調された状態となることを抑止できる。
【0056】
四分の一波長板130は、光を殆ど吸収しないため、外光の光量を殆ど減衰させない。なお、四分の一波長板130に進入する外光の一部は、四分の一波長板130によって光量を減衰されることなく円偏光または楕円偏光に変換された後、空間光変調器120によって位相変調を受け、ユーザの眼球30の網膜37上に投影される。四分の一波長板130に進入する外光の残りは、四分の一波長板130によって光量を減衰されることなく円偏光または楕円偏光に変換された後、空間光変調器120によって位相変調を受けずに、ユーザの眼球30の網膜37上に投影される。
【0057】
駆動部140は、表示装置100を駆動する。駆動部140は、メモリ、コントローラ、バッテリ等を含んでもよい。駆動部140のメモリ、コントローラ、バッテリ等は、一体化されて実装されていてもよく、複数個として実装されていてもよい。
【0058】
駆動部140は、例えば、1または複数のホログラムパターンのそれぞれに対応する電圧値の情報を記憶している。駆動部140は、バックライト110の光源115および空間光変調器120に電気的に接続され、これらを制御する。
【0059】
例えば、駆動部140は、光源115へと供給する電力を制御することにより、光源115から発する光を制御する。駆動部140はまた、1または複数のホログラムパターンのそれぞれに対応する電圧値の情報に基づいて、空間光変調器120のマトリックス電極に印加する電圧を制御することにより、空間光変調器120に形成するホログラムパターンを制御する。駆動部140はまた、空間光変調器120のマトリックス電極に印加する電圧を制御することにより、ホログラムパターンに対応する再生像を立体表示させる奥行き方向の位置を制御してもよい。
【0060】
駆動部140は、例えば電力を蓄電するように構成されている。駆動部140は、外部の給電装置から無線で給電されてもよく、この場合、駆動部140は受電用のアンテナを含んでもよい。なお、駆動部140は、表示装置100がユーザの眼球30に装着された場合に駆動部140がユーザの視野内に位置しないように、レンズ基板12の外周側に配置されてもよい。
【0061】
以上で説明した本実施形態による表示装置100によれば、コヒーレントな光を出射するバックライト110と、ホログラムパターンを形成し、バックライト110から入射する、コヒーレントな光の位相を空間的に変調することにより、当該ホログラムパターンに対応する再生像を生成する空間光変調器120とを備える。表示装置100によれば、外界から空間光変調器120の少なくとも一部の領域へ進行する外光における、空間光変調器120の変調方向の偏光を透過させる。
【0062】
このような構成を備える表示装置100によれば、表示装置100を眼球30に装着しているユーザに対して、当該再生像と外界とを同時に観察させることができる。表示装置100によれば更に、外界から空間光変調器120へ進行する外光における空間光変調器120の変調方向の偏光を偏光子を用いて全て遮断する場合に比べて、外光の光量を増大させることができ、これにより、当該ユーザに対して明るい外界を観察させることができる。
【0063】
本実施形態による表示装置100は、表示装置100がユーザの眼球30に装着された場合に、透明なバックライト110よりも外界側に設けられる四分の一波長板130を備える。四分の一波長板130は、四分の一波長板130の光学軸が水平方向に対して45度を成すように構成される。このような構成を備える表示装置100によれば、四分の一波長板130を備えない場合に比べて、外光の光量を殆ど減衰させることなく、空間光変調器120の変調方向が水平方向の場合にユーザにより視認される外界の鮮明度が低下することを抑止できたり、空間光変調器120の変調方向が垂直方向の場合に当該外界における物体が背景よりも強調された状態となることを抑止できたりする。
【0064】
本実施形態による表示装置100は、表示装置100がユーザの眼球30に装着された場合に、バックライト110および空間光変調器120がユーザの角膜31の一部のみを覆う。このような構成を備える表示装置100によれば、外界からの外光の殆どを、バックライト110および空間光変調器120を通過させることなく、すなわち空間光変調器120によって外光の一部の成分の位相を変調させることなく、ユーザの眼球30の網膜37上に投影することができる。これにより、表示装置100は、バックライト110および空間光変調器120がユーザの角膜31の全体を覆う場合に比べて、ユーザによって視認される外界の鮮明度を向上させることができる。
【0065】
図3図4および図5は、本実施形態の表示装置100によってもたらされる効果の一例を説明するための図である。図3は、四分の一波長板130の代わりに偏光子をバックライト110の外界側に配置した第1比較例の表示装置を介して外界を観察した場合の外界画像61と、外界画像61における第1領域62および第2領域63をそれぞれ拡大した拡大画像とを示す。図4は、四分の一波長板130の代わりに、第1比較例の表示装置と比べて透過軸の向きが異なる偏光子をバックライト110の外界側に配置した第2比較例の表示装置を介して外界を観察した場合の外界画像71と、外界画像71における第1領域72および第2領域73をそれぞれ拡大した拡大画像とを示す。図5は、四分の一波長板130をバックライト110の外界側に配置した本実施形態の表示装置100を介して外界を観察した場合の外界画像81と、外界画像81における第1領域82および第2領域83をそれぞれ拡大した拡大画像とを示す。
【0066】
図3から図5に示す外界画像61、71、81は、互いに同じ外界を同じ画角および焦点で観察した画像である。図3から図5に示す第1領域62、72、82は、このような外界画像61、71、81における、互いに同一の領域である。図3から図5に示す第2領域63、73、83も、このような外界画像61、71、81における、互いに同一の領域である。
【0067】
図3から図5に示す第1領域62、72、82には、自然光を反射する壁の画像が含まれる。一方で、図3から図5に示す第2領域63、73、83には、「TUAT」という文字を表示している液晶ディスプレイの画面の画像が含まれる。当該液晶ディスプレイの出力光は、垂直方向の直線偏光である。
【0068】
第1比較例の表示装置において、偏光子は、空間光変調器120の変調方向の直線偏光を透過させ、空間光変調器120の非変調方向の直線偏光を遮断するように、すなわち自己の透過軸の方向が空間光変調器120の変調方向と一致するように、空間光変調器120に対して位置決めされている。一方で、第2比較例の表示装置において、偏光子は、自己の透過軸の方向が空間光変調器120の変調方向と直交するように、空間光変調器120に対して位置決めされている。図3に対応する第1比較例の表示装置、図4に対応する第2比較例の表示装置、および、図5に対応する本実施形態の表示装置100の何れにおいても、空間光変調器120の変調方向は垂直方向である。
【0069】
図3から図5に示す第1領域62、72、82を相互に比較すると、図3に対応する第1比較例の表示装置を介して観察された第1領域62の鮮明度が最も低く、図4に対応する第2比較例の表示装置を介して観察された第1領域72の鮮明度が最も高く、図5に対応する本実施形態の表示装置100を介して観察された第1領域82の鮮明度は、第1領域62の鮮明度と第1領域72の鮮明度との平均程度となっている。
【0070】
図3に対応する第1比較例の表示装置は、外光のうち垂直方向の直線偏光のみを透過させ、当該直線偏光の位相を変調するため、第1領域62の画像は劣化したものとなる。一方で、図4に対応する第2比較例の表示装置は、外光のうち水平方向の直線偏光のみを透過させ、当該直線偏光の位相を変調しないため、第1領域72の画像は劣化しない。図3に対応する第1比較例の表示装置および図4に対応する第2比較例の表示装置の両方共、偏光子を介して外界を観察させるため、偏光子を介さずに外界を観察する場合に比べて、外光の光量は半減する。
【0071】
これに対して、図5に対応する本実施形態の表示装置100によれば、水平方向に偏光する直線偏光も、垂直方向に偏光する直線偏光も、水平方向の直線偏光と垂直方向の直線偏光とが概ね均等に含まれる状態である円偏光に変換して、円偏光における垂直方向の偏光成分の位相のみを変調するため、第1領域82の画像は、第1領域72の画像より劣化するが、第1領域62の画像より劣化しない。図5に対応する本実施形態の表示装置100によれば、偏光子を介さず、四分の一波長板130を介して外界を観察させるため、外光の光量は殆ど減衰されない。
【0072】
次に図3から図5に示す第2領域63、73、83を相互に比較すると、図5に対応する本実施形態の表示装置100を介して観察された第2領域83の鮮明度は、図3に対応する第1比較例の表示装置を介して観察された第2領域63の鮮明度よりも高い。図4に対応する第2比較例の表示装置を介して観察された第2領域73は、不透明となっている。
【0073】
図3に対応する第1比較例の表示装置は、外光のうち垂直方向の直線偏光のみを透過させ、当該直線偏光の位相を変調するため、第2領域63の画像は劣化したものとなる。図4に対応する第2比較例の表示装置は、外光のうち水平方向の直線偏光のみを透過させるため、第2領域73の画像は見えなくなる。
【0074】
これに対して、図5に対応する本実施形態の表示装置100によれば、液晶ディスプレイの出力光が垂直方向の直線偏光であっても、水平方向の直線偏光と垂直方向の直線偏光とが概ね均等に含まれる状態である円偏光に変換して、円偏光における垂直方向の偏光成分の位相のみを変調するため、第2領域83の画像は、第2領域63の画像より劣化しない。
【0075】
以上で説明した第1実施形態による表示装置100は、表示装置100がユーザの眼球30に装着された場合に、透明なバックライト110よりも外界側に設けられる四分の一波長板130を備え、四分の一波長板130は、バックライト110を介して空間光変調器120の外界側の全体を覆うものとして説明した。
【0076】
ここで、人間の目の特性に関して、視野の中心部の画像は解像度が高いほど好ましい一方で視野の周辺の画像は解像度が相対的に低くても気にならない場合があり、視野の中心部における分解能は視野の周辺における分解能よりも高い。
【0077】
このような目の特性を考慮して、第1実施形態による表示装置100は、バックライト110よりも外界側に位置する四分の一波長板130が空間光変調器120の外界側の一部のみを覆う構成としてもよく、例えば空間光変調器120の中心のみや周辺のみを覆う構成としてもよい。同様の理由で、第1実施形態による表示装置100は、四分の一波長板130に代えて又は加えて、バックライト110よりも外界側に偏光子などの他の光学素子を設けてもよい。同様の理由で、第1実施形態による表示装置100は、バックライト110よりも外界側において、四分の一波長板130を設ける領域と、偏光子などの他の光学素子を設ける領域と、何も設けない領域とを、視野の中心から周辺に向かって任意の順で同心円状に配列してもよい。
【0078】
以降で説明する複数の実施形態は、第1実施形態による表示装置100と比較して、バックライト110よりも外界側の構成のみが異なり、他の構成は第1実施形態による表示装置100の対応する構成と同じである。そのため、以降の複数の実施形態では、第1実施形態による表示装置100の構成と同じ構成には、同じ参照番号を付し、重複する説明を省略する。
【0079】
図6は、第2実施形態による表示装置102を模式的に示す平面図である。図7は、第2実施形態による表示装置102がユーザの眼球30に装着された状態を模式的に示す側面図である。第2実施形態による表示装置102は、第1実施形態の四分の一波長板130に代えて、環状の四分の一波長板131と、四分の一波長板131の中央の孔に位置する円状の偏光子151とを備える。
【0080】
表示装置102のバックライト110よりも外界側において、図6の外界側から見た表示装置102の平面図に示すように、視野の中心から周辺に向かって、円状の偏光子151、環状の四分の一波長板131の順で同心円状に配列されている。なお、以降の複数の実施形態において説明する、平面視において円状または環状の光学素子の形状や配置は、図6に示す例と同様であってもよく、図6に対応する平面図の図示を省略する。
【0081】
偏光子151は、外光が偏光子151を通らずに空間光変調器120の少なくとも一部の領域に進行するように配置される。第2実施形態では、空間光変調器120の当該少なくとも一部の領域は、空間光変調器120の中心を含まず、且つ、空間光変調器120の周辺を含む領域である。
【0082】
偏光子151は、光の偏光を制御する。偏光子151は、外界から空間光変調器120の当該領域以外の領域へ進行する外光における、空間光変調器120の変調方向の直線偏光を遮断し、当該変調方向に直交する方向である非変調方向の直線偏光を透過させる。換言すると、偏光子151を透過した成分の位相が、空間光変調器120で空間的に変調されないように、偏光子151および空間光変調器120のそれぞれの向き等が設計される。なお、偏光子151の厚さは、例えば数μm~数十μmであってもよい。
【0083】
このような構成を備える第2実施形態の表示装置102によっても、第1実施形態による表示装置100と同様の効果を有する。第2実施形態の表示装置102によれば、外光のうち偏光子151を透過する偏光成分は、空間光変調器120によって位相を空間的に変調されないため、位相が変調される場合に比べて、当該偏光成分に対応する外界の画像の鮮明度を高めることができる。
【0084】
図8は、第3実施形態による表示装置103がユーザの眼球30に装着された状態を模式的に示す側面図である。第3実施形態による表示装置103は、第2実施形態による表示装置102の構成に対して、環状の四分の一波長板131を除外したものに相当する。すなわち、第3実施形態による表示装置103は、バックライト110よりも外界側において、視野の中心にだけ円状の偏光子151が設けられ、視野の周辺には何も設けられない。よって、外光は、空間光変調器120の周辺を含む領域には偏光子151を通らずに進行し、空間光変調器120の中心を含む領域には偏光子151を通って進行する。このような構成を備える第3実施形態の表示装置103によっても、第2実施形態の表示装置102と同様の効果を有する。
【0085】
図9は、第4実施形態による表示装置104がユーザの眼球30に装着された状態を模式的に示す側面図である。第4実施形態による表示装置104は、第2実施形態による表示装置102の構成に対して、円状の偏光子151を除外したものに相当する。すなわち、第4実施形態による表示装置104は、バックライト110よりも外界側において、視野の周辺にだけ環状の四分の一波長板131が設けられ、視野の中心には何も設けられない。このような構成を備える第4実施形態の表示装置104によっても、第2実施形態の表示装置102と同様の効果を有する。
【0086】
図10は、第5実施形態による表示装置105がユーザの眼球30に装着された状態を模式的に示す側面図である。第5実施形態による表示装置105は、第1実施形態の四分の一波長板130に代えて、環状の偏光子152と、偏光子152の中央の孔に位置する円状の四分の一波長板132とを備える。表示装置105のバックライト110よりも外界側において、視野の中心から周辺に向かって、円状の四分の一波長板132、環状の偏光子152の順で同心円状に配列されている。
【0087】
偏光子152は、外光が偏光子152を通らずに空間光変調器120の少なくとも一部の領域に進行するように配置される。第5実施形態では、空間光変調器120の当該少なくとも一部の領域は、空間光変調器120の中心を含み、且つ、空間光変調器120の周辺を含まない領域である。
【0088】
偏光子152は、光の偏光を制御する。偏光子152は、外界から空間光変調器120の当該領域以外の領域へ進行する外光における、空間光変調器120の変調方向の直線偏光を遮断し、当該変調方向に直交する方向である非変調方向の直線偏光を透過させる。換言すると、偏光子152を透過した成分の位相が、空間光変調器120で空間的に変調されないように、偏光子152および空間光変調器120のそれぞれの向き等が設計される。なお、偏光子152の厚さは、例えば数μm~数十μmであってもよい。
【0089】
このような構成を備える第5実施形態の表示装置105によっても、第1実施形態による表示装置100と同様の効果を有する。第5実施形態の表示装置105によれば、外光のうち偏光子152を透過する偏光成分は、空間光変調器120によって位相を空間的に変調されないため、位相が変調される場合に比べて、当該偏光成分に対応する外界の画像の鮮明度を高めることができる。
【0090】
図11は、第6実施形態による表示装置106がユーザの眼球30に装着された状態を模式的に示す側面図である。第6実施形態による表示装置106は、第5実施形態による表示装置105の構成に対して、環状の偏光子152を除外したものに相当する。すなわち、第6実施形態による表示装置106は、バックライト110よりも外界側において、視野の中心にだけ円状の四分の一波長板132が設けられ、視野の周辺には何も設けられない。このような構成を備える第6実施形態の表示装置106によっても、第5実施形態の表示装置105と同様の効果を有する。
【0091】
図12は、第7実施形態による表示装置107がユーザの眼球30に装着された状態を模式的に示す側面図である。第7実施形態による表示装置107は、第5実施形態による表示装置105の構成に対して、円状の四分の一波長板132を除外したものに相当する。すなわち、第7実施形態による表示装置107は、バックライト110よりも外界側において、視野の周辺にだけ環状の偏光子152が設けられ、視野の中心には何も設けられない。よって、外光は、空間光変調器120の周辺を含む領域には偏光子152を通って進行し、空間光変調器120の中心を含む領域には偏光子152を通らずに進行する。このような構成を備える第7実施形態の表示装置107によっても、第5実施形態の表示装置105と同様の効果を有する。
【0092】
図13は、第8実施形態による表示装置108がユーザの眼球30に装着された状態を模式的に示す側面図である。第8実施形態による表示装置108は、第1実施形態の四分の一波長板130に代えて、バックライト110よりも外界側に何も設けない構成とする。よって、表示装置108では、外界から空間光変調器120へ進行する外光は全体的に、偏光方向を変換されずに空間光変調器120へ進入する。このような構成を備える第8実施形態の表示装置108によっても、第1実施形態による表示装置100と同様の効果を有する。
【0093】
図14は、第8実施形態の表示装置108によってもたらされる効果の一例を説明するための図である。図14は、第8実施形態の表示装置108を介して外界を観察した場合の外界画像91と、外界画像91における第1領域92および第2領域93をそれぞれ拡大した拡大画像とを示す。図14に示す外界画像91は、図3および図4に示した外界画像61、71と同じ外界を同じ画角および焦点で観察した画像である。図14に示す外界画像91における第1領域92は、外界画像61、71における第1領域62、72と同一の領域である。図14に示す外界画像91における第2領域93は、外界画像61、71における第2領域63、73と同一の領域である。図14に対応する第8実施形態の表示装置108では、図3に対応する第1比較例の表示装置、および、図4に対応する第2比較例の表示装置と同様、空間光変調器120の変調方向は垂直方向である。
【0094】
図3図4および図14に示す第1領域62、72、92を相互に比較すると、図3に対応する第1比較例の表示装置を介して観察された第1領域62の鮮明度が最も低く、図4に対応する第2比較例の表示装置を介して観察された第1領域72の鮮明度が最も高く、図14に対応する第8実施形態の表示装置108を介して観察された第1領域92の鮮明度は、第1領域62の鮮明度と第1領域72の鮮明度との平均程度となっている。
【0095】
図3に対応する第1比較例の表示装置は、外光のうち垂直方向の直線偏光のみを透過させ、当該直線偏光の位相を変調するため、第1領域62の画像は劣化したものとなる。一方で、図4に対応する第2比較例の表示装置は、外光のうち水平方向の直線偏光のみを透過させ、当該直線偏光の位相を変調しないため、第1領域72の画像は劣化しない。図3に対応する第1比較例の表示装置および図4に対応する第2比較例の表示装置の両方共、偏光子を介して外界を観察させるため、偏光子を介さずに外界を観察する場合に比べて、外光の光量は半減する。
【0096】
これに対して、図14に対応する第8実施形態の表示装置108によれば、外光のうち垂直方向に偏光する直線偏光の位相のみを変調するため、第1領域92の画像は、第1領域72の画像より劣化するが、第1領域62の画像より劣化しない。図14に対応する第8実施形態の表示装置108によれば、偏光子を介さずに外界を観察させるため、外光の光量は殆ど減衰されない。
【0097】
次に図3図4および図14に示す第2領域63、73、93を相互に比較すると、図14に対応する第8実施形態の表示装置108を介して観察された第2領域83の鮮明度は、図3に対応する第1比較例の表示装置を介して観察された第2領域63の鮮明度と同程度である。図4に対応する第2比較例の表示装置を介して観察された第2領域73は、不透明となっている。
【0098】
図3に対応する第1比較例の表示装置は、外光のうち垂直方向の直線偏光のみを透過させ、当該直線偏光の位相を変調するため、第2領域63の画像は劣化したものとなる。図4に対応する第2比較例の表示装置は、外光のうち水平方向の直線偏光のみを透過させるため、第2領域73の画像は見えなくなる。
【0099】
これに対して、図14に対応する第8実施形態の表示装置108によれば、垂直方向の直線偏光である液晶ディスプレイの出力光の位相を変調するため、第2領域93の画像は、第2領域63の画像と同様の劣化度合いとなる。
【0100】
以上の複数の実施形態において、表示装置100、102、104、105、106は、円状または環状の四分の一波長板130、131、132を備える構成として説明した。これに代えて、表示装置100、102、104、105、106は、四分の一波長板130、131、132と同様の外形を有する、すなわち円状または環状の二分の一波長板を備えてもよい。二分の一波長板は、光の偏光を制御する。二分の一波長板は、例えば、二分の一波長板の光学軸に対して45度を成す偏光方向の直線偏光を90度回転させる。二分の一波長板は、二分の一波長板の光学軸が水平方向に対して45度を成すように構成されてもよい。二分の一波長板は、表示装置100等がユーザの眼球30に装着された場合に、透明なバックライト110よりも外界側に設けられ、バックライト110を介して空間光変調器120の外界側の少なくとも一部を覆ってもよい。空間光変調器120に進入する外光は全て、二分の一波長板を通過してもよい。このような二分の一波長板を備える表示装置100等によっても、四分の一波長板130等を備える表示装置100等と同様に、偏光状態を変えることができる。
【0101】
以上の複数の実施形態において、光源115は、例として半導体レーザまたはLEDとした。特に光源115にレーザを用いる場合には、レーザ光はコヒーレンスが高いので、ボケも無く、より正確にホログラムパターンに対応した再生像を生成できる。このように、バックライト110は、コヒーレントな光として、レーザ光を出射してもよく、LED光を出射してもよい。
【0102】
以上の複数の実施形態において、表示装置100、102、103、104、105、106、107、108は、駆動部140を備える構成として説明した。これに代えて、表示装置100等は、駆動部140におけるメモリやコントローラの機能を備えずに、外部の制御装置によって無線で制御されてもよい。この場合、制御装置は、駆動部140におけるメモリやコントローラの機能を有してもよい。制御装置は、ユーザが所持しているスマートフォンや、ユーザが装着しているウェアラブルデバイスなどであってもよい。
【0103】
以上の複数の実施形態において、表示装置100等は、全体として平坦な形状を有し、且つ、ユーザの眼球30の角膜31の一部のみを覆うものとして説明した。これに代えて、表示装置100等は、凸に湾曲した形状を有し、且つ、ユーザの眼球30の角膜31の一部のみを覆ってもよい。
【0104】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0105】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0106】
10 コンタクトレンズ
12 レンズ基板
30 眼球
31 角膜
33 虹彩
35 水晶体
37 網膜
50 画像
100 表示装置
110 バックライト
111 導波路
113 薄膜回折格子
115 光源
120 空間光変調器
130 四分の一波長板
140 駆動部
61、71、81、91 外界画像
62、72、82、92 第1領域
63、73、83、93 第2領域
102、103、104、105、106、107、108 表示装置
131、132 四分の一波長板
151、152 偏光子
図1
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