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特開2024-73310単結晶引上げ装置のルツボ又はヒーターに用いる集塵冷却装置及び集塵冷却方法
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  • 特開-単結晶引上げ装置のルツボ又はヒーターに用いる集塵冷却装置及び集塵冷却方法 図1
  • 特開-単結晶引上げ装置のルツボ又はヒーターに用いる集塵冷却装置及び集塵冷却方法 図2
  • 特開-単結晶引上げ装置のルツボ又はヒーターに用いる集塵冷却装置及び集塵冷却方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073310
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】単結晶引上げ装置のルツボ又はヒーターに用いる集塵冷却装置及び集塵冷却方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20240522BHJP
   C30B 15/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
C30B29/06 502Z
C30B15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184435
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】沖田 憲治
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077EG26
4G077EG27
4G077FK07
(57)【要約】
【課題】単結晶引上げ装置におけるルツボ又はヒーターの冷却時に、粉塵を効果的に回収し、かつ、冷却を効果的に促進することが可能な集塵冷却装置を提供する。
【解決手段】本発明の集塵冷却装置100は、カバー10とダクト20と集塵吸引機30とを有する。カバー10は、ルツボ116又はヒーター124を上から覆い、下方は開放状態となっている。ダクト20は、カバー10と集塵吸引機30とを連結する。集塵吸引機30が作動することで、カバー10の下方からカバー10の内部空間に気流が流れ込み、この気流がヒーター124の周囲、又は、ルツボ116の周囲を通り、ダクト20の内部を介して、集塵吸引機30に流入する過程で、集塵吸引機30が粉塵を回収し、かつ、気流が冷却を促進する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶引上げ装置でインゴットの引上げを完了した後、前記単結晶引上げ装置におけるルツボ又は前記ルツボの周囲に位置するヒーターの冷却時に、前記ルツボ又は前記ヒーターから発生する粉塵を回収し、かつ、前記冷却を促進する集塵冷却装置であって、
前記ルツボ又は前記ヒーターを上から覆い、下方が開放状態となっているカバーと、
集塵吸引機と、
前記カバーと前記集塵吸引機とを連結するダクトと、
を有し、前記集塵吸引機が作動することで、前記カバーの下方から前記カバーの内部空間に気流が流れ込み、前記気流が前記ヒーターの周囲、又は、前記ルツボの周囲を通り、前記ダクトの内部を介して、前記集塵吸引機に流入する過程で、前記集塵吸引機が前記粉塵を回収し、かつ、前記気流が前記冷却を促進する、集塵冷却装置。
【請求項2】
前記ダクトの片端が前記ルツボの内部に位置する、請求項1に記載の集塵冷却装置。
【請求項3】
前記集塵吸引機が、前記単結晶引上げ装置と同じフロア内に設置された、請求項1又は2に記載の集塵冷却装置。
【請求項4】
前記カバー、前記ダクト、及び前記集塵吸引機から選択される少なくとも一つが、断熱体及び吸熱体の一方又は両方を有する、請求項1又は2に記載の集塵冷却装置。
【請求項5】
前記集塵吸引機は、内部を冷却するための熱交換器を有する、請求項1又は2に記載の集塵冷却装置。
【請求項6】
単結晶引上げ装置でインゴットの引上げを完了した後、前記単結晶引上げ装置におけるルツボ又は前記ルツボの周囲に位置するヒーターの冷却時に、前記ルツボ又は前記ヒーターから発生する粉塵を回収し、かつ、前記冷却を促進する集塵冷却方法であって、
前記ルツボ又は前記ヒーターを上からカバーで覆い、前記カバーの下方は開放状態とし、
集塵吸引機を用意し、
前記カバーと前記集塵吸引機とをダクトで連結し、
前記集塵吸引機を作動させることで、前記カバーの下方から前記カバーの内部空間に気流が流れ込み、前記気流が前記ヒーターの周囲、又は、前記ルツボの周囲を通り、前記ダクトの内部を介して、前記集塵吸引機に流入する過程で、前記集塵吸引機が前記粉塵を回収し、かつ、前記気流が前記冷却を促進する、集塵冷却方法。
【請求項7】
前記ダクトの片端を前記ルツボの内部に位置させる、請求項6に記載の集塵冷却方法。
【請求項8】
前記集塵吸引機を、前記単結晶引上げ装置と同じフロア内に設置する、請求項6又は7に記載の集塵冷却方法。
【請求項9】
前記カバー、前記ダクト、及び前記集塵吸引機から選択される少なくとも一つが、断熱体及び吸熱体の一方又は両方を有する、請求項6又は7に記載の集塵冷却方法。
【請求項10】
前記集塵吸引機は、内部を冷却するための熱交換器を有する、請求項6又は7に記載の集塵冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶引上げ装置におけるルツボ又はヒーターの冷却時に、ルツボ又はヒーターから発生する粉塵を回収し、かつ、冷却を促進するための集塵冷却装置及び集塵冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶シリコンインゴットの代表的な製造方法として、チョクラルスキー法(CZ法)を挙げることができる。CZ法では、図3に示すような、クリーンルーム内に設置したシリコン単結晶引上げ装置1000を用いる。単結晶の引上げ中には、石英ルツボ116Aに含まれる酸素とシリコン融液とが反応してシリコン酸化物(SiO)が生成する。このシリコン酸化物が気化して、メインチャンバー110内の不活性ガスの流れに沿って移動する過程で冷却され固化して、メインチャンバー110の内壁面や、メインチャンバー110内の各部材(例えばヒーター124)の表面に付着し、これが時間の経過とともに徐々に堆積する。そのため、単結晶の引上げが終了した後、シリコン単結晶引上げ装置1000を解体して、この付着物を取り除く清掃、すなわち解体清掃を行う。その際、メインチャンバー110とプルチャンバー111とを分離し、チャンバー内空間をクリーンルーム内雰囲気に開放(以下、これを「開炉」と称する。)した上で、各種の被清掃部品を清掃する。つまり、メインチャンバー110の内壁面の清掃や、メインチャンバー110内の各部材(例えばヒーター124)の清掃は、クリーンルーム内雰囲気下で行われる。よって、クリーンルーム内で被清掃部品の周囲には、取り除いた付着物が粉塵となって舞うことになる。
【0003】
特許文献1には、この解体清掃時に粉塵が飛散してクリーンルーム内の清浄度が悪化することを防ぐための粉塵除去装置及び方法が記載されている。ここでは、チャンバー周囲を合成樹脂シートで覆い、この合成樹脂シートで覆われた空間内において、チャンバーを挟むように給気用ファンと吸込みフードを設ける。吸込みフードは、クリーンルームの床面より下のピット内に設けられた排気用ファンに接続される。排気用ファンの直上流にはHEPAフィルターが設けられる。給気用ファンと排気用ファンを作動させると、給気用ファンからチャンバーに向けて気流が形成され、その気流は吸込みフードに導かれ、HEPAフィルターで気流中の粉塵が除去され、排気用ファンからクリーンエアーが排気される。
【0004】
再び図3を参照して、シリコン単結晶引上げ装置1000の解体時には、各種部品の清掃に加えて、ルツボ116から残シリコンを除去したり、ルツボ116を交換したりといった各種作業がある。通常、単結晶引上げ装置1000でインゴットの引上げを完了したら、当該インゴットを取り出した後に、開炉を行う。この段階では、残シリコンを含むルツボ116や、この周囲に位置するヒーター124は、200℃程度の高温であるため、ルツボ116及びヒーター124を自然放冷して、これらの温度が例えば50℃以下といった常温に低下した後に、上記した各種作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-224606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ルツボ116及びヒーター124の冷却を自然放冷にて行う場合、冷却に長時間を要し、単結晶引上げ装置の操業におけるサイクルタイムが長くなってしまうという問題がある。また、開炉直後はルツボ116及びヒーター124が高温であるため、ルツボ116及びヒーター124の周囲には熱対流によって強い上昇気流が起きている。ヒーター124からはシリコン酸化物(SiO)を含むパーティクルが発生して、飛散する。ルツボ116内では、残シリコンとこれに接する石英ルツボ116Aとの熱膨張係数の違いから、石英とシリコンが共に微細領域で割れ始め、石英とシリコンの微粉が飛散する。これらの粉塵の飛散がクリーンルーム内の清浄度を悪化させる。
【0007】
特許文献1の技術は、解体清掃時に飛散する粉塵を回収するものであり、ルツボ又はヒーターの冷却時にこれらから発生する粉塵を回収するものではない。特許文献1では、ルツボ又はヒーターの冷却時にこれらから発生する粉塵も、解体作業に至るまでの冷却に長時間を要することも問題視していない。
【0008】
上記課題に鑑み、本発明は、単結晶引上げ装置におけるルツボ又はヒーターの冷却時に、粉塵を効果的に回収し、かつ、冷却を効果的に促進することが可能な集塵冷却装置及び集塵冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1]単結晶引上げ装置でインゴットの引上げを完了した後、前記単結晶引上げ装置におけるルツボ又は前記ルツボの周囲に位置するヒーターの冷却時に、前記ルツボ又は前記ヒーターから発生する粉塵を回収し、かつ、前記冷却を促進する集塵冷却装置であって、
前記ルツボ又は前記ヒーターを上から覆い、下方が開放状態となっているカバーと、
集塵吸引機と、
前記カバーと前記集塵吸引機とを連結するダクトと、
を有し、前記集塵吸引機が作動することで、前記カバーの下方から前記カバーの内部空間に気流が流れ込み、前記気流が前記ヒーターの周囲、又は、前記ルツボの周囲を通り、前記ダクトの内部を介して、前記集塵吸引機に流入する過程で、前記集塵吸引機が前記粉塵を回収し、かつ、前記気流が前記冷却を促進する、集塵冷却装置。
【0010】
[2]前記ダクトの片端が前記ルツボの内部に位置する、上記[1]に記載の集塵冷却装置。
【0011】
[3]前記集塵吸引機が、前記単結晶引上げ装置と同じフロア内に設置された、上記[1]又は[2]に記載の集塵冷却装置。
【0012】
[4]前記カバー、前記ダクト、及び前記集塵吸引機から選択される少なくとも一つが、断熱体及び吸熱体の一方又は両方を有する、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の集塵冷却装置。
【0013】
[5]前記集塵吸引機は、内部を冷却するための熱交換器を有する、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の集塵冷却装置。
【0014】
[6]単結晶引上げ装置でインゴットの引上げを完了した後、前記単結晶引上げ装置におけるルツボ又は前記ルツボの周囲に位置するヒーターの冷却時に、前記ルツボ又は前記ヒーターから発生する粉塵を回収し、かつ、前記冷却を促進する集塵冷却方法であって、
前記ルツボ又は前記ヒーターを上からカバーで覆い、前記カバーの下方は開放状態とし、
集塵吸引機を用意し、
前記カバーと前記集塵吸引機とをダクトで連結し、
前記集塵吸引機を作動させることで、前記カバーの下方から前記カバーの内部空間に気流が流れ込み、前記気流が前記ヒーターの周囲、又は、前記ルツボの周囲を通り、前記ダクトの内部を介して、前記集塵吸引機に流入する過程で、前記集塵吸引機が前記粉塵を回収し、かつ、前記気流が前記冷却を促進する、集塵冷却方法。
【0015】
[7]前記ダクトの片端を前記ルツボの内部に位置させる、上記[6]に記載の集塵冷却方法。
【0016】
[8]前記集塵吸引機を、前記単結晶引上げ装置と同じフロア内に設置する、上記[6]又は[7]に記載の集塵冷却方法。
【0017】
[9]前記カバー、前記ダクト、及び前記集塵吸引機から選択される少なくとも一つが、断熱体及び吸熱体の一方又は両方を有する、上記[6]~[8]のいずれか一項に記載の集塵冷却方法。
【0018】
[10]前記集塵吸引機は、内部を冷却するための熱交換器を有する、上記[6]~[9]のいずれか一項に記載の集塵冷却方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の集塵冷却装置及び集塵冷却方法によれば、単結晶引上げ装置におけるルツボ又はヒーターの冷却時に、粉塵を効果的に回収し、かつ、冷却を効果的に促進することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態による集塵冷却装置100を示す模式図である。
図2】本発明の他の実施形態による集塵冷却装置200を示す模式図である。
図3】シリコン単結晶引上げ装置1000の構成を模式的に示す、引上げ軸Xに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(単結晶引上げ装置)
まず、図3を参照して、本発明の一実施形態を適用する単結晶引上げ装置の一例であるシリコン単結晶引上げ装置1000の構成について説明する。
【0022】
シリコン単結晶引上げ装置1000は、メインチャンバー110、プルチャンバー111、ルツボ116、シャフト118、シャフト駆動機構120、筒状の熱遮蔽体122、筒状のヒーター124、筒状の断熱体126、シードチャック128、引上げワイヤ130、ワイヤ昇降機構132、及び一対の電磁石134を有する。
【0023】
メインチャンバー110は、内部にルツボ116が収容される有底円筒形状のチャンバーである。プルチャンバー111は、メインチャンバー110と同一の中心軸を有し、メインチャンバー110の上方に設けられる、メインチャンバー110よりも小径の円筒形状のチャンバーである。メインチャンバー110とプルチャンバー111との間にはゲートバルブ112が設けられ、このゲートバルブ112の開閉により、メインチャンバー110及びプルチャンバー111内の空間は、互いに連通・遮断される。プルチャンバー111の上部には、Arガスなどの不活性ガスをメインチャンバー110内に導入するガス導入口113が設けられる。また、メインチャンバー110の底部には、図示しない真空ポンプの駆動によりメインチャンバー110内の気体を吸引して排出するガス排出口114が設けられる。
【0024】
ルツボ116は、メインチャンバー110の中心部に配置され、シリコン融液Mを収容する。ルツボ116は、石英ルツボ116Aと黒鉛ルツボ116Bの二重構造を有する。石英ルツボ116Aは、シリコン融液Mを内面で直接支持する。黒鉛ルツボ116Bは、石英ルツボ116Aの外側で石英ルツボ116Aを支持する。
【0025】
シャフト118は、メインチャンバー110の底部を鉛直方向に貫通して、ルツボ116を上端で支持する。そして、シャフト駆動機構120は、シャフト118を介してルツボ116を回転させつつ昇降させる。
【0026】
熱遮蔽体122は、ルツボ116の上方に、シリコン融液Mから引き上げられる単結晶シリコンインゴットIを囲むように設けられる。
【0027】
筒状のヒーター124は、メインチャンバー110内でルツボ116を囲うように位置する。ヒーター124は、カーボンを素材とする抵抗加熱式ヒーターが一般的であり、ルツボ116内に投入されるシリコン原料を溶融してシリコン融液Mを形成し、さらに、形成したシリコン融液Mを維持するための加熱を行う。
【0028】
筒状の断熱体126は、熱遮蔽体122の上端よりも下方で、ヒーター124の外周面とは離間して、メインチャンバー110の内側面に沿って設けられる。断熱体126は、メインチャンバー110内の特に熱遮蔽体122よりも下方の領域に保熱効果を付与し、ルツボ116内のシリコン融液Mを維持しやすくする機能を有する。
【0029】
ルツボ116の上方には、種結晶Sを保持するシードチャック128を下端で保持する引上げワイヤ130がシャフト118と同軸上に配置され、ワイヤ昇降機構132が、引上げワイヤ130をシャフト118と逆方向または同一方向に所定の速度で回転させつつ昇降させる。
【0030】
一対の電磁石134は、メインチャンバー110の外側でルツボ116を包含する高さ範囲に、引上げ軸Xに対して左右対称に位置する。この一対の電磁石34のコイルに電流を流すことによって、シリコン融液Mに対して水平の磁場分布を形成する水平磁場を発生させることができる。図3では、水平磁場を発生させる一対の電磁石34を示したが、これに代えて、シリコン融液Mに対してカスプ型の磁場分布を形成するカスプ磁場を発生させる電磁石を配置してもよい。結晶育成の際にシリコン融液Mに対して磁場を印可させない場合には、電磁石は不要である。
【0031】
既述のとおり、単結晶引上げ装置1000でインゴットの引上げを完了したら、当該インゴットを取り出した後に、開炉を行う。図1,2も参照して、この段階では、残シリコンRを含むルツボ116や、この周囲に位置するヒーター124は、200℃程度の高温である。従来は、ルツボ116及びヒーター124を自然放冷して、これらの温度が例えば50℃以下といった常温に低下した後に、各種部品の清掃に加えて、ルツボ116から残シリコンを除去したり、ルツボ116を交換したりといった各種作業を行っていた。本発明の一実施形態による集塵冷却装置及び集塵冷却方法は、ルツボ116又はヒーター124の冷却時、好適にはルツボ116及びヒーター124の冷却時に適用するものである。
【0032】
(集塵冷却装置及び集塵冷却方法)
図1を参照して、本発明の一実施形態による集塵冷却装置100及び集塵冷却方法を説明する。集塵冷却装置100とこれを用いる集塵吸引方法は、単結晶引上げ装置でインゴットの引上げを完了した後、単結晶引上げ装置におけるルツボ116及びヒーター124の一方又は両方の冷却時に、ルツボ116及びヒーター124の一方又は両方から発生する粉塵を回収し、かつ、ルツボ116及びヒーター124の一方又は両方の冷却を促進するものである。集塵冷却装置100は、主たる構成要素として、カバー10、ダクト20、及び集塵吸引機30を有する。
【0033】
[カバー]
カバー10は、ルツボ116及びヒーター124の一方又は両方(好適には両方)を上から覆い、下方が開放状態となっている。すなわち、カバー10の下端とチャンバーベース136との間に隙間がある。本実施形態は、単結晶引上げ装置の中でも、特にルツボ116及びヒーター124の一方又は両方に着目して、これらの冷却時における、これらから発生する粉塵に着目するものである。そこで、開炉後にメインチャンバー110が覆っていない状態のルツボ116及びヒーター124の一方又は両方をカバー10で覆うものとする。なお、図1に示すチャンバーベース136は、図3のチャンバー110の下部においてチャンバー110が分割された際の分割開口上面であり、チャンバーベース136の高さ位置は、フロアレベル、すなわちクリーンルームの床面と同じ高さ位置である。
【0034】
カバー10の素材は特に限定されないが、カバー10は、ルツボ116及びヒーター124の一方又は両方に接することなく、ルツボ116及びヒーター124の一方又は両方を上から覆うことが好ましく、このために必要な剛性を有することが好ましい。また、カバー10は、高温のルツボ116及びヒーター124による輻射熱に耐えうる耐熱性を有することが好ましい。一例として、カバー10は、内装10A、断熱体10B、及び外装10Cの3層構造を有する。内装10Aは、ライニングを施したステンレス鋼板とすることができる。内装10Aのステンレス鋼板にライニングを施すことで、ステンレス鋼板がヒーター124に直接接触して、ヒーター124にステンレスの削れ粉が付着することを回避することができる。ライニング素材は、テフロン(登録商標)系樹脂又はカーボンとすることが好ましい。外装10Cはステンレス鋼板とすることができる。内装10Aと外装10Cとの間に断熱体10Bを配置することで、カバー10の外側の温度上昇を抑えることができる。断熱体10Bは発塵源ともなり得るため、内装10Aと外装10Cとの間に挟むことが好ましい。カバー10は、真空二重構造を有することも好ましい。これにより、断熱体10Bが不要となる。
【0035】
カバー10は、ルツボ116及びヒーター124の一方又は両方を上から覆うことができる限り、その形状及び寸法は限定されない。ただし、カバー10内のルツボ116及びヒーター124を覆う空間のサイズを最小化する観点から、図1に示すように、カバー10は、平坦で水平に延在する上部と、この上部と連結し鉛直に延在する側部と、と有し、底部のない形状であることが好ましい。上部の形状は、ルツボ116及びヒーター124と同様に円形であることが好ましい。これにより、カバー10内部での気流で均一になりやすい。カバー10の内部寸法は、内径が500~2500mm程度、高さが300~1500mm程度であることが好ましい。カバー10の使用時の状態としては、カバー10の内径がヒーター124の外径より100~300mm大きいことが好ましく、カバー10の上部の内面とヒーター124の上端との隙間が100~300mmであることが好ましい。また、カバー10の下端とチャンバーベース136との隙間は50~150mmであることが好ましい。
【0036】
[ダクト]
ダクト20は、カバー10と集塵吸引機とを連結する。具体的には、カバー20は、カバー10の上部から、片端がカバー10の内部空間に位置するように挿入され、他端が集塵吸引機30に接続されている。粉塵の回収効率及び冷却の促進効率の観点から、ダクト20の片端は、ルツボ116の内部に位置することが好ましい。ダクト20の素材は特に限定されないが、内部を通過する高温の気流に耐えうる耐熱性を有することが好ましい。一例として、ダクト20は、ダクト本体20A、断熱体20B、及び外装20Cの3層構造を有する。ダクト本体20Aは、テフロン(登録商標)又はステンレス鋼板とすることができ、カバー10の上部から装入されて、その片端がカバー10の内部空間、好ましくはルツボ116の内部に位置する。外装20Cはステンレス鋼板とすることができる。ダクト本体20Aと外装20Cとの間に断熱体20Bを配置することで、ダクト20の外側の温度上昇を抑えることができる。断熱体20Bは発塵源ともなり得るため、ダクト本体20Aと外装20Cとの間に挟むことが好ましい。ダクト20は、真空二重構造を有することも好ましい。これにより、断熱体20Bが不要となる。
【0037】
ダクト20の形状及び寸法は特に限定されない。形状に関しては、例えば延在方向に垂直な断面形状が円形又は矩形とすることができる。円形の場合、ダクト20の内径は40~600mm程度とすることができ、矩形の場合、ダクト20の内寸法が一辺40~600mm程度とすることができる。ダクト20の長さは、他端を集塵吸引機30に接続できる限り、特に限定されない。
【0038】
[集塵吸引機]
図1を参照して、集塵吸引機30の構造を説明する。集塵機30は、筐体34と、その内部に位置する吸引ブロワー35と、を有し、吸引ブロワー35によって形成される気流の上流側から2段階のフィルター(中性能フィルター31及びHEPAフィルター32)が設置された構造を有する。集塵吸引機30の内部(筐体34の内部)は、中性能フィルター31とHEPAフィルター32とによって、気流の上流側から第1内部空間33A、第2内部空間33B、及び第3内部空間33Cに区画される。本実施形態では、吸引ブロワー35は第2内部空間33Bに配置されるが、これに限定されず、筐体34の内部であればよい。吸引ブロワー35は、集塵吸引機30の内部に流入する高温の気流に耐えうる耐熱性を有することが好ましい。
【0039】
ダクト20の他端は筐体34のうち第1内部空間33Aを区画する部分に接続される。このため、ダクト20の内部を通る気流は、まず集塵吸引機30の第1内部空間33Aに流入する。第1内部空間33Aに流入した気流は、第2内部空間33Bに送られる過程で、中性能フィルター31を通過する。中性能フィルター31は、粒径が概ね1μm以上の粉塵を捕捉する機能を有する。第2内部空間33Bに流入した気流は、第3内部空間33Cに送られる過程で、HEPAフィルター32を通過する。HEPAフィルター32は、粒径が概ね0.3μm以上の粉塵を捕捉する機能を有する。第3内部空間33Cに流入した気流は、筐体34のうち第3内部空間33Cを区画する部分に設けられた排気口36を介して、集塵吸引機30の外部に排出される。すなわち、集塵吸引機30は、ダクト20の内部から粉塵を含む空気を吸引し、中性能フィルター31及びHEPAフィルター32で粉塵を捕捉しつつ、粒径が0.3μm以上の粉塵を含まない清浄な空気を放出する。
【0040】
一例として、筐体34は、内装34A、断熱体34B、及び外装34Cの3層構造を有する。内装34Aはステンレス鋼板とすることができる。ただし、図1に示すように、内装34Aは、筐体34のうち、HEPAフィルター32よりも下流である第3内部空間33Cを区画する部分にのみ設けることでもよい。断熱体34Bは発塵源ともなり得るため、HEPAフィルター32より下流の部分では、内装34Aと外装34Cとの間に挟むことが好ましいが、HEPAフィルター32より上流の部分では、断熱体34Bがむき出しになっていても、断熱体34Bからの発塵はHEPAフィルター32で捕捉できる。断熱体34Bを配置することで、集塵吸引機30の外側の温度上昇を抑えることができる。外装34Cはステンレス鋼板とすることができる。筐体34は、真空二重構造を有することも好ましい。これにより、断熱体34Bが不要となる。
【0041】
集塵吸引機30が作動することで、すなわち、吸引ブロワー35が作動することで、以下のように気流が発生する。まず、カバー10の下方からカバー10の内部空間に気流が流れ込み、この気流がヒーター124の周囲、及び/又は、ルツボ116の周囲を通り、ダクト20の内部を介して、集塵吸引機30に流入する。この気流には、ヒーター124及びルツボ116の一方又は両方から発生した粉塵が含まれるところ、集塵吸引機30が粉塵を回収することができ、粉塵をシリコン単結晶引上げ装置1000が設置されたクリーンルーム内に飛散させることがない。これは、カバー10の下方が開放状態になっていること、かつ、ダクト20がカバー10の上部から、片端がカバー10の内部空間に位置するように挿入されていることに起因する。これにより、本実施形態では、給気用ファンのような給気手段がなくとも、集塵吸引機30の吸引ブロワー35を作動させるだけで、ヒーター124及びルツボ116の一方又は両方から発生した粉塵を効果的に回収するための気流を形成することができる。また、この気流は、ヒーター124及びルツボ116の一方又は両方から効果的に抜熱することができるため、ヒーター124及びルツボ116の一方又は両方の冷却を効果的に促進することができる。
【0042】
集塵吸引機30が、クリーンルームの床面より下のピットに設けられる場合、クリーンルーム内の室圧が下がり、クリーンルーム内の清浄度が悪化する懸念がある。そのため、集塵吸引機30は、単結晶引上げ装置1000と同じフロア内(すなわち、クリーンルーム内)に設置されることが好ましい。これにより、クリーンルーム内の室圧が下がることによる清浄度の悪化の懸念がない。
【0043】
例えば、集塵吸引機30は、クリーンルーム内のフロア上に設置された昇降機構付き台車50上に設置される。集塵吸引機30、ダクト20、及びカバー10が一体固定されている場合、昇降機構付き台車50を上下させることで、カバー10を上下させて、ルツボ116及びヒーター124に被せることができる。
【0044】
[集塵吸引機の変形例]
図2を参照して、本発明の他の実施形態による集塵冷却装置200及び集塵冷却方法を説明する。集塵冷却装置200とこれを用いる集塵吸引方法は、集塵吸引機40の構成が集塵吸引機30と異なる点を除いて、図1に示す集塵冷却装置100と同じである。よって、カバー10及びダクト20の説明は、図1に関する記載を援用する。
【0045】
図2を参照して、集塵吸引機40の構造を説明する。集塵機40は、筐体44と、その内部に位置する吸引ブロワー45と、を有し、吸引ブロワー45によって形成される気流の上流側から2段階のフィルター(中性能フィルター41及びHEPAフィルター42)が設置された構造を有する。集塵吸引機40の内部(筐体44の内部)は、中性能フィルター41とHEPAフィルター42とによって、気流の上流側から第1内部空間43A、第2内部空間43B、及び第3内部空間43Cに区画される。本実施形態では、吸引ブロワー45は第2内部空間43Bに配置されるが、これに限定されず、集塵吸引機40の内部であればよい。吸引ブロワー45は、集塵吸引機40の内部に流入する高温の気流に耐えうる耐熱性を有することが好ましい。
【0046】
ダクト20の他端は筐体44のうち第1内部空間43Aを区画する部分に接続される。このため、ダクト20の内部を通る気流は、まず集塵吸引機40の第1内部空間43Aに流入する。第1内部空間43Aに流入した気流は、第2内部空間43Bに送られる過程で、中性能フィルター41を通過する。中性能フィルター41は、粒径が概ね1μm以上の粉塵を捕捉する機能を有する。第2内部空間43Bに流入した気流は、第3内部空間43Cに送られる過程で、HEPAフィルター42を通過する。HEPAフィルター42は、粒径が概ね0.3μm以上の粉塵を捕捉する機能を有する。第3内部空間43Cは、筐体44と併せて、ステンレスのパンチング板46によっても区画される。第3内部空間43Cに流入した気流は、パンチング板46の貫通孔を介して、集塵吸引機40の外部に排出される。すなわち、集塵吸引機40は、ダクト20の内部から粉塵を含む空気を吸引し、中性能フィルター41及びHEPAフィルター42で粉塵を捕捉しつつ、粒径が0.3μm以上の粉塵を含まない清浄な空気を放出する。
【0047】
一例として、筐体44は、内装44A、断熱体44B、及び外装44Cの3層構造を有する。内装44Aはステンレス鋼板とすることができる。ただし、図2に示すように、内装44Aは、筐体44のうち、HEPAフィルター42よりも下流である第3内部空間43Cを区画する部分にのみ設けることでもよい。断熱体44Bを配置することで、集塵吸引機40の外側の温度上昇を抑えることができる。外装44Cはステンレス鋼板とすることができる。筐体44は、真空二重構造を有することも好ましい。これにより、断熱体44Bが不要となる。
【0048】
集塵吸引機40が作動することにより生じる気流と、それによる粉塵回収及び冷却促進については、図1に関する説明を援用する。さらに、本実施形態では、集塵吸引機40は、熱交換器47及び冷却器48を有する。熱交換器47は、第3内部空間43Cに配置されるが、これに限定されず、筐体44の内部であればよい。冷却器48は、筐体44の外側に配置されているが、これに限定されず、熱交換器47に接続されていればよい。本実施形態では、冷却器48に接続された熱交換器47によって、筐体44に流入した高温の気流が冷却される。この結果、ヒーター124及びルツボ116の一方又は両方からより効果的に抜熱することができるため、ヒーター124及びルツボ116の一方又は両方の冷却をより効果的に促進することができる。
【0049】
集塵吸引機40が、単結晶引上げ装置1000と同じフロア内(すなわち、クリーンルーム内)に設置されることが好ましいこと、例えば、クリーンルーム内のフロア上に設置された昇降機構付き台車50上に設置されることは、図1と同様である。
【0050】
[断熱体・吸熱体]
断熱体10B、断熱体20B、断熱体34B、及び断熱体44Bの素材は特に限定されないが、例えば、テフロン(登録商標)系のスポンジや表面コーティングされたカーボンとすることができる。また、断熱体10B、断熱体20B、断熱体34B、及び断熱体44Bのうち少なくとも一つを吸熱体に置換してもよい。あるいは、カバー10、ダクト20、集塵吸引機30、集塵吸引機40から選択される少なくとも一つに、断熱体10B、断熱体20B、断熱体34B、及び断熱体44Bに加えて、吸熱体を設けてもよい。吸熱体を設けることで、ヒーター124及びルツボ116の一方又は両方からより効果的に抜熱することができるため、ヒーター124及びルツボ116の一方又は両方の冷却をより効果的に促進することができる。吸熱体の素材は特に限定されないが、例えば、セラミックファイバーやPTFE多孔質材とすることができる。
【実施例0051】
(発明例)
図1に示す集塵冷却装置100を用意した。シリコン単結晶引上げ装置でインゴットの引上げを完了し、当該インゴットを取り出した後に、開炉を行った。開炉直後のルツボ及びヒーターに対して、図1に示す集塵冷却装置100を用いて、図1について説明した集塵冷却方法を適用し、ルツボ及びヒーターが50℃以下になるまで冷却を行った。
【0052】
(比較例)
シリコン単結晶引上げ装置でインゴットの引上げを完了し、当該インゴットを取り出した後に、開炉を行った。開炉直後のルツボ及びヒーターを自然放冷して、ルツボ及びヒーターが50℃以下になるまで待機した。
【0053】
[評価]
開炉直後からルツボ及びヒーターが50℃以下になるまでの時間を比較したところ、比較例では90分であったのに対して、発明例では25分であり、発明例では冷却が効果的に行えたことが分かる。
【0054】
また、発明例及び比較例ともに、冷却中のクリーンルーム内のパーティクル数(最大値)を測定した。具体的には、カバーの開口部の位置において、冷却中、1分間隔でパーティクル数の測定を行い、得られた測定値の中の最大値を採用した。その結果、粒径0.3μm以上のパーティクル数が、比較例では5000個/ftであったのに対して、発明例では10個/ftであり、発明例では粉塵を効果的に回収できたことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の集塵冷却装置及び集塵冷却方法によれば、単結晶引上げ装置におけるルツボ又はヒーターの冷却時に、粉塵を効果的に回収し、かつ、冷却を効果的に促進することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
100 集塵冷却装置
200 集塵冷却装置
10 カバー
10A 内装(ステンレス+ライニング)
10B 断熱体
10C 外装(ステンレス)
20 ダクト
20A ダクト本体
20B 断熱体
20C 外装(ステンレス)
30 集塵吸引機
31 中性能フィルター
32 HEPAフィルター
33A 第1内部空間
33B 第2内部空間
33C 第3内部空間
34 筐体
34A 内装(ステンレス)
34B 断熱体
34C 外装(ステンレス)
35 吸引ブロワー
36 排気口
40 集塵吸引機
41 中性能フィルター
42 HEPAフィルター
43A 第1内部空間
43B 第2内部空間
43C 第3内部空間
44 筐体
44A 内装(ステンレス)
44B 断熱体
44C 外装(ステンレス)
45 吸引ブロワー
46 パンチング板(ステンレス)
47 熱交換器
48 冷却器
50 昇降機構付き台車
1000 シリコン単結晶引上げ装置
110 メインチャンバー
111 プルチャンバー
112 ゲートバルブ
113 ガス導入口
114 ガス排出口
116 ルツボ
116A 石英ルツボ
116B 黒鉛ルツボ
118 シャフト
120 シャフト駆動機構
122 熱遮蔽体
124 ヒーター
126 断熱体
128 シードチャック
130 引上げワイヤ
132 ワイヤ昇降機構
134 電磁石
136 チャンバーベース
S 種結晶
M シリコン融液
I 単結晶シリコンインゴット
X 引上げ軸
R 残シリコン
図1
図2
図3